(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】金属端子と回路基板の接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01C 10/00 20060101AFI20240821BHJP
H01C 1/01 20060101ALI20240821BHJP
H01C 1/02 20060101ALI20240821BHJP
H01C 10/38 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01C10/00 N
H01C1/01 S
H01C1/02 S
H01C10/38
(21)【出願番号】P 2020209134
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】趙 雲
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大介
【審査官】小南 奈都子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-103361(JP,A)
【文献】特開2011-135005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 10/00
H01C 1/01
H01C 1/02
H01C 10/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動子が摺接する抵抗体パターン及び導電体パターンと、前記摺動子が摺接しない配線パターンと、前記各パターンのそれぞれの一端にそれぞれ形成される端子接続パターンとを形成した回路基板と、
前記回路基板に形成した各端子接続パターンにそれぞれ当接される金属端子と、
前記各金属端子を当接した状態の回路基板の外周と裏面とに、前記抵抗体パターンと導電体パターンとを露出した状態で一体成形することで、前記回路基板の各端子接続パターンと前記各金属端子とを接続する基台と、
を有する金属端子と回路基板の接続構造
の製造方法において、
前記回路基板の各端子接続パターン上に前記各金属端子を当接し、当該当接した回路基板と金属端子の上下に金型を設置し、前記金型によって形成されるキャビティー内に、前記金型に設けた溶融樹脂注入用ゲートから溶融樹脂を射出することによって前記基台を成形し、当該成形する際の前記溶融樹脂注入用ゲートの開口の位置を、前記回路基板の隣接する抵抗体パターンと導電体パターンの間
の裏面、もしくは隣接する前記抵抗体パターンと配線パターンの間
の裏面、もしくは隣接する前記導電体パターンと配線パターンの間
の裏面に対向する位置
とし、
且つ、前記回路基板の隣接する前記抵抗体パターンと導電体パターンの間、もしくは隣接する前記抵抗体パターンと配線パターンの間、もしくは隣接する前記導電体パターンと配線パターンの間の内の、前記溶融樹脂注入用ゲートが対向しているパターン間以外のパターン間に位置決め穴を設けておき、前記当接した回路基板と金属端子の上下に金型を設置する際は、前記位置決め穴に前記金型からキャビティー内に突出する位置決めピンを挿入して、前記回路基板の前記基台成形時の位置決めを行うことを特徴とする金属端子と回路基板の接続構造
の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の金属端子と回路基板の接続構造
の製造方法であって、
前記金型の溶融樹脂注入用ゲートを接続することによって前記基台の裏面に形成される凸状の成形部分であるゲート接続部は、前記金属端子近傍に位置していることを特徴とする金属端子と回路基板の接続構造
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属端子と回路基板を成形樹脂からなる基台を用いて接続・固定する金属端子と回路基板の接続構造の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1(
図5~
図7など)に示すように、回路パターン(81)を形成してなるフレキシブル回路基板(80)と、端子板(90)とを用意し、フレキシブル回路基板(80)と端子板(90)とを金型内に収納し、その際、前記回路パターン(81)の一部に設けた端子パターン(83)と端子板(90)とを接続しておき、前記フレキシブル回路基板(80)の周囲の少なくとも前記端子板(90)と接続した部分を含む部分に形成した前記金型のキャビティー内に、溶融樹脂を充填し固化してケース(50)を成形することで、端子板(90)とフレキシブル回路基板(80)とを接続する接続構造が用いられている。
【0003】
溶融樹脂をキャビティー内に注入するゲートは、一般に、フレキシブル回路基板(80)の端子板(90)を当接する面の裏面(反対面)側、特に端子パターン(83)に回路パターン(81)を接続した部分の裏面近傍位置に設けられる。そしてこのゲート位置から溶融樹脂をキャビティー内に射出すれば、射出された溶融樹脂はフレキシブル回路基板(80)を端子板(90)に押し付けながら充填される。即ち、この方法を用いれば、キャビティー内へ溶融樹脂を充填しながら、同時にフレキシブル回路基板(80)を端子板(90)に押し付けて両者を確実に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フレキシブル回路基板(80)の、端子パターン(83)に回路パターン(81)を接続した部分近傍の裏面に向けて溶融樹脂を射出した場合、高温高圧の溶融樹脂によって、回路パターン(81)に損傷を生じる虞があった。特に回路パターン(81)が抵抗体パターンの場合、その抵抗値などが変化し、本来スライド式電子部品(スライドセンサなど)の出力には直線性が要求されるが、その要求が満足されなくなる虞があった。また回路パターン(81)が抵抗体パターン以外の各種パターンであっても、その損傷によって、当該電子部品の特性が満足されなくなる虞があった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、回路基板に形成した端子接続パターンと金属端子間の成形による接続が、前記端子接続パターンに接続した各種パターンを損傷することなく確実に行える金属端子と回路基板の接続構造の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、摺動子が摺接する抵抗体パターン及び導電体パターンと、前記摺動子が摺接しない配線パターンと、前記各パターンのそれぞれの一端にそれぞれ形成される端子接続パターンとを形成した回路基板と、前記回路基板に形成した各端子接続パターンにそれぞれ当接される金属端子と、前記各金属端子を当接した状態の回路基板の外周と裏面とに、前記抵抗体パターンと導電体パターンとを露出した状態で一体成形することで、前記回路基板の各端子接続パターンと前記各金属端子とを接続する基台と、を有する金属端子と回路基板の接続構造の製造方法において、前記回路基板の各端子接続パターン上に前記各金属端子を当接し、当該当接した回路基板と金属端子の上下に金型を設置し、前記金型によって形成されるキャビティー内に、前記金型に設けた溶融樹脂注入用ゲートから溶融樹脂を射出することによって前記基台を成形し、当該成形する際の前記溶融樹脂注入用ゲートの開口の位置を、前記回路基板の隣接する抵抗体パターンと導電体パターンの間の裏面、もしくは隣接する前記抵抗体パターンと配線パターンの間の裏面、もしくは隣接する前記導電体パターンと配線パターンの間の裏面に対向する位置とし、且つ、前記回路基板の隣接する前記抵抗体パターンと導電体パターンの間、もしくは隣接する前記抵抗体パターンと配線パターンの間、もしくは隣接する前記導電体パターンと配線パターンの間の内の、前記溶融樹脂注入用ゲートが対向しているパターン間以外のパターン間に位置決め穴を設けておき、前記当接した回路基板と金属端子の上下に金型を設置する際は、前記位置決め穴に前記金型からキャビティー内に突出する位置決めピンを挿入して、前記回路基板の前記基台成形時の位置決めを行うことを特徴としている。
本発明によれば、溶融樹脂注入用ゲートから射出された高温高圧の溶融樹脂が回路基板の裏面に衝突する位置は、回路基板に形成した各種パターンの間に対向する位置となるので、各種パターンの真後ろの裏面に直接溶融樹脂の熱と圧力が印加されることはなく、このため、各種パターンの損傷を防止することができる。これによって、回路基板に形成した端子接続パターンと金属端子間の成形による接続が、端子接続パターンに接続した各種パターンを損傷することなく確実に行える。
【0008】
また本発明によれば、回路基板の位置決め穴の位置と、基台裏面のゲート接続部の位置とが、干渉することなく、且つそれぞれ最適な位置に設置できる。これによって、基台成形時の回路基板の位置決めを確実に行いつつ、端子接続パターンと金属端子間の成形による接続を、各種パターンを損傷することなく確実に行える。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記金型の溶融樹脂注入用ゲートを接続することによって前記基台の裏面に形成される凸状の成形部分であるゲート接続部は、前記金属端子近傍に位置していることを特徴としている。
本発明によれば、ゲート接続部を金属端子近傍に設置したので、溶融樹脂注入用ゲートから射出された溶融樹脂は、回路基板裏面の各端子接続パターンに近い位置を押し上げ、これによって、端子接続パターンと金属端子間の成形による接続を、より確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回路基板に形成した端子接続パターンと金属端子間の成形による接続を、端子接続パターンに接続した各種パターンを損傷することなく、容易且つ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】ケース10から基台40を省略したときのフレキシブル回路基板11と金属端子31の状態を示す斜視図である。
【
図3】フレキシブル回路基板11と金属端子31の分解斜視図である。
【
図4】ケース10の金属端子31を取り付けた部分近傍を下側から見た要部斜視図である。
【
図5】ケース10の金属端子31を取り付けた部分近傍を上側から見た要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用したケース10を示す分解斜視図である。このケース10と、図示しない摺動子を取り付けた移動体と、図示しないカバーによってスライド式電子部品(スライド式可変抵抗器、スライドセンサ)が構成される。なお以下の説明において、「上」とはケース10内にインサート成形した回路基板(以下「フレキシブル回路基板」という)11を構成する合成樹脂フィルム13から見て抵抗体パターン15などを形成した面側方向をいい、「下」とはその反対面側方向をいうものとする。またケース10の長手方向(スライド方向A)に直交する方向を「幅方向」というものとする。
【0013】
図1に示すように、ケース10は、フレキシブル回路基板11と複数本(3本)の金属端子31とを基台40内にインサート成形して構成されている。基台40は、上面が開放された長尺の矩形箱型であって、底部41と、底部41の左右両側から立設してスライド方向(長手方向)Aに沿うように平行に延びる一対の側壁43とを有することで、両側壁43間に、図示しない摺動子を取り付けた移動体を収納する収納部45を形成して構成されている。また基台40の底部41の上面(収納部45の内底面)にはフレキシブル回路基板11の上面(特に下記する抵抗体パターン15と導電体パターン17)が露出している。
【0014】
図2は、ケース10から基台40を省略したときのフレキシブル回路基板11と金属端子31の状態を示す斜視図、
図3は、当該フレキシブル回路基板11と金属端子31の分解斜視図である。これらの図に示すように、フレキシブル回路基板11は、可撓性を有し帯状で長尺に形成された合成樹脂フィルム13の上面にスライド方向Aに向けて、3本の直線状のパターン(抵抗体パターン15と導電体パターン17と配線パターン19)を並列に形成し、それぞれのパターン15,17,19の同一側の端部に、各パターン15,17,19にそれぞれ接続する端子接続パターン21,23,25を形成して構成されている。抵抗体パターン15は抵抗値の大きい摺接パターンであり、導電体パターン17は抵抗値の小さい摺接パターンである。配線パターン19は抵抗値の小さい連結用パターンであり、抵抗体パターン15の端子接続パターン21を設けていない側の端部を端子接続パターン21側に引き出すためのパターンである。抵抗体パターン15と導電体パターン17の表面には摺動子が摺接するが、配線パターン19の表面には摺動子は摺接しない。端子接続パターン21,23,25は何れも抵抗値の小さい導体パターンであって、各パターン15,17,19の一端部から合成樹脂フィルム13の一端辺に至る位置まで形成されている。各端子接続パターン21,23,25の間には、小孔からなる樹脂導入孔27が形成されている。
【0015】
また、フレキシブル回路基板11の抵抗体パターン15と導電体パターン17の間であって、前記端子接続パターン21,23の近傍の位置には、このフレキシブル回路基板11を基台40にインサート成形する時の位置決めを行う円形の小孔からなる位置決め穴29が形成されている。
【0016】
金属端子31は、略帯状の金属板であり、その一方側を基板当接部33、他方側を端子部35としている。基板当接部33の幅寸法は、端子部35の幅寸法よりも大きく、前記端子接続パターン21,23,25の幅寸法と略同一に形成されている。なお、基台40の成形前は、金属端子31は折り曲げられていない。
【0017】
図4はケース10の金属端子31を取り付けた部分近傍を下側から見た要部斜視図、
図5はケース10の金属端子31を取り付けた部分近傍を上側から見た要部平面図、
図6は
図5と同一部分の要部裏面図、
図7は
図5のA-A断面拡大図である。これらの図に示すように、基台40の裏面の金属端子31を取り付けた部分近傍には、ゲート接続部47と、位置決めピン穴形成用凸部49が幅方向に並列に形成されている。ゲート接続部47は、基台40を成形する際に用いる下記する第2金型250の溶融樹脂注入用ゲート251を接続することによって形成される凸状の成形部分である。位置決めピン穴形成用凸部49は、基台40を成形する際に用いる下記する第1金型200の位置決めピン201によって形成される位置決めピン穴51によってその下面側に形成される凸部である。位置決めピン穴51は、フレキシブル回路基板11に設けた前記位置決め穴29に連続するように形成されている。
【0018】
次に、ケース10の製造方法について説明する。まずフレキシブル回路基板11の各端子接続パターン21,23,25上に、
図2に示すように、それぞれ金属端子31を当接したもの(但しこのとき各金属端子31は折り曲げられていない)を、下記する第1,第2金型200,250によってその上下から挟持する。
図8はこのときの
図7に相当する部分の断面図である。同図に示すように、このとき第1,第2金型200,250によって、前記基台40と同一形状のキャビティーCが形成される。またこのとき、同図に示すように、フレキシブル回路基板11の上面の各パターン15,17,19が設けられている部分は、第1金型200の基板当接面201に当接し、またフレキシブル回路基板11に設けた位置決め穴29には、第1金型200の基板当接面201から突出する円柱状の位置決めピン201が挿入されている。
【0019】
またこのとき、第2金型250に設けた溶融樹脂注入用ゲート251の開口251aは、前記フレキシブル回路基板11の抵抗体パターン15と配線パターン19の間の裏面に対向する位置に設けられている。
【0020】
そして、前記溶融樹脂注入用ゲート251からキャビティーC内に溶融樹脂を射出すると、溶融樹脂はまずフレキシブル回路基板11の抵抗体パターン15と配線パターン19の間の裏面に噴き付けられ、その後、キャビティーC内の各所を満たすように各方向に向かって進む。このため、最初に溶融樹脂注入用ゲート251から高温高圧の溶融樹脂が噴き付けられるフレキシブル回路基板11の上面側に、もしもパターン15又は17又は19が位置していると、当該パターン15又は17又は19が劣化などする虞がある。特に、抵抗体パターン15の場合は、その抵抗値が変化するなどの虞があり、その場合、その上を摺動子が摺動することで得られる出力が、例えばリニアな出力であった場合に、リニアでなくなるなど、性能上に問題を生じる虞がある。しかし本実施形態は、最初に溶融樹脂注入用ゲート251から高温高圧の溶融樹脂が噴き付けられるフレキシブル回路基板11の上面側に各パターン15,17,19を位置させないように構成したので、上記課題を解消することができた。
【0021】
また本実施形態においては、位置決めピン201によって、フレキシブル回路基板11の第1,第2金型200,250に対する位置を位置決めしているので、前記溶融樹脂の射出による強い力がフレキシブル回路基板11に印加されても、フレキシブル回路基板11がぶれたりする虞はなく、正確な位置に保持することができる。
【0022】
ゲート接続部47と位置決めピン穴51を、何れもフレキシブル回路基板11の金属端子31との接続部分近傍位置に設置したのは以下の理由による。
【0023】
即ち、ゲート接続部47をフレキシブル回路基板11の金属端子31との接続部分近傍位置に設置したのは、フレキシブル回路基板11の各端子接続パターン21,23,25近傍の裏面を、溶融樹脂注入用ゲート251から射出された溶融樹脂によって押し上げることで、各端子接続パターン21,23,25と金属端子31間の上下方向の当接状態を確実にした状態でキャビティーCの他の空間に当該溶融樹脂を満たすためである。
【0024】
同時に、位置決めピン穴51をフレキシブル回路基板11の金属端子31との接続部分近傍位置に設置したのは、溶融樹脂注入用ゲート251から射出された溶融樹脂がフレキシブル回路基板11の各端子接続パターン21,23,25近傍の裏面に衝突することで印加されるフレキシブル回路基板11への強い水平方向への力(振動)によって各金属端子31に対する各端子接続パターン21,23,25の水平方向の振動の虞を確実に防止するためである。
【0025】
従って、ゲート接続部47と位置決めピン穴51は、何れもフレキシブル回路基板11の金属端子31との接続部分近傍位置(即ち金属端子31近傍の限られたスペース)に設置する必要があり、且つ上述のように各パターン15,17,19を損傷などする虞を防止しなければならないので、本実施形態においては、ゲート接続部47を基台40裏面の、抵抗体パターン15と配線パターン19の間に対向する位置に設け、位置決めピン穴51を前記ゲート接続部47が対向しているパターン15,19間以外のパターン間である抵抗体パターン15と導電体パターン17の間に設置したのである。
【0026】
なお、ゲート接続部47を、抵抗体パターン15と配線パターン19の間に対向する位置に設ける代わりに、抵抗体パターン15と導電体パターン17の間に対向する位置に設けた場合は、位置決めピン穴51は抵抗体パターン15と配線パターン19の間に設ければよい。
【0027】
またフレキシブル回路基板11の各パターン15,17,19の配置の順番を、左右何れかの1辺側から抵抗体パターン15、導電体パターン17、配線パターン19の順番に配置した場合であって、ゲート接続部47を抵抗体パターン15と導電体パターン17の間に対向する位置に設けた場合は、位置決めピン穴51は導電体パターン17と配線パターン19の間に設ければよく、ゲート接続部47を導電体パターン17と配線パターン19の間に対向する位置に設けた場合は、位置決めピン穴51は抵抗体パターン15と導電体パターン17の間に設ければよい。
【0028】
さらにフレキシブル回路基板11の各パターン15,17,19の配置の順番を、左右何れかの1辺側から抵抗体パターン15、配線パターン19、導電体パターン17の順番に配置した場合であって、ゲート接続部47を抵抗体パターン15と配線パターン19の間に対向する位置に設けた場合は、位置決めピン穴51は配線パターン19と導電体パターン17の間に設ければよく、ゲート接続部47を配線パターン19と導電体パターン17の間に対向する位置に設けた場合は、位置決めピン穴51は抵抗体パターン15と配線パターン19の間に設ければよい。
【0029】
要は、位置決めピン穴51は、フレキシブル回路基板11の隣接する抵抗体パターン15と導電体パターン17の間、もしくは隣接する抵抗体パターン15と配線パターン19の間、もしくは隣接する導電体パターン17と配線パターン19の間の内の、ゲート接続部47が対向しているパターン間以外のパターン間に設置すればよい。
【0030】
但し、抵抗体パターン15は、フレキシブル回路基板11の両端側ではなく、本実施形態で示すように、導電体パターン17と配線パターン19の間、即ちフレキシブル回路基板11の中央寄りに設けることが望ましい。その理由は、抵抗体パターン15を合成樹脂フィルム13上の左右何れかの端に形成した場合、多数のパターン15,17,19の組を形成した合成樹脂フィルム13を、各組毎に外形プレスしてフレキシブル回路基板11を作成する際に、抵抗体パターン15が切断位置に近くなるので、当該切断の際に引っ張り力などが加わり、損傷して性能(出力を正確にリニアにするなど)に変化が生じてしまう虞があるためである。一方、導電体パターン17や配線パターン19は上記のように損傷が生じても、抵抗体パターン15の場合に比べて性能に対する影響が少ない。
【0031】
また、
図5,
図6に示すケース10において、ゲート接続部47の位置を、導電体パターン17の外側(抵抗体パターン15の反対側)、または配線パターン19の外側(抵抗体パターン15の反対側)に設けなかったのは、これらの位置にゲート接続部47を設けると、基台40の幅方向の中間位置よりもかなり外れた位置から溶融樹脂を注入することになるので、注入バランスが悪くなり、金属端子31とフレキシブル回路基板11の接続信頼性に支障を生じる虞があるからである。
【0032】
そして、キャビティーC内に充填した溶融樹脂を硬化させた後、第1,第2金型200,250を取り外し、さらにケース10から突出する前記金属端子31の端子部35を下方向に略直角に折り曲げれば、
図1に示すケース10が完成する。
【0033】
そして図示しない摺動子を取り付けた移動体をケース10の収納部45内に収納し、その上に図示しないカバーを被せて固定すれば、スライド式電子部品が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0034】
そして移動体をスライド方向Aに向けて移動すれば、摺動子が抵抗体パターン15と導電体パターン17上を摺動するので、各金属端子31間の抵抗値が変化する。上記実施形態ではスライド移動方向として直線方向を示したが、スライド移動方向は、円弧方向やその他の曲線方向など、直線方向以外の各種方向を含む概念である。
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、摺動子が摺接する抵抗体パターン15及び導電体パターン17と、摺動子が摺接しない配線パターン19と、前記各パターン15,17,19のそれぞれの一端にそれぞれ形成される端子接続パターン21,23,25とを形成したフレキシブル回路基板11と、フレキシブル回路基板11に形成した各端子接続パターン21,23,25にそれぞれ当接される金属端子31と、各金属端子31を当接した状態のフレキシブル回路基板11の外周と裏面とに、抵抗体パターン15と導電体パターン17とを露出した状態で一体成形することで、フレキシブル回路基板11の各端子接続パターン21,23,25と各金属端子31とを接続する基台40とを有し、基台40を成形する際に用いる溶融樹脂注入用ゲート251のゲート接続部47を、基台40裏面の、隣接する抵抗体パターン15と導電体パターン17の間、もしくは隣接する抵抗体パターン15と配線パターン19の間、もしくは隣接する導電体パターン17と配線パターン19の間に対向する位置に設ける構成としたので、各種パターン15,17,19の真後ろの裏面に直接溶融樹脂の熱と圧力が印加されることはなく、このため、各種パターン15,17,19の損傷を防止することができる。これによって、フレキシブル回路基板11に形成した端子接続パターン21,23,25と金属端子31間の成形による接続が、端子接続パターン21,23,25に接続した各種パターン15,17,19を損傷することなく確実に行える。
【0036】
また本発明によれば、フレキシブル回路基板11は基台40成形時の位置決めを行う位置決めピン穴51を有し、当該位置決めピン穴51は、フレキシブル回路基板11の隣接する抵抗体パターン15と導電体パターン17の間、もしくは隣接する抵抗体パターン15と配線パターン19の間、もしくは隣接する導電体パターン17と配線パターン19の間の内の、ゲート接続部47が対向しているパターン間以外のパターン間に設けられるので、フレキシブル回路基板11の位置決めピン穴51の位置と、基台40裏面のゲート接続部47の位置とが干渉することなく、且つそれぞれ最適な位置に設置できる。これによって、基台40成形時のフレキシブル回路基板11の位置決めを確実に行いつつ、端子接続パターン21,23,25と金属端子31間の成形による接続を、各種パターン15,17,19を損傷することなく確実に行える。
【0037】
また本発明によれば、ゲート接続部47を金属端子31近傍に設置したので、溶融樹脂注入用ゲート251から射出された溶融樹脂は、フレキシブル回路基板11裏面の各端子接続パターン21,23,25に近い位置を押し上げ、これによって、フレキシブル回路基板11に形成した端子接続パターン21,23,25と金属端子31間の成形による接続をより確実に行うことができる。
【0038】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では回路基板としてフレキシブル回路基板を用いたが、その代わりに硬質の回路基板を用いても良い。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
10 ケース
11 フレキシブル回路基板(回路基板)
15 抵抗体パターン
17 導電体パターン
19 配線パターン
21,23,25 端子接続パターン
29 位置決め穴
31 金属端子
40 基台
47 ゲート接続部
200 第1金型
250 第2金型
251 溶融樹脂注入用ゲート