(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ボート
(51)【国際特許分類】
B63B 34/23 20200101AFI20240821BHJP
B63C 9/02 20060101ALI20240821BHJP
B63B 59/02 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B63B34/23
B63C9/02
B63B59/02 B
(21)【出願番号】P 2020139904
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】398008099
【氏名又は名称】浜口ウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】浜口 弘睦
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-111388(JP,U)
【文献】登録実用新案第3152971(JP,U)
【文献】特開平6-191468(JP,A)
【文献】特開2017-202714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0121166(US,A1)
【文献】特開昭60-209379(JP,A)
【文献】中国実用新案第203094412(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 34/23
B63C 9/02
B63B 59/02
B63B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に並べて設けられた第1小舟および第2小舟を有する船体と、
前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に架け渡すようにこれらの並び方向へ延びて設けられ、前記第1小舟および前記第2小舟に浮力を与えるとともに、前記第1小舟および前記第2小舟を互いに連結する連結フロート体と、
前記連結フロート体に対向する前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に設けられた第1嵌合片と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれに対向する前記連結フロート体の側面に設けられ、前記第1嵌合片に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片とを有する嵌合部と、
前記連結フロート体を前記第1小舟および前記第2小舟に対して水平方向から押し当てる押当て部とを備え、
前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の一方は、水平方向へ向けて突出する凸部として構成されており、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の他方は、前記凸部を水平方向から受け入れる凹部として構成されて
おり、
前記凸部の上面および下面は、先端へ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように形成されており、
前記凹部の上面および下面は、奧端へ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように形成されており、
前記凸部と前記凹部とを嵌め合わせたとき、前記凸部の上面および下面が前記凹部の上面および下面に接触するとともに、前記凸部の先端と前記凹部の奧端との間に空間が構成される、ボート。
【請求項2】
前記凸部は、台形の断面を有して前記第1小舟および前記第2小舟の並び方向へ延びるブロック状に形成されており、
前記凹部は、台形の断面を有して前記第1小舟および前記第2小舟の並び方向へ延びる溝状に形成されている、
請求項1に記載のボート。
【請求項3】
前記連結フロート体は、多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されている、
請求項1または2に記載のボート。
【請求項4】
水平方向に並べて設けられた第1小舟および第2小舟を有する船体と、
前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に架け渡すようにこれらの並び方向へ延びて設けられ、前記第1小舟および前記第2小舟に浮力を与えるとともに、前記第1小舟および前記第2小舟を互いに連結する連結フロート体と、
前記連結フロート体に対向する前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に設けられた第1嵌合片と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれに対向する前記連結フロート体の側面に設けられ、前記第1嵌合片に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片とを有する嵌合部と、
前記連結フロート体を前記第1小舟および前記第2小舟に対して水平方向から押し当てる押当て部とを備え、
前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の一方は、水平方向へ向けて突出する凸部として構成されており、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の他方は、前記凸部を水平方向から受け入れる凹部として構成されて
おり、
前記凸部は、多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されている、ボート。
【請求項5】
水平方向に並べて設けられた第1小舟および第2小舟を有する船体と、
前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に架け渡すようにこれらの並び方向へ延びて設けられ、前記第1小舟および前記第2小舟に浮力を与えるとともに、前記第1小舟および前記第2小舟を互いに連結する連結フロート体と、
前記連結フロート体に対向する前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に設けられた第1嵌合片と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれに対向する前記連結フロート体の側面に設けられ、前記第1嵌合片に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片とを有する嵌合部と、
前記連結フロート体を前記第1小舟および前記第2小舟に対して水平方向から押し当てる押当て部とを備え、
前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の一方は、水平方向へ向けて突出する凸部として構成されており、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の他方は、前記凸部を水平方向から受け入れる凹部として構成されて
おり、
前記押当て部は、帯状の締付けベルトとベルト締め具とを有しており、
前記締付けベルトは、前記連結フロート体の外側の側面に巻かれて前記船体に固定されており、
前記ベルト締め具で前記締付けベルトを締めたとき、前記連結フロート体が前記締付けベルトで締め付けられて、前記第1小舟および前記第2小舟に押し当てられる、ボート。
【請求項6】
前記押当て部は、前記船体の船底部の上面に設けられた環状の第1リングと、前記船体の船底部の下面に設けられた環状の第2リングとを有しており、
前記締付けベルトは、前記第1リングおよび前記第2リングに挿通されて、前記連結フロート体の外側の側面において二重となるように環状に構成されており、
前記ベルト締め具で前記締付けベルトを締めたとき、前記連結フロート体が前記締付けベルトの二重の部分で締め付けられて、前記第1小舟および前記第2小舟に押し当てられる、
請求項5に記載のボート。
【請求項7】
前記連結フロート体の外側の側面は、その断面が円弧状に湾曲する曲面に形成されている、
請求項5または6に記載のボート。
【請求項8】
前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれは、平面視で四角形の船底部と、前記船底部の前端縁、後端縁、左端縁および右端縁から立ち上がって設けられた前壁部、後壁部、左壁部および右壁部とを有している、
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のボート。
【請求項9】
船首側に位置する前記連結フロート体の先端部は、先方へ向かって尖って形成されている、
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のボート。
【請求項10】
前記第1小舟および前記第2小舟は、荷室または荷台を有する軽自動車の前記荷室または前記荷台に収納可能な大きさに形成されている、
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害および水難事故における要救助者の救助やレジャー等で使用することができる分割可能なボートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船体を複数に分割して運搬および保管することができるボートがある。下記特許文献1(第1図)に記載された小舟装置は、この種のボートの一例であり、分割可能に構成された舟体と、2個の浮体とを備えている。舟体を構成する分割片である本体および連体は、小舟装置の進行方向に並べて配置されており、これらは、左右一対の浮体を介して互いに連結されている。一方の浮体は、本体および連体のそれぞれの左側面に面接触した状態で、これらに対してボルトおよびナットを用いて固定されている。他方の浮体は、本体および連体のそれぞれの右側面に面接触した状態で、これらに対してボルトおよびナットを用いて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1(第1図)に記載された小舟装置では、2個の浮体が本体および連体のそれぞれの側面に面接触した状態で、これらの側面にボルトおよびナットを用いて固定されていたので、ボルトおよびナットを含む浮体の接合部にガタツキが生じ易いという問題があった。また、このガタツキに起因して、浮体、本体および連体が損傷し易いという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、船体に対する連結フロート体の接合部にガタツキが生じることを抑制できる、ボートを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るボートの特徴は、水平方向に並べて設けられた第1小舟および第2小舟を有する船体と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に架け渡すようにこれらの並び方向へ延びて設けられ、前記第1小舟および前記第2小舟に浮力を与えるとともに、前記第1小舟および前記第2小舟を互いに連結する連結フロート体と、前記連結フロート体に対向する前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に設けられた第1嵌合片と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれに対向する前記連結フロート体の側面に設けられ、前記第1嵌合片に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片とを有する嵌合部と、前記連結フロート体を前記第1小舟および前記第2小舟に対して水平方向から押し当てる押当て部とを備え、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の一方は、水平方向へ向けて突出する凸部として構成されており、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の他方は、前記凸部を水平方向から受け入れる凹部として構成されており、前記凸部の上面および下面は、先端へ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように形成されており、前記凹部の上面および下面は、奧端へ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように形成されており、前記凸部と前記凹部とを嵌め合わせたとき、前記凸部の上面および下面が前記凹部の上面および下面に接触するとともに、前記凸部の先端と前記凹部の奧端との間に空間が構成されることにある。
【0007】
この構成によれば、第1嵌合片と第2嵌合片とが嵌合された状態において、第1嵌合片に対する第2嵌合片の嵌合方向(水平方向)に対して直交する方向への動き、すなわち、凸部を凹部に挿し込むときの挿込み方向(水平方向)に対して直交する方向への動きが規制される。また、連結フロート体は、押当て部によって第1小舟および第2小舟に対して水平方向から押し当てられるので、第1嵌合片と第2嵌合片との嵌合状態が保持される。したがって、第1小舟および第2小舟と連結フロート体とを嵌合構造によって強固に接合することが可能であり、船体(第1小舟および第2小舟)に対する連結フロート体の接合部にガタツキが生じることを抑制できる。また、第1嵌合片および第2嵌合片の一方および他方を、単純形状の凸部および凹部として簡単に構成することができる。また、凹部の上面と下面との間隔が開口端において広くなっており、かつ、凸部の上面と下面との間隔が先端において狭くなっているので、凹部に凸部を挿し込み易く、これらを互いに嵌合させ易い。また、凸部と凹部とを嵌め合わせたとき、凸部の先端と凹部の奧端との間に空間が構成されるので、凸部の上面および下面と凹部の上面および下面とを嵌合方向から押し当てて確実に密着させることができる。
【0008】
削除
【0009】
削除
【0010】
本発明に係るボートの他の特徴は、前記凸部は、台形の断面を有して前記第1小舟および前記第2小舟の並び方向へ延びるブロック状に形成されており、前記凹部は、台形の断面を有して前記第1小舟および前記第2小舟の並び方向へ延びる溝状に形成されていることにある。
【0011】
この構成によれば、ブロック状の凸部および溝状の凹部が、台形の断面を有して第1小舟および第2小舟の並び方向へ延びて形成されているので、捻れや撓みに対する船体(第1小舟および第2小舟)の強度を高めることができる。また、凸部と凹部とを広い面積で接触させることが可能であり、船体に対する連結フロート体の位置決め精度を高めることができる。
【0012】
本発明に係るボートの他の特徴は、前記連結フロート体は、多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されていることにある。
【0013】
この構成によれば、連結フロート体が多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されているので、安定した浮力を得ることができる。また、連結フロート体を任意の形状に簡単に形成することができる。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るボートの特徴は、水平方向に並べて設けられた第1小舟および第2小舟を有する船体と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に架け渡すようにこれらの並び方向へ延びて設けられ、前記第1小舟および前記第2小舟に浮力を与えるとともに、前記第1小舟および前記第2小舟を互いに連結する連結フロート体と、前記連結フロート体に対向する前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に設けられた第1嵌合片と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれに対向する前記連結フロート体の側面に設けられ、前記第1嵌合片に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片とを有する嵌合部と、前記連結フロート体を前記第1小舟および前記第2小舟に対して水平方向から押し当てる押当て部とを備え、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の一方は、水平方向へ向けて突出する凸部として構成されており、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の他方は、前記凸部を水平方向から受け入れる凹部として構成されており、前記凸部は、多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されていることにある。
【0015】
この構成によれば、第1嵌合片と第2嵌合片とが嵌合された状態において、第1嵌合片に対する第2嵌合片の嵌合方向(水平方向)に対して直交する方向への動き、すなわち、凸部を凹部に挿し込むときの挿込み方向(水平方向)に対して直交する方向への動きが規制される。また、連結フロート体は、押当て部によって第1小舟および第2小舟に対して水平方向から押し当てられるので、第1嵌合片と第2嵌合片との嵌合状態が保持される。したがって、第1小舟および第2小舟と連結フロート体とを嵌合構造によって強固に接合することが可能であり、船体(第1小舟および第2小舟)に対する連結フロート体の接合部にガタツキが生じることを抑制できる。また、第1嵌合片および第2嵌合片の一方および他方を、単純形状の凸部および凹部として簡単に構成することができる。また、凸部が多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されているので、凸部においても安定した浮力を得ることができる。また、凸部を任意の形状に簡単に形成することができる。
【0016】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るボートの特徴は、水平方向に並べて設けられた第1小舟および第2小舟を有する船体と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に架け渡すようにこれらの並び方向へ延びて設けられ、前記第1小舟および前記第2小舟に浮力を与えるとともに、前記第1小舟および前記第2小舟を互いに連結する連結フロート体と、前記連結フロート体に対向する前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれの側面に設けられた第1嵌合片と、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれに対向する前記連結フロート体の側面に設けられ、前記第1嵌合片に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片とを有する嵌合部と、前記連結フロート体を前記第1小舟および前記第2小舟に対して水平方向から押し当てる押当て部とを備え、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の一方は、水平方向へ向けて突出する凸部として構成されており、前記第1嵌合片および前記第2嵌合片の他方は、前記凸部を水平方向から受け入れる凹部として構成されており、前記押当て部は、帯状の締付けベルトとベルト締め具とを有しており、前記締付けベルトは、前記連結フロート体の外側の側面に巻かれて前記船体に固定されており、前記ベルト締め具で前記締付けベルトを締めたとき、前記連結フロート体が前記締付けベルトで締め付けられて、前記第1小舟および前記第2小舟に押し当てられることにある。
【0017】
この構成によれば、第1嵌合片と第2嵌合片とが嵌合された状態において、第1嵌合片に対する第2嵌合片の嵌合方向(水平方向)に対して直交する方向への動き、すなわち、凸部を凹部に挿し込むときの挿込み方向(水平方向)に対して直交する方向への動きが規制される。また、連結フロート体は、押当て部によって第1小舟および第2小舟に対して水平方向から押し当てられるので、第1嵌合片と第2嵌合片との嵌合状態が保持される。したがって、第1小舟および第2小舟と連結フロート体とを嵌合構造によって強固に接合することが可能であり、船体(第1小舟および第2小舟)に対する連結フロート体の接合部にガタツキが生じることを抑制できる。また、第1嵌合片および第2嵌合片の一方および他方を、単純形状の凸部および凹部として簡単に構成することができる。また、荷締めベルトなどの既存の製品をそのまま押当て部として用いることができるので、製造コストを抑えることができる。
【0018】
本発明に係るボートの他の特徴は、前記押当て部は、前記船体の船底部の上面に設けられた環状の第1リングと、前記船体の船底部の下面に設けられた環状の第2リングとを有しており、前記締付けベルトは、前記第1リングおよび前記第2リングに挿通されて、前記連結フロート体の外側の側面において二重となるように環状に構成されており、前記ベルト締め具で前記締付けベルトを締めたとき、前記連結フロート体が前記締付けベルトの二重の部分で締め付けられて、前記第1小舟および前記第2小舟に押し当てられることにある。
【0019】
この構成によれば、締付けベルトを第1リングおよび第2リングに挿通させることによって、船体に対して締付けベルトを簡単に固定することができる。また、締付けベルトの二重の部分で連結フロート体を強固に締め付けることができる。
【0020】
本発明に係るボートの他の特徴は、前記連結フロート体の外側の側面は、その断面が円弧状に湾曲する曲面に形成されていることにある。
【0021】
この構成によれば、ベルト締め具で締付けベルトを締めるときに、連結フロート体の外側の側面(曲面)で締付けベルトを滑らせることができるので、締付けベルトを締め易い。
【0022】
本発明に係るボートの他の特徴は、前記第1小舟および前記第2小舟のそれぞれは、平面視で四角形の船底部と、前記船底部の前端縁、後端縁、左端縁および右端縁から立ち上がって設けられた前壁部、後壁部、左壁部および右壁部とを有していることにある。
【0023】
この構成によれば、第1小舟および第2小舟のそれぞれを独立した船艇として用いることができる。
【0024】
本発明に係るボートの他の特徴は、舟首側に位置する前記連結フロート体の先端部は、先方へ向かって尖って形成されていることにある。
【0025】
この構成によれば、ボートを推進させるときの連結フロート体の抵抗を低減することができる。
【0026】
本発明に係るボートの他の特徴は、前記第1小舟および前記第2小舟は、荷室または荷台を有する軽自動車の前記荷室または前記荷台に収納可能な大きさに形成されていることにある。
【0027】
この構成によれば、第1小舟および第2小舟を機動性に優れた軽自動車の荷室または荷台に収納することができるので、水害および水難事故における要救助者の救助現場に搬送し易い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係るボートの構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るボートの構成を示す分解斜視図である。
【
図7】嵌合部および押当て部の構成を示す断面図である。
【
図8】連結フロート体の構成を示す図であり、(A)は正面図、(B)は(A)におけるVIIIB-VIIIB線断面図、(C)は(A)におけるVIIIC-VIIIC線断面図である。
【
図9】嵌合部の変形例を示す断面図であり、(A)は第1変形例を示す断面図、(B)は第2変形例を示す断面図である。
【
図10】押当て部の変形例を示す断面図であり、(A)は第1変形例を示す断面図、(B)は第2変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るボートの実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るボート10の構成を示す斜視図である。
図2は、ボート10の構成を示す分解斜視図である。なお、以下の説明で用いる前後、左右および上下の各方向は、ボート10に乗った使用者から見た方向であり、図中に矢印で示す各方向と一致する。通常の使用時において、ボート10は前方へ向けて推進する。
【0030】
(ボート10の構成)
図1および
図2に示すボート10は、水害および水難事故における要救助者の救助やレジャー等で使用することができる船艇であり、分割可能に構成された船体12を備えている。本実施形態の船体12は、水平方向に並べて設けられた分割片としての第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18を有している。また、
図2に示すように、ボート10は、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18に浮力を与えるとともに、これらを互いに連結する2個の連結フロート体20と、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18と連結フロート体20とを嵌合構造により接合する嵌合部22と、嵌合部22の嵌合状態を保持するように連結フロート体20を第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18に対して水平方向から押し当てる押当て部24(
図1)とを備えている。
【0031】
図1および
図2に示すように、船体12は、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18をボート10の推進方向(前後方向)に並べて配置するとともに、これらを2個の連結フロート体20で左右方向から挟んで連結することによって構成されている。したがって、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18の並び方向は、推進方向(前後方向)と一致する。第1小舟14は、ボート10の船首を構成する部分であり、第3小舟18は、ボート10の船尾を構成する部分である。第2小舟16は、第1小舟14と第3小舟18とを繋ぐ部分であり、第3小舟18と同様に構成されている。したがって、第3小舟18が損傷した場合でも、第3小舟18と第2小舟16とを入れ替えて使用し続けることができる。
【0032】
以下では、第1小舟14および第2小舟16の構成について説明する。第3小舟18の構成は、第2小舟16の構成と同じであるため、その重複する説明は省略する。
図3は、第1小舟14の構成を示す斜視図であり、
図4は、第1小舟14の構成を示す平面図である。
図5は、第2小舟16の構成を示す斜視図であり、
図6は、第2小舟16の構成を示す平面図である。
図7は、嵌合部22および押当て部24の構成を示す断面図である。
【0033】
図3および
図4に示すように、第1小舟14は、上方へ向けて開かれた船内空間S1を構成する箱状の本体部26と、嵌合部22を構成する2個の第1嵌合片28とを備えている。また、
図7に示すように、第1小舟14は、押当て部24を構成する第1リング30および第2リング32を備えている。
【0034】
図3に示すように、本体部26は、ボート10の船底を構成する平面視で四角形の板状の船底部34と、船底部34の前端縁、後端縁、左端縁および右端縁から立ち上がって設けられた前壁部36、後壁部38、左壁部40および右壁部42とを有している。前壁部36は、ボート10の船首を構成する板状の部分であり、船底部34の上面に対して前斜め上方へ向かって傾斜して設けられている。左壁部40および右壁部42は、ボート10の左舷および右舷を構成する板状の部分であり、船底部34の上面に対して垂直に設けられている。後壁部38は、第1小舟14を単独で使用するときに、第1小舟14の船尾を構成する板状の部分であり、船底部34の上面に対して垂直に設けられている。
【0035】
本実施形態の本体部26は、硬質ウレタン発泡体で構成されている。硬質ウレタン発泡体は、多数の独立気泡が集合したプラスチック発泡体であり、NCO(イソシアネート)基を2個以上有するポリイソシアネートと、OH(ヒドロキシル)基を2個以上有するポリオールとを、触媒(例えば、アミン化合物)、発泡剤(例えば、水やフルオロカーボン)および整泡剤(例えば、シリコーンオイル)などと混合し、泡化反応と樹脂化反応とを同時に起こさせることによって製造される。
【0036】
本体部26のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、本体部26の前後方向長さが1000mmに定められており、左右方向長さが1300mmに定められている。また、上下方向長さが320mmに定められており、前壁部36の傾斜角度が65度に定められている。このサイズは、軽自動車の荷室または荷台に収納可能な大きさである。この場合、荷室を有する軽自動車とは、運転席および助手席からなる前席と荷室とが共通の1つの屋根で覆われた荷室一体型の4輪自動車である。また、荷台を有する軽自動車とは、運転席および助手席からなる前席が屋根で覆われるとともにこの前席の後方に屋根によって前席の屋根では覆われずまたは前席の屋根とは別体の屋根で覆われた荷台が一体化した4輪自動車である。
【0037】
図3および
図4に示す第1嵌合片28は、
図7に示す嵌合部22の一部である。したがって、第1嵌合片28の構成については、後述する嵌合部22の説明において詳細に説明する。また、第1リング30および第2リング32は、
図7に示す押当て部24の一部である。したがって、第1リング30および第2リング32の構成については、後述する押当て部24の説明において詳細に説明する。
【0038】
図3および
図4に示すように、第1小舟14は、さらに4個の取っ手44と、2本の安全ロープ46と、2本の内側把持ベルト48(
図3)と、2本の外側把持ベルト50(
図3)とを有している。
【0039】
図4に示す取っ手44および安全ロープ46は、ボート10の使用者が手で掴む部分である。本実施形態では、2個の取っ手44が、左壁部40の上部の内側の側面40bに前後方向へ間隔を隔てて設けられており、他の2個の取っ手44が、右壁部42の上部の内側の側面42bに前後方向へ間隔を隔てて設けられている。また、1本の安全ロープ46が、前壁部36の上部の内側の側面36bに3個の支持部52を介して左右方向に延びるように設けられており、他の1本の安全ロープ46が、後壁部38の上部の内側の側面38bに3個の支持部54を介して左右方向に延びるように設けられている。
【0040】
図3に示す内側把持ベルト48は、ボート10の使用者が、手で掴んだり様々な用途のベルト等を通したりする部分である。本実施形態では、1本の内側把持ベルト48が、左壁部40の下部の内側の側面40bに前後方向へ延びて設けられており、他の1本の内側把持ベルト48が、右壁部42の下部の内側の側面42b(
図4)に前後方向へ延びて設けられている。これらの内側把持ベルト48は、シート状の固定部材56によって、側面40b,42b(
図4)に対して部分的に固定されており、固定されていない4個の部分で内側把持部48aが構成されている。したがって、内側把持部48aと側面40b,42b(
図4)との間には、隙間が生じており、この隙間に手を入れたり、ベルトを通したりすることができる。なお、
図3において、内側把持ベルト48の固定された部分は、固定部材56で隠れて見えない。
【0041】
図3に示す外側把持ベルト50は、ボート10の使用者が、手で掴んだり様々な用途のベルト等を通したりする部分である。本実施形態では、1本の外側把持ベルト50が、左壁部40の下部の外側の側面40a(
図4)に前後方向へ延びて設けられており、他の1本の外側把持ベルト50が、右壁部42の下部の外側の側面42aに前後方向へ延びて設けられている。これらの外側把持ベルト50は、シート状の固定部材58によって、側面40a,42a(
図4)に対して部分的に固定されており、固定されていない4個の部分で外側把持部50aが構成されている。したがって、外側把持部50aと側面40a,42a(
図4)との間には、隙間が生じており、この隙間に手を入れたり、ベルトを通したりすることができる。なお、
図3において、外側把持ベルト50の固定された部分は、固定部材58で隠れて見えない。
【0042】
図5および
図6に示すように、第2小舟16は、上方へ向けて開かれた船内空間S2を構成する箱状の本体部60と、嵌合部22を構成する2個の第1嵌合片28とを備えている。また、
図7に示す第1小舟14と同様に、押当て部24を構成する第1リング30および第2リング32を備えている。
図5および
図6に示すように、第2小舟16は、さらに4個の取っ手44と、2本の安全ロープ46と、2本の内側把持ベルト48(
図5)と、2本の外側把持ベルト50(
図5)とを有している。
【0043】
図5および
図6に示す本体部60は、ボート10の船底を構成する平面視で四角形の板状の船底部62と、船底部62の前端縁、後端縁、左端縁および右端縁から立ち上がって設けられた前壁部64、後壁部66、左壁部68および右壁部70とを有している。第2小舟16の本体部60は、前壁部64が船底部62の上面に対して垂直に設けられる点を除いて、第1小舟14の本体部26と同様に構成されている。また、
図5および
図6に示す第1嵌合片28、第1リング30、第2リング32(
図7)、取っ手44、安全ロープ46、内側把持ベルト48および外側把持ベルト50は、第1小舟14におけるこれらの部分とほぼ同様に構成されている。
【0044】
本体部60のサイズは、特に限定されるものではないが、本実施形態では、本体部60の前後方向長さが1000mmに定められており、左右方向長さが1300mmに定められている。また、上下方向長さが320mmに定められており、前壁部64の傾斜角度が90度に定められている。つまり、平面視において、第1小舟14と第2小舟16とは、同じ大きさの四角形に形成されており、運搬時や保管時には、これらを完全に重ね合わせることができる。そして、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18の全てを軽自動車の荷室または荷台に収納して運搬することができる。
【0045】
図8は、連結フロート体20の構成を示す図であり、
図8(A)は正面図、
図8(B)は
図8(A)におけるVIIIB-VIIIB線断面図、
図8(C)は
図8(A)におけるVIIIC-VIIIC線断面図である。
図2に示す連結フロート体20は、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18に浮力を与えるとともに、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18を互いに連結する部分であり、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18のそれぞれの側面14a,16a,18aに架け渡すようにこれらの並び方向(前後方向)へ延びて設けられている。なお、
図8(A),(B),(C)は、船体12の右側に配置される連結フロート体20を示している。
【0046】
図8(A),(C)に示すように、連結フロート体20は、その横断面が半円形となるように棒状に形成されている。つまり、連結フロート体20の内側の側面20aは、平坦に形成されており、連結フロート体20の外側の側面20bは、その断面が円弧状に湾曲する曲面に形成されている。また、
図8(B)に示すように、ボート10の船首側に位置する連結フロート体20の先端部20cは、先方へ向かって尖って形成されている。つまり、連結フロート体20の長さは、内側の側面20aにおいて最も長くなっており、先端部20cの外側の側面20bは、先端に向かうにつれて内側の側面20aに近づくように傾斜している。そして、連結フロート体20の内側の側面20aには、後述する嵌合部22を構成する第2嵌合片72が長さ方向へ延びて形成されている。
【0047】
図8(B),(C)に示すように、連結フロート体20は、ポリ塩化ビニル製の袋体74と、袋体74の内部に充填された硬質ウレタン発泡体76とを有している。連結フロート体20を製造する際には、まず、連結フロート体20の形状と同じ形状のキャビティを有する金型(図示省略)を準備する。続いて、このキャビティの内部に袋体74を配置し、その後、袋体74の内部に硬質ウレタン発泡体76を充填する。すると、袋体74が硬質ウレタン発泡体の圧力でキャビティの内面に押し当てられ、上記形状の連結フロート体20が得られる。硬質ウレタン発泡体76は、多数の独立気泡が集合したプラスチック発泡体であり、NCO(イソシアネート)基を2個以上有するポリイソシアネートと、OH(ヒドロキシル)基を2個以上有するポリオールとを、触媒(例えば、アミン化合物)、発泡剤(例えば、水やフルオロカーボン)および整泡剤(例えば、シリコーンオイル)などと混合し、泡化反応と樹脂化反応とを同時に起こさせることによって製造される。
【0048】
図2に示すように、嵌合部22は、連結フロート体20に対向する第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18のそれぞれの外側の側面14a,16a,18aに設けられた第1嵌合片28と、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18のそれぞれに対向する連結フロート体20の内側の側面20aに設けられ、第1嵌合片28に対して水平方向から嵌合される第2嵌合片72とを有している。
【0049】
本実施形態では、第1嵌合片28が「凸部」として構成されており、第2嵌合片72が当該凸部を水平方向から受け入れる「凹部」として構成されている。以下では、「凸部」としての第1嵌合片28を「第1嵌合片(凸部)28」と記載し、「凹部」としての第2嵌合片72を「第2嵌合片(凹部)72」と記載する。
【0050】
図3に示すように、第1嵌合片(凸部)28は、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18の並び方向(前後方向)へ延びる細長いブロック状の部分であり、その横断面および縦断面が台形となるように形成されている。つまり、第1嵌合片(凸部)28の上面28aおよび下面28bは、突出方向の先端28eへ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように傾斜する平坦面に形成されている。また、第1嵌合片(凸部)28の前面28cおよび後面28dは、突出方向の先端28eへ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように傾斜する平坦面に形成されている。本実施形態の第1嵌合片(凸部)28は、第1小舟14の本体部26や連結フロート体20と同様に、多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されている。
【0051】
図3に示すように、第1嵌合片(凸部)28には、左右方向に延びる複数(本実施形態で3個)の貫通孔28fが前後方向へ間隔を隔てて設けられている。
図7に示すように、各貫通孔28fには、ボルト78が挿通されている。第1嵌合片(凸部)28は、ボルト78およびナット80を用いて、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18の側面14a,16a,18a(
図2)に固定されている。
【0052】
図2に示す第2嵌合片(凹部)72は、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18の並び方向(前後方向)へ延びる溝状の部分であり、
図8(B),(C)に示すように、その横断面および縦断面が台形となるように形成されている。つまり、第2嵌合片(凹部)72の上面72aおよび下面72bは、奧端72eへ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように傾斜する平坦面に形成されており、第2嵌合片(凹部)72の前面72cおよび後面72dは、奧端72eへ向かうにつれて互いの間隔が狭くなるように傾斜する平坦面に形成されている。
図7に示すように、第1嵌合片(凸部)28と第2嵌合片(凹部)72とを嵌め合わせたとき、
図3に示す第1嵌合片(凸部)28の上面28aおよび下面28bが
図8(C)に示す第2嵌合片(凹部)72の上面72aおよび下面72bに接触する。このとき、
図7に示すように、第1嵌合片(凸部)28の先端28eと第2嵌合片(凹部)72の奧端72eとの間に空間Wが構成される。
【0053】
図7に示すように、押当て部24は、連結フロート体20を第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18(
図1)に対して水平方向から押し当てる部分であり、帯状の締付けベルト82とベルト締め具84とを有している。締付けベルト82は、連結フロート体20の外側の側面20bに巻かれて船体12に固定されている。本実施形態の押当て部24は、さらに、船体12の船底部12aの上面に設けられた環状の第1リング30と、船体12の船底部12aの下面に設けられた環状の第2リング32とを有している。締付けベルト82は、第1リング30および第2リング32に挿通されて、連結フロート体20の外側の側面20bにおいて二重となるように環状に構成されている。ベルト締め具84で締付けベルト82を締めたとき、連結フロート体20が締付けベルト82の二重の部分で締め付けられて、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18(
図1)に押し当てられる。
【0054】
(ボート10の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、
図7に示すように、第1嵌合片(凸部)28と第2嵌合片(凹部)72とが嵌合された状態において、第1嵌合片(凸部)28に対する第2嵌合片(凹部)72の嵌合方向(水平方向)に対して直交する方向への動き、すなわち、挿込み方向(水平方向)に対して直交する方向への動きが規制される。また、連結フロート体20は、押当て部24によって第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18に対して水平方向から押し当てられるので、第1嵌合片(凸部)28と第2嵌合片(凹部)72との嵌合状態が保持される。したがって、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18と連結フロート体20とを、嵌合構造によって強固に接合することが可能であり、船体12に対する連結フロート体20の接合部にガタツキが生じることを抑制できる。また、第1嵌合片28を単純形状の凸部として簡単に構成でき、第2嵌合片72を単純形状の凹部として簡単に構成できる。
【0055】
図8(C)に示す第2嵌合片(凹部)72の上面72aと下面72bとの間隔が開口端において広くなっており、
図3に示す第1嵌合片(凸部)28の上面28aと下面28bとの間隔が先端において狭くなっている。したがって、第2嵌合片(凹部)72に第1嵌合片(凸部)28を挿し込み易く、これらを互いに嵌合させ易い。また、
図7に示すように、第1嵌合片(凸部)28の先端28eと第2嵌合片(凹部)72の奧端72eとの間に空間Wが構成されるので、第1嵌合片(凸部)28の上面28aおよび下面28bと第2嵌合片(凹部)72の上面72aおよび下面72bとを嵌合方向から押し当てて確実に密着させることができる。
【0056】
図2に示すように、ブロック状の第1嵌合片(凸部)28および溝状の第2嵌合片(凹部)72が、台形の断面を有して第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18の並び方向へ延びて形成されているので、捻れや撓みに対する船体12の強度を高めることができる。また、第1嵌合片(凸部)28と第2嵌合片(凹部)72とを広い面積で接触させることが可能であり、船体12に対する連結フロート体20の位置決め精度を高めることができる。
【0057】
図7に示す連結フロート体20が多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されているので、安定した浮力を得ることができる。また、連結フロート体20を任意の形状に簡単に形成することができる。
【0058】
図2に示す第1嵌合片(凸部)28が多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されているので、第1嵌合片(凸部)28においても安定した浮力を得ることができる。また、第1嵌合片(凸部)28を任意の形状に簡単に形成することができる。
【0059】
図7に示す押当て部24として、荷締めベルトなどの既存の製品をそのまま用いることができるので、製造コストを抑えることができる。締付けベルト82を第1リング30および第2リング32に挿通させることによって、船体12に対して締付けベルト82を簡単に固定することができる。また、締付けベルト82の二重の部分で連結フロート体20を強固に締め付けることができる。さらに、ベルト締め具84で締付けベルト82を締めるときに、連結フロート体20の外側の側面(曲面)20bで締付けベルト82を滑らせることができるので、締付けベルト82を締め易い。
【0060】
図2に示すように、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18は、それらの船底部の全周に設けられた壁部を有しているので、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18を独立した船艇として用いることができる。
【0061】
図1に示すように、舟首側に位置する連結フロート体20の先端部20cは、先方へ向かって尖って形成されているので、ボート10を推進させるときの連結フロート体20の抵抗を低減することができる。
【0062】
図2に示す第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18は、軽自動車の荷室または荷台に収納可能な大きさに形成されているので、これらを機動性に優れた軽自動車に載せて、水害および水難事故における要救助者の救助現場に搬送し易い。
【0063】
(変形例)
なお、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、
図2に示す第1小舟14の本体部26、第2小舟16の本体部60および第1嵌合片(凸部)28が、多数の独立気泡を有する硬質ウレタン発泡体で構成されているが、これらのうちの少なくとも一つは、他のプラスチック材料、木材およびFRP(繊維強化プラスチック)などで構成されてもよいし、アルミニウムなどの金属材料で構成されてもよい。
【0064】
図2に示す連結フロート体20は、硬質ウレタン発泡体76に代えて、他の種類の発泡体で構成されてもよいし、空気を充填する方式が採用されてもよい。また、
図8(C)に示す連結フロート体20の断面形状は、半円形に代えて、四角形および三角形などの他の形状に形成されてもよい。
【0065】
図2に示す船体12は、第1小舟14と第2小舟16との境界部に後壁部38および前壁部64を有しており、第2小舟16と第3小舟18との境界部に後壁部66および前壁部64を有しているが、これらの壁部の少なくとも一つは省略されてもよい。
【0066】
図2に示す船体12は、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18を有しているが、第3小舟18は省略されてもよいし、図示しない第4小舟がさらに連結されてもよい。また、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18は、水平方向において、ボート10の推進方向(前後方向)とは異なる方向に並べられてもよい。例えば、推進方向(前後方向)に対して直交する方向(左右方向)に並べられてもよい。
【0067】
図9は、嵌合部22の変形例を示す断面図であり、(A)は第1変形例を示す断面図、(B)は第2変形例を示す断面図である。上記実施形態では、
図7に示すブロック状の第1嵌合片(凸部)28および溝状の第2嵌合片(凹部)72の断面が台形に形成されているが、これらの断面形状は、台形に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。例えば、
図9(A)に示すような半円形に形成されてもよいし、四角形および三角形などの他の形状に形成されてもよい。
【0068】
上記実施形態では、第1小舟14、第2小舟16および第3小舟18に設けられた第1嵌合片28(
図2)が「凸部」として構成され、連結フロート体20に設けられた第2嵌合片72(
図2)が「凹部」として構成されているが、
図9(B)に示すように、第1嵌合片28が「凹部」として構成され、第2嵌合片72が「凸部」として構成されてもよい。
【0069】
図10は、押当て部24の変形例を示す断面図であり、(A)は第1変形例を示す断面図、(B)は第2変形例を示す断面図である。上記実施形態では、
図7に示す押当て部24の締付けベルト82が、第1リング30および第2リング32に挿通されて、連結フロート体20の外側の側面20bにおいて二重となるように環状に構成されているが、締付けベルト82の取り付け方法は、これに限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0070】
例えば、
図10(A)に示すように、1本の締付けベルト82が、左側の第2リング32および右側の第2リング32に挿通されて、左右両側の連結フロート体20の外側の側面20bにおいて二重となるように環状に構成されてもよい。また、
図10(B)に示すように、第1リング30および第2リング32を省略し、1本の締付けベルト82を船体12の全周に巻いてもよい。さらに、第1リング30に代えて
図2に示す内側把持部48aを使用し、第2リング32に代えて
図2に示す外側把持部50aを使用してもよい。内側把持部48aおよび外側把持部50aは、前後方向に間隔を隔てて複数設けられているので、内側把持部48aおよび外側把持部50aを適宜選択することによって締付けベルト82の位置を調整することができる。
【符号の説明】
【0071】
S1,S2…船内空間、10…ボート、12…船体、14…第1小舟、16…第2小舟、18…第3小舟、20…連結フロート体、22…嵌合部、24…押当て部、26…本体部、28…第1嵌合片、30…第1リング、32…第2リング、72…第2嵌合片。