(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】弾性波デバイスパッケージ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240821BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20240821BHJP
H01L 23/32 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
H01L23/32 D
(21)【出願番号】P 2020071598
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【氏名又は名称】若田 充史
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【氏名又は名称】若田 勝一
(72)【発明者】
【氏名】中村 博文
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】門川 裕
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-198073(JP,A)
【文献】特開2020-053876(JP,A)
【文献】特開2018-042072(JP,A)
【文献】国際公開第2013/141184(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/25
H03H 3/08
H01L 23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面に弾性表面波の励振電極及びパッド電極とを有する圧電基板と、
前記圧電基板より熱膨張率が低く、かつ前記第1主面が対面して前記圧電基板が実装される実装基板と、
前記圧電基板の周囲を囲み、かつ前記圧電基板の周囲に密着して、前記実装基板上に設けられる樹脂層とを備え、
前記圧電基板の第1主面の反対側の面である第2主面は、前記樹脂層における実装基板の反対側の面と同一面に形成され、
前記圧電基板の前記第2主面とこの第2主面と同一面に形成された前記樹脂層の面に、電気的絶縁性の絶縁膜が接合され、
前記絶縁膜の厚さは、前記実装基板の厚さより小さ
く、
前記圧電基板の厚さは2μm以上でかつ20μm以下であり、前記絶縁膜の厚さは0.3μm以上でかつ20μm以下であり、前記実装基板の厚さは60μm以上でかつ200μm以下である、弾性波デバイスパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数温度特性に優れ、低背化が可能な弾性波デバイスパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波デバイスは、一般的に例えば特許文献1に記載され、かつ
図7に示すように、CSP(Chip Scale Package)と称されるパッケージ構造を有している。すなわちこの弾性波デバイスパッケージは、不図示のマザー基板に実装するための実装基板50と、弾性波デバイスのベアチップ51と、モールド樹脂52とを備える。実装基板50は、ベアチップ51を実装するためのパッド電極53を備える。ベアチップ51は、圧電基板55と支持基板56との接合基板を含む。圧電基板55の第1主面55aに、励振電極である櫛型電極57と、パッド電極58と、不図示の反射器及び引き出し配線等の電極パターンが形成される。圧電基板55の第2主面55bに、支持基板56がウエハ状態で接合される。実装基板50のパッド電極53と、圧電基板55のパッド電極58とをバンプ59によって接合することにより、実装基板50にベアチップ51が実装される。モールド樹脂52は、ベアチップ51を覆うように、実装基板50上に設けられ、実装基板50と圧電基板55との間に空洞部60が形成される。特許文献1の発明においては、支持基板56の材料として、電気的特性改善のための半導体として例えばシリコンを用いている。
【0003】
図7に示す従来の弾性波デバイスパッケージの製造を行なう場合、圧電基板55と支持基板56との接合基板を、ウエハ状態で準備する。圧電基板55への櫛型電極57及びパッド電極58等の形成は、圧電基板55と支持基板56との接合前、または接合後に行なう。圧電基板55と支持基板56との接合基板は、個々のベアチップ51に分断する。
【0004】
圧電基板55には、従来よりLT(リチウム酸タンタレート)やLN(リチウム酸ニオブ)が使用される。しかしながら、圧電基板55は、それぞれの材料の熱膨張率に応じて、温度変化により伸び縮み、すなわち変形が生じる。この変形により、櫛型電極57のピッチが変動する。そのため、フィルタリングする周波数のずれが発生する。このフィルタリングする周波数の温度による変動を小さくするため、支持基板56として、圧電基板55より熱膨張率が小さい材質のものを接合することが行なわれている。すなわち、LTやLN等からなる圧電基板55より熱膨張率が小さいシリコン、スピネルまたはサファイヤ等を支持基板56に用いる。このような支持基板56を用いることにより、圧電基板55の温度による変形が抑制される。その結果、フィルタリングする周波数の温度による変動を小さくすることができる。
【0005】
このように、熱膨張率が圧電基板55より小さい支持基板56を積層する他の従来例として特許文献2~4に記載の弾性波デバイスパッケージがある。特許文献2に記載の弾性波デバイスパッケージは、圧電基板ウエハにスピネルでなる支持基板ウエハを接合している。そして、その接合した接合基板ウエハを、スピネルでなる実装基板ウエハに接合した後、各パッケージごとに分断している。
【0006】
特許文献3には、支持基板として圧電基板より熱膨張係数の小さいガラスを用いることが開示されている。特許文献4には、圧電基板ウエハに、圧電基板より熱膨張係数の小さい温度補償膜(支持基板)をSOG法により形成する弾性表面波素子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-128809号公報
【文献】特開2016-100744号公報
【文献】特開2002-16468号公報
【文献】特開2009-267665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7に示されている弾性波デバイスパッケージは、圧電基板55と支持基板56とからなる接合基板は、モールド樹脂52で覆った構造である。一般的には、モールド樹脂52は、圧電基板55より熱膨張率が大きい。そのため、パッケージ全体では、モールド樹脂52の熱による反りが発生すると、圧電基板55もその反りの影響を受け、圧電基板55の温度変化による周波数特性が変動してしまうという問題点があった。
【0009】
また、従来の弾性波デバイスパッケージの場合、圧電基板55に支持基板56を接合し、圧電基板55を薄くすることにより、Q値の向上を図っている。この圧電基板55に支持基板56を接合する場合、ウエハ工程の初期段階において、圧電基板55と支持基板56とを接合している。この圧電基板55と支持基板56との接合を、陽極接合や又は樹脂を使用した接合により行なう場合、熱が加わる関係上、ウエハボンデイング後に大きな反りが発生するおそれがある。そしてこの反りが発生すると、後工程での製造が不可能になってしまうおそれがある。このため、圧電基板55と支持基板56との接合に、常温での接合が可能となる高額な常温接合装置が必要となる。その結果、弾性波デバイスパッケージを製造するための設備に要するコストが高額となり、製造コストが非常に高額となっていた。
【0010】
また、従来の弾性波デバイスパッケージの製造方法では、圧電基板と支持基板との接合基板を実装基板に実装する時には、接合基板としてある程度の厚みを確保する必要があり、薄型化した弾性波デバイスパッケージの実現が困難である。具体的には、弾性波デバイスパッケージ全体の厚さを0.45mm位とすることが薄型化の限界であった。
【0011】
また、特許文献4に記載のように、ウエハ状態の圧電基板上にSOG法によりガラスからなる支持基板を形成する方法の場合、圧電基板はガラスの支持体として、ある程度の機械的強度が必要となる。このため、圧電基板の薄型化が困難である。また、SOG法で形成するガラス層は、厚さの確保が困難であると共に、物性的に特性を満足させることが困難である。
【0012】
本発明は、上述した問題点に鑑み、周波数温度特性が向上し、製造コストを低減できる弾性波デバイスパッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の弾性波デバイスパッケージの一つの態様は、
第1主面に弾性表面波の励振電極及びパッド電極とを有する圧電基板と、前記圧電基板より熱膨張率が低く、かつ前記第1主面が対面して前記圧電基板が実装される実装基板と、前記圧電基板の周囲を囲み、かつ前記圧電基板の周囲に密着して、前記実装基板上に設けられる樹脂層とを備え、前記圧電基板の第1主面の反対側の面である第2主面は、前記樹脂層における実装基板の反対側の面と同一面に形成され、前記圧電基板の前記第2主面とこの第2主面と同一面に形成された前記樹脂層の面に、電気的絶縁性の絶縁膜が接合され、前記絶縁膜の厚さは、前記実装基板の厚さより小さく、前記圧電基板の厚さは2μm以上でかつ20μm以下であり、前記絶縁膜の厚さは0.3μm以上でかつ20μm以下とし、前記実装基板の厚さは60μm以上でかつ200μm以下としたものである。
【0014】
このように、実装基板として、圧電基板より熱膨張率が小さい材質を用いると共に、圧電基板と絶縁膜の厚さを実装基板の厚さより薄くしたことにより、絶縁膜の温度変化による膨張収縮が圧電基板に与える影響を低下させ、温度変化による圧電基板の膨張収縮を低減できる。
【0015】
また、ウエハ状態で圧電基板と絶縁膜とを接合する必要がないため、高額の常温接合装置が不要となり、製造コストを低減することが可能となる。
【0016】
また、圧電基板の薄肉化によって、従来の弾性波デバイスパッケージ全体の厚さを薄くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周波数温度特性が向上するのみならず、製造コストを低減でき、薄型化も可能となる弾性波デバイスパッケージを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の弾性波デバイスパッケージの第1の実施の形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の弾性波デバイスパッケージの製造工程の一例の第1段階を示す図である。
【
図3】
図1の弾性波デバイスパッケージの製造工程の一例の第2段階を示す図である。
【
図4】
図1の弾性波デバイスパッケージの製造工程の一例の第3段階を示す図である。
【
図5】本発明の弾性波デバイスパッケージの第2の実施の形態を示す断面図である。
【
図6】第2の実施の形態の弾性波デバイスパッケージの一例の製造段階の一部を示す図である。
【
図7】従来の弾性波デバイスパッケージの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施の形態>
本発明による弾性波デバイスパッケージの第1の実施の形態を
図1により説明する。弾性波デバイスパッケージ1は、実装基板2と、圧電基板3と、樹脂層4と、接着剤5と、支持基板6とを含んで構成される。実装基板2は、不図示のマザー基板に弾性波デバイスを実装するためのものである。実装基板2には、絶縁材であるセラミック、ガラス、樹脂等を用いた基板が用いられる。
【0020】
実装基板2には、図面上の上側である面に、弾性波デバイスを実装するためのパッド電極8が形成される。また、実装基板2の図面上の下面には、マザー基板に実装するためのパッド電極9が形成される。実装基板2の上面のパッド電極8と下面のパッド電極9とは、実装基板2の側面または内部に設けられる導体11により接続される。実装基板2として積層基板を用いる場合には、内部に素子形成または配線としての導体層12等が形成される場合もある。実装基板2に素子が内蔵されて形成される場合は、その内蔵素子を介してパッド電極8とパッド電極9とが接続される場合もある。
【0021】
圧電基板3の材質にはLT(リチウム酸タンタレート)やLN(リチウム酸ニオブ)が用いられる。圧電基板3の第1主面3aには、励振電極である櫛型電極14と、パッド電極15と、不図示の反射器及び配線等の電極パターンが形成される。櫛型電極14、パッド電極15、反射器及び配線には、例えば金、銅又はアルミニウム、もしくはこれらの合金等を用いることができるが、他の金属を用いてもよい。
【0022】
樹脂層4は、圧電基板3の周囲を囲み、かつ圧電基板3の周囲に密着して、実装基板2上に設けられる。樹脂層4には、イミド樹脂又はエポキシ樹脂等の光硬化性または熱硬化性でなる硬化性樹脂が用いられる。樹脂層4の、図面における上面4aは、研磨により、圧電基板3の第2主面3bと共に、第2主面3bと同面に形成される。圧電基板3の第2主面3bは、実装基板2との対向面である第1主面3aの反対側の面である。
【0023】
圧電基板3の第2主面3b、及び第2主面3bと同面に形成された樹脂層4の面4aに、接着剤5を介して支持基板6が接着される。すなわち、支持基板6は、圧電基板3のみならず、樹脂層4を覆うものである。そのため、支持基板6は、圧電基板3より広い面積を有する。支持基板6を圧電基板3や樹脂層4に接着する接着剤5としては、接着時に加温するものを用いてもよいが、常温で支持基板6を圧電基板3及び樹脂層4に接着可能なものを用いることができる。
【0024】
圧電基板3は、そのパッド電極15を、実装基板2のパッド電極8にバンプ17を介して接合することにより、実装される。この実装状態において、圧電基板3と実装基板2との間に樹脂層4で囲まれた空洞部18が形成される。このように構成された弾性波デバイスパッケージ1において、接着剤5は、樹脂層4と圧電基板3の側面との間に隙間が形成されることを防いで防湿性を保つ役目も果たす。
【0025】
支持基板6は、圧電基板3の温度変化による変形を抑制する役目を持たせる。このため、支持基板6には、圧電基板3より熱膨張率が低い例えばシリコン、スピネル又はサファイヤ等が用いられる。圧電基板3として用いられるLTとLNは、弾性表面波の伝播方向の熱膨張率がそれぞれ16.1ppm/℃、15.4ppm/℃である。また、支持基板6として用いるシリコン、スピネル及びサファイヤの熱膨張率は、それぞれ3.4ppm/℃、7.3ppm/℃、7.7ppm/℃である。
【0026】
また、圧電基板3の温度変化による膨張収縮を支持基板6により抑制するには、熱膨張率の他に剛性が高いこと、換言すればヤング率がなるべく高いことが好ましい。圧電基板3として用いられるLTとLNは、ヤング率がそれぞれ230GPa、203GPaである。また、支持基板6として用いるシリコン、スピネル及びサファイヤのヤング率は、それぞれ120GPa、280GPa、470GPaである。なお、樹脂層4に用いるシート型モールド樹脂としては、例えば長瀬産業(株)社製エポキシ系樹脂のモールド樹脂があり、その一例として、熱膨張率が33ppm/℃、ヤング率が9GPaのものがある。また、他の例である太陽インキ製造(株)社製エポキシ系樹脂のモールド樹脂があり、その一例として、熱膨張率が15~20ppm/℃、ヤング率が8.7GPaのものがある。
【0027】
図1に示した弾性波デバイスパッケージ1は、圧電基板3の周囲に樹脂層4が設けられる構造であり、圧電基板3や支持基板6上に樹脂層4を重ねる構造ではない。このため、樹脂層4の温度変化に伴う伝播方向における変形によって、圧電基板3が受ける力が少ない。このため、樹脂層4の温度変化による変形に伴って、圧電基板3が変形することを抑制することができる。そして、弾性波デバイスの周波数温度特性は、熱膨張率の低い支持基板6に依存するので、周波数温度特性が向上する。また、支持基板6が外部に露出し、かつ支持基板6が圧電基板3より広い構造であるため、放熱性が向上する。この放熱性の向上により、弾性波デバイスパッケージ1の温度上昇が緩和されるので、温度上昇による周波数の変化がさらに抑制される。
【0028】
また、圧電基板3の第2主面3b及び樹脂層4の面4aを同一面に形成してこれらに支持基板6を接着剤5により接着する構造である。このため、圧電基板3と支持基板6とを接着剤等により加熱することなく常温で接合することが可能となる。このため、高額の常温接合装置が不要となり、製造コストを低減することが可能となる。
【0029】
また、実装基板2及び樹脂層4により固定された状態で圧電基板3が研磨により薄肉化された構造である。このため、樹脂層4により固定されていない状態で圧電基板3を薄肉化させてから、樹脂層4に固定する場合よりも、薄い圧電基板3を得ることができる。このため薄い圧電基板を備えた弾性波デバイスパッケージを得ることができる。
【0030】
また、この圧電基板3の薄肉化により、その体積が小さくなり、熱膨張率が大きい圧電基板3が熱膨張しようする力は小さくなるため、圧電基板3が支持基板6に与える力も小さくなる。このため、熱膨張率が小さい支持基板6による熱変形抑制作用をより高く発揮させることができる。従って、熱変形抑制作用に優れた弾性波デバイスパッケージを製造することが可能になる。
【0031】
また、圧電基板3の薄肉化によって、従来の弾性波デバイスパッケージ1全体の厚さを薄くすることができる。具体的には、圧電基板3の厚さは2μm以上でかつ20μm以下とすることができる。ここで、支持基板6の厚さは100μm以上でかつ200μm以下とし、実装基板2の厚さも100μm以上でかつ200μm以下とすれば、従来の弾性波デバイスパッケージでは実現が困難であった400μm以下の厚さの弾性波デバイスパッケージの実現が可能となる。
【0032】
このように、圧電基板3の厚さを支持基板6の厚さに比較して薄く設定すれば、支持基板6による圧電基板3の温度変化による膨張収縮を効果的に抑制できる。また、圧電基板3が薄くなるため、弾性波デバイスパッケージの厚さを薄くすることができる。
【0033】
図2~
図4により、第1の形態の弾性波デバイスパッケージ1の製造工程の一例を説明する。
図2(a)は、すでに圧電基板3の第1主面3aに櫛型電極14、パッド電極15及び不図示の反射器等の電極パターンが形成されたベアチップ20を示している。このベアチップ20は従来から用いられている方法により製造して準備する。なお、圧電基板3には、LT又はLN等が用いられる。櫛型電極14及びパッド電極15及び不図示の反射器等は、ウエハ状態の圧電基板3の第1主面3aに、フォトリソグラフィ技術を用いて形成されたものである。これらの櫛型電極14及びパッド電極15等には、例えば金、銅又はアルミニウム、もしくはこれらの合金等を用いることができる。ウエハ状態の圧電基板3の厚さは、100μm以上、300μm以下程度の厚さとすることができる。櫛型電極14及びパッド電極15等を形成したウエハ状態の圧電基板3は、ブレードダイシングやレーザ等によりチップ状に分断して、個々のベアチップ20にする。
【0034】
一方、ベアチップ20の製造工程とは別の工程で、
図2(b)に示すように、セラミック、ガラス、樹脂等の絶縁材でなる分断前の実装基板2Aを従来から用いられている方法により製造して準備する。分断前の実装基板2Aは、複数の弾性表面波素子用の電極パターンを縦横に形成したものである。実装基板2Aは、内部に配線や素子形成用の導体層12を設ける場合には、導体層12を形成した実装基板と、別の1枚または複数枚の実装基板とを重ねて接合したものを用いる。このような実装基板2Aに、レーザ等により、実装基板2Aに導体11を設けるための孔を設ける。そして、その孔及び実装基板の表裏面に、例えば銅等でなるシード層を形成する。そのシード層上に電解法により導体11となる金属を形成する。その後実装基板2Aの内部以外の不要な金属を除去する。このような電解法を用いるのではなく、レーザ等により設けた孔にバンプを充填し、固化してもよい。実装基板2Aにおける導体11を設けた後、導体11が露出した実装基板2Aの表裏面に、パッド電極8、9を形成する。パッド電極8、9の形成の際には、導体11の端部の周囲となる実装基板2Aの領域にレジストを塗布する。そしてレジストで覆われていない導体11の端部とその周囲を覆うように、蒸着やスパッタリング等により、パッド電極8、9となる銅や金等の金属層を形成する。その後、レジストをその上に形成された導体と共に除去する。
【0035】
このようにしてパッド電極8、9や導体11を設けた実装基板2Aに、
図2(c)に示すように、弾性波デバイスのベアチップ20をフリップチップ実装する。すなわち、実装基板2Aのパッド電極8に対し、ベアチップ20のパッド電極15を、バンプ17を介して接合する。
【0036】
続いて
図3(a)に示すように、ベアチップ20を実装した実装基板2Aを硬化性の樹脂層4Aで覆う。この樹脂層4Aを設けるため、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂フィルムを接着するか、あるいはフィルムを接着する代わりに、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。その後、これらの樹脂層4を加熱するか又は光照射することにより、樹脂を硬化させる。
【0037】
そして、
図3(a)の二点鎖線23に示すレベルまで、樹脂層4A及び圧電基板3を研磨する。この二点鎖線23で示すレベルは、圧電基板3の第1主面3aの反対側の面である第2主面3bを露出させ、さらに樹脂層4A及び圧電基板3を研磨により薄肉化させるレベルである。この研磨により、
図3(b)に示すように、樹脂層4の研磨面4aは第2主面3bと同面に形成される。
【0038】
樹脂層4A及び圧電基板3の研磨は、従来より用いられている平面研削装置により行なうことができる。この平面研削装置は、ワークとして樹脂層4A付き実装基板2Aを固定した第1のテーブルと、砥石を固定した第2のテーブルとを備えるものである。そして、研磨を行なう際には、両テーブルのうちの少なくとも一方のテーブルを操作して実装基板2A上の樹脂層4Aに砥石を押し付ける。続いて、実装基板2Aの全面について樹脂層4Aを研磨し、さらには圧電基板3が研磨されるように、樹脂層4Aと砥石の間に砥粒を供給しながら、両テーブルを共に異なる軌跡で回転させつつ次第に近接させて研磨を行なう。例えば実装基板2Aを装着したテーブルについては実装基板2Aの中心を回転中心として回転させ、砥石については、実装基板2Aより小さい半径の砥石を用い、砥石を例えば実装基板2Aの半径方向に往復駆動しながら回転させる。このような作業により、実装基板2Aの全面について、樹脂層4と圧電基板3の研磨を行なう。この研磨により、圧電基板3の厚さを2μm~20μm程度にする。
【0039】
このように樹脂層4と圧電基板3の研磨を行なった後、
図4(a)に示すように、圧電基板3の第2主面3bとこの面と同面をなす樹脂層4の面4a上に接着剤5を塗布する。ここで、好ましい接着剤5の厚さは0.3μm~0.5μmである。
【0040】
次に
図4(b)に示すように、圧電基板3より厚い分断前の支持基板6Aを接着剤5を介して樹脂層4及び圧電基板3に接着する。支持基板6Aには、シリコン、サファイヤ又はスピネルを用いる。そして
図4(b)に示す線24に沿ってブレードダイシングあるいはレーザにより個々のチップに分断して弾性波デバイスパッケージ1とする。
【0041】
この弾性波デバイスパッケージの製造方法では、圧電基板3の周囲を囲むように樹脂層4が設けられ、その圧電基板3と樹脂層4に支持基板6を接着する構造が実現できる。そして、圧電基板3は樹脂層4で全体を覆われていないので、樹脂層4の温度変化に伴う、圧電基板3の変形を防止することができる。そして、弾性波デバイスの周波数温度特性は、圧電基板3より厚く、かつ熱膨張率の低い支持基板6に依存するので、周波数温度特性が向上する。また、支持基板6が外部に露出し、かつ支持基板6が圧電基板3より広い構造が実現できるため、放熱性が向上する。この放熱性の向上により、弾性波デバイスパッケージ1の温度上昇が緩和されるので、温度上昇による周波数の変化が抑制される。
【0042】
また、この弾性波デバイスパッケージの製造方法は、圧電基板3の第2主面3b及び樹脂層4の面4aを同一面に形成してこれらに支持基板6を接着剤5により接着する工程を含む。このため、圧電基板3と支持基板6とを例えば加熱が不要な接着剤を用いて常温で接合することが可能となる。このため、従来のように、圧電基板と支持基板とをウエハ状態で常温で接合するために使用していた高額の常温接合装置が不要となり、製造コストを低減することが可能となる。
【0043】
また、この弾性波デバイスパッケージの製造方法は、実装基板2及び樹脂層4により固定された状態で圧電基板3が研磨により薄肉化する工程を含む。このため、樹脂層4により固定されていない状態で圧電基板3を薄肉化させてから、樹脂層4に固定する場合よりも、薄い圧電基板3を得ることができる。このため、薄い圧電基板を備えた弾性波デバイスパッケージを得ることができる。また、この圧電基板3の薄肉化により、熱膨張率の大きい圧電基板3の膨張力の影響が小さくなることによって、熱膨張率が小さい支持基板6による熱変形抑制作用をより高く発揮させることができる。
【0044】
また、圧電基板3の薄肉化によって、従来の弾性波デバイスパッケージ全体の厚さよりもパッケージ1を薄くすることができる。
【0045】
<第2の実施の形態>
本発明による弾性波デバイスパッケージの第2の実施の形態を
図5により説明する。第2の実施の形態の弾性波デバイスパッケージ1Xは、実装基板2と、圧電基板3と、樹脂層4と、絶縁膜25とを含んで構成される。第2の実施形態のパッケージ1Xは、第1の実施の形態のものと異なり、接着剤5を要することなく、絶縁膜25自体の組成により樹脂層4及び圧電基板3に接着可能なものを用いている。圧電基板3には、第1の実施の形態と同様に、LTまたはLNが用いられる。樹脂層4にも第1の実施の形態と同様に、熱または光により硬化する硬化性樹脂が用いられる。
【0046】
実装基板2には、圧電基板3より熱膨張率が低い、セラミック基板や有機基板等が用いられる。また、絶縁膜25の温度変化に伴う圧電基板3への影響を低下させるため、絶縁膜25の厚さは、実装基板2の厚さより小さくする。具体的には、圧電基板3の厚さは2μm以上でかつ20μm以下であり、絶縁膜25の厚さは0.3μm以上でかつ20μm以下とし、実装基板2の厚さは60μm以上でかつ200μm以下としたものである。これにより、圧電基板3の温度変化に伴う膨張収縮を実装基板2によって抑制する。
【0047】
実装基板2の具体例としては、アルミナ製のHTCC(High Temparature Co-Fired Ceramic)があり、その一例として例えば京セラ社製A440があげられる。その熱膨張率は7.1である。実装基板2として用いることができる他の例として、BTレジン銅張積層板である三菱化学社製CCL-HL832NSがあり、その熱膨張率10.0である。また、同社製のCCL-HL832NSF-LCAを用いることができ、その熱膨張率は3.0である。さらに他の例として、樹脂製内層回路基板である日立化成社製「MCL-E705G」があり、その熱膨張率は6.0である。また、同社製「MCL-E-770G」を用いることができ、その熱膨張率は5.0である。
【0048】
第2の実施の形態においても、樹脂層4の面4aは、研磨により、圧電基板3の第2主面3bと同面に形成される。絶縁膜25は樹脂層4の面4a及び圧電基板3の第2主面3bに、絶縁膜25が分断前の状態において接合される。
【0049】
絶縁膜25としては、好ましくは圧電基板3のより小さい熱膨張率の材質のものを用いることが好ましい。しかしながら、本実施の形態においては、圧電基板3の温度変化に伴う膨張収縮を実装基板2により抑制する構成である。このため、絶縁膜25として、圧電基板3のより大きい熱膨張率の材質のものを用いることもできる。
【0050】
絶縁膜25としては、常温または比較的低温で接合可能な材質のものが好ましい。例えば150℃以下で樹脂層4及び圧電基板3に接合可能であれば、加熱後の圧電基板3等のそりの発生を防止することができる。絶縁膜25としては、例えばガラス繊維又はアラミド繊維からなる布にポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を含浸し半硬化状態にして接合を容易化したプリプレグシートを用いることができる。例えば30~40μmの厚さのプリプレグを一枚あるいは複数枚重ねて硬化させることにより、繊維の縦方向に8~13ppm/℃程度の熱膨張率を有する絶縁膜25を得ることができる。
【0051】
本実施の形態の弾性波デバイスパッケージを製造する場合、
図2及び
図3に示した工程までは第1の実施の形態と同じ工程を用いることができる。すなわち樹脂層4Aの研磨により、圧電基板3を露出させ、さらに研磨を続行することにより、
図6(a)に示すように、圧電基板3の第2主面3bを形成する。
【0052】
その後、
図6(b)に示すように、樹脂層4の面4aとこの面と同面をなす圧電基板3の第2主面3b上に、分断前の絶縁膜25Aを接合する。絶縁膜25Aとして上述したようなプリプレグシートを用いた場合、例えば180 ℃程度に加熱した状態で加圧することにより、樹脂層4及び圧電基板3に接合する。そして
図6(b)に示す線24に沿ってブレードダイシングあるいはレーザにより各チップに分断して弾性波デバイスパッケージとする。
【0053】
本実施の形態においては、圧電基板3の温度変化に伴う膨張収縮を実装基板2により抑制する構成である。また、圧電基板3と絶縁膜25とをウエハ状態で接合する必要がない。このため、高額の常温接合装置が不要となり、製造コストを低減することが可能となる。
【0054】
また、圧電基板3は実装基板2に対して実装されて、樹脂層4により固定された状態で圧電基板3が研磨されるため、より薄肉化した圧電基板3を得ることが可能である。このため、圧電基板を個別に薄肉化してから実装する場合よりも、薄い圧電基板を得ることができる。この圧電基板3の薄肉化と、絶縁膜25を実装基板2より薄くすることにより、圧電基板3及び絶縁膜25の熱膨張による実装基板2に対する影響は小さくなるため、熱膨張率が小さい実装基板2による熱変形抑制作用をより高く発揮させることができる。
【0055】
また、圧電基板の薄肉化によって、従来の弾性波デバイスパッケージ全体の厚さを薄くすることができる。
【0056】
本実施の形態においては、実装基板2が圧電基板3の温度による変形を抑制している。前述したように圧電基板3より低い熱膨張率のプリプレグを用いることが、温度による圧電基板3の変形を小さくする意味で好ましい。
【0057】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明を実施する場合、本発明の範囲において、上記例以外の種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1、1X 弾性波デバイスパッケージ
2 実装基板
2A 分断前の実装基板
3 圧電基板
3a 第1主面
3b 第2主面
4 樹脂層
4A 樹脂層
5 接着剤
6 支持基板
6A 分断前の支持基板
14 櫛型電極
15 パッド電極
25 絶縁膜
25A 分断前の絶縁膜