(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020203236
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 健司
(72)【発明者】
【氏名】猪熊 一真
(72)【発明者】
【氏名】秦野 耕一
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-263382(JP,A)
【文献】特開平06-226657(JP,A)
【文献】特開2001-287190(JP,A)
【文献】特開2019-094158(JP,A)
【文献】特開2019-058993(JP,A)
【文献】特開2011-200971(JP,A)
【文献】特開2019-119043(JP,A)
【文献】特開2020-163483(JP,A)
【文献】国際公開第2004/012018(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 5/00-19/06
B65G 47/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと荷台が車体に搭載されている無人搬送車であって、
荷台は水平方向の回動軸を有し、該回動軸に垂直な断面において広面部と狭面部がL字型に配置されており、
ロボットアーム
の作用で荷台
が回動することにより、
荷物の搬送時に、荷積み時又は荷下ろし時よりも広面部の上面視の面積を縮小させ、該広面部を荷物の背板として機能させることができ、
荷積み時又は荷下ろし時に、荷物の搬送時よりも広面部の上面視の面積を拡大させ、該広面部を荷物が積層される載置台として機能させることができる無人搬送車。
【請求項2】
荷台の
広面部の上面視の面積を拡大又は縮小する駆動源が
ロボットアーム以外に車体に搭載されていない請求項1記載の無人搬送車。
【請求項3】
ロボットアームが荷台に直接作用して荷台が回動することにより広面部の上面視の面積が縮小し、該作用の解除により重力で荷台が回動して広面部の上面視の面積が拡大する請求項1又は2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
水平移動可能な複数の荷台が上下に重なるように設けられている請求項1又は2記載の無人搬送車。
【請求項5】
ロボットの正面をロボットアームが両側に配された面とし、このような面が前後2面存在し、ロボットアームの動きが該2面のいずれかに制限される場合には、ロボットアームが移動可能な側の面をロボットの正面とするときに、荷物置場から荷物を持ち上げるときのロボットの正面の向きと、持ち上げた荷物を荷台に積むときのロボッ
トの正面の向きを変えることができる請求項1~4のいずれかに記載の無人搬送車。
【請求項6】
ロボットアームと荷台が車体に搭載されている無人搬送車を用いて荷積み、荷物の搬送及び荷下ろしを行う荷物の搬送方法であって、
荷台は水平方向の回動軸を有し、該回動軸に垂直な断面において広面部と狭面部がL字型に配置されており、荷台の
広面部の上面視の面積が空荷時
又は荷物の搬送時に対して荷積み時及び荷下ろし時に拡大するようにロボットアームによって荷台を
回動させる搬送方法。
【請求項7】
荷台の
広面部の上面視の面積が、荷積み時及び荷下ろし時に対して荷物の搬送中に縮小するようにロボットアームによって荷台を
回動させる請求項6記載の搬送方法。
【請求項8】
ロボットアームが荷台に直接作用することにより荷台の
広面部の上面視の面積を縮小させ、ロボットアームが前記作用を解除することにより
重力で荷台が回動して荷台の
広面部の上面視の面積
が拡大する請求項6又は7に記載の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
工場、倉庫、病院等の施設内において物品移動を自動化するため、自動移載式の無人搬送車の導入が進みつつある。無人搬送車としては、近年の情報処理能力や周囲情報収集技術の向上により、従前の経路誘導式に対して自律移動式の無人搬送車が主流になりつつある。さらに、荷積みや荷下ろしを自動化するために、無人搬送車にロボットアームを搭載することも行われている。
【0003】
ロボットアームを搭載した無人搬送車において搬送能力を向上させるため、荷台を電動シリンダによって無人搬送車の前方に突出させることでロボットアームの作業領域の直下に荷台を配置して荷物の積層移載を行い、積層移載終了後に荷台をホームポジションに戻すこと(特許文献1)、ロボットアームを用いた荷物の支持を安定させるためにロボット本体の側面に突出して設けられた台座部を昇降可能に備えること(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-226657号公報
【文献】特開2012―86310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従前のロボットアームを搭載した無人搬送車では荷物の積載量を増大させることに限界があり、一方、工場、倉庫、各種施設等において敷地の有効活用化などのために無人搬送車を通す通路幅に余裕がない場合に、無人搬送車に大量の荷物を積載すると無人搬送車を通路に通すことは困難である。即ち、特許文献2に記載のようにロボット本体に台座部を設けるだけでは、ロボットアームで抱える荷物量を増大させるにあたり、荷物の形態に制限があり、例えば、段ボールのブランクシートを大量に積層して搬送することはできない。また、台座部を大きくすることで積載できる荷物量を増大させると、無人搬送車はその前方に大量の荷物を抱えることになるので小回りが利かなくなり、通路幅が狭いと曲がり角を通れなくなる。
【0006】
また、特許文献1に記載のように荷台を電動シリンダで水平方向に移動させて荷物の積載スペースを拡大することも考えられるが、荷台の移動のための駆動源や荷台の駆動制御装置が必要となり、無人搬送車の構造が複雑になる。
【0007】
これに対し、本発明は、ロボットアームと荷台が車体に搭載されている無人搬送車において、荷台自体を動かす駆動源を設けることなく、簡便な構造で荷物の積載量の増大を可能とすること、さらには幅狭の屈曲した通路を容易に通れるようにすることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、積載できる荷物量を増大させるためには、例えば、断面がL字型形状となる2つの載置面を備えた荷台であって、その一方の載置面が前記断面においてL字の長辺となる広面部であり他方の載置面が前記断面においてL字の短辺となる狭面部である荷台を使用し、空荷状態では広面部を起立させておき、荷積み時や荷下ろし時には荷台を回動させて広面部を水平にし、広面部で形成される面を載置面として使用するなどのように、荷台の上面視の面積(言い換えると、荷物を載置し得る水平方向の面の面積)を、空荷時に対して荷積み時や荷下ろし時に拡大できるように荷台を動かすこと、言い換えると、上面視での荷台の面積が荷積み時及び荷下ろし時に対して空荷時に縮小するように荷台を動かすことが有効であり、その場合に、荷台自体に駆動源を設けず、ロボットアームで荷台を動かせるようにすることで上述の課題を解決できることを想到し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、ロボットアームと荷台が車体に搭載されている無人搬送車であって、ロボットアームが荷台を動かすことにより、荷台の上面視の面積が拡大または縮小するように荷台が形成されている無人搬送車を提供する。
【0010】
また、本発明は、ロボットアームと荷台が車体に搭載されている無人搬送車を用いて荷積み、荷物の搬送及び荷下ろしを行う荷物の搬送方法であって、荷台の上面視の面積が空荷時に対して荷積み時及び荷下ろし時に拡大するようにロボットアームによって荷台を動かす搬送方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の無人搬送車によれば、荷台の上面視の面積が、荷積み時及び荷下ろし時に対して空荷時に縮小するので狭い所での方向転換が容易となり、無人搬送車が待機地点から荷積み地点に向かう通路、及び荷下ろし地点から待機地点または荷積み地点に向かう通路において、幅の狭い屈曲がある場合も通行が可能となり、通路のレイアウトの自由度が増す。一方、荷積み時及び荷下ろし時には荷台の上面視の面積を縮小時よりも拡大し、積載できる荷物量を増大させることができる。
【0012】
特に、本発明において、荷積み時及び荷下ろし時に対して荷物の搬送中においても荷台の上面視の面積が縮小するように荷台が動く態様によれば、荷積み地点から荷下ろし地点までの通路においても、通路幅を荷物が満載された無人搬送車に対応させることが不要となる。
【0013】
また、本発明の無人搬送車によれば、上述の荷台の上面視における面積の拡大や縮小が、ロボットアームが荷台を動かすことによりもたらされるので、荷台を動かすための駆動源が不要となり、その分、無人搬送車の構造を簡素化し、小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、実施例の無人搬送車1Aが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の正面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例の無人搬送車1Aが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の側面図である。
【
図1C】
図1Cは、実施例の無人搬送車1Aが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の上面図である。
【
図2A】
図2Aは、実施例の無人搬送車1Aが、荷台の上面視の面積を拡大した状態の正面図である。
【
図2B】
図2Bは、実施例の無人搬送車1Aが、荷台の上面視の面積を拡大した状態の側面図である。
【
図2C】
図2Cは、実施例の無人搬送車1Aが、荷台の上面視の面積を拡大した状態の上面図である。
【
図3A】
図3Aは、エンドエフェクタの正面図、右側面図、左側面図及び背面図である。
【
図3B】
図3Bは、開閉部材が開いた状態のエンドエフェクタの側面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施例の無人搬送車1Aによる荷積み方法の説明図である。
【
図5B】
図5Bは、実施例の無人搬送車1Aによる荷積み方法の説明図である。
【
図5C】
図5Cは、実施例の無人搬送車1Aによる荷積み方法の説明図である。
【
図5D】
図5Dは、実施例の無人搬送車1Aによる荷積み方法の説明図である。
【
図5E】
図5Eは、実施例の無人搬送車1Aによる荷積み方法の説明図である。
【
図5F】
図5Fは、実施例の無人搬送車1Aによる荷積み方法の説明図である。
【
図6】
図6は、実施例の無人搬送車1Aの荷積み後搬送前の正面図及び側面図である。
【
図7】
図7は、実施例の無人搬送車1Aの荷物の搬送時の正面図及び側面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施例の無人搬送車1Aによる荷下ろし方法の説明図である。
【
図8B】
図8Bは、実施例の無人搬送車1Aによる荷下ろし方法の説明図である。
【
図8C】
図8Cは、実施例の無人搬送車1Aによる荷下ろし方法の説明図である。
【
図8D】
図8Dは、実施例の無人搬送車1Aによる荷下ろし方法の説明図である。
【
図9A】
図9Aは、実施例の無人搬送車1Bが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の正面図である。
【
図9B】
図9Bは、実施例の無人搬送車1Bが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の側面図である。
【
図9C】
図9Cは、実施例の無人搬送車1Bが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の上面図である。
【
図10A】
図10Aは、実施例の無人搬送車1Bが、荷台の上面視の面積を拡大した状態の側面図である。
【
図10B】
図10Bは、実施例の無人搬送車1Bが、荷台の上面視の面積を拡大した状態の上面図である。
【
図13A】
図13Aは、実施例の無人搬送車1Cが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の上面図である。
【
図13B】
図13Bは、実施例の無人搬送車1Cが、荷台の上面視の面積を縮小した状態の側面図である。
【
図14】
図14は、実施例の無人搬送車1Cが、荷台の上面視の面積を拡大した状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。なお、各図において同一符号は、同一または同等の構成要素を表している。
【0016】
<無人搬送車の全体構成>
図1Aは本発明の一実施例の無人搬送車1Aが荷台の上面視の面積を縮小した状態の正面図であり、
図1Bはその側面図である。また、
図2Aは、無人搬送車1Aが荷台の上面視の面積を拡大した状態の正面図であり、
図2Bはその側面図である。
【0017】
この無人搬送車1Aは、自動移載方式で荷物の無人搬送を行うもので、車体2の進行方向の前側に、垂直多関節型のロボットアーム11を2つ備えた双腕型ロボット10が搭載されており、さらにその前方に荷台40が搭載されている。また、車体2には、無人搬送車1Aが自動で所定の通路を通って荷積み地点、荷下ろし地点、待機地点等に行けるように自動走行システムが搭載されている。
【0018】
自動走行システムの方式は特に限定されず、例えば、経路誘導式、自律移動式、追従式等を挙げることができる。このうち、経路誘導式としては、電磁誘導式、光学誘導式、磁気誘導式、磁性体誘導式等を挙げることができ、使用可能なセンサや床の制約から適式なものが選択される。また、自律移動式における自己位置の推定方法や精度の向上方法は特に限定されず、例えば、レーザ測距式、レーザSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)式、画像SLAM式などが挙げられる。また、周囲の物体の位置分布の検出にはLRF(Laser Range Finder)、別名Lider(Light Detection and Ranging)を使用することが一般的である。自動走行の精度向上の例として、RFID、QRコード(登録商標)、磁石などを使用した定点補正を行っても良い。
【0019】
(荷台)
荷台は搬送する荷物の形態等に応じて種々の形状をとることができるが、本実施例では、段ボールのブランクシート等の板状の材を荷物として搬送するものとし、L字型形状の断面を有する荷台40を設けている。即ち、荷台40は、L字の長辺をなす広面部42と短辺をなす狭面部43とで形成されている。狭面部43において、広面部42とは反対側の端辺又はその近傍に荷台が回動可能に車体2に取り付けられ、その取り付け部に水平方向に伸びた回動軸41がある。したがって、荷台40は回動軸41を中心として回動可能である(
図1B、
図2B)。
荷台40の車体2への取り付け方としては、広面部42と狭面部43の間の辺を回動軸41とし、その回動軸41を回動可能に車体2に取り付けても良い。
【0020】
なお、本発明において、荷物の種類は限定されない。例えば、形状は箱状、板状、ロール状、ボトル状等とすることができ、その素材は紙、木材、金属、樹脂等とすることができる。また、荷台の外形は、荷物の形態に応じて、篭状、箱状、トレー状等とすることができる。荷物のがたつき防止のために、荷台に凸条、溝等を設けても良い。
【0021】
無人搬送車1Aが空荷で移動するとき、狭面部43で形成される面が略水平となり、広面部42で形成される面が起立する位置に荷台40を回動させることができる(
図1B)。このとき、荷台40の上面視の面積は
図1Cで斜めハッチングをかけた面積S0となり、無人搬送車1Aの全長はL0となる。
【0022】
無人搬送車1Aでは、荷物の搬送時にもこの位置に荷台40を回動させて荷台40の上面視の面積をS0とすることができる。この場合、狭面部43で形成される面を荷物の載置台として機能させ、広面部42で形成される面を背板として機能させることができる。
【0023】
一方、荷積み時や荷下ろし時には、荷台40の回動により広面部42で形成される面を水平にして、その面を荷物の載置台として機能させ、狭面部43で形成される面を背板として機能させることができる(
図2B)。このとき、荷台40の上面視の面積は、
図2Cで斜めハッチングをかけた面積S1となり、上述の空荷時又は搬送時の面積S0よりも拡大している。また、無人搬送車1Aの全長はL1となり、上述の空荷時又は搬送時の全長L0よりも長くなる。
【0024】
このように荷台40が回動軸41を中心にして回動することにより、空荷時に対して荷積み時及び荷下ろし時に荷台40の上面視の面積を拡大させることができるが、荷積み後に荷物を搬送するときには空荷時と同様の位置に荷台40を回動させて荷台40の上面視の面積を縮小し、無人搬送車1Aの全長を短くすることが可能である。したがって、無人搬送車を通す通路に屈曲した箇所がある場合に、通路幅は全長L1の無人搬送車に対応した幅広の通路でなくとも、全長L0の無人搬送車に対応した幅狭の通路で足りることとなる。
【0025】
また、上述のように荷台40の上面視の面積を拡大又は縮小させる荷台40の回動は、ロボットアーム11によって行われる。即ち、ロボットアーム11が荷台40に作用すること、又はその作用を解除することにより行われる。ここで、ロボットアーム11が荷台40に作用するとは、ロボットアーム11がエンドエフェクタ20で荷台40を押し上げる、支える、挟持する等の作用を行うことをいう。したがってこの無人搬送車1Aでは、荷台40を回動させるための駆動源は搭載されておらず、その分、無人搬送車1Aの構成がコンパクトになっている。
【0026】
なお、
図1Bに示したように広面部42を起立させるときに該広面部42が水平となす角度θは90°未満とすることが好ましい。これにより、ロボットアーム11による荷台40への支持を解除するだけで、広面部42が略水平になる位置(
図2B)まで重力により荷台40を回動させることができる。またこの場合、広面部42が
図1Bに示したように起立した位置から
図2Bに示したように水平となる位置へ、荷台40が急激に回動して荷台40に衝撃が加わることを防止するため、回動軸41にはダンパーやバネ材を組み込んでも良い。このときは、ダンバーやバネ材により広面部42が起立する方向に弾性力が加わるが、ロボットアーム11により、その弾性力に抗する力を、例えば広面部42の上方より下方に向けて加えることで、広面部42を水平に維持する。
【0027】
(ロボットアーム)
本実施例においてロボットアーム11としては、双腕型ロボット10の左右のアームとして垂直多関節型のロボットアームが設けられている。本発明においてロボットアームはこれに限定されず、水平多関節型、パラレルリンク型などとしてもよいが、垂直多関節型とすることによりアームの動作範囲を最も広くすることができる。
【0028】
ロボットアームを無人搬送車に搭載するにあたり、本実施例の無人搬送車1Aでは
図1A、
図2Aに示したように、左右のロボットアーム11を基部12に取り付け、その基部12を車体2に取り付けているが、後述する実施例の無人搬送車1B(
図10A、
図10B)のようにロボットアーム11を車体2に直接取り付けても良い。
ロボットアーム11を基部12に取り付ける場合には、基部12を車体2上で水平面内で回転可能とすることが好ましい。これにより、無人搬送車1Aの車体2の向きにかかわらず、荷物の積み下ろし方向をロボットの正面で行い、移載作業の最適化を図ることができ、また、ロボットアーム11の動作範囲を広げることができるので好ましい。
【0029】
左右のロボットアーム11は制御装置で相互監視されており、アーム先端部等のアームの各部同士等が干渉しないように制御されていることが好ましい。これにより、ロボットアーム11の動作プログラムにある誤りにより干渉が生じる場合や、ロボット10が備えるカメラが撮った画像の認識に基づき自律的な動作を各ロボットアーム11が行う場合に、左右のロボットアーム11同士が接触して破損することなどを防止することができる。
【0030】
なお、本発明においてロボットアームは双腕型に限られない。3つ以上のロボットアームが無人搬送車1Aに設けられても良く、これにより多種多様な作業が可能となる。
【0031】
(エンドエフェクタ)
左右のロボットアーム11の先端にはエンドエフェクタ20が設けられている。
エンドエフェクタ20が荷台40に直接作用して荷台40を所定の位置に回動させ、また、荷積み、荷下ろし等の作業を容易に行えるようにするため、エンドエフェクタ20には荷台40に係合する棒状、板状等の凸部を設けることができる。例えば、無人搬送車1Aで扱う荷物の素材、形状等に応じて、荷物を把持することのできる把持部や、荷物に吸着することのできる吸着部を設けてもよい。また、荷物を縛っている紐を切断する刃などを設けてもよい。
【0032】
図3Aに示すエンドエフェクタ20は、
図1Aに示した双腕型ロボットのロボットアーム11に設けるものの一例である。このエンドエフェクタ20は延長部21の先端部に一端が開閉する一対の開閉部材22を有し、この開閉端の反対側において板状の押し部材23が突出している。またエンドエフェクタ20は、押し部材23の突出方向と直角な方向に突出した平棒状の保持部材24を有している。
【0033】
一対の開閉部材22は嘴状に開閉端の厚みが先端に向かって薄くなっている。開閉部材22が閉じた際に対向する部分である開閉部材22の内部には切断刃25が設けられており、
図3Bに示したように開閉部材22が開いたときに切断刃25が露出する。そのため、無人搬送車1Aで荷積みする荷物が段ボール箱のブランクシート等の板状材の積層物を紐で束ねたものである場合に、開閉部材22の厚みが薄い開閉端側の端部を板状材と紐の間に差し込んで紐を引き上げ、紐を切断刃25で切断し、開閉部材22で切れ端を摘まんで除去するのに適した形状となっている。
【0034】
保持部材24は、荷積みする荷物が上述のように板状材の積層物で束ねられている場合に、積層してひとつに束ねられている板材の間に挿入して積層物の束を持ち上げたり、荷台の突出部と係合させたりするときに有用となる。
押し部材23は、荷下ろし地点で荷下ろしした荷物を所定の場所に押し込む場合に有用となる。
【0035】
(画像認識)
本実施例の無人搬送車1Aには、双腕型ロボット10の基部12の上方、即ち、双腕型ロボット10を人型と見なした場合の頭部13に相当する位置に画像認識に使用するカメラ30が設けられており、ロボット10には画像認識システムが内蔵されている。カメラ30で撮った画像情報は、有線又は無線でロボット10に送られ、ロボットアーム11の高度な動作制御を行うことが可能となる。
【0036】
即ち、無人搬送車は、自動走行方式が経路誘導式、自律移動式、追従式のいずれであっても、一般には目標の停止位置に精確に停止することはできない。通常、±50mm程度の位置誤差が生じる。無人搬送車においてさらに画像センサ、床面マーク検知センサ、距離センサ等の補正センサを使用した場合でも±10mm程度の位置誤差が生じる。このため、荷積みや荷下ろしにおいて、ロボットアームと周囲との位置関係に高い精度が必要となる場合には荷物の移載に支障がきたされる。
【0037】
これに対し、補正センサ無しであっても画像認識システムによれば、荷積み、荷下ろし等の作業地点の周囲のマーカーや特徴的な対象物が画像認識されるので、目標の停止位置に無人搬送車が到達すると、その情報が自動走行システムに送られる。あるいは、無人搬送車の目標の停止位置に対する実際の停止位置のズレ量や角度のズレ量を画像認識システムが推測し、ロボットアームの動作を補正する。このため、所期の動作を確実に行うことができる。補正センサ無しの場合、画像認識システムが認識不可能な位置誤差が発生することもありえるので、補正センサの併用が好ましい。
【0038】
無人搬送車1Aの停止位置の補正のために画像認識システムを使用するだけでなく、荷積み、荷下ろしといったロボットアーム11の動作を、画像認識システムで荷物、荷台などの対象物を認識することにより行っても良い。さらに画像認識システムを用いて、荷物のバーコードや色などの検査を行っても良い。また、画像認識システムを、走行時の安全性の向上のために使用してもよい。一方、荷物のバーコード検査には、専用のバーコードリーダを使用してもよい。
【0039】
画像認識に使用するカメラ30や画像認識システム自体には特に制限がない。2次元型画像や、ステレオカメラなどによる3次元型画像の情報を処理する公知の画像認識システムを使用することができる。また、拡張現実(AR;Augmented Reality)により、撮像した画像でマーカーの大きさ、向き、変形度合の情報を得、それによりロボットアームの位置のずれ量を推測するものを使用してもよい。画像認識する対象物、処理時間、コスト等に応じて適宜選択される。
【0040】
カメラの設置位置も特に限定されない。例えば、後述する実施例の無人搬送車1B(
図10A、
図10B)のように、ロボットアーム11の基部12とは別個に無人搬送車にポール状の背の高い設置具31を起立させ、その設置具31にカメラ30を設置してもよい。カメラ30の設置位置を高くすることにより、遠方から荷物を確認することができる。そのため、カメラレンズによる画像の歪みを小さくすることができ、荷物の位置の誤認を防止することができる。また、特に移動時には、カメラ30の位置が高いことで、積んだ荷や荷台に邪魔されることなく進行方向の前方を監視することも可能になる。一方、荷積み、荷下ろし等のロボットアームの動作に画像認識システムを使用する場合には、ロボットアームの先端にカメラを設置してもよい。この場合には、カメラが荷物に近づくことができるので、荷物の検査が容易になる。
【0041】
(荷物の搬送例)
無人搬送車1Aを用いた荷物の搬送方法の一例として、段ボールのブランクシートを荷物Bとし、無人搬送車1Aが
図4に示した通路を通り、荷積みと荷下ろしを行う搬送方法を、
図5A~
図5F、
図6、
図7、
図8A~
図8Dを参照しつつ説明する。
【0042】
図4に示した通路は、無人搬送車1Aの待機地点P1、荷積み地点P2、及び荷下ろし地点P3を有する。待機地点P1と荷積み地点P2との間に第1コーナーを有し、荷積み地点P2と荷下ろし地点P3との間に第2コーナーを有する。なお、荷下ろし地点P3から待機地点P1に戻る通路をさらに設け、循環タイプの通路としてもよい。この場合、荷下ろし地点P3を第3コーナーとし、荷下ろし地点P3と待機地点P1との間に第4コーナーを有することができる。
【0043】
待機地点P1では、無人搬送車1Aは、
図1A及び
図1Bに示したようにエンドエフェクタ20の保持部材24で荷台40の広面部42の外面42aを支持し、該広面部42を角度θで起立させることにより、荷台40の上面視の面積を縮小した状態にしている。このとき無人搬送車1Aの荷台40の上面視の面積はS0であり(
図1C)、無人搬送車1Aの全長はL0である。また、無人搬送車1Aは、周囲の設置物やマーカーの確認のために車体2が前方を向いている。この確認後、無人搬送車1Aは第1コーナーを曲がって荷積み地点P2に向かう。
【0044】
荷積み地点P2の通路際の荷物保管場所Cには、段ボールのブランクシートBの積層体が紐Bxで結束されたシート束B1が置かれている。無人搬送車1Aは、その側面を荷物保管場所Cに向けた横付け状態で自動停止する(
図5A)。
【0045】
なお、本発明において荷物保管場所Cの形態は搬送する荷物に応じて適宜選択される。荷物を置く台部は水平面やストッパーを有する傾斜面等とすることができる。台部が棚状に設けられていても良い。また、台部は、水平又は垂直に移動したり、回転したりするものでも良い。
【0046】
荷積み地点P2では、エンドエフェクタ20の保持部材24がロボットアーム11の動きでゆっくりと下に移動する。これにより、車体2の前方に位置する回動軸41を中心として荷台40が自重で回動し、
図2A、
図2Bに示したように、荷台40の上面視の面積がS1に拡大した状態となる。
【0047】
次に、
図5Aに示すように、ロボット10の正面が荷物保管場所Cを向くようにロボット10の基部12が水平回転し、左右のロボットアーム11の両方が荷物に作用できるようにし、またカメラ30が荷物を捉えることができるよう、頭部13がやや下を向くようにする。このように荷物保管場所Cに無人搬送車1Aを横付けし、ロボット10の正面を荷物保管場所Cに向かせることにより、左右のロボットアーム11が荷物保管場所Cの荷物に近づくので、荷物を持ち上げるためにロボットアーム11に必要とされるロボットアーム11のアーム長を短くすることができる。これにより、無人搬送車1Aに搭載するロボットアーム11としてコンパクトなものを選択することが可能となる。よって、ロボットアーム11に要する費用を安価にすることができる。また、ロボットアーム11の重量を低減させることができるので、無人搬送車1Aの重心が高くなることを抑制でき、転倒のリスクを軽減させることができる。さらに、無人搬送車1Aを小型化して安価に構成することが可能となる。このロボットアーム11の長さを短くすることによるロボットアーム11における負荷の軽減効果は、持ち上げる荷物が個々のブランクシートではなく、その束B1であることにより重量が大きい場合に特に顕著となる。
また、
図5Aに示すように頭部13がやや下を向くことにより、カメラ30には荷物保管場所Cの荷物Bが十分に視野に入るようになる。
なお、ロボットの正面とは、両側に腕が配された面を言う。このような面が前後2面存在し、腕の動きがいずれかに制限される場合は、腕が移動可能な向きの側の面のみを正面という。
【0048】
次にエンドエフェクタ20の保持部材24でシート束B1を挿し、左右のエンドエフェクタ20でシート束B1を挟持し、シート束B1を上方に持ち上げる。持ち上げた後に、ロボットアーム11に備えた不図示の測定装置などにてシート束B1の重量測定を行い、シート束B1を形成しているブランクシートの枚数を、既知のブランクシートの1枚の重量より推定することが可能である。また、保持部材24でシート束B1を挿した後に、ロボットアーム11に備えた不図示のカメラで枚数を計測しても良い。
【0049】
左右のエンドエフェクタ20がシート束B1を持ち上げた後、ロボット10の基部12が水平回転し、ロボット10の正面が荷台40に向く(
図5B)。次いでエンドエフェクタ20が下がり、保持部材24がシート束B1から引き抜かれ、荷台40の広面部42で形成される載置面にシート束B1が載置される(
図5C)。このようにシート束B1を荷台40に載置するときにロボット10の正面を荷台40に向かせると、ロボットアーム11の長さを短くすることができ、シート束B1を持ち上げるときと同様に、シート束B1の載置時にロボットアーム11にかかる負荷を軽減することができる。
【0050】
荷台40にシート束B1が載置された状態で、エンドエフェクタ20の開閉部材22の先端が、その厚みが薄くなっていることでブランクシートBと紐Bxの間に差し込まれ、紐Bxが引き上げられ、紐Bxが切断刃25で切断される。そして、紐Bxの切れ端が開閉部材22に挟持され、ブランクシートBの積層物から取り除かれる。こうして荷積み時に紐Bxを取り除いておくことで、荷下ろし地点P3で製函機DにブランクシートBを供給すると、製函機Dは円滑に製函工程に入ることができる。
【0051】
次に、2つめのシート束B1を荷台40に積むために、ロボット10の基部12が再度水平回転し、荷物保管場所Cを向き、エンドエフェクタ20の保持部材24が2つめのシート束B1に挿され、左右のエンドエフェクタ20でシート束B1が挟持される(
図5D)。そしてシート束B1が上方に持ち上げられる。その後ロボット10の基部が水平回転してロボット10の正面が荷台40の真後ろに位置し(
図5E)、前述と同様にして、先に荷台40に載置されたブランクシートBの上にさらにシート束B1が載置される(
図5F)。このシート束B1の紐Bxも前述と同様に取り除かれる。荷積みが完了し、荷が積まれた状態の荷台40の上面視の面積は、
図2Cに示したようにS1に拡大しており、無人搬送車1Aの全長もL1に長くなっている。
【0052】
次に、荷積みされた荷台40を、回動軸41を中心に回動させて荷台40の上面視の面積を縮小させるため、まず、左右のロボットアーム11のエンドエフェクタ20の保持部材24をそれぞれ荷台40の広面部42の下面に当てる(
図6)。次に、エンドエフェクタ20を持ち上げることで、回動軸41を中心として荷台40を回動させ、広面部42を角度θ(
図1B)で起立させる(
図7)。これにより、荷台40の上面視の面積は
図1Cに示したようにS0に縮小し、無人搬送車1Aの全長はL0となる。また、カメラ30が移動に適した正面方向を向く。そして、無人搬送車1Aは荷下ろし地点P3に向かって移動を始める。
【0053】
移動時の無人搬送車1Aは、荷台40の上面視の面積がS0に縮小し、無人搬送車1Aの全長もL0に短くなっているので、待機地点P1から荷積み地点P2に至る通路と同様に幅狭の通路が屈曲していても、周囲の構造物に衝突することなく通ることができる。これに対し、荷積み後に荷台40を回動させず、荷台40の上面視の面積が拡大した面積S1で、無人搬送車1Aの長さがL1のままであると、荷積み地点P2から荷下ろし地点P3の間の第2コーナーを曲がることができず、第2コーナーを無人搬送車1Aが曲がれるようにするために、
図4に破線で示したように通路幅を広げることが必要となる。
【0054】
荷下ろし地点P3では、製函機Dに段ボールのブランクシートを供給するための受け入れ台Eの正面に位置し、搬送してきた段ボールのブランクシートBを該受け入れ台Eに載せる。そのため無人搬送車1Aは、まず、荷下ろし地点P3に正確に停止する(
図8A)。
【0055】
次に、荷台40の広面部42を支持していたエンドエフェクタ20の保持部材24が、ロボットアーム11の動きによってゆっくり下がり、回動軸41を中心にして荷台40が回動し、荷台40の広面部42が水平になり、荷台40の上面視の面積が
図2Cに示したようにS1に拡大する(
図8B)。この回動中も、ロボットアーム11の動きが適切に制御され、回動は緩やかに加速され、その後は一定の回転速度を保ち、最後は緩やかに減速されることで、荷台40に積層されたブランクシートは安定に保持されている。
なお、回動後において、荷台40の広面部42によるブランクシートBの載置面が、受け入れ台Eの載置面よりも僅かに高くなるように、予め荷台40の厚みや上下の位置が調整されていることが好ましい。
【0056】
次に、エンドエフェクタ20の押し部材23を、積層されているブランクシートBと、その背当てとなっている荷台40の狭面部43の面との間に差し込み(
図8C)、その押し部材23が、積層されているブランクシートBを製函機Dの受け入れ台Eの方に押し出す(
図8D)。このとき、荷台40におけるブランクシートBの載置面が、受け入れ台Eの載置面よりも僅かに高くなっていると、積層されたブランクシートBが受け入れ台Eで引っかかることがなく、積層されたブランクシートBをスムーズに押し出すことができる。
【0057】
荷下ろし作業が完了すると、無人搬送車1Aは、当初の待機地点P1に戻るためにまずエンドエフェクタ20の保持部材24を、荷台40の広面部42の下面に当て、ロボットアーム11を動かすことでエンドエフェクタ20を持ち上げ、それにより回動軸41を中心として荷台40を回動させ、広面部42を角度θで起立させ、荷台40の上面視の面積を
図1Cに示したようにS0に縮小させ、無人搬送車1Aの全長はL0とする。
無人搬送車1Aは、荷下ろし地点P3で向きを変え、
図4に破線で示したように荷下ろし地点P3から待機地点P1へ、同じ通路Aを戻ることができる。
【0058】
<無人搬送車の変形態様1>
(荷台)
本発明の無人搬送車は種々の態様をとることができる。例えば、荷台の上面視の面積が空荷時に対して荷積み時及び荷下ろし時に拡大するようにするため、水平移動可能な複数の荷台が上下に重なって保持されるようにしてもよい。
【0059】
図9Aは、水平移動可能な2つの荷台50a、50bが上下に重なるように設けられている無人搬送車の一実施例の正面図であり、
図9Bはその側面図である。図示した状態で2つの荷台50a、50bは上下に重なっており、これらを合わせたトータルの荷台50の上面視の面積は、
図9Cで斜めハッチングをかけた面積S0となり、無人搬送車1Bの全長はL0となる。
【0060】
上段の荷台50aはスライダー51上に設けられており、矢印のように車体2の前後方向に水平移動することができる。また、エンドエフェクタ20の作用によって上段の荷台50aを水平移動させることを容易にするため、上段の荷台50aの側面には、エンドエフェクタの保持部材と係合するU字状突起53が設けられている。したがって、このU字状突起53にエンドエフェクタ20の保持部材を係合させ、エンドエフェクタ20で水平方向に上段の荷台50aを押すことにより、上段の荷台50aは容易に水平移動する。
【0061】
上下に重なっていた荷台50a、50bの上段の荷台50aを前方へスライドさせると、
図10Aに示すように、2つの荷台50a、50bの上下方向の重なりをなくすことができる。このとき荷台50a、50bの上面視の面積は、
図10Bで斜めハッチングをかけた面積S1となり、無人搬送車1Bの全長はL1となる。この面積S1は上述の面積S0よりも拡大し、全長L1も前述の全長L0より長くなっている。無人搬送車1Bでは、このように荷台50a、50bの上面視の面積が拡大した状態で荷積み及び荷下ろしをすることができる。
【0062】
この無人搬送車1Bは荷物としてボトルB2を搬送する。したがって、各荷台50a、50bはボトルを保持できるように左右前後の壁を有する箱形であり、ボトルB2を保持するのに十分な深さを有している。
【0063】
なお、この無人搬送車1Bでは、カメラ30から各荷台50a、50b上のボトルB2までの距離の差を最小として画像認識を確実にするため、2つの荷台50a、50bの上下方向の間隔を、荷物とするボトルB2の高さよりも狭くしており、間隔はごく僅かである(
図12F)。そのため、ボトルB2を荷積みした後、2つの荷台50a、50bを空荷時のように上下に重ねることができない。したがって、この無人搬送車1Bでは荷積み地点でボトルを積んだ後、荷下ろし地点に移動する間は、前述の無人搬送車1Aのように、荷台の上面視の面積を空荷時と同様の狭い面積にすることができず、無人搬送車の全長を短くすることができない。
【0064】
一方、上段の荷台50aを前方へスライドさせ、2つの荷台50a、50bの上下方向の重なりをなくした状態での上段の荷台50aの位置を、上面視にて、車体2から前面へ僅かに突出する程度にしておくと、空荷時であれば通れる程度の幅狭の通路にボトルの搬送時に入り、曲がり角を曲がることが可能となる。
【0065】
そこで、2つの荷台50a、50b上のボトルB2の位置の認識に支障がきたされない場合には、2つの荷台50a、50bの上下方向の間隔を、荷物とするボトルB2の高さよりも広くすることにより、ボトルB2を荷積みした後、2つの荷台50a、50bを空荷時のように上下に重ねられるようにしてもよい。この場合には荷積み地点でボトルを積んだ後、荷下ろし地点に移動する間も、荷台の上面視の面積を空荷時と同様の狭い面積にし、無人搬送車の全長を短くすることができる。
【0066】
なお、本実施例の無人搬送車1Bにおいて、下段の荷台50bは、上段の荷台50aのスライド方向に延びた分割線で分割されており、上段の荷台50aとスライダー51とを接続する脚部52は、この分割線を通過できるように細く形成されている(
図9A)。
【0067】
このようにスライダー51を備える無人搬送車において、スライダーの形式は特に限定されない。例えば、滑りやすい板の組み合わせ、コロコンベヤと板の組み合わせ、スライドレール、スライドガイドなどが挙げられる。特に、ボールベアリングをスライドブロックに内蔵したスライドガイドは、剛性が高くコンパクトであるので最も好ましい。
【0068】
また、ロボットアーム11が作業を行う際に振動等により上段の荷台50aがスライドしてしまうことを防止するため、上段の荷台50aの位置を一時的に固定する機構を設けることが望ましい。このような機構の一例として、出し入れが可能なスプリングボールプランジャと凹部の組み合わせ、電磁石、エアシリンダや電動シリンダによる凸部と凹部の組み合わせ等を用いたものが挙げられる。
【0069】
(ロボットアーム)
本実施例の無人搬送車1Bは、荷積み地点でボトルを1本ずつ荷台50に積み、荷下ろし地点でボトルを1本ずつ所定の位置に下ろす用途に使用されるため、ロボットアームとしては、1本の垂直多関節型ロボットアーム11が車体2に取り付けられている。
【0070】
ロボットアーム11の先端のエンドエフェクタ20には、ボトルB2の摘まみ上げと摘まみ下ろしに好適な挟持部材26が設けられている。エンドエフェクタ20は、荷物の搬送中にボトルB2の整列等の作業を行っても良い。
【0071】
なお、本発明においてエンドエフェクタが行う作業は特に限定されず、無人搬送車が搬送する荷物の種類、状態等に応じて種々の作業を行うことができる。例えば、組み立て、ネジ締め、溶接、塗装等を挙げることができる。荷物の搬送中に作業を行うことにより、無人搬送車を効率的に運用することができる。
【0072】
(カメラ)
本実施例の無人搬送車1Bにおいて、画像認識に使用するカメラ30は、車体2から起立したポール状の高い設置具31に取り付けられ、2つの荷台50a、50bの上方の高い位置に設けられている。これにより、カメラレンズによる画像の歪みを小さくすることができ、ボトルB2の位置の誤認を防止することができる。
【0073】
(荷物の搬送例)
無人搬送車1Bを用いた荷物の搬送方法の一例として、無人搬送車1Bが
図11に示した通路を通り、ボトルB2の荷積みと荷下ろしを行う搬送方法を、
図12A~
図12Fを参照しつつ説明する。
【0074】
図11に示した通路は循環型となっており、無人搬送車1Bの待機地点P1、荷積み地点P2、及び荷下ろし地点P3を有する。待機地点P1と荷積み地点P2との間に第1コーナーを有し、荷積み地点P2と荷下ろし地点P3との間に第2コーナーを有し、荷下ろし地点P3と待機地点P1との間に第3コーナー及び第4コーナーを有する。第2コーナーから第3コーナーにかけての通路幅は、それ以外の部分の通路幅に比して広くなっている。
【0075】
待機地点P1では、無人搬送車1Bの2つの荷台50a、50bは
図9A~
図9Cに示したように上下に重なっており、荷台50の上面視の面積はS0に縮小している。無人搬送車1Bは待機地点P1から第1コーナーを曲がって荷積み地点P2に向かう。
【0076】
無人搬送車1Bは荷積み地点P2で停止すると、2つの荷台50a、50bが上下に重なった状態で荷積みを始める。荷積みは、まず、ロボットアーム11の先端のエンドエフェクタ20の挟持部材26で荷物保管場所C(
図11)にあるボトルB2を1本ずつピックし、上段の荷台50aに積み込むことから始まる(
図12A)。
【0077】
上段の荷台50aへのボトルB2の積み込みが繰り返され(
図12B)、完了すると、ロボットアーム11の先端のエンドエフェクタ20が、上段の荷台50aのロボットアーム11の基部寄りの位置に移動する(
図12C)。そしてエンドエフェクタ20において挟持部材26と異なる方向に突出している保持部材24(
図9A)が上段の荷台50aに取り付けられているU字状突起53(
図9B)と係合し(
図12C)、ロボットアーム11の動きにより、ロボットアーム11の基部から離れた方向へ上段の荷台50aを水平移動させる(
図12D)。これにより、荷台50の上面視の面積がS1(
図10B)に拡大する。
【0078】
次に、エンドエフェクタ20は、再び荷物保管場所C(
図11)にあるボトルB2をピックし、下段の荷台50bに積み込む(
図12E)。下段の荷台50bへのボトルB2の積み込みが繰り返され、完了すると(
図12F)、無人搬送車1Bは荷下ろし地点P3に移動する。
【0079】
荷下ろし地点P3では、ロボットアーム11によって、下段の荷台50bに積まれているボトルB2から所定のボトル置き場F(
図11)に降ろされる。下段の荷台50bの荷下ろしが完了すると、エンドエフェクタ20の保持部材24(
図9A)が上段の荷台50aのU字状突起53に係合し、ロボットアーム11の動きによって上段の荷台50aがロボットアーム11の基部側に水平移動して下段の荷台50bと上下に重なり、トータルの荷台の上面視の面積がS0(
図9C)に縮小する。この状態で、上段の荷台50aに積まれているボトルがボトル置き場Fに降ろされる。上段の荷台50aのボトルの積み下ろしも完了すると、無人搬送車1Bは待機地点P1に移動する。あるいは荷積み地点P2に移動し、上述の荷積みと荷下ろしの作業を繰り返す。
【0080】
<無人搬送車の変形態様2>
本発明においては、荷台の上面視の面積を、空荷時に対して荷積み時及び荷下ろし時に拡大させるため、上下に重なって保持される複数の荷台が回転して水平移動するようにしてもよい。
このような実施形態は、荷を積んだときと積まないときとで、無人搬送車が通る通路が異なり、荷を積まないときの通路が狭いときに有用である。
【0081】
例えば、
図13A、
図13Bに示す無人搬送車1Cは、荷台60として扇形の3段の荷台60a、60b、60cを設け、そのうち上段の荷台60aは固定し、中段の荷台60bと下段の荷台60cを、回転軸61を中心として回転可能としたものである。中段の荷台60b及び下段の荷台60cには、ギヤなどで構成される回転同期機構62が取り付けられており、これらの一方を不図示の駆動モータの回転にて開くと、ギヤの噛み合いによって他方も逆方向に同じ角度開くようになっている。
【0082】
荷台60の上面視の面積を縮小させるときは
図13A、
図13Bに示すように、上段の荷台60aの下に、中段の荷台60bと下段の荷台60cが隠れるように重なる。
【0083】
一方、荷台60の上面視の面積を拡大させるときには、例えば、エンドエフェクタ20の保持部材24を下段の荷台60cに係合させて引っ張り、扇形を開かせる。これにより中段の荷台60bも開く。したがって、
図14に示すように、扇形を開かせて荷台60の上面視の面積を拡大させることができる。
この他、本発明は種々の態様をとることができる。
【符号の説明】
【0084】
1A、1B、1C 無人搬送車
2 車体
10 ロボット
11 ロボットアーム
12 基部
13 頭部
20 エンドエフェクタ
21 延長部
22 開閉部材
23 押し部材
24 保持部材
25 切断刃
26 挟持部材
30 カメラ
31 設置具
40 荷台
41 回動軸
42 広面部
42a 広面部の外面
43 狭面部
50a、50b 荷台
51 スライダー
52 脚部
53 U字状突起
60a、60b、60c 荷台
61 回転軸
62 回転同期機構
A 通路
B 荷物、ブランクシート
B1 シート束
B2 ボトル
Bx 紐
C 荷物保管場所
D 製函機
E 受け入れ台
F ボトル置き場
L0、L1 荷台の上面視の全長
P1 待機地点
P2 荷積み地点
P3 荷下ろし地点
S0、S1 荷台の上面視の面積
θ 幅広部が水平となす角度