(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】レベチラセタム含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4015 20060101AFI20240821BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240821BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K31/4015
A61P25/08
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/26
(21)【出願番号】P 2020032632
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】720002207
【氏名又は名称】共和薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【氏名又は名称】多田 央子
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】水巻 宏之
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-177657(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101647789(CN,A)
【文献】国際公開第2011/027728(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/327
A61K31/33-31/80
A61K33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61K 9/00- 9/72
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベチラセタムと添加物を含む組成物を湿式又は乾式で造粒する工程を含む方法により製造された、平均粒子径が200μm以上であるレベチラセタム含有顆粒を含むドライシロップ。
【請求項2】
レベチラセタム含有顆粒が押出造粒法又は流動層造粒法で製造されている、請求項1に記載のドライシロップ。
【請求項3】
ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を含む被覆層を備える、請求項1又は2に記載のドライシロップ。
【請求項4】
さらに、スクラロースを含む、請求項1~3の何れかに記載のドライシロップ。
【請求項5】
ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を医薬組成物の全量に対して0.1~5重量%含む被覆層を備えるレベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物。
【請求項6】
レベチラセタム含有顆粒が押出造粒法又は流動層造粒法で製造されている、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
さらに、スクラロースを含む、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗てんかん剤のレベチラセタムは、化学名が(2S)-2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチラミドであり、下記構造式で表される化合物である。
【化1】
【0003】
レベチラセタム含有製剤の市販品として、イーケプラドライシロップとイーケプラ錠(大塚製薬株式会社)が知られている。イーケプラドライシロップは、レベチラセタム、D-マンニトール、ポビドン、アスパルテーム、及び香料を含む顆粒と軽質無水ケイ酸粉末との混合末である。また、イーケプラ錠は、レベチラセタム、クロスカルメロースナトリウム、マクロゴール6000EP、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、部分ケン化ポリビニルアルコール、酸化チタン、マクロゴール4000、タルク、黄色三二酸化鉄を含むフィルムコーティング錠である(非特許文献1)。
【0004】
粉末や顆粒などのレベチラセタム造粒物は、静電付着し易いために、製造装置、計量器具、分包機、包装袋などに付着し易い。このため、製造時、調剤時、分包時、服用時にロスが生じ易い。また、分包量にバラツキが生じたり、頻繁に分包機に詰まるといった難点もある。
また、レベチラセタム造粒物は、保存すると製剤が固まる現象(ブロッキング)が発生し易く、また、塊をほぐしてもサラサラした流動状態になり難い。製剤が固まったり、流動性が低下すると、服用し難く、また吸収した水分により有効成分や添加物が変質する恐れもある。
また、レベチラセタム造粒物は、粒度別のレベチラセタム含有量の均一性が低い、即ち、顆粒の粒度によりレベチラセタムの濃度が異なる場合がある。このため、粒子径が異なることで容器内または分包作業時に顆粒の偏析が起きた場合は、レベチラセタムを均一に分包することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】イーケプラドライシロップ50%・イーケプラ錠250mg・イーケプラ錠500mg 添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物であって、静電付着が抑制された医薬組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、レベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物であって、保存によるブロッキングや流動性の低下が抑制された医薬組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) レベチラセタム含有顆粒の平均粒子径を200μm以上にすることにより、静電付着が顕著に抑制される。
(ii) レベチラセタム含有顆粒は、コーティング剤として、特に、ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層を備えることにより、保存によるブロッキング及び/又は流動性の低下が抑制される。
(iii) レベチラセタム含有顆粒を押出造粒法で造粒することにより、粒度別のレベチラセタム含有量の均一性が高くなる。
【0008】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の医薬組成物を提供する。
〔1〕 平均粒子径が200μm以上であるレベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物。
〔2〕 レベチラセタム含有顆粒が押出造粒法又は流動層造粒法で製造されている、〔1〕に記載の医薬組成物。
〔3〕 ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を含む被覆層を備える、〔1〕又は〔2〕に記載の医薬組成物。
〔4〕 さらに、スクラロースを含む、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の医薬組成物。
〔5〕 ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を含む被覆層を備えるレベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物。
〔6〕 レベチラセタム含有顆粒が押出造粒法又は流動層造粒法で製造されている、〔5〕に記載の医薬組成物。
〔7〕 さらに、スクラロースを含む、〔5〕又は〔6〕に記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の医薬組成物は、レベチラセタム含有顆粒の平均粒子径が200μm以上であることにより、レベチラセタム含有顆粒の静電付着が顕著に抑えられている。このため、製造装置、薬さじなどの計量器具、分包機、包装袋などへの付着が極めて少なく、従来のレベチラセタム含有顆粒を含む製剤(例えば、イーケプラドライシロプ)に見られる、製造時、調剤又は計量時、分包時、服用時の薬剤ロスや、分包量のバラツキ、分包機の詰まりなどが生じ難い。このように、本発明の第1の医薬組成物は、従来のレベチラセタム含有製剤の欠点であるハンドリング性の低さが改善されている。
【0010】
また、顆粒の造粒方法としては、押出造粒より流動層造粒の方が、生産効率が良いため汎用されている。しかし、後述するように、顆粒の粒度別のレべチラセタム含有量の均一性は押出造粒の方が優れるため、押出造粒を行いたい場合もある。押出造粒で得られたレベチラセタム含有顆粒は、流動層造粒で得られた同じ粒子径のレベチラセタム含有顆粒に比べて、静電付着が多い傾向にあるが、その場合でも、レベチラセタム含有顆粒の平均粒子径が250μm以上、中でも260μm以上、中でも270μm以上、中でも280μm以上であることにより、静電付着が顕著に抑えられる。
【0011】
また、本発明の第1の医薬組成物において、顆粒が、ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を含む被覆層を備えるときは、静電付着が一層効果的に抑制される。
【0012】
また、本発明の第2の医薬組成物は、顆粒が、ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を含む被覆層を備えることにより、無包装状態で保存しても、吸湿によるブロッキング及び/又は流動性の低下が少ない。従って、保存した後も、服用し易い状態が保たれ、また水分による変質が抑制されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)第1の医薬組成物
本発明の第1の医薬組成物は、平均粒子径が200μm以上であるレベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物である。
【0014】
製剤形態
本発明の第1の医薬組成物の剤型は、レベチラセタム含有顆粒を用いて製造されたものであればよく、顆粒剤、ドライシロップ、カプセル剤(特に、硬カプセル剤)、顆粒を含む成分の打錠により得られる錠剤などが挙げられる。
何れの製剤も、レベチラセタム含有顆粒の他に、添加物を含む粉末及び/又は顆粒を含むことができる。例えば、レベチラセタム及び甘味料を含む顆粒と流動化剤を含むドライシロップが挙げられる。また、レベチラセタム含有顆粒と他の有効成分を含む顆粒との混合末も挙げられる。
【0015】
本発明の医薬組成物が錠剤である場合、顆粒は錠剤中で粒の形が打錠前と異なっている可能性があるが、このような場合も、本発明では「顆粒を含む」ことを意味する。錠剤は、コーティング剤を含む被覆層を有しない素錠であってもよく、或いは水不溶性ないしは水難溶性のコーティング剤、又は水溶性のコーティング剤を含む被覆層を有していてもよい。
【0016】
レベチラセタム
レベチラセタムは、薬学的に許容される塩であってもよい。
また、レベチラセタムは、無水物、半水和物、水和物の何れであってもよい。
【0017】
レベチラセタム含有顆粒の平均粒子径は、220μm以上、中でも240μm以上、中でも260μm以上、中でも280μm以上が好ましい。特に、250μm以上、中でも260μm以上、中でも270μm以上、中でも280μm以上であれば、押出造粒法でレベチラセタム含有顆粒を製造した場合も、静電付着が顕著に抑制される。また、レベチラセタム含有顆粒の平均粒子径は、1000μm以下、中でも850μm以下、中でも600μm以下が好ましい。500μm以下、又は400μm以下とすることもできる。この範囲が顆粒剤として使用し易い。
本発明において、レベチラセタム含有顆粒の平均粒子径は、ふるい分け法で測定した値である。
【0018】
被覆層
本発明の第1の医薬組成物は、レベチラセタム含有顆粒の粒子径の設定により静電付着が抑制されているため、レベチラセタム含有顆粒がコーティングされていなくても、静電付着が抑制されている。但し、顆粒は、水不溶性ないしは水難溶性のコーティング剤、又は水溶性のコーティング剤を含む被覆層を備えていてもよい。
レベチラセタム含有顆粒が、コーティング剤として、特にヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層を備えるときは、静電付着が一層効果的に抑制される。また、保存によるブロッキング及び/又は流動性の低下が効果的に抑制される。ヒプロメロースとポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の両方を含む場合、1層の被覆層に両コーティング剤が含まれていてもよく、各コーティング剤をそれぞれ含む2層の被覆層を備えていてもよい。
【0019】
本発明の第1の医薬組成物において、レベチラセタム含有顆粒が被覆層を備える場合、平均粒子径は、被覆層も含めた顆粒全体について測定した値である。
【0020】
ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の何れを含む場合も、ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の総配合量は、0.1重量%以上、中でも0.2重量%以上、中でも0.25重量%以上、中でも0.5重量%以上、中でも1重量%以上、中でも1.3重量%以上が好ましい。この範囲であれば、静電付着抑制効果が十分に向上する。また、保存によるブロッキング及び/又は流動性の低下が十分に抑制される。また、コーティング剤の総配合量は、5重量%以下、中でも3重量%以下、中でも2重量%以下が好ましい。この範囲であれば、顆粒として使用し易い。
この総配合量は、顆粒剤又はドライシロップでは、医薬組成物(製剤)の全量に対する比率であり、硬カプセル剤ではカプセル内に収容される成分の全量に対する比率であり、軟カプセル剤ではカプセル基剤と混合される成分の全量に対する比率であり、錠剤では、錠剤製造に供される顆粒の全量に対する比率である。
【0021】
ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層は、さらに他のコーティング剤を含むことができる。また、レベチラセタム含有顆粒は、ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層の他に、別のコーティング剤を含む被覆層を備えていてもよい。
【0022】
添加物
何れの剤型の場合も、本発明の医薬組成物は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、着色剤、矯味剤、甘味剤、香料、保存剤又は防腐剤などの添加物を含むことができる。添加物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0023】
賦形剤としては、例えば、乳糖水和物、白糖、マルトース、果糖、ブドウ糖(デキストロース)、トレハロースのような糖類;マンニトール(特に、D-マンニトール)、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトールのような糖アルコール;デンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプンのようなデンプン類;結晶セルロースのようなセルロース類;デキストリンなどが挙げられる。
【0024】
結合剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、クロスカルメロースナトリウムのようなセルロース類;ポビドン;デンプン;ゼラチン;トラガントゴム;ポリビニルアルコール;塩基性(メタ)アクリレートコポリマーなどが挙げられる。
【0025】
崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン;カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウムのようなセルロース類;デンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム(デンプングリコール酸ナトリウム)のようなデンプン類;デキストリン;ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
【0026】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸塩(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛など)、ステアリン酸塩エステル(フマル酸ステアリルナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリンなど)、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、酒石酸ナトリウムカリウム、含水二酸化ケイ素などが挙げられる。
【0027】
流動化剤としては、例えば、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0028】
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、酸化チタン、食用タール色素、天然色素などが挙げられる。
【0029】
矯味剤としては、例えば、シクロデキストリン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリシン、アラニン、テルペン類(リモネン、ピネン、ゲラニオール、メントール、ボルネオール、メントン、カンフル、オイゲノールなど)、テルペンを含有する精油(オレンジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、ケイヒ油、ラベンダー油、スペアミントなど)などが挙げられる。
【0030】
甘味剤としては、例えば、マンニトール、ショ糖、スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム、還元麦芽糖水あめ、ソルビット、果糖、乳糖水和物、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、甘草およびその抽出物、グリチルリチン酸、甘茶、ソーマチンなどが挙げられる。中でも、本発明の効果を得る上で、スクラロースが好ましい。
【0031】
保存剤又は防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチルのようなパラベン類、安息香酸、エタノール、エデト酸四ナトリウム、サリチル酸、ソルビトール、ソルビン酸、グリセリン、クロロブタノール、フェノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0032】
コーティング剤
ヒプロメロース及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体以外のコーティング剤としては、水溶性のものでは、例えば、キサンタンガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、グァーガム、アカシアガム、タマリンドガム、タラガム、アラビアゴム、カルナウバロウ、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルファー化デンプン、カゼインナトリウム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、デキストラン、デキストリン、プルラン、キチン、キトサン、ガラクトマンナン、カゼイン、ゼラチン、水溶性プルランエーテル(プルランメチルエーテル、プルランエチルエーテル、プルランプロピルエーテルなど)、水溶性プルランエステル(プルランアセテート、プルランブチレートなど)、寒天、ビニル樹脂(ポビドン、コポリビドン、酢酸ポリビニル、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールコポリマーなど)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、マクロゴール、グリチルリチン酸、糖類(白糖、果糖、乳糖、マルトース、ブドウ糖、シクロデキストリンなど)、糖アルコール(マンニトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトールなど)、オパドライ(登録商標)などが挙げられる。
【0033】
また、水不溶性又は水難溶性のコーティング剤としては、例えば、セルロース系コーティング剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ヒドロキプロピルセルロースフタル酸エステル、カルボキシメチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、フタル酸ヒプロメロース、酢酸コハク酸ヒプロメロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースなど)、ビニル樹脂(クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、酢酸フタル酸ポリビニルなど)、メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマー、ポリシロキサン系コーティング剤(ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・二酸化ケイ素混合物など)などが挙げられる。
【0034】
メタクリレートポリマー又はメタクリル酸ポリマーとしては、レーム社のアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギットE100、EPOなど)、メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギットL30D-55、L100-55など)、メタクリル酸コポリマーL(オイドラギットL100など)、メタクリル酸コポリマーS(オイドラギットS100など)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットRL100、RLPO、RS100、RSPO、RL30D、RS30Dなど)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(オイドラギットNE30Dなど)などが挙げられる。
【0035】
コーティング層には可塑剤などの添加物を配合することができる。可塑剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン(グリセリン三酢酸)のようなグリセリン脂肪酸エステル、流動パラフィン、ソルビタンモノラウレート、モノステアリン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、ポロキサマー、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
【0036】
製造方法
顆粒は、レベチラセタムと添加物を含む組成物を、常法に従い、湿式又は乾式で造粒し、必要に応じて乾燥、整粒することにより製造することができる。湿式造粒法としては、流動層造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、押出造粒法、破砕造粒法、練合造粒法などが挙げられ、乾式造粒法としては、圧片造粒法、ブリケット造粒法、溶融造粒法などが挙げられる。
中でも、湿式造粒法が好ましく、流動層造粒法又は押出造粒法がより好ましく、粒度別のレベチラセタム含有量の均一性が高い顆粒が得られる点で、押出造粒法が特に好ましい。押出造粒法により得られる顆粒は、球状ではなく円柱状又は長球状をしている。本発明は、レベチラセタムを含む平均粒子径200μm以上の顆粒を押出造粒法で製造する工程を含むレベチラセタム含有医薬組成物の製造方法を包含する。
【0037】
錠剤は、上記のようにして得られた造粒物を打錠するか、又は得られた造粒物と1種以上の添加物とを混合して打錠する方法により製造することができる。また、錠剤は口腔内崩壊錠とすることができる。口腔内崩壊錠は、添加物の種類や配合量、打錠圧などを適宜設定することにより、当業者であれば製造できる。
硬カプセル剤は、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような硬カプセル内に顆粒を充填することにより製造することができる。
【0038】
(2)第2の医薬組成物
本発明の第2の医薬組成物は、ヒプロメロース、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のコーティング剤を含む被覆層を備えるレベチラセタム含有顆粒を含む医薬組成物である。
【0039】
製剤形態
本発明の第2の医薬組成物の剤型は、上記説明した本発明の第1の医薬組成物と同じである。
但し、本発明の第2の医薬組成物において、「顆粒」は平均粒子径200μm未満の粒子も含む。従って、一般に細粒剤、散剤と称されるものも、ここでは「顆粒」に含まれる。
【0040】
被覆層
本発明の第2の医薬組成物は、コーティング剤として、特に、ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層を備えるため、吸湿によるブロッキングや流動性低下が抑制されている。
ヒプロメロースとポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の両方を含む場合、1層の被覆層に両コーティング剤が含まれていてもよく、各コーティング剤をそれぞれ含む2層の被覆層を備えていてもよい。
【0041】
ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の総配合量は、0.1重量%以上、中でも0.2重量%以上、中でも0.25重量%以上、中でも0.5重量%以上、中でも1重量%以上、中でも1.3重量%以上が好ましい。この範囲であれば、吸湿によるブロッキングや流動性を十分に抑制できる。また、このコーティング剤の総配合量は、5重量%以下、中でも3重量%以下、中でも2重量%以下が好ましい。この範囲であれば、顆粒として使用し易い。
この総配合量は、顆粒剤又はドライシロップでは、医薬組成物(製剤)の全量に対する比率であり、硬カプセル剤ではカプセル内に収容される成分の全量に対する比率であり、軟カプセル剤ではカプセル基剤と混合される成分の全量に対する比率であり、錠剤では、錠剤製造に供される顆粒の全量に対する比率である。
【0042】
ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層は、さらに他のコーティング剤を含むことができる。また、レベチラセタム含有顆粒は、ヒプロメロース、及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層の他に、別のコーティング剤を含む被覆層を備えていてもよい。
【0043】
レベチラセタム含有顆粒の大きさは、平均粒子径200~600μmとすることができる。
【0044】
レベチラセタムは、塩であってもよく、無水物、半水和物、水和物の何れであってもよいことは本発明の第1の医薬組成物と同じである。
また、配合できる添加物、ヒプロメロース及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体以外の使用できるコーティング剤、並びに医薬組成物の製造方法も、本発明の第1の医薬組成物について述べたとおりである。本発明は、レベチラセタム含有顆粒を押出造粒法で製造する工程と、得られた顆粒に、ヒプロメロース及び/又はポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含む被覆層を施す工程を含む、レベチラセタム含有医薬組成物の製造方法を包含する。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(1)顆粒の製造
実施例1
流動化剤及び香料以外の成分を流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製,FLO-LABO)を用いて造粒及び乾燥し、篩を用いて整粒した。そこに流動化剤及び香料を加え混合した。
【0046】
実施例2、3、比較例1~3
流動化剤及び香料以外の成分を押出造粒装置(株式会社アーステクニカ製,ハイスピードミキサFS-GS-40J)により混錬し、得られた混練物を、押出造粒装置(株式会社ダルトン社製,押出造粒機 バスケットリューザー BR-150)で造粒し、乾燥機で乾燥させ、篩で整粒した。そこに流動化剤及び香料を加え混合した。
【0047】
実施例4~6
流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製,流動層造粒乾燥機NFL (O) -15SJまたはFLO-LABO)を用いて、実施例2の顆粒にヒプロメロースを含むコーティングを施した。そこに流動化剤及び香料を加え混合した。製剤の全量に対するヒプロメロースの使用量は、それぞれ、0.25重量%、1.5重量%、3.0重量%とした。
【0048】
実施例7
流動層造粒装置(フロイント産業株式会社製,流動層造粒乾燥機NFL(O)-15SJまたはFLO-LABO)を用いて、実施例2の顆粒にポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体を含むコーティングを施した。そこに流動化剤及び香料を加え混合した。製剤の全量に対するポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体の使用量は、1.5重量%とした。
【0049】
実施例8
押出造粒装置(株式会社アーステクニカ製,ハイスピードミキサFS-GS-40J)により製した混練物を、押出造粒装置(株式会社ダルトン社製,押出造粒機 バスケットリューザー BR-150)で造粒、乾燥機で乾燥、篩で整粒し、レベチラセタム含有顆粒を得た。そこに流動化剤及び香料を加え混合した。
【0050】
実施例1~8、及び比較例1~3の顆粒の組成を表1に示す。
【表1】
【0051】
(2)静電付着の抑制の評価
帯電後付着量の測定
実施例1~5、比較例1~3の各顆粒と、イーケプラドライシロップ50%を、それぞれ50ml容量のガラス瓶に20mgづつ入れ、キムワイプで50往復擦ったスパーテルを顆粒に差し込み、引き抜いて、付着量を測定した。
【0052】
平均粒子径の測定
実施例1~5、比較例1~3の各顆粒の平均粒子径を、ふるい分け法で測定した。また、イーケプラドライシロップ50%についても、同様にして、平均粒子径を測定した。
【0053】
評価結果
実施例1~3、比較例1~3の各顆粒の平均粒子径と帯電後付着量を表2に示す。
【表2】
平均粒子径200μm以上の場合に、レベチラセタム含有顆粒のスパーテルへの静電付着が顕著に抑制された。
【0054】
また、実施例2、4、5の各顆粒について、ヒプロメロース量、平均粒子径、及び帯電後付着量を表3に示す。
【表3】
ヒプロメロースを含む被覆層を備えることで、静電付着が顕著に抑制された。
【0055】
(3)ブロッキング抑制の評価
流動性低下・ブロッキングの測定
実施例2、4~6の顆粒を、それぞれ、50ml容量のガラス容器に20gづつ入れ、温度25±2℃、湿度75±5%RHの下、解放状態で、7日間静置した。12メッシュの篩に検体を5g載せ、パウダーテスターで10秒間振動した後、篩上に残った検体量を測定し、秤取量(約5g)に対する篩上残存量の比率(%)を算出した(ブロッキング量比)。12メッシュの篩上に残った検体は顆粒がブロッキングしたものである。
また、静置後の実施例2、7の顆粒について、目視でブロッキングの有無を判定した。塊がない場合を〇、容器を傾けても顆粒が動かない場合を×と判定した。
【0056】
評価結果
実施例2、4~6の各顆粒について、ヒプロメロース量、平均粒子径、及びブロッキング量比を表4に示す。
【表4】
ヒプロメロースを含む被覆層を備えることで、ブロッキングが顕著に抑制された。
【0057】
実施例2、7の各顆粒について、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体量、平均粒子径、及びブロッキングの有無を表5に示す。
【表5】
被覆層を備えない顆粒はブロッキングが生じたが、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合を含む被覆層を備えることで、流動性の低下はなくなり、ブロッキングも顕著に抑制された。
【0058】
(4)粒度別の成分含有量の偏りの評価
実施例8の顆粒をスクリーン径355μm篩で分級し、篩上に残った検体、及び篩を通過した検体のぞれぞれのレベチラセタム濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。
(HPLC条件)
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:205nm)
カラム:内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクチルシリル化シリカゲルを充填する。
カラム温度:30℃付近の一定温度
移動相:無水リン酸水素二ナトリウム1.42gを水1000mLに溶かし、薄めたリン酸(1→5)又はトリエチルアミン溶液を加えてpH3.5±0.05に調整する。この液900mLにアセトニトリル100mLを加える。
流量:レベチラセタムの保持時間が約3分になるように調整する。
【0059】
実施例8の顆粒は、1g中にレベチラセタム500mgを含有する製剤である。この含量を表示量とするときの表示量に対する含量の比率(%)を、実施例8の顆粒(328.2μm)、篩上に残った検体、及び篩を通過した検体について測定した。結果を表6に示す。
【表6】
押出造粒法で製造したレべチラセタム含有顆粒は、粒度別のレベチラセタム含有量の偏りが全くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の第1の医薬組成物は、製造蔵置、薬さじ、分包機、包装袋などへの静電付着が抑制されているため、製造時、調剤時、分包時、服用時のハンドリング性が良く、薬剤ロスも回避される。また、本発明の第2の医薬組成物は、吸湿の影響が抑えられているため、保存してもブロッキングを生じたり、流動性が低下したりし難い。従って、これらの医薬組成物は、商品価値が高い。