(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】無瞬断電源切替装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/42 20060101AFI20240821BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H02J3/42
H02J9/06
(21)【出願番号】P 2021044716
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520039179
【氏名又は名称】NTTアノードエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591119820
【氏名又は名称】株式会社高田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 昂亮
(72)【発明者】
【氏名】野々垣 翠
(72)【発明者】
【氏名】田中 和夫
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263672(JP,A)
【文献】特開2001-268818(JP,A)
【文献】特開2012-222933(JP,A)
【文献】特開2007-104838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00- 5/00
H02J 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給する電源装置の切替に用いられる無瞬断電源切替装置であって、
第1電源装置が接続される第1接続部と
、
前記第1電源装置とは異なる第2電源装置が接続される第2接続部と、
前記負荷が接続される第3接続部と、
前記第1電源装置から前記負荷に電力が供給される状態と前記第2電源装置から前記負荷に電力が供給される状態とを切り替える切替部と、
前記第1接続部と前記第2接続部の側である電源側と、前記第3接続部の側である負荷側との間に配置され、前記電源側と前記負荷側との間に電流が流れる通電状態と、前記電源側と前記負荷側との間の前記電流の流れが遮断される遮断状態とを可逆的に切り替える短絡防止部と、
前記短絡防止部における前記電源側の電圧である電源側電圧と、前記短絡防止部における前記負荷側の電圧である負荷側電圧との位相差を検出する位相異常検出部と、
前記位相異常検出部と、前記短絡防止部における前記電源側との間に配置され、前記位相異常検出部に流れる検出電流の値が所定の閾値以上になった場合に、前記検出電流を遮断する保護部と、
前記保護部が前記検出電流を遮断したことを検知する検知部と、
を備え
、
前記切替部は、作業者による操作に従って、前記第1接続部が前記短絡防止部の前記電源側に接続された状態と、前記第2接続部が前記短絡防止部の前記電源側に接続された状態とを切り替える、
無瞬断電源切替装置。
【請求項2】
前記保護部は、前記電流を可逆的に遮断する請求項1に記載の無瞬断電源切替装置。
【請求項3】
前記位相異常検出部が前記位相差が所定の大きさ以上であることを検出すると、
前記短絡防止部は、
前記遮断状態から前記通電状態への切替が規制された状態となる、
請求項1または請求項2に記載の無瞬断電源切替装置。
【請求項4】
前記第1接続部と前記切替部との間、及び前記第2接続部と前記切替部との間、更に前記第3接続部と前記短絡防止部との間のそれぞれの間に、逆相を検知する逆相検出部をそれぞれ備え、
少なくとも一つの前記逆相検出部が前記逆相を検知すると、
前記短絡防止部は、前記遮断状態から前記通電状態への切替が規制される状態となる、
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の無瞬断電源切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置などの電源装置の切替の際に用いて好適な無瞬断電源切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
停電などの際に、内蔵バッテリーから電力を供給し、負荷への電力供給を継続する無停電電源装置(UPS)が知られている。以降において、無停電電源装置(UPS)を、「電源装置」とも記載する。また、この電源装置を交換する際に、負荷への電力供給を停止することなく、新たな電源装置に交換することが可能な無瞬断電源切替装置が知られている。
【0003】
無瞬断電源切替装置を用いて電源装置の交換作業を行う場合には、交換前の電源装置の電圧の位相と、交換後の電源装置の電圧の位相が揃っている必要がある。このため、電源装置の電圧の位相を制御して、同期の取れていない電源装置であってもその切替を可能にする同期制御回路を備えた無瞬断電源切替装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、回路の開閉器内の母線に、配線路間の電圧位相比較を行うためのセンサを設け、開閉器の両側の線路間の電圧が異相である場合に、開閉器の投入を禁止する自動多回路開閉器も知られている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3664902号公報
【文献】特開平6-296331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の無瞬断電源切替装置では、例えば誤配線などにより、切替元電源の電圧の位相と、無瞬断電源切替装置の出力側の電圧の位相が異なる状態で無瞬断電源切替装置から電力が出力されると、短絡事故が発生する恐れがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、切替元の電源の位相と、無瞬断電源切替装置の出力側の電圧の位相が相違する場合に、無瞬断電源切替装置から電力が出力されることを有効に防ぐことが可能な無瞬断電源切替装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の無瞬断電源切替装置は、負荷に電力を供給する電源装置の切替に用いられる無瞬断電源切替装置であって、第1電源装置が接続される第1接続部と、前記第1電源装置とは異なる第2電源装置が接続される第2接続部と、前記負荷が接続される第3接続部と、前記第1電源装置から前記負荷に電力が供給される状態と前記第2電源装置から前記負荷に電力が供給される状態とを切り替える切替部と、前記第1接続部と前記第2接続部の側である電源側と、前記第3接続部の側である負荷側との間に配置され、前記電源側と前記負荷側との間に電流が流れる通電状態と、前記電源側と前記負荷側との間の電流の流れが遮断される遮断状態とを可逆的に切り替える短絡防止部と、前記短絡防止部における前記電源側の電圧である電源側電圧と、前記短絡防止部における前記負荷側の電圧である負荷側電圧との位相差を検出する位相異常検出部と、前記位相異常検出部と前記短絡防止部における前記電源側との間に配置され、前記位相異常検出部に流れる検出電流の値が所定の閾値以上になった場合に、前記検出電流を遮断する保護部と、前記保護部が前記検出電流を遮断したことを検知する検知部を備えている。
【0009】
本発明の無瞬断電源切替装置によれば、電源側電圧と負荷側電圧の位相差を検出する位相異常検出部が備えられている。この位相異常検出部は、電源側電圧と負荷側電圧の位相差が所定の範囲を超える場合に、電源側電圧と負荷側電圧の位相が相違することを検出する。このため、無瞬断電源切替装置への配線に誤接続があると判定することが可能となり、短絡防止部の投入を禁止するなどの所定の措置を講じることが可能となる。
【0010】
また、この無瞬断電源切替装置は、位相異常検出部に所定の閾値以上の電流が流れた際に、その電流を遮断する保護部と、保護部が電流を遮断した状態を検知する検知部を備えている。保護部は、位相異常検出部に流れる検出電流の値が所定の閾値以上になった場合に作動して、その電流を遮断して位相異常検出部に過剰な電流が流れることを防ぐ。また、検知部は、保護部が電流を遮断したことを検知する。即ち、保護部が作動したことによって位相異常検出部が適切に作動しない状態であることを検知部が検知する。このため、位相異常検出部が適切に作動しない状態で無瞬断電源切替装置が用いられることを防ぐことが可能となる。
【0011】
上記発明においては、前記保護部は、前記電流を可逆的に遮断することが好ましい。
このようにすることにより、位相異常検出部に過剰な電流が流れることとなった原因を取り除いた後に、保護部を遮断状態から復旧させ、位相異常検出部を作動可能な状態に戻すことを容易に行うことができる。
【0012】
上記発明においては、前記位相異常検出部が、前記位相差が所定の大きさ以上であることを検出すると、前記短絡防止部は、前記遮断状態から前記通電状態への切替が規制された状態となることが好ましい。
【0013】
このようにすることにより、位相異常検出部が所定の大きさ以上の位相差を検出すると、短絡防止部は、遮断状態から通電状態に切り替わることが規制された状態となる。即ち、誤配線などによって電源側電圧と負荷側電圧の位相が異なる状態となっている場合に、短絡防止部が通電状態に切り替わることが規制され、短絡事故の発生を防ぐことが可能となる。
【0014】
上記発明においては、前記第1接続部と前記切替部との間、及び前記第2接続部と前記切替部との間、更に前記第3接続部と前記短絡防止部との間のそれぞれの間に、逆相を検知する逆相検出部をそれぞれ備え、少なくとも一つの前記逆相検出部が前記逆相を検知すると、前記短絡防止部は、前記遮断状態から前記通電状態への切替が規制される状態となることが好ましい。
【0015】
このようにすることにより、第1接続部から入力される電圧、第2接続部から入力される電圧、及び短絡防止部の負荷側の電圧のいずれかが逆相であった場合に、対応する逆相検出部がその逆相を検知する。そして、いずれかの逆相検出部が逆相を検知すると、短絡防止部が、通電状態に切り替わることが規制された状態となる。このことにより、無瞬断電源切替装置への配線が誤った状態で、短絡防止部が通電状態に切り替わることを防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の無瞬断電源切替装置によれば、切替元の電源の位相と、無瞬断電源切替装置の出力側の電圧の位相が相違する場合に、無瞬断電源切替装置から電力が出力されることを有効に防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る無瞬断電源切替装置を用いた無停電電源装置の交換作業の概要を説明するブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る無瞬断電源切替装置の構成を説明するブロック図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の実施形態の無瞬断電源切替装置の位相異常検出部の、同一位相の場合の作動を説明するブロック図である。
図3(b)は、第1の実施形態の無瞬断電源切替装置の位相異常検出部の、位相異常の場合の作動を説明するブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る無瞬断電源切替装置の構成の一部を説明するブロック図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る無瞬断電源切替装置の構成を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
この発明の第1の実施形態に係る無瞬断電源切替装置1について、
図1から
図4を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態の無瞬断電源切替装置1は、ICT装置などの負荷に電源を供給する無停電電源装置を、負荷への電源供給を停止することなく新たな無停電電源装置に交換する際に用いられる電源切替装置である。本実施形態では、無瞬断電源切替装置1が、ICT装置6a~6cへの電源供給を瞬断させることなく、既設の無停電電源装置4Aから新設の無停電電源装置4Bに交換する作業に用いられる場合を例に以降の説明を行う(
図1参照。)。なお、以降の説明において、既設の無停電電源装置4Aと新設の無停電電源装置4Bを交換する作業のことを、「交換作業」とも記載する。またICT装置6a~6cを総称して「ICT装置6」とも記載する。本実施形態のICT装置6が負荷の一例である。
【0020】
本実施形態において、無停電電源装置4Aと無停電電源装置4Bは、200Vの交流電圧を出力する電源装置である例に適用して説明を行う。なお。無停電電源装置4Aと無停電電源装置4Bは、400Vの交流電圧を出力する電源装置であってもよい。あるいは他の大きさの電圧を出力する電源装置であってもよい。
【0021】
1.構成の説明
無瞬断電源切替装置1は、ノントリップスイッチ11A,11B、配線用遮断器12A,12B、切替部13、配線用遮断器14、入力部15A,15B、出力部16、外部電源端子17a,17b、位相異常検出部20、及び配線用遮断器31を主に備えている(
図2参照。)。更に無瞬断電源切替装置1は、入力部15Aと入力部15Bから入力された電力の位相の違いを検出する図示されていない入力電源位相検出部などを備えている。
【0022】
入力部15Aは、既設の無停電電源装置4Aから出力される電力が入力される部分である。入力部15Aは、交換作業時において、ケーブル52を介して無停電電源装置4Aの出力側に設けられた分岐盤41Aに接続される。入力部15Bは、新設の無停電電源装置4Bからの電力が入力される部分である。入力部15Bは、交換作業時において、ケーブル54を介して無停電電源装置4Bの出力部に設けられた分岐盤41Bに接続される。本実施形態における入力部15Aが、第1接続部の一例である。本実施形態における入力部15Bが、第2接続部の一例である。
【0023】
出力部16は、入力部15Aあるいは入力部15Bから入力された、いずれかの電力が出力される部分である。出力部16は、交換作業時において、ケーブル53を介して分電盤5に接続される。本実施形態における出力部16が、第3接続部の一例である。以降において無瞬断電源切替装置1の入力部15A,15Bが設けられている側を「電源側」と、出力部16が設けられている側を「負荷側」とも記載する。
【0024】
外部電源端子17a,17bは、図示されていない電源ケーブルが接続される部分であり、無瞬断電源切替装置1の作動に必要な電力が入力される部分である。ノントリップスイッチ11Aは、入力部15Aの側に設けられた公知の開閉器である。ノントリップスイッチ11Bは、入力部15Bの側に設けられた公知の開閉器である。
【0025】
配線用遮断器14は、出力部16の側に設けられた公知の配線用遮断器(MCCB)である。配線用遮断器14は、所定の操作が行われることによって、その電源側と負荷側との間に電流が流れる通電状態と、電源側と負荷側との間の電流が遮断される遮断状態とが可逆的に切り替わる。配線用遮断器14が通電状態となると、入力部15A、あるいは入力部15Bから入力された電力が、出力部16から出力される。配線用遮断器14が遮断状態となると、入力部15A、あるいは入力部15Bから入力された電力は、配線用遮断器14にて遮断される。
【0026】
配線用遮断器14は、詳細は後述する位相異常検出部20からの異常信号が入力される図示されていない信号入力部を備えている。配線用遮断器14は、異常信号が入力されると、遮断状態となるとともに、遮断状態から通電状態への切り替えが規制されるように構成されている。以降において、異常信号が入力され、遮断状態から通電状態への切り替えが規制された配線用遮断器14の状態を「トリップ状態」とも記載する。なお、本実施形態における配線用遮断器14が、短絡防止部の一例である。
【0027】
切替部13は、配線用遮断器14の電源側に設けられた公知の配線切替器である。切替部13は、作業者による操作に従って、入力部15Aと配線用遮断器14を電気的に接続する状態と、入力部15Bと配線用遮断器14を電気的に接続する状態とを切り替える。換言すれば、出力部16から出力される電力の供給元を、無停電電源装置4Aと無停電電源装置4Bとで切り替える。
【0028】
配線用遮断器12Aは、ノントリップスイッチ11Aと切替部13の間に設けられた公知の配線用遮断器(MCCB)である。配線用遮断器12Bは、ノントリップスイッチ11Bと切替部13の間に設けられた公知の配線用遮断器(MCCB)である。
【0029】
位相異常検出部20は、配線用遮断器14の電源側の電圧と負荷側の電圧の位相のずれを検出する部分である。位相異常検出部20は、検出した位相のずれが所定の範囲以上であった場合に、そのことを通知する異常信号を出力するように構成されている。
【0030】
位相異常検出部20は、トランス21、トランス22、及び電圧検出部23を備えている(
図3(a)、(b)参照。)。トランス21とトランス22は、それぞれの一次側に入力された電圧を、詳細は後述する電圧検出部23が作動可能な電圧に変換して出力する公知のトランスである。
【0031】
トランス21の一次側は、配線用遮断器14の電源側に接続されている。本実施形態では、トランス21の一次側の電圧入力部24a,26aが、配線ケーブル28a,29aを介して、配線用遮断器14の電源側のU
01相とW
01相にそれぞれ接続されている場合を例に以降の説明を行う(
図2、及び
図3(a),(b)参照。)。
【0032】
トランス22の一次側は、配線用遮断器14の負荷側に接続されている。本実施形態では、トランス22の一次側の電圧入力部24b,26bが、配線ケーブル28b,29bを介して配線用遮断器14の負荷側のU
0相とW
0相に接続されている場合を例に以降の説明を行う(
図2、及び
図3(a),(b)参照。)。
【0033】
電圧検出部23は、両端の電圧差を検知し、その電圧差が所定の閾値よりも大きくなった場合に異常信号を出力する部分である。本実施形態において電圧検出部23は、両端の電圧差が所定の閾値よりも大きくなった際に作動する電圧感応型のリレーが用いられている場合を例に適用して以降の説明を行う。なお電圧検出部23は、所定の電圧差が生じた際に作動してそのことを通知する信号を出力する他の公知の電機部品等が用いられてもよい。
【0034】
電圧検出部23の一方は、トランス21の二次側の電圧出力部44aに接続されている。電圧検出部23の他方は、トランス22の二次側の電圧出力部44bに接続されている。トランス21の二次側の電圧出力部46aと、トランス22の二次側の電圧出力部46bは、同電位となるように相互に接続されている(
図3(a)及び
図3(b)参照。)。なお電圧出力部44aと電圧出力部44b、及び電圧出力部46aと電圧出力部46bは、それぞれ対応する電圧の相が出力される部分である。
【0035】
このようにトランス21、トランス22、及び電圧検出部23が接続されると、電圧検出部23には、配線用遮断器14の電源側の電圧の位相と、負荷側の電圧の位相のずれによって生じる電圧が印加される。具体的に説明を行うと、配線用遮断器14が遮断状態において、配線用遮断器14の電源側の電源の位相と負荷側の電源の位相が同一であった場合には、トランス21の二次側の電圧と、トランス22の二次側の電圧は同じ位相となる。この際、電圧出力部44aと電圧出力部44bの間に電位差は生じないため、電圧検出部23には電圧が印加されない(
図3(a)参照。)。即ち電圧検出部23は、電圧の位相のずれによって生じる電圧を検知しない。
【0036】
一方、配線用遮断器14が遮断状態において、配線用遮断器14の電源側の電圧の位相と負荷側の電圧の位相が異なる場合には、電圧出力部44aと電圧出力部44bの間に電位差が生じる。即ち電圧検出部23に位相差分の電圧が印加され(
図3(b)参照。)、電圧検出部23は、配線用遮断器14の電源側と負荷側の電圧の位相が異なることを検知する。即ち位相異常検出部20は、電圧検出部23が検出する電圧によって、配線用遮断器14の電源側と負荷側のそれぞれの電圧の位相のずれを検出する。位相異常検出部20は、この位相差によって生じる電圧の大きさが所定の範囲の値以上となると、そのことを通知する異常信号を出力する。
【0037】
位相異常検出部20と、配線用遮断器14の電源側の間を接続する配線の一方に、配線用遮断器31が設けられている。本実施形態では、トランス21の一次側の電圧入力部24aと配線用遮断器14の電源側のU01相を接続する配線ケーブル28aに配線用遮断器31が設けられている例に適用して以降の説明を行う。
【0038】
配線用遮断器31は、位相異常検出部20に流れる電流が、所定の値以上となった場合に作動して、電流の流れを遮断する公知の配線用遮断器(MCCB)である。以降において、この位相異常検出部20に流れる電流を「検出電流」とも記載する。即ち配線用遮断器31は、検出電流が所定の閾値以上となった場合に、電流が流れる通電状態から、電流の流れを遮断する遮断状態となり、位相異常検出部20に過剰な電流が流れることを防ぐ。本実施形態における配線用遮断器31が、保護部の一例である。
【0039】
配線用遮断器31には、配線用遮断器31が電流の流れを遮断する遮断状態となると点灯するように構成された異常ランプ32が接続されている(
図4参照。)。異常ランプ32は、図示されていない制御回路を備えており、配線用遮断器31が通電状態の場合には消灯し、配線用遮断器31が遮断状態の場合に点灯するように構成されている。本実施形態における異常ランプ32が、検知部の一例である。
【0040】
2.作用の説明
続いて本実施形態の無瞬断電源切替装置1の作用について、その使用方法に従って説明を行う。はじめに、主に
図1を参照して、無瞬断電源切替装置1を用いた無停電電源装置4Aと無停電電源装置4Bの交換作業の概要を説明する。
【0041】
作業前の状態において、既設の無停電電源装置4Aは、分岐盤41A、及びケーブル51を介して分電盤5に接続され、ICT装置6に電力を供給している。無停電電源装置4Aは、入力盤3Aを介して200Vの商用電源2Aに接続されている。無停電電源装置4Aと置き換えられる、新たな無停電電源装置4Bは、入力盤3Bを介して200Vの商用電源2Bに接続されている。なお、商用電源2Aと商用電源2Bは同一の商用電源であってもよい。
【0042】
交換作業を開始する前に、無瞬断電源切替装置1の作動確認を行う。具体的には、図示されていない専用の試験キットなどを用いて、所定の箇所に試験用の電圧を入力し、無瞬断電源切替装置1が正しく作動することを確認する。
【0043】
無瞬断電源切替装置1の作動確認を終えたら、無停電電源装置4Aの分岐盤41Aと、入力部15Aとの間を、ケーブル52にて接続する。続いて、無停電電源装置4Bの分岐盤41Bと、入力部15Bとの間を、ケーブル54にて接続する。このときノントリップスイッチ11Aとノントリップスイッチ11Bは、それぞれ開状態としておく。
【0044】
続いて、無停電電源装置4Bと分電盤5を接続するためのケーブル55を敷設する。また、無瞬断電源切替装置1と分電盤5を接続するためのケーブル53を敷設する。この際、ケーブル53,55は、それぞれの両端がいずれの部分にも接続されていない状態としておく。
【0045】
外部電源端子17a,17bに図示されていない電源用ケーブルを接続して、無瞬断電源切替装置1に電源を供給する。無瞬断電源切替装置1への電源の供給は、無停電電源装置4A,4Bとは異なる電源装置から供給されることが好ましい。
【0046】
ノントリップスイッチ11A,11Bをそれぞれ閉状態とし、更に配線用遮断器14を通電状態にして、無停電電源装置4Aと無停電電源装置4Bの電源の位相が同期しているか確認を行う。この確認は、無瞬断電源切替装置1の、図示されていない公知の入力電源位相検出部によって行われる。続いて、切替部13を操作して、無停電電源装置4Bからの電力が出力部16から出力されるように設定し、無瞬断電源切替装置1からの出力電圧に異常の無いことを確認する。また、切替部13を操作して、無停電電源装置4Aからの電力が出力部16から出力されるように設定し、無瞬断電源切替装置1からの出力に異常の無いことを確認する。この出力の確認は、アナライザ測定端子に公知の測定器を接続するなどして行われる。
【0047】
無瞬断電源切替装置1からの出力に異常の無いことを確認したら、配線用遮断器14を遮断状態として、ケーブル53を用いて出力部16を分電盤5に接続する。この際、切替部13は、無停電電源装置4Aから入力された電力が出力部16から出力される状態に設定しておく。
【0048】
分電盤5には、ケーブル51によって無停電電源装置4Aからの電源が供給されている。このため、上記のように配線を行うと、配線用遮断器14の負荷側には、無停電電源装置4Aの電圧が現れた状態となる。また、配線用遮断器14の電源側には、入力部15Aから入力された無停電電源装置4Aの電圧が現れた状態となる。
【0049】
この状態において、例えばケーブル53が、その位相を間違えて配線されていたり、ケーブル52が、その位相を間違えて配線されていたりすると、配線用遮断器14の負荷側と電源側で、電源の位相がずれた状態となる。このような状態で配線用遮断器14を通電状態とすると、短絡事故が発生してしまう。一方、本実施形態の無瞬断電源切替装置1では、位相異常検出部20がこの位相がずれた状態を検知して、配線用遮断器14が通電状態となることが規制される。
【0050】
具体的に説明を行うと、配線用遮断器14の負荷側と電源側で、電源の位相がずれた状態である場合には、位相異常検出部20が、その位相がずれた状態、即ち位相の異常な状態を検出し、異常信号を配線用遮断器14に出力する。異常信号が入力された配線用遮断器14は、通電状態となることが規制される。具体的には、異常信号が入力されると配線用遮断器14がトリップ状態となり、通電状態となることが規制される。このため、仮に使用者が操作を行っても配線用遮断器14が通電状態にはならず、短絡事故の発生が防がれる。
【0051】
配線用遮断器14の負荷側と電源側で位相がずれた状態となり、過剰な電流が位相異常検出部20に流れると、配線用遮断器31が作動して遮断状態となる。即ち、位相異常検出部20に流れる検出電流が配線用遮断器31によって遮断される。更に配線用遮断器31が遮断状態となると、異常ランプ32が点灯する。即ち作業者は、この異常ランプ32が点灯している場合には、配線用遮断器31が遮断状態であり、位相異常検出部20が作動しない状態であることを知ることができる。
【0052】
位相異常検出部20から異常信号が出力され、配線用遮断器14がトリップ状態となった場合には、作業者は、配線の状態を確認し、配線を正しく接続しなおして作業を継続する。作業者は、配線用遮断器31が作動した原因を解消した上で、配線用遮断器31を通電状態に復旧させる。この際、作業者は、異常ランプ32が消灯したことを確認し、位相異常検出部20が正しく作動可能な状態であることを確認する。
【0053】
ケーブル53を接続したら、配線用遮断器14を通電状態にする。この際、分電盤5には、ケーブル51を経由した無停電電源装置4Aからの電力の他、ケーブル52、無瞬断電源切替装置1、及びケーブル53を経由した無停電電源装置4Aからの電力が供給される。配線用遮断器14を通電状態としたら、公知の電流計などを用いて、ケーブル52、及びケーブル53に正しく電流が流れていることを確認する。ケーブル52、ケーブル53に正しく電流が流れていることが確認できたら、無停電電源装置4Aと分電盤5との接続を切り離して、ケーブル51を取り除く。
【0054】
ケーブル51を取り除いたら、切替部13を切り替えて、出力部16に無停電電源装置4Bからの電源が出力される状態とする。切替部13を切り替えると、無停電電源装置4Bからの電力が、ケーブル54、無瞬断電源切替装置1、及びケーブル53を介して分電盤5に供給される。そして、公知の電流計などを用いて、ケーブル53、及びケーブル54に正しく電流が流れていることを確認し、ケーブル55を用いて分岐盤41Bを分電盤5に接続する。そして、公知の電流計などを用いてケーブル55に正しく電流が流れていることを確認する。
【0055】
ケーブル55に正しく電流が流れていることを確認したら、配線用遮断器14を遮断状態とし、操作禁止表示を行う。続いて配線用遮断器12A,12Bをそれぞれ遮断状態にする。公知の電流計等を用いて、ケーブル52,53,54にそれぞれ電流が流れていないことを確認し、無瞬断電源切替装置1への電源の供給を停止する。そしてケーブル52,53,54を撤去して作業を完了する。
【0056】
上記の無瞬断電源切替装置1によれば、例えばケーブルの誤接続等により、配線用遮断器14の電源側電圧と負荷側電圧の位相が異なり、位相異常検出部20に所定の閾値以上の電流が流れた場合には、配線用遮断器31が遮断状態となる。このため、無瞬断電源切替装置1は、位相異常検出部20に過剰な電流が流れることが防がれて、位相異常検出部20の故障などの意図しない不具合の発生を防ぐことが可能となる。
【0057】
一方、配線用遮断器31が遮断状態の場合には、位相異常検出部20は作動せず、配線用遮断器14の電源側電圧と負荷側電圧の位相差を検出しない状態となる。このような状態で作業者が、配線用遮断器14を投入すると、電源側電圧と負荷側電圧の位相が異なる状態で、配線用遮断器14が通電状態となってしまう可能性がある。
【0058】
しかしながら、本実施形態の無瞬断電源切替装置1では、配線用遮断器31が遮断状態の際に異常ランプ32が点灯するため、作業者は、位相異常検出部20が電源側電圧と負荷側電圧の位相差を検出しない状態であることを容易に知ることができる。即ち、作業者が、位相異常検出部20が作動しない状態で、配線用遮断器14を通電状態とすることを防ぐことができる。
【0059】
また配線用遮断器31には、公知の配線用遮断器(MCCB)が用いられている。このため配線用遮断器31は、過剰な検出電流が流れると可逆的に電流を遮断する。このため作業者は、簡単な操作で遮断状態から通電状態にすることができる。即ち、遮断状態となった原因を解消した後に、配線用遮断器31を、位相異常検出部20が作動可能となる通電状態に容易に復旧させることができる。
【0060】
また、位相異常検出部20は、検出した位相のずれが所定の範囲以上となると、異常信号を出力するように構成されている。そして位相異常検出部20から異常信号が出力されると、配線用遮断器14は、遮断状態から通電状態への切替が規制されたトリップ状態となる。このため、無瞬断電源切替装置1は、電源側電圧と負荷側電圧の位相が異なる状態で、配線用遮断器14を通電状態となることを有効に防ぐことができる。即ち、短絡事故の発生を有効に防ぐことができるようになる。
【0061】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について、主に
図5を参照しながら説明する。
本実施形態の無瞬断電源切替装置1Aの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、逆相を検知する逆相検出部を備えている点が、第1の実施形態と相違している。よって本実施形態では、第1の実施形態と同一の構成は、同一の記号を付してその説明を省略し、相違する点について主に説明を行う。
【0062】
本実施形態の無瞬断電源切替装置1Aは、逆相検出部33A,33B,34を備えている。逆相検出部33A,33B,34は、接続された所定の箇所の電圧の位相を検出し、それが逆相である場合に作動してそのことを通知する逆相通知信号を出力するものである。
【0063】
本実施形態において逆相検出部33A,33B,34は、正相検知リレー、あるいは反相リレーとも呼ばれる公知の電気部品が用いられている例に適用して以降の説明を行う。なお逆相検出部33A,33B,34は、接続された所定の箇所の電圧が逆相である場合に作動して、逆相通知信号を出力するものであれば、他の公知の電気部品等が用いられたものであってもよい。
【0064】
逆相検出部33Aは、入力部15Aから入力された電圧の位相を検出するものである。本実施形態において逆相検出部33Aは、ノントリップスイッチ11Aと配線用遮断器12Aの間の各相に接続されている例に適用して以降の説明を行う。なお逆相検出部33Aは、入力部15Aから入力された電圧の位相を検出可能な、切替部13よりも電源側の箇所であれば、上記とは異なる箇所に接続されていてもよい。
【0065】
逆相検出部33Bは、入力部15Bから入力された電圧の位相を検出するものである。本実施形態において逆相検出部33Bは、ノントリップスイッチ11Bと配線用遮断器12Bの間の各相に接続されている例に適用して以降の説明を行う。なお逆相検出部33Bは、入力部15Bから入力された電圧の位相を検出可能な、切替部13よりも電源側の箇所であれば、上記とは異なる箇所に接続されていてもよい。
【0066】
逆相検出部34は、出力部16における電圧の位相を検出する部分である。本実施形態において逆相検出部34は、出力部16の各相に接続されている例に適用して以降の説明を行う。なお逆相検出部34は、出力部16の電圧の各相を検出可能な場所であれば、上記とは異なる場所に接続されていてもよい。
【0067】
配線用遮断器14Aは、位相異常検出部20からの異常信号と、逆相検出部33A,33B,34からの逆相通知信号が入力される、図示されていない信号入力部を備えている。配線用遮断器14Aは、逆相通知信号が入力されると、トリップ状態となるように構成されている。
【0068】
例えば、ケーブル52が誤って接続され、入力部15Aに逆相の電圧が入力されると、逆相検出部33Aがその状態を検知して逆相通知信号を出力する。また例えば、ケーブル54が誤って接続され、入力部15Bに逆相の電圧が入力されると、逆相検出部33Bがその状態を検知して逆相通知信号を出力する。また、ケーブル53が誤って接続され、出力部16に逆相の電圧が現れた状態となると、逆相検出部34がその状態を検知して逆相通知信号を出力する。そして、逆相検出部33A,33B,34のいずれかから逆相通知信号が出力されると、配線用遮断器14Aがトリップ状態となり、遮断状態から通電状態への切り替えが規制される。
【0069】
本実施形態の無瞬断電源切替装置1Aによれば、入力部15Aから入力された電圧や入力部15Bから入力された電圧、あるいは出力部16の部分に現れる電圧が逆相となる場合に、配線用遮断器14Aがトリップ状態となり通電状態となることが規制される。このため、ケーブルの誤接続によって逆相のまま配線用遮断器14Aが投入されることが防がれる。即ち、ケーブルが誤接続された状態のまま配線用遮断器14Aが通電状態となることが有効に防がれる。換言すれば、無瞬断電源切替装置1Aは、配線用遮断器14Aの電源側電圧と負荷側電圧の位相が異なる場合の他、入力部15A,15Bの電圧や、出力部16の電圧が逆相となっている場合にも、配線用遮断器14Aが通電状態となることが規制される。このため、無瞬断電源切替装置1Aへの配線が誤った状態で、配線用遮断器14Aが通電状態となることが有効に防がれる。
【0070】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記の実施形態では、配線用遮断器31が遮断状態の場合に点灯する異常ランプ32を備えた構成について説明を行ったが、これに限定される訳ではない。例えば、配線用遮断器31が遮断状態の場合に警報音などを発出するブザーなどを備えた構成としてもよい。あるいは配線用遮断器31が遮断状態であることを作業者に通知する、他の公知の警報装置が備えられたものであってもよい。あるいは、外部の管理サーバなどに、通信回線を介して信号を通知し、管理者などに配線用遮断器31が遮断状態であることを通知する通信インターフェースなどを備えた構成であってもよい。
【0071】
さらに本発明は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1A…無瞬断電源切替装置 2A,2B…商用電源 3A,3B…入力盤
4A,4B…無停電電源装置 5…分電盤 6a~6c…ICT装置
11A,11B…ノントリップスイッチ
12A,12B…配線用遮断器 13…切替部 14,14A…配線用遮断器
15A,15B…入力部 16…出力部 17a,17b…外部電源端子
20…位相異常検出部 21,22…トランス 23…電圧検出部
24a,24b,26a,26b…電圧入力部
28a,28b,29a,29b…配線ケーブル 31…配線用遮断器
32…異常ランプ 33A,33B,34…逆相検出部
41A,41B…分岐盤 44a,44b,46a,46b…電圧出力部
51,52,53,54,55…ケーブル