(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】端面加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 9/00 20060101AFI20240821BHJP
B24B 29/00 20060101ALI20240821BHJP
A46B 3/18 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B24B9/00 601A
B24B29/00 F
B24B29/00 M
A46B3/18
(21)【出願番号】P 2020073774
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391040995
【氏名又は名称】ショーダテクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】島村 哲也
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-009322(JP,A)
【文献】特開2008-105159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00
B24B 29/00
A46B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、
回転中心となる軸線の周囲に前記被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、
前記被加工物の端面を磨いている前記磨き具に対して同被加工物とは反対側で前記磨き部に接触して前記磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具と
、
前記被加工物に対する前記磨き具の位置関係を変化させることなく前記背面受け具を前記磨き具に対して接近または離隔させる受け具変位手段とを備えることを特徴とする端面加工装置。
【請求項2】
被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、
回転中心となる軸線の周囲に前記被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、
前記被加工物の端面を磨いている前記磨き具に対して同被加工物とは反対側で前記磨き部に接触して前記磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具と
、
前記磨き具および前記背面受け具を前記被加工物に対して一体的に接近または離隔させる変位機構とを備えることを特徴とする端面加工装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載した端面加工装置において、
前記背面受け具における前記受け部は、
前記磨き部に対して凹状に凹んで形成されていることを特徴とする端面加工装置。
【請求項4】
被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、
回転中心となる軸線の周囲に前記被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、
前記被加工物の端面を磨いている前記磨き具に対して同被加工物とは反対側で前記磨き部に接触して前記磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具とを備え
、
前記背面受け具における前記受け部は、
前記磨き部に対して凹状に凹んで形成されて
おり、
前記磨き具の軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方が同軸線方向外側に向かって広く開口した拡大開口部を有していることを特徴とする端面加工装置。
【請求項5】
被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、
回転中心となる軸線の周囲に前記被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、
前記被加工物の端面を磨いている前記磨き具に対して同被加工物とは反対側で前記磨き部に接触して前記磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具と
、
前記背面受け具に対して加工液を供給する加工液供給手段
とを備え、
前記背面受け具は、
前記加工液供給手段から供給された前記加工液を吐出する吐出孔が前記受け部に開口していることを特徴とする端面加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の端面に対して磨き加工を行う端面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被加工物の端面に対して磨き加工を行う端面加工装置がある。例えば、下記特許文献1には、直線状に延びる線状体の周囲にブラシを備えた線状ブラシによってガラス板を積層した被加工物における孔また凹状に窪んだ部分に対して磨き加工を行う端面加工装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載した端面加工装置においては、磨き加工中における線状ブラシの撓み変形を防止するため強い張力を付加しなければならず、線状ブラシの引張強度の確保負担が大きいとともに使用可能な線状ブラシが限定されるという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、線状ブラシなどの磨き具の引張強度の確保負担を減じることができるとともに幅広い材質または構造の磨き具の使用を可能にすることができる端面加工装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、回転中心となる軸線の周囲に被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具と、被加工物に対する磨き具の位置関係を変化させることなく背面受け具を磨き具に対して接近または離隔させる受け具変位手段とを備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、端面加工装置は、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する背面受け具を備えているため、磨き具の引張強度の確保負担を減じることができるとともに幅広い材質または構造の磨き具の使用を可能にすることができる。なお、磨き具としては、線状に延びる芯体の周囲に無数の毛または多孔質な弾性体を設けた構成のほか、芯体を設けず弾性体のみで構成することができる。また、本発明によれば、端面加工装置は、さらに、被加工物に対する磨き具の位置関係を変化させることなく背面受け具を磨き具に対して接近または離隔させる受け具変位手段を備えているため、背面受け具が不要な場合には背面受け具を磨き具から離隔させることができるとともに、磨き具に対して背面受け具の位置を適宜設定することで磨き部の変形の規制の程度(強弱)を調整することもできる。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、回転中心となる軸線の周囲に被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具と、磨き具および背面受け具を被加工物に対して一体的に接近または離隔させる変位機構とを備えることにある。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、端面加工装置は、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する背面受け具を備えているため、磨き具の引張強度の確保負担を減じることができるとともに幅広い材質または構造の磨き具の使用を可能にすることができる。なお、磨き具としては、線状に延びる芯体の周囲に無数の毛または多孔質な弾性体を設けた構成のほか、芯体を設けず弾性体のみで構成することができる。また、本発明によれば、端面加工装置は、さらに、磨き具および背面受け具を被加工物に対して一体的に接近または離隔させる変位機構を備えているため、背面受け具を磨き具に対して接近または離隔させるための機械装置を省略して機械的構成および制御的構成を簡単にすることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記端面加工装置において、背面受け具における受け部は、磨き部に対して凹状に凹んで形成されていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、端面加工装置は、背面受け具における受け部が磨き部に対して凹状に凹んで形成されているため、磨き部を収容して磨き部の変形を抑えることができるとともに磨き加工による切削紛および加工液の飛散を防止することができる。この場合、背面受け具における受け部としては、断面形状が円弧(楕円を含む)となる曲面のほか、断面形状が方形または三角形となる平面の組み合わせまたは平面と曲面との組み合わせで構成することができる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、回転中心となる軸線の周囲に被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具とを備え、背面受け具における受け部は、磨き部に対して凹状に凹んで形成されており、磨き具の軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方が同軸線方向外側に向かって広く開口した拡大開口部を有していることにある。
【0013】
このように構成した本発明の特徴によれば、端面加工装置は、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する背面受け具を備えているため、磨き具の引張強度の確保負担を減じることができるとともに幅広い材質または構造の磨き具の使用を可能にすることができる。なお、磨き具としては、線状に延びる芯体の周囲に無数の毛または多孔質な弾性体を設けた構成のほか、芯体を設けず弾性体のみで構成することができる。また、本発明によれば、端面加工装置は、背面受け具における受け部が磨き部に対して凹状に凹んで形成されているため、磨き部を収容して磨き部の変形を抑えることができるとともに磨き加工による切削紛および加工液の飛散を防止することができる。この場合、背面受け具における受け部としては、断面形状が円弧(楕円を含む)となる曲面のほか、断面形状が方形または三角形となる平面の組み合わせまたは平面と曲面との組み合わせで構成することができる。また、本発明によれば、端面加工装置は、背面受け具における受け部の両端部のうちの少なくとも一方に軸線方向外側に向かって広く開口した拡大開口部が形成されているため、受け部内に磨き部を挿入し易くすることができるとともに受け部に対して磨き部を往復運動させた際の受け部の損傷および切削粉および加工液の飛散を防止することができる。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被加工物を着脱自在に保持するワーク保持具と、回転中心となる軸線の周囲に被加工物の端面を磨くための磨き部を備えた磨き具が連結されて同磨き具を前記軸線周りに回転駆動させる磨き具駆動手段と、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する受け部を有した背面受け具と、背面受け具に対して加工液を供給する加工液供給手段とを備え、背面受け具は、加工液供給手段から供給された加工液を吐出する吐出孔が受け部に開口していることにある。
【0015】
このように構成した本発明の特徴によれば、端面加工装置は、被加工物の端面を磨いている磨き具に対して同被加工物とは反対側で磨き部に接触して磨き具の前記反対側への変形を規制する背面受け具を備えているため、磨き具の引張強度の確保負担を減じることができるとともに幅広い材質または構造の磨き具の使用を可能にすることができる。なお、磨き具としては、線状に延びる芯体の周囲に無数の毛または多孔質な弾性体を設けた構成のほか、芯体を設けず弾性体のみで構成することができる。また、本発明によれば、端面加工装置は、さらに、背面受け具に対して研磨剤または冷却液などの加工液を供給する加工液供給手段を備えており、背面受け具は加工液供給手段から供給された加工液を吐出する吐出孔が受け部に開口しているため、磨き具における磨き部に対して加工液の飛散を防止しながら効率的かつ効果的に供給することができる。また、端面加工装置は、吐出孔から吐出する加工液の噴出によっても磨き部の変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る端面加工装置の主要部の構成を正面から模式的に示す説明図である。
【
図2】
図1に示した端面加工装置の主要部の構成を側面から模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す端面加工装置の作動を制御する制御システムのブロック図である。
【
図4】
図1に示した端面加工装置の加工対象である被加工物の外観構成の概略を示す平面図である。
【
図5】
図1に示した端面加工装置における第2磨き具が被加工物の凹部を磨き加工する状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図1に示した端面加工装置における背面受け具の内部構成
の概略を示す断面図である。
【
図7】
図1に示した端面加工装置の第1磨き部が被加工物を磨き加工する状態を示す説明図である。
【
図8】
図1に示した端面加工装置の第2磨き部が被加工物を磨き加工する状態を示す説明図である。
【
図9】本発明の変形例に係る第2磨き具が被加工物の凹部を磨き加工する状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】本発明の他の変形例に係る第2磨き具が被加工物の凹部を磨き加工する状態を模式的に示す断面図である。
【
図11】本発明の他の変形例に係る第2磨き具が被加工物の凹部を磨き加工する状態を模式的に示す断面図である。
【
図12】本発明の他の変形例に係る端面加工装置の主要部の構成を正面から模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る端面加工装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る端面加工装置100の主要部の構成を正面から模式的に示す説明図である。また、
図2は、
図1に示す端面加工装置100の主要部の構成を側面から模式的に示す説明図である。また、
図3は、
図1に示す端面加工装置100の作動を制御する制御システムのブロック図である。なお、本明細書において参照する図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この端面加工装置100は、半導体の製造過程で用いられる
ガラス基板を被加工物90としてこの被加工物90の端面91に磨き加工を行う機械装置である。
【0018】
まず、本発明に係る端面加工装置100を説明する前に、この端面加工装置100の加工対象である被加工物90について説明する。この被加工物90は、
図4に示すように、半導体の製造過程で微細な電子回路のパターンが形成されてフォトマスクとして機能する部品であり、ガラス材を円形板状に形成して構成されている。この場合、被加工物90の平面視における大きさは、外径が約100mm~300mmであり、厚さが約0.5mm~5mmである。本実施形態においては、被加工物90は、外径が300mm、厚さが1mmの平面視で円形に形成されている。
【0019】
また、被加工物90には、外縁部を構成する端面91の一部に凹部92が形成されている。凹部92は、半導体の製造過程でガラス基板である被加工物90の位置を規定するための部分であり、端面91から凹状に窪んで形成されている。本実施形態においては、凹部92は、直径3mmの円の半円を構成する円弧で構成されている。
【0020】
(端面加工装置100)
端面加工装置100は、ワーク保持具110を備えている。ワーク保持具110は、積み重ねられた複数の被加工物90を着脱自在に保持する機械装置であり、主として、フレーム111、支持テーブル112、押圧体113および連結体115,117をそれぞれ備えて構成されている。
【0021】
フレーム111は、支持テーブル112および押圧体113を支持する部品であり、断面形状が方形の金属製の棒体を正面視で方形の枠状に組んで構成されている。支持テーブル112は、積み重ねられた複数の被加工物90が載置される部品であり、金属材料を板状に形成して構成されている。この支持テーブル112は、図示下方に延びる脚部112aが図示しないベアリングを介してフレーム111における図示下辺に回転自在な状態で支持されている。
【0022】
押圧体113は、支持テーブル112上に配置された被加工物90を図示上方から押圧して支持テーブル112に固定するための部品であり、金属材料を板状に形成して構成されている。この押圧体113は、締付け機構114および連結体117をそれぞれ介してフレーム111における図示上辺に回転自在な状態で支持されている。締付け機構114は、押圧体113を支持テーブル112に対して接近または離隔させるための部品であり、送りネジ機構を備えて構成されている。
【0023】
したがって、作業者は、締付け機構114におけるナット114aを回動操作することによって送りネジ114bを図示上下方向に進退させることで押圧体113を支持テーブル112に接近または離隔させることができる。この締付け機構114は、一方(図示
下側)の端部が押圧体113に連結されているとともに、他方(図示上側)の端部がワーク駆動モータ118に連結されている。なお、
図1においては、図示上下方向をZ軸方向、このZ軸方向に直交する図示左右方向をX軸方向、およびこれらZ軸方向およびX軸方向にそれぞれ直交する方向をY軸方向とする。
【0024】
連結体115は、ワーク保持具110をベース116上に連結するため部品であり、金属材をベース116の上面に挿し込み可能な円柱状に形成して構成されている。ベース116は、ワーク保持具110を支持する部品であり、金属製の板状体で構成されている。このベース116は、端面加工装置100における図示しない筐体に取り付けられている。
【0025】
連結体117は、ワーク保持具110をモータ支持体118aに連結するため部品であり、金属材をモータ支持体118aの下面に挿し込み可能な円筒状に形成して構成されている。この場合、円筒状に形成された連結体117には、締付け機構114がワーク駆動モータ118に連結されている。
【0026】
ワーク駆動モータ118は、締付け機構114を回転変位させることによって支持テーブル112と押圧体113とで保持された被加工物90を回転変位させるための電動機であり、後述する制御装置150によって作動制御される。このワーク駆動モータ118は、モータ支持体118aによって支持されている。モータ支持体118aは、ワーク保持具110の上方に設けられた金属製の板状体で構成されており、端面加工装置100における図示しない筐体に支持されている。ワーク保持具110における図示左右両側には、第1磨き具120および第2磨き具130がそれぞれ設けられている。
【0027】
第1磨き具120は、支持テーブル112と押圧体113とで保持された被加工物90の端面91に対して磨き加工を行うための部品であり、金属製の円筒体で構成された芯体120aの外表面に磨き部120bが形成されて構成されている。磨き部120bは、端面91に接触して磨き加工を行うための部品であり、無数の樹脂製の毛で構成されている。
【0028】
すなわち、磨き部120bは、円筒体で構成された芯体120aの外表面が径方向外側に延びたブラシで構成されている。この第1磨き具120は、本実施形態においては、支持テーブル112と押圧体113とで保持された被加工物90の厚さ以上の長さに形成されているが、被加工物90の厚さと同じ長さまたは被加工物90の厚さよりも短い長さに形成されていてもよい。また、第1磨き具120は、端面91との接触面積を大きくするために第2磨き具130よりも大径に形成されている。
【0029】
この第1磨き具120は、第1磨き具駆動モータ121に着脱自在な状態で取り付けられている。第1磨き具駆動モータ121は、第1磨き具120を回転駆動させるための電動機であり、制御装置150によって作動制御される。この第1磨き具駆動モータ121は、モータ支持体122によって支持されている。モータ支持体122は、第1磨き具120の上方に設けられた金属製の板状体で構成されており、第1X軸方向変位機構123および第1Z軸方向変位機構124にそれぞれ支持されている。すなわち、第1磨き具120は、モータ支持体122から下垂した状態で設けられている。なお、
図2においては、第1磨き具120、第1磨き具駆動モータ121およびモータ支持体122の図示を省略している。
【0030】
第1X軸方向変位機構123は、モータ支持体122を介して第1磨き具駆動モータ121および第1磨き具120を図示X軸方向(図示左右方向)に往復変位させる機械装置であり、図示しない電動モータおよび送りネジ機構などを備えて構成されている。この第1X軸方向変位機構123は、端面加工装置100における図示しない筐体に支持されており、制御装置150によって作動制御される。
【0031】
第1Z軸方向変位機構124は、モータ支持体122を介して第1磨き具駆動モータ121および第1磨き具120を図示Z軸方向(図示上下方向)に往復変位させる機械装置であり、図示しない電動モータおよび送りネジ機構などを備えて構成されている。この第1Z軸方向変位機構124は、前記第1X軸方向変位機構123に支持されており、制御装置150によって作動制御される。すなわち、第1Z軸方向変位機構124は、第1X軸方向変位機構123によって第1磨き具駆動モータ121および第1磨き具120とともに一体的に図示X軸方向に往復変位する。
【0032】
第2磨き具130は、支持テーブル112と押圧体113とで保持された被加工物90における凹部92に対して磨き加工を行うための部品であり、棒体の外表面に樹脂製の無数の毛が径方向外側に延びた状態で設けられて構成されている。具体的には、第2磨き具130は、主として、芯体130aと磨き部130bとで構成されている。芯体130aは、磨き部130bを支持する部分であり、細長く捩じった金属線とこの金属線の一方の端部を保持する金属製の筒体で構成されたチャック部とで構成されている。
【0033】
磨き部130bは、
図5に示すように、凹部92の内側面を磨く部品であり、芯体130aの外表面から径方向外側に延びる無数の樹脂製の毛で構成されている。すなわち、磨き部130bは、棒状に形成された芯体130aの外表面が径方向外側に延びたブラシで構成されている。この場合、磨き部130bは、凹部92の内径よりも若干大きい外径に形成されるとともに、支持テーブル112と押圧体113とで保持された被加工物90の厚さ以上の長さに形成される。なお、第2磨き具130は、被加工物90の厚さと同じ長さまたは被加工物90の厚さよりも短い長さに形成することもできる。
【0034】
この第2磨き具130は、第2磨き具駆動モータ131に着脱自在な状態で取り付けられている。第2磨き具駆動モータ131は、第2磨き具130を回転駆動させるための電動機であり、制御装置150によって作動制御される。この第2磨き具駆動モータ131は、モータ支持体132によって支持されている。なお、この第2磨き具駆動モータ131が、本発明に係る磨き具駆動手段に相当する。
【0035】
モータ支持体132は、第2磨き具130の上方に設けられた金属製の板状体で構成されており、第2X軸方向変位機構133および第2Z軸方向変位機構134にそれぞれ支持されている。すなわち、第2磨き具130は、モータ支持体132から下垂した状態で設けられている。なお、
図2においては、第2磨き具130、第2磨き具駆動モータ131およびモータ支持体132の図示を省略している。
【0036】
第2X軸方向変位機構133は、モータ支持体132を介して第2磨き具駆動モータ131および第2磨き具130を図示X軸方向(図示左右方向)に往復変位させる機械装置であり、図示しない電動モータおよび送りネジ機構などを備えて構成されている。この第2X軸方向変位機構133は、端面加工装置100における図示しない筐体に支持されており、制御装置150によって作動制御される。
【0037】
第2Z軸方向変位機構134は、モータ支持体132を介して第2磨き具駆動モータ131および第2磨き具130を図示Z軸方向(図示上下方向)に往復変位させる機械装置であり、図示しない電動モータおよび送りネジ機構などを備えて構成されている。この第2Z軸方向変位機構134は、前記第2X軸方向変位機構133に支持されており、制御装置150によって作動制御される。すなわち、第2Z軸方向変位機構134は、第2X軸方向変位機構133によって第2磨き具駆動モータ131および第2磨き具130とともに一体的に図示X軸方向に往復変位する。
【0038】
第2磨き具130に対してワーク保持具110とは反対側には、背面受け具140が設けられている。背面受け具140は、
図5および
図6にそれぞれ示すように、被加工物90の凹部92に対して磨き加工を行っている第2磨き具130が凹部92に対して離隔する方向に撓み変形することを防止するための部品であり、ポリアセタールなどの樹脂材または金属材をブロック状に形成して構成されている。より具体的には、
背面受け具140は、本実施形態においては樹脂材を図示Z軸方向に延びる直方体に近いブロック状に形成した受け具本体141に受け部142および吐出孔144をそれぞれ備えて構成されている。
【0039】
受け部142は、第2磨き具130の磨き部130bに接触して磨き部130bが凹部92とは反対側に変形することを防止するための部分であり、受け具本体141における第2磨き具130に対向する側面に凹状に窪んで形成されている。より具体的には、受け部142は、断面形状が凹部92と同じ曲率の円弧となる曲面で構成されている。この場合、受け部142は、受け具本体141の被加工物90への接触を防止するため、凹部92よりも浅い深さで形成されている。
【0040】
また、受け部142の図示Z軸方向の長さは、凹部92の図示Z軸方向の長さと略同じ長さに形成されている。なお、受け部142の図示Z軸方向の長さは、凹部92の図示Z軸方向の長さよりも短い長さに形成されていてもよいし、凹部92の図示Z軸方向の長さよりも長い長さに形成されていてもよい。この受け部142における図示Z軸方向の両端部には、拡大開口部143a,143bがそれぞれ形成されている。
【0041】
拡大開口部143a,143bは、第2磨き具130の磨き部130bの受け部142内への挿入および図示Z軸方向への往復変位を行い易くするための部分であり、芯体130aの軸線方向(図示Z軸方向)の外側に向かって凹状の切欠き形状が広がる形状に形成されている。
【0042】
吐出孔144は、磨き部130bに対して研磨剤からなる加工液を供給するための通路であり、一方(図示左側)の端部が受け部142に開口するとともに他方(図示右側)の端部が分配通路145に連通している。この吐出孔144は、受け部142の長手方向(図示Z軸方向)に沿って複数形成されている。本実施形態においては、吐出孔144は、受け部142の長手方向(図示Z軸方向)に沿って等間隔に7つ形成されている。なお、
図5および
図6においては、加工液の流れを破線矢印で示している(
図9~
図11においても同様)。
【0043】
分配通路145は、加工液を7つの各吐出孔144に分配するための部分であり、7つの各吐出孔144に連通するように図示Z軸方向に延びて形成されている。この場合、分配通路145は、図示上端部が受け具本体141の図示上端面に開口するとともに同開口部分が栓145aによって封止されている。また、この分配通路145は、図示右側の側面に開口するとともに同開口部分に加工液供給管146が接続されている。
【0044】
加工液供給管146は、研磨剤からなる加工液を背面受け具140に供給するための管路であり、樹脂製または金属製をホースまたはパイプで構成されている。本実施形態においては、加工液は、酸化セリウムが分散した懸濁液で構成された研磨剤である。この加工液供給管146は、一方の端部が背面受け具140の受け具本体141に接続されているとともに他方の端部が加工液供給装置147に接続されている。加工液供給装置147は、加工液を貯留する加工液槽(図示せず)、この加工液槽と被加工物90の磨き加工領域との間で加工液を循環させる配管、弁およびポンプなどを備えて構成されている。この加工液供給装置147は、制御装置150によって作動が制御される。
【0045】
背面受け具140は、受け具変位機構148に支持されている。受け具変位機構148は、背面受け具140を第2磨き具130に対して接近または離隔させる機械装置であり、主として、スライドテーブル148aとテーブル駆動モータ148bとを備えて構成されている。スライドテーブル148aは、背面受け具140を支持して第2磨き具130に対して接近または離隔させる方向(図示X軸方向)に往復変位させる機具である。
【0046】
具体的には、スライドテーブル148aは、背面受け具140が載置されるテーブル、このテーブルを図示X軸方向に変位させる送りネジ機構および送りネジ機構を覆う筐体などを備えて構成されている。テーブル駆動モータ148bは、スライドテーブル148aにおけるテーブルを送りネジ機構を介して図示X軸方向に変位させるための駆動源であり、制御装置150によって作動制御される電動モータで構成されている。この受け具変位機構148は、端面加工装置100における図示しない筐体に支持されている。
【0047】
制御装置150は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、端面加工装置100の全体の作動を総合的に制御するとともに、記憶装置に予め記憶された図示しない端面加工プログラムを実行することにより被加工物90に対して磨き加工を行う。具体的には、制御装置150は、ワーク駆動モータ118、第1磨き具駆動モータ121、第1X軸方向変位機構123、第1Z軸方向変位機構124、第2磨き具駆動モータ131、第2X軸方向変位機構133、第2Z軸方向変位機構134、加工液供給装置147および受け具変位機構148の各作動を制御する。
【0048】
この制御装置150には、作業者からの指示を受け付けて制御装置150に入力するスイッチ群からなる入力装置および制御装置150の作動状況を表示する表示ランプおよび液晶表示装置をそれぞれ備えた操作盤151を備えている。なお、制御装置150は、外部電源か電力を受けて電力を必要とするワーク駆動モータ118、第1磨き具駆動モータ121、第1X軸方向変位機構123、第1Z軸方向変位機構124、第2磨き具駆動モータ131、第2X軸方向変位機構133、第2Z軸方向変位機構134、加工液供給装置147および受け具変位機構148などの各部に供給する電源部、および端面加工装置100の全体を包囲する外装カバーなども備えるが、これらについては、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0049】
(端面加工装置100の作動)
次に、このように構成された端面加工装置100の作動について
図3を参照しながら説明する。まず、端面加工装置100を用いて被加工物90の磨き加工を行う作業者は、端面加工装置100における図示しない電源スイッチをONにすることにより制御装置150を起動させる。これにより、制御装置150は、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって作動を開始して作業者からの指示を待つ待機状態となる。
【0050】
次に、作業者は、第1工程として、端面加工装置100の加工領域内におけるワーク保持具110に被加工物90を保持させる。具体的には、作業者は、ワーク保持具110における支持テーブル112上に複数のガラス基板を積み重ねた被加工物90を載置した後、ナット114aを操作することにより押圧体113を下降させて被加工物90を支持テーブル112と押圧体113とで挟んだ状態で保持する(
図1および
図2参照)。
【0051】
次に、作業者は、第2工程として、被加工物90の端面91に対して磨き加工を行う。具体的には、作業者は、端面加工装置100の操作盤151を操作することにより制御装置150に対して端面91の磨き加工の開始を指示する。この指示に応答して制御装置150は、図示しない研磨加工プログラムを実行して被加工物90の端面91に対して研磨加工を開始する。
【0052】
具体的には、制御装置150は、ワーク駆動モータ118の作動を制御して支持テーブル112と押圧体113とで保持した被加工物90を回転駆動させるとともに第1磨き具駆動モータ121の作動を制御して第1磨き具120を回転駆動させる。この場合、制御装置150は、被加工物90を第1磨き具120よりも遅い回転数でかつ第1磨き具120の回転方向とは反対方向に回転させる。
【0053】
次いで、制御装置150は、
図7に示すように、第1X軸方向変位機構123の作動を制御して第1磨き具120を被加工物90に接近させて第1磨き具120を被加工物90の端面91に接触させる。この場合、制御装置150は、図示しない加工液供給装置の作動を制御して被加工物90の端面91と第1磨き具120の接触部分に加工液(図示せず)を供給する。そして、制御装置150は、第1Z軸方向変位機構124の作動を制御して第1磨き具120を図示Z軸方向(図示上下方向)に往復変位させる。これにより、端面加工装置100は、第1磨き具120によって被加工物90の端面91に対して磨き加工を行うことになる。
【0054】
次いで、制御装置150は、被加工物90の端面91に対して第1磨き具120を用いて所定の時間だけ磨き加工を行った場合には、第1X軸方向変位機構123および第1Z軸方向変位機構124の各作動を制御して第1磨き具120を元の位置に変位させる。また、制御装置150は、ワーク駆動モータ118および第1磨き具駆動モータ121の各作動を制御して被加工物90および第1磨き具120の各回転駆動を停止させて端面91の磨き加工を終了する。これにより、被加工物90は、端面91に対して磨き部120bによって磨き加工が施される。
【0055】
次に、作業者は、第3工程として、被加工物90の凹部92に対して磨き加工を行う。具体的には、作業者は、端面加工装置100の操作盤151を操作することにより制御装置150に対して凹部92の磨き加工の開始を指示する。この指示に応答して制御装置150は、図示しない研磨加工プログラムを実行して被加工物90の凹部92に対して研磨加工を開始する。
【0056】
具体的には、制御装置150は、ワーク駆動モータ118の作動を制御して被加工物90を回転駆動させて凹部92を第2磨き具130に対向する位置に位置決めする。次いで、制御装置150は、第2Z軸方向変位機構134の作動を制御して第2磨き具130を上昇させた後、受け具変位機構148の作動を制御して背面受け具140を被加工物90に接近させて被加工物90の端面91に対向配置させる。
【0057】
この場合、制御装置150は、
図5に示すように、背面受け具140の受け部142が凹部92を構成する曲率の円弧の延長線上に位置するように背面受け具140を位置決めする。すなわち、受け部142は、凹部92とともに1つの円の円周上に配置される。次いで、制御装置150は、加工液供給装置147の作動を制御して背面受け具140に加工液を供給する。これにより、凹部92と受け部142に囲まれた円筒状の領域内に吐出孔144から加工液が供給される。
【0058】
次いで、制御装置150は、
図8に示すように、第2X軸方向変位機構133の作動を制御して第2磨き具130を被加工物90側に移動させて第2磨き具130を凹部92と受け部142に囲まれた円筒状の領域の上方に位置させた後、第2磨き具駆動モータ131の作動を制御して第2磨き具130を回転駆動させる。そして、制御装置150は、第2Z軸方向変位機構134の作動を制御して第2磨き具130を下降させて凹部92と受け部142に囲まれた円筒状の領域内に磨き部130bを挿入した後、第2磨き具130を図示Z軸方向(図示上下方向)に往復変位させる。
【0059】
これにより、端面加工装置100は、磨き部130bによって被加工物90の凹部92に対して磨き加工を行うことになる。この場合、磨き部130bは、被加工物90とは反対側(すなわち、受け部142側)への撓み変形が受け部142によって規制されるため、凹部92に対する接触を維持して精度よく磨き加工を行うことができる。
【0060】
なお、制御装置150は、上記手順、すなわち、背面受け具140を凹部92に対向配置した後に第2磨き具130を凹部92および受け部142内に挿入する手順に代えて、第2磨き具130を凹部92に接触させた後、背面受け具140を凹部92に接触状態にある第2磨き具130に接触するように作動させることもできる。
【0061】
次いで、制御装置150は、被加工物90の凹部92に対して第2磨き具130を用いて所定の時間だけ磨き加工を行った場合には、第2Z軸方向変位機構134の作動を制御して第2磨き具130を上昇させて磨き部130bを凹部92と受け部142に囲まれた円筒状の領域内から抜く。次いで、制御装置150は、第2磨き具駆動モータ131の作動を制御して第2磨き具130の回転駆動を停止させるとともに、加工液供給装置147の作動を制御して第2磨き具130に対する加工液の供給を停止する。
【0062】
次いで、制御装置150は、受け具変位機構148の作動を制御して背面受け具140を被加工物90から離隔させて元の位置に変位させる。また、制御装置150は、第2X軸方向変位機構133の作動を制御して第2磨き具130を被加工物90から離隔する方向に移動させるとともに、第2Z軸方向変位機構134の作動を制御して第2磨き具130を下降させて元の位置に変位させて凹部92の磨き加工を終了する。これにより、被加工物90は、凹部92に対して磨き部130bによって磨き加工が施される。
【0063】
次に、作業者は、第4工程として、ワーク保持具110から被加工物90を取り外す。具体的には、作業者は、ナット114aを操作することにより押圧体113を上昇させて支持テーブル112上の被加工物90を取り出す。これにより、作業者は、被加工物90の端面91および凹部92の各磨き加工を行うことができる。
【0064】
そして、作業者は、新たな被加工物90に対して端面91および凹部92の磨き加工を行う場合には、前記した手順で支持テーブル112上に被加工物90を配置して端面91および凹部92の磨き加工を行う。また、作業者は、被加工物90の端面91および凹部92の各磨き加工を終える場合には、端面加工装置100における図示しない電源スイッチをOFFにすることにより制御装置150の作動を停止させる。
【0065】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、端面加工装置100は、被加工物90の凹部92を磨いている第2磨き具130に対して同被加工物90とは反対側で磨き部130bに接触して第2磨き具130の前記反対側への変形を規制する背面受け具140を備えているため、第2磨き具130の引張強度の確保負担を減じることができるとともに幅広い第2磨き具130の使用を可能にすることができる。
【0066】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、第2磨き具130は、ブラシで構成された磨き部130bが金属線からなる芯体130aによって保持されて構成した。しかし、第2磨き具130は、磨き部130bの回転中心となる軸線の周囲に被加工物90の端面91または凹部92を磨く磨き部130bを備えていればよい。したがって、第2磨き具130は、芯体130aを省略して構成することができる。例えば、第2磨き具130は、スポンジなどの弾性を有した樹脂製の多孔質体を棒状に形成して構成することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、第2磨き具130は、両端部のうちの一方の端部を第2磨き具駆動モータ131に連結して他方の端部を固定しない自由端として第2磨き具駆動モータ131から下垂した状態で設けた。しかし、第2磨き具130は、両端部のうちの一方の端部を第2磨き具駆動モータ131に連結して他方の端部を回転自在な状態で保持した状態で設けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、背面受け具140は、受け部142を断面が円弧状となる曲面で構成した。この場合、受け部142は、断面形状が凹部92と同じ曲率の円弧となる曲面で構成されている。しかし、受け部142は、断面形状が凹部92の曲率よりも大きな曲率または小さな曲率の円弧となる曲面で構成することもできる。
【0070】
また、受け部142は、断面が円弧状となる曲面以外の形状で構成することもできる。例えば、受け部142は、
図9に示すように、断面が三角形となる平面の組み合わせで構成することができる。また、受け部142は、断面が三角形以外の形状、例えば、方形または他の多角形状となる平面の組み合わせで構成することができる。
【0071】
このように、受け部142は、被加工物90の凹部92の反対側であって同反対側(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)側に設けることで磨き部130bをより安定的に支持することができる。また、受け部142は、凹状が以外の形状で構成することもできる。例えば、受け部142は、
図10に示すように、受け具本体141の側面に平面状に構成することができる。また、受け部142は、
図11に示すように、受け具本体141の側面から凸状に突出して構成することもできる。これによれば、背面受け具140は、奥行きの深い凹部92に対しても磨き部130bの変形を抑えることができる。
【0072】
また、上記実施形態においては、受け部142は、両端部に拡大開口部143a,143bをそれぞれ設けて構成した。しかし、受け部142は、両端部に拡大開口部143a,143bのうちの一方のみを設けてもよいし、両方を省略して構成することもできる。
【0073】
また、上記実施形態においては、端面加工装置100は、受け具変位機構148を設けて背面受け具140を図示X軸方向に可動的に構成した。しかし、端面加工装置100は、受け具変位機構148を省略して背面受け具140を固定的に設けて構成することもできる。また、受け具変位機構148は、背面受け具140を図示X軸方向に代えてまたは加えて図示Z軸方向に変位させることもできる。この場合、制御装置150は、背面受け具140を第2磨き具130の図示Z軸方向の変位に同期して往復変位するように受け具変位機構148の作動を制御することができる。なお、この受け具変位機構148が、本発明に係る受け具変位手段に相当する。
【0074】
また、上記実施形態においては、背面受け具140は、受け具変位機構148に支持されるように構成した。しかし、背面受け具140は、
図12に示すように、モータ支持体132などの第2磨き具130を支持する部品に設けることもできる。これによれば、端面加工装置100は、受け具変位機構148を省略して機械的構成および制御的構成を簡単にすることができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、制御装置150は、背面受け具140の受け部142が凹部92を構成する曲率の円弧の延長線上に位置するように背面受け具140を位置決めした。しかし、制御装置150は、背面受け具140の受け部142が凹部92を構成する曲率の円弧の延長線上より内側または外側に位置するように背面受け具140を位置決めすることもできる。これにより、端面加工装置100は、第2磨き具130の背面受け具140側への規制力を強めるまたは弱めることができる。
【0076】
また、上記実施形態においては、端面加工装置100は、第2磨き具130についてのみ背面受け具140を設けて構成した。すなわち、第2磨き具130が、本発明に係る磨き具に相当する。しかし、端面加工装置100は、背面受け具140を第2磨き具130に代えてまたは加えて第1磨き具120に対して設けて構成することもできる。すなわち、背面受け具140は、凹部92のほかに、平面状または曲面状の端面91を磨き加工する磨き具に設けることができる。
【0077】
また、上記実施形態においては、加工液供給装置147は、背面受け具140に加工液を供給するように構成した。これにより、端面加工装置100は、第2磨き具130における磨き部130bに対して加工液の飛散を防止しながら効率的かつ効果的に供給することができるとともに、吐出孔144から吐出する加工液の噴出によっても磨き部130bの変形を抑えることができる。しかし、加工液供給装置147は、背面受け具140に代えてまたは加えて被加工物90に加工液を供給するように構成することもできる。また、端面加工装置100は、加工液供給装置147を省略して構成することもできる。なお、この加工液供給装置147が、本発明に係る加工液供給手段に相当する。
【0078】
また、上記実施形態においては、ワーク保持具110は、複数枚のガラス基板を被加工物90として保持した。しかし、ワーク保持具110は、少なくとも1枚のガラス基板を被加工物90として保持すればよい。
【0079】
また、上記実施形態においては、端面加工装置100は、半導体の製造過程で用いるガラス基板を被加工物90として磨き加工を行った。しかし、端面加工装置100は、半導体以外の製造過程で用いるガラス基板、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、液晶テレビおよび有機EL表示装置などの携帯端末装置におけるタッチパネルを含む液晶ディスプレイを構成するガラス基板を被加工物90として磨き加工を行ってもよい。また、端面加工装置100は、ガラス基板以外のもの、例えば、電子回路基板またはセラミック板を被加工物90として磨き加工を行うこともできる。
【符号の説明】
【0080】
90…被加工物、91…端面、92…凹部、
100…端面加工装置、
110…ワーク保持具、111…フレーム、112…支持テーブル、112a…脚部、113…押圧体、114…締付け機構、114a…ナット、114b…送りネジ、115…連結体、116…ベース、117…連結体、118…ワーク駆動モータ、118a…モータ支持体、
120…第1磨き具、120a…芯体、120b…磨き部、121…第1磨き具駆動モータ、122…モータ支持体、123…第1X軸方向変位機構、124…第1Z軸方向変位機構、
130…第2磨き具、130a…芯体、130b…磨き部、131…第2磨き具駆動モータ、132…モータ支持体、133…第2X軸方向変位機構、134…第2Z軸方向変位機構、
140…背面受け具、141…受け具本体、142…受け部、143a,143b…拡大開口部、144…吐出孔、145…分配通路、145a…栓、146…加工液供給管、147…加工液供給装置、148…受け具変位機構、148a…スライドテーブル、148b…テーブル駆動モータ、
150…制御装置、151…操作盤。