(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】管内走行装置
(51)【国際特許分類】
B61B 13/10 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B61B13/10
(21)【出願番号】P 2020090724
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019102358
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30条第2項適用、平成31年3月19日に開催された立命館大学ロボティクス研究センターシンポジウム-ロボティクス研究開発のための新しい産学連携の始動-で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】馬 書根
(72)【発明者】
【氏名】加古川 篤
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-001069(JP,A)
【文献】特開2017-007520(JP,A)
【文献】特開2015-224001(JP,A)
【文献】中国実用新案第204472946(CN,U)
【文献】米国特許第04862808(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328290(US,A1)
【文献】特開2015-024748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向へ沿って連結される複数の
中空状のリンクと、
前記複数のリンクのうち隣接するリンクにおいて、前方のリンクの後部および後方のリンクの前部を共に貫通し、前記隣接するリンク同士を揺動自在に連結し屈曲可能にするように取り付けられた車軸と、
前記複数のリンクのうち最も前方に配置される
リンクの前端部、最も後方に配置される
リンクの後端部、および
前記車軸に取り付けられた車輪と、
前記リンクの前端部、前記リンクの後端部および前記車軸に取り付けた前記車輪を各々独立して回転駆動して配管内を走行させるために前リンク内に配置された駆動手段と、
前記車輪を前記配管の内面に押し付けるために、前記隣接するリンク同士を
前記車軸の軸線まわりに屈曲させ
、前記リンク内に配置されたリンク駆動手段と、
前記配管
の内面に
前記車輪を押しつけるトルクを検出する手段と、
前記トルクを検出する手段に基づき前記リンク駆動手段を制御して、
前記隣接するリンク同士が屈曲した状態で、前記配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと
、を一定に制御する制御手段と
、
を備えたことを特徴とする管内走行装置。
【請求項2】
前後方向へ沿って連結される複数の
中空状のリンクと、
前記複数のリンクのうち隣接するリンク同士を連結する能動関節および受動関節と、
前記能動関節および受動関節において、前方のリンクの後部および後方のリンクの前部を共に貫通し、前記隣接するリンク同士を揺動自在に連結し屈曲可能にするように取り付けられた車軸と、
前記複数のリンクのうち最も前方に配置される
リンクの前端部
および最も後方に配置される
リンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される一対の半球車輪と、
前記車軸に取り付けられた車輪と、
前記車輪の駆動手段と、
前記能動関節において
前記車輪を配管の内面に押し付けるために、前記隣接するリンク同士を
前記車軸の軸線まわりに屈曲させる
前記リンク内に配置されたリンク駆動手段と、
前記受動関節において
前記隣接する
リンク同士を屈曲させるねじれバネと、
配管に押し付けるトルクを検出する手段と、
前記トルクを検出する手段に基づき前記リンク駆動手段を制御して前記能動関節で
前記隣接するリンク同士を屈曲させた状態で、配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと
、を一定に制御する制御手段と
、
を備えることを特徴とする管内走行装置。
【請求項3】
前記能動関節の回転角度と前記能動関節の移動距離の関係が波形関数で表されて動作することを特徴とする請求項2に記載の管内走行装置。
【請求項4】
前記トルクを検出する手段は、弾性変形する変形部材と、前記変形部材の変形を検出する変形センサを具備し、前記変形センサの検出信号に基づきトルクを検出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の管内走行装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記隣接するリンク同士が屈曲して、前記配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪が接触すると共に、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪が接触してからの前記変形センサの検出信号に基づき、前記リンク駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の管内走行装置。
【請求項6】
前記変形部材は、
前記車軸が貫通した状態で、
前記車軸の軸方向一端部が隣接する前記リンク内の一方に固定されており、
また前記車軸の軸方向他端部に前記リンク駆動手段により回転する歯車が固定され、
前記リンク駆動手段は、前記歯車を回転させることにより前記隣接するリンク同士を屈曲させ、
前記変形センサは、前記隣接するリンク同士が屈曲して、前記配管の径方向一方側および他方側に配置された前記車輪が対応する前記配管の内面に接触してから、前記リンク駆動手段で前記歯車をさらに回転させることで、前記変形部材
の変形を検出する
ことを特徴とする請求項5に記載の管内走行装置。
【請求項7】
全ての前記車輪は、オムニホイールである
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の管内走行装置。
【請求項8】
前後方向に沿って連結された複数の中空状のリンクと、
前記複数のリンクのうち隣接するリンクにおいて、前方のリンクの後部および後方のリンクの前部を共に貫通し、前記隣接するリンク同士を揺動自在に連結し屈曲可能にするように取り付けられた車軸と、
前記複数のリンクのうち最も前方に配置されるリンクの前端部、最も後方に配置されるリンクの後端部、および前記車軸に取り付けられた車輪と、
前記リンクの前端部、前記リンクの後端部および前記車軸に取り付けた前記車輪を各々独立して回転駆動して配管内を走行させるために前リンク内に配置された駆動手段と、
前記車輪を前記配管の内面に押し付けるために、前記隣接するリンク同士を前記車軸の軸線まわりに屈曲させ、前記リンク内に配置されたリンク駆動手段と、
前記配管の内面に前記車輪を押しつけるトルクを検出する手段と、
前記トルクを検出する手段に基づき前記リンク駆動手段を制御して、隣接する前記リンク同士が屈曲した状態で、前記配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクとを一定に制御する制御手段と、
を備え、
前記複数のリンクは、二つとされ、
前記駆動手段は、前方に配置される前記リンクの前端部の前記車輪の第一駆動手段、後方に配置される前記リンクの後端部の前記車輪の第二駆動手段および
前記隣接する
リンク同士の連結部の前記車輪の第三駆動手段を有している
ことを特徴とす
る管内走行装置。
【請求項9】
前後方向に沿って連結された複数の中空状のリンクと、
前記複数のリンクのうち隣接するリンク同士を連結する能動関節および受動関節と、
前記能動関節および受動関節において、前方のリンクの後部および後方のリンクの前部を共に貫通し、前記隣接するリンク同士を揺動自在に連結し屈曲可能にするように取り付けられた車軸と、
前記複数のリンクのうち最も前方に配置されるリンクの前端部および最も後方に配置されるリンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される一対の半球車輪と、
前記車軸に取り付けられた車輪と、
前記車輪の駆動手段と、
前記能動関節において前記車輪を
配管の内面に押し付けるために、前記隣接するリンク同士を前記車軸の軸線まわりに屈曲させる前記リンク内に配置されたリンク駆動手段と、
前記受動関節において前記隣接するリンク同士を屈曲させるねじれバネと、
前記配管に押し付けるトルクを検出する手段と、
前記トルクを検出する手段に基づき前記リンク駆動手段を制御して前記能動関節で前記隣接するリンク同士を屈曲させた際に、
前記配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクとを一定に制御する制御手段と、
を備え、
前記複数のリンクは、四つとされ、
前記駆動手段は、前方に配置される前記リンクの前端部の前記車輪の第一駆動手段、後方に配置される前記リンクの後端部の前記車輪の第二駆動手段および前記隣接するリンク同士の連結部の前記車輪の第三駆動手段を有しており、
最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される一対の半球車輪を有している
ことを特徴とする管内走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を走行する管内走行装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インフラ設備の耐用年数超過が問題視され始めており、中でも流体の輸送に使用される配管設備の老朽化が深刻化している。未然に漏洩事故を防ぐためには定期的な配管検査が必要になるが、人間は小さな配管内に入ることができないため、埋設された配管を掘り起こしたり、配管そのものを分解する必要がある。しかし、人手によるこれらの作業は時間や労力が掛かり、危険も伴う。そのため、近年は、カメラや肉厚測定センサを管内走行装置に搭載した配管検査ロボットによる検査が注目されており、様々な配管検査ロボットが開発されている。
【0003】
このような配管検査ロボットとしては、例えば、移動速度の速い自走式の管内走行装置を用いたものが多く提案されている。本件発明者は、先に、下記特許文献1に開示されるような自走式の管内走行装置を提案している。この管内走行装置は、回動可能にジグザグ状に配列される複数のリンク部と、リンク部間に設けられるオムニホイールおよびリンク部の開放側端部に設けられる車輪と、所定のオムニホイールを配管の内壁面に押し付けるコイルバネとを有している。従って、管内走行装置は、配管内に挿入されると、コイルバネによってオムニホイールが配管の内壁面に押し付けられ、この状態で、第1駆動手段によって所定のオムニホイールを能動的に回転させることで、配管内を走行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の管内走行装置は、コイルバネによってオムニホイールが配管の内壁面に押し付けられて突っ張る構成であるので、走行中の配管の内径の変化に対応し辛く、汎用性という点で改善の余地がある。すなわち、従来の管内走行装置は、単なる関節の角度(位置)制御に近いものであった。従って、たとえば、水平に配置される水平配管と垂直に配置される垂直配管とが曲管で連結されたL字形状の配管を、従来の管内走行装置を用いて、水平配管、曲管および垂直配管の順で検査する際、管内走行装置が垂直配管を登ることができないおそれがある。これは、水平配管および垂直配管よりも内径の大きい曲管内において、管内走行装置の車輪の配管内面への接触を十分に保つことができず、垂直配管を登るのに必要な牽引力を得ることができないためである。
【0006】
また、従来の単なる関節の角度制御の場合、曲管などを走行する際に内壁の形状に合わせて素早く正確に角度制御しなければ、車輪の配管内面への接触力が変化することになる。従って、関節のモータの電流値が異常に増えたり、接触力不足により垂直配管内において落下したりするなどの問題が発生する。
【0007】
また、垂直上方向及び直進方向のT字型に配管が枝分かれしている場合、垂直上方向に登ることができず、配管内のすべてを走行できない問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、走行が良好に維持されるという点を満足しつつ、能動的かつ自動的に、車輪の配管内面への押付けるトルクを一定に調整することができる管内走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
互いに屈曲可能に前後方向へ沿って連結される複数のリンクと、最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部および隣接する前記リンク同士の連結部に回転可能に保持される車輪と、前記車輪の駆動手段と、隣接する前記リンク同士を屈曲させるリンク駆動手段と、配管に押しつけるトルクを検出する手段と、前記トルクを検出する手段に基づき前記リンク駆動手段を制御して、隣接する前記リンク同士が屈曲した状態で、配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクとを一定に制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
互いに屈曲可能に前後方向へ沿って連結される複数のリンクと、最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される一対の半球車輪と、隣接する前記リンク同士の連結部に回転可能に保持される車輪と、前記車輪の駆動手段と、前記連結部の能動関節において隣接する前記リンク同士を屈曲させるリンク駆動手段と、前記連結部の受動関節において隣接する前記リンク同士を屈曲させるねじれバネと、配管に押し付けるトルクを検出する手段と、前記能動関節のトルクを検出する手段に基づき前記リンク駆動手段を制御して、隣接する前記リンク同士が屈曲した状態で、配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクと、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪を回転可能に押し付けるトルクとを一定に制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記能動関節の回転角度と前記能動関節の移動距離の関係が波形関数で表されて動作することを特徴とする。
【0012】
前記トルクを検出する手段は、弾性変形する変形部材と、前記変形部材の変形を検出する変形センサを具備し、前記変形センサの検出信号に基づきトルクを検出することを特徴とする。
【0013】
前記制御手段は、隣接する前記リンク同士が屈曲して、前記配管の径方向一方側の内面に前記配管の径方向一方側に配置された前記車輪が接触すると共に、前記配管の径方向他方側の内面に前記配管の径方向他方側に配置された前記車輪が接触してからの前記変形センサの検出信号に基づき、前記リンク駆動手段を制御することを特徴とする。
【0014】
隣接する前記リンク同士は、前記車輪の車軸まわりに揺動可能に連結されて屈曲可能とされ、前記変形部材は、その軸心を通って前記車軸が貫通した状態で、軸方向一端部が隣接する前記リンクの内の一方に固定されており、前記変形部材の軸方向他端部に固定された歯車を前記リンク駆動手段で回転させることで、隣接する前記リンク同士が屈曲され、隣接する前記リンク同士が屈曲して、前記配管の径方向一方側および他方側に配置された前記車輪が対応する前記配管の内面に接触してから、前記リンク駆動手段で前記歯車をさらに回転させることで、前記変形部材がねじれるように変形することを特徴とする。
【0015】
前記変形部材には、そのねじれにより回転する第一歯車が設けられ、隣接する前記リンク同士の内の一方のリンクには、前記第一歯車と噛み合う第二歯車が設けられており、前記変形センサが前記第二歯車の回転を検出することで、前記変形部材の変形を検出することを特徴とする。
【0016】
全ての前記車輪は、オムニホイールであることを特徴とする。
【0017】
前記複数のリンクは、二つとされ、前記駆動手段は、前方に配置される前記リンクの前端部の前記車輪の第一駆動手段、後方に配置される前記リンクの後端部の前記車輪の第二駆動手段および隣接する前記リンク同士の連結部の前記車輪の第三駆動手段を有していることを特徴とする。
【0018】
前記複数のリンクは、四つとされ、前記駆動手段は、前方に配置される前記リンクの前端部の前記車輪の第一駆動手段、後方に配置される前記リンクの後端部の前記車輪の第二駆動手段および隣接する前記リンク同士の連結部の前記車輪の第三駆動手段を有しており、最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される一対の半球車輪を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る管内走行装置によれば、配管に押し付けるトルクを検出する手段に基づき、隣接するリンク同士を屈曲させるリンク駆動手段を制御手段にて制御する。具体的には、隣接するリンク同士が屈曲した状態で、配管の径方向一方側の内面に配管の径方向一方側に配置された車輪を回転可能に押し付けるトルクと、配管の径方向他方側の内面に配管の径方向他方側に配置された車輪を回転可能に押し付けるトルクとが一定に制御される。このようにして、能動的かつ自動的にリンク同士の屈曲を制御して、車輪の配管内面への押し当てるトルクを一定にすることで、走行する配管の内径が変化しても、車輪の配管内面への接触を確保して、管内走行装置を走行させることができる。
【0020】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される半球車輪を有することで管内走行装置自体を配管内において自在に回転させることができ、受動関節においては隣接するリンク同士の屈曲をリンク駆動手段により制御することができ、受動関節においては、ねじれバネの弾性力に基づいてリンク同士を屈曲させることができる。配管の径方向一方側の内面に配管の径方向一方側に配置された車輪を回転可能に押し付けるトルクと、配管の径方向他方側の内面に配管の径方向他方側に配置された車輪を回転可能に押し付けるトルクとが一定に制御される。このようにして、能動的かつ自動的にリンク同士の屈曲を制御して、車輪の配管内面への押し当てるトルクを一定にすることで、走行する配管の内径が変化しても、車輪の配管内面への接触を確保して、管内走行装置を走行させることができる。
【0021】
管内走行装置の能動関節である車輪の移動距離と角度の関係を波形関数となるように動作させることで垂直上方向の配管を上ることができる。
【0022】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、隣接する前記リンク同士の屈曲状態により弾性変形する変形部材と、前記変形部材の変形を検出する変形センサを具備し、前記変形センサの検出信号に基づきトルクを検出することができる。
【0023】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、車輪が配管内面に接触してからの変形センサの検出信号に基づきリンク駆動手段を制御して、隣接するリンク同士が連結された連結部である関節のトルク制御を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、隣接するリンク同士は、車輪の車軸まわりに揺動可能とされる。また、変形部材は、車軸が貫通した状態で、軸方向一端部が隣接するリンクの一方に固定され、軸方向他端部には歯車が固定されている。この歯車をリンク駆動手段で回転させることで、隣接するリンク同士が屈曲され、車輪が配管内面に接触してからさらに歯車を回転させることで、変形部材がねじれるよう弾性変形する。このような構成であるので、隣接するリンク同士が連結された関節をコンパクトな構成にすることができる。
【0025】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、変形部材のねじれにより回転する第一歯車と、この第一歯車と噛み合う第二歯車とを有しており、第二歯車の回転を変形センサで検出して、変形部材の変形を検出する。従って、変形部材の変形を検出する構成を簡易な構成とすることができ、隣接するリンク同士が連結された関節のトルクの分解能を高めることができる。
【0026】
また、本発明に係る管内走行装置によれば、全ての車輪がオムニホイールであるので、配管の曲管部においてロール回転することができる。
【0027】
また、本発明に係る管内走行装置は、二つのリンクと、前方に配置されるリンクの前端部の車輪の第一駆動手段と、後方に配置されるリンクの後端部の車輪の第二駆動手段と、隣接するリンク同士の連結部の車輪の第三駆動手段とを有しており、前述したように関節のトルク制御がなされる。従って、リンクを二つにして管内走行装置の全長を短くしても、十分な牽引力を得ることができる。
【0028】
また、本発明に係る管内走行装置は、リンクは、四つとされ、前記駆動手段は、前方に配置される前記リンクの前端部の前記車輪の第一駆動手段、後方に配置される前記リンクの後端部の前記車輪の第二駆動手段および隣接する前記リンク同士の連結部の前記車輪の第三駆動手段を有しており、最も前方に配置される前記リンクの前端部、最も後方に配置される前記リンクの後端部にそれぞれ回転自在に保持される半球車輪を有することで配管内において垂直上方向及び直進方向のT字型に枝分かれした場合においても、垂直上方向に登ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の管内走行装置の一実施例を示す概略側面図である。
【
図2】
図1の管内走行装置の上方から見た概略図である。
【
図7】
図1の管内走行装置の概略斜視図であり、屈曲された状態を示している。
【
図8】
図1の管内走行装置の使用状態を示す概略側面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態を示す管内走行装置の概略側面図である。
【
図11】外力が加われていないときの管内走行装置の概略側面図である。
【
図12】(a)(b)管内走行装置がT字に分岐した垂直上方向の配管を上る一連の流れの様子を示す図である。
【
図13】(c)(d)管内走行装置がT字に分岐した垂直上方向の配管を上る一連の流れの様子を示す図である。
【
図14】(e)(f)管内走行装置がT字に分岐した垂直上方向の配管を上る一連の流れの様子を示す図である。
【
図15】垂直上方向に上るときの受動関節の車輪の移動距離と角度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の管内走行装置の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
図1から
図8は、本発明の管内走行装置の一実施例を示す図であり、
図1は概略右側面図、
図2は上方から見た概略図、
図3は
図1における概略A-A断面図、
図4は
図2における概略B-B断面図、
図5は
図2における概略C-C断面図、
図6は
図2における概略D-D断面図、
図7は屈曲した状態を示す概略斜視図、
図8は使用状態を示す概略右側面図である。本実施例の管内走行装置1は、たとえば、筒状の配管2内を走行させつつ配管2内の状況を観察する観察装置の後側に、その観察装置に接続された電源用ケーブルおよび通信用ケーブルを介して接続されるものである。これにより、配管2内面と両ケーブルとの摩擦を減少させることができる。なお、管内走行装置1は、配管2の観察装置の後側に配置される場合に限定されるものではなく、単独で使用してもよい。
【0032】
本実施例の管内走行装置1は、互いに屈曲可能に前後方向へ沿って連結される複数のリンク3と、リンク3に回転可能に設けられる複数の一対の車輪4,4と、車輪4の駆動手段5と、隣接するリンク3,3同士を屈曲させるリンク駆動手段6と、隣接するリンク3,3同士の屈曲状態により弾性変形する変形部材7と、変形部材7の変形を検出する変形センサ8と、リンク駆動手段6を制御する制御手段(図示省略)とを備える。図示例では、管内走行装置1は、二つのリンク3が互いに屈曲可能に連結されている。
【0033】
前方に配置されるリンク3aは、中空状で、側面視略円形状の後部が左方へ凹んで形成されている。一方、後方に配置されるリンク3bは、中空状で、側面視略円形状の前部が右方へ凹んで形成されている。両リンク3a,3bは、前方のリンク3a後部の前述した凹んだ箇所に後方のリンク3b前部が配置されると共に、後方のリンク3b前部の前述した凹んだ箇所に前方のリンク3a後部が配置された状態で、互いに屈曲可能に連結される。この際、前方のリンク3a後部の左右方向に沿う軸線と後方のリンク3b前部の左右方向に沿う軸線とが同一直線上に配置された状態で、前方のリンク3aの後部が後方のリンク3bの前部に差し込まれて、前方のリンク3aの外周面と後方のリンク3bの内周面とが軸受10を介して連結される。
【0034】
複数の一対の車輪4,4は、前方に配置されるリンク3aの前端部、後方に配置されるリンク3bの後端部および隣接するリンク3a,3b同士の連結部に回転可能に保持される。ここでは、まず、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部に回転可能に保持される左右一対の車輪4,4について説明する。
【0035】
左右一対の車輪4,4は、隣接するリンク3a,3b同士の連結部に左右方向へ沿って配置される車軸11に一体回転可能に設けられる。車軸11は、その軸線が両リンク3a,3bの軸線と同一直線上に配置されるように、前方のリンク3aの後部および後方のリンク3bの前部を貫通して配置される。この際、車軸11は、両リンク3a,3bに軸受を介して設けられ、両リンク3a,3bに対して軸線まわりに回転可能に保持される。従って、前後の隣接するリンク3a,3b同士は、車軸11まわりに揺動可能に連結されて屈曲可能とされる。隣接するリンク3a,3b同士の連結部に車軸11が取り付けられた状態では、前述したように車軸11の左右両端部がそれぞれ前方のリンク3aの後部および後方のリンク3bの前部を貫通しており、その左右両貫通部にそれぞれ車輪4が一体回転可能に設けられる。このようにして、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部に、左右一対の車輪4,4が回転可能に保持される。
【0036】
前方のリンク3aの前端部に回転可能に保持される左右一対の車輪4,4は、前方のリンク3aの前端部に左右方向へ沿って配置される車軸11に一体回転可能に設けられる。車軸11は、その軸線が左右方向へ沿った状態で、前方のリンク3aの前端部を貫通して配置される。この際、車軸11は、前方のリンク3aに軸受を介して設けられ、前方のリンク3aに対して軸線まわりに回転可能に保持される。前方のリンク3aに車軸11が取り付けられた状態では、前述したように車軸11の左右両端部が前方のリンク3aを貫通しており、その左右両貫通部にそれぞれ車輪4が一体回転可能に設けられる。このようにして、前方に配置されるリンク3aの前端部に、左右一対の車輪4,4が回転可能に保持される。
【0037】
後方のリンク3bの後端部に回転可能に保持される左右一対の車輪4,4は、前方のリンク3aに設けられる左右一対の車輪4,4と同様にして、後方のリンク3bの後端部に左右方向へ沿って配置される車軸11に一体回転に設けられる。すなわち、車軸11は、後方のリンク3bの後端部を左右方向に貫通した状態で、後方のリンク3bに軸受を介して設けられ、後方のリンク3bに対して軸線まわりに回転可能に保持される。この状態では、車軸11の左右両端部が後方のリンク3bを貫通しており、その左右両貫通部にそれぞれ車輪4が一体回転可能に設けられる。このようにして、後方に配置されるリンク3bの後端部に、左右一対の車輪4,4が回転可能に保持される。
【0038】
本実施例では、前方のリンク3aの前端部、後方のリンク3bの後端部および前後の隣接するリンク3a,3b同士の連結部に設けられる各車輪4は、オムニホイールとされる。オムニホイールは、車軸11に一体回転可能に設けられるホイール本体12と、ホイール本体12に回転可能に設けられるローラ13とを有している。ホイール本体12には、外周の接線方向に配置された軸部が周方向に所定角度間隔で複数設けられ、それら複数の軸部それぞれにゴムなどで外周が被覆された略樽形状のローラ13が取り付けられる。このローラ13が取り付けられる軸部は、車軸11の軸方向に対して直交するように設けられる。なお、本実施例では、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部に設けられる左右一対の車輪4,4は、左方の車輪4のホイール本体12と右方の車輪4のホイール本体12とが周方向に所定角度だけずれた状態で対向して配置される。
【0039】
駆動手段5は、車軸11をその軸線まわりに回転させて車輪4を回転させる手段であって、たとえば、モータとされる。本実施例では、駆動手段5は、前方に配置されるリンク3aの前端部の左右一対の車輪4,4の第一駆動手段14、後方に配置されるリンク3bの後端部の左右一対の車輪4,4の第二駆動手段15、および隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4の第三駆動手段16を有し、各駆動手段14,15,16がモータとされる。
【0040】
第一駆動手段14は、その駆動軸17が左右方向へ沿って前方のリンク3a内に配置される。第一駆動手段14の駆動軸17には、駆動側歯車18が一体回転可能に設けられる。一方、前方のリンク3aの前端部に設けられる左右一対の車輪4,4の車軸11には、前方のリンク3a内において、車輪側歯車19が一体回転可能に設けられる。駆動側歯車18と車輪側歯車19との間には、前方のリンク3a内において、中間歯車20が配置される。中間歯車20は、前方のリンク3aに左右方向へ沿って配置される軸21に設けられる。この軸21は、その軸線まわりに回転可能に前方のリンク3aに軸受を介して設けられ、中間歯車20が一体回転可能に設けられる。この際、中間歯車20は、駆動側歯車18に噛み合うと共に、車輪側歯車19に噛み合うようにして配置される。従って、第一駆動手段14を作動させて駆動軸17を回転することで、車軸11と共に左右一対の車輪4,4を回転させることができる。
【0041】
第二駆動手段15は、その駆動軸22が左右方向へ沿って後方のリンク3b内に配置され、駆動軸22には駆動側歯車23が一体回転可能に設けられる。一方、後方のリンク3bの後端部の左右一対の車輪4,4の車軸11には、後方のリンク3b内において車輪側歯車24が一体回転可能に設けられ、この車輪側歯車24と駆動側歯車23との間には、後方のリンク3bに左右方向へ沿って配置される軸25に設けられる中間歯車26が後方のリンク3b内において設けられる。中間歯車26が設けられる軸25は、その軸線まわりに回転可能に後方のリンク3bに軸受を介して設けられ、中間歯車26が一体回転可能に設けられる。この際、中間歯車26は、駆動側歯車23および車輪側歯車24に噛み合うように配置される。従って、第二駆動手段15を作動することで、後方のリンク3bの後端部の左右一対の車輪4,4を回転させることができる。
【0042】
第三駆動手段16は、その駆動軸27が左右方向へ沿った状態で、前方のリンク3a内において第一駆動手段14の後側に配置される。第三駆動手段16の駆動軸27には、駆動側歯車28が一体回転可能に設けられる一方、隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4の車軸11には、前方のリンク3a内において車輪側歯車29が一体回転可能に設けられる。駆動側歯車28と車輪側歯車29との間には、前方のリンク3a内において中間歯車30が配置され、その中間歯車30は、前方のリンク3aに左右方向へ沿って配置される軸31に設けられる。この軸31は、その軸線まわりに回転可能に前方のリンク3aに軸受を介して設けられ、中間歯車30が一体回転可能に設けられる。この際、中間歯車30は、駆動側歯車28および車輪側歯車29に噛み合うようにして配置される。従って、第三駆動手段16を作動することで、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4を回転させることができる。
【0043】
リンク駆動手段6は、前後に隣接するリンク3a,3b同士を屈曲させる手段であって、本実施例ではモータとされる。リンク駆動手段6は、その駆動軸32が左右方向へ沿った状態で、後方のリンク3b内において第二駆動手段15の前方に配置される。リンク駆動手段6の駆動軸32には、駆動側歯車33が一体回転可能に設けられる。
【0044】
変形部材7は、弾性変形可能な弾性材から形成されており、本実施例では、ショアA硬度が50のウレタンゴムから形成される。変形部材7は、略円筒状に形成されており、軸方向両端面が内方へ略円錐形状に凹んで形成される。変形部材7の軸方向両端部の円錐形状の凹みには、変形部材7の強度を高めるために、略円錐形の筒状の金属部材34が嵌め込まれて固定される。
【0045】
金属部材34付きの変形部材7は、それらの内穴を隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4の車軸11が貫通した状態で、軸方向が左右方向へ沿って前方のリンク3a内に配置される。この際、変形部材7は、その軸心を通って車軸11が貫通した状態で、軸方向左端部が前方のリンク3aにピン35などで固定される。従って、変形部材7は、車軸11および前方のリンク3aに対して回転不能とされる。変形部材7の軸方向右端部には、リンク駆動手段6で回転する歯車36が設けられる。本実施例では、変形部材7には、歯車36を変形部材7に固定する固定部材37が設けられる。固定部材37は、略円筒状に形成されており、軸方向左端部が変形部材7の軸方向右端部にピン38などで固定される。このようにして固定される固定部材37を介して、歯車36が変形部材7に設けられる。歯車36は、固定部材37の軸方向右端部にピン39などで固定される。この際、歯車36は、後方のリンク3b内に配置される。ここで、固定部材37および歯車36は、変形部材7と同一軸線上に配置されており、固定部材37の内穴および歯車36の中央部に左右方向へ沿って形成された貫通穴を車軸11が貫通している。また、固定部材37は、変形部材7に対して回転不能とされ、歯車36は、固定部材37に対して回転不能とされる。
【0046】
変形部材7に設けられる歯車36とリンク駆動手段6の駆動軸32の駆動側歯車33との間には、後方のリンク3b内において、中間歯車40が配置される。中間歯車40は、後方のリンク3bに左右方向へ沿って配置される軸41に設けられる。この軸41は、その軸線まわりに回転可能に後方のリンク3bに軸受を介して設けられ、中間歯車40が一体回転可能に設けられる。この際、中間歯車40は、リンク駆動手段6の駆動軸32の駆動側歯車33および変形部材7に設けられる歯車36に噛み合うように配置される。
【0047】
また、変形部材7には、前述した歯車36とは別に、変形部材7の変形を検出する際に用いられる第一歯車42が設けられる。本実施例では、第一歯車42は、変形部材7の軸方向右端部に設けられる。具体的には、変形部材7の軸方向右端部に第一歯車42が配置されると共に、第一歯車42の軸方向右端部に固定部材37が配置された状態で、第一歯車42は、固定部材37を変形部材7に固定するピン38などによって、固定部材37と共に変形部材7の軸方向右端部に固定される。ここで、第一歯車42は、変形部材7と同一軸線上に配置されており、第一歯車42の中央部に左右方向へ沿って形成された貫通穴を車軸11が貫通している。また、第一歯車42は、変形部材7および固定部材37に対して回転不能とされる。
【0048】
一方、前方のリンク3aには、第一歯車42と噛み合う第二歯車43が設けられる。本実施例では、第二歯車43は、前方のリンク3aに左右方向へ沿って配置される軸44に設けられる。この軸44は、その軸線まわりに回転可能に前方のリンク3aに軸受を介して設けられ、第二歯車43が一体回転可能に設けられる。この際、第二歯車43は、変形部材7に固定された第一歯車42に噛み合うように配置される。
【0049】
変形センサ8は、特に問わないが、ポテンショメータとされる。本実施例では、変形部材7に固定された第一歯車42と噛み合うように第二歯車43が配置される構成であるので、変形センサ8によって第二歯車43の回転を検出することで、変形部材7の変形を検出することができる。従って、変形センサ8は、第二歯車43の軸44が差し込まれて貫通した状態で、前方のリンク3aに設けられる。なお、本実施例では、モータであるリンク駆動手段6の回転角度を検出する角度センサ9を有している。前述したように、リンク駆動手段6の駆動軸32の駆動側歯車33と変形部材7に固定部材37を介して固定された歯車36とが中間歯車40を介して噛み合う構成であるので、角度センサ9によって中間歯車40の回転を検出することで、モータであるリンク駆動手段6の回転角度を検出することができる。従って、角度センサ9は、中間歯車40の軸41が差し込まれて貫通した状態で、後方のリンク3bに設けられる。
【0050】
制御手段は、変形センサ8などの検出信号に基づき、前述したリンク駆動手段6を制御する手段である。そのため、変形センサ8およびリンク駆動手段6などは、制御手段に接続される。そして、制御手段は、後述するようにして、前後に隣接するリンク3a,3b同士を屈曲させた状態で、車輪4を配管2内面に押し付ける。
【0051】
次に、本実施例の管内走行装置1の使用について説明する。
図8に示されるように、管内走行装置1は、前後に隣接するリンク3a,3b同士が屈曲して車輪4が配管2内面に接触した状態で、配管2内を走行することができる。配管2内を走行する場合には、第一駆動手段14、第二駆動手段15および第三駆動手段16を駆動すればよい。第一駆動手段14を駆動することで、第一駆動手段14の駆動軸17と共に駆動側歯車18が回転し、この駆動側歯車18と中間歯車20を介して噛み合わされた車輪側歯車19と共に車軸11が回転して、前方のリンク3aの前端部の左右一対の車輪4,4が回転する。また、第二駆動手段15を駆動することで、第二駆動手段15の駆動軸22と共に駆動側歯車23が回転し、この駆動側歯車23と中間歯車26を介して噛み合わされた車輪側歯車24と共に車軸11が回転して、後方のリンク3bの後端部の左右一対の車輪4,4が回転する。さらに、第三駆動手段16を駆動することで、第三駆動手段16の駆動軸27と共に駆動側歯車28が回転し、この駆動側歯車28と中間歯車30を介して噛み合わされた車輪側歯車29と共に車軸11が回転して、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4が回転する。
【0052】
このようにして、前方のリンク3aの前端部、後方のリンク3bの後端部、および隣接するリンク3a,3b同士の連結部に設けられる左右一対の車輪4,4が回転することで、管内走行装置1が配管2内を走行することができる。本実施例では、モータである各駆動手段14,15,16は、駆動軸17,22,27が正逆回転可能に構成されている。従って、駆動軸17,22,27の正逆回転を切り替えることで、管内走行装置1が前方に走行する場合と後方に走行する場合とに切り替えることができる。なお、各駆動手段14,15,16は、作業者により操作されるコントローラからケーブルを介して送られるか、またはコントローラから無線により送られる制御信号によって制御される。
【0053】
ここで、
図1の状態から
図8の状態に、管内走行装置1を屈曲するには、リンク駆動手段6を駆動すればよい。この際、変形センサ8の検出信号に基づきリンク駆動手段6を制御して、前後に隣接するリンク3a,3b同士が屈曲した状態で、配管2の径方向一方側の内面に配管2の径方向一方側に配置された左右一対の車輪4,4を回転可能に押し付けるトルクと、配管2の径方向他方側の内面に配管2の径方向他方側に配置された左右一対の車輪4,4を回転可能に押し付けるトルクとを一定に制御する。具体的には、前後に隣接するリンク3a,3b同士が屈曲して、配管2の径方向一方側の内面に配管2の径方向一方側に配置された左右一対の車輪4,4が接触すると共に、配管2の径方向他方側の内面に配管2の径方向他方側に配置された左右一対の車輪4,4が接触してからの変形センサ8の検出信号に基づき、リンク駆動手段6を制御する。これにより、配管2内で管内走行装置1が屈曲した状態で突っ張るトルクが一定に制御される。
【0054】
本実施例では、前方のリンク3aに固定される変形部材7に固定部材37を介して歯車36が固定され、その歯車36とリンク駆動手段6の駆動軸32の駆動側歯車33とが中間歯車40を介して噛み合わされている。従って、変形部材7の軸方向他端部に固定された歯車36をリンク駆動手段6で回転させることで、前後に隣接するリンク3a,3b同士を屈曲することができる。この際、前方のリンク3a後部と後方のリンク3b前部とが同一軸線上に配置されているので、隣接するリンク3a,3b同士は、その軸線まわりに揺動する。すなわち、隣接するリンク3a,3b同士は、前述した軸線に沿って配置された車軸11まわりに揺動して屈曲する。
【0055】
隣接するリンク3a,3b同士が屈曲すると、配管2の径方向一方側に前方のリンク3aの前端部の左右一対の車輪4,4および後方のリンク3bの後端部の左右一対の車輪4,4が配置され、配管2の径方向他方側に隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4が配置される。そして、配管2の径方向一方側および他方側に配置された左右一対の車輪4,4が対応する配管2の内面に接触してから、リンク駆動手段6で変形部材7の歯車36をさらに回転させることで、変形部材7がねじれるように変形する。これは、変形部材7の軸方向一端部が前方のリンク3aに固定され、変形部材7の軸方向他端部に歯車36が固定されているからである。
【0056】
また、本実施例では、変形部材7に第一歯車42が固定され、この第一歯車42と噛み合う第二歯車43が装置1内に配置されている。従って、変形部材7のねじれにより第一歯車42が回転し、これにより第二歯車43が回転する。この際、変形センサ8が第二歯車43の回転を検出することで、変形部材7の変形を検出することができる。
【0057】
変形センサ8の検出結果を用いて、前後に隣接するリンク3a,3b同士を屈曲させるリンク駆動手段6を制御する。具体的には、まず、変形センサ8による変形部材7の変形角度の検出結果を用いて、隣接するリンク3a,3b同士の連結部である関節の回転角度を算出する。その後、制御手段は、変形センサ8からの変形部材7の角度情報に、予め登録されている変形部材7の剛性を乗算する。すなわち、前述した角度情報に、変形部材7の弾性係数を掛け合わせる。これにより、制御手段は、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部である関節に作用するトルクを算出することができる。
【0058】
そして、制御手段は、求められたトルクの算出結果を用いて、車輪4が配管2内面を押し付ける力を求める。すなわち、管内走行装置1が屈曲した状態で配管2内において突っ張るトルクを求める。そのため、制御手段は、トルクの算出結果が予め登録されているトルクの値となるように制御する。このようにして関節のトルクを制御することにより、車輪4の配管2内面へ押し付けるトルクを一定にすることができる。
【0059】
なお、本実施例では、リンク駆動手段6の駆動軸32の駆動側歯車33と変形部材7の歯車36との間に中間歯車40が配置されており、この中間歯車40の回転を検出する角度センサ9が設けられている。この角度センサ9は、制御手段に接続される。従って、変形センサ8および角度センサ9の検出結果を用いて、前後に隣接するリンク3a,3b同士を屈曲させるリンク駆動手段6を制御することができる。この場合、まず、変形センサ8による変形部材7の変形角度の検出結果を用いて、隣接するリンク3a,3b同士の連結部である関節のトルクを算出する。そのため、制御手段は、変形センサ8からの角度情報に、予め登録されている変形部材7の剛性を乗算する。すなわち、前述した角度情報に、変形部材7の弾性係数を掛け合わせる。これにより、制御手段は、前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部である関節に作用するトルクを算出することができる。
【0060】
また、トルクを検出する方法は、変形部材7の変形角度を検出してトルクを検出する手段でなくても、駆動手段5によりリンク駆動手段6を屈曲させる電力量を検出してトルクを検出する手段、またはひずみゲージ式のトルクセンサ、静電容量式トルクセンサ、圧電式力センサを用いて算出しても構わない。
【0061】
そして、制御手段は、求められたトルクの算出結果を用いて、車輪4が配管2内面を押し付けるトルクを求める。そのため、制御手段は、トルクの算出結果と、予め登録されている管内走行装置1のリンク情報とから、管内走行装置1の車輪4の位置に生じる力を算出する。ここで、リンク情報は、管内走行装置1の各リンク3の長さ、関節の位置および角度などの情報である。なお、関節の角度は、変形センサ8からの角度情報と角度センサ9からの角度情報との差分である。このようにして車輪4に加わる力が求められ、これと予め登録されている車輪4に加わる力とが比較され、求められた車輪4に加わる力が予め登録されている車輪4に加わる力となるように、制御手段によってリンク駆動手段6が制御される。従って、制御手段は、車輪4の配管2内面へ押し付けるトルクが一定となるように、リンク駆動手段6を制御することができる。
【0062】
本実施例の管内走行装置1の場合、変形センサ8の検出結果に基づき、車輪4の配管2内面への押付トルクが一定となるようにリンク駆動手段6が制御される。従って、能動的かつ自動的に隣接するリンク3a,3b同士の屈曲を制御して押付トルクを一定にすることができる。これにより、管内走行装置1は、走行途中で配管2の内径が変化した場合、コイルバネなどで付勢されている従来の装置と比較して、車輪4の配管2内面への接触を確実に図ることができ、配管2内を安定して走行することができる。
【0063】
また、本実施例の管内走行装置1の場合、車輪4の配管2内面への接触後の変形センサ8の検出結果を用いて、関節のトルク制御を容易に行うことができる。また、本実施例の管内走行装置1の場合、前方のリンク3aに変形部材7が固定され、この変形部材7に回転不能に歯車36が固定される。従って、リンク駆動手段6により変形部材7の歯車36が回転することで、前後に隣接するリンク3a,3b同士が屈曲され、この屈曲により車輪4が配管2内面に接触してからさらに歯車36が回転することで、変形部材7がねじれるように変形することができる。ここで、隣接するリンク3a,3b同士の連結部の軸線、車軸11の軸線および筒状の変形部材7の軸線が同一直線上に配置される。これにより、関節のトルク制御を行う構成が設けられた関節のコンパクト化を図ることができる。
【0064】
また、本実施例の管内走行装置1の場合、変形部材7のねじれにより回転する第一歯車42と、この第一歯車42と噛み合う第二歯車43とが設けられており、変形センサ8により第二歯車43の回転を検出して、変形部材7の変形が検出される。ここで、第二歯車43は、その直径が第一歯車42の直径よりも小さく形成されている。従って、関節のトルクの分解能を向上することができると共に、変形部材7の検出を行うための構成を簡易にすることができる。また、本実施例の管内走行装置1の場合、前方のリンク3aの前端部の左右一対の車輪4,4、後方のリンク3bの後端部の左右一対の車輪4,4、および前後に隣接するリンク3a,3b同士の連結部の左右一対の車輪4,4がオムニホイールとされる。従って、配管2の屈曲部の屈曲方向と管内走行装置1の関節の曲がる方向とが合うように、管内走行装置1をロール回転することができる。
【0065】
さらに、本実施例の管内走行装置1の場合、二つのリンク3a,3bから構成され、各車輪4に対応する各駆動手段14,15,16により回転することができ、さらに、車輪4の配管2内面への押付トルクが一定に制御される。これにより、従来ではケーブルを引っ張ることができるよう牽引力を高めるために、このようにして管内走行装置1の全長を短くすることができるので、配管2の連続的に曲がった箇所において、管内走行装置1が動けなくなるのを防止することができる。
【0066】
本発明の管内走行装置は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、二つのリンク3a,3bから構成されたが、これに限定されるものではなく、複数のリンク3から構成してもよい。この場合、全ての複数の関節に、前述したトルク制御を行う構成を設けてもよいし、所定の関節に設けてもよい。たとえば、四つのリンクから構成される場合、前方に配置される関節および後方に配置される関節にはトルク制御を行う構成が設けられ、前後の関節の間に配置される関節には設けられない。
【0067】
次に、第2の実施形態の管内走行装置1aについて
図9から
図15を用いて説明する。
【0068】
図9に示すように、管内走行装置1aは管内走行装置1の2つのリンク3a,3bに接続された末端の車輪4にさらにリンク3A,3Bが接続され、リンク3A,3Bの上部にそれぞれカメラ45、通信手段46が固定されており、またリンク3A,3Bの末端にそれぞれ一対の半球車輪47a,47bが互いに向かい合うように保持されている。通信手段46は、角度の指令値や車輪4の回転の指令値等を受信する役割の他にも角度情報、トルク情報及びカメラ45の映像を送信する役割や管内走行装置1aの電力を供給する役割を有している。ここで、リンク駆動手段6を用いて前後に隣接するリンク3a,3b同士を屈曲させている中央の車輪4を能動関節の車輪4bとし、その他の車輪4を前方から順に受動関節の車輪4a、4cとする。管内走行装置1aのリンク3a,3b及び能動関節の車輪4bは管内走行装置1と同一構成であり同一の作用、効果を有する。
【0069】
車輪4aは、リンク3Aの後端部及びリンク3aの先端部に回転可能に保持されている。受動関節の左右一対の車輪4a,4aは、隣接するリンク3A,3a同士の連結部に左右方向へ沿って配置される車軸11に一体回転可能に設けられる。また、両リンク3A,3aに対して軸線まわりに回転可能に保持されるため、前後の隣接するリンク3A,リンク3a同士は、車軸11まわりに揺動可能に連結されて屈曲可能とされる。また、車輪4a内部に車軸11を中心として周囲にねじりコイルばね48が固定されており、該ねじりコイルばね48の一端部がリンク3Aに接続されている。従って、管内走行装置1aに外力が加われていない場合、ねじりコイルばね48の弾性力により、リンク3Aは
図11に示すように屈曲した状態で維持される。また逆方向には力を加えることができないため、リンク3Aは一方の方向にしか屈曲させることができない。車輪4aの内部にサーキットボード49が配置されている。該サーキットボード49がリンク3Aの上部に固定されたカメラ45からの信号を送受信する役割を有している。
【0070】
車輪4cは、リンク3Bの先端部及びリンク3bの後端部に回転可能に保持されている。車輪4aと同様に、受動関節の左右一対の車輪4c,4cは、隣接するリンク3B,3b同士の連結部に左右方向へ沿って配置される車軸11に一体回転可能に設けられる。また、両リンク3B,3bに対して軸線まわりに回転可能に保持されるため、前後の隣接するリンク3B,3b同士は、車軸11まわりに揺動可能に連結されて屈曲可能とされる。また、車輪4b内部に車軸11を中心として周囲にねじりコイルばね48が固定されており、該ねじりコイルばね48の一端部がリンク3Bに接続されている。従って、管内走行装置1aに外力が加われていない場合、ねじりコイルばね48の弾性力により、リンク3Bは
図11に示すように屈曲した状態で維持される。また逆方向には力を加えることができないため、リンク3Bは一方の方向にしか屈曲させることができない。この際に、リンク3Bを一方に屈曲させる方向は、
図11に示すように、リンク3Aと同一方向を向くように屈曲させることに留意する。また、車輪4cの内部には、サーキットボード49が配置されている。該サーキットボード49がリンク3Bの上部に固定された通信手段46からの信号を送受信する役割を有している。
【0071】
リンク3Aは、前方の半球車輪47aと後方に位置する車輪4aを連結している。
図10に示すように側面視略円形状の後部が右方へ凹んで形成されている。この凹み箇所に車輪4aが配置され車軸11を通して互いに屈曲可能に連結される。またリンク3Aの内部にはモータ50が配置されており、モータ50の長軸51を軸受け52に介して半球車輪47aの短車軸53に接続されている。従って、短車軸53が長軸51の円周方向に回転することで半球車輪47aが回転する。
【0072】
リンク3Bは、リンク3Aと同一構造であり、後方の半球車輪47bと前方に位置する車輪4cを連結している。
図10に示すように後方に配置されるリンク3Bは、側面視略円形状の前部が左方へ凹んで形成されている。この凹み箇所に車輪4cが配置され車軸11を通して互いに屈曲可能に連結される。またリンク3Bの内部にはモータ50が配置されており、モータ50の長軸51を軸受け52に介して半球車輪47bの短車軸53に接続されている。従って、短車軸53が長軸51の円周方向に回転することで半球車輪47bが回転する。
【0073】
また、両リンク3A,3Bの内部には、サーキットボード49が配置されている。該サーキットボード49が、リンク3A,3B内にあるモータ50の作動を制御しており、長軸51の回転及び短車軸53の回転が制御され、半球車輪47a,47bの回転動作を制御している。また、カメラ45、通信手段46との情報及び指令を送受信する役割を有している。
【0074】
半球車輪47a,47bは、一対の半球54と短車軸53を具備している。また、管内走行装置1aの末端でリンク3A,3Bに隣接しており、前述した通り、リンク3A,3Bの長軸51と半球車輪47a,47b内の短車軸53により接続されている。該短車軸53が一対の半球54の両中心部を垂直方向に貫通するように固定されている。よって、半球車輪47a,47bは、短車軸53又は長軸51を中心として円周方向に回転可能に保持されている。また、長軸51は軸カバー55により覆われている。
【0075】
続いて、T字に分岐した配管2内において管内走行装置1aが垂直上方向に上る動作状態の様子を
図12(a)から
図14(f)にかけて説明する。
【0076】
図12(a)に示したように、水平方向の配管2内において、管内走行装置1aの車輪4a,4cの受動関節においては、ねじりコイルばね48の弾性力によりリンク3A,3a及び3b,3B同士が互いに屈曲しようとしているが、配管2によって押さえつけられている。車輪4bの能動関節においては前述したように、リンク駆動手段6を駆動して、能動関節の屈曲を制御することができる。変形センサ8の検出信号に基づきリンク駆動手段6を制御して、前後に隣接するリンク3a,3b同士が屈曲した状態で、配管2の径方向一方側の内面に配管2の径方向一方側に配置された左右一対の車輪4a,4a及び4c,4cを回転可能に押し付けるトルクと、配管2の径方向他方側の内面に配管2の径方向他方側に配置された左右一対の車輪4b,4bを回転可能に押し付けるトルクとを一定に制御することができる。
【0077】
具体的には、前後に隣接するリンク3a,3b同士が屈曲して、配管2の径方向一方側の内面に配管2の径方向一方側に配置された左右一対の車輪4a,4a及び4c,4cが接触すると共に、配管2の径方向他方側の内面に配管2の径方向他方側に配置された左右一対の車輪4b,4bが接触してからの変形センサ8の検出信号に基づき、リンク駆動手段6を制御する。これにより、配管2内で管内走行装置1が屈曲した状態で突っ張るトルクが一定に制御される。従って、配管2内に異物があったり、レジューサー配管、インクリーザー配管、ディクリーザー配管及びつなぎ目のソケット部分のように配管2の内径が段階的に変わっていく場合、突っ張るトルクが一定に制御されることで安定的に各車輪4a,4b,4c及び半球車輪47a,47bは壁に押さえつけ摩擦を生じさせて配管2の内壁に対して滑らない効果を有する。角度を一定に制御して走行してしまうと上記で述べたような配管2の内径が段階的に変わっていく場合、突っ張るトルクの調節が難しくなり配管2内を自由に進めなくなる可能性があるため、角度を適時変位させて突っ張るトルクを一定に制御することが好ましい。
【0078】
そして、車輪4a,4b,4cを駆動させることによって一対の半球車輪47a,47bも同時に回転して管内走行装置1aは滑らずに配管2内を横方向に移動することができる。モータである各駆動手段14,15,16は正逆回転可能であるため、各駆動手段14,15,16の正逆回転を切り替えることで、管内走行装置1aが前方に走行する場合と後方に走行する場合とに切り替えることができる。なお、各駆動手段14,15,16は、作業者により操作されるコントローラからケーブルを介して送られるか、またはコントローラから無線により送られる制御信号によって制御される。
【0079】
また、分岐したT字管の垂直上方向に上る前に、
図12(a)に示すように横から見たときに重力方向を下としてW字型になるようにしておく必要がある。仮に、横から見た際に逆のM字型になっている場合、リンク3A内のモータ50を駆動させることで、長軸51が駆動し、該長軸51に接続された半球車輪47a,47bの短車軸53が長軸51の円周方向に回転することで半球車輪47a,47bが回転する。同時に管内走行装置1aが前方向に前進することで、管内走行装置1a自体が配管2内で半回転してW字型とすることができる。この状態を維持して分岐した垂直上方向の配管2の近くまで進む。
【0080】
この時、車輪4aと車輪4bの中心を結ぶ線と車輪4bと車輪4cの中心を結ぶ線のなす角をθとする。なす角θは、主に各車輪4a,4bの中心間距離L、配管2の内径Dp、管内走行装置1aの幅Wにより決定される。例えば、Lが0.1m、Dpが0.104m、Wが0.076mの場合なす角θは20度とされる。
【0081】
図12(b)に示すように、管内走行装置1aを横方向に移動して分岐点にまで達すると、まず先端部である半球車輪47aが配管2の上面を離れ、受動関節である車輪4aが屈曲したまま垂直上方向の配管2の左壁に接着される。その後、リンク駆動手段6を制御して能動関節である車輪4bのリンク3a,3bの角度を制御してなす角θを変位させながら各車輪4a,4b,4cは駆動し続けさせることで配管2を上ることができる。車輪4bの移動する距離は車輪4bの半径に回転速度を乗じてさらに時間を乗じることで導くことができる。車輪4bの移動距離となす角θの関係性が
図15に示すようにsin関数に近い波形関数となるように車輪4a,b,cの駆動手段及びリンク駆動手段6を制御することで垂直上方向の配管2を上り始めることができる。他の受動関節である車輪4a,4cの角度を制御せずとも、能動関節である車輪4bについてのみ角度を制御すれば容易に再現性高くT字に分岐した垂直上方向の配管2を上ることができる。
【0082】
その後、
図13(c)に示すように、リンク3a,3bにおける車輪4bの能動関節の角度が変化していき、車輪4bが下面に接着され、車輪4aが垂直上方向の配管2の左壁に接着され、そして半球車輪47aが右壁に接着する。仮に車輪4bが車輪4a,4cと同様にねじりコイルばね48を用いて屈曲させていた場合、一方方向にのみにしか屈曲することができず、
図12(b)から
図13(c)のように車輪4bを逆方向に屈曲することができないため、T字の分岐した配管2を垂直上方向に上ることができない。他の関節である受動関節の車輪4a,4cはねじりコイルばね48により屈曲させていても問題がなく動作することができるため角度を制御する必要がなくなり簡易な構造とすることができる。
【0083】
その後、車輪4a,4b,4cを駆動させつつ、
図13(d)に示すように、車輪4bがリンク駆動手段6を駆動することで持ち上がり垂直上方向の配管2に接着する。
【0084】
その後、
図14(e),(f)に示すように車輪4a,4b,4cを駆動させることで、順に垂直上方向の配管2を上ることできる。
【0085】
本実施例においては、T字に分岐した垂直上方向に上る場合について述べたが、
図12(a)の状態から垂直上方向に上らずに直進したい場合は各車輪4a,4b,4cが配管4内において全て接着するように半球車輪47a,47bを駆動させて管内走行装置1aを四半回転させることで、T字に分岐した場合でも直進することができる。また本実施例では述べなかったが垂直上方向に伸びているL字型の配管2においてもリンク駆動手段6を制御して能動関節である車輪4bの角度を随時変えながら配管2に対する突っ張るトルクを一定に制御することで垂直上方向にも上ることができる。また、水平横方向にT字やY字に分岐している場合でも同様にして横に曲がる又は直進することができる。そして、十字路に分岐している場合であっても同様の手順を用いて3方向のうち希望する方向に進むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、屈曲部を有する配管内を走行する管内走行装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 管内走行装置
1a 管内走行装置
2 配管
3 リンク
4 車輪
5 駆動手段
6 リンク駆動手段
7 変形部材
8 変形センサ
9 角度センサ
10 軸受
11 車軸
12 ホイール本体
13 ローラ
14 第一駆動手段
15 第二駆動手段
16 第三駆動手段
17 駆動軸
18 駆動側歯車
19 車輪側歯車
20 中間歯車
21 軸
36 歯車
37 固定部材
42 第一歯車
43 第二歯車
44 軸
45 カメラ
46 通信手段
47a 半球車輪
47b 半球車輪
48 ねじりコイルばね
49 サーキットボード
50 モータ
51 長軸
52 軸受け
53 短車軸
54 半球
55 軸カバー