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特許7541274α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤及びその調製方法と応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤及びその調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/00 20060101AFI20240821BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20240821BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C08F4/00
C08F2/50
G03F7/031
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023542894
(86)(22)【出願日】2023-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-23
(86)【国際出願番号】 CN2023079014
(87)【国際公開番号】W WO2023174056
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202210246991.6
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523266844
【氏名又は名称】内蒙古揚帆新材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】金明
(72)【発明者】
【氏名】廖文
(72)【発明者】
【氏名】郭峰
(72)【発明者】
【氏名】李敬東
(72)【発明者】
【氏名】楊成双
(72)【発明者】
【氏名】林立東
(72)【発明者】
【氏名】樊彬
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第114591452(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114591241(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114394990(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101974112(CN,A)
【文献】国際公開第2006/034966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/00
C08F 2/50
G03F 7/031
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤であり、
α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤Iは、二重結合のα-アミノケトン類
を有する小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bとを、チオール-エンクリック反応
によって調製したものであり、
二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aの構造は、下記式(1)で示
される、
【化1】
(式中、R 、R は、C 1- 18 アルキル基、-(CH -C -C シクロア
ルキル基または-(CH2) -フェニル基から独立に選択され、ここで、r=0、1、
2、3、4であり、
Xは、アルキル基又は空であり、Xがアルキル基である場合、X中の1つまたは複数の
-CH2-はそれぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-または-O-C
-CH(OH)-CH -O-に置換されてもよい。Xは空とはXがないことを示
し、S原子は二重結合により直接結合している、すなわちこの時、二重結合を含むα-ア
ミノケトン類を有する小分子開始剤Aの構造一般式は以下の通りである

ことを特徴とするα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤。
【請求項2】
Xが空である場合、RとRは、いずれもメチル基であり、すなわち二重結合を含む
α-アミノケトン類を有する小分子開始剤Aの構造一般式は以下の通りである、
ことを特徴とする請求項に記載のα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤。
【請求項3】
ポリチオール系化合物Bは、トリチオール又はテトラチオールであることを特徴とする
請求項1に記載のα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤。
【請求項4】
ポリチオール系化合物Bは、B1-B6のうちの1種以上から選択され、B1-B6の
分子構造式を式(2)で示されることを特徴とする請求項に記載のα-アミノケトンを
有する多官能高分子光開始剤。
【化2】
【請求項5】
α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤Iは、式(3)-式(7)のいずれか
一つであり、
式(3)-式(7)の構造式を以下で示されることを特徴とする請求項1に記載のα-
アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤
を調製する方法であり、その方法は、
二重結合のα-アミノケトン類小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bとを混合し
て、炭素-炭素二重結合のモル重量とポリチオール系化合物Bにおけるチオール基のモル
重量は等しいステップ1と、
アゾビスイソブチロニトリルまたは過酸化ジベンゾイル系熱開始剤を加え、アゾビスイ
ソブチロニトリルまたは過酸化ジベンゾイル系熱開始剤の添加量はステップ1の全系質量
の0.5%~3%であり、窒素ガスの雰囲気下で十分に攪拌した後、加熱反応2~12h
、反応温度は60~100℃であり、赤外吸収スペクトルによりチオールの吸収ピークを
監視し、チオールの吸収ピークが消失すると反応が終了するステップ2と、
得られた溶液を再結晶してα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤を得るステ
ップ3と、を含むことを特徴とするα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤の調
製方法。
【請求項7】
放射線硬化性光開始剤として用いられる又は化学合成における中間体又は原料又は試薬
として用いられる請求項1に記載のα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤の応
用。
【請求項8】
放射線硬化性光開始剤の誘起光源は、紫外光及び可視光のうちの1種以上から選択され
ることを特徴とする請求項に記載の応用。
【請求項9】
放射線硬化性光開始剤は0.01‐30重量部のα-アミノケトンを有する多官能高分
子光開始剤と、100重量部のオレフィン結合を有する不飽和化合物とを含むことを特徴
とする請求項に記載の応用。
【請求項10】
放射線硬化性光開始剤は、0.5‐10重量部のα-アミノケトンを有する多官能高分
子光開始剤と、100重量部のオレフィン結合を有する不飽和化合物とを含むことを特徴
とする請求項に記載の応用。
【請求項11】
オレフィン結合を有する不飽和化合物とは、ラジカル重合反応によりオレフィン結合が
架橋された化合物又は混合物であり、
オレフィン結合を有する不飽和化合物は、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー、
または3つの混合物、または共重合体、または3つの水性分散体から選択されることを特
徴とする請求項10に記載の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新材料有機化学品の技術分野に関し、具体的には、α-アミノケトンを有する多
官能高分子光開始剤及びその調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化技術は液体の感光性樹脂が光誘起下で重合して固体になる過程であり、高効率で
迅速、経済的で省エネ、グリーン環境保護などの利点があり、接着剤、光硬化塗料とイン
ク、フォトレジスト、3Dマイクロアーキテクチャ、生物医薬などの分野に広く応用され
ている。光開始剤は光重合過程全体を制御する重要な要素であり、その活性は光硬化速度
、硬化度及び最終製品の性能に直接影響する。特に人体と直接接触する食品と医薬品のパ
ッケージや、子供のおもちゃなどは、その残余の光開始剤の移動、臭気などに高く要求さ
れる。そのため、低毒性、低移動、低臭性の光開始剤の開発が常に業界の目標であり、よ
り環境に優しく、より安全であることは常に求められている。
【0003】
光開始剤はラジカル型とカチオン型に分けることができ、その中で、ラジカル型光硬化
の本質は、光開始剤が光放射下で急速に分解し、活性ラジカルが生じ、二重結合を持つ光
硬化樹脂と反応性希釈剤の連鎖反応重合架橋を反応させることである。
【0004】
多くの種類の光開始剤の中で、α-アミノケトン類光開始剤は、開始効果が良く、構造
が簡単であり、合成が容易であるなどの特徴により、広く応用されている光開始剤の一つ
となり、下記式に示される光開始剤907などの代表的な開始剤がある。
【化1】
【0005】
光硬化過程において、光開始剤907は他の材料との良好な互換性があるため、インク
、ペンキ、化粧品など多くの業界に広く応用されている。しかし、特に食品、薬品、衛生
用品などのパッケージ印刷分野では、光開始剤907には一定の毒性が存在する。例えば
、光開始剤907はアクリル酸エステル系の急速な硬化を誘起し、光硬化が完了すると、
その一部の光開始剤は、アクリル酸エステルの架橋ネットワークに物理的に包まれて、残
留した光開始剤となり、熱水、溶剤、油脂などの物質に接触するとき、分子の移動浸透ま
たは抽出が発生するため、光開始剤907は生物毒性に高く要求される分野で使用が制限
されている。
【0006】
本発明人は、光開始剤907に存在する不足点について深く研究し、上述の技術問題を
解決し、改質された光開始剤の調製方法とその応用を提供することに取り組んだ。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術に存在する問題に対して、本発明の目的は、α-アミノケトンを有する多官能
高分子光開始剤及びその調製方法と応用を提供することにあり、本発明が提供する光開始
剤Iは、光開始剤907に代えることができ、光開始剤907の応用範囲よりも広い。
【0008】
上記問題を解決するために、本発明は以下の技術的手段を採用し、
α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤であり、
α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤Iは、二重結合のα-アミノケトン類
を有する小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bとを、チオール-エンクリック反応
によって調製したものである。
【0009】
好ましくは、α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤Iの分子量は1000以
上である。
【0010】
好ましくは、二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aは、下記式(2
)で示される。
【化2】
(式中、R、Rは、C1-18アルキル基、-(CH-C-Cシクロア
ルキル基または-(CH2)-フェニル基から独立に選択され、ここで、r=0、1、
2、3、4であり、
Xは、アルキル基又は空であり、Xがアルキル基である場合、X中の1つまたは複数の
-CH2-はそれぞれ独立に-O-、-CO-、-COO-、-OCO-または-O-C
-CH(OH)-CH -O-に置換されてもよい。
【0011】
好ましくは、Xが空である場合、RとRは、いずれもメチル基である。
【0012】
好ましくは、ポリチオール系化合物Bは、トリチオール又はテトラチオールである。
【0013】
好ましくは、ポリチオール系化合物Bは、B1-B6のうちの1種以上から選択され、
B1-B6の分子構造式は、下記式(3)で示される。
【化3】
【0014】
好ましくは、α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤Iは、式(4)-式(8
)のいずれか一つであり、
式(4)-式(8)の構造式を以下で示される。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0015】
α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤を調製する方法であり、その調製方法
は、
二重結合のα-アミノケトン類小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bとを混合し
て、炭素-炭素二重結合のモル重量とポリチオール系化合物Bにおけるチオール基のモル
重量は等しいステップ1と、
アゾビスイソブチロニトリルまたは過酸化ジベンゾイル系熱開始剤を加え、アゾビスイ
ソブチロニトリルまたは過酸化ジベンゾイル系熱開始剤の添加量はステップ1の全系質量
の0.5%~3%であり、窒素ガスの雰囲気下で十分に攪拌した後、加熱反応2~12h
、反応温度は60~100℃であり、赤外吸収スペクトルによりチオールの吸収ピークを
監視し、チオールの吸収ピークが消失すると反応が終了するステップ2と、
得られた溶液を再結晶してα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤を得るステ
ップ3と、を含む。
【0016】
好ましくは、α-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤は、放射線硬化性光開始
剤として用いられる又は化学合成における中間体又は原料又は試薬として用いられる応用
【0017】
好ましくは、放射線硬化性光開始剤の誘起光源は、紫外光及び可視光のうちの1種以上
から選択される。
【0018】
好ましくは、放射線硬化性光開始剤は、0.01‐30重量部のα-アミノケトンを有
する多官能高分子光開始剤と、100重量部のオレフィン結合を有する不飽和化合物とを
含む。
【0019】
好ましくは、放射線硬化性光開始剤は、0.5‐10重量部のα-アミノケトンを有す
る多官能高分子光開始剤と、100重量部のオレフィン結合を有する不飽和化合物とを含
む。
【0020】
好ましくは、オレフィン結合を有する不飽和化合物とは、ラジカル重合反応によりオレ
フィン結合が架橋された化合物又は混合物であり、
オレフィン結合を有する不飽和化合物は、モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー、
または3つの混合物、または共重合体、または3つの水性分散体から選択される。
【0021】
好ましくは、放射線硬化性光開始剤は、補助剤をさらに含み、オレフィン結合(C=C)
を有する不飽和化合物と補助剤との重量比が100:0~4.5である。
【0022】
好ましくは、放射線硬化性光開始剤の使用工程は、具体的には、
オレフィン結合を有する不飽和化合物、放射線硬化光開始剤と補助剤を混合し、十分に
攪拌して重合系を形成し、オレフィン結合を有する不飽和化合物、放射線硬化光開始剤と
補助剤の質量比は100:0.5-1:0-4.5であるステップ1と、
放射線硬化性光開始剤を用いて光源照射重合系を反応させるステップ2と、
スペクトル分析法を用いてその特徴的なピークの変化により重合転化率を分析するステ
ップ3と、を含む。
【0023】
好ましくは、補助剤としては、無機充填剤、有機充填剤、着色剤、溶剤及び他の添加剤
のうちの1種以上を含むが、これらに限定されない。
【0024】
好ましくは、他の添加剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、レベリング剤、
消泡剤を含み、および/または、着色剤は顔料または染料から選択される。
【0025】
好ましくは、モノマーとしては、プロピオル酸メチル、アクロレイン、アルケン、共役
ジオレフィン、スチレン、無水マレイン酸、無水フマル酸、酢酸ビニル、ビニルピロリド
ン、ビニルイミダゾール、メタクリル酸、例えばメタクリルアミドまたはハロゲン化ビニ
ル及びハロゲン化ビニリデンのようなメタクリル酸誘導体を含むが、これらに限定されな
い。
【0026】
好ましくは、オリゴマー及びプレポリマーは、メタクリルアミド官能基のメメタクリル
酸共重合体、ポリウレタンプロピオル酸メチル、ポリエチレンテレフタラートプロピオル
酸メチル、不飽和ポリエチレンテレフタラート、ポリエーテルポリオールプロピオル酸メ
チル、シロキサンプロピオル酸メチル、エポキシ樹脂プロピオル酸メチル、及びこれらの
物質の水溶性又は水分散性の類似物を含むが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0027】
従来技術と比べて、本発明の利点は以下の通り、
第1は、本発明が提供する光開始剤Iは従来の光開始剤907とほぼ一致する光開始性
能を有し、光開始剤Iは光開始剤907に取って代わることができ、光開始剤Iの応用範
囲は光開始剤907より広く、光開始剤Iは例えば食品、薬品包装コーティング、接触性
生物医薬材料のような生物毒性に高く要求される分野に応用することができる。
【0028】
第2は、本発明は2-モルホリノ-2-メトキシフェニルアセトン誘導体をエーテル結
合又はエステル結合を介して二重結合基に結合し、更にポリチオールとチオール-エンク
リック反応によって光開始剤Iを調製することで、反応物の転化率は100%に近いとと
もに、該調製方法は簡単で、グリーン環境保護、原料の入手が容易で、量産を実現しやす
い。
【0029】
第3は、本発明で調製される光開始剤Iの分子量は1000以上であり、該光開始剤I
は光硬化系の硬化を反応させる際に、光開始剤907と比較して、光開始剤I又は光分解
後の残基の移動性及び臭気も明らかに低下し、さらに、光開始剤Iを生物毒性に高く要求
される分野に応用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る光開始剤1がCDClにおけるH NMRスペクトルである。
図2】本発明に係る光開始剤3がCDClにおけるH NMRスペクトルである。
図3】本発明に係る等質量光開始剤1と光開始剤907はTMPTAモノマーを反応させる光重合動力学グラフである。
図4】本発明に係る等モル重量光開始剤1と光開始剤907はTMPTAモノマーを反応させるPhoto-DSCグラフである。
図5】本発明に係る光開始剤1と光開始剤907のDSC熱安定性グラフである。
図6】本発明の実施例2に調製された二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤AがCDClにおけるH NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
【化9】
式中に、Xがアルキル基である場合、二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光
開始剤A、ポリチオール系化合物Bは、何れも市販品である。
【0032】
(実施例1)二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aの調製
【化10】
二層反応ボトルに2-モルホリノ-4’-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-メチル
プロピオフェノン(0.1mol)30.9gとヘプタン300mlを添加し、さらに二
層反応ボトルに50%質量濃度の水酸化ナトリウム水溶液12gとテトラブチルアンモニ
ウムブロミド0.3gを滴下し、凝縮水を開き、反応温度を室温25℃で制御し、窒素ガ
ス雰囲気の保護下、臭化アリルのヘプタン溶液50mlを滴下し、臭化アリルは0.12
molであり、滴下後、反応系温度はすぐに上昇し、滴下温度を30℃以下に制御し、約
30分間滴下完了し、さらに5時間常温攪拌反応し、反応終了まで反応プレートにより監
視し、脱イオン水で2回洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ヘプタン溶媒と過
剰な臭化アリルを遠心脱水し、真空オーブンで24時間後、ねばねばな浅黄色サンプルを
得て、浅黄色サンプルは直接使用することができる。
【0033】
二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aの収率は98%であり、MS
(C1927NOS):m/e:349.49、実験結果は、350.50(M+H
)。
【0034】
(実施例2)二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aの調製
【化11】
二層反応ボトルに2-モルホリノ-4’-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-メチルプ
ロピオフェノン(0.1mol)30.9gとジクロロメタン(無水)300mlを添加
し、さらに12.2gのトリエチルアミン(0.12mol)を添加し、低温サイクルを
開き、二層反応ボトル内の温度を0℃に下げ、窒素ガス雰囲気の保護下、二層反応ボトル
にメタンメタンスルホニルクロリド(0.105mol)または塩化トシル(0.105
mol)のジクロロメタン溶液50mlを滴下し、反応系の温度はすぐに上昇し、滴下温
度を5℃以下に制御し、約30分間滴下完了し、さらに30分常温攪拌反応し、室温に上
げて2時間再反応し、反応終了まで反応プレートにより監視し、0.1mol/Lの水酸
化ナトリウム溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、脱イオン水で2回洗浄
した後、乾燥後溶媒を直接遠心脱水し、真空オーブンで24時間後、ねばねばな浅黄色サ
ンプルを得て、浅黄色サンプルは直接使用することができる。
【0035】
がメチル基である場合、生成物はメタンスルホニル基に保護された生成物であり、
中間体の生成物収率は98%であった。MS(C1725NO):m/e:38
7.51;実験結果は、388.52(M+H);HNMR(CDCl,400M
Hz):8.44 (d,2H);7.28(d,2H);4.32(t,2H,CH
);3.63(t, 4H,CH);3.28(t,2H,CH);2.96(s,
3H,CH);2.50(t,4H,CH);1.24(t,6H,CH)。
【0036】
がp-トルエン基である場合、生成物はp-トルエンメタンスルホニルに保護され
た生成物であり、第1中間体(I)-bの生成物収率は98.5%であった。MS(C
29NO):m/e:463.61;実験結果:464.62(M+H)。
【0037】
メタンスルホニル基に保護された生成物を用いて二重結合のα-アミノケトン類を有す
る小分子光開始剤Aを調整する
【化12】
【0038】
500MLの三つ口フラスコに0.1molの水素化ナトリウムを添加し、さらに三つ
口フラスコに200MLのテトラヒドロフラン(THF)(無水)またはDMFを添加し
、窒素ガス雰囲気の保護下、室温で100MLのTHFまたはDMFに溶解した38.7
グラムの中間体(0.1mol)を三つ口フラスコに滴下し、5時間攪拌反応させ、反応
終了するまでTLCにより監視し、減圧濃縮により溶媒を除去し、または反応系を100
0MLの水に直接注ぎ、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水と脱イオン水で洗浄し、無水硫
酸ナトリウムで乾燥し、蒸発乾燥後エタノール/水で再結晶し、淡黄色粉末生成物を得た
。製品に二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤PI-1の収率は78.
5%であった。MS(C1621NOS):m/e:291.13;実験結果:29
2.14(M+H)。
【0039】
生成物のH NMRスペクトルは図6に示す。ここで、8.52と7.35ppmに
おける4つの水素はベンゼン環上の水素であり、6.57と5.57ppm箇所は、二重
結合上の3つの水素であり、3.69及び2.57ppm箇所はモルホリン環上の8つの
水素であり、1.31ppm箇所は、2つのメチル基上の6つの水素の信号ピークがあり
、さらに生成物の合成に成功したことを示している。
【0040】
(実施例3)チオール-エンクリック反応を用いた目標生成物光開始剤1の調製
【化13】
【0041】
100mlの三つ口フラスコに10.47g(30mmol)の二重結合のα-アミノ
ケトン類を有する小分子光開始剤Aを添加し、さらに三つ口フラスコに3.98gのポリ
チオール系化合物B(10mmol)と0.145gのアゾビスイソブチロニトリルを加
えて真空引きし、窒素ガス充填を3回循環した後、三つ口フラスコを50℃の油浴に入れ
、30分間攪拌した後、70℃に昇温し、2時間反応させ、90℃で1時間再反応させ、
赤外分光スペクトルにより監視し、2570cm-1箇所のチオールのピークが消失し、
薄層クロマトグラフィにより原材料がないことを発見した後、反応が終了し、二重結合の
α-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bとを、チオール
-エンクリック反応によって目標生成物光開始剤1を調製した。
【0042】
反応完了後、反応完了後の混合物を精製することなく、反応後の混合物をH NMR
で製品を試験することができ、核磁気共鳴スペクトルは図1に示すように、図1から、ア
ゾビスイソブチロニトリルのフラグメントピークが少量ある以外はすべて生成物ピークで
あり、チオール-エンクリック反応によって反応物をほぼ目標生成物100%に転化でき
る強みを示している。
【0043】
H NMR(CDCl,400MHz): 8.50(d,J=8.0Hz,6H
,Ph); 7.28(d,J=8.0Hz,6H,Ph); 4.06(s,6H,
CH); 3.70 (m,18H,CH); 3.55 (t,J = 6.0H
z,6H, CH); 3.20(t,J=6.6 Hz,6H,CH); 2.7
6(t,J=7.4 Hz,6H,CH);2.59 (m,24H,CH);1.
86(m,6H,CH); 1.48(q,2H, CH); 1.33(s,18
H,CH);0.89(t,3H,CH)。
【0044】
(実施例4)チオール-エンクリック反応を用いた目標生成物光開始剤2の調製
【化14】
【0045】
100mlの三つ口フラスコに13.96g(40mmol)の二重結合のα-アミノ
ケトン類を有する小分子光開始剤Aを添加し、さらに3口フラスコに4.98gのテトラ
チオール(10mmol)と0.190gの2´-ヒドラゾビス(2-メチルプロピオニ
トリル)を添加し、真空引きし、窒素ガス充填を3回循環した後、三つ口フラスコを50
℃の油浴に入れ、30分間攪拌した後、70℃に昇温して2時間反応し、90℃でさらに
1時間反応した、赤外分光スペクトルにより監視し、2570cm-1のチオールのピー
クが消失し、薄層クロマトグラフィにより原材料がないことを発見した後、反応が終了し
、二重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bと
を、チオール-エンクリック反応によって目標生成物光開始剤2を調製した。
【0046】
反応完了後、反応完了後の混合物を精製することなく、反応後の混合物をH NMR
で製品を試験することができ、核磁気共鳴スペクトルは図2に示すように、AIBNのフ
ラグメントピークが少量ある以外はすべて生成物ピークであり、四官能テトラチオールは
ほぼ100%反応でき、目標生成物の対称性は非常に良く、三置換目標生成物のエチル基
の信号はなく、残りの各ピークの個数はすべて8及び8の倍数であり、反応の純粋さを示
している。
【0047】
H NMR(CDCl,400MHz): 8.50 (d, J = 8.0
Hz, 8H, Ph); 7.30 (d, J = 8.0 Hz, 8H, Ph
); 4.16 (s, 8H, CH); 3.70 (d, 24H, CH
; 3.57 (t, J = 6.0 Hz, 8H, CH); 3.20 (t
, J = 6.6 Hz, 8H, CH); 2.75 (t, J = 7.4
Hz, 8H, CH); 2.60 (t, 8H, CH); 2.57 (
d, 24H, CH); 1.84 (m, 8H, CH); 1.31(s
, 24H, CH)。
【0048】
(実施例5)異なるポリチオール系化合物Bを用いてそれぞれ対応する二重結合のα-
アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aによる目標生成物光開始剤3、光開始剤4及び
光開始剤5の調製
【0049】
3つの反応のすべての工程と実施例3と実施例4は全く同じで、3つの反応の最後の生
成物はそれぞれH NMRによる確認試験をした後、核磁気共鳴スペクトルから3つの
反応中のポリチオール系化合物Bとα-アミノケトン類小分子光開始剤Aの転化率はほぼ
100%であり、且つポリチオール系化合物Bとα-アミノケトン類小分子光開始剤Aは
、チオール基と炭素-炭素二重結合とのモル比が1:1であるように反応し、さらに、二
重結合のα-アミノケトン類を有する小分子光開始剤Aとポリチオール系化合物Bとをチ
オール-エンクリック反応によって目標生成物を調製し、二重結合のα-アミノケトン類
を有する小分子光開始剤A及びポリチオール系化合物Bの転化率はほぼ100%であるこ
とを示している。
【0050】
実施例で調製した生成物を実験し、目標生成物の性能分析
【0051】
上記実施例の製品は、それぞれ次のような実験を行った。
[実験1]
実施例で調製した光開始剤1-光開始剤5はそれぞれモノマー中で光硬化試験を行い、光
開始剤1-光開始剤5または光開始剤907はそれぞれ以下の質量比で混合して溶液を調
製する
二官能基モノマー(TPGDA):97%
光開始剤(1、2、3、4、5または907):2%
レベリング剤:0.5%
消泡剤:0.5%
【0052】
上記調製溶液をカード板紙にそれぞれ塗布して約30~35ミクロンのコーティングを
形成し、広州和光同盛公司製の単位出力2000mW/cmの発光波長365ナノメー
トルのLED光源(3cm幅と80cm長LED面光源)を誘起光源として、変速ベルト
に配置し、爪で繰り返し擦って傷が発生しないことを光重合硬化完了の基準とする。
【0053】
結果により、本発明で調製した光開始剤1、光開始剤2、光開始剤3、光開始剤5、光
開始剤5と光開始剤907がモノマー中の硬化速度に差異性を示さなかった。
【0054】
[実験2]
実際の塗料処方における光開始剤1の光硬化試験
【0055】
光開始剤1及び光開始剤907は、それぞれ以下の質量パーセントで2部の硬化溶液を
配置する
エポキシアクリレート(621A-80):15%
芳香族ウレタンアクリレート(6146-100):24%
脂肪族ウレタンアクリレート(6145-100):20%
三官能モノマー(TMPTA):23%
二官能モノマー(HDDA):3%
二官能モノマー(TPGDA):12%
光開始剤(1または907):2.5%
レベリング剤:0.5%
【0056】
上記で調製した光開始剤1と光開始剤907の溶液をそれぞれ基材上に塗布して約20
~25μmのコーティングを形成し、深セン潤沃機電有限公司製のRW-UVA201-
20水銀ランプ硬化機を誘起光源とし、光強度は220mW/cmで、コンベアベルト
(速度約8m/min)上に3回硬化させ、硬化後のコーティングの鉛筆硬度、付着力、
柔軟性及び光沢度をそれぞれ試験し、また、それぞれ18.00g溶液を遠心管中にとり
、60℃オーブン中に7日間熱貯蔵し、熱貯蔵前後の体系粘度変化を比較し、結果を表1
に示す。
【0057】
表1 塗料特性評価結果

【0058】
結果により、実際の塗料処方における光開始剤1と光開始剤907の硬化速度に差異性
を示さなかったが、光開始剤907より光開始剤1の黄変耐性が明らかに優れていた。
【0059】
[実験3]
実施例で調製した光開始剤1-光開始剤5についてそれぞれ光硬化生成物の移動性試験
を行った
【0060】
それぞれ1%の本発明の実施例の光開始剤1-光開始剤5と光開始剤907のトリメチ
ロールプロパントリアクリレート溶液を調製し、それぞれスライドガラス上に塗布し、そ
のフィルム本体の厚さは一般的に30~35μmであり、空気中に塗膜し、深セン潤沃機
電有限公司製のRW-UVA201-20水銀ランプ硬化機を誘起光源とし、光強度は2
20mW/cmで、コンベアベルト上に置いて5回硬化し、コンベアベルト速度は30
メートル/秒であり、その後、硬化フィルムを離型、切断し、それぞれ100ミリグラム
を取り、20mLのアセトニトリルに浸漬し、24時間後に上層部の透明な液体を取って
紫外-可視分光スペクトルを試験し、307nmにおける光開始剤1-光開始剤5及び光
開始剤907の最大吸収ピークの吸光度を記録し、3回試験した。
【0061】
以下の式から本発明におけるα-アミノケトンを有する多官能高分子光開始剤と907
の2種類の光開始剤の相対移動度を算出することができる。
[化15]
c=A/(ε・b)
R=c(I)/c(907)*100
式中、cは抽出液中の光開始剤の具体的な濃度であり、その単位はmol/Lであり、
Aは吸光度であり、εは307nmにおける開始剤のモル吸光係数であり、その単位はL
/(mol・cm)であり、bはサンプルセルの厚さであり、その単位はcmであり、c
(I)は抽出液中の光開始剤Iの濃度(Iは光開始剤1-光開始剤5のうちの1つ)であ
り、c(907)は抽出液中の光開始剤907の濃度であり、Rは光開始剤Iと光開始剤
907との比較における相対移動度である。光開始剤907を有する処方の吸光度を10
0と定義し、他の分子による光重合系の相対移動度Rの結果を表2に示す。
表2 移動度試験評価結果
【0062】
実験の結果により、光開始剤1-光開始剤5の移動度は907に比べて明らかに低下し
、光開始剤Iの移動度は光開始剤907に比べて明らかに低下したことが推測された。
【0063】
[実験4]
実施例で調製した光開始剤1が塗料処方における光硬化生成物の移動性試験
【0064】
以下の質量パーセントで4部の硬化溶液を配置する
ポリエステルアクリレート(6342):20%
三官能モノマー(TMPTA):80%
【0065】
その後、硬化溶液4部にそれぞれ異なる質量の光開始剤1と光開始剤907を添加し、
光開始剤1または光開始剤907の添加量はそれぞれ前記硬化溶液の全質量の3%または
6%である。
【0066】
上記配置した異なる濃度の光開始剤1と光開始剤907の溶液を、PETフィルム上に
形成された20-25μmのコーティングにそれぞれ塗布して、深セン潤沃機電有限公司
製のRW-UVA201-20水銀ランプ硬化機の下に置き、光強度を220mW/cm
2とし、コンベアベルト(速度約8m/min)の上に3回硬化させた後、硬化フィル
ムを離型、切断し、0.50gを取って10mLのエタノールに浸漬し、40℃で10日
間浸漬した後に上層部の透明な液体を取って紫外可視分光光度計を用いて光開始剤の移動
度を試験、分析し、2回の試験で平均値を取り、結果を表3に示す。
表3 移動度試験評価結果
【0067】
実験結果によると、光開始剤1の移動度は光開始剤907の8分の1未満であり、明ら
かに低下した。
【0068】
[実験5]
実施例で調製した開始剤1の硬化臭気試験
【0069】
光開始剤1及び光開始剤907は、それぞれ以下の質量パーセントで溶液を配置する
三官能モノマー(TMPTA):64.9%
二官能モノマー(HDDA):30%
レベリング剤:0.6%
消泡剤:0.5%
光開始剤(1または907):4%
【0070】
上記で調製した光開始剤1と光開始剤907の溶液をそれぞれPETフィルム上に形成
された約40~45μmのコーティングに塗布して、コーティング面積約8×20cm、
深セン潤沃機電有限公司製のRW-UVA201-20水銀ランプ硬化機を誘起光源とし
、光強度は220mW/cmで、コンベアベルト(速度約8m/min)に置いて1回
硬化させ、硬化過程で3人の試験員に硬化機の排気口に刺激臭が発生しているかどうかを
同時に嗅がせた。以下の等級で臭気評価を行い、
レベル0--刺激臭なし;レベル1--軽い刺激臭;レベル2--中等度刺激臭;レベル
3--比較的に大きい刺激臭;レベル4--刺激臭が強い;
【0071】
処方ごとに2回試験し、3人の試験員の臭気評価レベルが最も多く現れたものを最終結
果とした。実験結果を表4に示す。
表4 硬化臭気評価結果
【0072】
実験結果によると、分子量が1000以上に向上した光開始剤Iの硬化臭気は光開始剤
907の硬化臭気に比べて、刺激臭が明らかに低下した。
【0073】
[実験6]
光開始剤1と光開始剤907hがTMPTAにおける光硬化性能試験
【0074】
光開始剤1と光開始剤907の光開始性能を比較すると、図3図4はそれぞれ等質量
、等モル重量光開始剤1と光開始剤907によるTMPTAを反応させる光重合動力学グ
ラフとPhoto-DSC重合放熱グラフである。
【0075】
図4から分かるように、等モル重量の光開始剤を添加すると、光開始剤1と光開始剤9
07の重合発熱率と最終転化率はほぼ一致する。
【0076】
図3から分かるように、等質量の光開始剤を添加すると、実施例2で調製した光開始剤
1の発熱速度は光照射8s後に最速に達し、最大値は34.67mW/mgで、光開始剤
907よりやや低く、光照射時間の延長に伴い、光開始剤907による樹脂を二重結合重
合させて総放熱が高く、全体の転化率がやや高い、図4を参照すると、実施例2で調製し
た高分子光開始剤1と光開始剤907とが等質量でTMPTAを開始した場合、硬化系中
の光開始剤1のモル濃度が低く、反応の発熱と最終転化率の低下を招き、この差異は、等
モル重量の光開始剤1を添加することにより縮小することができ、図3図4のグラフを
組み合わせると、光開始剤1は光開始剤907とほぼ一致する光開始剤効率を有し、実施
例2で調製した光開始剤1は深い工業化潜在力を持っていることがわかる。
【0077】
[実験7]
実施例で調製した光開始剤1が塗料処方における酸素阻害抑制試験
【0078】
以下の質量パーセントで2部の硬化溶液を配置する
ポリエステルアクリレート(6342):60%
三官能モノマー(TMPTA):40%
【0079】
その後、2部の硬化溶液にそれぞれ等モル重量の光開始剤1と光開始剤907を添加し
、光開始剤907の添加量は、上記硬化溶液の全質量の3%であり、
上記処方に従って配置された光開始剤1及び光開始剤907の溶液を、それぞれPET
フィルム上に形成された20~25μmのコーティングを塗布し、依瓦塔(上海)精密光
電有限公司製の365nmLED光源の下に置き、光強度を700mW/cmとし、コ
ンベアベルト(速度約8m/min)上に3回硬化させた。次に硬化試料を6×6cm正
方形に裁断し、40℃で15min加熱乾燥し、秤量後、脱脂綿にアルコールをつけて拭
き、コーティング表面の未硬化部分を除去し、さらに40℃オーブンで30min乾燥し
た後、再度秤量し、2回の秤量差値を記録し、未硬化厚さを計算し、3回試験して平均値
を取り、結果を表5に示す。
表5 酸素阻害抑制試験評価結果
【0080】
実験結果によると、製品を硬化させる際に、光開始剤Iの酸素阻害抑制効果は光開始剤
907より優れており、光開始剤Iと光開始剤907の構造式を比較すると、光開始剤I
はチオエーテルの構造を有することで光開始剤のコーティング中の酸素阻害抑制効果を高
めることができる。
【0081】
[実験8]
実施例で調製した開始剤1が塗料処方における屈折率試験
【0082】
光開始剤1及び光開始剤907は、それぞれ以下の質量パーセントで2部の硬化溶液を配
置する
ポリエステルアクリレート(6342):60%
三官能モノマー(TMPTA):40%
【0083】
そして、2部の硬化溶液にそれぞれ等モルの光開始剤1と光開始剤907を添加し、光開
始剤907の添加量は上記硬化溶液の全質量の3%である。
【0084】
上記調製した光開始剤1と光開始剤907の溶液を、アッベ屈折計を用いて各光開始剤溶
液の屈折率を試験し、2回平均値を取った結果を表6に示す。
【0085】
表6 屈折率試験評価結果
【0086】
実験結果によると、光開始剤1は、光開始剤907が存在する硬化系の屈折率より相対
的に良い。
【0087】
[実験9]
光開始剤1と光開始剤907に対するDSC熱安定性試験
【0088】
光開始剤907と光開始剤1の熱安定性を比較するために、10℃/minの昇温速度
で、窒素ガス保護条件下で2種類の光開始剤の熱安定性差異を試験し、窒素ガスの流量は
50mL/minで、結果は図5に示すように、図5から分かるように、光開始剤907
と比べて、光開始剤1の熱安定性は明らかに向上し、300℃内に明らかな吸放熱反応は
ない。
【0089】
実験総括の分析
実験1、実験2、実験6、実験8、実験9を通じて、光開始剤Iの硬化速度と光開始剤
907の硬化速度に明らかな差異性がなく、且つ光開始剤Iの黄変抵抗性能は光開始剤9
07より明らかに優れており、等モルの光開始剤Iと光開始剤907は硬化系の硬化を反
応させる時、光開始剤Iと光開始剤907の重合発熱速度と最終転化率は基本的に一致し
、光開始剤Iは光開始剤907より熱安定性が高い、光開始剤Iは、光開始剤907が存
在する硬化系の屈折率より相対的に良い。
【0090】
実験3、実験4及び実験5を通じて、光開始剤Iは光開始剤907より分子量が大きく
、光開始剤I及び光開始剤907はモノマー処方又は実際の塗料処方中でそれぞれ硬化後
製品の中で、光開始剤Iの移動度は光開始剤907より明らかに低い、光開始剤Iと光開
始剤907は硬化系の硬化を反応させる際、光開始剤Iは光開始剤907に比べて刺激臭
が低く、さらに、光開始剤Iは生物毒性に高く要求される分野への応用に適している。
【0091】
実験7を通じて、コーティング中の光開始剤Iの酸素阻害抑制効果は光開始剤907よ
りよく、光開始剤Iは硬化系の硬化を反応させる時、硬化製品の表乾速度が速い。
【0092】
上記から分かるように、光開始剤Iは光開始剤907より性能が良く、光開始剤Iは光
開始剤907に取って代わることができ、光開始剤Iは光開始剤907よりも応用範囲が
広い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6