(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】口腔内光線療法デバイス
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20240821BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61C19/06 Z
(21)【出願番号】P 2023540671
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 US2022012399
(87)【国際公開番号】W WO2022155393
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-09-12
(32)【優先日】2021-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523245104
【氏名又は名称】ムレヴァ フォトセラピー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コーターリー, ヴェダング
(72)【発明者】
【氏名】オージャ, ジョーダン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ラザーラ, ジェイソン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シェルナット, サミュエル ジェー.
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526150(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2116453(KR,B1)
【文献】特表2008-522762(JP,A)
【文献】特表2016-538028(JP,A)
【文献】特開昭63-097175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0259310(US,A1)
【文献】特開2012-045143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔の標的領域を照射するための口腔内光線療法デバイスであって、
前記口腔内に挿入されたときに前記口腔の輪郭に適合する形状に形成され、前記口腔の前記標的領域に光を向かわせる本体部
と、
前記口腔の前記標的領域に向けられた光を出射するように構成された光出射部と、を備え、
前記本体部は、
前記口腔の両側で前記患者の歯と頬の間に受け入れられる寸法および形状に形成された一対の横方向に離れた側翼であって、前記口腔内に挿入されたときに舌に向けて面する内面と、前記内面の反対にあり前記頬に向けて面する外面とを含む
、横方向に離れた
一対の側翼と、
第1突起と前記第1突起から離れた第2突起とを有する分岐中央突起と、を含み、
前記第1突起および前記第2突起は、前記第1突起および前記第2突起の間に前記患者の舌の部分を受け入れる寸法および形状に形成され、
受け入れられる前記舌の前記部分は、前記患者の舌体の少なくとも25%であり、
前記第1突起は、前記口腔内に挿入されたときに口蓋に向けて面する外面と、前記舌の上面に向けて面する内面とを有する上部突起であり、
前記第2突起は、前記口腔内に挿入されたときに前記舌の底面に向けて面する内面と、口腔底に向けて面する外面とを有する下部突起であ
り、
前記本体部は、さらに、
前記側翼の前記内面上に配された噛みパッドを含み、前記噛みパッドは、前記側翼の前記内面から内向きに突出するとともに前記患者の上の歯と下の歯の間にかみ合わされるために前記側翼上に配置された突起から構成され、前記突起は、前記本体部が前記患者の口腔内に挿入されたとき前記側翼の位置決めをし、前記上の歯と前記下の歯の間に隙間を形成し、
前記光出射部は、前記側翼の前記内面または前記噛みパッドの遠面の少なくとも1つから光を出射するように配置された舌側面光出射部であって、前記本体部が前記口腔内に挿入されたときに前記舌側面光出射部により出射された光が前記側翼の前記内面または前記
噛みパッドの前記遠面から内向きに照射され前記歯の間を前記隙間を通じて通過して前記舌の側面を照射するようにした舌側面光出射部を含む、
口腔内光線療法デバイス。
【請求項2】
前記光出射部は、前記本体部上に位置し
、
前記光出射部は、頬側光出射部、舌上面光出射部、舌底面光出射部、口蓋光出射部、または、口腔底光出射部の少なくとも1つを含み、
前記頬側光出射部は、前記側翼の前記外面上に位置し、前記舌上面光出射部は、前記上部突起の前記内面上に位置し、前記舌底面光出射部は、前記下部突起の前記内面上に位置し、前記口蓋光出射部は、前記上部突起の前記外面上に位置し、前記口腔底光出射部は、前記下部突起の前記外面上に位置する、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項3】
前記光出射部は、前記頬側光出射部、前記舌上面光出射部、および、前記舌底面光出射部を含む、
請求項2に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項4】
前記光出射部は、前記口蓋光出射部、および、前記口腔底光出射部をさらに含む、
請求項3に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項5】
前記上部
突起は、前記上部
突起の前記
外面と前記上部
突起の前記
内面との間に位置する遠面をさらに有し、
前記光出射部は、前記遠面上に配され前記口腔内に挿入されたときに前記口腔の扁桃領域に向かう光を出射するように構成された扁桃光出射部を含む、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項6】
患者の口腔の標的領域を照射するための口腔内光線療法デバイスであって、
前記口腔内に挿入されたときに前記口腔の輪郭に適合する形状に形成され、前記口腔の前記標的領域に光を向かわせる本体部と、
前記口腔の前記標的領域に向けられた光を出射するように構成された光出射部と、を備え、
前記本体部は、
前記口腔の両側で前記患者の歯と頬の間に受け入れられる寸法および形状に形成された一対の横方向に離れた側翼であって、前記口腔内に挿入されたときに舌に向けて面する内面と、前記内面の反対にあり前記頬に向けて面する外面とを含む、横方向に離れた一対の側翼と、
第1突起と前記第1突起から離れた第2突起とを有する分岐中央突起と、を含み、
前記第1突起および前記第2突起は、前記第1突起および前記第2突起の間に前記患者の舌の部分を受け入れる寸法および形状に形成され、
受け入れられる前記舌の前記部分は、前記患者の舌体の少なくとも25%であり、
前記第1突起は、前記口腔の歯茎に向けて面する外面と、前記舌の第1側面に向けて面する内面とを有する左突起であり、
前記第2突起は、前記前記口腔の歯茎に向けて面する外面と、前記舌の第2側面に向けて面する内面とを有する右突起であ
り、
前記本体部は、さらに、
前記側翼の前記内面上に配された噛みパッドを含み、前記噛みパッドは、前記側翼の前記内面から内向きに突出するとともに前記患者の上の歯と下の歯の間にかみ合わされるために前記側翼上に配置された突起から構成され、前記突起は、前記本体部が前記患者の口腔内に挿入されたとき前記側翼の位置決めをし、前記上の歯と前記下の歯の間に隙間を形成し、
前記光出射部は、前記側翼の前記内面または前記噛みパッドの遠面の少なくとも1つから光を出射するように配置された舌側面光出射部であって、前記本体部が前記口腔内に挿入されたときに前記舌側面光出射部により出射された光が前記側翼の前記内面または前記側翼の前記遠面から内向きに照射され前記歯の間を前記隙間を通じて通過して前記舌の側面を照射するようにした舌側面光出射部を含む、
口腔内光線療法デバイス。
【請求項7】
前記光出射部は、前記本体部上に位置し
、
前記光出射部は、頬側光出射部、舌側面光出射部、口蓋光出射部、または、口腔底光出射部の少なくとも1つを含み、
前記頬側光出射部は、前記側翼の前記外面上に位置し、前記舌側面光出射部は、前記左突起または前記右突起の少なくとも1つの前記内面の中央部上に位置し、前記口蓋光出射部は、前記左突起または前記右突起の少なくとも1つの前記外面上に位置し、前記口腔底光出射部は、前記左突起または前記右突起の少なくとも1つの前記内面上に位置する、
請求項6に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項8】
前記光出射部は、前記頬側光出射部、前記舌側面光出射部、前記口蓋光出射部、および、前記口腔底光出射部を含む、
請求項7に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項9】
前記左
突起または前記右
突起の少なくとも1つは、前記内面および前記外面の間に位置する遠面をさらに有し、
前記光出射部は、前記遠面上に配され前記口腔内に挿入されたときに前記口腔の扁桃領域に向かう光を出射するように構成された扁桃光出射部を含む、
請求項6に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項10】
前記口腔の前記標的領域に向けられた前記光は、前記本体部の外部の光源により生成され、前記光が前記口腔の前記標的領域を照射するように、前記光は、前記本体部により伝搬され且つ前記本体部から出射される、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項11】
前記口腔の前記標的領域は、前記舌、前記口腔の下顎および上顎の頬側面、口蓋、口腔底、および、扁桃組織の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項12】
前記口腔の前記標的領域は、前記舌、前記口腔の下顎および上顎の頬側面、口蓋、口腔底、および、扁桃組織を含む、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項13】
前記本体部は、前記本体部の室内面上の室内開口と前記本体部の室外面上の室外開口との間に延びて、前記口蓋と前記口蓋の外部環境との間の通風路を提供する内部チャネルをさらに含み、
前記室内開口は、前記一対の側翼の前記内面に配置されている、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項14】
前記本体部は、前記光出射部を覆うコーティングを含み、
前記コーティングは、前記コーティングから出射される光の分布を変えるように配置されたレンズを含む、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項15】
前記本体部は、前記光出射部により出射される光に対して少なくとも部分的に透明な材料からなる、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項16】
前記本体部は、垂直翼をさらに含み、
前記垂直翼は、下部翼から垂直に離れた上部翼を含み、
前記垂直翼は、前記患者の前記歯と唇の間に受け入れられるような寸法および形状に形成されており、
前記垂直翼は、前記口腔内に挿入されたときに前記舌に向けて面する内面と、前記内面の反対にあり前記唇に向かって面する外面とを含み、
前記光出射部は、前記垂直翼の前記外面上に位置する唇側出射部を含み、前記本体部が口腔内に位置しているときに前記唇側出射部により出射された光が口唇粘膜を照射する、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項17】
前記本体部は、基板とコーティングとを含み、
前記光出射部は、前記基板上に実装され、前記基板から電力を受け、
前記コーティングは、前記基板および前記光出射部を覆う、
請求項1に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項18】
回路をさらに備え、
前記基板は、第1側翼回路基板および第2側翼回路基板を含む一対の側翼回路基板と、第1中央突起回路基板と、第2中央突起回路基板とを含む、複数の個別回路基板を含み、
各個別回路基板は、前記回路と連結し、前記回路から電力を受け、前記
光出射部に前記電力を供給し、
前記回路は、
前記第1側翼回路基板、前記第2側翼回路基板、前記第1中央突起回路基板および前記第2中央突起回路基板のうちの少なくとも2つ
の回路基板により受けられる電力が前記回路により個別に制御されるように、前記電力を前記少なくとも2つの前記回路基板に別個にかつ独立して供給するように構成されている、
請求項17に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項19】
前記回路は、
前記第1側翼回路基板、前記第2側翼回路基板、前記第1中央突起回路基板および前記第2中央突起回路基板のうちの少なくとも1つ
の回路基板により供給されるべき光学パワー
(mW/cm
2
)を指定する電気デバイスからの制御信号を受信し、
前記回路は、受信した前記制御信号に基づいて前記回路基板に供給される電力を制御する、
請求項18に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項20】
患者の口腔の標的領域を照射するための口腔内光線療法デバイスであって、
前記口腔内に挿入されたときに前記口腔の輪郭に適合する形状に形成され、前記口腔の前記標的領域に光を向かわせる本体部
と、
前記口腔の前記標的領域に向けられた光を出射するように構成された光出射部と、
回路と、を備え、
前記本体部は、
前記口腔の両側で前記患者の歯と頬の間に受け入れられる寸法および形状に形成された一対の横方向に離れた側翼であって、前記口腔内に挿入されたときに舌に向けて面する内面と、前記内面の反対にあり前記頬に向けて面する外面とを含む
、横方向に離れた
一対の側翼と、
第1突起と前記第1突起から離れた第2突起とを有する分岐中央突起と、を含み、
前記第1突起および前記第2突起は、前記第1突起および前記第2突起の間に前記患者の舌の部分を受け入れる寸法および形状に形成され、
前記本体部は、さらに、少なくとも1つの内部チャネルを含み、
前記少なくとも1つの内部チャネルのそれぞれは、前記本体部の室内面上の室内開口と前記本体部の室外面上の室外開口との間に延びて、前記
口腔と前記
口腔の外部環境との間の通風路を提供し、
前記少なくとも1つの内部チャネルのそれぞれの前記室内開口は、前記一対の側翼の前記内面に配置さ
れ、
前記本体部は、基板とコーティングとを含み、
前記光出射部は、前記基板上に実装され、前記基板から電力を受け、
前記コーティングは、前記基板および前記光出射部を覆い、
前記基板は、第1側翼回路基板および第2側翼回路基板を含む一対の側翼回路基板と、第1中央突起回路基板と、第2中央突起回路基板とを含む、複数の個別回路基板を含み、
各個別回路基板は、前記回路と連結し、前記回路から電力を受け、前記光出射部に前記電力を供給し、
前記回路は、前記第1側翼回路基板、前記第2側翼回路基板、前記第1中央突起回路基板および前記第2中央突起回路基板のうちの少なくとも2つの回路基板により受けられる電力が前記回路により個別に制御されるように、前記電力を前記少なくとも2つの前記回路基板に別個にかつ独立して供給するように構成されている、
口腔内光線療法デバイス。
【請求項21】
前記第1突起は、前記口腔内に挿入されたときに口蓋に向けて面する外面と、前記舌の上面に向けて面する内面とを有する上部突起であり、
前記第2突起は、前記口腔内に挿入されたときに前記舌の底面に向けて面する内面と、口腔底に向けて面する外面とを有する下部突起である、
請求項20に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項22】
前記本体部上に位置し、前記口腔の前記標的領域に向けられた光を出射するように構成された光出射部をさらに備え、
前記光出射部は、舌上面光出射部、舌底面光出射部、口蓋光出射部、または、口腔底光出射部の少なくとも1つを含み、
前記舌上面光出射部は、前記上部突起の前記内面上に位置し、前記舌底面光出射部は、前記下部突起の前記内面上に位置し、前記口蓋光出射部は、前記上部突起の前記外面上に位置し、前記口腔底光出射部は、前記下部突起の前記外面上に位置する、
請求項21に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項23】
前記光出射部は、前記舌上面光出射部、および、前記舌底面光出射部を含む、
請求項22に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項24】
前記上部
突起は、前記上部
突起の前記
外面と前記上部
突起の前記
内面との間に位置する遠面をさらに有し、
前記光出射部は、前記遠面上に配され前記口腔内に挿入されたときに前記口腔の扁桃領域に向かう光を出射するように構成された扁桃光出射部を含む、
請求項21に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項25】
前記少なくとも1つの内部チャネルは、第1内部チャネルおよび第2内部チャネルを含む、
請求項20に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項26】
前記第1内部チャネルの前記室内開口および前記第2内部チャネルの前記室内開口は、前記一対の側翼の前記内面上で、前記分岐中央突起の両側に配置されている、
請求項25に記載の口腔内光線療法デバイス。
【請求項27】
前記回路は、前記第1側翼回路基板、前記第2側翼回路基板、前記第1中央突起回路基板および前記第2中央突起回路基板のうちの少なくとも1つの回路基板により供給されるべき光学パワー(mW/cm
2
)を指定する電気デバイスからの制御信号を受信し、
前記回路は、受信した前記制御信号に基づいて前記回路基板に供給される電力を制御する、
請求項20に記載の口腔内光線療法デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概略、光線療法に関し、より詳しくは、口腔内光線療法デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光線療法は、口腔粘膜炎と称される症状を含む様々な症状の治療および痛み止めに利用され得る。光線療法は、いくつかの方法、例えば、皮膚を通じて病変部位内に光を伝達する低レベルレーザ治療または発光ダイオード(LED)アレイを介して、組織に直接に提供され得る。
【0003】
現在、例えば口腔粘膜炎を含む口腔の様々な光線療法治療症状の治療のために光線療法を適用する2つの方法が知られており、低レベルレーザ療法および発光ダイオードアレイである。口腔粘膜炎は、癌療法の最も一般的で顕著な副作用の一つである。
【0004】
低レベルレーザ療法を受け入れる障壁には、レーザ設備のコストおよび処置の労働集約性がある。治療従事者間でのばらつき、および、特殊なトレーニングの必要性という問題もある。また、患者は長時間にわたり口を開けたままにしなければならず、それは快適ではなく、粘膜炎の症状が進行するにつれて苦痛になる。
【0005】
LEDアレイは、生体組織の広い範囲を外部から照射する複数のLEDを利用する。これらのアレイからの光は、皮膚を透過して粘膜を刺激する。LEDアレイは、大きな表面積に照射するというメリットを有し、スポットレーザーシステムよりも実施するのが簡単であり、患者にとってより快適である。光線療法治療を適用するのにLEDアレイを利用する主なデメリットは、LEDアレイが頬の生体組織を透照しなければならないため投与量制御に欠けることと、口腔粘膜炎に冒されやすい扁桃腺領域および口蓋領域を含む口腔の全ての領域に到達させるのが困難であることである。また、異なる頬領域間および異なる患者間での生体組織の厚みのばらつきにより、粘膜に投与される光の投与量を正確に監視および制御するのが不可能である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、口蓋、口腔底、および、舌の1つ又は複数の面を照射するための分岐中央突起を含む口腔内光線療法デバイスを提供する。
【0007】
本開示は、また、患者の呼吸を改善し、口腔後部での生体組織の照射を改善するために患者の発声を許容する呼吸管を有する口腔内光線療法デバイスを提供する。
【0008】
本開示は、さらに、異なる生体組織が異なる光線投与量を受けるように、口腔内光線療法デバイスの異なる領域から出射される光の独立した制御を許容する口腔内光線療法デバイスを提供する。
【0009】
本明細書では、多くの特徴が本発明の実施形態に関して記述されているが、特定の実施形態に関して記述された特徴は、他の実施形態にも採用され得る。以下の記述および添付図面は、本発明のいくつかの例示的実施形態を説明している。これらの実施形態は、本発明の原理が採用され得る種々の方法のいくつかを示しているに過ぎない。本発明の種々の観点による他の目的、利点および新規な特徴は、図面とともに勘案されて、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は、必ずしも縮尺は正しくなく、本発明の種々の観点を示し、類似の参照番号は種々の図面内の同一または類似の部品を示すように使用されている。
【
図1】
図1は、口腔内光線療法デバイスの実施形態の正面斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の口腔内光線療法デバイスの背面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の口腔内光線療法デバイスの側面図である。
【
図4】
図4は、
図1の口腔内光線療法デバイスの正面図である。
【
図5】
図5は、
図1の口腔内光線療法デバイスの上面図である。
【
図6】
図6は、
図1の口腔内光線療法デバイスの底面図である。
【
図7】
図7は、
図4の口腔内光線療法デバイスの側面切欠図である。
【
図8】
図8は、口腔内光線療法デバイスの他の実施形態の上側正面斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8の口腔内光線療法デバイスの下側正面斜視図である。
【
図16】
図16は、口腔内光線療法デバイスのさらに別の実施形態の正面図である。
【
図18】
図18は、口腔内光線療法デバイスの他の実施形態の上面図である。
【
図20】
図20は、レンズを含む口腔内光線療法デバイスのさらに別の実施形態の部分透過上面斜視図である。
【
図24】
図24は、口腔内に配置された口腔内光線療法デバイスの側面切欠図である。
【
図26】
図26は、口腔内に配置された口腔内光線療法デバイスの実施形態の正面部分透過斜視図である。
【
図27】
図27は、口腔内に配置された
図25の口腔内光線療法デバイスの実施形態の正面部分透過斜視図である。
【
図28】
図28は、光ガイドを含む光線療法デバイスの側面切欠図である。
【0011】
以下、本発明が図面を参照して詳細に記述される。図面では、参照番号付きの各要素は、参照番号に付された文字とは無関係に同じ参照番号の他の要素と類似である。明細書では、特定の文字が付された参照番号は、その参照番号および文字を持つ特定の要素を示し、特定の文字が付されていない参照番号は、図面内で参照番号に付された文字とは無関係に同じ参照番号を持つ全ての要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例示的実施形態によると、生体組織照射を改善する口腔内光線療法デバイスが提供される。口腔生体組織照射は、歯の内側の口腔内において特に困難である。すなわち、口蓋、口腔底、舌縁、および/または、舌下面を照射するのは特に困難である。口腔内光線療法デバイスは、舌の部分を受け入れる分岐中央突起を用いてこれらの生体組織の照射を改善する。
【0013】
他の例示的実施形態によると、呼吸管を含む口腔内光線療法デバイスが提供される。光線療法を受けている間、しばしば他の生体組織(例えば、舌)により引き起こされる障害物により口腔後部を照射することが困難となる。呼吸管を含むことにより、光線療法デバイスは、光線療法中の患者がある種の声(「ウー」または「アー」といった)を発声できるようにすることにより、喉の後部の照射を改善する。
【0014】
さらに他の例示的実施形態によると、患者の必要に基づいて個人に合わせた光線療法を可能とする口腔内光線療法デバイスが提供される。口腔内光線療法デバイスは、異なる生体組織が異なる光線投与量を受けるように、口腔内光線療法デバイスの各領域からの光出射の個別の制御を可能とする。
【0015】
図1~7に描かれた実施形態では、患者の口腔の標的領域を照射する口腔内光線療法デバイス10が示されている。口腔内光線療法デバイス10は、(1)口腔内に挿入されたときに口腔内の輪郭に適合し、且つ、(2)口腔の標的領域に光を向けるように形成された本体部12を含む。本体部は、一対の横方向に離れた2つの側翼14と、分岐中央突起16とを含む。2つの側翼14は、口腔の両側で患者の歯と頬の間に受け入れられるような寸法および形状に形成されている。一対の横方向に隔たる2つの側翼14は、口腔内に挿入されたときに舌に向かって面する内面20と、内面20の反対にあり頬に向かって面する外面22とを含む。分岐中央突起16は、第1突起30と、第1突起30から離れた第2突起32とを有する。第1突起30および第2突起32は、第1突起30および第2突起32の間に患者の舌の一部を受け入れるような寸法および形状に形成されている。
【0016】
その舌の受け入れられる部分(すなわち、第1突起30および第2突起32の間に受け入れられる舌の部分)は、患者の舌体の少なくとも25%であり得る。ここで、「舌体」の用語は、舌尖と盲孔との間の舌の部分を意味する。他の実施形態では、舌の受け入れられる部分は、舌体の少なくとも15%、少なくとも50%、または、少なくとも75%であり得る。さらに別の実施形態では、舌の受け入れられる部分は、(1)舌小帯の一部または(1)少なくとも1つの顎下唾液管、の少なくとも1つを含む。
【0017】
図1~15に描かれた実施形態では、第1突起30は上部突起であり、第2突起32は下部突起である。上部突起30は、口腔内に挿入されたときに口蓋に向けて面する外面34と、舌の上面に向けて面する内面36とを有する。下部突起32は、口腔内に挿入されたときに舌の底面に向けて面する内面38と、口腔底に向けて面する外面40とを有する。
【0018】
ある実施形態では、口腔内光線療法デバイス10は、本体部12上に位置する光出射部50を含む。光出射部50は、口腔の標的領域に向けられた光を出射するように構成されている。光出射部50は、口腔内光線療法デバイス10が口腔内に挿入されたときに光出射部50が照射する口腔の生体組織または領域に基づいて、複数のグループに区分され得る。後に詳述するように、光出射部50のグループは、光線療法中に口腔の異なる生体組織により受ける光線投与量が変わるように個別に制御され得る。光出射部50は、頬側光出射部52、舌上面光出射部54、舌底面光出射部56、口蓋光出射部58、または、口腔底光出射部60の少なくとも1つを含み得る。光出射部50のグループは、名目上のみ分離され得る。すなわち、光出射部50の異なるグループが他の光出射部のグループとともに制御され得る。同様に、異なる光出射部のグループが独立して制御され得る。
【0019】
頬側光出射部52は、側翼14の外面22上に位置し、頬側生体組織を照射する。舌上面光出射部54は、上部突起30の内面36上に位置し、舌の上面(舌背とも称される)を照射する。舌底面光出射部56は、下部突起32の内面上に位置し、舌の底面(舌下面とも称される)を照射する。口蓋光出射部58は、上部突起30の外面34上に位置し、口蓋を照射する。口腔底光出射部60は、下部突起32の外面40上に位置し、口腔底(舌の下部)を照射する。口腔内光線療法デバイス10の異なる実施形態は、光出射部50の異なるグループを含み得る。
【0020】
ある実施形態では、光出射部50は、頬側光出射部52、舌上面光出射部54および舌底面光出射部56を含む。これにより、光出射部50は、頬生体組織、舌の上面および下の底面を照射することができる。他の実施形態では、光出射部50は、さらに口蓋光出射部58および口腔底光出射部60を含む。これらの追加的な光出射部により、口腔内光線療法デバイス10は、口蓋および口腔底も照射することができる。
【0021】
本体部12は、光出射部50により出射される光に対して少なくとも部分的に透明な材料からなり得る。例えば、本体部12は、少なくとも部分的に、ソフトで、フレキシブルで、光学的に透明なシリコーン材料からなり得る。
【0022】
上述の実施形態は本体部に収容された光出射部50を含むが、光線療法デバイス10は、標的領域に向かう光を本体部12の外部の光源から受けることとしてもよい。光源は、光を本体部12に向かわせ、本体部は、光を伝搬して口腔の標的領域を照射する光を出射し得る光ガイドとして機能する。例えば、光源は、光ガイドを介して本体部12に取り付けられ得る。この例では、光源は、外部構造物(例えば、テーブル)により支持された光ボックスであり得る。他の例では、光源は、本体部12の外表面上のタブ61に物理的に実装され得る。この例では、光源は、電源(例えば、バッテリー)を含むハウジング内に収容された1または複数の光出射部50であり得る。
【0023】
ある実施形態では、光源は、本体部12の後方に突出した端部に光ファイバケーブルを介して光学的に連結された遠隔の光源である。ある実施形態では、遠隔の光源は、1または複数のLEDまたはレーザを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本体部の1または複数の部分は、光源がそこに光学的に連結するために側翼14を越えて後方に突出している。例えば、光源は、本体部12の後方に突出した端部(タブとも称する)61に光学的に直接連結された1または複数のLEDであり得る。光源は、複数の光源からなり得、複数の光源の出力は光学パワーにおいて異なり得る。例えば、LEDは、LEDがタブ61に実質的に直接接触する形態で、タブ61に取り付けられたハウジング内の回路基板上に実装され得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本体部12は、内部反射により光を伝搬して口腔の標的領域に光を向かわせ、本体部12の長さ方向に沿う断絶またはレンズを提供することによりそこから光を出射させる光ガイドとして機能する。例えば、本体部14は、シリコーンのような光学的に透明でソフトでフレキシブルな生体適合性のあるポリマー材料からなり得る。例として、本体部12は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ナイロン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリオレフィン、または、その他の生体適合性のある熱可塑性エラストマー素材といった異なる素材からなり得る。
【0026】
光出射部50は、複数の発光ダイオード(LED)を含み得る。光出射部50は、さらに、1または複数のレーザを含み得る。当業者に理解されるように、光出射部50は、あらゆる適切な電磁波放射源であり得る。光出射部50は、600nmから1000nmの波長を有する光を出射し得る。例えば、光出射部50は、630nm、660nm、670nm、810nmまたは880nmの少なくとも1つとほぼ同じ波長を有する電磁波を出射し得る。
【0027】
光出射部の異なるグループは、あらゆる数の光出射部を含み得る。光出射部の異なるグループは、異なる特性を有する光出射部も含み得る。例えば、あるグループ内の光出射部50の位置および数は、治療される標的領域に応じて、そして、ユーザの特性(例えば、身長、体重、肌の濃さなど)に基づいて選択され得る。
【0028】
ある実施形態では、本体部12は、さらに、側翼14の内面20上に配された噛みパッド62を含み得る。噛みパッド62は、内面20から内向きに(すなわち、口腔の内部に向けて)突出した突起であり、患者の歯によりかみ合わされるため側翼14上に位置している。噛みパッド62は、本体部12が患者の口腔内に挿入されたときに側翼14の位置決めをするのに利用される。
【0029】
噛みパッド62は、さらに、舌の側面を照射するために歯の間に隙間を作るのに利用され得る。例えば、ある実施形態では、光出射部52は、側翼14の内面20または噛みパッド62の遠面66の少なくとも1つから光を出射するように位置する舌側面光出射部64を含み、本体部12が口腔内に挿入されたときに舌側面光出射部64から出射された光が(1)内面20および/または(2)遠面66から内向きに且つ奥歯の間を通って舌の側面を照射するようにしている。すなわち、噛みパッド62は、口腔内に位置したときに、歯の間に隙間を作る。内面20または遠面66の少なくとも1つから光を出射することにより、舌側面光出射部64からの光は、歯の隙間を通過し、舌の側面の生体組織を照射する。例えば、噛みパッド62は、口腔内光線療法デバイス10が口腔内に挿入されたときに噛みパッド62が奥歯にかみ合うように、側翼の遠面に向けて位置され得る。
【0030】
噛みパッド62は、光を伝搬し歯にかみ合うあらゆる適切な材料からなり得る。例えば、噛みパッド62は、本体部12と同じ材料からなり得る。
【0031】
ある実施形態では、上部30は、さらに、上部30の上面34と上部30の下面36の間に位置する遠面70を有する。この実施形態では、光出射部52は、上部突起30の遠面70上に位置する、あるいは、遠面70から光を出射する扁桃光出射部72を含む。扁桃光出射部72は、口腔内に挿入されたときに口腔の扁桃領域に向けられた光を出射するように構成されている。扁桃領域は、扁桃、口蓋垂または軟口蓋の少なくとも1つからなる口腔後部を含み得る。
【0032】
扁桃光出射部72は、他の光出射部からの光に比べて、より集束された光を本体部12から出射するように構成され得る。例えば、扁桃光出射部72は、扁桃光出射部72が他のグループの光出射部よりもより指向された光を出射させるための特性を有し得る。
【0033】
ある実施形態では、上部突起30の内面36は、内面36(例えば、舌上面光出射部54)から出射された光が舌背と舌の側面の少なくとも一部を照射するように、舌背の輪郭に沿う曲率を有する。例えば、上部突起30の内面36から出射された光は、舌背および舌の側面の上部を照射し得る。
【0034】
同様に、下部突起32の内面38は、内面38(例えば、舌底面光出射部54)から出射された光が舌下面と舌の側面の少なくとも一部を照射するように、舌下面の輪郭に沿う曲率を有し得る。例えば、下部突起32の内面38からの光は、舌下面および舌の側面の底部を照射し得る。
【0035】
図16および
図17に描かれた実施形態に移り、上部突起および下部突起の代わりに、第1突起30は左突起および第2突起32は右突起であり得る。第1突起30は、口腔の歯茎に向けて面する外面34と、舌の第1側面(すなわち一側面)に向けて面する内面36とを有する。第2突起32は、口腔の歯茎に向けて面する外面40と、舌の第2側面(すなわち他の一側面)に向けて面する内面38とを有する。
【0036】
図1~15に描かれて上述された実施形態と同様に、口腔内光線療法デバイス10は、左突起30および右突起32を含んだときの本体部12上に位置する光出射部50も含み得る。光出射部52は、頬側光出射部52、舌側面光出射部64、口蓋光出射部58、口腔底光出射部60の少なくとも1つを含み得る。頬側光出射部52は、側翼14の外面22上に位置する。舌側面光出射部64は、左突起30または右突起32の少なくとも1つの内面36、38の中央部上に位置する。口蓋光出射部58は、左突起30または右突起32の少なくとも1つの外面34、40上に位置する。口腔底光出射部60は、左突起30または右突起32の少なくとも1つの外面34、40上に位置し得る。
【0037】
例えば、口蓋光出射部58は、左突起30および/または右突起32の外面34、40の多くとも上半分、上から3分の1、上から4分の1上に位置し得る。同様に、口腔底光出射部60は、左突起30および/または右突起32の外面34、40の多くとも下半分、下から3分の1、下から4分の1上に位置し得る。このように、口蓋光出射部58および口腔底光出射部60は、左突起30または右突起32の1または複数上に収容され得る。
【0038】
ある実施形態では、光出射部50は、頬側光出射部52、舌側面光出射部64、口蓋光出射部58および口腔底光出射部60を含む。左突起30および右突起32の少なくとも1つは、内面36および外面34の間に位置する遠面70をさらに有し得る。このような実施形態では、光出射部50は、遠面70に配置された扁桃光出射部72を含む。
【0039】
上述の通り、口腔の標的領域は、舌、口腔の下顎および上顎の頬側面、口蓋、口腔底、扁桃組織の少なくとも1つを含み得る。ある実施形態では、口腔の標的領域は、舌、口腔の下顎および上顎の頬側面、口蓋、口腔底、扁桃組織を含む。後に詳述するように、口腔内光線療法デバイス10は、異なる生体組織に対する光学投与量を変えることにより生体組織にわたり不均等に光線療法を適用し得る。この光学投与量の相違は、それらの生体組織における現在の医療的事象(例えば、傷害、炎症など)に依存し得る。あるいは、この相違は、そのような事象を起こす生体組織の統計学的な傾向に依存し得る。この例では、光線療法は、予防治療として利用され得る。
【0040】
すなわち、標的領域に伝達される光学パワーの特定の投与量は、少なくとも2つの標的領域の間で異なり得る。例えば、標的領域は、扁桃領域、口腔の頬組織、硬口蓋、軟口蓋または舌の少なくとも1つを含み得る。異なる生体組織に伝達される光学パワーの特定の投与量は、異なる生体組織の治療に既知の効果的な光学投与量に基づいて調整され得る。例えば、扁桃領域への特定投与量は、硬口蓋に伝達される光学パワーの特定投与量とは異なり得る。
【0041】
各標的領域への光学パワーの特定投与量は、10ミリワット毎平方センチメートルと150ミリワット毎平方センチメートルの間であり得る。各標的領域が受ける光学パワーの特定投与量は、標的領域間で20%を越えては変化しなくてもよい。
【0042】
口腔内光線療法デバイスは、多くの応用で利用され得、そのうちのいくつかの例は、口腔粘膜炎、急性壊死性歯肉炎、歯周病、開口障害、口腔手術からの回復時間の減少、歯列矯正への光伝達、および、例えば化学うがい薬を活性化するための光線力学療法を含む。
【0043】
図示された実施形態に示されるように、本体部12は、垂直翼92を含み得る。垂直翼92は、下部翼96から垂直に離れた上部翼94を含む。垂直翼92は、患者の歯と唇の間に受け入れられるような寸法および形状に形成されている。垂直翼92は、舌に向けて面する内面98と、内面98の反対の外面100とを含む。外面100は、口腔内に挿入されたときに唇に向かって面する。この実施形態では、光出射部は、垂直翼92の外面100上に位置する唇側出射部102を含み得、本体部12が口腔内に位置しているときに唇側出射部102から出射された光が口唇粘膜を照射するようにしている。
【0044】
図8~17に描かれた実施形態では、口腔内光線療法デバイス10は、本体部12の室内部上の開口82と本体部12の室外部の間に延びた少なくとも1つの内部チャネル80を含む。内部チャネル80は、口腔と口腔の外部環境との間の通風路を提供する。通風路は、口腔内光線療法デバイス10を利用した治療中に患者の呼吸を改善させる。
【0045】
図8~17に描かれた実施形態では、本体部の室内部上の内部チャネル80の開口82は、第1突起30または第2突起32の少なくとも1つに配置されている。
図18および
図19に描かれた実施形態では、本体部の室内部上の内部チャネル80の開口82は、少なくとも1つの側翼14の内面20上に配置されている。例えば、描かれた実施形態では、1つのチャネル80に対して1つの開口82を有する、各側翼14に配された2つの内部チャネル80がある。
【0046】
内部チャネル80は、口腔内光線療法デバイス10が口腔内に配置されたときに呼吸管として機能するように構成され得る。内部チャネル80を含む実施形態では、患者は、光線療法のために軟組織を露出するため喉の後部を開きつつ、息を吐きだすことができる。例えば、患者は、治療中に喉の後部をより完全に開くために息を吐きだす際に「オー」と言うことが求められ得る。内部チャネル80は、本体部12と同じまたは異なる材料から形成され得る。
【0047】
ある実施形態では、第1突起30または第2突起32の少なくとも1つは、内面36、38上に表面不規則部86を含む。表面不規則部86は、患者が分岐中央突起16の間に舌を位置決めする際に表面不規則部86を感じることができるようにして、第1突起30および第2突起32の内面36、38の間の舌の位置決めを補助するように構成されている。表面不規則部86は、舌が第1突起30および第2突起32の内面36、38の間に挿入されたときに、表面不規則部86が舌のみにより検知可能(すなわち、患者が舌のみにより感じることができる)なように、第1突起30および/または第2突起32上に位置し得る。例えば、表面不規則部86は、表面テクスチャ、凹部、凸部、または、表面輪郭の少なくとも1つであり得る。表面不規則部86は、ユーザが触感を利用して検知可能なあらゆる適切な構造であり得る。表面不規則部86は、舌の全長または十分な部分が本体部12から出射された光により照射されるように患者の舌が分岐中央突起16内に挿入されたときにのみ検知可能であるように位置し得る。
【0048】
他の実施形態では、口腔内光線療法デバイス10は、舌の配置を検出するための少なくとも1つのセンサを含む。もし舌がセンサにより検出されなければ、口腔内光線療法デバイス10は、舌が不適切に置かれていることを示す通知(例えば、音、振動、または、光)を発行し得る。
【0049】
図18および
図19に描かれた実施形態では、本体部12は、光出射部50を覆うコーティング90を含む。コーティング90は、コーティング90から出射される光の分布を変えるように位置するレンズを含み得る。例えば、コーティング90は、光出射部50による生体組織照射の均一性を改善するためにコーティング90から出射される光の拡散を増加させ得る。これに代えて、または、これに加えて、コーティング90は、本体部12が口腔内に配置されたときに特定の位置(例えば、特定の生体組織に関して)を好ましく照射するためにコーティングのいくつかの領域から出射される光の指向性を高め得る。ある実施形態では、コーティング90は、口腔内光線療法デバイス10から出射された光を制御するように断絶またはレンズを含む。例えば、
図20~23に示された実施形態では、口腔内光線療法デバイス10は、遠面70から出射される光の分布を変更するレンズ108を含む。
【0050】
図20~23に示された実施形態では、本体部12は、基板110およびコーティング90を含む。光出射部50は、基板110上に実装され、さらに、基板110から電力を受ける。コーティング90は、基板110および光出射部50を少なくとも部分的に覆う。
図22に示されるように、口腔内光線療法デバイス10は、回路112をさらに含み得、基板110は、一対の側翼回路基板118(すなわち、第1側翼回路基板120および第2側翼回路基板122)、第1中央突起回路基板124、第2中央突起回路基板126を含む複数の個別回路基板116を含み得る。基板90は、回路基板116を支持する支持構造125を含み得る。回路基板116は、フレキシブルプリント回路基板のようなプリント回路基板であり得る。支持構造125は、コーティング90が塗布される前に回路基板116を支持し得る。コーティング90は、支持構造により支持された回路基板116上にオーバーモールドされ得る。各個別回路基板116は、回路112と連結し、回路112から電力を受け、光出射部50に電力を供給する。例えば、光出射部50は、回路基板116に取り付けられ得、回路基板116は、口腔内光線療法デバイス10から出射される光の方向を制御するように形成され得る。
【0051】
ある実施形態では、回路112は、少なくとも2つの回路基板116により受けられる電力が回路112により個別に制御されるように、電力をこの少なくとも2つの回路基板116に別個にかつ独立して供給し得る。例えば、回路112は、回路基板116の少なくとも1つにより供給されるべき光学パワーを指定する電気デバイスからの制御信号を受信し得る。回路112は、受信した制御信号に基づいて回路基板116に供給される電力を制御し得る。例として、患者が口蓋に傷害を有するが頬に傷害を有しない場合、外部デバイスは、頬(すなわち頬組織)に比べて高い光学パワーの投与量が口蓋に必要とされることを回路112に伝達するために利用され得る(制御信号を介して)。この例では、回路112は、口蓋光出射部58が側翼回路基板118の光出射部50に比べて多くの光学投与量を供給するように第1中央突起回路基板124に電力を供給し得る。
【0052】
回路112は、光出射部50のグループに供給される電力の総量を変えることにより光出射部50の異なるグループにより供給される光学投与量を変え得る。例えば、電力を供給するとき、回路112は、回路基板116に同じレベルの電力を供給し得るが、回路112は、電力が各基板116に供給される時間量を変え得る。例として、回路112は、異なる基板116に供給される時間の総量を制御するパルス幅変調を利用し得る。
【0053】
回路112は、様々な実装を有し得る。例えば、回路112は、プロセッサ(例えば、CPU)、プログラマブル回路、集積回路、メモリ、および、I/O回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロコントローラ、複合プログラマブルロジックデバイス、その他のプログラマブル回路などのあらゆる適切なデバイスを含み得る。回路112は、RAM(Random-Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、または、その他のあらゆる適切な媒体のような、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体も含み得る。後述する方法を実施するための命令は、非一時的コンピュータ読み取り可能媒体内に保存され、回路112により実行される。回路112は、コンピュータ読み取り可能媒体およびネットワークインターフェイスに、システムバス、マザーボードを介してまたは当技術分野で公知の他のあらゆる適切な構造を利用して、通信可能に連結され得る。回路112は、ネットワークインターフェイスを介して光源14を制御するためのパラメータを受信し得る。これに代えて、または、これに加えて、回路112は、ネットワークインターフェイスから異なる生体組織のための特定の光学投与量を受信し得、回路112は、受信した光学投与量がそれぞれの生体組織により受けられるように光源14を制御し得る。
【0054】
図24~
図27は、口腔130内に配置された口腔内光線療法デバイス10の実施形態を示す。上述の通り、舌の受け入れられる部分は、患者の舌体132の少なくとも25%であり得る。ここで、「舌体」の用語は、舌尖と盲孔との間の舌の部分を意味する。他の実施形態では、舌の受け入れられる部分は、舌体の少なくとも15%、少なくとも50%、少なくとも75%を含む。さらに別の実施形態では、舌の受け入れられる部分は、(1)舌小帯の一部または(1)少なくとも1つの顎下唾液管、の少なくとも1つを含む。
【0055】
上述の通り、口腔内光線療法デバイス10は、本体部12の外部の光源から、標的領域に向けられた光を受け得る。
図28に示された実施形態では、光出射部50は、本体部12の外面上のタブ61に物理的に実装されている。光出射部50により出射された光は、光出射部50から本体部12の発光面142へと光を向かわせる光ガイド140により受けられる。例えば、光ガイド140は、口腔の標的領域を照射する光を伝搬し出射する光ガイドとして機能する本体部12の一部分であり得る。図示された実施形態は単一の光ガイドしか示していないが、複数の光ガイドが標的領域に光を出射するのに利用され得る。光ガイド140は、上述の通り、フレキシブル回路基板にシリコーンでオーバーモールドされ得る。光ガイド140の幾何学的配置は、また、回路基板116上に保持する支持構造125に一体化され得る。
【0056】
あらゆる実施形態では、反射性コーティング24が側翼の外向きに面する側面を通過する光を反射するために側翼の内向きに面する側面上に設けられ得る。
【0057】
あらゆる実施形態では、側翼は、口腔の下顎および上顎の頬側面に光を出射するためそれらの頬側面に適合する曲率を有し得る。
【0058】
明細書および特許請求の範囲に開示された全ての範囲および比率の制限は、あらゆる方法で組み合わせられてもよい。特段の言及がない限り、「a」「an」および/または「the」への参照は、1つよりも1以上を含み得、そして、単数形のアイテムへの参照は、また、複数形のそのアイテムを含み得る。
【0059】
本発明は、ある実施形態または複数の実施形態に関して開示され且つ説明されているが、当業者は、本明細書および添付図面を読み且つ理解することで均等な代替及び変更を想到するであろう。特に上記要素(部品、アセンブリ、デバイス、組成など)により発揮される種々の機能に関して上記要素を表現するのに利用された用語(「手段」の参照を含む)は、特段の指定が無い限り、たとえそれがその機能を発揮するとして本発明の例示的実施形態または複数の実施形態で開示された構造物とは構造的には均等ではなくても、その説明された要素のその特定の機能を発揮するあらゆる要素に相当することを意図されている(すなわち、機能的均等)。さらに、本発明の特定の特徴が数例の実施形態のうちの1または複数の実施形態のみで上述されているかもしれないが、そのような特徴は、あらゆる任意または特定の応用に望まれ且つ利点を得るように、他の実施形態の1または複数の他の特徴と組み合わせ得る。