(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ケーブルコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/42 20060101AFI20240821BHJP
H01R 13/639 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01R13/42 E
H01R13/639 Z
(21)【出願番号】P 2021028171
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120628
【氏名又は名称】岩田 慎一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】早川 明
(72)【発明者】
【氏名】松本 博幸
(72)【発明者】
【氏名】西本 憲一
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0110989(US,A1)
【文献】特開2015-056272(JP,A)
【文献】特表2011-503823(JP,A)
【文献】特開2012-043798(JP,A)
【文献】特開2011-165562(JP,A)
【文献】特開2019-040729(JP,A)
【文献】特開平10-064625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタの嵌合開口に挿入される、外周面に開口が形成されていない円筒状の嵌合突出部
と、当該嵌合突出部から径方向に突出し、前記相手側コネクタとの嵌合時に当該相手側コネクタの係合部材に係止される第1ロック突起とを有するハウジングと、
前記ハウジングに収容されるケーブルが正規挿入位置にあるときにのみ前記相手側コネクタに前記ハウジングの前記嵌合突出部を挿入可能とするリテーナと、を有し、
当該リテーナは、前記ハウジングに収容されるケーブルが非正規挿入位置にある場合は、
前記第1ロック突起から径方向外側にずれた位置をとることにより相手側コネクタとの嵌合を阻止する位置をとり、前記ケーブルが正規挿入位置にある場合は、相手側コネクタと嵌合可能な位置に移動可能
であり、前記嵌合可能な位置にあるときであって前記相手側コネクタとの嵌合時には、前記第1ロック突起とともに前記相手側コネクタの係合部材に係止される、第2ロック突起を有
する、
ケーブルコネクタ。
【請求項2】
前記リテーナの前記第2ロック突起は、前記ケーブルが正規挿入位置にある場合は前記第1ロック突起と前記径方向で同一の高さに揃う、請求項1記載のケーブルコネクタ。
【請求項3】
前記リテーナの前記第2ロック突起は、前記第1ロック突起と前記径方向で同一の高さに揃う際に、前記第1ロック突起を受け入れる開口を有している、請求項2記載のケーブルコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの不正確な接続を回避する手段を有したケーブルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、同軸ケーブルコネクタの一例が開示されている。この同軸ケーブルコネクタは、内部に同軸ケーブルが挿入されるハウジングを有しており、このハウジグの円筒形の嵌合端には、相手側コネクタに嵌合されるキー部及び係合部が形成されている。キー部は対応するキー溝を有する相手側コネクタにのみ接続を可能とするものである。係合部は、一旦相手側コネクタに係合した後に本同軸ケーブルコネクタを相手側コネクタから意図せず抜去することがないように相手側コネクタの対応する係止溝に係止されるものである。
【0003】
特許文献1の同軸ケーブルコネクタは、ハウジング内部に挿入された同軸ケーブルに接続されているコンタクト組立体の軸方向の移動を阻止するためのロック部材を有している。しかし、同軸ケーブルが非正規挿入位置にあるときに、相手側コネクタに嵌合できないようにするいわゆる端子位置保証機構(TPA機構)を有してはいなかった。
【0004】
図10は、ハウジング910内部に挿入された同軸ケーブル930が非正規挿入位置にあるときに、相手側コネクタに嵌合できないようにする機構を備えた従来の同軸ケーブルコネクタ90の一例を示している。従来の同軸ケーブルコネクタ90は、ハウジング910とリテーナ920を有する。ハウジング910は、ハウジング本体911と円筒形の嵌合突出部912を含む。ハウジング本体911と円筒形の嵌合突出部912の内部には、同軸ケーブルの軸方向に沿って貫通するケーブル収容開口913が形成される。また、ハウジング本体911にはケーブル収容開口913の径方向の一方側に貫通したリテーナ収容開口916が形成される。さらに、ハウジング本体911から円筒形の嵌合突出部912の外面にかけて、径方向に突出したロック突起915が設けられる。
【0005】
リテーナ920は、上板部921とその幅方向両側から下方に垂下するように設けられた2つの脚部922、及び上板部921から嵌合方向に突出した2つの干渉突出部923を有しており、この2つの干渉突出部923の間には、ハウジング910のロック突起915が挿通されるスロット924が設けられている。
【0006】
同軸ケーブル930をケーブル収容開口913に正規挿入位置まで挿入された場合、リテーナ920の2つの脚部922は、リテーナ収容開口916の奥まで挿入され、干渉突出部923は、嵌合突出部912の外面に形成されたリテーナ収容開口916に収容される。この状態でハウジング910及びリテーナ920の組立体を相手側コネクタに挿入すると、干渉突出部923が嵌合突出部912の外面のリテーナ収容開口916の面内に収められた状態であるため、相手側コネクタの嵌合開口に完全に挿入することが可能となる。
【0007】
一方、同軸ケーブル930がケーブル収容開口913に完全に挿入されていない場合、つまり非正規挿入位置にある場合は、リテーナ920の2つの脚部922は、同軸ケーブル930周囲に装着されたコアハウジングの突起に干渉し、リテーナ収容開口916に完全に挿入することができない状態となる。このとき、2つの干渉突出部923は、嵌合突出部912の外面よりも径方向外側に一定の距離だけ離間した位置にある。この状態でハウジング910及びリテーナ920の組立体を相手側コネクタに挿入すると、干渉突出部923が、相手側コネクタの嵌合開口周囲のハウジングに干渉し、結果としてハウジング910、リテーナ920を相手側コネクタに嵌合させることができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の同軸ケーブルコネクタ90では、同軸ケーブル930が正規挿入位置あるときに、リテーナの920の干渉突出部923を嵌合突出部912の外面の面内に収めるための干渉突出部収容開口917が必要であった。そのため、この同軸ケーブルコネクタ90に防水性能を持たせることはできなかった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、ケーブルが正規挿入位置にあるときにのみ相手側コネクタに嵌合可能な構成を有するケーブルコネクタにおいて、防水性能を付与することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のケーブルコネクタは、
相手側コネクタの嵌合開口に挿入される円筒状の嵌合突出部を有するハウジングと、
前記ハウジングに収容されるケーブルが正規挿入位置にあるときにのみ前記相手側コネクタに前記ハウジングの前記嵌合突出部を挿入可能とするリテーナと、を有し、
当該リテーナは、前記ハウジングに収容されるケーブルが非正規挿入位置にある場合は、相手側コネクタとの嵌合を阻止する位置をとり、前記ケーブルが正規挿入位置にある場合は、相手側コネクタと嵌合可能な位置に移動可能となるロック突起を有する、
を有する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一実施形態は、前記嵌合突出部が、径方向に突出した第1ロック突起を有し、前記リテーナの前記ロック突起は、第2ロック突起として、前記ハウジングに収容されるケーブルが非正規挿入位置にある場合は前記第1ロック突起から径方向外側にずれた位置をとり、前記ケーブルが正規挿入位置にある場合は前記第1ロック突起と前記径方向で同一の高さに揃うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一実施形態は、前記リテーナの前記第2ロック突起が、前記第1ロック突起と前記径方向で同一の高さに揃う際に、前記第1ロック突起を受け入れる開口を有していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、前記円筒状の嵌合突出部の前記外周面には、開口が形成されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記本発明によれば、ケーブルが正規挿入位置にあるときにのみ相手側コネクタに嵌合可能な構成を有するケーブルコネクタにおいて、防水性能を付与することが可能となる。
【0016】
上記本発明の一態様によれば、第1ロック突起と第2ロック突起の両方で相手側コネクタの係合構造とロックできるため、相手側コネクタへの嵌合を確実に維持できる。
【0017】
上記本発明の一態様によれば、第2ロック突起の開口に第1ロック突起を受け入れるため、第2ロック突起を強化でき、第2ロック突起が相手側コネクタの係合構造に当接した際に第2ロック突起が損傷したりすることを防止できる。
【0018】
上記本発明の一態様によれば、円筒状の嵌合突出部の内部を外部から防水することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(A)本実施形態における同軸ケーブルコネクタの外観斜視図であり、
図1(B)は、本実施形態における同軸ケーブルコネクタを分解した分解斜視図である。
【
図2】本実施形態の同軸ケーブルコネクタのハウジングの外観斜視図である。
【
図3】
図3(A)は
図2のハウジングの上面図、
図3(B)は
図2のハウジングの側面図、
図3(C)は
図2のハウジングを嵌合側から見た場合の正面図、
図3(D)は、
図2のハウジングを、
図3(A)のIIID-IIID線で切断して側方から見た場合の断面図である。
【
図4】本実施形態の同軸ケーブルコネクタのリテーナの外観斜視図である。
【
図5】
図5(A)は
図4のリテーナの上面図、
図5(B)は
図4のリテーナの側面図、
図5(C)は
図4のリテーナの正面図、
図5(D)は、
図4のリテーナを、
図5(A)のVD-VD線で切断して側方から見た場合の断面図である。
【
図6】
図6(A)は同軸ケーブルコネクタが組み立てられた状態であり、且つ同軸ケーブルが正規挿入位置にない場合の側面図、
図6(B)は、
図6(A)の状態の同軸ケーブルコネクタを嵌合側から見た場合の正面図、
図6(C)は、
図6(A)の状態の同軸ケーブルコネクタをVIC-VIC線で切断して嵌合側と反対側から見た場合の断面図、
図6(D)は、
図6(A)の状態の同軸ケーブルコネクタを、
図6(B)のVID-VID線で切断して側方から見た場合の断面図である。
【
図7】
図7(A)は、同軸ケーブルが正規挿入位置にない状態で同軸ケーブルコネクタを相手側コネクタに嵌合しようとした場合の外観斜視図、
図7(B)は、
図7(A)の側面図、
図7(C)は、
図7(B)の要部を切断して側方から見た場合の一部断面図である。
【
図8】
図8(A)は同軸ケーブルコネクタが組み立てられた状態であり、且つ同軸ケーブルが正規挿入位置にある場合の側面図、
図8(B)は、
図8(A)の状態の同軸ケーブルコネクタを嵌合側から見た場合の正面図、
図8(C)は、
図8(A)の状態の同軸ケーブルコネクタをVIIIC-VIIIC線で切断して嵌合側と反対側から見た場合の断面図、
図8(D)は、
図8(A)の状態の同軸ケーブルコネクタを、
図8(B)のVIIID-VIIID線で切断して側方から見た場合の断面図である。
【
図9】
図9(A)は、同軸ケーブルが正規挿入位置にある状態で同軸ケーブルコネクタを相手側コネクタに嵌合しようとした場合の外観斜視図、
図9(B)は、
図9(A)の側面図、
図9(C)は、
図9(B)の状態からさらに相手側コネクタに対して嵌合操作を進めた状態であり、要部を切断して側方から見た場合の一部断面図であり、
図9(D)は、完全嵌合状態の同軸ケーブルコネクタと相手側コネクタの、要部を切断して側方から見た場合の一部断面図である。
【
図10】
図10(A)は、従来例の同軸ケーブルコネクタの外観斜視図であり、
図10(B)は、
図10(A)の同軸ケーブルコネクタのハウジングの外観斜視図であり、
図10(C)は
図10(A)の同軸ケーブルコネクタのリテーナの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態の同軸ケーブルコネクタ10を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の同軸ケーブルコネクタの一例を説明するものであって、本発明をこの同軸ケーブルコネクタ10に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された他の形態の同軸ケーブルコネクタにも等しく適用されるべきものである。
【0021】
図1を参照し、同軸ケーブルコネクタ10の全体構成について説明する。
図1(A)に示すように、同軸ケーブルコネクタ10は、ハウジング20、リテーナ30を含む。さらに、同軸ケーブルコネクタ10は、
図1(B)に示すように、外側コンタクト40、中心コンタクト50、スリーブ60、同軸ケーブル70、コアハウジング80を含む。中心コンタクト50は、同軸ケーブル70の中心導体に接続される。スリーブ60は、同軸ケーブル70の外部導体に接続される。同軸ケーブル70の外側導体は、スリーブ60の外周囲を覆うように折り返され、その周囲に外側コンタクト40が装着される。外側コンタクト40の周囲には、コアハウジング80が装着される。
【0022】
なお、以下の説明では、同軸ケーブル70が延在する方向を嵌合方向と呼び、特に同軸ケーブルコネクタ10が相手側コネクタと嵌合接続する方向(
図1の紙面左側)を嵌合方向前方、反対側を嵌合方向後方と呼ぶこととする。また、嵌合方向に対して直交する方向(
図1における紙面上下方向)を上下方向と呼び、嵌合方向と上下方向の両方に直交する方向を幅方向と呼ぶこととする。
【0023】
図2、
図3を参照してハウジング20について説明する。ハウジング20は、ハウジング本体210と嵌合突出部220を含む。ハウジング本体210は、略直方体形状で、上面211、底面212、右側面213、左側面214、後面215、及び前面(符号なし)を含む。ハウジング本体210には、後面215から、嵌合方向前方に向けてケーブル収容開口216が形成されている。
【0024】
さらに、ハウジング本体210の上面211には、右側面213と左側面214にそれぞれ近い位置に2つのリテーナ収容開口217が形成され、上面211を上下方向に貫通し、それぞれケーブル収容開口216と導通している。2つのリテーナ収容開口217の間にはリテーナ載置面218が嵌合方向に沿って形成されている。
【0025】
嵌合突出部220は、嵌合方向に延在する円筒状の部材であり、相手側コネクタ100との嵌合時に、相手側コネクタ100の嵌合開口に挿入される。嵌合突出部220は、ハウジング本体210の前面から嵌合方向前方に向けて突出するように形成された円筒部221を含む。円筒部221の外周面には、
図10の従来例の同軸ケーブルコネクタ90に形成されていたような開口は形成されていない。円筒部221の前端222から嵌合方向後方に向けて嵌合開口223が嵌合方向後方に向けて形成される。
図3(D)に示すように、この嵌合開口223と、ハウジング本体210に形成されたケーブル収容開口216とは内部で導通している。
【0026】
嵌合突出部220の円筒部221の外周面上部には、径方向、例えば上方に突出する第1ロック突起224が形成されている。この第1ロック突起224は、後述するが、対応する相手側コネクタ100の係合部材104に係止するためのものである。さらに、円筒部221の外周面には複数のキー突起225が形成されている。このキー突起225は、対応する相手側コネクタ100に形成されたキー溝(図示せず)に挿入されるものであり、対応するキー溝をもつ相手側コネクタのみにこの同軸ケーブルコネクタ10を嵌合できるようにする。
【0027】
次に、
図4、
図5を参照して、リテーナ30について説明する。本実施形態におけるリテーナ30は、後述するコンタクトの構成を装着した同軸ケーブル70が、ハウジング本体210のケーブル収容開口216内の正規挿入位置にある場合に、この同軸ケーブル70をハウジング本体210内に保持するものである。さらに、リテーナ30は、同軸ケーブル70が、正規挿入位置にあるときにのみ相手側コネクタ100にハウジング20の嵌合突出部220を挿入可能とするための以下の機構をも含む。
【0028】
リテーナ30は、リテーナ本体310と、係合部320を含む。リテーナ本体310は、上板部311とその幅方向両端から下方に垂下するように形成された2つの脚部312を含む。2つの脚部312の間はケーブル収容空間313となっている。係合部320は、上板部311の嵌合方向前端から前方に突出した接続部321と、その前方側で上方に突出した第2ロック突起322を含む。ロック突起322には上下方向に貫通する第1ロック突起収容開口323が形成されている。第1ロック突起収容開口323は、後述するが、同軸ケーブル70が正規挿入位置にあって、第1ロック突起224と第2ロック突起322が径方向で同一の高さに揃うように、第1ロック突起を受け入れる開口となっている。したがって、第1ロック突起収容開口323の嵌合方向の長さは、ハウジング20の第1ロック突起224を受け入れることのできる長さであり、第1ロック突起収容開口323の幅方向の大きさは、第1ロック突起224の幅とされている。
【0029】
図6~
図9を参照して、同軸ケーブルコネクタ10の組み立て、及び相手側コネクタ100との嵌合について説明する。同軸ケーブル70に中心コンタクト50、外側コンタクト40を接続し、外側コンタクト40の一部周囲にコアハウジング80を装着した状態で、同軸ケーブル70とそれに装着されたコンタクトとをハウジング20のケーブル収容開口216に嵌合方向後方側から挿入する。すると、
図6(D)に示すように、外側コンタクト40が嵌合突出部220内部の嵌合開口223に収容される。なお、嵌合開口223の内面と外側コンタクト40の間には所定幅の間隙が形成され、相手側コネクタ100の端子を受け入れることができる。
【0030】
図6(D)に示すように、コアハウジング80は、コア本体810を含む。コア本体810には、同軸ケーブル70とコア本体810との間を水密に維持するワイヤシール811と、同軸ケーブルコネクタ10の嵌合開口223の嵌合部分を水密に維持するためのコネクタシール812とが装着されている。また、コア本体810には、同軸ケーブル70の位置合わせを行うための位置合わせスロット813がコア本体810の外周面に沿って環状に窪むよう形成されている。
【0031】
図6(D)において、同軸ケーブル70のケーブル収容開口216への挿入位置は、位置合わせスロット813が、ハウジング本体210のリテーナ収容開口217の下方に到達しない非正規挿入位置となっている。この状態で、リテーナ30を、ハウジング20に装着した場合について説明する。このとき、リテーナ30の2つの脚部312は、リテーナ収容開口217からケーブル収容開口216へ挿入されるものの、
図6(C)に示されるように、脚部312の下方への移動がコアハウジング80のコア本体810によって阻まれる状態となる。そのため、リテーナ30を完全に下方まで挿入することはできない。
【0032】
このとき、リテーナ30のリテーナ本体310の上板部311は、ハウジング本体210の上面211と面一とはならず、上面211から上方に突出した状態となっている。また、リテーナ30の第2ロック突起322は、嵌合突出部220の外周面から径方向外側に予め定められた距離だけ離開した位置をとっており、後述するように、相手側コネクタ100との嵌合を阻止する位置となる。また、リテーナ30の第2ロック突起322は、ハウジング20の第1ロック突起224から径方向外側にずれた位置、つまり第1ロック突起224の上方へずれた位置にある。このとき、第2ロック突起322の第1ロック突起収容開口323は第1ロック突起224を一部分受け入れた状態となっている。
【0033】
この状態で、
図7(A)~
図7(C)に示すように、同軸ケーブルコネクタ10を相手側コネクタ100に嵌合させようとする。すると、
図7(C)に最もよく示すように、第1ロック突起224よりも上方に位置する第2ロック突起322が、相手側コネクタ100の相手側ハウジング101の係合開口102内において嵌合方向後方に向けて突出した係合アーム103の先端部分の係合枠104に当接する。これにより、同軸ケーブル70が非正規挿入位置にある場合、同軸ケーブルコネクタ10を相手側コネクタ100に嵌合することができない。
【0034】
図8(A)~
図8(D)は、同軸ケーブル70が同軸ケーブルコネクタ10のケーブル収容開口216に正規挿入位置まで挿入された状態を示している。このとき、同軸ケーブル70に装着されたコアハウジング80の位置合わせスロット813は、ハウジング本体210のリテーナ収容開口217の直下まで到達している。この状態で、リテーナ30を、ハウジング20に装着すると、リテーナ30の2つの脚部312は、リテーナ収容開口217からケーブル収容開口216の奥まで収容される。このとき、
図8(C)、
図8(D)に示すように、脚部312は、コアハウジング80の位置合わせスロット813内に挿入されている。
【0035】
これにより、リテーナ30のリテーナ本体310の上板部311は、ハウジング本体210の上面と面一となる。さらに、リテーナ30の第2ロック突起322の第1ロック突起収容開口323は、第1ロック突起224を完全に収容した状態となる。このとき、第1ロック突起224と第2ロック突起322の上面は、径方向で同一の高さに揃った状態、つまり面一に揃った状態となっており、全体としてみた場合、嵌合突出部220の円筒部221の面上から突出した一つのロック突起を形成した状態となっている。つまり、リテーナ30の第2ロック突起322は、ハウジング20の嵌合突出部220の外周面上にいわば載置された位置をとっており、後述するように、相手側コネクタと嵌合可能な位置に移動可能となっている。
【0036】
この状態で、
図9(A)~
図9(C)に示すように、同軸ケーブルコネクタ10を相手側コネクタ100に嵌合させようとする。すると、
図9(C)に最もよく示すように、第1ロック突起224と第2ロック突起322が、相手側コネクタ100の相手側ハウジング101の係合開口102内に嵌合方向後方に向けて突出した係合アーム103の先端部分の係合枠104の下方に挿入される。第1ロック突起224と第2ロック突起322は、嵌合方向前方から嵌合方向後方に向けて上昇するように傾斜した傾斜面を有しており、この傾斜面が係合枠104に接触しつつ嵌合方向前方に移動することにより係合アーム103を上方に変位させる。
【0037】
次いで、同軸ケーブルコネクタ10をさらに嵌合方向前方へ移動させ、相手側コネクタ100に嵌合させる。すると、
図9(D)に示すように、相手側コネクタ100の係合枠104が第1ロック突起224と第2ロック突起322を乗り越えて係止され、完全な嵌合状態となる。
【0038】
以上、同軸ケーブルコネクタ10の構成、及び相手側コネクタ100への嵌合時の動作について説明した。なお、本実施形態の同軸ケーブルコネクタ10は、雄型のコネクタ構造をとるものであり、相手側コネクタ100が雌型のコネクタ構造をとるものであったが、雄雌の機能を入れ替えてもよい。
【0039】
上記実施形態では、ロック突起として、第1ロック突起224と第2ロック突起322を連携させた例を説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されず、リテーナ30のみにロック突起を設け、ハウジング20の嵌合突出部220にはロック突起を形成しない構成とすることも可能である。
【0040】
上記実施形態では、ケーブルとして同軸ケーブルを相手側コネクタ100と接続させるための同軸ケーブルコネクタの構成について説明したが、本発明は上記の例に限定されず、通常のケーブルを相手側コネクタ100に接続させるケーブルコネクタにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
上記構成により、FAKRA規格に対応した、小型且つ防水性能を有した同軸ケーブルコネクタを提供できる。また、リテーナ30は、ハウジング20に予め装着させた状態で市場に流通させてもよいし、ハウジング20と別途流通させてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 同軸ケーブルコネクタ
20 ハウジング
30 リテーナ
40 外側コンタクト
50 中心コンタクト
60 スリーブ
70 同軸ケーブル
80 コアハウジング
90 同軸ケーブルコネクタ
100 相手側コネクタ
101 相手側ハウジング
102 係合開口
103 係合アーム
104 係合枠
210 ハウジング本体
211 上面
212 底面
213 右側面
214 左側面
215 後面
216 ケーブル収容開口
217 リテーナ収容開口
218 リテーナ載置面
220 嵌合突出部
221 円筒部
222 前端
223 嵌合開口
224 ロック突起
225 キー突起
310 リテーナ本体
311 上板部
312 脚部
313 ケーブル収容空間
320 係合部
321 接続部
322 ロック突起
323 ロック突起収容開口
810 コア本体
811 ワイヤシール
812 コネクタシール
813 スロット