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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
F24F7/06 101Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020197978
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086131
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】早坂 大和
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-112251(JP,A)
【文献】実開昭47-024851(JP,U)
【文献】特開2017-067357(JP,A)
【文献】特表2017-532525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気開口から吸い込んだ気体を排気開口へ強制搬送する送風機と、前記送風機によって搬送される前記気体に触れるパネルと、前記パネルの温度を検知して検知信号を出力する温度センサとを備え
前記パネルは、前記吸気開口に吸気された前記気体を導いて前記送風機の吸込口へ吸い込ませる吸気案内パネルを含み、
前記吸気案内パネルは、前記吸込口側が下方に傾斜する傾斜面を有し、
前記温度センサは、前記吸気案内パネルにおける前記傾斜面の部分の温度を検知するように設けられていることを特徴とするレンジフード。
【請求項2】
前記温度センサは、前記吸気案内パネルの温度を前記吸気案内パネルの裏側で検知するように設けられていることを特徴とする請求項記載のレンジフード。
【請求項3】
前記温度センサは、前記吸気案内パネルの鉛直でない部分の温度を検知するように設けられていることを特徴とする請求項または記載のレンジフード。
【請求項4】
前記吸気案内パネルは略逆凹状に形成され、
前記吸気案内パネルの内側には、前記吸気案内パネルとの間を空気流路にするとともに周囲を前記吸気開口にした整流パネルが設けられ、
前記温度センサは、前記整流パネルの周縁よりも内側に設けられていることを特徴とする請求項何れか1項記載のレンジフード。
【請求項5】
前記気体の流路中には、流路面積を下流側へ向かって狭める狭小部が前記パネルによって形成され、前記温度センサは、前記狭小部の温度を検知するように設けられていることを特徴とする請求項1~何れか1項記載のレンジフード。
【請求項6】
前記温度センサは、検知温度が50℃以上65℃以下の特定の閾値を超えた場合に前記検知信号を出力することを特徴とする請求項1~何れか1項記載のレンジフード。
【請求項7】
前記温度センサを前記パネルに押し付ける押付け部材を設けたことを特徴とする請求項1~何れか1項記載のレンジフード。
【請求項8】
前記押付け部材と前記温度センサの間に弾性部材を介在したことを特徴とする請求項記載のレンジフード。
【請求項9】
当該レンジフードを操作するための操作信号と前記検知信号とを含む入力信号に応じて、前記送風機を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記検知信号によって過熱状態を感知した場合に、前記操作信号の入力を受け付けないことを特徴とする請求項1~何れか1項記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されるように、フードとフィルタと送風機を備え、前記送風機を駆動することで調理によって発生した燃焼ガス、油煙、臭気などを、フィルタを通して送風機の吐出口から排出するようにしたレンジフードファンがある。
このレンジフードファンは、前記送風機の吐出側部を閉鎖したり開放したりする電動式シャッタと、フード周辺の温度に応じてオンオフするスイッチ手段(例えばサーモスタット等)とを備えている。前記スイッチ手段は、流路外となる位置に設けられ、フード等に形成した貫通孔を介して、フード周辺の空気の温度を感知する。
この従来技術によれば、火災時や調理等によりフード周辺の空気が過熱上昇してフード周辺に達した場合に、この過熱空気をスイッチ手段により検知し、前記送風機を停止したり前記電動式シャッタを閉鎖状態にしたりする。このため、火炎が送風機の吐出口から吹き出して、ダクト火災等を発生するようなことを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011―058762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、例えばスイッチ手段の真下以外のコンロが過熱した場合等、スイッチ手段と過熱源との距離が離れるにつれて、応答遅れを生じ易くなる等、温度感知性能の低下が懸念される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
吸気開口から吸い込んだ気体を排気開口へ強制搬送する送風機と、前記送風機によって搬送される前記気体に触れるパネルと、前記パネルの温度を検知して検知信号を出力する温度センサとを備え前記パネルは、前記吸気開口に吸気された前記気体を導いて前記送風機の吸込口へ吸い込ませる吸気案内パネルを含み、前記吸気案内パネルは、前記吸込口側が下方に傾斜する傾斜面を有し、前記温度センサは、前記吸気案内パネルにおける前記傾斜面の部分の温度を検知するように設けられていることを特徴とするレンジフード。

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フードに吸い込まれる気体に熱せられたパネルの温度を感知するようにしているため、温度感知性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るレンジフードの一例を示す斜視図である。
図2】同レンジフードの要部縦断面図である。
図3】同レンジフードについて、図2と同じ断面を斜め下方側から視た要部断面斜視図である。
図4】同レンジフードについて、図2と同じ断面を斜め上方側から視た要部断面斜視図であり、フード天パネルを外した状態を示す。
図5】同レンジフードについて、図2と同じ断面を斜め上方側から視た要部断面斜視図であり、フード天パネルとセンサユニットを外した状態を示す。
図6】センサユニットの分解斜視図である。
図7】同レンジフードについて、図2と同じ断面位置における要部拡大縦断面図であり、気体の流れを二点鎖線で示している
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、吸気開口から吸い込んだ気体を排気開口へ強制搬送する送風機と、前記送風機によって搬送される前記気体に触れるパネルと、前記パネルの温度を検知して検知信号を出力する温度センサとを備えた。
この構成によれば、吸気開口から排気開口へ向かう気体の温度が上昇すると、この気体の熱が前記パネルに熱伝達し、前記パネルが温度上昇する。そして、この上昇したパネルの温度が、前記温度センサによって検知され、前記温度センサから検知信号が発せられる。このように、特許文献1に記載の発明のように流路外で気体の温度を直接検知するのでなく、吸い込まれる気体により熱せられたパネルの温度を検知するようにしているため、過熱源の距離等の影響を受け難く、温度感知性能が良好である。
【0009】
第二の特徴として、前記パネルは、前記吸気開口に吸気された気体を導いて前記送風機の吸込口へ吸い込ませる吸気案内パネルを含み、前記温度センサは、前記吸気案内パネルの温度を検知するように設けられている。
この構成によれば、より効率的に温度感知をすることができる。
【0010】
第三の特徴として、前記温度センサは、前記吸気案内パネルの温度を前記吸気案内パネルの裏側で検知するように設けられている。
この構成によれば、吸気開口に吸気された気体に含まれる油分等が温度センサに付着して温度感知性能が低下するのを防ぐことができる。
【0011】
第四の特徴として、前記温度センサは、前記吸気案内パネルの鉛直でない部分の温度を検知するように設けられている。
この構成によれば、上方へ向かう気体は主に鉛直でない部分に強く吹き付けられる。したがって、この部分に設けられた温度センサに、気体の熱を効率的に伝達することができる。
【0012】
第五の特徴として、前記吸気案内パネルは、傾斜面を有し、前記温度センサは、前記吸気案内パネルにおける前記傾斜面の部分を検知するように設けられている。
この構成によれば、前記吸気案内パネルに付着する水滴や油分等が、固着することなく自重により流れるため、汚れ等の蓄積に起因する熱伝達率の低下や応答性の低下を防ぐことができる。
【0013】
第六の特徴として、前記吸気案内パネルは略逆凹状に形成され、前記吸気案内パネルの内側には、前記吸気案内パネルとの間を空気流路にするとともに周囲を前記吸気開口にした整流パネルが設けられ、前記温度センサは、前記整流パネルの周縁よりも内側に設けられている。
この構成によれば、温度センサが直火等の熱源に曝されるのを整流板により阻むことができ、ひいては、誤検知や温度感知性能の低下等を防ぐことができる。
【0014】
第七の特徴として、前記気体の流路中には、流路面積を下流側へ向かって狭める狭小部が前記パネルによって形成され、前記温度センサは、前記狭小部の温度を検知するように設けられている。
この構成によれば、前記狭小部により気体流路を流れる気体の流速を上げることができ、このため、気体から前記狭小部に伝わる熱の熱伝達率を向上することができる。
【0015】
第八の特徴として、前記温度センサは、検知温度が50°C以上65°C以下の特定の閾値を超えた場合に前記検知信号を出力する。
この構成によれば、適切に火災等の過熱状態を検知することができる。
【0016】
第九の特徴は、前記温度センサを前記パネルに押し付ける押付け部材を設けた。
この構成によれば、温度センサをパネルに押さえつけて密着させることができ、パネルと温度センサの間の熱伝達性を向上することができる。
【0017】
第十の特徴は、前記押付け部材と前記温度センサの間に弾性部材を介在した。
この構成によれば、温度センサをパネルに押し付けた際の押付け力を安定させて、温度感知性能を向上することができる。
【0018】
第十一の特徴は、当該レンジフードを操作するための操作信号と前記検知信号とを含む入力信号に応じて、前記送風機を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記検知信号によって過熱状態を感知した場合に、前記操作信号の入力を受け付けない。
この構成によれば、過熱状態を感知した場合に、送風機が意図せずに操作されてしまうのを防ぐことができる。
【0019】
<具体的実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は、本発明に係るレンジフードAの一例を示す。
レンジフードAは、吸気開口10aから排気開口10bへわたる空気流路を形成する筐体10と、筐体10内にて気体を吸気開口10aから排気開口10bへ強制搬送する送風機20と、送風機20と排気開口10bの間で気体を浄化するフィルターユニット30と、筐体10を構成する複数のパネルのうち、送風機20によって搬送される気体に触れるパネルの温度を検知して検知信号を出力するセンサユニット40と、送風機20やフィルターユニット30等を制御する制御部(図示せず)を備える。
このレンジフードAは、例えば、コンロ等の調理器具の上方側に、吸気開口10aを下方へ向けるようにして配設され、吸気開口10aに吸い込んだ気体(例えば、空気や煙、水蒸気等)の過熱状態をセンサユニット40の温度センサ41により検知し、温度センサ41から出力される検知信号に応じて、警報の発信や、送風機20の停止等、適宜な制御を行う。
【0021】
筐体10を構成するパネルには、上下方向へ延設された幕板パネル11や、幕板パネル11の下端に接続されたフード天パネル12、フード天パネル12の下側の空間を四方から囲むフードパネル13、フードパネル13内において吸気開口10aに吸気された気体を吸気開口10a面に沿う平面方向(図示例によれば水平方向)へ導いた後に送風機20の吸込口20aへ吸い込ませる吸気案内パネル14、フードパネル13の下方側に固定された整流パネル15等が含まれる。
【0022】
幕板パネル11は、複数のパネルから送風機20の周囲を全体的又は部分的に覆うように構成される。図示例の幕板パネル11は、前側を覆う矩形状の正面パネル11aと左右対称の側板11b,11cとから平面視凹状に構成される。
これら正面パネル11a及び側板11b,11cの上端部は、矩形状の上面パネル11dにより覆われている。
正面パネル11a及び側板11b,11cの後ろ側(背部)は、送風機20を構成するパネルや、フィルターユニット30を構成するパネル等が露出しており、当該レンジフードAを躯体壁面等に取り付けるための掛止部(図示せず)が設けられる。
【0023】
また、幕板パネル11の上部側には、複数の貫通孔からなる排気開口10bが設けられる。この排気開口10bは、正面パネル11a及び側板11b,11cに対しそれぞれ設けられ、送風機20によって強制搬送されフィルターユニット30を通過した空気を筐体10外へ排出する。
【0024】
フード天パネル12は、略矩形平板状のパネルであり、その後部中央側に、送風機20の吸込口20aを含む開口を有する(図2参照)。
【0025】
フードパネル13は、フード天パネル12の下方側の空間を四方から囲む側壁部13aと、これら四つの側壁部13aからフード内側へ所定量延設された下面部13bとを有する。
【0026】
吸気案内パネル14は、略逆凹状に形成され、送風機20の吸込口20aを形成した凹部内底面部14a(別表現をすれば上底面)と、この凹部内底面部14aの周縁から吸気開口10aへ向かって延設された内側面14bとを有する。
なお、図示例によれば、これらフードパネル13と吸気案内パネル14は、一体の部材であるが、別体の部材を接続したものとすることも可能である。
【0027】
凹部内底面部14aの後部側には、送風機20の吸込口20aに連通する矩形状の開口が形成される。
凹部内底面部14aは、前記開口の周囲を略水平な矩形状の平坦面14a1とし、この平坦面14a1の周囲に傾斜面14a2を有する。
【0028】
傾斜面14a2は、流路の下流へ向かって下り勾配に形成される(図7参照)。この傾斜面14a2は、図示例によれば平坦面状であるが、曲面状であってもよい。
傾斜面14a2の下流側は、上記した平坦面14a1に連続する。そして、傾斜面14a2の上流側は、内側面14bに連続する。
【0029】
そして、上記構成の傾斜面14a2は、後述する整流パネル15との間の気体流路中に、その流路面積を下流側へ向かって狭める狭小部10cを形成している。
すなわち、この狭小部10cは、吸気案内パネル14の傾斜面14a2と、略水平に配設された整流パネル15とにより構成され、これら傾斜面14a2と整流パネル15の上面との間隔を、下流側へ向かって徐々に狭めている。
【0030】
内側面14bは、上述した下面部13bの内縁から立ち上がって吸込口20a側へ傾斜する平坦状の面である。
下面部13bと内側面14bとは、凸曲面を介して滑らかに連続している。そして、内側面14bと凹部内底面部14aの傾斜面14a2とは、凹曲面を介して滑らかに連続している(図7参照)。
【0031】
整流パネル15は、吸気案内パネル14の内側の空間に設けられ、吸気案内パネル14との間を空気流路にするとともに、周囲に吸気開口10aを確保している。
詳細に説明すれば、この整流パネル15は、吸気案内パネル14よりも小さい平面視略矩形状であって且つ略凹状に形成され、周縁側から部分的に上方へ突出する複数の係止部15aによって吸気案内パネル14に係止されている。
この整流パネル15内の底面は、吸気案内パネル14から垂れる結露水や油等を捕捉する機能を有する。また、整流パネル15と吸気案内パネル14の間の空間は、吸気開口10aから吸い込まれる気体を、その流速を高めて送風機20の吸込口20aへ導く流路として機能する。
【0032】
送風機20は、図示例によれば、吸込口20a上方に位置する吸入室21と、この吸入室21の下流側にベルマウス22を介して連通するファン室23と、ファン室23内で回転して気体を吐出口20bへ強制搬送する回転羽根24と、回転羽根24を駆動回転するモータ25とを備える(図2参照)。
【0033】
回転羽根24は、図示例によれば、回転中心側に吸い込む気体を遠心方向へ吐出する多翼ファンである。また、モータ25は、制御部(図示しない制御回路)によって制御された電動モータであり、その回転軸に回転羽根24を固定している。
これら回転羽根24及びモータ25は、回転軸を傾斜させてファン室23内に支持される。
なお、送風機20の他例としては、プロペラファン等を具備する他のタイプの送風機に置換することが可能である。
【0034】
送風機20の吐出口20bの下流側は、中継菅26を介して、ダンパーユニット27に接続される。
ダンパーユニット27は、電動モータ27aの駆動力により略円形のダンパー板27bを回転させて、菅27c内の流路を開閉したり流路面積を増減したりする装置である。
【0035】
ダンパーユニット27の下流側は、中継室28に連通し、中継室28の更に下流側にフィルターユニット30が設けられる。
【0036】
フィルターユニット30は、空気流通方向に間隔をあけて複数(図示例によれば二つ)設けられる。
このフィルターユニット30は、煙除去や、脱臭、除湿、油分除去等、当該レンジフードAの使用目的に応じて適宜な態様のものが単数又は複数用いられる。
そして、このフィルターユニット30の下流側は、排気開口10bを介して、レンジフードAの外部(図示例によれば室内)に連通する。
【0037】
センサユニット40は、コンロ等の直火に曝されるのを阻むように、下方側から視て整流パネル15の周縁よりも内側であって、吸気案内パネル14の裏面側に、ブラケット16等を介して装着されている(図5参照)。
【0038】
このセンサユニット40は、図6に示すように、温度センサ41と、この温度センサ41を吸気案内パネル14の傾斜面14a2に押し付ける押付け部材42と、押付け部材42と温度センサ41に介在する弾性部材43とを一体的に具備している。
【0039】
温度センサ41は、吸気案内パネル14の鉛直でない部分(図示例によれば傾斜面14a2)の温度を、吸気案内パネル14の裏側で検知し、その検知信号を無電圧の接点信号(詳細には、ONからOFFに変化する接点信号、又はOFFからONに変化する接点信号)として出力する。
ここで、前記「裏側」とは、吸気開口10a側(図示例によれば下側)から視た吸気案内パネル14の裏側を意味する。
【0040】
この温度センサ41は、外観視略筒状のセンサ本体部41aと、このセンサ本体部41aの外周面に接する感熱部41bとを具備し、温度変化に伴う磁性の変化により無電圧接点をON/OFFさせるものであり、感温リードスイッチ等と呼称される場合もある。
【0041】
センサ本体部41aは、検知した検知温度が、50°C以上65°C以下の特定の閾値を超えた場合に、無電圧接点信号である検知信号を出力する。前記閾値は、吸気開口10aに吸い込まれる気体が過熱状態であることを判定するための基準値である。
【0042】
仮に、前記閾値を前記範囲よりも小さくした場合には、吸気開口10aに吸い込まれる気体が、通常の調理により温度上昇した場合でも、温度センサ41により検知信号を出力してしまうおそれがある。
また、仮に、前記閾値を前記範囲よりも大きくした場合には、吸気開口10aに吸い込まれる気体が検知すべき過熱状態になっても温度センサ41が反応しない等、温度センサ41の応答性が低下するおそれがある。
そこで、本実施の形態の一例では、前記閾値を上記範囲内に設定し、特に好ましくは60°Cに設定している。
【0043】
温度センサ41は、外観視略筒状のセンサ本体部41aと、一端側をセンサ本体部41aに巻き付けるとともに他端側を延設して傾斜面14a2に接した感熱部41bとを一体的に備える。
【0044】
センサ本体部41aは、略円筒状の容器内に、永久磁石や、磁性材料からなる前記無電圧接点等を具備し、前記無電圧接点によるON/OFF信号をリード線によって外部に引き出すようにしている。
【0045】
感熱部41bは、熱伝導性の良好な金属板材を曲げ加工してなり、その一端側をセンサ本体部41aの周囲に巻き付けるように接触させ、その他端側に、傾斜面14a2の裏面に接触する平板部41b1を有する。
平板部41b1における傾斜面14a2との接触面には、必要に応じて、熱伝達性を向上するための被膜等が設けられる。
【0046】
押付け部材42は、弾性的に撓み可能な金属材料を曲げ形成してなり、一端側の止着片部42aを筐体10に止着して片持ち梁状に設けられ、その他端側のセンサ保持部42bにより温度センサ41を保持して傾斜面14a2に押し付けている。
【0047】
センサ保持部42bは、温度センサ41のセンサ本体部41aに嵌り合う切欠部42b1と、弾性部材43を押圧する押圧片部42b2とを一体に有する。
【0048】
押圧片部42b2は、止着片部42aに対し弾性的に撓み可能な平板状に形成される。この押圧片部42b2は、後述する弾性部材43を介して、感熱部41bの平板部41b1を押圧するとともに、この押圧状態で弾性的に撓んでいる。
【0049】
弾性部材43は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から平板状に形成される。この弾性部材43は、厚み方向の一方の面を、接着剤を介して押付け部材42の押圧片部42b2に接着するとともに、その他方の面を温度センサ41の平板部41b1に接触させて、厚み方向へ弾性的に収縮している。
【0050】
また、制御部(図示せず)は、当該レンジフードAを操作するための操作信号や、温度センサ41による検知信号等、これら入力信号に応じて、送風機20やダンパーユニット27等の各機器を制御したり、所定の信号を出力したりする。ここで、前記操作信号には、フードパネル13に露出した操作スイッチ13cによる操作信号や、図示しないリモコンスイッチにより操作信号、当該レンジフードAの下方の調理器具(例えばコンロ等)の操作に応じて発信される連動信号等を含む。
詳細に説明すれば、前記制御部は、前記検知信号(具体的には、温度センサ41の感知温度が上記閾値を超えたことによる無電圧接点信号)によって過熱状態を感知した場合に、前記操作信号の入力を受け付けない。このような制御によれば、火災等に起因した過熱検知状態である場合に、意図しない操作により火災が拡大するようなことを防ぐことができる。
なお、他例としては、前記制御部が、温度センサ41の故障を感知した場合に、前記操作信号の入力を受け付けないようにすることも可能である。ここで、温度センサ41の故障を感知する手段は、温度センサ41自体が発する故障信号を感知するようにしてもよいし、温度センサ41のリード線の断線を検知して温度センサ41の故障とみなすようにしてもよく、さらに温度センサ41以外の装置により温度センサ41の故障を感知するようにしてもよい。
【0051】
また、前記制御部は、温度センサ41による検知信号の入力があった場合に、電動モータ27a、照明(図示せず)、及びダンパーユニット27への運転信号を即時遮断する。このような制御によれば、当該レンジフードA内に火炎等を吸込んでしまうのを抑制することができる。
さらに、前記制御部は、温度センサ41による検知信号の入力があった場合に、報知部による通知出力を行う。ここで、前記「報知部による通知出力」は、例えば、操作スイッチ13cに設けられたランプの点滅や、図示しないスピーカーによる警報音(ブザー音)の出力等とすればよい。このような制御によれば、使用者等が、火災等による過熱検知状態であることを素早く知ることができる。
【0052】
次に、上記構成のレンジフードAについて、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
モータ25への通電により送風機20が駆動すると、吸気開口10aから吸い込まれる気体が、筐体10内の流路を通って排気開口10bへ強制搬送される。
例えば、コンロ火災等に起因して、吸気開口10aに吸い込まれる気体が過熱状態になると、この気体の熱が、吸気案内パネル14の傾斜面14a2に熱伝達し、傾斜面14a2が温度上昇する。そして、この上昇した傾斜面14a2の温度が、温度センサ41によって検知され、温度センサ41から検知信号が発せられる。この検知信号に応じて、レンジフードAの制御部(図示しない制御回路)は、送風機20の停止や、ダンパーユニット27による流路の閉鎖等の適宜な制御や、警報の出力を行う。
【0053】
特に、本実施の形態の好ましい一例によれば、温度センサ41により検知される部分を鉛直でない傾斜面14a2にするとともに、この傾斜面14a2と整流パネル15によって狭小部10cを形成しているため、熱感知性能が良好である。
【0054】
詳細に説明すれば、上方へ向かう気体は、鉛直状の面に対してよりも、鉛直でない面に対し強く吹き付けられる。このため、鉛直でない傾斜面14a2では、該面が仮に鉛直である場合よりも、熱伝達の効率がよい。
そして、狭小部10cでは、気体の流速が速くなるため、気体から傾斜面14a2へ伝わる熱の熱伝達率が向上する上、付着した油分を流動させて固着を防ぐことができる。
しかも、傾斜面14a2が下流方向へ下り傾斜しているため、付着した油分や水滴等を重力によっても流し易い。また、下流方向へ向かう気体の流れが、付着した油分や水滴等を流すのを補助する。したがって、油分や水滴等による熱伝達効率の低下を防ぐことができる。
【0055】
また、温度センサ41は、整流パネル15の周縁よりも内側において吸気案内パネル14の裏側に位置するため、直火等の熱源の悪影響を受け難い。ひいては、直火を受けることに起因する誤検知や、温度センサ41の故障等を低減することができる。
【0056】
さらに、押付け部材42及び弾性部材43によって、温度センサ41を傾斜面14a2に密着させ強く押し付けるとともに、その押し付け力を安定させることができ、このことによっても熱伝達効率を向上することができる。
【0057】
上記したように、レンジフードAによれば、流動する気体からパネルに熱伝達した温度を検知するようにしているため、単に雰囲気を温度センサにより直接検知するようにした従来技術等と比較し、気体の過熱状態を効果的に感知することができる。したがって、例えば、コンロ等の熱源が温度センサの直下からずれた位置にある場合でも、この熱源による過熱状態を精度よく感知できる上、応答性も良好である。
【0058】
<変形例>
なお、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、吸気案内パネル14の傾斜面14a2の温度を、温度センサ41により検知するようにしたが、他例としては、吸気案内パネル14の平坦面14a1や内側面14b等、傾斜面14a2以外の部分の温度を温度センサ41により検知する態様とすることも可能である。
【0059】
さらに他例としては、吸気開口10aから吸込んだ気体に触れるパネルを温度センサ41により感知するようにすれば、吸気案内パネル14以外のパネルを温度センサ41により感知する構成とすることも可能である。
すなわち、他例としては、整流パネル15の温度を温度センサ41により感知する態様や、吸入室21、ファン室23、中継菅26、又は中継室28を構成するパネルを温度センサ41により感知する態様、排気開口10bの近傍で幕板パネル11を温度センサ41により感知する態様等とすることも可能である。
【0060】
また、上記実施態様によれば、温度センサ41として接触式の感温リードスイッチを用いたが、温度センサ41の他例としては、バイメタル式サーモスイッチや、熱電対式の温度センサ、測温度抵抗体を用いた温度センサ、サーミスタ式温度センサ、放射温度計等を用いた非接触式温度センサ等、感温リードスイッチ以外の温度センサやサーモスイッチ等を用いることも可能である。
【0061】
また、上記実施態様によれば、無電圧の接点信号を出力する温度センサ41を用いたが、他例としては、0―5V等の有電圧信号を出力する温度センサを用いることも可能である。
【0062】
また、レンジフードAの筐体10を構成する複数種類のパネルは、その一部又は全部を一体のパネルにより構成したり、その一部をさらに複数のパネルから構成したりすることが可能である。すなわち、例えば、幕板パネル11とフード天パネル12を一体にした態様や、フード天パネル12とフードパネル13を一体にした態様、フードパネル13と吸気案内パネル14を別体にした態様等とすることが可能である。
【0063】
また、上記実施態様によれば、フードパネル13に吸気案内パネル14を一体に設けたが、他例としては、吸気案内パネル14を省いて、フードパネル13自体が吸気案内パネルとして機能するようにすることも可能である。
【0064】
また、上記実施態様によれば、狭小部10cを傾斜面14a2と略平坦状の整流パネル15とによって構成したが、他例としては、整流パネル15に傾斜面を設けて、この傾斜面と吸気案内パネル14によって狭小部10cを構成することも可能である。
さらに他例としては、狭小部をベルマウス22(図2参照)としこのベルマウス22の温度を温度センサ41により検知する態様や、流路中に図示例以外の狭小部を設けてこの狭小部を温度センサ41により検知する態様等とすることも可能である。
【0065】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10:筐体
11:幕板パネル
12:フード天パネル
13:フードパネル
14:吸気案内パネル
14a:凹部内底面部
14a1:平坦面
14a2:傾斜面
14b:内側面
15:整流パネル
10a:吸気開口
10b:排気開口
20:送風機
30:フィルターユニット
40:センサユニット
41:温度センサ
42:押付け部材
43:弾性部材
A:レンジフード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7