(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】生体試料中に存在する低分子物質の抽出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/00 20060101AFI20240821BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20240821BHJP
B01J 20/282 20060101ALI20240821BHJP
B01J 20/283 20060101ALI20240821BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240821BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G01N30/00 C
B01J20/281 G
B01J20/282 J
B01J20/283
G01N33/48 A
B01D15/00 M
(21)【出願番号】P 2021567453
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047735
(87)【国際公開番号】W WO2021132178
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2019236585
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506075584
【氏名又は名称】株式会社TASプロジェクト
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 良幸
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003065(JP,A)
【文献】特開2007-205927(JP,A)
【文献】特開2006-206397(JP,A)
【文献】特開2008-120633(JP,A)
【文献】国際公開第2010/100914(WO,A1)
【文献】特開2009-132607(JP,A)
【文献】特表2011-525468(JP,A)
【文献】特開2011-168484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00
B01J 20/20
B01J 20/28
B01J 20/281
B01J 20/282
B01J 20/283
B01J 20/288
B01J 20/34
G01N 1/10
G01N 30/06
G01N 33/48
B01D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料から該試料中に存在する低分子物質を抽出する方法であって、
1)前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素と混合し、その後、得られた混合物から多孔質炭素を回収するか、或いは、前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素を配置又は担持した濾過フィルターに接触させることにより、前記低分子物質を前記多孔質炭素に吸着させる吸着工程、及び
2)前記吸着工程後に得られた前記低分子物質を吸着した多孔質炭素を、平均粒径10乃至100nmの真球シリカを0.1乃至1質量%含み且つ10乃至12%のアセトニトリルを含む水溶液と混合するか、或いは、前記吸着工程後に得られた濾過フィルターを前記水溶液に接触及び通過させることにより、多孔質炭素から低分子物質を遊離させる遊離工程
を含む方法。
【請求項2】
前記遊離工程後の多孔質炭素を再び吸着工程に使用するために再生する再生工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記吸着工程の前に、生体試料の前処理工程を更に含む請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記真球シリカは、表面処理真球シリカである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記表面処理真球シリカは、真球シリカ表面の
官能基を、フェニル基、ビニル基又はメタクリロイルオキシ基に置換する処理がなされたものである請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体試料中に存在する低分子物質の抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体試料中に存在する低分子物質を吸着・除去するための方法として活性炭を用いる方法が知られている。
例えば、特開昭59-176215公報(特許文献1)には、活性炭を用いて透析後のIgG-分画から低分子量の部分を除去する方法が記載されており、また、国際公開第2011/114470号パンフレット(特許文献2)には、活性炭を用いてヒアルロン酸類含有液から不純物を効率よく分離除去する方法が記載されている。
また、特開昭61-148147号公報(特許文献3)は、L-フェニルアラニンを活性炭に吸着させ、その後、L-フェニルアラニンを活性炭から溶出させることを含むL-フェニルアラニンの精製法を記載している。
【0003】
特許文献3は、L-フェニルアラニンの吸着及び溶出を、活性炭を用いて行っているものの、活性炭に吸着させた低分子物質を効率的に遊離させて回収することは、一般的には、容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-176215公報
【文献】国際公開第2011/114470号パンフレット
【文献】特開昭61-148147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体試料中に存在する低分子物質を容易に抽出できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素が、生体試料中に存在する低分子物質を効率的に吸着できること、及び、低分子物質を吸着した多孔質炭素は、平均粒径10乃至100nmの真球シリカを0.1乃至1質量%含む、10乃至12%のアセトニトリルを含む水溶液と接触させることで、吸着した低分子物質を容易に遊離し、それにより高い回収率で低分子物質を回収できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、
[1]生体試料から該試料中に存在する低分子物質を抽出する方法であって、
1)前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素と混合し、その後、得られた混合物から多孔質炭素を回収するか、或いは、前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素を配置又は担持した濾過フィルターに接触させることにより、前記低分子物質を前記多孔質炭素に吸着させる吸着工程、及び
2)前記吸着工程後に得られた前記低分子物質を吸着した多孔質炭素を、平均粒径10乃至100nmの真球シリカを0.1乃至1質量%含み且つ10乃至12%のアセトニトリルを含む水溶液と混合するか、或いは、前記吸着工程後に得られた濾過フィルターを前記水溶液に接触及び通過させることにより、多孔質炭素から低分子物質を遊離させる遊離工程
を含む方法、
[2]前記遊離工程後の多孔質炭素を再び吸着工程に使用するために再生する再生工程を更に含む前記[1]に記載の方法、
[3]前記吸着工程の前に、生体試料の前処理工程を更に含む前記[1]又は前記[2]に記載の方法、
[4]前記真球シリカは、表面処理真球シリカである前記[1]乃至前記[3]の何れか1つに記載の方法、及び
[5]前記表面処理真球シリカは、真球シリカ表面のシラノール基を、フェニル基、ビニル基又はメタクリロイルオキシ基に置換する処理がなされたものである前記[4]に記載の方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、生体試料中に存在する低分子物質を容易に抽出できる方法を提供することができる。
また、本発明の方法は、遊離工程後の多孔質炭素を再生する工程を追加することにより、多数の生体試料から、連続的に低分子物質を抽出することができる。
また、本発明の方法は、吸着工程の前に、生体試料の前処理工程を追加することにより、血清等の種々の異なる生体試料から、低分子物質を抽出することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】多孔質炭素を保持したミリポアフィルターのカートリッジで濾過する前に、標準8-oxo-dGを含有する模擬生体試料(8-oxo-dG:250ng/mL)を、HPLC分析した際のHPLCチャートである。
【
図2】標準8-oxo-dGを含有する模擬生体試料を、多孔質炭素を保持したミリポアフィルターのカートリッジで濾過した後に得られた濾液をHPLC分析した際のHPLCチャートである。
【
図3】8-oxo-dGを吸着した多孔質炭素が保持されたカートリッジに、遊離液(0.1質量%の真球シリカが浮遊する10%アセトニトリル溶液:1mL)を注入して得た連続する4つの画分(各0.25mL)を、HPLC分析した際のHPLCチャートであって、
図3中の(A)は0~0.25mLの画分のHPLCチャートを示し、(B)は0.25~0.5mLの画分のHPLCチャートを示し、(C)は0.5~0.75mLの画分のHPLCチャートを示し、(D)は0.75~1.0mLの画分のHPLCチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明の生体試料から該試料中に存在する低分子物質を抽出する方法は、
1)前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素と混合し、その後、得られた混合物から多孔質炭素を回収するか、或いは、前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素を配置又は担持した濾過フィルターに接触させることにより、前記低分子物質を前記多孔質炭素に吸着させる吸着工程、及び
2)前記吸着工程後に得られた前記低分子物質を吸着した多孔質炭素を、平均粒径10乃至100nmの真球シリカを0.1乃至1質量%含み且つ10乃至12%のアセトニトリルを含む水溶液と混合するか、或いは、前記吸着工程後に得られた濾過フィルターを前記水溶液に接触及び通過させることにより、多孔質炭素から低分子物質を遊離させる遊離工程
を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に使用し得る生体試料としては、尿、血清、組織からの抽出液、細胞からの抽出液等が挙げられ、沈殿物の存在していない生体試料が好ましい。
好ましい生体試料としては、尿、血清等が挙げられ、尿が好ましい。
【0012】
本発明の対象となる低分子物質としては、核酸又はその誘導体(ヌクレオチド、ヌクレオシド及び/又は塩基等)、ペプチド、アミン、ステロイド、脂肪酸、ビタミン、その他の低分子化合物等が挙げられ、好ましくは分子量が5000以下の化合物が挙げられる。
【0013】
好ましい低分子物質としては、dG(デオキシグアノシン)、8-oxo-dG、各種のモノヌクレオシド等の核酸誘導体、ペプチド、薬物(麻薬、ドーピング剤等を含む)、アミン、ステロイド、脂肪酸、ビタミン、クレアチニン等の低分子化合物等が挙げられ、dG(デオキシグアノシン)、8-oxo-dG等の核酸誘導体が好ましい。
【0014】
本発明に使用し得る3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素としては、鋳型として特定の大きさの金属酸化物、例えば、MgOを用いてメソ孔の大きさを制御することにより得られる細孔制御メソポーラスカーボン等が好ましい。
本発明に使用し得る多孔質炭素の平均粒径としては、1μm乃至100μmが挙げられ、1μm乃至10μmが好ましい。
本発明に使用し得る具体的な多孔質炭素としては、東洋炭素株式会社から入手可能な、CNovel(登録商標)MJ(4)010(設計メソ孔径:10nm)、MJ(4)030(設計メソ孔径:30nm)、MJ(4)110(設計メソ孔径:110nm)、MJ(4)150(設計メソ孔径:150nm)等が挙げられ、MJ(4)110が好ましい。
【0015】
本発明に使用し得る濾過フィルターとしては、上記多孔質炭素が漏洩しないポアサイズを有する濾過膜を備えるものであれば特に限定されないが、例えば、ミリポアフィルター等が挙げられ、具体的には、アドバンテック東洋株式会社から入手可能な、DISMIC 13HP045AN(テフロン(登録商標)(PTFE)製濾過膜(ポアサイズ0.45μm)、膜の径:13mm)、DISMIC 03JP050AN(テフロン(登録商標)(PTFE)製濾過膜(ポアサイズ0.50μm)、膜の径:3mm)等が挙げられる。
【0016】
本発明に使用し得る平均粒径10乃至100nmの真球シリカとしては、平均粒径10乃至100nmとなる真球状のシリカであれば特に限定されないが、平均粒径10乃至50nmの真球シリカ、平均粒径10乃至30nmの真球シリカが好ましい。
また、真球シリカは、親水物との親和性を増すために表面処理がなされているものが好ましく、具体的な表面処理としては、真球シリカ表面のシラノール基を、フェニル基、ビニル基又はメタクリロイルオキシ基に置換したもの等が好ましく、特に、シラノール基を、ビニル基に置換したものが好ましい。
本発明に使用し得る具体的な真球シリカとしては、株式会社アドマテックスから入手可能な、アドマナノ YA010C(平均粒径10nm)、アドマナノ YA010C-SV1(平均粒径10nm、表面処理:ビニル化)、アドマナノ YA030C(平均粒径30nm)、アドマナノ YC100C(平均粒径100nm)等が挙げられ、アドマナノ YA010C-SV1(平均粒径10nm、表面処理:ビニル化)が好ましい。
【0017】
本明細書において、平均粒径は、レーザー回折散乱法によって得られた粒度分布(体積基準)の粒子径D50(メジアン径)の値を意図し、真球シリカは、真球変動係数(σ/D(%),σ:粒子径の標準偏差,D:平均粒径)が、20%以下、好ましくは15%以下のシリカ粒子を意図する。
【0018】
本発明の方法における吸着工程は、前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素と混合し、その後、得られた混合物から多孔質炭素を回収するか、或いは、前記生体試料を、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素を配置又は担持した濾過フィルターに接触させることにより、前記低分子物質を前記多孔質炭素に吸着させることを特徴とする。
【0019】
本発明の方法において使用し得る吸着工程は、生体試料と、3.5乃至150nmのメソ孔と、それより大きなサイズのミクロ孔を階層構造として有する多孔質炭素とを混合する工程であれば特に限定されないが、空気の泡が多孔質炭素表面の細孔を塞がないように、静かに混和し、超音波等で充分に脱気するのが好ましい。
また、多孔質炭素を配置した濾過フィルターとしては、二つのフィルター間に多孔質炭素を充填したカートリッジの態様として用いることができる。
上記のカートリッジを用いる場合、カートリッジ内面及び多孔質炭素の表面が水分子で被われた状態とし、空気泡が混入しないように配慮することが好ましい。
上記のカートリッジを用いる場合の操作としては、シリンジを用いて生体試料を多孔質炭素が充填されたカートリッジに注入して濾過すること等が挙げられる。
注入の際は、できるだけ等圧となるように注入することが好ましい。
また、多孔質炭素を担持した濾過フィルターとしては、多孔質炭素が既知の方法によって固定化された濾過フィルター等が挙げられる。
【0020】
本発明の方法における遊離工程は、前記吸着工程後に得られた前記低分子物質を吸着した多孔質炭素を、平均粒径10乃至100nmの真球シリカを0.1乃至1質量%含み且つ10乃至12%のアセトニトリルを含む水溶液と混合するか、或いは、前記吸着工程後に得られた濾過フィルターを前記水溶液に接触及び通過させることにより、多孔質炭素から低分子物質を遊離させることを特徴とする。
【0021】
遊離工程において、真球シリカを含むアセトニトリル水溶液が、低分子物質を吸着した多孔質炭素と接触することにより、多孔質炭素の細孔内に捕捉されている水溶性物質が、多孔質炭素と親和性を有する真球シリカと置き換わり、これにより、水溶性物質は溶液中に遊離する。
真球シリカを含むアセトニトリル水溶液を調製する際、溶液の均一化と脱気を目的として、超音波処理を行うことが好ましい。
また、吸着工程後に得られた濾過フィルターを水溶液に接触及び通過させる場合、シリンジを用いて真球シリカを含むアセトニトリル水溶液を濾過フィルターに注入するのが好ましく、その際、できるだけ等圧となるように注入することが好ましい。
【0022】
本発明の方法は、遊離工程後の多孔質炭素を再び吸着工程に使用するために再生する再生工程を更に含む方法の発明にも関する。
再生工程には、洗浄工程と乾燥工程とが含まれ得る。
具体的な洗浄工程としては、例えば、遊離工程後の多孔質炭素を、100%アセトニトリルで洗浄し、次に、10%アセトニトリル水溶液で洗浄し、最後に、超純水で洗浄すること等が挙げられる。
また、乾燥工程としては、例えば、洗浄工程後の多孔質炭素を、120乃至180℃の温度で1乃至8時間加熱乾燥すること等が挙げられる。
【0023】
上記の再生工程を含むことにより、多数の生体試料から、例えば、通夜の自動操作等により、連続的に低分子物質を抽出することができる。
また、上記の連続的な抽出方法は、抽出方法としてだけでなく、分析方法としても有利に使用し得る。
【0024】
本発明の方法は、吸着工程の前に、生体試料の前処理工程を更に含む方法にも関する。
生体試料の前処理工程としては、既知の前処理方法を用いることができ、プレカラムによる分離、遠心分離、透析膜分離、変性沈殿、酵素処理等が挙げられる。
上記の処理により、種々の生体試料からの低分子物質の抽出が可能となる。
【実施例】
【0025】
試験例1:人工尿からの8-oxo-dGの抽出
<8-oxo-dGを含有する模擬生体試料の調製>
人工尿(JISコード T3214:2011)に、標準8-oxo-dGを、250ng/mLの濃度となるように溶解して、模擬生体試料を調整した。
【0026】
<多孔質炭素を保持したミリポアフィルターのカートリッジの作製>
多孔質炭素(CNovel(登録商標)MJ(4)110(設計メソ孔径:110nm)を立体構造中に高密度に持つ機能性活性炭、粒径:約5μm以下、親水性、東洋炭素(株)社製)を、1mg/mLの量となるように超純水中に静かに(泡立たないように)混和し、空気の泡が細孔を塞がないように、100KHzの超音波を5分間付与し充分に脱気して、多孔質炭素浮遊液を調製した。
上記で調製した多孔質炭素浮遊液1mLを、シリンジを使ってミリポアフィルター(DISMIC 13HP045AN、テフロン(登録商標)(PTFE)製濾過膜(ポアサイズ0.45μm)、膜の径:13mm、アドバンテック東洋(株)社製)で濾過して、濾過膜の前腔に多孔質炭素を均一に補充した。
次に、上記の多孔質炭素が補充されたミリポアフィルターに、二つ目のミリポアフィルター(DISMIC 13HP045AN、テフロン(登録商標)(PTFE)製濾過膜(ポアサイズ0.45μm)、膜の径:13mm、アドバンテック東洋(株)社製)を連結し、超純水1mLをゆっくり通水する事で、前後2つの濾過膜の間に多孔質炭素を確実に保持した。二つのミリポアフィルターを連結して構成したカートリッジの空間に空気泡が混入しないように配慮し、これにより、カートリッジ内面及び多孔質炭素における炭素原子の表面を水分子で被われた状態とした。
【0027】
<遊離液の調製>
100%アセトニトリル中に、親水性の真球シリカ(アドマナノ YA010C-SV1、平均粒径10nm、表面処理:ビニル化、(株)アドマテックス社製)を1質量%の割合で混和し浮遊させた(遊離原液)。溶液の均一化と脱気を目的として、100KHzの超音波を付与し、保存は常温保存とした。
遊離原液は、使用時に超純水で10倍に希釈することで、遊離液(0.1質量%の真球シリカが浮遊する10%アセトニトリル溶液)とした。
【0028】
<模擬生体試料の濾過(試料中の8-oxo-dGの濾過吸着)>
前記で調製した、標準8-oxo-dGを含有する模擬生体試料の1mLを、前記で作製した多孔質炭素を保持したミリポアフィルターのカートリッジを用い、シリンジを使って、1mL/分を目安にして、できるだけ等圧で濾過した。
濾過する前及び後の試料をHPLCで分析した。
濾過する前のHPLCチャートを
図1に示し、濾過した後のHPLCチャートを
図2に示した。
HPLCの分析条件を以下に示した。
HPLC分析条件
機器:HTEC-500((株)エイコム社製)(8-oxo-dGは電気化学的に検出)
ODSカラム:CA-5ODS,カラムサイズ:2.1φ×150mm((株)エイコム社製)
移動相:リン酸緩衝液(pH6.5-6.8)、メタノール2%、SDS 90mg/L
8-oxo-dG標準溶液(250ng/mL)のHPLC測定値のピーク面積を100とした場合の比率%として算出した結果、多孔質炭素に吸着された8-oxo-dGの量は、模擬生体試料中に含まれる8-oxo-dGの量の98.2%となった。
【0029】
<8-oxo-dGの多孔質炭素からの回収>
8-oxo-dGを吸着した多孔質炭素が保持されたカートリッジに、シリンジを用い、上記で調製した遊離液の1mLを、1mL/分を目安にして、等圧となるように注入し、0.25mLの4つの画分として回収した。
0~0.25mLの画分のHPLCチャートを
図3の(A)に示し、0.25~0.5mLの画分のHPLCチャートを
図3の(B)に示し、0.5~0.75mLの画分のHPLCチャートを
図3の(C)に示し、0.75~1.0mLの画分のHPLCチャートを
図3の(D)に示した。
【0030】
8-oxo-dG標準溶液(250ng/mL)のHPLC測定値のピーク面積を100とした場合の比率%として算出した結果、遊離液1mLで回収された8-oxo-dGの量は、90.9%となった。