(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】基板洗浄装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240821BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 648A
H01L21/30 564C
(21)【出願番号】P 2022079048
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2023-12-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】稲尾 吉浩
(72)【発明者】
【氏名】末兼 大輔
(72)【発明者】
【氏名】菊地 右文
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05159374(US,A)
【文献】特開2002-361155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027-H01L 21/30
H01L 21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の基板の下面の中央部分を保持し、前記基板の外周部が外側に突出した状態で回転する保持部と、
前記基板の下方に前記基板に対して隙間を設けた状態で、前記保持部から離間しかつ前記保持部の外周面を囲むように設けられたリング状部材と、
前記保持部と前記リング状部材との間に配置され、回転している前記基板の下面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、
前記リング状部材の内側に外気を導入する導入部と、を備え
、
前記導入部は、前記リング状部材に形成された開口部であり、
前記開口部は、前記リング状部材の上端から所定長さ離れた位置であって、前記リング状部材の側面に設けられており、
前記ノズルは、鉛直方向に対して前記基板が回転する方向に傾けた向きに前記洗浄液を噴射するように設けられる、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記開口部は、前記リング状部材に複数設けられる、
請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項3】
複数の前記開口部は、前記リング状部材の一周にわたって周方向に等間隔で設けられる、
請求項2に記載の基板洗浄装置。
【請求項4】
前記保持部を回転可能に支持する基台を備え、
前記リング状部材は、前記基台に設けられる、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【請求項5】
前記リング状部材は、取り外し可能に前記基台に設けられる、
請求項4に記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記基台は、前記リング状部材を嵌め込み可能な溝部を備える、
請求項5に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記保持部、前記ノズル、及び前記リング状部材を収容し、かつ上方が開口するカップを備える、請求項1に記載の基板洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の上面(表面)にレジスト液などの塗布液を塗布する方法の一つとして、スピン塗布が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。スピン塗布は、基板を回転させた状態でその基板の上面に塗布液を滴下することで、遠心力により塗布液を拡げて基板の上面に塗布液を均一に塗布する方法である。塗布液をスピン塗布する際に、遠心力で外周に飛散した塗布液が基板の下面(裏面)に回り込んで付着することがある。そのため、基板の下面側に設けられたノズルから、回転している基板の下面に向けて洗浄液を噴射させて、基板の下面に付着した塗布液を除去する、いわゆるバックサイドリンス処理を行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の下面において、塗布液が、洗浄液を噴射するノズルよりも内側に入り込んで付着してしまうと、付着した塗布液をバックサイドリンス処理で除去することが難しい場合がある。従って、基板の下方側において、基板に対して隙間を設けかつノズルよりも外側にリング状部材を設けることで、リング状部材よりも内側に塗布液が入り込むことを抑制するようにしている。
【0005】
ただし、基板が回転すると上記の隙間を通って回転中心から基板の径方向外側に向かう空気の流れが生じる。そのため、リング状部材の内側の空間がリング状部材の外側の空間に比べて負圧となり、この負圧に引かれるように上記の隙間を介してリング状部材の内側に入り込む空気の流れが発生する。その結果、内側に向かう空気の流れによって上記のノズルから噴射した洗浄液が上記の隙間を介して基板の下面に拡がるのを妨げられ、洗浄液が十分に基板の下面に拡がらないことから、基板の洗浄を適切に行うことができないといった問題がある。また、塗布液をスピン塗布する場合も、飛散する塗布液がリング状部材と基板との隙間を介してリング状部材の内側に引き込まれる場合があり、その際、基板の近くを塗布液が通過するため、基板に付着しやすくなるといった問題がある。
【0006】
本発明は、基板の下面において洗浄液が十分に拡がるようにして、基板の下面を適切に洗浄することが可能な基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る基板洗浄装置は、円盤状の基板の下面の中央部分を保持し、基板の外周部が外側に突出した状態で回転する保持部と、基板の下方に基板に対して隙間を設けた状態で、保持部から離間しかつ保持部の外周面を囲むように設けられたリング状部材と、保持部とリング状部材との間に配置され、回転している基板の下面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、リング状部材の内側に外気を導入する導入部と、を備え、導入部は、リング状部材に形成された開口部であり、開口部は、リング状部材の上端から所定長さ離れた位置であって、リング状部材の側面に設けられており、ノズルは、鉛直方向に対して基板が回転する方向に傾けた向きに洗浄液を噴射するように設けられる。
本発明の態様に係る基板洗浄装置は、円盤状の基板の下面の中央部分を保持し、基板の外周部が外側に突出した状態で回転する保持部と、基板の下方に基板に対して隙間を設けた状態で、保持部から離間しかつ保持部の外周面を囲むように設けられたリング状部材と、保持部とリング状部材との間に配置され、回転している基板の下面に向けて洗浄液を噴射するノズルと、リング状部材の内側に外気を導入する導入部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、基板の回転時にリング状部材の内側が負圧になった場合でも、導入部を介してリング状部材の内側に外気が導入されるので、基板とリング状部材との隙間において、リング状部材の外側から内側に向かう空気の流れが発生せず、ノズルから噴射された洗浄液を基板の下面において十分に拡げることができる。その結果、基板の下面を適切に洗浄することができる。また、塗布液をスピン塗布する場合において、飛散した塗布液が基板とリング状部材との隙間から引き込まれないので、リング状部材の内側において塗布液が基板の下面に付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る基板洗浄装置の一例を示す断面図である。
【
図2】実施形態に係る基板洗浄装置を上方から見た図である。
【
図3】リング状部材の周辺を拡大して示す図である。
【
図5】リング状部材を取り外した状態を示す図である。
【
図6】基板に塗布液を塗布した状態を示す図である。
【
図7】基板に洗浄液を噴射した状態を示す図である。
【
図8】第1変形例に係る基板洗浄装置の一例について要部を拡大した図である。
【
図9】第2変形例に係る基板洗浄装置の一例について要部を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する内容に限定されない。また、図面においては実施形態をわかり易く説明するため、一部分を省略して表現している部分がある。さらに、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは大きさ、形状、寸法等が異なっている場合がある。
【0011】
図1は、実施形態に係る基板洗浄装置1の一例を示す断面図である。
図2は、基板洗浄装置を上方から見た図である。
図1及び
図2に示すように、基板洗浄装置1は、保持部2と、駆動部3と、カップ4と、基台5と、バックリンスノズル6と、リング状部材7と、開口部8とを主に備える。保持部2は、円盤状の基板Wの外周部が外側に突出した状態で基板Wの下面の中央部分を保持する。保持部2は、基板Wを保持した状態で、鉛直方向と平行な回転軸AXの軸まわりに回転可能である。保持部2は、スピンチャック21と、シャフト22とを備える。
【0012】
スピンチャック21は、平面視で基板Wより外径が小さい円形状又はほぼ円形状に形成されている。スピンチャック21は、上面側に基板Wを吸着するための吸着部21aを備える。吸着部21aは、基板Wの下面の中央部分を吸着することで、基板Wを水平面と平行又はほぼ平行となるように保持する。吸着部21aは、例えば、スピンチャック21の上面に形成された溝部、又は吸引孔と不図示の吸引装置とが接続されており、吸引装置を駆動して溝部又は吸引孔を吸引することで基板Wを吸着する。なお、吸着部21aの構成は任意であり、静電吸着など基板Wを吸着可能の任意の構成を適用することができる。また、吸着部21aの動作は、基板洗浄装置1に備える制御部Cによって制御される。制御部Cは、予め設定されたタイミングで吸着部21aによる基板Wの吸着、解放を実行させる。
【0013】
スピンチャック21の上方には、レジストなどの塗布液を基板Wに供給する供給ノズル100が設けられている。供給ノズル100は、例えば、基板Wに供給する塗布液を吐出する。本実施形態の基板洗浄装置1は、洗浄液により基板Wを洗浄する機能に加えて、基板Wに塗布液を供給可能な塗布装置としての機能も有している。供給ノズル100は、不図示の塗布液供給部に接続されており、この塗布液供給部から送られた塗布液を基板Wの上面W1に供給する。また、供給ノズル100は、不図示の駆動系により、スピンチャック21の上方から退避することが可能である。また、供給ノズル100から洗浄液が基板Wの上面W1に供給されてもよい。
【0014】
基板Wは、不図示の搬送装置又は作業者によりスピンチャック21上に載置される。基板Wは、その中心位置をスピンチャック21の中心位置に一致させるようにスピンチャック21に載置される。スピンチャック21に対する基板Wのアライメントは、例えば、基板Wがスピンチャック21上に載置された後、基板洗浄装置1に備える不図示のアライメント装置により行ってもよいし、基板Wを搬送する搬送装置が搬送途中等において基板Wの中心位置を取得し、基板Wの中心位置をスピンチャック21の中心位置に一致させるように、スピンチャック21に載置させてもよい。
【0015】
シャフト22は、スピンチャック21の下面から可能に延びるように設けられている。シャフト22は、スピンチャック21の下面に固定されており、スピンチャック21を支持し、かつスピンチャック21と一体で回転する。シャフト22は、基板洗浄装置1の基台5に、不図示の軸受け等によって回転軸AXの軸まわりに回転可能に支持されている。なお、シャフト22は、回転軸AXの軸まわりに回転可能に支持されることに加えて、回転軸AXに沿って昇降可能に支持されてもよい。
【0016】
駆動部3は、シャフト22を回転駆動させる。駆動部3としては、例えば、回転電動モータ等が用いられる。駆動部3によりシャフト22を回転させることで、シャフト22と一体のスピンチャック21及び基板Wを回転軸AXの軸まわりに回転させる。また、シャフト22が回転軸AXに沿って昇降可能である場合、駆動部3は、シャフト22を昇降させるための駆動力を付与してもよい。シャフト22を昇降させることで、スピンチャック21に保持された基板Wの高さ位置を変更することができる。駆動部3の動作は、制御部Cによって制御される。制御部Cは、駆動部3を駆動することにより、予め設定された回転数でスピンチャック21(基板W)を回転軸AXの軸まわりに回転させる。
【0017】
図1に示すように、カップ4は、上部が開口しており、基板洗浄装置1の上部において外殻を形成している。上部の開口は、例えば、基板Wの外径よりも大きな内径で開口するように設けられる。カップ4は、少なくとも保持部2と、基台5と、バックリンスノズル6と、リング状部材7とを収容する。カップ4は、排気及び液体(塗布液、洗浄液など)の排出に係る不図示の構成を有する。カップ4は、内壁部41と、外壁部42とを備える。
【0018】
内壁部41は、平面視で環状に設けられ、内側の縁部が基台5に保持されている。内壁部41は、回転軸AXから放射方向の外側に向けて下方へ傾斜して延びる環状の傾斜壁である。内壁部41の外縁部は、鉛直下方に向かって屈曲した形状を有している。内壁部41は、例えば、基板Wの外側の端部から振り切られた塗布液、洗浄液が流れ落ち、上面に沿って外側に向けて塗布液等をガイドする。なお、基板Wと基台5との間の空間であって、リング状部材7よりも内側の空間を「空間E1」と称する場合がある。また、内壁部41と基板Wとの間の空間を、「空間E2」と称する場合がある。
【0019】
外壁部42は、内壁部41から離間しかつ外側から取り囲むように配置されている。例えば、外壁部42は、第1外壁部42Aと、受け部42Bと、第2外壁部42Cとを備える。第1外壁部42Aは、スピンチャック21に保持された基板Wの側方を覆うように配置される。受け部42Bは、第1外壁部42Aと一体で形成されており、内壁部41よりも下方に配置されている。受け部42Bは、塗布液、洗浄液を受け止める環状の部材である。例えば、受け部42Bは、第1外壁部42A及び内壁部41のいずれか又は双方によって流れ落ちる塗布液、洗浄液を受け止める。受け部42Bには、不図示の排水口等が形成されている。従って、受け部42Bで受け止めた塗布液、洗浄液は、この排水口から基板洗浄装置1の外部に排出される。
【0020】
第2外壁部42Cは、第1外壁部42Aの下端から鉛直下方に延びる環状部材である。なお、第2外壁部42Cの内側であって、内壁部41と受け部42Bとの間の空間を「空間E3」と称する場合がある。また、第2外壁部42Cの内側であって、受け部42Bよりも下方の空間を「空間E4」と称する場合がある。なお、カップ4は、図示した形態に限定されず、少なくとも保持部2と、基台5と、バックリンスノズル6と、リング状部材7とを収容可能な任意の形態を適用可能である。また、カップ4の上部の開口は、例えば蓋等によって開閉可能であってもよい。
【0021】
本実施形態の基板洗浄装置1は、保持部2、バックリンスノズル6、及びリング状部材7を収容し、かつ上方が開口するカップ4を備えているので、塗布液及び洗浄液が外部に飛散することを抑制できる。
【0022】
基台5は、保持部2を回転可能に支持する。基台5は回転せずに固定されている。すなわち、基台5は、保持部2が回転しても位置が固定されている。基台5は、バックリンスノズル6及びリング状部材7を保持する。従って、バックリンスノズル6及びリング状部材7は、保持部2が回転しても位置が固定されている。
【0023】
バックリンスノズル6は、回転している基板Wの下面に向けて上端の噴射口6aから洗浄液を噴射する。洗浄液は、例えば、シンナー等の有機溶剤である。バックリンスノズル6は、基板Wの下方において基台5に設けられており、噴射口6aが基台5の上面から突出した状態となっている。バックリンスノズル6は、回転している基板Wの下面に向けて洗浄液を噴射し、基板Wの下面W2に付着した塗布液等を除去する、いわゆるバックサイドリンス処理を行う。バックリンスノズル6により洗浄液を噴射する方向(すなわち噴射口6aの向き)は、例えば、基板Wの下面W2に対して直交する方向であってもよいし、基板Wの回転方向に向けて鉛直方向から傾けた方向であってもよい。
【0024】
洗浄液を噴射する向きを基板Wが回転する方向に傾けることにより、バックリンスノズル6の噴射口6aから噴射される洗浄液は、基板Wの下面W2に強く当たることが緩和され、洗浄液を効率よく基板Wの下面W2に供給でき、洗浄液の飛沫が発生するのを抑制できる。
【0025】
バックリンスノズル6は、
図2に示すように、スピンチャック21を挟んだ対称位置において基台5の2か所に設けられている。ただし、この形態に限定されず、バックリンスノズル6の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、複数のバックリンスノズル6を配置する場合、回転軸AXの周回方向に等間隔で配置されることに限定されず、間隔が異なってもよい。また、バックリンスノズル6は、基台5に設けられることに限定されず、他の部材に設けられてもよい。
【0026】
バックリンスノズル6は、供給部61に接続されている。供給部61は、例えば、洗浄液を貯留するタンクと、タンク内の洗浄液をバックリンスノズル6に送る送液ポンプとを備えている。
図1では、2つのバックリンスノズル6のそれぞれに供給部61が接続される形態を示しているが、この形態に限定されず、例えば、1つの供給部61が2つのバックリンスノズル6に接続される形態であってもよい。また、供給部61の動作は、制御部Cによって制御される。制御部Cは、予め設定されたタイミングで、所定量の洗浄液をバックリンスノズル6の噴射口6aから噴射させるように供給部61を制御する。
【0027】
リング状部材7は、基板Wの下方において、基板Wの下面W2との間に隙間Gを設けた状態で配置される。リング状部材7は、保持部2から離間しかつ保持部2の外周面を囲むように、基台5に設けられている。従って、保持部2が回転してもリング状部材7は回転しない。リング状部材7は、バックリンスノズル6よりも外側に配置されている。つまり、バックリンスノズル6は、保持部2とリング状部材7との間に配置されている。バックリンスノズル6の噴射口6aの高さは、リング状部材7の上端7aの高さより低い。上端7aの高さは、噴射口6aの高さに対して、例えば、0.5mmから2.0mm低いことが好ましい。また、上端7aの高さは、噴射口6aの高さに対して、例えば、1.0mm低くなるように設定される。
【0028】
図3は、リング状部材7の周辺を拡大して示す図である。
図3に示すように、リング状部材7は、バックリンスノズル6よりも外側かつ内壁部41よりも内側に配置されたリング状の部材である。リング状部材7は、回転軸AXを中心とする周回方向に沿って配置されている。リング状部材7は、基台5から基板Wの下面W2に向けて上方に延びている。基板Wの下面W2とリング状部材7の上端7aとの隙間Gは、例えば、幅H1が1mmに設定されている。ただし、幅H1の大きさは、基板Wの下面W2に干渉しないのであれば特に限定されず、より狭いほうが好ましい。なお、幅H1が大きくなると、隙間Gを介した空間E1から空間E2への流れである気流AF2(
図6及び
図7参照)が生じない、又は生じにくくなる。リング状部材7には、複数の開口部8が形成されている。開口部8は、リング状部材7の内外を貫通して設けられており、リング状部材7の内側に外気を導入する導入部の一例である。
【0029】
図4は、開口部8の一例を示す図である。
図4に示すように、複数の開口部8は、リング状部材7の一周に亘って等間隔で複数形成されている。開口部8のそれぞれは、円形状である。なお、開口部8の内径、数は任意である。開口部8の内径は、例えば、0.5mmから2.0mmが好ましい。開口部8の内径は、例えば、1.0mmに設定される。また、開口部8は、円形状であることに限定されず、例えば、楕円形状、長円形状、矩形状であってもよい。また、開口部8は、スリット状であってもよい。複数の開口部8がリング状部材7に設けられることにより、より多くの外気をリング状部材7の内側に導入できる。また、複数の開口部8がリング状部材7の一周にわたって周方向に等間隔で設けられることにより、リング状部材7の内側にバランスよく外気を導入できる。
【0030】
また、複数の開口部8は、必ずしも等間隔に形成されている必要はなく、隣り合う開口部8の間隔が他の間隔と異なる形態であってもよい。複数の開口部8は、それぞれリング状部材7の上端7aから距離H2だけ離間した位置に形成されている。距離H2は、例えば1mmに設定されている。なお、距離H2は任意に設定可能である。また、複数の開口部8が同一の距離H2でリング状部材7に形成されることに限定されず、複数の開口部8が異なる距離H2でリング状部材7に形成されてもよい。
【0031】
このように、開口部8がリング状部材7の上端7aから所定長さとして距離H2だけ離れた位置に設けられるので、開口部8を介してリング状部材7の外側から内側に向かう外気の流れが、隙間Gを介して基板Wの径方向外側に向かう流れと干渉するのを抑制することができる。
【0032】
このように、開口部8がリング状部材7に設けられるので、導入部を容易に形成することができ、既存の基板洗浄装置1においても大きな設計変更を伴うことなく、リング状部材7を装着するだけで対応することができる。
【0033】
図5は、リング状部材7を取り外した状態を示す図である。
図5に示すように、リング状部材7は、取り外し可能に基台5に設けられる。リング状部材7は、基台5設けられた環状の溝部51に嵌め込み可能である。リング状部材7は、溝部51に嵌め込まれた状態で基台5に保持される。なお、リング状部材7を溝部51に嵌め込んだ状態でリング状部材7を基台5に固定する締結部材等が用いられてもよい。
【0034】
作業者は、リング状部材7を溝部51に嵌め込むことで、リング状部材7を基台5にとる付けることができる。また、作業者は、溝部51からリング状部材7を取り外すことができる。このように、リング状部材7を溝部51に嵌め込んで保持する形態が適用されることで、作業者によるリング状部材7の交換を容易に行うことができる。なお、基台5に対するリング状部材7の取り付け及び取り外しをロボットアーム等の着脱装置により行ってもよい。
【0035】
次に、実施形態に係る基板洗浄装置1の動作について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6及び
図7は、実施形態に係る基板洗浄装置1の動作について説明しており、
図6は、基板Wに塗布液を塗布した状態を示す図であり、
図7は、基板Wに洗浄液を噴射した状態を示す図である。以下に説明する基板洗浄装置1の動作は、制御部Cによって統括して制御されている。先ず、基板Wの上面W1に対して塗布液をスピン塗布する場合について説明する。
【0036】
基板Wは、搬送された後に保持部2に載置される。続いて、基板Wの中心位置を保持部2(スピンチャック21)の中心位置に合わせた後、吸着部21aにより基板Wを保持部2に吸着させる。続いて、駆動部3により保持部2を回転軸AXの軸まわりに回転させることにより、基板Wを所定回転数で回転させる。基板Wの回転が安定した状態で、供給ノズル100からレジスト液などの塗布液D1を基板Wの中央部に向けて吐出することで、基板Wの上面W1に塗布液D1を供給する。基板Wの上面W1に供給された塗布液D1は、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの上面W1を外側に向けて拡がる。
【0037】
基板Wの上面W1に拡がった塗布液D1は、基板Wの外縁部から径方向外側に飛散する。飛散した塗布液D2の一部は、基板Wの下側に回り込む。また、基板Wが回転すると、基板Wの下面W2において、基板Wの径方向外側に向かう空気の流れが生じる。そのため、リング状部材7の外側の空間E2よりも内側の空間E1が負圧になる。従って、負圧に引かれるように空間E1に入り込もうとする空気の流れが発生する。本実施形態では、空間E1に外気を導入する導入部として、リング状部材7に複数の開口部8が形成されている。
【0038】
図6に示すように、上記した負圧に引かれるように、開口部8を通じて空間E2から空間E1に外気が流れ込む気流AF1が生じる。外気が気流AF1として開口部8から空間E1に流れこむことで、隙間Gにおいて内側に向けて空間E1内に引き込む空気の流れが抑制される。すなわち、開口部8から空間E1に流れこむ気流AF1が生じることで、外気が隙間Gから空間E1に流れこむ量を抑制する。また、隙間Gから径方向外側に出た気流AF2が再度隙間Gから空間E1に引き込まれることが抑制される。従って、隙間Gにおいて径方向外側に向かう気流AF2がスムーズに形成された状態となる。
【0039】
その結果、基板Wの下面W2側に回り込んだ飛沫状の塗布液D2は、基板Wの下面W2に沿って径方向外側に向かう気流AF2によって下面W2に付着しにくくなる。また、飛沫状の塗布液D2が基板Wの下面W2に付着したとしても、その付着位置は、リング状部材7よりも径方向外側の位置となる。従って、飛沫状の塗布液D2が、リング状部材7よりも径方向内側の空間E1に浸入することが抑制され、さらに、バックリンスノズル6よりも径方向の内側において基板の下面W2に付着することが抑制される。その結果、基板Wの下面W2の清浄性を向上させることができる。
【0040】
基板Wの上面W1に対する塗布液の塗布が完了した後、基板Wは、基板洗浄装置1から搬出される。基板Wを搬出する場合は、先ず、保持部2の回転を停止させた後、吸着部21aによる基板Wの吸着を解放することで、搬送装置等により基板Wを搬出することができる。塗布液が塗布された基板Wは、乾燥処理等が施されることで塗布膜が掲載される。なお、この乾燥処理は、保持部2において基板Wを保持した状態で行ってもよい。
【0041】
基板Wの上面W1に塗布膜を形成した後、基板Wの下面W2を洗浄するバックサイドリンス処理を行う。なお、バックサイドリンス処理は、塗布液の塗布が完了した直後に行ってもよいし、基板Wへの乾燥処理等が施された後であってもよい。バックサイドリンス処理は、保持部2に基板Wを保持した状態で基板Wを回転させ、バックリンスノズル6から洗浄液Lを基板Wの下面W2に向けて噴出させることにより行う。基板Wの下面W2に供給された洗浄液Lは、基板Wの回転による遠心力によって基板Wの下面W2を外側に向けて拡がる。基板Wを回転させると、上記したように、空間E1の負圧に引かれるようにリング状部材7の内側に入り込もうとする空気の流れが発生する。
【0042】
本実施形態では、空間E2から空間E1に外気を導入する導入部として、リング状部材7に複数の開口部8が形成されている。従って、
図7に示すように、空間E1の負圧によって、開口部8を通じて空間E2から空間E1へ外気が流れ込む気流AF1が形成されることになる。すなわち、上記したように、隙間Gを介して空間E2から空間E1へ外気が流れ込むことが抑制される。また、上記したように、隙間Gから径方向外側に出た気流AF2が再度隙間Gから空間E1に引き込まれることが抑制される。従って、隙間Gにおいて径方向外側に向かう気流AF2の流れが阻害されない。
【0043】
その結果、バックリンスノズル6から供給された洗浄液Lは、基板Wの下面W2を適切に拡がり、下面W2の付着物を確実に除去することができる。すなわち、基板Wの下面W2の洗浄液Lは、隙間Gを介して空間E2から空間E1に向かう逆の流れに妨げられず、適切に外側に向けて拡がる。また、基板Wの下面W2の洗浄液Lは、基板Wの下面W2に沿って径方向外側に向かう気流AF2に押されて基板外側に向けて拡がり易くなる。
【0044】
なお、空間E2から空間E1に外気を導入する導入部である開口部8がない場合は、空間E1が負圧となることにより、隙間Gを介して空間E2から空間E1に外気が流れ込む気流が生じる。従って、隙間Gにおいて、空間E1から空間E2に流れる気流AF2と、空間E2から空間E1に流れる気流とが干渉し、気流AF2の流れが阻害されてしまう。その結果、基板Wの下面W2に供給された洗浄液Lが基板Wの外側に向けて十分に拡がらず、基板Wの洗浄が適切に行われない場合がある。
【0045】
本実施形態によれば、開口部8を介して空間E2から空間E1に流れる気流AF1を形成させるので、隙間Gにおいて気流AF2がスムーズに形成され、基板Wに供給された洗浄液Lを外側に向けて適切に拡げることができる。従って、バックサイドリンス処理において、基板Wの下面W2を適切に洗浄することができる。
【0046】
なお、上記した実施形態では、空間E2から空間E1に外気を導入する導入部として、リング状部材7の開口部8を用いる形態を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。導入部が、リング状部材7以外に設けられてもよい。すなわち、基板洗浄装置1は、リング状部材7の内側に外気を導入する導入部を備えていればよく、導入部の形態については特に限定されない。
【0047】
<第1変形例>
第1変形例について説明する。
図8は、第1変形例に係る基板洗浄装置1Aの一例について要部を拡大した図である。なお、
図8において、上記した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
図8に示すように、基板洗浄装置1Aは、導入部として流路8Aを備える。流路8Aは、空間E1と空間E3とを連通するように、基台5に設けられる。つまり、流路8Aは、内壁部41の下方かつ外壁部42の受け部42Bの上方である空間E3と、空間E1とを連通する。なお、流路8Aは、基台5において1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。流路8Aが複数設けられる場合、例えば、回転軸AXを中心とした周回方向に等間隔で設けられてもよい。
【0048】
基板Wが回転して空間E1が負圧になった場合は、空間E3の外気が流路8Aに流れ込んで気流AF1Aを形成し、空間E3の外気が流路8Aを介して空間E1に送られる。従って、隙間Gにおいて空間E2から空間E1内に引き込む外気の流れを抑制することができる。その結果、上記した実施形態と同様に、隙間Gにおいて気流AF2の流れが阻害されず、基板Wに供給された洗浄液Lを外側に向けて適切に拡げることができる。従って、バックサイドリンス処理において、基板Wの下面W2を適切に洗浄することができる。
【0049】
また、第1変形例では、流路8Aにより空間E3の外気が気流AF1Aとなって空間E1に送られるので、上記した実施形態のように空間E2から送られる気流AF1と比較して、気流AF1Aに含まれる飛沫状の塗布液D2の量が少ない。従って、第1変形例によれば、上記した実施形態と比較して、空間E1に送られる飛沫状の塗布液D2の量を減少できる。
【0050】
<第2変形例>
第2変形例について説明する。
図9は、第2変形例に係る基板洗浄装置1Bの一例について要部を拡大した図である。なお、
図9において、上記した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略又は簡略化する。
図9に示すように、基板洗浄装置1Bは、導入部として流路8Bを備える。流路8Bは、空間E1と空間E4とを連通するように、基台5に設けられる。つまり、流路8Bは、外壁部42の受け部42Bの下方である空間E4と、空間E1とを連通する。なお、流路8Bは、基台5において1つ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。流路8Bが複数設けられる場合、例えば、回転軸AXを中心とした周回方向に等間隔で設けられてもよい。
【0051】
基板Wが回転して空間E1が負圧になった場合は、空間E4の外気が流路8Bに流れ込んで気流AF1Bを形成し、空間E4の外気が流路8Bを介して空間E1に送られる。従って、隙間Gにおいて空間E2から空間E1内に引き込む外気の流れを抑制することができる。その結果、上記した実施形態と同様に、隙間Gにおいて気流AF2の流れが阻害されず、基板Wに供給された洗浄液Lを外側に向けて適切に拡げることができる。従って、バックサイドリンス処理において、基板Wの下面W2を適切に洗浄することができる。
【0052】
また、第2変形例では、流路8Bにより空間E4の外気が気流AF1Bとなって空間E1に送られるので、上記した実施形態のように空間E2から送られる気流AF1、及び上記した第1変形例のように空間E3から送られる気流AF1Aと比較して、気流AF1Bに含まれる飛沫状の塗布液D2の量が少ない、又はほとんど飛沫状の塗布液D2を含まない。従って、第2変形例によれば、上記した実施形態及び第1変形例と比較して、空間E1に送られる飛沫状の塗布液D2の量をより一層減少できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態及び変形例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、上記した実施形態及び変形例に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、本実施形態において示した各手順の実行順序は、前の動作の結果を後の動作で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【0054】
基板洗浄装置1等は、1種類の導入部を備えることに限定されず、複数種類の導入部を備えてもよい。例えば、基板洗浄装置1等は、リング状部材7に形成された開口部8と、流路8Aと、流路8Bとのうち、2種類以上を備える形態であってもよい。この形態によれば、複数種類の導入部を介してより多くの外気をリング状部材7の内側である空間E1に取り込むことができる。
【符号の説明】
【0055】
L・・・洗浄液
W・・・基板
W1・・・上面
W2・・・下面
1、1A、1B・・・基板洗浄装置
2・・・保持部
3・・・駆動部
4・・・カップ
5・・・基台
6・・・バックリンスノズル
7・・・リング状部材
7a・・・上端
8・・・開口部(導入部)
8A、8B・・・流路(導入部)