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  • 特許-釣り用疑似餌 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】釣り用疑似餌
(51)【国際特許分類】
   A01K 85/00 20060101AFI20240821BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240821BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A01K85/00 J
C08K3/36
C08L29/04 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021079397
(22)【出願日】2021-05-08
(65)【公開番号】P2022173176
(43)【公開日】2022-11-18
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520385021
【氏名又は名称】ウェトラブホールディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141472
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 善弘
(72)【発明者】
【氏名】岡野 仁夫
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-279762(JP,A)
【文献】特開平09-056314(JP,A)
【文献】特公昭51-028553(JP,B2)
【文献】特開平04-359951(JP,A)
【文献】特許第5385928(JP,B2)
【文献】特許第5147388(JP,B2)
【文献】特公昭48-030463(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 85/00
C08K 3/36
C08L 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールからなる水性ゲルおよびシリカ粒子を含有してなる釣り用疑似餌であって、前記シリカ粒子として粒子径が3~100nmであるシリカ粒子を含有するコロイダルシリカが用いられていることを特徴とする釣り用疑似餌。
【請求項2】
ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量が0.01~30質量部である請求項1に記載の釣り用疑似餌。
【請求項3】
平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液およびシリカ粒子を含有してなる釣り用疑似餌用成形材料であって、前記シリカ粒子として粒子径が3~100nmであるシリカ粒子を含有するコロイダルシリカが用いられていることを特徴とする釣り用疑似餌用成形材料。
【請求項4】
ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量が0.01~30量部である請求項3に記載の釣り用疑似餌用成形材料。
【請求項5】
平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液およびシリカ粒子を含有する成形材料を-10℃以下の温度に冷凍した後、解凍する釣り用疑似餌の製造方法であって、前記シリカ粒子として粒子径が3~100nmであるシリカ粒子を含有するコロイダルシリカを用いることを特徴とする釣り用疑似餌の製造方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコール濃度が1~40質量%である請求項5に記載の釣り用疑似餌の製造方法。
【請求項7】
ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量が0.01~30質量部である請求項5または6に記載の釣り用疑似餌の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用疑似餌に関する。さらに詳しくは、本発明は、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有し、魚類、イカなどの海生軟体動物などの釣りに好適に使用することができる釣り用疑似餌およびその製造方法、ならびに前記釣り用疑似餌に好適に使用することができる釣り用疑似餌用成形材料に関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用疑似餌として、小魚、ゴカイなどの環形動物、昆虫の幼虫(ワーム)などに模した疑似餌が用いられている。市場で販売されている疑似餌の材料には主としてシリコーンゴム、塩化ビニル樹脂エラストマーなどが使用されている。しかし、シリコーンゴムが使用されている疑似餌および塩化ビニル樹脂エラストマーが使用されている疑似餌は、いずれも、実際の釣り餌のような水濡れ性および柔軟性を有していないため、魚の食いつきがよくないことから実際に魚釣りをするときの疑似餌に適していない。
【0003】
近年、海、川などに廃棄された場合でも崩壊され、分解されることから環境への負荷が小さい釣り用疑似餌として、炭素数が6~22である長鎖アルキル基を側鎖に有する水溶性ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリオ-ルおよび水を主成分とする含水ゲル組成物からなる釣り用疑似餌が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、前記疑似餌は、柔軟性に優れているが、伸縮性が高いため、小魚、ゴカイなどの釣り餌に近似した弾力性を有していない。
【0004】
また、魚は、その種類によっては警戒感が強いので、釣り餌を丸飲みするのではなく、釣り餌を口先で突いて引き千切り、釣り餌の情況を窺った後に口に銜えることから、釣り餌には適度な千切れ性が要求される。しかし、前記疑似餌は、いずれも、釣り餌のような千切れ感を有していないことから、魚の食いつきがよくないため、前記疑似餌を用いることによる釣果を期待することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-279762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) 平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールからなる水性ゲルおよびシリカ粒子を含有してなる釣り用疑似餌であって、前記シリカ粒子として粒子径が3~100nmであるシリカ粒子を含有するコロイダルシリカが用いられていることを特徴とする釣り用疑似餌、
(2) ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量が0.01~30質量部である前記(1)に記載の釣り用疑似餌、
(3) 平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液およびシリカ粒子を含有してなる釣り用疑似餌用成形材料であって、前記シリカ粒子として粒子径が3~100nmであるシリカ粒子を含有するコロイダルシリカが用いられていることを特徴とする釣り用疑似餌用成形材料、
(4) ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量が0.01~30質量部である前記(3)に記載の釣り用疑似餌用成形材料、
(5) 平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液およびシリカ粒子を含有する成形材料を-10℃以下の温度に冷凍した後、解凍する釣り用疑似餌の製造方法であって、前記シリカ粒子として粒子径が3~100nmであるシリカ粒子を含有するコロイダルシリカを用いることを特徴とする釣り用疑似餌の製造方法、
(6) ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコール濃度が1~40質量%である前記(5)に記載の釣り用疑似餌の製造方法、および
(7) ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量が0.01~30質量部である前記(5)または(6)に記載の釣り用疑似餌の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1で得られた釣り用疑似餌の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の釣り用疑似餌は、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコールからなる水性ゲルおよびシリカ粒子を含有する。
【0011】
本発明の釣り用疑似餌の成形材料として、平均重合度が300~3500であり、ケン化度が90モル%以上であるポリビニルアルコール水溶液およびシリカ粒子を含有する釣り用疑似餌用成形材料(以下、単に成形材料という)を用いることができる。
【0012】
本発明の釣り用疑似餌は、例えば、前記成形材料を-10℃以下の温度に冷凍した後、解凍することによって容易に製造することができる。
【0013】
ポリビニルアルコールの粘度法で求められる平均重合度は、本発明の釣り用疑似餌の弾力性を高める観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1000以上であり、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌を得る観点から、好ましくは3500以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下である。
【0014】
また、ポリビニルアルコールのケン化度は、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌を得る観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコールのケン化度の上限値には限定がなく、高ければ高いほど好ましく、完全ケン化のポリビニルアルコールがさらに好ましい。
【0015】
ポリビニルアルコールは、通常、水溶液として用いることができる。ポリビニルアルコールを水に溶解させるとき、ポリビニルアルコールの溶解性を高める観点から、ポリビニルアルコールまたは水を加温しておくことが好ましい。ポリビニルアルコール水溶液におけるポリビニルアルコールの濃度は、本発明の釣り用疑似餌の弾力性を高める観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、ポリビニルアルコールを水に十分に溶解させるとともに成形性を向上させる観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0016】
本発明の釣り用疑似餌は、シリカ粒子を含有する。本発明の釣り用疑似餌は、このようにシリカ粒子を含有することから、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する。
【0017】
シリカ粒子の粒子径は、特に限定されないが、ポリビニルアルコールにおける分散安定性および本発明の釣り用疑似餌の表面の平滑性を高める観点から、3~100nm程度であることが好ましい。
【0018】
ポリビニルアルコール100質量部あたりのシリカ粒子の量は、本発明の釣り用疑似餌の弾力性を高める観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、さらに好ましくは0.1質量部以上であり、本発明の釣り用疑似餌の柔軟性および千切れ感を向上させる観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。シリカ粒子は、通常、ポリビニルアルコールまたはその水溶液と混合することができる。
【0019】
シリカ粒子は、例えば、コロイダルシリカとして用いることが好ましい。コロイダルシリカにおけるシリカ粒子の含有量は、コロイダルシリカにおけるシリカ粒子の分散安定性などの観点から、3~40質量%程度であることが好ましい。コロイダルシリカは、例えば、日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックス(登録商標)などとして商業的に容易に入手することができる。
【0020】
成形材料には、釣り用疑似餌の表面の乾燥を防止するために多糖類を含有させることができる。多糖類としては、例えば、キチン、脱アセチル化キチン、キトサン、キトサンアセテート、キトサンマレエート、キトサングリコネート、キトサンソルベート、キトサンホルメート、キトサンサリチレート、キトサンプロピオネート、キトサンラクテート、キトサンイタコネート、キトサンナイアシネート、キトサンガラート、キトサングルタメート、カルボキシメチルキトサン、アルキルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、コラーゲン、アルギネート、ヒアルロン酸、ヘパリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。多糖類のなかでは、本発明の釣り用疑似餌の表面の乾燥を防止する観点から、キトサンおよびその誘導体が好ましく、キトサンがより好ましい。キトサンは、例えば、エビ、カニ、イカなどの甲殻類に由来のキチンを脱アセチル化させたものなどが挙げられる。キトサンは、商業的に容易に入手することができる。キトサンは、通常、粉末の形態で使用することができる。キトサンの分子量は、特に限定されないが、通常、好ましくは10000~200000、より好ましくは10000~40000である。
【0021】
多糖類の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、ポリビニルアルコール100質量部あたり、本発明の釣り用疑似餌の表面の乾燥を防止する観点から、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上であり、本発明の釣り用疑似餌が適度な弾力性を有するようにする観点から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、さらに好ましくは200質量部以下である。
【0022】
多糖類は、分散安定性を高めるために水溶液として用いることが好ましい。多糖類水溶液は、例えば、酢酸、塩酸、乳酸などの酸の水溶液に濃度が0.5~10質量%程度となるように溶解させることによって得ることができる。なお、この水溶液は、必要により、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性物質で中性~塩基性に調整してもよい。
【0023】
成形材料には、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、顔料、染料などの着色剤、香料、酸化防止剤、防黴剤、抗菌剤などの添加剤を適量で添加してもよい。
【0024】
本発明の釣り用疑似餌は、例えば、所定の疑似餌に対応する形状を有する成形型内に成形材料を充填し、-10℃以下の温度に冷凍した後、解凍し、成形された釣り用疑似餌を成形型から取り出すことにより、容易に製造することができる。
【0025】
成形型の材質としては、例えば、シリコーンゴム、エラストマー、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0026】
前記成形材料の冷凍温度は、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌を得る観点から、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下、さらに好ましくは-20℃以下であり、本発明の釣り用疑似餌の生産効率を高める観点から、好ましくは-35℃以上、より好ましくは-30℃以上である。
【0027】
成形材料を前記温度で冷凍する時間は、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌を得るとともに、釣り用疑似餌の生産効率を高める観点から、好ましくは1~10時間程度、より好ましくは3~8時間程度である。
【0028】
成形材料を冷凍することによって成形材料が凍結するが、そのときに成形材料に含まれているポリビニルアルコール水溶液がゲル化するので、水性ゲルおよびシリカ粒子を含む釣り用疑似餌が形成される。
【0029】
次に、このようにして成形された疑似餌を解凍する。疑似餌は、例えば、室温中に放置することによって自然解凍させてもよく、あるいは加熱することによって解凍させてもよいが、エネルギー効率を高める観点から、自然解凍が好ましい。疑似餌を解凍させるときの温度は、特に限定されず、通常、室温~40℃程度であればよい。
【0030】
凍結した成形材料を解凍することにより、本発明の釣り用疑似餌が得られる。得られた釣り用疑似餌は、必要により乾燥させてもよい。乾燥の程度は、本発明の釣り用疑似餌の種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、釣り用疑似餌の種類に応じて適宜調整することが好ましい。
【0031】
なお、釣り用疑似餌を加熱することによって乾燥させた場合、釣り用疑似餌のゲル組織の均一化を図ることができる。釣り用疑似餌は、例えば、乾燥室内で加熱することによって乾燥させることができる。釣り用疑似餌の加熱温度は、ゲル組織の均一化を図る観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上であり、釣り用疑似餌の弾性が低下することを抑制する観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下である。釣り用疑似餌の加熱時間は、加熱温度によって異なるので一概には決定することができないが、通常、釣り用疑似餌のゲル組織の均一化を図る観点から、0.5~3時間程度であることが好ましい。釣り用疑似餌を所定温度で加熱した後、釣り用疑似餌を室温まで放冷すればよい。
【0032】
本発明では、成形材料にポリビニルアルコールおよびシリカ粒子が含まれているので、成形材料を1回だけ冷解凍するだけで実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有する釣り用疑似餌を効率よく得ることができるが、必要により、前記冷解凍の操作を複数回繰り返してもよい。
【0033】
本発明の釣り用疑似餌は、そのままの状態で釣り用疑似餌として使用することができるが、必要により、所望の色彩を有するように釣り用疑似餌に着色を施してもよい。
【0034】
本発明の釣り用疑似餌は、前記したように、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有することから、例えば、小魚、ゴカイなどの環形動物、昆虫の幼虫(ワーム)などの釣り餌に対応する形状で用いることができる。
【0035】
なお、疑似餌が小魚の形状を有する場合と環形動物の形状を有する場合と昆虫の幼虫(ワーム)の形状を有する場合とでは、疑似餌全体の硬さなどが相違するが、その表面における柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感は、比較的それぞれ釣り餌に近似している。しかし、前記疑似餌を用いることによる釣果を高めるためには、当該釣り餌の種類および形状に応じて疑似餌の形状、柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を適宜調整することが好ましい。疑似餌の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感は、例えば、ポリビニルアルコールの種類およびその量、シリカ粒子の量、成形材料における水の量などを調整することによって調節することができる。
【実施例
【0036】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
実施例1
粘度平均重合度が1700であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を1L容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が10質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液を得た。
【0038】
次に、コロイダルシリカ〔日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスXP、シリカの粒子径:約5nm、シリカの含有量:5質量%〕15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、成形材料を得た。
【0039】
釣り餌として全長が約5cmである小魚の形状に対応する内面形状を有する2つ割の割型からなるシリコーン製の成形型を用意し、成形型のゲートからその内部に前記で得られた成形材料を流し込んだ後、成形型のゲートを封じた。
【0040】
次に、前記成形型を冷凍室(室内温度:-20℃)内に入れ、5時間冷凍した後、冷凍室から取り出し、室温となるまで室温中で放置した。
【0041】
次に、得られた疑似餌を前記成形型から取り出し、乾燥させた後、着色することにより、釣り用疑似餌を作製した。前記で得られた釣り用疑似餌を図1に示す。図1は、前記で得られた釣り用疑似餌の図面代用写真である。図1に示されるように、前記で得られた釣り用疑似餌は、小魚に近似した形態を有することがわかる。
【0042】
実施例2
実施例1において、ポリビニルアルコールとして、平均重合度が1000であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-110〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にして釣り用疑似餌を作製した。
【0043】
実施例3
実施例1において、ポリビニルアルコールとして、平均重合度が2000であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-120〕を用いたこと以外は、実施例1と同様にして釣り用疑似餌を作製した。
【0044】
実施例4
実施例1において、コロイダルシリカの量を1mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして釣り用疑似餌を作製した。
【0045】
実施例5
実施例1において、コロイダルシリカの量を80mLに変更したこと以外は、実施例1と同様にして釣り用疑似餌を作製した。
【0046】
実施例6
粘度平均重合度が2000であり、ケン化度が約98~99モル%であるポリビニルアルコール〔(株)クラレ製、商品名:クラレポバールPVA-117〕を1L容のビーカーに入れ、当該ポリビニルアルコールの濃度が10質量%となるように当該ビーカー内に水を添加し、80℃に加温しながらビーカーの内容物を15分間攪拌した後、常温まで放冷することにより、ポリビニルアルコール水溶液を得た。
【0047】
次に、コロイダルシリカ〔日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスXP、シリカの粒子径:約5nm、シリカの含有量:5質量%〕15mLを前記ビーカー内に添加し、ビーカー内の内容物を均一な組成となるように攪拌することにより、成形材料を得た。
【0048】
次に、前記で得られた成形材料を用い、実施例1と同様にして釣り用疑似餌を作製した。
【0049】
比較例1
実施例1において、コロイダルシリカを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして釣り用疑似餌を作製した。
【0050】
比較例2
市販のシリコーンゴムからなる小魚の形状を有する釣り用疑似餌を用意した。
【0051】
次に、各実施例および各比較例で得られた釣り用疑似餌の物性として、柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を以下の方法にしたがって調べた。その結果を表1に示す。
【0052】
(1)柔軟性
釣り用疑似餌をヒトの手指で触り、柔軟性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
〇:釣り用疑似餌の表面が実際の小魚と同様の柔軟性を有する。
△:釣り用疑似餌の表面が実際の小魚とやや相違する柔軟性を有する。
×:釣り用疑似餌の表面の柔軟性が実際の小魚と明らかに相違する。
【0053】
(2)水濡れ性(親水性)
各釣り用疑似餌に水滴を付着させた後、釣り用疑似餌の表面状態を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
〇:釣り用疑似餌の表面の水濡れ性に優れている。
△:釣り用疑似餌の表面が水濡れ性にやや劣る。
×:釣り用疑似餌の表面が水濡れ性を有してない。
【0054】
(3)弾力性
釣り用疑似餌をヒトの手指で触り、弾力性を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
〇:釣り用疑似餌の表面が実際の小魚と同様の弾力性を有する。
△:釣り用疑似餌の表面が実際の小魚とやや相違する弾力性を有する。
×:釣り用疑似餌の表面の弾力性が実際の小魚と明らかに相違する。
【0055】
(4)千切れ感
釣り用疑似餌の尾鰭を手指で掴んで引っ張ることにより、尾鰭が千切れるときの感触を調べて千切れ感を以下の評価基準に基づいて評価した。
〔評価基準〕
〇:釣り用疑似餌の尾鰭が実際の小魚と同様に千切れる。
△:釣り用疑似餌の尾鰭が実際の小魚とやや相違して千切れる。
×:釣り用疑似餌の尾鰭が容易に千切れるか、または尾鰭を千切ることが困難であるため、実際の小魚と千切れ感が相違している。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示された結果から、各実施例で得られた釣り用疑似餌は、いずれも、ポリビニルアルコール水溶液およびシリカ粒子を含有する成形材料が用いられているので、実際の釣り餌と同様の柔軟性、水濡れ性、弾力性および千切れ感を有することがわかる。
【0058】
以上のことから、本発明の釣り用疑似餌は、小魚、ゴカイなどの環形動物、昆虫の幼虫(ワーム)などに模した疑似餌として、例えば、魚類、イカなどの海生軟体動物などの釣りに好適に使用することができる。
図1