(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】洋上風車アクセス船及び洋上風車アクセス船の操船方法
(51)【国際特許分類】
B63H 25/38 20060101AFI20240821BHJP
B63B 81/00 20200101ALI20240821BHJP
B63B 1/12 20060101ALI20240821BHJP
B63B 39/06 20060101ALI20240821BHJP
B63H 5/08 20060101ALI20240821BHJP
B63H 25/02 20060101ALI20240821BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B63H25/38 D
B63B81/00
B63B1/12 A
B63B39/06 E
B63H5/08
B63H25/02 Z
B63H25/38 B
B63H25/42 Z
B63H25/42 G
B63H25/42 F
(21)【出願番号】P 2022049350
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】522120185
【氏名又は名称】株式会社松浦重機
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏始
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-127199(JP,U)
【文献】特開2017-094984(JP,A)
【文献】特開2010-162965(JP,A)
【文献】特開平06-064589(JP,A)
【文献】国際公開第2021/107773(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111703538(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/38
B63B 81/00
B63B 1/12
B63B 39/06
B63H 5/08
B63H 25/02
B63H 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電設備の作業員輸送用の半没水型双胴船であり、船尾の左右両舷に設けられた2組の、フラップ舵及び前記フラップ舵の前方に設けられた固定ピッチのプロペラと、船首に設けられ、一方の舷側から他方の舷側に向かう水流を生成するバウスラスターを備える2軸2舵の洋上風車アクセス船であって、
船員の操作で船の進行する向きを指示するレバー型の操縦桿と、
前記操縦桿の指示に基づき、前記フラップ舵、前記プロペラ、及び前記バウスラスターを制御して船を指示通りの向きに進行させる制御部を備え、
前記制御部は、
前記操縦桿からの指示が後進の場合、
前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、
左舷側と右舷側の前記フラップ舵を、前方の前記プロペラの先端より船幅方向外側で、かつ船首側に後端のフラップ部が向くように左舷側と右舷側に各々回動させ、前記プロペラが生成した水流を前記フラップ舵の側面にガイドさせ向きを船首側に曲げて船を後進させ
て、
前記操縦桿からの指示が左右いずれかの舷側への横方向の移動の場合、
前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、
2枚の前記フラップ舵をいずれも指示された側の舷側と逆舷に回動した状態にしつつ、前記バウスラスターを指示された側の舷側から逆舷に向かう水流が発生するように制御し、
前記操縦桿からの指示が左右いずれか一方の舷側への横方向の移動から、他の舷側への横方向の移動に、進行する向きを逆転する指示の場合、
前記バウスラスターを停止し、
左舷側の前記フラップ舵を、後端を左舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が左舷側に流れる舵角にし、右舷側の前記フラップ舵を、後端を右舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が右舷側に流れる舵角にすることで船が現在位置に保持される中立姿勢にし、
その後、前記バウスラスターの水流の向きを中立姿勢にする前と逆向きにして、かつ中立姿勢から他の舷側に船が進行するように前記フラップ舵を回動させることを特徴とする、洋上風車アクセス船。
【請求項2】
洋上風力発電設備の作業員輸送用の半没水型双胴船であり、船尾の左右両舷に設けられた2組の、フラップ舵及び前記フラップ舵の前方に設けられた固定ピッチのプロペラと、船首に設けられ、一方の舷側から他方の舷側に向かう水流を生成するバウスラスターを備える2軸2舵の洋上風車アクセス船の操船方法であって、
前記洋上風車アクセス船を後進させる際に、
前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、
左舷側と右舷側の前記フラップ舵を、前方の前記プロペラの先端より船幅方向外側でかつ船首側に後端のフラップ部が向くように左舷側と右舷側に各々回動させ、前記プロペラが生成した水流を前記フラップ舵の側面にガイドさせ向きを船首側に曲げて船を後進させ
て、
前記洋上風車アクセス船を左右いずれかの舷側への横方向に移動させる場合、
前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、
2枚の前記フラップ舵をいずれも移動する側の舷側と逆舷に回動した状態にしつつ、前記バウスラスターに、移動する側の舷側から逆舷に向かう水流を発生させ、
左右いずれか一方の舷側への横方向の移動から、他の舷側への横方向の移動に、進行する向きを逆転する場合、
前記バウスラスターを停止し、
左舷側の前記フラップ舵を、後端を左舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が左舷側に流れる舵角にし、右舷側の前記フラップ舵を、後端を右舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が右舷側に流れる舵角にすることで船が現在位置に保持される中立姿勢にし、
その後、前記バウスラスターの水流の向きを中立姿勢にする前と逆向きにして、かつ中立姿勢から他の舷側に船が進行するように前記フラップ舵を回動させることを特徴とする、洋上風車アクセス船の操船方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋上風車アクセス船及び洋上風車アクセス船の操船方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上は山林や建築物のような風の流れを阻害するものがないため、洋上に風力発電設備を設置すれば、地上に設置した場合と比べて乱気流が少なく安定して大きな風力が得られ、地上より大きな電力が供給できる可能性がある。一方で洋上に風力発電設備を設置した場合、整備等の作業員を船舶で輸送する必要があるが、洋上の風力発電設備には港湾のような係留設備のスペースを確保し難く、設置場所も港湾より沖合で波浪を受けやすい。そのため、作業員を船舶で輸送する場合、港湾のように船舶を設備に係留してから作業員が設備に移動するのではなく、船舶を前後左右に微速移動させて設備に船首等の船体の一部を近づけ、近づけた部分から作業員が設備に飛び移る場合がある。このような風力発電設備の作業員を輸送する洋上風車アクセス船には船体動揺がなるべく小さく、前後左右に微速移動でき、かつ移動しない中立姿勢も保持できる船舶が求められる。
【0003】
このような船舶としては、まず船体構造として半没水型双胴船がある(特許文献1)。半没水型双胴船とは、双胴船の水上の胴部を正面視で底部に向けて先細りとし、没水したロワーハルを底部に設けた双胴船であり、通常の双胴船に比べ、停泊時・航行時ともに動揺が小さい点で風力発電設備の作業員を輸送する船舶として好適である。
【0004】
また、推進機構や操舵機構としては、風力発電設備の作業員を輸送する船舶ではないが、中立姿勢を保持できるように左右両舷に2組の舵及びプロペラを設けた2軸2舵船がある(特許文献2)。この構造では中立姿勢にする際に左右両舷の舵を左右両舷に各々向け、プロペラが生成した水流の向きを左右両舷に曲げることで左右両舷から水流を流出させ、互いの反力で水流による推進力を打ち消すことで中立姿勢を保持できる。
また、2軸2舵船の船首にバウスラスターを設けた構造もある(特許文献3)この構造では左右に移動する場合、2枚の舵を左舷又は右舷に回動させるとともに、バウスラスターを作動させることで回頭せずに船舶を左右に横方向へ移動できるようにしている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平08-34386号公報
【文献】特開平06-255586号公報
【文献】特開2017-94984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力発電設備の作業員を輸送する船舶は設備に接近する際に、波浪等の影響で頻繁に前後方向に移動する向きを切り替える場合がある。
しかしながら特許文献1~3の構造は、前後方向の移動向きを切り替える度にプロペラの回転する向きを切り替える必要があるため、移動する向きを切り替える度にクラッチや減速機等の操船機器の操作が生じ制御が煩雑になる問題があった。またクラッチや減速機のような操船機器は、船員が操作を指示してから操船機器が動作するまで所定の応答速度がある。そのため、移動する向きを頻繁に切り替えると切り替え速度が応答速度より速くなり、船員の操作に操船機器の動作が追従できない可能性があった。特に、プロペラを回転させる主機のアイドル回転数が高い場合、微速で前進/後進する場合の船速も速くなるため、船員の操作に操船機器の動作が追従できないと、船速が速すぎて目標位置を通過してしまい船の位置が静定しなくなる可能性があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、頻繁に移動する向きを変える場合でも制御が単純で、船員の操作に操船機器の動作が追従しやすい洋上風車アクセス船の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、本発明の1 態様は、洋上風力発電設備の作業員輸送用の半没水型双胴船であり、船尾の左右両舷に設けられた2組の、フラップ舵及び前記フラップ舵の前方に設けられた固定ピッチのプロペラと、船首に設けられ、一方の舷側から他方の舷側に向かう水流を生成するバウスラスターを備える2軸2舵の洋上風車アクセス船であって、船員の操作で船の進行する向きを指示するレバー型の操縦桿と、前記操縦桿の指示に基づき、前記フラップ舵、前記プロペラ、及び前記バウスラスターを制御して船を指示通りの向きに進行させる制御部を備え、前記制御部は、前記操縦桿からの指示が後進の場合、前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、左舷側と右舷側の前記フラップ舵を、前方の前記プロペラの先端より船幅方向外側で、かつ船首側に後端のフラップ部が向くように左舷側と右舷側に各々回動させ、前記プロペラが生成した水流を前記フラップ舵の側面にガイドさせ向きを船首側に曲げて船を後進させて、前記操縦桿からの指示が左右いずれかの舷側への横方向の移動の場合、前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、2枚の前記フラップ舵をいずれも指示された側の舷側と逆舷に回動した状態にしつつ、前記バウスラスターを指示された側の舷側から逆舷に向かう水流が発生するように制御し、前記操縦桿からの指示が左右いずれか一方の舷側への横方向の移動から、他の舷側への横方向の移動に、進行する向きを逆転する指示の場合、前記バウスラスターを停止し、左舷側の前記フラップ舵を、後端を左舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が左舷側に流れる舵角にし、右舷側の前記フラップ舵を、後端を右舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が右舷側に流れる舵角にすることで船が現在位置に保持される中立姿勢にし、その後、前記バウスラスターの水流の向きを中立姿勢にする前と逆向きにして、かつ中立姿勢から他の舷側に船が進行するように前記フラップ舵を回動させることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の態様は、洋上風力発電設備の作業員輸送用の半没水型双胴船であり、船尾の左右両舷に設けられた2組の、フラップ舵及び前記フラップ舵の前方に設けられた固定ピッチのプロペラと、船首に設けられ、一方の舷側から他方の舷側に向かう水流を生成するバウスラスターを備える2軸2舵の洋上風車アクセス船の操船方法であって、前記洋上風車アクセス船を後進させる際に、前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、左舷側と右舷側の前記フラップ舵を、前方の前記プロペラの先端より船幅方向外側でかつ船首側に後端のフラップ部が向くように左舷側と右舷側に各々回動させ、前記プロペラが生成した水流を前記フラップ舵の側面にガイドさせ向きを船首側に曲げて船を後進させて、前記洋上風車アクセス船を左右いずれかの舷側への横方向に移動させる場合、前記プロペラの回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流を生成する向きで、2枚の前記フラップ舵をいずれも移動する側の舷側と逆舷に回動した状態にしつつ、前記バウスラスターに、移動する側の舷側から逆舷に向かう水流を発生させ、左右いずれか一方の舷側への横方向の移動から、他の舷側への横方向の移動に、進行する向きを逆転する場合、前記バウスラスターを停止し、左舷側の前記フラップ舵を、後端を左舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が左舷側に流れる舵角にし、右舷側の前記フラップ舵を、後端を右舷側に向けて前方の前記プロペラが生成した水流が右舷側に流れる舵角にすることで船が現在位置に保持される中立姿勢にし、その後、前記バウスラスターの水流の向きを中立姿勢にする前と逆向きにして、かつ中立姿勢から他の舷側に船が進行するように前記フラップ舵を回動させることを特徴とする。
【0009】
この構成では、船が後進する際にプロペラの回転する向きを前進時と同じとし、舵の後端のフラップ部がプロペラの先端より船幅方向外側で、かつ船首側を向く姿勢にすることでプロペラ後流を舵側面に当て、船首側に向かう向きに曲げて船を後進させる。
この構成では、前進と後進を切り替える際に舵の舵角を変えるだけでよく、クラッチや減速機の操作等でプロペラの回転する向きを変える必要が無いので、制御が単純になり、進行する向きを頻繁に切り替えても船員の切替操作に操船機器の動作が追従し易い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、頻繁に移動する向きを変える場合でも制御が単純で、船員の操作に操船機器の動作が追従しやすい洋上風車アクセス船を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る洋上風車アクセス船を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【
図2】
図1の平面図であって、左舷側胴部、右舷側胴部、及び甲板は破線で記載し、甲板室は記載を省略している。
【
図4】本発明の実施形態に係る洋上風車アクセス船の機能ブロック図である。
【
図5】洋上風車アクセス船の進行する向きと、左舷側プロペラ、右舷側プロペラ、左舷側フラップ舵、右舷側フラップ舵、左舷側バウスラスター、及び右舷側バウスラスターの動作の関係を示す模式図である。
【
図6】
図5で洋上風車アクセス船が前進する場合の左舷側プロペラ、右舷側プロペラ、左舷側フラップ舵、右舷側フラップ舵、左舷側バウスラスター、及び右舷側バウスラスターの動作の関係を示す模式図である。
【
図7】
図5で洋上風車アクセス船が後進する場合の左舷側プロペラ、右舷側プロペラ、左舷側フラップ舵、右舷側フラップ舵、左舷側バウスラスター、及び右舷側バウスラスターの動作の関係を示す模式図である。
【
図8】
図5で洋上風車アクセス船が左舷側に横移動する場合の左舷側プロペラ、右舷側プロペラ、左舷側フラップ舵、右舷側フラップ舵、左舷側バウスラスター、及び右舷側バウスラスターの動作の関係を示す模式図である。
【
図9】
図5で洋上風車アクセス船が右舷側に横移動する場合の左舷側プロペラ、右舷側プロペラ、左舷側フラップ舵、右舷側フラップ舵、左舷側バウスラスター、及び右舷側バウスラスターの動作の関係を示す模式図である。
【
図10】
図5で洋上風車アクセス船がプロペラを回転させた状態で現在位置に保持される中立姿勢の場合の左舷側プロペラ、右舷側プロペラ、左舷側フラップ舵、右舷側フラップ舵、左舷側バウスラスター、及び右舷側バウスラスターの動作の関係を示す模式図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る洋上風車アクセス船の操船方法の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず
図1~
図10を参照して本発明の実施形態に係る洋上風車アクセス船1の概略構成を説明する。ここでは洋上風車アクセス船1として、洋上に設置された洋上風力発電設備の作業員を陸上から風力発電設備まで輸送する作業員輸送用の半没水型双胴船を例示している。
【0013】
図1及び
図2に示すように洋上風車アクセス船1は、左舷側胴部3a、右舷側胴部3b、甲板5、左舷側ロワーハル11a、右舷側ロワーハル11b、左舷側プロペラ13a、右舷側プロペラ13bを備える。
図2及び
図3に示すように洋上風車アクセス船1は、左舷側フラップ舵15a、右舷側フラップ舵15b、左舷側バウスラスター21a、右舷側バウスラスター21bも備える。
図4に示すように洋上風車アクセス船1はジョイスティック43及び制御部41も備える。
【0014】
左舷側胴部3a及び右舷側胴部3bは洋上風車アクセス船1の船殻となる船体であり、
図2に示すように船長方向であるX方向に延在する外形を有する。また、左舷側胴部3a及び右舷側胴部3bは
図1(b)及び
図2に示すように、船長方向であるX方向に対して互いに並列配置されている。具体的には船幅方向であるY方向において左舷側に左舷側胴部3aが配置され、右舷側に右舷側胴部3bが配置される。このように洋上風車アクセス船1は左舷側胴部3a及び右舷側胴部3bの2つの船体を備える双胴船であるため、船体が1つの単胴船と比べて横方向の傾斜であるヒール等の船体動揺を小さくでき、安定性に優れている。
【0015】
図1(b)に示すように左舷側胴部3aは正面視で、下端である左舷側底部10aに向けて先細りの形状となっており、吃水線W.L.と接する部分が吃水線W.L.より上方の部分よりも細くなっている。右舷側胴部3bも同様に、正面視で、下端である右舷側底部10bに向けて先細りの形状となっており、吃水線W.L.と接する部分が吃水線W.L.より上方の部分よりも細くなっている。このように吃水線W.L.近傍の左舷側胴部3aと右舷側胴部3bの形状を細く絞ることで、洋上風車アクセス船1は一般的な双胴船と比べて造波抵抗を低減でき、波浪中の走行性に優れている。
【0016】
甲板5は左舷側胴部3a及び右舷側胴部3bを吃水線W.L.より上方で連結する床部であり、
図1(b)では左舷側胴部3aの上面と右舷側胴部3bの上面に設置されている。また、甲板5は船橋等の操船の指揮所である甲板室7が設置される。甲板5の船長方向長さ及び船幅方向の幅は、左舷側胴部3a及び右舷側胴部3bを連結できる程度である。
【0017】
左舷側ロワーハル11a及び右舷側ロワーハル11bも、洋上風車アクセス船1の船殻となる船体の一部である。ただし航行時に没水することで造波抵抗の増大を抑制しつつ、浮力を確保する。具体的には左舷側ロワーハル11aは
図2に示すように船長方向両端が先細りで船長方向に延在する円筒状の外形を有し、
図1(b)に示すように上端が左舷側胴部3aの左舷側底部10aに連結され没水する。右舷側ロワーハル11bも
図2に示すように船長方向両端が先細りで船長方向に延在する円筒状の外形を有し、
図1(b)に示すように上端が右舷側胴部3bの右舷側底部10bに連結され没水する。
【0018】
左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bは洋上風車アクセス船1を進行させるための推進力を生成する羽根車である。
図2に示すように左舷側プロペラ13aは左舷側ロワーハル11aの船長方向後端、つまりX方向船尾端に設けられ、プロペラ後流と呼ばれる船首側から船尾側へ向かう水流を生成して洋上風車アクセス船1の推進力とする。右舷側プロペラ13bは右舷側ロワーハル11bの船長方向後端、つまりX方向船尾端に設けられ、プロペラ後流を生成して推進力とする。このように、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bは洋上風車アクセス船1において、船尾の左右両舷にそれぞれ設けられている。
なお、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転中心には動力源である内燃機関や電動機が回転軸を介して連結されているが、これらは図示を省略する。
【0019】
左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bは船長方向に対する羽根の傾斜角が固定された固定ピッチプロペラである。これは可変ピッチプロペラを備えた船舶はプロペラの羽根の傾斜角を変更することで、前後方向の移動速度や向きを微細に調整できるため、本実施形態に係る洋上風車アクセス船1のような構造や制御を採用する必要がないためである。
【0020】
左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bは、プロペラ後流の向きを曲げることで洋上風車アクセス船1の進行する向きを設定する水中板である。
図2に示すように左舷側フラップ舵15aは左舷側胴部3aの船尾端近傍に設けられ、かつ左舷側プロペラ13aの後方に設けられる。逆に言えば左舷側プロペラ13aは左舷側フラップ舵15aの前方に設けられる。
図1(a)及び
図2に示すように右舷側フラップ舵15bは右舷側胴部3bの船尾端近傍に設けられ、かつ右舷側プロペラ13bの後方に設けられる。逆に言えば右舷側プロペラ13bは右舷側フラップ舵15bの前方に設けられる。このように、左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bは洋上風車アクセス船1において、船尾の左右両舷にそれぞれ設けられている。なお、「前方」あるいは「前」とは船長方向であるX方向における船首側を意味する。「後方」あるいは「後」とは船長方向であるX方向における船尾側を意味する。以下の説明も同様である。
【0021】
図3に示すように左舷側フラップ舵15aは左舷側主舵17a及び左舷側フラップ部19aを備える。左舷側主舵17aは
図3に示すように舵角が0°、つまり、プロペラ後流の向きを曲げられない姿勢で左舷側フラップ部19aよりも、船長方向であるX方向前方にある部分である。左舷側主舵17aは左舷側胴部3aの船尾端近傍から鉛直方向であるZ方向の下向きに突設された左舷側舵軸31aに軸支されている。左舷側主舵17aは左舷側舵軸31aを駆動する図示しない舵取機等のアクチュエータで左舷側舵軸31aを中心軸に
図3のA1、A2の向きに回動可能である。
【0022】
左舷側フラップ部19aは
図3に示すように舵角が0°で左舷側主舵17aよりも、船長方向後方にある部分である。
左舷側フラップ部19aは、船長方向前端が
図3に示すように鉛直方向であるZ方向に延在する左舷側フラップ軸33aで左舷側主舵17aの船長方向後端に軸支されている。これにより左舷側フラップ部19aを駆動する図示しない舵取機等のアクチュエータで左舷側フラップ部19aは左舷側フラップ軸33aを中心軸に
図3のA1、A2の向きに回動可能である。
【0023】
図3に示すように右舷側フラップ舵15bは右舷側主舵17b及び右舷側フラップ部19bを備える。右舷側主舵17bは
図3に示すように舵角が0°で右舷側フラップ部19bよりも船長方向前方にある部分である。右舷側主舵17bは右舷側胴部3bの船尾端近傍から鉛直方向であるZ方向の下向きに突設された右舷側舵軸31bに軸支されている。右舷側主舵17bは右舷側舵軸31bを駆動する図示しない舵取機等で右舷側舵軸31bを中心軸に
図3のA1、A2の向きに回動可能である。
【0024】
右舷側フラップ部19bは
図3に示すように舵角が0°で右舷側主舵17bよりも船長方向後方にある部分である。
右舷側フラップ部19bは船長方向前端が
図3に示すように鉛直方向に延在する右舷側フラップ軸33bで右舷側主舵17bの船長方向後端に軸支されている。これにより右舷側フラップ部19bを駆動する図示しない舵取機等で右舷側フラップ部19bは右舷側フラップ軸33bを中心軸に
図3のA1、A2の向きに回動可能である。
【0025】
このように洋上風車アクセス船1は、船尾の左舷側に設けられた左舷側フラップ舵15aと左舷側プロペラ13aの組と、右舷側に設けられた右舷側フラップ舵15bと右舷側プロペラ13bの組の2組のフラップ舵及びプロペラを左右両舷に備える。このような船舶は2軸2舵船とも呼ばれる。
【0026】
図1及び
図2に示す左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bは、一方の舷側から他方の舷側に向かう水流を生成して洋上風車アクセス船1に横力を加えることで船幅方向であるY方向に移動させる推進機構である。左舷側バウスラスター21aは左舷側ロワーハル11aに設けられ、右舷側バウスラスター21bは右舷側ロワーハル11bに設けられる。
【0027】
左舷側バウスラスター21aは左舷側ロワーハル11aを船幅方向にかつ水平方向に貫通する図示しない円筒状のダクトと、ダクト内に設けられた回転式の図示しない羽根車を備える。この構成ではダクトの軸方向を軸中心として羽根車が回転することで片舷から逆舷に向かう水流を生成する。右舷側バウスラスター21bの構造も同様であり、右舷側ロワーハル11bを船幅方向にかつ水平方向に貫通する図示しない円筒状のダクトと、ダクト内に設けられた図示しない回転式の羽根車を備える。
【0028】
左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bは左舷側ロワーハル11a及び右舷側ロワーハル11bの船首にそれぞれ設けられる。より具体的には船長方向であるX方向における左舷側ロワーハル11a、右舷側ロワーハル11bの中心よりもそれぞれ船首端側に設けられる。また、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bは水中でないと水流を生成できないため、
図1(a)(b)に示すように喫水線W.L.より下方に設けられる。
【0029】
図4に示すジョイスティック43は船員の操作で洋上風車アクセス船1の進行する向きを指示するレバー型の操縦桿であり、
図1に示す甲板室7等の操船の指揮所における操舵室に設けられる。
図4に例示するジョイスティック43は台座43aと、台座43aから上方に突設された棒状の操作レバー43bを備える。操作レバー43bは台座43aに連結された下端を中心に傾動可能に構成されている。
図4に示すジョイスティック43は、操作レバー43bを船員が傾動させない状態では真上を向いており、船員が操作レバー43bを握って下端を中心に少なくとも前後左右の4つの異なる向きに操作レバー43bを傾動可能に構成されている。また台座43aは操作レバー43bの傾動している向きを、洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号として出力する図示しない出力部も有している。
図4に示すジョイスティック43は、操作レバー43bが前後左右に傾動すると、出力部が、洋上風車アクセス船1を前後左右に進行させる指示となる信号を出力する。操作レバー43bが真上を向いている場合、出力部は、洋上風車アクセス船1が現在位置に保持される指示となる中立姿勢を示す信号を出力する。なお、中立姿勢を示す信号は洋上風車アクセス船1を進行させずに現在位置に保持させる信号なので、厳密には進行する向きを指示する信号ではないが、本明細書では便宜上、中立姿勢を示す信号を、進行する向きを指示する信号の一種として扱う。同様に、本明細書における「進行する向き」とは、前後左右だけでなく、中立姿勢を含む場合がある。
【0030】
また、ここでいう洋上風車アクセス船1が左右に進行する場合とは、回頭のように船首の向きを変えながら左右に旋回する場合ではなく、洋上風車アクセス船1の姿勢を変えずに左右いずれか一方の舷側へ横方向に移動する場合を意味する。以下の説明でも同様である。
【0031】
このような前後左右の移動及び中立姿勢に対応した左舷側フラップ舵15a、右舷側フラップ舵15b、左舷側プロペラ13a、右舷側プロペラ13b、左舷側バウスラスター21a、右舷側バウスラスター21bの状態を例示すると
図5に示すようになる。
【0032】
図4に示す制御部41は左舷側フラップ舵15a、右舷側フラップ舵15b、左舷側プロペラ13a、右舷側プロペラ13b、左舷側バウスラスター21a、及び右舷側バウスラスター21bの動作を制御するコンピュータである。より具体的には制御部41はジョイスティック43の指示に基づき、これらの機器を制御して洋上風車アクセス船1を指示通りの向きに進行させる装置であり、例えば
図1に示す甲板室7等の操船の指揮所における操舵室に設けられる。
また、制御部41はジョイスティック43の出力部と電気的に接続され、洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号を受信するように構成されている。
【0033】
制御部41は左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bの舵角を指示するようにも構成されている。より具体的には左舷側主舵17a、左舷側フラップ部19a、右舷側主舵17b、右舷側フラップ部19bを駆動する図示しない舵取機と電気的に接続されている。この構成では制御部41は左舷側主舵17a、左舷側フラップ部19a、右舷側主舵17b、右舷側フラップ部19bが洋上風車アクセス船1の進行する向きに対応した舵角になるように図示しない舵取機を制御する。
【0034】
制御部41は左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転する向きや回転数等を指示するようにも構成されている。より具体的には制御部41は左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを駆動する主機や、回転数を調整する減速機等の操船機器と電気的に接続され、これらの操船機器を制御する。ただし本実施形態に係る洋上風車アクセス船1は進行する向きを制御する際に左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転する向きは変更しない。
【0035】
制御部41は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが水流を生成するか否か、及び水流を生成する場合は水流の向きを指示するようにも構成されている。具体的には制御部41は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの図示しない羽根車を駆動させる図示しない内燃機関や電動機と電気的に接続されている。制御部41は内燃機関や電動機の駆動を制御することで左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの動作を制御する。
【0036】
制御部41がジョイスティック43の指示通りの向きに洋上風車アクセス船1を進行させる例は以下の通りである。まず、制御部41がジョイスティック43から洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号として「前進」を示す信号を受信したとする。
【0037】
この場合、制御部41は
図6に示すように左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを、回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流であるプロペラ後流を生成するB1、B2の向きになるように制御する。なお、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bは回転数を等しくする等して、プロペラ後流の流速や流量が左右で変わらないようにする。
また制御部41は、
図6に示すように左舷側主舵17a、左舷側フラップ部19a、右舷側主舵17b、右舷側フラップ部19bの舵角を全て0°にする。
さらに制御部41は、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの駆動を停止する。既に駆動が停止している場合は停止した状態を維持する。
【0038】
すると、プロペラ後流は左舷側主舵17a、左舷側フラップ部19a、右舷側主舵17b、右舷側フラップ部19bで向きを曲げられないので、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bが生成したF1の向きのままで後方に流れる。
そのため洋上風車アクセス船1はプロペラ後流の反力で船首側、つまり前方に進行する。
【0039】
次に、制御部41がジョイスティック43から洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号として「後進」を示す信号を受信したとする。
この場合、制御部41は
図7に示すように左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを、回転する向きが、船首側から船尾側に向かう水流であるプロペラ後流を生成する向きであるB1、B2の向きになるように制御する。つまり「前進」の場合と同じ向きに左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを回転させる。左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転数等も「前進」の場合と同様に左右でプロペラ後流の流速や流量が変わらないようにする。
さらに制御部41は、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの駆動を停止する。既に駆動が停止している場合は停止した状態を維持する。
【0040】
さらに制御部41は、左舷側フラップ舵15aを前方の左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側で、かつ船首側に後端の左舷側フラップ部19aが向くように左舷側に回動させる。
【0041】
具体的には、制御部41は図示しない舵取機等を制御して左舷側フラップ舵15aの左舷側主舵17aを、後端が左舷側かつ船首側を向く舵角で左舷側に回動させる。さらに制御部41は図示しない舵取機等を制御して左舷側フラップ部19aの向きG1が、左舷側プロペラ13aの先端51aよりも船幅方向外側で、かつ船首側を向くように、左舷側主舵17aよりも大きな舵角で回動させる。なお、ここでいう「左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側」とは、左舷側プロペラ13aの先端51aの回転軌跡よりも左側という意味である。
【0042】
左舷側プロペラ13aをこのような舵角にすると、F1の向きで左舷側プロペラ13aから流れてきたプロペラ後流は左舷側主舵17aの左側面に当たって、左舷側かつ船首側を向くF2の向きにガイドされる。F2の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに左舷側フラップ部19aの左側面に当たって左舷側かつ船首側を向くF3の向きにガイドされて左舷から、船首側かつ左舷側に、船長方向であるX方向に対して斜め方向に流出する。
【0043】
同時に、制御部41は、右舷側フラップ舵15bを前方の右舷側プロペラ13bの先端51bより船幅方向外側で、かつ船首側に後端の右舷側フラップ部19bが向くように右舷側に回動させる。
具体的には制御部41は図示しない舵取機等を制御して右舷側フラップ舵15bの右舷側主舵17bを、後端が右舷側かつ船首側を向く舵角で右舷側に回動させる。この舵角は左舷側主舵17aと向きが逆だが、大きさは同じである。さらに制御部41は図示しない舵取機等を制御して右舷側フラップ部19bの向きG2が、右舷側プロペラ13bの先端51bよりも船幅方向外側で、かつ船首側を向くように、右舷側主舵17bよりも大きな舵角で回動させる。この舵角は左舷側フラップ部19aと向きが逆だが、大きさは同じである。なおここでいう「右舷側プロペラ13bの先端51bより船幅方向外側」とは、右舷側プロペラ13bの先端51bの回転軌跡よりも右側という意味である。
【0044】
これにより、F1の向きで右舷側プロペラ13bから流れてきたプロペラ後流は右舷側主舵17bの右側面に当たって、右舷側かつ船首側を向くF4の向きにガイドされる。F4の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに右舷側フラップ部19bの右側面に当たって右舷側かつ船首側を向くF5の向きにガイドされて右舷から、船首側かつ右舷側に、船長方向であるX方向に対して斜め方向に流出する。
【0045】
このように、プロペラ後流は左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bの側面にガイドされて向きを船首側に曲げられる。
この際、左舷側から流出したプロペラ後流の向きはF3の向きであるため、左舷側と船首側の方向成分、つまりX方向とY方向の方向成分を有している。右舷側から流出したプロペラ後流の向きはF5の向きであり、右舷側と船首側の方向成分、つまりX方向とY方向の方向成分を有している。しかしながら左右のプロペラ後流の流速や流量が等しい場合、左舷側と右舷側の方向成分は打ち消しあって0になる。
よって洋上風車アクセス船1は船首側に曲げられたプロペラ後流の反力で船尾側、つまり後方に進行して後進する。
【0046】
なお、左舷側フラップ部19aの向きG1を左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側に設定する理由は以下の通りである。仮に左舷側フラップ部19aの向きを左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向内側に設定すると、左舷側フラップ部19aにガイドされたプロペラ後流が左舷側プロペラ13aに衝突してエネルギーを損失する。そのため衝突によるエネルギー損失を防ぐために左舷側フラップ部19aの向きG1を左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側に設定する。右舷側フラップ部19bの向きG2を右舷側プロペラ13bの先端51bより船幅方向外側に設定する理由も同様であり、右舷側フラップ部19bにガイドされたプロペラ後流が右舷側プロペラ13bに衝突するのを防止するためである。
【0047】
このように洋上風車アクセス船1は後進する際に左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転する向きを前進時と同じとする。また左舷側フラップ部19aが船首側を向き、かつ左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側を向く姿勢にする。さらに右舷側フラップ部19bが船首側を向き、かつ右舷側プロペラ13bの先端51bより船幅方向外側を向く姿勢にする。これによりプロペラ後流を左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bの側面に当て、船首側に向かう向きに曲げて船を後進させる。
【0048】
この構成では、前進と後進を切り替える際に左舷側フラップ舵15aと右舷側フラップ舵15bの舵角を変えるだけでよく、クラッチや減速機の操船機器の操作で左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転する向きを変える必要がない。そのため制御部41による制御が単純になり、進行する向きを頻繁に切り替えても船員の切替操作に操船機器の動作が追従し易い。
【0049】
次に、制御部41がジョイスティック43から洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号として「左舷への横移動」、つまり左に進行する信号を受信したとする。
この場合、制御部41は
図8に示すように「前進」の場合と同じB1、B2の向きに左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを回転させる。左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転数等も「前進」の場合と同様に左右でプロペラ後流の流速や流量が変わらないようにする。
【0050】
さらに制御部41は、2枚の舵である左舷側フラップ舵15aと右舷側フラップ舵15bをいずれも指示された側の舷側と逆舷に回動した状態にする。具体的には
図8に示すように左舷側フラップ舵15aの左舷側主舵17a及び右舷側フラップ舵15bの右舷側主舵17bを、右舷側かつ船尾側を向く舵角で右舷側に回動させる。左舷側主舵17aと右舷側主舵17bの舵角は同じである。さらに制御部41は左舷側フラップ舵15aと右舷側フラップ舵15bの後端である左舷側フラップ部19aと右舷側フラップ部19bをいずれも右舷側を向く舵角に回動させる。左舷側フラップ部19aと右舷側フラップ部19bの舵角も同じである。
【0051】
これにより、F1の向きで左舷側プロペラ13aから流れてきたプロペラ後流は左舷側主舵17aの右側面に当たって、右舷側かつ船尾側を向くH1の向きにガイドされる。H1の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに左舷側フラップ部19aの右側面に当たって右舷側を向くH2の向きにガイドされて右舷側から流出する。さらにF1の向きで右舷側プロペラ13bから流れてきたプロペラ後流は右舷側主舵17bの右側面に当たってH1の向きにガイドされる。H1の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに右舷側フラップ部19bの右側面に当たってH2の向きにガイドされて右舷側から流出する。
【0052】
さらに、制御部41は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bを駆動して指示された側の舷側から逆舷に向かう水流が発生するように制御する。具体的には
図2及び
図8の矢印Cに示すように左舷側から右舷側に向かう水流を生成させる。
【0053】
左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが生成した水流と左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bが右舷側に曲げたプロペラ後流の反力で洋上風車アクセス船1は回頭せずに左舷側に横移動する。
【0054】
なお、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが水流を生成する理由は以下の通りである。
プロペラ後流は通常は洋上風車アクセス船1の重心よりも船尾側に生成される。そのため、プロペラ後流を右舷側に曲げるのみでは、重心を通る鉛直軸を中心に洋上風車アクセス船1が右に旋回する。一方で、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bは通常は洋上風車アクセス船1の重心よりも船首側にある。そのため、これらが左舷側から右舷側に向かう水流を生成することで重心よりも船首側と船尾側の両側で左舷側から右舷側に向かう水流が生じる。これにより、洋上風車アクセス船1を右に旋回させずに左舷側に横移動できる。以上が左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが水流を生成する理由である。
なお、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが生成する水流の流速や流量は、洋上風車アクセス船1が旋回しない程度である。
【0055】
次に、制御部41がジョイスティック43から洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号として「右舷への横移動」、つまり右に進行する信号を受信したとする。
この場合、制御部41は
図9に示すように「前進」の場合と同じB1、B2の向きに左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを回転させる。左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転数等も「前進」の場合と同様に左右でプロペラ後流の流速や流量が変わらないようにする。
【0056】
さらに制御部41は、2枚の舵である左舷側フラップ舵15aと右舷側フラップ舵15bをいずれも指示された側の舷側と逆舷に回動した状態にする。具体的には
図9に示すように左舷側フラップ舵15aの左舷側主舵17a及び右舷側フラップ舵15bの右舷側主舵17bを、左舷側かつ船尾側を向く舵角で左舷側に回動させる。左舷側主舵17aと右舷側主舵17bの舵角は同じである。さらに制御部41は左舷側フラップ舵15aと右舷側フラップ舵15bの後端である左舷側フラップ部19aと右舷側フラップ部19bをいずれも左舷側を向く舵角に回動させる。左舷側フラップ部19aと右舷側フラップ部19bの舵角も同じである。
【0057】
これにより、F1の向きで左舷側プロペラ13aから流れてきたプロペラ後流は左舷側主舵17aの左側面に当たって、左舷側かつ船尾側を向くJ1の向きにガイドされる。J1の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに左舷側フラップ部19aの左側面に当たって左舷側を向くJ2の向きにガイドされて左舷側から流出する。さらにF1の向きで右舷側プロペラ13bから流れてきたプロペラ後流は右舷側主舵17bの左側面に当たってJ1の向きにガイドされる。J1の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに右舷側フラップ部19bの左側面に当たってJ2の向きにガイドされて左舷側から流出する。
【0058】
さらに、制御部41は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bを駆動して指示された側の舷側から逆舷に向かう水流が発生するように制御する。具体的には
図2及び
図9の矢印Dに示すように右舷側から左舷側に向かう水流を生成させる。
【0059】
左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが生成した水流と左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bが左舷側に曲げたプロペラ後流の反力で洋上風車アクセス船1は回頭せずに右舷側に横移動する。
なお、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが水流を生成する理由は左舷側に移動する場合と同様に、洋上風車アクセス船1の旋回を防ぐためである。そのため、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが生成する水流の流速や流量は、洋上風車アクセス船1が旋回しない程度である。
【0060】
次に、制御部41がジョイスティック43から洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号として「中立姿勢」、つまり洋上風車アクセス船1が前後左右いずれの向きにも移動せずに現在位置に保持される信号を受信したとする。
この場合、制御部41は
図10に示すように「前進」の場合と同じB1、B2の向きに左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを回転させる。左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転数等も「前進」の場合と同様に左右でプロペラ後流の流速や流量が変わらないようにする。
【0061】
また、制御部41は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bが駆動している場合は駆動を停止する。既に駆動が停止している場合は停止した状態を維持する。
【0062】
次に制御部41は、左舷側フラップ舵15aを、左舷側フラップ部19aを左舷側に向けて前方の左舷側プロペラ13aが生成した水流が左舷側に流れる舵角にする。具体的には
図9に示す右横移動の場合と同じ舵角にする。より具体的には
図9及び
図10に示すように、左舷側フラップ舵15aの左舷側主舵17aを、左舷側かつ船尾側を向く舵角で左舷側に回動させる。さらに制御部41は左舷側フラップ舵15aの後端の左舷側フラップ部19aを、左舷側を向く舵角に回動させる。
【0063】
さらに制御部41は右舷側フラップ舵15bを、右舷側フラップ部19bを右舷側に向けて前方の右舷側プロペラ13bが生成した水流が右舷側に流れる舵角にする。具体的には
図8に示す左横移動の場合と同じ舵角にする。より具体的には
図8及び
図10に示すように、右舷側フラップ舵15bの右舷側主舵17bを、右舷側かつ船尾側を向く舵角で右舷側に回動させる。さらに制御部41は右舷側フラップ舵15bの後端の右舷側フラップ部19bを、右舷側を向く舵角に回動させる。
【0064】
これにより、F1の向きで左舷側プロペラ13aから流れてきたプロペラ後流は左舷側主舵17aの左側面に当たって、左舷側かつ船尾側を向くJ1の向きにガイドされる。J1の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに左舷側フラップ部19aの左側面に当たって左舷側を向くJ2の向きにガイドされて左舷側から流出する。さらにF1の向きで右舷側プロペラ13bから流れてきたプロペラ後流は右舷側主舵17bの右側面に当たってH1の向きにガイドされる。H1の向きにガイドされたプロペラ後流はさらに右舷側フラップ部19bの右側面に当たってH2の向きにガイドされて右舷側から流出する。
これにより、左舷側プロペラ13aのプロペラ後流は左舷側に曲げられ、右舷側プロペラ13bのプロペラ後流は反対に右舷側に曲げられる。そのため、互いに反対側に向きを曲げられたプロペラ後流が打ち消しあって、洋上風車アクセス船1は回頭せずに現在位置を保持する。
【0065】
このように制御部41はジョイスティック43の指示に基づき4通りの向きに洋上風車アクセス船1を移動させるか、中立姿勢に洋上風車アクセス船1を保持する。
また、船員がジョイスティック43を操作することで操作レバー43bの傾動する向きが変わった場合は、変わった後の傾動する向きに対応した向きに洋上風車アクセス船1を進行させるか、中立姿勢に洋上風車アクセス船1を保持する。
【0066】
ただし制御部41は、ジョイスティック43からの指示が左右いずれか一方の舷側への横方向の移動から、他の舷側への横方向の移動に、進行する向きを逆転する指示の場合は以下のように中立姿勢を経由する制御を行う。このような場合とは、例えば左舷側に横移動中に右舷側への横移動を指示された場合、あるいは右舷側への横移動中に左舷側への横移動を指示された場合である。
【0067】
この場合、まず制御部41は
図10に示すように左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bを停止する。
次に制御部41は左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを
図10に示す中立姿勢にする。
【0068】
その後、予め定められた所定の時間が経過する等してから、左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの水流の向きを中立姿勢にする前と逆向きにする。例えば左舷側に横移動中に右舷側への移動を指示された場合は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの水流の向きを中立姿勢にする前の向きであるCの向きの逆向きである
図9に示すDの向きにするように制御する。
さらに制御部41は中立姿勢から他の舷側に洋上風車アクセス船1が進行するように左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを回動させる。
例えば左舷側に横移動中に右舷側への移動を指示された場合は、
図9に示すように、右舷側への移動に対応した舵角に左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを回動させる。
【0069】
このように制御部41は、左右いずれかの向きに洋上風車アクセス船1を移動中に逆向きに移動する指示を受けた場合、中立姿勢を経由してから逆向きに移動する。理由は以下の通りである。
例えば
図8に示すように左舷側に移動中に右舷側に移動する向きを逆転する場合、中立姿勢を経由しない場合は左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを
図8に示す舵角から
図9に示す舵角になるようにA1の向きに回動する必要がある。この場合、回動中に
図6に示すように舵角が0°の姿勢になる。この姿勢は「前進」姿勢と同じなので、洋上風車アクセス船1は前進してしまう。
【0070】
このように左右いずれかの向きに移動中に洋上風車アクセス船1が逆向きに移動する際に中立姿勢を経由せずに舵角を変更すると、途中で舵角が0°になり船が前進してしまう。そのため、制御部41が中立姿勢を経由する制御をすることで、移動する向きを逆向きにする途中で意図しない前進を防止できる。
【0071】
なお、前後いずれかの向きに移動中に逆向きに移動する指示を受けた場合、例えば前進から後進に向きを変える場合、左舷側フラップ舵15aを左舷側に回動させ、右舷側フラップ舵15bを右舷側に回動させるため、途中で舵角が中立姿勢になる。後進から前進に向きを変える場合も同様に途中で舵角が中立姿勢になる。
そのため、
図5に示すように洋上風車アクセス船1は前後の移動する向きを逆向きにする場合、左右の移動する向きを逆向きにする場合のいずれも中立姿勢を経由する。ただし、前後の移動する向きを逆向きにする場合は必然的に中立姿勢を経由するため、制御部41が意図的に中立姿勢にする制御を行う必要はない。
以上が洋上風車アクセス船1の概略構成の説明である。
【0072】
次に洋上風車アクセス船1の操船方法について、
図11を参照して簡単に説明する。
まず、制御部41はジョイスティック43から洋上風車アクセス船1の進行する向きを示す信号を取得し、取得した信号が左舷側/右舷側への横移動を示す信号であるか、あるいは前進/後進/中立姿勢を示す信号であるかを判断する。その結果、取得した信号が左舷側/右舷側への横移動を示す信号である場合はS2に進み、前進/後進/中立姿勢を示す信号である場合はS4に進む(
図11のS1)。
【0073】
S1で取得した信号が左舷側/右舷側への横移動を示す信号である場合、制御部41は、取得した信号が、移動中の向きと逆向きへの移動の指示か否かを判断する。具体的には、左右いずれか一方の舷側への横方向の移動から、他の舷側への横方向の移動に、進行する向きを逆転する場合か否かを判断する。その結果、移動中の向きと逆向きへの移動の指示の場合はS3に進み、それ以外の場合はS4に進む(
図11のS2)。
【0074】
S1で取得した信号が逆向きへの移動の指示であるとS2で判断した場合、制御部41はまず、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを中立姿勢に対応する状態に制御する。制御部41は左舷側バウスラスター21a、右舷側バウスラスター21b、左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bも中立姿勢に対応する状態に制御する(
図11のS3)。
【0075】
具体的には
図10に示すように左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを、回転する向きが、船首側から船尾側に向かうプロペラ後流を生成するB1、B2の向きになるように制御する。さらに左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bを停止する。次に制御部41は左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを
図10に示す中立姿勢にする。
より具体的には左舷側フラップ舵15aの左舷側フラップ部19aを左舷側に向けて、前方の左舷側プロペラ13aが生成した水流が左舷側に流れる舵角にする。さらに右舷側フラップ舵15bの右舷側フラップ部19bを右舷側に向けて、前方の右舷側プロペラ13bが生成した水流が右舷側に流れる舵角にする。これにより船が現在位置に保持される中立姿勢にする。中立姿勢になった場合、予め定められた所定の時間だけ中立姿勢を維持する等して、洋上風車アクセス船1が意図せずに前進しないようにする。
【0076】
取得した信号が前進/後進/中立姿勢を示す信号である場合、取得した信号が逆向きへの移動の指示でない場合、又はS3を実施してから所定の時間が経過した場合、制御部41は指示された向きに洋上風車アクセス船1を進行させる(
図11のS4)。
【0077】
具体的には、まず取得した信号がいずれの場合も、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bを、回転する向きが、船首側から船尾側に向かうプロペラ後流を生成するB1、B2の向きになるように制御する。
【0078】
次に制御部41は取得した信号に応じて左舷側バウスラスター21a、右舷側バウスラスター21b、左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを駆動して、指示された向きに洋上風車アクセス船1を移動させるか、現在位置を保持する。
【0079】
例えば取得した信号が前進を示す信号の場合、制御部41は左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bの駆動を停止し、左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bが
図6に示す舵角になるように制御する。
【0080】
また、取得した信号が後進を示す信号である場合、
図7に示すように制御部41は左舷側フラップ舵15aを、前方の左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側でかつ船首側に左舷側フラップ部19aが向くように左舷側に回動させる。さらに制御部41は右舷側フラップ舵15bを、前方の右舷側プロペラ13bの先端51bより船幅方向外側でかつ船首側に右舷側フラップ部19bが向くように右舷側に回動させる。
これによりプロペラ後流を左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bの側面にガイドさせ向きを船首側に曲げて洋上風車アクセス船1を後進させる。
【0081】
取得した信号が左舷側又は右舷側への横移動を示す信号である場合、制御部41は
図8及び
図9に示すように左舷側フラップ舵15aと右舷側フラップ舵15bをいずれも指示された側の舷側と逆側、つまり移動する側の舷側と逆舷に回動した状態にする。
さらに、制御部41は
図8及び
図9に示すように左舷側バウスラスター21a及び右舷側バウスラスター21bを駆動して、指示された側から逆側に向かう水流、つまり移動する側の舷側から逆舷に向かう水流が発生するように制御する。
【0082】
取得した信号が中立を示す信号である場合、制御部41はS3で説明したように左舷側バウスラスター21a、右舷側バウスラスター21b、左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bを中立姿勢に対応する状態に制御する。
以上が洋上風車アクセス船1の操船方法の説明である。
【0083】
このように本実施形態によれば、洋上風車アクセス船1は左舷側フラップ舵15a、右舷側フラップ舵15b、左舷側プロペラ13a、右舷側プロペラ13b、制御部41、及びジョイスティック43を備える。制御部41はジョイスティック43の指示が後進の場合、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転する向きを、船首側から船尾側に向かう水流を生成するB1、B2の向きにする。さらに制御部41は、左舷側フラップ舵15aを、前方の左舷側プロペラ13aの先端51aより船幅方向外側で、かつ船首側に後端の左舷側フラップ部19aが向くように左舷側に回動させる。また右舷側フラップ舵15bを、前方の右舷側プロペラ13bの先端51bより船幅方向外側で、かつ船首側に後端の右舷側フラップ部19bが向くように左舷側に回動させる。
【0084】
この構成では、洋上風車アクセス船1が後進する際に、左舷側プロペラ13a及び右舷側プロペラ13bの回転する向きを前進時と同じとする。
さらに左舷側フラップ部19aが左舷側プロペラ13aの先端51aより外側で船首側を、右舷側フラップ部19bが前方の右舷側プロペラ13bの先端51bより外側で、船首側を向くように各々回動させ、プロペラ後流を船首側に曲げて船を後進させる。
【0085】
この構成では、前進と後進を切り替える際に左舷側フラップ舵15a及び右舷側フラップ舵15bの舵角を変えるだけでよく、クラッチや減速機の操船機器の操作等でプロペラの回転する向きを変える必要が無い。そのため制御部41による制御が単純になり、進行する向きを頻繁に切り替えても船員の切替操作に操船機器の動作が追従し易い。
【0086】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。当業者であれば、本発明の技術思想の範囲内において各種変形例及び改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1 :洋上風車アクセス船
3a :左舷側胴部
3b :右舷側胴部
5 :甲板
7 :甲板室
10a :左舷側底部
10b :右舷側底部
11a :左舷側ロワーハル
11b :右舷側ロワーハル
13a :左舷側プロペラ
13b :右舷側プロペラ
15a :左舷側フラップ舵
15b :右舷側フラップ舵
17a :左舷側主舵
17b :右舷側主舵
19a :左舷側フラップ部
19b :右舷側フラップ部
21a :左舷側バウスラスター
21b :右舷側バウスラスター
31a :左舷側舵軸
31b :右舷側舵軸
33a :左舷側フラップ軸
33b :右舷側フラップ軸
41 :制御部
43 :ジョイスティック
43a :台座
43b :操作レバー
51a、51b:先端