(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】水性化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240821BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240821BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/73
A61Q1/00
(21)【出願番号】P 2020082705
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 俊平
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-040106(JP,A)
【文献】特開平08-040862(JP,A)
【文献】米国特許第05650141(US,A)
【文献】米国特許第05650142(US,A)
【文献】特開2002-161024(JP,A)
【文献】特開2006-312610(JP,A)
【文献】特開2008-031057(JP,A)
【文献】特開2013-053141(JP,A)
【文献】特開2019-127443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0302159(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 1/00 - 90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性吸水ポリマーを2~18質量%、
水を15~95質量%、
粉体を0.5~45質量%含む水性化粧料であって、
前記水性化粧料の針入度が0.1N以上であり、
前記針入度が、感圧軸の先端形状が直径10mmの球状であり、針入速度6cm/分であり、針入度10mm、温度25℃の条件で測定した硬度であり、
非水溶
性吸水ポリマーの吸水倍率が1~200g/gであり、
25℃で固形状である、
水性化粧料。
【請求項2】
非水溶性吸水ポリマーの膨潤粒径(D
50)が1μm以上1000μm以下である、請求項1に記載の水性化粧料。
【請求項3】
非水溶性吸水ポリマーの含有量(質量%)と吸水倍率(g/g)との積で求まる吸水可能量に対する水性媒体の含有量(質量%)の割合が、10%以上130%未満(質量基準)である、請求項1または2に記載の水性化粧料。
【請求項4】
非水溶性吸水ポリマーがポリアクリル酸塩架橋物およびセルロース誘導体から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項5】
粉体の含有量が10~40質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項6】
粉体が疎水性粉体を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項7】
前記粉体が着色顔料を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【請求項8】
さらに、水溶性染料を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の水性化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
アイブロウ、アイライナー、アイシャドウ、チーク、ファンデーション等のメイクアップ化粧料は、肌へ塗布した際の付着性や発色性といった仕上がりだけでなく、速乾性、色の濃淡の微調整のしやすさ等が求められる。
従来、水を主成分とした水性化粧料は清涼感やみずみずしさといった使用感を特徴とし、メイクアップ化粧料として汎用されている。一般的には、液状を示す水性液状化粧料が知られている。しかしながら、水性液状化粧料は、顔料等の着色剤の沈降や凝集が起こりやすく、塗布時に化粧料が垂れ落ちやすい。そこで水溶性増粘剤により粘度を調整する技術が提案されている。
具体的には、特許文献1には、ベントナイトといった粘土鉱物や、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース等の水溶性多糖類を配合した手法が提案されている。特許文献2ではアルコールを配合したものを開示している。特許文献3では、寒天等の固化剤によって固形化して得られる水性固形化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-031057号公報
【文献】特開2002-161024号公報
【文献】特開2006-312610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の組成物では、水溶性増粘剤によって粘性が上がることで、速乾性に乏しくなり、ムラづきしやすい。一方で、特許文献2のように、アルコールを配合して乾燥速度を速めると、濃淡の微調整が困難になる。また、特許文献3の態様では、固化された水性化粧料は化粧料表面を塗布体や肌が上滑りしやすい。その結果、化粧料の取れが悪く、肌への付着性や伸びに欠け、濃淡の微調整が難しいものになってしまう。
上記の従来技術の状況に鑑み、本発明は、付着性がよく、速乾性があり、ムラ付きすることなく伸び広がり、濃淡の微調整がしやすい水性化粧料の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1> 非水溶性吸水ポリマーを2~18質量%、
水を15~95質量%、
粉体を0.5~45質量%含む水性化粧料であって、
前記水性化粧料の針入度が0.1N以上であり、
前記針入度が、感圧軸の先端形状が直径10mmの球状であり、針入速度6cm/分であり、針入度10mm、温度25℃の条件で測定した硬度である、水性化粧料。
<2> 非水溶性吸水ポリマーの吸水倍率が5~2000g/gである、<1>に記載の水性化粧料。
<3> 非水溶性吸水ポリマーの膨潤粒径(D50)が1μm以上1000μm以下である、<1>または<2>に記載の水性化粧料。
<4> 非水溶性吸水ポリマーの含有量(質量%)と吸水倍率(g/g)との積で求まる吸水可能量に対する水性媒体の含有量(質量%)の割合が、10%以上130%未満(質量基準)である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の水性化粧料。
<5> 非水溶性吸水ポリマーがポリアクリル酸塩架橋物およびセルロース誘導体から選択される少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の水性化粧料。
<6> 粉体の含有量が10~40質量%である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の水性化粧料。
<7> 粉体が疎水性粉体を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の水性化粧料。
<8> 前記粉体が着色顔料を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の水性化粧料。
<9> さらに、水溶性染料を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の水性化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、付着性がよく、速乾性があり、ムラ付きすることなく伸び広がり、濃淡の微調整がしやすい水性化粧料を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、非溶解と疎水性の違いを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、ここで提示した実施形態に限られるものではない。
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0009】
本発明の水性化粧料は、非水溶性吸水ポリマーを2~18質量%、水を15~95質量%、粉体を0.5~45質量%含む水性化粧料であって、前記水性化粧料の針入度が0.1N以上であり、前記針入度が、感圧軸の先端形状が直径10mmの球状であり、針入速度6cm/分であり、針入度10mm、温度25℃の条件で測定した硬度であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、付着性がよく、速乾性があり、ムラ付きすることなく伸び広がり、濃淡の微調整がしやすい水性化粧料が提供可能になる。特に、従来、化粧料の分野では用いられていなかった非水溶性吸水ポリマーを採用し、さらに、粉体との含有量比、さらには水との含有量比を調整することにより上記課題が達成されたと推測される。
以下、本発明の水性化粧料について説明する。
【0010】
[非水溶性吸水ポリマー]
本発明の水性化粧料は、非水溶性吸水ポリマーを含む。
ここで、「非水溶性吸水ポリマー」という用語のうち「非水溶性」とは実質的に水に不溶であることを意味する。本明細書において「実質的に水に不溶」とは、水への溶解度(25℃)が5質量%以下であることを指し、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。下限値は特に限定されないが、1ppm(質量基準)以上であることが実際的である。
【0011】
他方、吸水ポリマーの「吸水(性)」とは、吸水倍率が、好ましくは1g/g以上、より好ましくは2g/g以上、さらに好ましくは5g/g以上、一層好ましくは10g/g以上、より一層好ましくは15g/g以上である給水能力を有することを言う。吸水するものとしては、水性流体、具体的には水、特に精製水を自然に吸収することが好ましい。上限値は特にないが、2000g/g以下が実際的であり、200g/g以下がより実際的であり、150g/g以下がさらに実際的であり、100g/g以下が一層実際的であり、50g/g以下がさらに一層実際的であり、40g/g以下がさらにより一層実際的である。上記の吸水性の規定は特に断らない限り、下記のとおり25℃、101,325Paのときの値である。
【0012】
吸水倍率は、以下の方法に従って測定される。
非水溶性吸水ポリマー(乾燥質量A)と精製水をディスパーにて5分間撹拌し、25℃に12時間静置する。静置後、容器上部に吸収されなかった精製水が残っていることを確認し、上部の精製水をスポイトで除去、十分吸水した非水溶性吸水ポリマーの質量Bを測定する。得られた質量Bより、下記の式で吸水倍率を算出する。
吸水倍率(g/g)=[吸水時の質量B(g)-乾燥質量A(g)]/乾燥質量A(g)
ただし容器上部に未吸収の精製水を確認できず、全て吸水している場合は、非水溶性吸水ポリマーが飽和状態か判断できないため、再調整を行うこととする。この際、吸水済みの非水溶性吸水ポリマーは使用しない。
【0013】
本発明に用いられる非水溶性吸水ポリマーは、これが粒子になっているときその粒径(D50)が100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。下限値は特にないが、1μm以上が実際的である。好ましくは、本発明で用いる非水溶性吸水ポリマーは、球状粒子の形態で提供される。
【0014】
非水溶性吸水ポリマーの膨潤粒径(D50)としては、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、10μm以上が一層好ましい。上限としては、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、200μm以下であることがさらに好ましく、150μm以下であることが一層好ましく、100μm以下であることがより一層好ましく、50μm以下であることがさらに一層好ましい。
なお、本発明において非水溶性吸水ポリマーの粒径と膨潤粒径は、レーザー回折/散乱法により測定して求めたD50の数値を採用する。装置はレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA-950(HORIBA製)を用いる。ここで膨潤粒径は、上記の吸水倍率の項に記載した、精製水を25℃、12時間吸水させた非水溶性吸水ポリマーの粒径を指す。
【0015】
なお、これらの吸水特性は、標準温度(25℃)および圧力(760mmHg、すなわち、101,325Pa)条件で蒸留水について定義される。
【0016】
本発明で用いることができる非水溶性吸水ポリマーは非水溶性でありかつ水を吸収できるものなら問わないが、好ましくは、微粒子の形態で提供されるものである。例えば、下記で他のものとともに例示されるポリアクリル酸塩架橋物、またはセルロース誘導体、が挙げられる。
【0017】
非水溶性吸水ポリマーは開始剤の存在下で水酸化ナトリウムや水酸化カリウムと混合したアクリル酸を重合し、ポリアクリル酸の塩化物(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウムなど)を形成することで製造するポリアクリル酸塩架橋物や、さらに他の材料も使用した、ポリアクリルアミド共重合体、エチレン無水マレイン酸共重合体、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール共重合体、架橋ポリエチレンオキシド、及びデンプンポリアクリロニトリルグラフト共重合体などが挙げられる。これらは重合度によって、吸水倍率を制御できる。例えば、Avecia社によってOctacare X100、X110およびRM100という名で販売されているもの、SNF社によってFlocare GB300およびFlosorb 500という名で販売されているもの、BASF社によってLuquasorb 1003、Luquasorb 1010、Luquasorb 1280およびLuquasorb 1100という名で販売されているもの、Grain Processing社によってWater Lock G400およびG430(INCI名:アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー)という名で販売されているもの、または住友精化株式会社によって提供されたAquaKeep 10SH-NF、およびAquaKeep 10SH-NFC、NIKKO CHEMICALSによって提供されたARON NT-Z(INCI名:アクリル酸ナトリウムクロスポリマー-2)などの架橋ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)でグラフトしたデンプン、具体的には、三洋化成工業株式会社によってSanfresh ST-100C、ST100MCおよびIM-300MCという名で販売されているもの(INCI名:ポリアクリル酸ナトリウムデンプン)などのポリアクリル酸ナトリウムでグラフトしたデンプン、アクリルポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)でグラフトした加水分解デンプン、具体的には、Grain Processing社によってWater Lock A-240、A-180、B-204、D-223、A-100、C-200およびD-223という名で販売されているもの(INCI名:デンプン/アクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマー)などのアクリロアクリルアミド/アクリル酸ナトリウムコポリマーでグラフトした加水分解デンプンを挙げることができる。
好ましい市販品として、ポリアクリル酸塩架橋物:ARON NT-Z[商品名](NIKKO CHEMICALS社製)、AquaKeep 10SH-NFC [商品名](住友精化社製)(ともにINCI名:アクリル酸ナトリウムクロスポリマー-2、表示名称:アクリレーツクロスポリマー-2-Na)を挙げることができる。
【0018】
また、非水溶性吸水ポリマーとしては、多糖からなる球状粒子であり、多糖の6位および還元末端のみにカルボキシ基を有する多糖から構成されたものを好適に使用することができる。カルボキシ基を有する多糖が、粒子の表面から内部に向けた範囲に存在してもよい。多糖としては、セルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、キチン、キトサン、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、グリコーゲン、アガロース、ヒアルロン酸、グルコマンナン、カラギーナンなどが挙げられる。中でもセルロースまたはその誘導体が好ましい。市販のセルロースビーズをTEMPO酸化法によって調整することもできる。
前記多糖類からなる非水溶性吸水ポリマー保湿性粒子としては、特開2018-002879号公報、特開2019-116521号公報の記載を参照することができ、そこに開示の具体例等は本明細書に組み込まれる。
【0019】
非水溶性吸水ポリマーは、非水溶性吸水ポリマーが吸収した水が皮膚等への塗布時に外部へ出てきて、次の項で述べる粉体と混ざり付着性を達成する。このような系内の挙動を好適に引き出す処方であることが好ましい。
【0020】
非水溶性吸水ポリマーは、水性化粧料中で、水が完全に飽和していない状態で存在していることが好ましく、非水溶性吸水ポリマーの含有量(質量%)と吸水倍率(g/g)との積で求まる吸水可能量に対する水性媒体の含有量(質量%)の割合が、非水溶性吸水ポリマーの吸水可能量率未満となることが好ましい。つまり水性化粧料中の水性媒体の含有量(質量%)は、[非水溶性吸水ポリマーの含有量(質量%)×該ポリマーの吸水倍率(g/g)]で算定され、好ましくは130%未満(質量基準、以下同様)、より好ましくは100%未満、さらに好ましくは80%未満、さらに好ましくは70%未満、さらに好ましくは60%未満である。下限値としては、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることが一層好ましい。ここで水性媒体は、水と、多価アルコール、低級アルコール、水溶性染料、水溶性皮膜剤、粘度調整剤等の水に溶解する液体成分とする。
【0021】
非水溶性吸水ポリマーの水性化粧料中の含有量は、2質量%以上であり、2.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましく、4.5質量%以上であることが一層好ましい。上限としては、18質量%以下であり、16質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることが一層好ましい。
本発明の水性化粧料は、非水溶性吸水ポリマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
[粉体]
本発明の水性化粧料は、粉体を含む。通常、化粧料に用いられる粉体であれば、特に限定なく用いることができる。粉体の形状についても特に限定されず、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造を有していてもよい。
粉体の具体例としては、着色顔料、パール、体質顔料が挙げられる。これらの粉体は、肌への着色や光輝性等の化粧効果付与、形を成す、嵩となる、使用性の向上などの作用が挙げられる。
【0023】
具体的には、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化ケイ素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシムの体質顔料類、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱剤類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン-メタクリル酸共重合体、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、セルロースパウダー、N-アシルリジンパウダー等の有機粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化チタン被覆ナイロン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸が挙げられる。
【0024】
着色顔料としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、酸化クロム、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機性着色顔料、赤色228号、赤色226号、青色404号、赤色202号、黄色4号アルミニウムレーキ等の有機性着色顔料、雲母チタン、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、アルミニウムフレーク等のパール顔料、カルミン、ベニバナ等の天然色素などが挙げられる。
【0025】
本発明の水性化粧料は、粉体として、疎水性を示す粉体を含むことが好ましい。このような疎水性を示す粉体は、非水溶性吸水ポリマーが吸着されにくく、パウダリーな使用感が得られる。疎水性を示す粉体としては、粉体表面が疎水性を示すものであればよい。それ自体が疎水性である粉体、並びに、親水性粉体の表面を通常公知の疎水化処理剤により処理した粉体、及びより疎水性を高めるためにそれ自体が疎水性である粉体を更に疎水化処理剤により処理した粉体等が挙げられる。疎水化する表面処理剤として、高級脂肪酸、金属石鹸、油脂、ロウ、シリコーン化合物、フッ素化合物、界面活性剤、デキストリン脂肪酸エステル等が挙げられる。疎水化処理した粉体としては、三好化成社製によるジメチコン処理粉体、大東化成社製によるFHS(パーフルオロオクチルトリエトキシシラン)処理粉体、OTS(トリエトキシカプリリルシラン)処理粉体、トピー工業社製によるシリコーン処理粉体などが例示される。ここで疎水性とは、水と撹拌しても分散しないことを言う。
【0026】
本発明の水性化粧料において粉体の含有量は、0.5質量%以上であり、2質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましく、8質量%以上であることが一層好ましく、10質量%以上であることがさらに一層好ましい。前記粉体の含有量の上限としては、45質量%以下であり、40質量%以下であることが好ましく、37質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが一層好ましい。
本発明の水性化粧料は、粉体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
粉体を上記の範囲とすることにより、非水性吸水ポリマーに吸湿した水が皮膚等への塗布時に外部へ出てきて、粉体と混ざり、良好な付着性を達成すると解される。
【0027】
また、本発明の水性化粧料において、疎水性粉体の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが一層好ましく、10質量%以上であることがさらに一層好ましい。前記粉体の含有量の上限としては、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることが一層好ましい。
本発明の水性化粧料は、疎水性粉体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0028】
[水および水以外の水性媒体]
本発明の水性化粧料は、水を含む。水は精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等を含むが、ここでの水は、精製水が好ましい。
水性化粧料中の水の量は、本発明においては、15質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが一層好ましい。上限としては、95質量%以下であり、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることが一層好ましく、70質量%以下であることがより一層好ましい。
【0029】
本発明の水性化粧料においては、水と水以外の水性媒体との混合物を用いてもよい。水性媒体としては、アルコールが挙げられ、本発明ではアルコール(特に多価のアルコール)であることが好ましい。アルコールとしては、BG(1,3-ブチレングリコール)、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、エタノールが挙げられる。
本発明の水性化粧料が水性媒体を含む場合、その含有量は、水性化粧料中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが一層好ましく、高く設定する場合には、35質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記水性媒体の含有量は、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、低く設定する場合には、40質量%以下であることが好ましく、37質量%以下であることが好ましく、36質量%以下であることがより好ましく、35質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の水性化粧料は、水性媒体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0030】
[水溶性染料]
本発明の水性化粧料は、水溶性染料を含んでいてもよい。
本発明で用いることができる水溶性の染料としては、例えば、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色227号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、緑色3号、青色1号等の有機顔料が挙げられる。
水性化粧料中の含有量としては、特に限定されないが、用いる場合で、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。上限値としては、5質量%以下が実際的である。
本発明の水性化粧料は、水溶性染料を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
[その他]
本発明の水性化粧料は、油剤を含んでいてもよい。
油剤としては、通常、化粧料に用いられる油剤であれば、特に限定なく用いることができる。ワックス、ロウ、高級脂肪酸、油脂、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級アルコール等が挙げられ、好ましくは、25℃で液状、ペースト状を示すエステル油、炭化水素油、シリコーン油が好ましい。
油剤の含有量は0~15質量%が好ましい。油剤を15質量%以下とすることにより、速乾性がより効果的に向上する傾向にあり、ムラ付きをより効果的に抑制できる。前記油剤の含有量は、好ましくは0.1~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。
本発明の水性化粧料は、油剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
本発明の水性化粧料は、また、高HLBの界面活性剤、皮膜剤、粘度調整剤、増粘剤等を含んでいてもよい。これらの成分を含むことにより、さらに付着性が向上する傾向にある。さらに本発明の水性化粧料には、前記成分の他に、通常の水性化粧料に用いられる任意成分などを含んでいてもよい。具体的には、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、キレート剤、美容成分、香料、pH調整剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜量含むことができる。
【0033】
本発明の水性化粧料は、低HLB界面活性剤や、25℃で固形状を示す油剤(ワックス、ロウ、高級脂肪酸など)を含んでいてもよいが、実質的に含まない方が好ましい。実質的に含まないとは、本発明の水性化粧料の1質量%以下であることをいい、0.1質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることが一層好ましい。
【0034】
本発明の水性化粧料は、非水溶性吸水ポリマー、水、粉体、さらに必要に応じて配合されるその他の成分の合計が100質量%となるように配合される。
【0035】
本発明の水性化粧料は室温(25℃)で流動性がない。すなわち、液状やジェル状のものとは異なる。換言すれば、本発明の好ましい性状は、固形状であり、これは針入度で示すことができる。例えば、レオメーター(レオテック社製)を用い、感圧軸の先端形状:直径10mmの球状、針入速度6cm/分、針入度10mm(感圧軸の先端形状が直径10mmの球状)、温度25℃の条件で測定した硬度を用いることができる。本発明の水性化粧料は、当該硬度において0.1N以上であり、0.3N以上が好ましく、1N以上がより好ましい。化粧料がジェル状であるとき、通常、当該硬度が0.1N未満に留まる。上限値は特にないが、例えば、25N以下が好ましく、15N以下がより好ましい。
【0036】
本発明の水性化粧料は、様々なアイテムに展開が可能である。例えば、メイクアップ化粧料(アイブロウ、アイライナー、アイシャドウ、リップ、チーク、ファンデーション)、ヘアカラー化粧料(一時毛髪着色料)等が挙げられる。
【0037】
上記本発明の好ましい実施形態に係る水性化粧料によれば、下記のような利点が得られる。すなわち、非水溶性吸水ポリマーを適量で配合したことにより、塗布時には圧力によって水が溢れ出し、清涼感やみずみずしさとともに、伸び、付着性が得られる。一方で、未飽和の非水溶性吸水ポリマーが塗布時に溢れた水を吸収し、速乾性を付与する。また濃淡の微調整を可能とするため、粉体、非水溶性吸水ポリマー、水が適度に規定した量で配合され、その作用について好適なバランスを示す。そして、粉体(特に好ましい実施形態として疎水性粉体)を適量で用いることにより、塗布時の濃淡の微調整をしやすくする。
【実施例】
【0038】
以下に本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。「%」は特に述べない限り、「質量%」を意味する。
【0039】
表1~表8に示した成分組成の化粧料を以下のようにして調製した。表1における各成分は質量基準で示している。
実施例1で示すと、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル)と水性媒体(界面活性剤が固形の場合には、加温溶解)をディスパーまたはスパチュラ撹拌にて混合した。その後、粉体成分を投入し、ニーダーまたは、ミキサーで混合し、調製した。
実施例1以外の化粧料も、成分組成を下記表に記載のとおりにした以外は同様にして調製した。
なお、調製された実施例1の水性化粧料について、上記で規定されるレオメーターを用いた針入度試験を行った。その結果、0.1Nを上回ることを確認した。以下、各実施例の水性化粧料についても同様に針入度試験を行って、0.1Nを上回ることを確認した。
【0040】
上記で調製した化粧料を用いて、以下の各試験を行った。具体的には、チップ状の塗布具を用いて、肌に化粧料を5cm塗布し、以下の項目を評価した。結果は下記表1~表5に示した。評価値にCがあるものは市場性が乏しく劣るものである。
【0041】
<速乾性>
評価方法:一定時間経過後、描線に指で触れ、確認した。評価値は5回の平均値を採用した。パネリストは1人とした。
評価基準 AA:30秒以内に乾く
A: 30秒超1分以内に乾く
B: 1分超 2分以内に乾く
C: 2分超でも乾かない
【0042】
<付き>
評価方法:何回目の塗布で描線が定着するか確認した。評価値は5回の平均値を採用した。パネリストは1人とした。
評価基準 AA:1回
A:1回超4回以下
B:4回超9回以下
C:9回超、もしくはつかない
【0043】
<ムラのなさ>
評価方法:5回重ね塗りをし、その描線にムラがあるか確認した。評価は5回の平均的な状態を採用した。パネリストは1人とした。
評価基準 A:ムラなし
B:ムラ生じるが塗布具で修正可能
C:ムラが生じ、修正できない
【0044】
<濃淡の出しやすさ>
評価方法:5回重ね塗りをし、濃淡の微調整のしやすさを10名のパネルにより官能評価を行った。得られた結果の平均値を採用し、下記の区分にそって評価した。
評価基準 A:7名超が濃淡が出しやすいと回答
B:3名超7名以下が濃淡が出しやすいと回答
C:3名以下が濃淡が出しやすいと回答
【0045】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【0046】
<表中の略称>
BG:1,3-ブチレングリコール
PVP:ポリビニルピロリドン
※1:ARON NT-Z(日光ケミカルズ)/吸水倍率約25g/g、膨潤粒径(D50):37μm
※2:アクアキープ10SH-NFC(住友精化)/吸水倍率120g/g、膨潤粒径(D50):170μm
※3:アクリル系誘導体皮膜剤-アクリル酸アルキル・アクリル酸アミド誘導体皮膜剤
※4:酸化チタン被覆合成金雲母 Helios R100S(トピー工業)
※5:酸化チタン被覆合成金雲母 Cosmetica Super White 9000S(CQV)
【0047】
上記の膨潤粒径は、精製水に12時間吸水させたものを、レーザー回折/散乱法により得たD50の数値である。なお使用装置及び屈折率の設定は下記の通りである。
装置:レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置 LA-950(HORIBA製)
屈折率の設定値:1.53
【0048】
実施例1の非水溶性吸水ポリマーの含有量と吸水倍率との積で求まる吸水可能量に対する水性媒体の割合は以下の通りとなる。表1および表2においては、「吸水割合」としてこの比率を示している。
非水溶性吸水ポリマーの含有量(6質量%)×吸水倍率(25g/g)=150
[水性媒体(アルコール、水)(72.6質量%)/150]×100=48(%)
【0049】
実施例1において、粉体は着色顔料および体質顔料であり、疎水性粉体はジメチコン処理合成金雲母である。
【0050】
上記の結果から明らかなとおり、本発明の水性化粧料(実施例)によれば、速乾性、付き、ムラのなさ、濃淡の出しやすさの全ての点で優れていることが分かる。また、上記の優れた特性は、アイテムがアイブロウのときに限られず、アイライナー、アイシャドウ、口唇化粧料、チーク、一時染毛料などの多様な用途において発揮されることが分かる。
これに対して水が多すぎるあるいは少なすぎた比較例1,2の化粧料では、ムラおよび濃淡の微調整のしやすさで劣っていた。非水溶性吸水性ポリマーの多すぎるもの(比較例3)および少なすぎるもの(比較例4)ならびに用いなかったもの(比較例5)では速乾性および濃淡の微調整のしやすさで劣っていた。特に非水溶性ポリマーを用いなかった比較例5では、さらに付きの点でも劣っていた。粉体の多すぎるもの(比較例6)では、付きの点と、濃淡の微調整のしやすさで劣っていた。
【0051】
<参考例1>
ポリアクリル酸カリウム(膨潤粒径(D50):15μm、吸水倍率:20g/g)と精製水とを5:95(質量比)の割合で撹拌混合してジェルを得た。このジェルについて、前記で規定されるレオメーター(レオテック社製)を用いた針入度試験を行った結果、その硬度が0.1N(25℃)を下回ることを確認した。
【0052】
<参考例2>
以下の実験により親水性・疎水性の定義を定める上での水に対する粉体の挙動について確認した。
・実験条件
スクリュー管に精製水30g、粉体1.5gをいれ、撹拌前の状態、及び、撹拌後、静置10分後、さらに1日静置したものを目視観察した。
用いた粉体は下記の3種とした。<1>は未処理。<2>、<3>は疎水化処理した合成フッ素金雲母。<2>、<3>の基材粉体はトピー工業製のPDMシリーズの合成フッ素金雲母を使用。
<1>合成フッ素金雲母PDM-5L(トピー工業製Topy Industries, Limited)
<2>シリコーン処理した合成フッ素金雲母(トピー工業による表面処理)
<3>フッ素処理した合成フッ素金雲母(大東化成工業DAITO KASEI Kogyo Co., Ltd.による表面処理)
【0053】
・実験結果
撹拌前の様子を
図1のFig.1、撹拌後10分静置後の様子を
図1のFig.2、1日静置した様子を
図1のFig.3に示した。
合成フッ素金雲母<1>は、撹拌前でも水中に分散し、撹拌後は水中に均一分散していることが確認された。ただし1日静置後は、沈降した。
シリコーン処理合成フッ素金雲母<2>は、撹拌前、水相の上に存在していた。撹拌後、および静置1日後も水中に分散することなく、水相の上に留まっており、水相と粉体層の境界線が存在した。フッ素処理合成フッ素金雲母<3>も、シリコーン処理合成フッ素金雲母と同様に、水中に分散することなく水相の上に留まっていた。
【0054】
・結論
合成フッ素金雲母は水中に分散し、その後、沈降した。溶解は見られない、難溶(insolubility)であることが分かった。また、水に均一分散し、水と馴染みやすいことから親水性(hydrophilicity)を示すといえる。撥水性(hydrophobicity)があるとは言えない。
疎水化処理された合成フッ素金雲母は、<1>の合成フッ素金雲母と同様、水に溶解しない。他方、撹拌しても水中に分散せず、再び水相の上に存在しているため、水に馴染むことのない物性を示す撥水性であるといえる。