(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】がん治療薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/423 20060101AFI20240821BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240821BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K31/423
A61P35/00
A61P1/00
(21)【出願番号】P 2023089646
(22)【出願日】2023-05-31
(62)【分割の表示】P 2020017875の分割
【原出願日】2018-08-01
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2017253385
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506334311
【氏名又は名称】ジェイファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 純司
(72)【発明者】
【氏名】岡安 勲
(72)【発明者】
【氏名】ウェンピ マイケル エフ.
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/173970(WO,A1)
【文献】ODA, Koji et al.,L-Type amino acid transporter 1 inhibitors inhibit tumor cell growth,Cancer Science,Vol.101, No.1,2010年01月,p.173-179, ISSN:1349-7006
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
O-(5-アミノ-2-フェニルベンズオキサゾール-7-イル)メチル-3,5-ジクロロ-L-チロシン又はその薬理学的に許容される塩を含む、標準的治療が無効又は不耐の状態にある進行期の大腸がん患者のための、大腸がん治療薬。
【請求項2】
1回1
2mg/m
2~40mg/m
2のO-(5-アミノ-2-フェニルベンズオキサゾール-7-イル)メチル-3,5-ジクロロ-L-チロシン又はその薬理学的に許容される塩が投与される、請求項1に記載の大腸がん治療薬。
【請求項3】
1日1回静脈内持続投与される、請求項1又は2に記載の大腸がん治療薬。
【請求項4】
7日以内の期間連続投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の大腸がん治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞では、急速な細胞増殖や亢進した細胞内代謝を維持するため、糖やアミノ酸等の栄養を外部から取り入れるトランスポーターの発現が高まっている。とりわけLAT1(L型アミノ酸トランスポーター1)は、腫瘍細胞に特異的に発現しているトランスポーターで、シグナル因子でもあるロイシンを含む必須アミノ酸を輸送しており、腫瘍細胞に必須な栄養を供給するという重要な役割を担っている。これに対し、LAT2(L型アミノ酸トランスポーター2)は、正常細胞に広く発現していることが知られている。このため、LAT1に対し選択的な阻害活性を有する化合物は、副作用の少ない抗がん剤となりうる。
【0003】
LAT1に対し選択的な阻害活性を有する化合物として、下記式で表されるO-(5-アミノ-2-フェニルベンズオキサゾール-7-イル)メチル-3,5-ジクロロ-L-チロシン(以下、JPH203ともいう)が知られている(特許文献1)。
【化1】
また、特許文献2には、JPH203を含有する注射剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/081537号
【文献】特開2017-155023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新たながん治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を進めた結果、JPH203が所定のがんに対して高い治療効果(腫瘍縮小効果及び/又は全生存期間の延長効果)を示すことを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
【0008】
[1]JPH203又はその薬理学的に許容される塩を含む、がん治療薬であって、がんが胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんである、がん治療薬。
[2]JPH203又はその薬理学的に許容される塩及び医薬品添加物含む、がん治療用医薬組成物であって、がんが胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんである、がん治療用医薬組成物。
[3]JPH203又はその薬理学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法であって、がんが胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんである、がん治療方法。
[4]がん治療のためのJPH203又はその薬理学的に許容される塩であって、がんが胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんである、JPH203又はその薬理学的に許容される塩。
[5]がん治療薬の製造のためのJPH203又はその薬理学的に許容される塩の使用であって、がんが胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんである、使用。
[6]JPH203又はその薬理学的に許容される塩が1回1mg/m2~60mg/m2で投与される、上記[1]~[5]のがん治療薬、がん治療用医薬組成物、がん治療方法、化合物又は使用。
【発明の効果】
【0009】
JPH203又はその薬理学的に許容される塩は、胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんに対して高い治療効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】JPH203の第I相臨床試験結果のWaterfall plotを示すグラフである。
【
図2】JPH203の第I相臨床試験結果のSwimmer plotを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
JPH203又はその薬理学的に許容される塩は、特許文献1に記載された方法により製造することができる。
【0012】
薬理学的に許容される塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩として具体的には、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、酸性又は塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
【0013】
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。
【0014】
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばジエチルアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。
【0015】
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられる。
【0016】
薬理学的に許容される好ましい塩は、無機酸との塩、特に塩酸塩である。
【0017】
本発明に係るがん治療薬は、JPH203又はその薬理学的に許容される塩を含む。また、必要に応じて医薬品添加物を含んでいてもよい。がん治療薬は、錠剤、顆粒剤、細粒剤、粉剤、カプセル剤などの固形製剤または液剤、ゼリー剤、シロップ剤などの形態で、経口投与することができる。また、がん治療薬は、注射剤、坐剤、軟膏剤などの形態で、非経口的に投与してもよい。
【0018】
がん治療薬の好ましい形態は注射剤である。ここで、「注射剤」とは、最終の形態での注射液に限らず、用時に溶解液を用いて最終注射液を調製可能な注射液前駆体(例えば、液状注射剤(濃厚又は濃縮注射剤)又は固形状注射剤(凍結乾燥注射剤等))をも含む意味に用いる。注射剤は、医薬品添加物として、pH調整剤及びシクロデキストリン類を含むことが好ましい。これらの医薬品添加物を含むことで、不溶性微粒子数が低減された注射剤とすることができ、また、再溶解性が改善された凍結乾燥製剤とすることができる(特許文献2)。
【0019】
pH調整剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このようなpH調整剤として、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
【0020】
pH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。注射剤に配合されるpH調整剤としては、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0021】
注射剤は、pH調整剤を用いて適当なpHに適宜調整されうる。注射剤のpHは、強酸性ではない水溶液を用いた場合であっても形成される不溶性微粒子数を低減するという観点及び強酸性ではない水溶液に対する再溶解性を改善するという観点から、3~6であることが好ましく、3~5であることがより好ましく、3~4.5であることがさらに好ましく、3.5~4.5であることが特に好ましい。
【0022】
シクロデキストリン類は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このようなシクロデキストリン類として、例えば、未修飾シクロデキストリン、修飾シクロデキストリン等が挙げられる。未修飾シクロデキストリンとして、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン等が挙げられる。また修飾シクロデキストリンとして、例えば、アルキル化シクロデキストリン(例えば、ジメチル-α-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、ジメチル-γ-シクロデキストリン等)、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン等)、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(例えば、スルホブチルエーテル-α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-γ-シクロデキストリン)、分岐シクロデキストリン(例えば、マルトシル-α-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-γ-シクロデキストリン等)等が挙げられる。
【0023】
シクロデキストリン類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。シクロデキストリン類は、強酸性ではない水溶液に溶解した場合でも形成される不溶性微粒子数を低減できるという観点及び凍結乾燥製剤の強酸性でない水溶液に対する再溶解性を改善するという観点から、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンが好ましく、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンがより好ましい。
【0024】
注射剤における、シクロデキストリン類の含有量として、例えば、注射剤の総量を基準に、シクロデキストリン類の総含有量が、5~50重量%であることが好ましく、10~40重量%であることがより好ましく、10~30重量%であることがさらに好ましい。
【0025】
注射剤において、JPH203又はその薬理学的に許容される塩の含有量に対するシクロデキストリン類の含有比率は、例えば、JPH203又はその薬理学的に許容される塩の含有量1質量部に対し、シクロデキストリン類の総含有量が、0.01~500質量部であることが好ましく、0.1~100質量部であることがより好ましく、1~50質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
注射剤は、緩衝剤、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等を含んでいてもよい。
【0027】
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、イプシロン-アミノカプロン酸等が挙げられる。
【0028】
懸濁化剤としては、例えば、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどが挙げられる。
【0029】
溶解補助剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0030】
安定化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0031】
等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0032】
保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどが挙げられる。
【0033】
注射剤は、凍結乾燥製剤であってもよい。凍結乾燥製剤は、用時に、例えば、注射用蒸留水、輸液[電解質液(生理食塩水、リンゲル液等)、栄養輸液、蛋白アミノ酸注射液、ビタミン注射液等]、電解液や栄養輸液(糖液等)を組み合わせた代用血液、脂肪を乳化した脂肪乳剤など]の1種又はこれら2種以上の溶媒に溶解して用時溶解型注射剤として使用することができる。
【0034】
凍結乾燥製剤を水に溶解した時のpHとして、3~6であることが好ましく、3~5であることがより好ましく、3~4.5であることがさらに好ましく、3.5~4.5であることが特に好ましい。上記pHは、強酸性ではない水溶液に対する凍結乾燥製剤の再溶解性を改善するという観点から好適である。
【0035】
凍結乾燥製剤は、公知の凍結乾燥製剤の製造方法により作製することができ、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。凍結乾燥の方法としては、例えば、-25℃以下の温度で凍結後、乾燥庫内真空度を約20Pa以下に保ちながら、棚温を25~40度に到達するまで昇温させつつ乾燥させる方法等が挙げられる。
【0036】
注射剤は、静脈、皮下、筋肉内注射剤、点滴静注剤であってよい。
【0037】
JPH203又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与時期、投与間隔等に応じて、適宜選択することができるが、有効性及び安全性の観点から、好ましくは、1回、1mg/m2~60mg/m2(体表面積)であり、より好ましくは、10mg/m2~40mg/m2(体表面積)である。
【0038】
がん治療薬が治療し得るがんは、胆道がん、大腸がん、食道がん、乳がん又は膵がんである。JPH203又はその薬理学的に許容される塩は、胆道がん及び大腸がんに対して腫瘍縮小効果及び全生存期間の延長効果を示すため、胆道がん及び大腸がんに対して特に高い治療効果が期待できる。JPH203又はその薬理学的に許容される塩は、食道がん及び乳がんに対して腫瘍縮小効果を示す。JPH203又はその薬理学的に許容される塩は、膵がんに対して全生存期間の延長効果を示す。
【実施例】
【0039】
JPH203を含む注射剤
注射剤は凍結乾燥製剤で、1バイアル中に50mgのJPH203及び1200mgのスルホブチルエーテル-β-シクロデキストリンを含有する。
【0040】
固形がんを有する患者を対象としたJPH203の第1相臨床試験
本臨床試験は、固形がんを有する患者を対象とした。本臨床試験の目的は、JPH203の安全性(用量制限毒性:DLT)及び有効性を評価することにある。
【0041】
患者の主な選択基準及び除外基準は以下のとおりである。
選択基準
・固形がんを有することが確認されていて、標準的治療が無効又は不耐の状態にある進行期の患者
・LAT1抗体染色のための生検又は既存組織の利用が可能な患者
・登録日から90日以上の生存が期待できる患者
除外基準
・重篤又は臨床上問題ある既往症、合併症を有する患者
・治験薬投与前4週間以内に化学療法、放射線療法、免疫療法、その他腫瘍縮小効果を目的とした療法を受けた患者
【0042】
本臨床試験に参加した患者の背景は以下のとおりである。
【0043】
【0044】
投与スケジュールは以下のとおりである。
1)単回投与
1日目に、所定の投与量を単回投与した。投与量は、12mg/m2(4例)、25mg/m2(3例)、40mg/m2(3例)、60mg/m2(6例)又は85mg/m2(1例)である。12mg/m2投与群のうち1例は、病勢進行のため単回投与のみで中止した。
2)サイクル1
単回投与の投与から8日以降にサイクル1を開始し、1日1回、7日間連続投与した。サイクル1の投与開始日から28~31日目にCT等の検査を行った。
3)サイクル2以降
前サイクルの検査日から28日以内に、次サイクルを開始し、1日1回、7日間連続投与した。投与開始日から28~31日目に検査を行った。
【0045】
単回投与からサイクル1の終了時検査(サイクル1開始から28日目)までの期間に発生し、治験責任(分担)医師により、治験薬との関連性が否定できない(「関連あり」、「多分関連あり」、「どちらともいえない」、「多分関連なし」)と判定された以下の症状とした。ただし、DLTの最終決定は治験責任医師と治験依頼者が協議して行うものとした。なお、必要に応じてDLTの判定に際しては、効果安全性評価委員会に助言を求めるものとした。
1)Grade3以上で治験責任(分担)医師が治験薬の継続投与が困難と判断した非血液毒性(ただし、Grade3のざ瘡様皮疹、斑状丘疹状皮疹、蕁麻疹及び対症療法により発生後7日以内にGrade1に回復する悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、便秘、疲労を除く)
2)Grade4以上の血液毒性又は輸血を必要とするGrade3以上の血小板減少
3)発熱性好中球減少症
【0046】
有効性及び安全性の結果の概要は以下のとおりである。
【表2】
【0047】
DLT
60mg/m2投与群及び85mg/m2投与群において、Grade3のAST/ALT上昇が認められた。
【0048】
有効性
腫瘍の大きさが30%以上減少した例(部分奏効:PR)は12mg/m2投与群に1例あり、腫瘍の大きさが変化しない例(安定:SD)は12mg/m2投与群、25mg/m2投与群、40mg/m2投与群及び60mg/m2投与群に1例ずつあった。また、リンパ節転移病変において顕著な縮小効果が7例中3例にあった(55%、69.4%、80%縮小)。
【0049】
図1に被験者ごとの腫瘍縮小割合を示すWaterfall plotを示し、
図2に被験者ごとの生存月数を表すSwimmer plotを示す。
図1から、JPH203は、胆道がん、大腸がん、食道がん及び乳がんに対して腫瘍縮小効果を示すことが明らかとなった。また、
図2から、JPH203は、胆道がん、大腸がん及び膵がんに対して生存期間の延長効果を示すことが明らかとなった。なお、PD(進行)とはベースライン以降に測定された最小径和に比して、標的病変の径和が20%以上増加し、かつ、径和の絶対値が5mm以上増加した場合である。