(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ディスク式自動弁
(51)【国際特許分類】
F16T 1/38 20060101AFI20240821BHJP
F16T 1/16 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F16T1/38 Z
F16T1/16 B
(21)【出願番号】P 2021022574
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】神丸 直毅
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-147688(JP,A)
【文献】特開2011-252541(JP,A)
【文献】実開平05-032884(JP,U)
【文献】特開2005-201355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0044867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 43/00
F16T 1/16
F16T 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に弁室空間を有する本体部、
前記弁室空間に位置する弁座部であって、流体が通過する弁座部流路が貫通して形成されている弁座部、
前記弁座部の近傍に浮動可能に位置するディスク型弁体部であって、閉塞状態にあるとき前記弁座部に当接して前記弁座部流路を閉塞して閉弁し、開放状態にあるとき前記弁座部から離隔して前記弁座部流路を開放して開弁するディスク型弁体部、
を備えたディスク式自動弁において、
前記ディスク型弁体部を介在させた状態で前記弁座部流路に向けて配置されたクリーニング部であって、前記弁座部流路に対して接近する進入方向及び前記弁座部流路から離隔する退避方向に往復移動が可能なクリーニング部、
前記ディスク型弁体部に貫通して形成された着脱用空間、
前記着脱用空間に対して着脱自在な分離部であって、前記着脱用空間に装着されたとき前記着脱用空間を閉塞し、前記クリーニング部が前記進入方向に移動したとき、前記クリーニング部に結合することによって追従し、前記弁座部流路に進入して前記弁座部流路の内面に接触又は近接しながら移動する分離部、
を備えたことを特徴とするディスク式自動弁。
【請求項2】
請求項1に係るディスク式自動弁において、
前記クリーニング部が前記進入方向に移動したとき、前記クリーニング部と前記分離部とは結合用ネジ機構による螺合によって結合する、
ことを特徴とするディスク式自動弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係るディスク式自動弁において、
前記分離部は、前記着脱用空間に対し装着用ネジ機構による螺合によって装着される、
ことを特徴とするディスク式自動弁。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に係るディスク式自動弁において、
前記ディスク型弁体部に設けられた弾性部材であって、前記着脱用空間に向けて突出する弾性部材、
前記分離部に形成された装着用凹部、
を備えており、
前記装着用凹部に前記弾性部材が嵌合することによって、前記分離部は前記着脱用空間に装着される、
ことを特徴とするディスク式自動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係るディスク式自動弁は、自動弁の弁座に形成された流路をクリーニングするためのディスク型自動弁の構成の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管系統で蒸気を移送しようとする初期の段階においては、スムーズに蒸気を移送するため、配管内の空気を外部に排出しながら蒸気移送を行う必要がある。
【0003】
また、蒸気の移送を継続して行う過程では、蒸気が液化してドレン(蒸気の凝縮水)が発生する。このドレンが配管内で滞留すると蒸気移送の障害となるため、適宜、ドレンを外部に排出する必要がある。
【0004】
このような空気の排出やドレンの排出を行うために、配管系統にはディスク式自動弁としてのディスク式スチームトラップが設けられている。ディスク式スチームトラップは、円盤状のディスク弁を弁室に内蔵しており、このディスク弁は浮動自在に配置されている。そして、通常時はこのディスク弁がディスク式スチームトラップ内の流路に設けられた弁座を塞ぐことによって閉弁して蒸気漏れが生じないようになっている。
【0005】
蒸気移送の初期の段階においては、温度に応じて伸縮するバイメタル環がディスク弁を押し上げているためディスク弁と弁座の間には僅かな隙間が形成されており、この隙間から配管内の空気が排出され、初期段階における蒸気移送がスムーズに行われる。
【0006】
続いて、蒸気移送にともなってドレンが発生し、ディスク式スチームトラップがドレンで満たされると、その水圧によってディスク弁が押し上げられ開弁して流路が開放され、ドレンが排出される。
【0007】
ドレンが排出された後は、同じ流路をたどって引き続き高温のドレンがディスク式スチームトラップに流入する。この高温のドレンの流入によってバイメタル環は拡開してディスク弁に対する干渉が解除される。
【0008】
そして、続いて流入する高温の蒸気が高速でディスク弁の下部を流れることによって、ディスク弁の下面に低圧域が形成されてディスク弁が排出口に向けて引き寄せられ、これととともに、ディスク弁の上面に回り込んだ蒸気の高圧によってディスク弁が排出口に向けて押し下げられて閉弁する。
【0009】
こうして、ディスク弁が閉弁して流路の弁座を塞ぎ、蒸気漏れが防止される。この後、蒸気移送にともなってドレンが発生し、このドレンが弁室に流入した際、ディスク弁の上面に回り込んだ蒸気が冷却されて圧力が低下し、ディスク弁は開弁してドレンを排出する。
【0010】
ディスク式自動弁としてのディスク式スチームトラップには、蒸気やドレンに混入した塵やスケール(水垢)等の異物が固着することがある。このような異物が固着して堆積すると蒸気やドレンの流れを阻害するため、適宜、研磨等によって異物を除去する必要がある。
【0011】
ディスク式スチームトラップに研磨機構を設けたものとして、後記特許文献1に開示されているような技術がある。この特許文献1に開示されているディスク式スチームトラップは、分解せずに弁座の弁座面を研磨する技術である。
【0012】
球形弁座部材6には入口4と変圧室10とを連通させる流入孔11が形成されている。そして、球形弁座部材6は、内外輪弁座14、15から構成される弁座面を有しており、この内外輪弁座14、15からなる弁座面の上方に弁ディスク16が配置されている。この弁ディスク16が弁座面に着座することによって流入孔11を閉塞し、閉弁状態となる。
【0013】
球形弁座部材6には弁軸32が固定されており、弁軸32のハンドル34を操作することによって球形弁座部材6を回転させることができる。なお、球形弁座部材6の下方には、ハンドル21によって回転操作可能な研磨部材(砥石)17が配置されている。
【0014】
球形弁座部材6の内外輪弁座14、15から構成される弁座面に異物等が付着した場合、ハンドル34を操作して球形弁座部材6を180度回転させて、弁座面を研磨部材17に対面させる。そして、ハンドル21を押し込んで研磨部材17を球形弁座部材6に当接させ、ハンドル21を回転操作して研磨部材17によって球形弁座部材6を研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、前述の特許文献1に開示された技術においては、球形弁座部材6の弁座面に付着した異物等を除去することはできるものの、流路である流入孔11の内側に固着した異物等を除去してクリーニングすることはできない。弁座に形成される流路は比較的、小さい径であるため、異物の固着によって蒸気やドレンの流れが阻害されやすいため、容易かつ確実なクリーニングが求められる。
【0017】
そこで本願に係るディスク式自動弁は、これらの問題を解決することを課題とし、弁座に形成されている流路の内側を容易かつ確実にクリーニングすることができるディスク式自動弁の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願に係るディスク式自動弁は、
内部に弁室空間を有する本体部、
前記弁室空間に位置する弁座部であって、流体が通過する弁座部流路が貫通して形成されている弁座部、
前記弁座部の近傍に浮動可能に位置するディスク型弁体部であって、閉塞状態にあるとき前記弁座部に当接して前記弁座部流路を閉塞して閉弁し、開放状態にあるとき前記弁座部から離隔して前記弁座部流路を開放して開弁するディスク型弁体部、
を備えたディスク式自動弁において、
前記ディスク型弁体部を介在させた状態で前記弁座部流路に向けて配置されたクリーニング部であって、前記弁座部流路に対して接近する進入方向及び前記弁座部流路から離隔する退避方向に往復移動が可能なクリーニング部、
前記ディスク型弁体部に貫通して形成された着脱用空間、
前記着脱用空間に対して着脱自在な分離部であって、前記着脱用空間に装着されたとき前記着脱用空間を閉塞し、前記クリーニング部が前記進入方向に移動したとき、前記クリーニング部に結合することによって追従し、前記弁座部流路に進入して前記弁座部流路の内面に接触又は近接しながら移動する分離部、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本願に係るディスク式自動弁においては、分離部は、クリーニング部が進入方向に移動したとき、クリーニング部に結合することによって追従し、弁座部流路に進入して弁座部流路の内面に接触又は近接しながら移動する。
【0020】
このため、クリーニング部を操作して進入方向に移動させるだけで、弁座部流路の内面に固着した異物を分離部によって削ぎ落として除去することができる。したがって、弁座部に形成されている弁座部流路の内側を容易かつ確実にクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本願に係るディスク式自動弁の第1の実施形態であるディスク式スチームトラップ1を示す一部断面図である。
【
図2】
図1に示す分離体4近傍の拡大断面図である。
【
図3】
図1に示す分離体4近傍の拡大断面図であって、クリーニングバー6と分離体4とが結合した状態を示す拡大断面図である。
【
図4】
図1に示す分離体4近傍の拡大断面図であって、クリーニングバー6と分離体4とが結合して弁座流入路32に進入した状態を示す拡大断面図である。
【
図5】本願に係るディスク式自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップの分離体204近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態における用語説明]
以下の実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係るディスク式自動弁の下記の構成要素に対応している。
【0023】
ディスク式スチームトラップ1・・・ディスク式自動弁
ディスク弁2、202・・・ディスク型弁体部
分離体4、204・・・分離部
クリーニングバー6・・・クリーニング部
変圧室7等・・・弁室空間
ボディー11及び蓋12・・・本体部
弁座15・・・弁座部
弁座流入路32・・・弁座部流路
中心穴21、221・・・着脱用空間
外ネジ41、241・・・装着用ネジ機構
内ネジ42、242・・・結合用ネジ機構
矢印95方向・・・進入方向
矢印96方向・・・退避方向
Oリング241・・・弾性部材
凹部249・・・装着用凹部
空気、ドレン又は蒸気・・・流体
【0024】
[第1の実施形態]
本願に係るディスク式自動弁の第1の実施形態であるディスク式スチームトラップ1を図面に基づいて説明する。
図1はディスク式スチームトラップ1の一部断面図であり、
図2、
図3及び
図4は、分離体4近傍の拡大断面図である。
【0025】
(ディスク式スチームトラップ1の構成の説明)
産業プラントに配置される配管系統の主管(図示せず)には、ボイラーで生成された蒸気が供給先に向けて移送されている。蒸気移送を開始する段階では、配管内に空気が存在しているため、蒸気移送の初期にこの空気を速やかに排出する必要がある。また、蒸気移送を行う過程で、蒸気が液化してドレンが発生する。このドレンも適宜、配管系統から排出する必要がある。
【0026】
このような、蒸気移送の初期における空気や、蒸気移送の進行にともなって発生するドレンを適切に排出するために、配管系統の主管の随所には枝管が連通しており、この枝管にディスク式スチームトラップ1が接続されている。
【0027】
図1に示すように、ディスク式スチームトラップ1のボディー11の上部に形成された凹み部には、蓋12が螺入され、気密性を保って取り付けられている。ボディー11の凹み部と蓋12の内部空間によって囲まれた領域が弁室である。
【0028】
ボディー11の一方の側部には流入口51が形成されており、ここに枝管81が接続され、流入口51から蒸気やドレンが流入する。また、ボディー11の他方の側部には排出口52が形成されており、ここに排出管82が接続され、ドレン等が排出管82を通じて排出される。
【0029】
ボディー11には錆やスケール等の異物を捕捉するためのスクリーン19が設けられており、流入口51から流入した蒸気やドレンはこのスクリーン19を透過する。また、ボディー11には、流入口51に連通したボディー流入路31が形成されている。
【0030】
ボディー11の凹み部と蓋12の内部空間によって囲まれた弁室には弁座15が設けられている。弁座15には弁座流入路32が形成されており、この弁座流入路32はボディー流入路31に連通しており、かつ弁座15の上部の弁室に向けて開口している。ボディー流入路31と弁座流入路32とは円筒形状を有して同軸に配置されており、中心軸線が基準ラインL1として形成される。弁座15には、さらに弁室と排出口52とを連通させる弁座排出路33が形成されている。
【0031】
弁座15の上部にはディスク弁2が配置されている。このディスク弁2は、弁室内において矢印95、96方向に浮動可能に位置している。ディスク弁2の上部の弁室が円筒形状の変圧室7として構成される。ディスク弁2は円盤形状を有しており、中心部に上下(矢印95、96方向)に貫通した円形の中心穴21が形成されている。
【0032】
そして、
図2に示すように、中心穴21には段部28が形成されており、中心穴21はこの段部28を境に上部の内径よりも下部の内径がやや大きくなっている。また、中心穴21の上部開口には、上部に向けて漸次、口径が大きくなるガイド斜面22が形成されている。そして、中心穴21の内周面にはネジ部が形成されている。
【0033】
通常時において、中心穴21内には円盤状の分離体4が装着され、中心穴21を完全に閉塞している。この分離体4の直径は、弁座流入路32の内径よりもやや小さく構成されている。分離体4の外周面には外ネジ41が形成されており、この外ネジ41が中心穴21の内周面に形成されたネジ部に螺合することによって分離体4は中心穴21に装着されている。なお、分離体4の上面が前述の段部28に当接することによって螺合が限界位置に達するようになっている。
【0034】
分離体4の内側には上部に開口した円筒形状の凹部が形成されており、この凹部の内周には内ネジ42が形成されている。そして、内ネジ42と分離体底面45とは内斜面49によって連続して構成される。
【0035】
図1に示すように、弁座15の外周にはスライド斜面15aが形成されており、スライド斜面15aを覆うようにしてバイメタル環18が載置されている。このバイメタル環18は環状部材の一部を切り欠いたC形の形状を有しており、周辺温度に応じて環の径長さが伸縮するようになっている。すなわち、周辺温度が所定の温度を上回った場合、バイメタル環18の環の径長さは伸長して拡開し、周辺温度が所定の温度を下回った場合、バイメタル環18の環の径長さは収縮して縮閉する。なお、バイメタル環18の上部には、ディスク弁2の下面に当接可能にリング17が配置されており、バイメタル環18はこのリング17を下方から支持している。
【0036】
また、
図1に示すように、前述の蓋12には、上部にキャップ13が取り付けられている。このキャップ13は、蓋12の外面との間にキャップ空間13Sを形成し、キャップ空間13Sの気密性を保って取り付けられている。
【0037】
また、蓋12には基準ラインL1に中心が沿うように上下方向(矢印95、96方向)に貫通穴が形成されており、この貫通穴に円筒形状の昇降用保持筒35が固定されている。そして、この昇降用保持筒35に形成された貫通穴には、側周面に昇降用ネジ62が形成されたクリーニングバー6が貫通した状態で設けられている。クリーニングバー6は円柱形状を備えている。
【0038】
昇降用保持筒35に形成された貫通穴の内周にはネジ部が形成されており、このネジ部にクリーニングバー6の昇降用ネジ62が螺入されている。昇降用ネジ62はクリーニングバー6の先端から中央部付近にわたって形成されている。前述の分離体4の凹部に形成された内ネジ42も、クリーニングバー6の昇降用ネジ62に螺合可能に構成されている。なお、クリーニングバー6の先端部分には、
図2に示すようにバー先端面64に連続するバー斜面63であって、バー先端面64に向けてクリーニングバー6の直径が漸次小さくなるバー斜面63が形成されている。
【0039】
昇降用保持筒35に形成された貫通穴の軸線は基準ラインL1に一致するように構成されているため、クリーニングバー6の中心軸も基準ラインL1に沿って配置されることになる。
図1に示すように、クリーニングバー6の後端には操作用溝61が形成されており、この操作用溝61に工具を取り付けて回転操作すれば、昇降用ネジ62によるネジ機構によってクリーニングバー6を矢印95、96方向に昇降移動させることができる。
【0040】
なお、蓋12にはキャップ13を貫通した状態で押圧用保持筒73が固定されており、押圧用保持筒73の内周に形成されたネジ機構に押圧部71の押圧ネジ72が螺入されている。そして、押圧部71の先端面に接してグランドパッキン74が取り付けられており、押圧部71及びグランドパッキン74を貫通した状態でクリーニングバー6が配置されている。押圧部71を押圧用保持筒73に対して締め込むことによって、押圧部71の先端がグランドパッキン74を加圧し、クリーニングバー6にグランドパッキン74を密着させて変圧室7の気密性を保持する。
【0041】
(ディスク式スチームトラップ1の動作の説明)
続いて、ディスク式スチームトラップ1の動作を説明する。蒸気が流入していない初期の段階では、ディスク式スチームトラップ1は低温であるため、バイメタル環18は縮閉しており、弁座15のスライド斜面15aに沿って上方にスライドして、リング17を介してディスク弁2を押し上げている。
図1はこの状態を示しており、弁座15からディスク弁2は離隔し、弁座15の上面とディスク弁2との間には僅かな隙間が生じている(開放状態)。
【0042】
蒸気移送の初期段階においては、配管内には空気が存在しているが、蒸気移送に従ってこの空気は押し出され、弁座15の上面とディスク弁2との隙間を通って矢印92方向に進み排出口52から排出管82に排出される。
【0043】
初期段階における空気の排出が行われた後、低温のドレンが流入口51から矢印91方向に沿ってディスク式スチームトラップ1に流入する。そして、このドレンの水圧によってディスク弁2は弁座15の上面から大きく押し上げられて完全に開弁し(開放状態・図示せず)、ドレンは矢印92方向に沿って排出口52から排出される。
【0044】
この後、ディスク式スチームトラップ1には高温のドレンが矢印91方向に沿って流入する。この高温のドレンによってディスク式スチームトラップ1の温度が上昇し、バイメタル環18は拡開して、弁座15のスライド斜面15aに沿って下方にスライドして沈み込む。これによって、バイメタル環18に支持されたリング17も下方に移動してディスク弁2に対する干渉が解除される。なお、この時点ではディスク弁2は高温のドレンの通過によって押し上げられ、開弁したままの開放状態を維持する。
【0045】
高温のドレンが排出された後、引き続き高温の蒸気が矢印91方向に沿ってディスク式スチームトラップ1に流入し、この蒸気はディスク弁2の下面を高速で通過して排出される。この際、ディスク弁2の下面を高速で流れる蒸気のジェット流がベルヌーイの定理により低圧域を生じさせ、これによってディスク弁2が弁座15に引き寄せられる。また、これと同時に蒸気はディスク弁2の側面からディスク弁2の上面に形成される変圧室7に回り込み、蒸気の再圧縮によって変圧室7を高圧にする。
【0046】
このディスク弁2の下方の低圧化と上方の高圧化によって、ディスク弁2は下降し弁座15の上面に密着して閉弁する(閉塞状態)。そして、変圧室7の高圧の持続によって、ディスク弁2による閉塞状態が維持され、蒸気の漏洩が防止される。
【0047】
この後、ディスク式スチームトラップ1には再び高温のドレンが流入するが、この際、変圧室7の蒸気が放熱して圧力が低下し、ディスク弁2はドレンに押し上げられて開弁して(開放状態)ドレンを矢印92方向に沿って排出口52から排出する。なお、変圧室7の圧力変化については、キャップ空間13S内の空気が保温材として機能することによって外気温の影響を回避し、変圧室7の放熱速度は一定に保たれる。このため、ディスク弁2の安定した動作を確保することができる。
【0048】
高温のドレンを排出した後、ディスク式スチームトラップ1には再度、高温の蒸気が流入してディスク弁2は閉弁する。以上のようなディスク弁2の上昇又は下降の反復動作によって、閉弁又は開弁が繰り返される。
【0049】
(クリーニング動作の説明)
次に、弁座流入路32に固着した異物を除去するためのディスク式スチームトラップ1のクリーニング動作を説明する。前述のように、流入口51から流入した蒸気やドレンに混入している錆やスケール等の異物は、スクリーン19によって捕捉されるが、たとえば細かい異物はスクリーン19を透過して侵入する。そして、これらの異物が弁座流入路32の内周面に固着して堆積することがある。このため、弁座流入路32の内周面を適宜、クリーニングする必要がある。
【0050】
弁座流入路32の内周面をクリーニングする場合、本実施形態においては、
図1に示す通常時の状態からクリーニングバー6の操作用溝61に工具を取り付け、クリーニングバー6を締め込む方向に回転操作する。これによって、クリーニングバー6は昇降用ネジ62と昇降用保持筒35の貫通穴に形成されたネジ部との螺合に従い、回転しながら矢印95方向に下降し、分離体4及び弁座流入路32に接近する方向に移動する。
【0051】
クリーニングバー6が回転しながら矢印95方向に下降することによって、クリーニングバー6の昇降用ネジ62は分離体4の内ネジ42に螺合するに至る。ここで、ディスク弁2は前述のように変圧室7において浮動自在に位置しており、ディスク弁2の側面と変圧室7の側壁との間には僅かな隙間があることから、ディスク弁2は水平方向にも若干、移動が可能である。このため、ディスク弁2の中心穴21の軸線が基準ラインL1からずれて位置していることがある。
【0052】
しかし、本実施形態においては、
図2に示すようにクリーニングバー6の先端部分にバー斜面63が形成されているとともに、ディスク弁2の上部開口にはガイド斜面22が形成されている。したがって、ディスク弁2が水平方向に微動し、中心穴21の軸線が基準ラインL1からずれて位置している場合であっても、クリーニングバー6のバー斜面63とディスク弁2のガイド斜面22との当接によって、ディスク弁2はガイド斜面22の傾斜に案内されて水平方向に移動し、中心穴21の軸線が基準ラインL1に一致するように位置修正される。
【0053】
このため、クリーニングバー6の昇降用ネジ62は分離体4の内ネジ42に確実に螺合する。なお、クリーニングバー6の先端面64又は分離体4の分離体底面45にマグネットを組み込み、マグネットの磁力による引き込みによってディスク弁2を位置修正し、中心穴21の軸線を基準ラインL1に一致させるよう構成することもできる。
【0054】
クリーニングバー6が回転しながら矢印95方向に下降し、クリーニングバー6の昇降用ネジ62が分離体4の内ネジ42に螺合することによって、クリーニングバー6と分離体4とは結合する。なお、クリーニングバー6の昇降用ネジ62と分離体4の内ネジ42との螺合は、ディスク弁2の中心穴21の内周面に形成されたネジ部と分離体4の外ネジ41との螺合よりも緩やかに形成されている。このため、クリーニングバー6の昇降用ネジ62が分離体4の内ネジ42に螺合する際、分離体4自体が回転してしまい、クリーニングバー6の昇降用ネジ62が空回りすることはない。
【0055】
また、分離体4の内ネジ42は、分離体底面45に近い終端のネジのピッチだけが狭く形成されている。このため、螺合によってクリーニングバー6のバー先端面64が分離体底面45に押し付けられた際、螺合状態がきつくなってクリーニングバー6と分離体4とは強固に結合してロックされ、以後、分離体4はクリーニングバー6の移動に確実に追従する。
【0056】
クリーニングバー6と分離体4とが結合した状態が
図3である。この状態から引き続きクリーニングバー6は回転操作され、さらに矢印95方向に移動する。そして、分離体4は回転しながらディスク弁2の中心穴21から離脱して弁座流入路32に進入する。前述のように分離体4の直径は、弁座流入路32の内径よりもやや小さく構成されているため、分離体4が侵入することによって分離体4は弁座流入路32の内周面に近接して回転移動する。
【0057】
これによって、弁座流入路32に付着した異物99は削ぎ落され、弁座流入路32の内周面はクリーニングされる(
図4)。削ぎ落された異物99は、ディスク式スチームトラップ1の通常動作時にドレン等とともに排出管82に排出される。
【0058】
本実施形態においては、
図4に示す状態がクリーニングバー6の矢印95方向への移動の限界位置であり、この状態でクリーニングバー6の昇降用ネジ62は昇降用保持筒35に形成されたネジ部に対し、それ以上回転しないように構成されている。なお、クリーニングバー6の昇降用ネジ62をさらに長く形成すれば、弁座流入路32に加えてボディー流路31(
図1)の内周面もクリーニングすることが可能になる。
【0059】
クリーニング終了後、
図4に示す状態からクリーニングバー6の操作用溝61に取り付けた工具を用いて、クリーニングバー6を緩める逆方向に回転操作し、クリーニングバー6と分離体4とを矢印96方向に一体的に移動させる。なお、この際、クリーニングバー6と分離体4とは強固に結合してロックされているため、分離体4からクリーニングバー6が外れることはない。
【0060】
クリーニングバー6と分離体4とが回転しながら矢印96方向に移動することによって、分離体4の外ネジ41がディスク弁の中心穴21の内周面に形成されたネジ部に螺合し、分離体4は中心穴21に装着された状態に復位する(
図3)。そして、分離体4の上面が、ディスク弁2の中心穴21に形成された段部28に当接することによって、分離体4の矢印96方向への移動が限界に達するため、以後、分離体4は移動および回転を停止し、クリーニングバー6のみが回転しながら矢印96方向に移動する。
【0061】
これによって、クリーニングバー6の昇降用ネジ62は分離体4の内ネジ42から外れ、クリーニングバー6と分離体4との結合が解かれる。そして、分離体4はディスク弁の中心穴21を閉塞し、クリーニングバー6は引き続き矢印96方向に移動して
図1に示す状態に復位する。
【0062】
以上のように、クリーニングバー6が回転しながら矢印95方向に下降する過程で、ディスク弁2に装着された分離体4がクリーニングバー6と結合して弁座流入路32に進入するため、クリーニングバー6と弁座流入路32との間にディスク弁2が介在しているにもかかわらず、クリーニングバー6を操作するだけで弁座流入路32の内周面を容易かつ確実にクリーニングすることができる。
【0063】
[第2の実施形態]
本願に係るディスク式自動弁の第2の実施形態であるディスク式スチームトラップを
図5に基づいて説明する。前述の第1の実施形態に係るディスク式スチームトラップ1と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
本実施形態においては、第1の実施形態におけるディスク弁2に代えてディスク弁202が設けられており、第1の実施形態における分離体4に代えて分離体204が設けられている。そして、ディスク弁202の中心穴221の内周面には、Oリング229が埋め込まれており、このOリング229は弾性を有し、中心穴221に向けて一部が突出している。
【0065】
また、分離体204の外周面には凹部241が形成されている。そして、分離体204の凹部241に、ディスク弁202に設けられているOリング229が嵌合することによって、分離体204がディスク弁202の中心穴221に装着されている。
【0066】
弁座流入路32の内周面をクリーニングする場合、クリーニングバー6を回転操作して矢印95方向に移動させ、クリーニングバー6の昇降用ネジ62と分離体204の内ネジ242との螺合によって、クリーニングバー6と分離体204とを結合させる。この際、クリーニングバー6のバー斜面63とディスク弁202の上部開口に形成されたガイド斜面222との当接によって、ディスク弁202はガイド斜面222の傾斜に案内されて水平方向に移動し、中心穴221の軸線が基準ラインL1に一致するように位置修正される。
【0067】
クリーニングバー6と分離体204とが結合した後、クリーニングバー6及び分離体204が引き続き矢印95方向に移動することによって、Oリング229が内側に撓んで収縮し、分離体204の凹部241から外れる(図示せず)。以後、Oリング229はクリーニングバー6の昇降用ネジ62部分に押圧されて収縮したままの状態を維持する。
【0068】
Oリング229が分離体204の凹部241から外れたことによって、分離体204は回転しながらディスク弁202の中心穴221から離脱して弁座流入路32に進入し、弁座流入路32の内周面に固着した異物を削ぎ落して弁座流入路32をクリーニングする。
【0069】
クリーニング終了後、クリーニングバー6を緩める逆方向に回転操作し、クリーニングバー6と分離体204とを矢印96方向に一体的に移動させる。これによって、分離体204は再びディスク弁202の中心穴221に入り込み、分離体204の凹部241がOリング229に対応する箇所に位置した時点でOリング229はその弾性によって元の形状に復帰する。
【0070】
これによって、Oリング229は分離体204の凹部241に嵌合して
図5に示す状態に復位し、分離体204はディスク弁202の中心穴221を閉塞する。この後、引き続きクリーニングバー6が回転しながら矢印96方向に移動することによって、クリーニングバー6の昇降用ネジ62は分離体204の内ネジ242から外れ、クリーニングバー6と分離体204との結合が解除される。その他の構成、動作については第1の実施形態におけるディスク式スチームトラップ1と同様である。
【0071】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、ディスク式自動弁としてディスク式スチームトラップを例示したが、弁室にディスク型弁体部が浮動可能に配置され、ディスク型弁体部が弁座部流路を閉塞する自動弁であれば、他の構成の自動弁に本願に係るディスク式自動弁を適用してもよい。
【0072】
また、前述の実施形態においては、クリーニング部としてクリーニングバー6を例示したが、ディスク型弁体部を介在させた状態で弁座部流路に向けて配置され、弁座部流路に対して接近する進入方向及び弁座部流路から離隔する退避方向に往復移動が可能なものであれば、他の形状、構造のものを採用してもよい。
【0073】
さらに、前述の実施形態においては、分離部として分離体4、204を例示したが、着脱用空間に対して着脱自在であり、クリーニング部が進入方向に移動したとき、クリーニング部に結合して弁座部流路に進入するものであれば、他の形状、構造のものを用いることができる。
【0074】
また、前述の実施形態においては、ディスク型弁体部に形成された着脱用空間に分離部を装着するための機構として、ディスク弁の中心穴21の内周面に形成されたネジ部と分離体4の外ネジ41との螺合や、ディスク弁202の中心穴221の内周面に埋め込まれたOリング229と分離体204の外周面に形成された凹部241との嵌合を例示したが、これに限定されるものではなく、ディスク型弁体部に形成された着脱用空間に対して分離部が着脱可能な機構であれば、他の構成を採用することができる。たとえば、マグネットの磁力によって分離部が着脱用空間に装着される構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1:ディスク式スチームトラップ 2、202:ディスク弁 4、204:分離体
6:クリーニングバー 7:変圧室 11:ボディー 12:蓋 15:弁座
32:弁座流路 21、221:中心穴 41、241:外ネジ 42、242:内ネジ
241:Oリング 249:凹部