(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】衣類
(51)【国際特許分類】
A41D 13/12 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A41D13/12 145
(21)【出願番号】P 2020120701
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520260821
【氏名又は名称】平木 愛
(74)【代理人】
【識別番号】100191189
【氏名又は名称】浅野 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100199761
【氏名又は名称】福屋 好泰
(74)【代理人】
【識別番号】100176016
【氏名又は名称】森 優
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】平木 愛
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05787511(US,A)
【文献】特開2018-193651(JP,A)
【文献】特開2016-216867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/02
A41D 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器を利用するときに介助者による介助を必要とする着用者のための衣類であって、
前記着用者の上半身を覆う衣類本体と、
前記衣類本体における後身頃部分の中央部に一端
側が取り付けられた吊り紐と、
前記後身頃
部分の表側上部に設けられ、前記吊り紐の他端
側を
引っ掛けられるように構成された連結部と、
を備え、
前記着用者が前記洋式便器に着座する際に前記介助者が前記吊り紐の他端
側を前記連結部に
引っ掛けることにより
前記後身頃部分の裾が前記洋式便器内に垂れ下がらないように捲り上げた状態で保持可能に構成されている衣類。
【請求項2】
前記後身頃
部分には、前記吊り紐を挿通するための筒状部が設けられている、
請求項1に記載の衣類。
【請求項3】
前記吊り紐の他端
側には、前記連結部に係止するための孔が設けられている、
請求項1または2に記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上半身を覆うように構成された衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者の中には、例えば、認知症などの持病により介助なしでは着替えやトイレを利用することができない人もいる。このような高齢者の着替えの介助を行う場合、高齢者の体位変更や、倒れないように高齢者の身体を支えるなどの作業を行う必要があり、多大な労力を要する。
【0003】
また、洋式便器を備えたトイレを利用する場合には、洋式便器の便座に着座したときに高齢者の衣類の裾部分が便器内に垂れ下がり同便器内の水で濡れてしまうという問題も起こりやすい。このため、トイレを利用した後に着替えの介助を行わなければならないことも少なくない。
【0004】
特許文献1には、前身頃および後身頃の左右いずれか一方の接ぎ合わせ部分に各々面ファスナーを取り付けることで前後の身頃を開閉可能に構成し、着替えを容易に行えるようにしたパジャマが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の衣類では、衣類の着替えを簡単に行うことはできるものの、トイレを利用するときに便器内の水で衣類の裾が濡れてしまうのを防ぐことはできないという問題がある。
【0007】
本発明は、トイレを利用するときに便器内に裾が垂れ下がるのを防止できる衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の衣類は、洋式便器を利用するときに介助者による介助を必要とする着用者のための衣類であって、着用者の上半身を覆う衣類本体と、衣類本体における後身頃部分の中央部に一端側が取り付けられた吊り紐と、後身頃部分の表側上部に設けられ、吊り紐の他端側を引っ掛けられるように構成された連結部と、を備え、着用者が洋式便器に着座する際に介助者が吊り紐の他端側を連結部に引っ掛けることにより後身頃部分の裾が洋式便器内に垂れ下がらないように捲り上げた状態で保持可能に構成されるものである。
【0009】
本発明の衣類において、後身頃部分には、吊り紐を挿通するための筒状部が設けられていてもよい。
【0010】
本発明の衣類において、吊り紐の他端側には、連結部に係止するための孔が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衣類によれば、後身頃の肌側に吊り下げられた吊り紐を後身頃上部に設けられた連結部に連結することにより後身頃の裾を捲り上げることができる。これにより、例えば、洋式便器の便座に着座した状態で裾が便器内に垂れ下がり便器内の水で濡れてしまうのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第1実施形態であるブラウスの前身頃の構成を平置き状態の図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すブラウスの前開き状態で示す図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1実施形態であるブラウスの後身頃の構成を平置き状態で示す図である。
図2(b)は、
図2(a)に示す後身頃の裾を捲り上げた状態で示す図である。
【
図3】
図3は、
図1(a)に示すブラウスを着用した高齢者が洋式便器に着座した状態を示す図である。
【
図4】
図4(a)は、
図1に示すブラウスの変形例に係るブラウスの後身頃の構成を平置き状態で示す図である。
図4(b)は、前開きにした平置き状態で
図4(a)に示すブラウスの前身頃の構成を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第2実施形態であるブラウスにおける後身頃の構成を平置き状態で示すとともに筒状部周辺の断面構成を示す図である。
図5(b)は、
図5(a)に示すブラウスの筒状部周辺の部分拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第2実施形態であるブラウスの後身頃の構成を平置き状態で示す図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す後身頃の裾を捲り上げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態である衣類について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、本発明の第1実施形態であるブラウス(衣類)10の平置き状態における前身頃20の構成を示す図である。
図1(b)は、
図1(a)に示すブラウス10を前開きにした状態で示す図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、ブラウス10は、左右の両袖12,14と前身頃20と後身頃30から構成される。前身頃20は、着用状態において右腕側に位置する右前身頃22および左腕側に位置する左前身頃24から構成される。そして、左前身頃24に取り付けられたボタン26A,26B,26C,…を右前身頃22に設けられたボタンホール(不図示)に各々係止することで前開き可能に構成される。なお、本実施形態では、衣類としてブラウス10を例に挙げているが、シャツやパジャマの上衣、チュニックなどの上半身を覆う他の衣類でもよい。
【0014】
図1(a)に示すように、後身頃30は前身頃20よりも上下方向の寸法が長くなるように形成してもよい。これにより、腰が曲がるなどして前傾気味の姿勢となりやすい高齢者が着用したときに、ズボン(不図示)などの中に後身頃30の裾30Sを入れた状態で着用しても後身頃30の裾30Sがズボンからはみ出し難くできる(換言すると、着崩れし難くできるとも表現できる)。
【0015】
図1(b)に示すように、後身頃30の肌側中央部には吊り紐32の上端部が縫着などにより連結された状態で吊り下げられている。この吊り紐32の下端部には、スリット状の係合孔32Hが設けられている。この吊り紐32の寸法は、
図1(a)に示すように、吊り下げ状態で後身頃30の裾30Sの上下方向位置よりもやや上方に位置する長さに設定されている。これにより、着用時に吊り紐32が後身頃30の裾30Sからはみ出さないようにできる。
【0016】
次に、
図2(a)を用いて、後身頃30の表(地)側の構成について説明する。
図2(a)は、ブラウス10の後身頃30の構成を平置き状態で示す図である。
図2(a)に示すように、後身頃30は、着用者の肩部を覆う上部生地34と、上部生地34よりも下側部分を覆う下部生地36とを接ぎ合わせて構成されている。上部生地34の中央部、すなわち、着用時に左右の肩甲骨の間に位置する部分には、花の形を模した正面視略円形状を呈する布で構成された装飾具(連結部)38が取り付けられている。ここで、
図2(b)は、吊り紐32を後身頃30の肌側から取り出して上方に位置する装飾具38に同吊り紐32の係合孔32Hを挿通することにより係止、すなわち、引っ掛けた状態とすることで後身頃30の裾30Sを捲り上げた状態を示す図である。また、
図3は、ブラウス10を着用している高齢者が洋式便器Tの便座T1に着座した状態を模式的に示す図である。
【0017】
図3に示すように、高齢者が便座T1に着座するときには、後身頃30の裾30Sが垂れ下がった状態となってしまう。このため、後身頃30の裾30Sを捲り上げないと、洋式便器T内の水に裾30Sが触れてしまい濡れてしまうという問題が生じやすい。さらには、便器内に垂れ下がった後身頃30に排泄物が付着してしまう場合もある。
【0018】
本実施形態のブラウス10によれば、高齢者が便座T1に着座する前に、例えば介助者が吊り紐32の係合孔32Hを装飾具38に引っ掛けておく、換言すると、装飾具38を吊り紐32の係合孔32Hに挿通する。これにより、吊り紐32によって
図2(b)に示すように後身頃30の裾30S側部分が引き上げられた状態、すなわち、捲り上げられた状態で保持される。そして、この状態で、便座T1に高齢者が着座することにより、後身頃30が洋式便器T内に垂れ下がってしまうことを防ぐことができる。これにより、洋式便器Tに着座した状態で後身頃30の裾30Sが洋式便器T内に垂れ下がることによって洋式便器T内の水で後身頃30が濡れてしまうのを防止できる。さらに、洋式便器T内に後身頃30が垂れ下がることによって排泄物が同身頃30に付着するのを防止できる。
【0019】
図4(a)は、上記第1実施形態におけるブラウス10の変形例であるブラウス40の後身頃60の構成を平置き状態で示す図である。
図4(b)は、同図(a)に示すブラウス40の前身頃50の構成を前開き状態で示す図である。以下の説明において、上記第1実施形態のブラウス10と構成の共通する部分については適宜同一の符号を付すとともに適宜説明を省略し、構成の異なる部分についてのみ説明を行うものとする。
【0020】
図4(a)および
図4(b)に示すように、ブラウス40は、上記第1実施形態のブラウス10と同様に前身頃50および後身頃60を含む。前身頃50および後身頃60は、上下方向の寸法がほぼ同じ長さとなるように形成されている点を除き、上記第1実施形態の前身頃20(
図1(a)参照)および後身頃30(
図1(a)参照)の構成と同一である。また、後身頃60には、肌(裏地)側の中央部下部に吊り紐62の上端部が縫着により連結された状態で吊り下げられている。吊り紐62の下端部には留具として機能する正面視において略円形の装飾具62Aが取り付けられている。一方、後身頃60の襟刳り中央部には、紐によって環状に構成された輪形部(連結部)64が取り付けられている。
【0021】
この構成では、後身頃60の肌側に取り付けられた装飾具62Aを輪形部64に挿し込んで係止させることにより後身頃60の裾60Sを捲り上げた状態で保持することができる。この場合にも、上記第1実施形態のブラウスと10と同様の効果を得ることができる。
【0022】
続いて、
図5(a)~
図6(b)を用いて第2実施形態におけるブラウス70の構成について説明を行う。
図5(a)は、ブラウス70における後身頃90の構成を平置き状態で示すとともに筒状部92周辺の断面構成を一部に示す図である。
図5(b)は、
図5(a)に含まれる筒状部92周辺の部分拡大図である。
図6(a)は、ブラウス70における後身頃90の構成を平置き状態で示す図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す後身頃90の裾90Sを捲り上げた状態を示す図である。なお、
図5(a)において、断面ハッチングを一部省略して示している。以下の説明において、上記第1実施形態のブラウス10と構成の共通する部分については適宜同一の符号を付して示すとともに適宜説明を省略し、構成の異なる部分についてのみ説明を行うものとする。
【0023】
図5(a)および
図6(a)に示すように、ブラウス70は、前身頃20と同様の構成を備える前身頃80と、後身頃30と同様の構成を備える後身頃90とを含む。後身頃90における中央部から裾90Sに至る部分に上下方向に沿って筒状部92が設けられている。この筒状部92は、後身頃90の肌側または表側に細長い当て布92Aを縫着などにより取り付けて形成される。この筒状部92には吊り紐94が挿通されている。この吊り紐94の上端部は、筒状部92の上端部に縫着されており、下端部には正面視略円形状をした留具96が取り付けられている。また、後身頃90の襟刳り中央部には紐によって構成された輪形部(連結部)98が取り付けられている。
【0024】
ここで、
図6(a)および
図6(b)を用いて留具96の使用方法について説明する。
図6(a)は、後身頃90を上方に押し上げて捲り上げた状態を
図5(a)と同様に示す図である。
図6(a)に示すように、介助者が留具96を手で保持しつつ後身頃90を上方に押し上げる。これにより、後身頃90が上方に捲り上げられた状態で保持できる。この状態で、さらに、
図6(b)に示すように、留具96を輪形部98に挿し込んで引っ掛ける。これにより、後身頃90が垂れ下がらないよう捲り上げられた状態で保持できる。
【0025】
この場合においても上記第1実施形態のブラウス10と同様の効果を得ることができる。
【0026】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。
【符号の説明】
【0027】
10,40,70 ブラウス(衣類)
20,44,50,80 前身頃
30,42,60,90 後身頃
32,62,94 吊り紐
38 装飾具(連結部)
62A 装飾具
64,98 輪形部(連結部)
92 筒状部