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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】フランジ補強具の設置方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 23/036 20060101AFI20240821BHJP
   F16B 2/12 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F16L23/036
F16B2/12 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023103037
(22)【出願日】2023-06-23
(62)【分割の表示】P 2019117510の分割
【原出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2023134504
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】戸次 浩之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 大介
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125599(JP,A)
【文献】特開2014-062613(JP,A)
【文献】特開平11-051270(JP,A)
【文献】特開2018-179015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 23/036
F16B 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の第一フランジ部を上下方向に挟持する下側挟持部材と、前記第一フランジ部よりも上方に位置し対向する一対の第二フランジ部を前記上下方向に挟持する上側挟持部材と、前記上側挟持部材と前記下側挟持部材を前記上下方向に沿って締結する締結機構と、を備えたフランジ補強具の設置方法であって、
前記下側挟持部材及び前記上側挟持部材は夫々、第一分割体と、前記第一分割体に接続された第二分割体と、を有しており、
前記下側挟持部材及び前記上側挟持部材を前記第一フランジ部又は前記第二フランジ部に側方から当接させた状態で、地上から保持治具を操作して、前記保持治具の当接係止部を前記下側挟持部材の上面に当接させた状態で前記下側挟持部材を前記第一フランジ部に向かって押圧して保持する保持工程と、
前記保持治具により前記下側挟持部材を保持した状態で、上方から前記締結機構を締付ける締結工具を挿入して操作することにより、前記上側挟持部材と前記下側挟持部材とを締結させる締結工程と、を含むフランジ補強具の設置方法。
【請求項2】
前記締結機構は、ボルト及びナットを有する請求項1に記載のフランジ補強具の設置方法。
【請求項3】
前記締結工程は、前記下側挟持部材と前記上側挟持部材を近接移動させる請求項2に記載のフランジ補強具の設置方法。
【請求項4】
前記フランジ補強具は、前記下側挟持部材と前記上側挟持部材との間に間隔保持部材を更に備えた請求項3に記載のフランジ補強具の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向する一対のフランジ部を上下方向に挟持する挟持部材と、挟持部材を上下方向に沿って締結する締結機構とを備えたフランジ補強具の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁ケース(補修弁ケース)を短管と弁箱とで構成し、短管の端部から径外方向に突出した第一突出部(フランジ部)と弁箱の端部から径外方向に突出した第二突出部(フランジ部)とをボルトで接合した分割部に装着されるフランジ補強具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のフランジ補強具は、第一突出部と第二突出部とを挟持する挟持部材と、挟持部材を分割部の接合方向(上下方向)に引き寄せて固定する締結機構とを備え、これら挟持部材が第一突出部の外側面のうち、ボルトの頭部の周方向に沿った両側の領域を押圧する2つの押圧部を有している。この構成を備えることにより、補修弁の老朽化に伴いボルトが強度低下を招いている場合でも、フランジ補強具によって分割部のボルト周りが補強され、分割部の隙間からの漏水を防止することができるものである。特に、特許文献1に記載のフランジ補強具は、ボルトの頭部の両側の領域を押圧しているので、補修弁ケースのようにボルトより径内方向の部位の空間が狭隘である場合でも装着することが可能であり、利便性が高いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-23659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、分割部を有する補修弁ケースを収容しているマンホールの側壁と補修弁ケースとの間隔が狭い場合がある。この場合、該間隔にフランジ補強具を挿入して挟持部材を分割部に仮装着した後、締結機構を操作して挟持部材を分割部に本固定する作業が限定された空間で実行されることとなる。このため、挟持部材を十分に保持することができず、締結機構を操作した際、挟持部材が回転してしまい、押圧部の押圧位置が所望の位置からずれるおそれがあり、最悪の場合、フランジ補強具が落下するおそれがあった。
【0006】
そこで、作業効率の高いフランジ補強具の設置方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフランジ補強具の設置方法の特徴構成は、対向する一対の第一フランジ部を上下方向に挟持する下側挟持部材と、前記第一フランジ部よりも上方に位置し対向する一対の第二フランジ部を前記上下方向に挟持する上側挟持部材と、前記上側挟持部材と前記下側挟持部材を前記上下方向に沿って締結する締結機構と、を備えたフランジ補強具の設置方法であって、前記下側挟持部材及び前記上側挟持部材は夫々、第一分割体と、前記第一分割体に接続された第二分割体と、を有しており、前記下側挟持部材及び前記上側挟持部材を前記第一フランジ部又は前記第二フランジ部に側方から当接させた状態で、地上から保持治具を操作して、前記保持治具の当接係止部を前記下側挟持部材の上面に当接させた状態で前記下側挟持部材を前記第一フランジ部に向かって押圧して保持する保持工程と、前記保持治具により前記下側挟持部材を保持した状態で、上方から前記締結機構を締付ける締結工具を挿入して操作することにより、前記上側挟持部材と前記下側挟持部材とを締結させる締結工程と、を含む点にある。
【0008】
本方法では、下側挟持部材及び上側挟持部材により第一フランジ部及び第二フランジ部の2つのフランジ部を同時に補強することができる。また、保持工程において、下側挟持部材及び上側挟持部材を第一フランジ部又は第二フランジ部に側方から当接させた状態で、地上から保持治具を操作することにより、下側挟持部材が第一フランジ部に向かって押圧される。その結果、締結工程において締結機構を締付けて下側挟持部材を第一フランジ部に固定するとき、下側挟持部材が回転することを防止できる。更に、保持治具は地上から挿入し操作することができるため、マンホールの側壁と補修弁ケースとの間隔が狭い場合でも、下側挟持部材及び上側挟持部材を第一フランジ部又は第二フランジ部に固定することができる。その結果、フランジ部の周辺環境に左右されず、フランジ補強具を作業効率良く設置することができる。
【0009】
他の特徴構成は、前記締結機構は、ボルト及びナットを有する点にある。
【0010】
本構成の締結機構のように、ボルト及びナットを有していれば、上方から締結機構を締付ける締結工具を挿入して締結することが可能となるため、作業効率を更に高めることができる。
【0011】
他の特徴構成は、前記締結工程は、前記下側挟持部材と前記上側挟持部材を近接移動させる点にある。
【0012】
本構成のように下側挟持部材と上側挟持部材を近接移動させれば、第一フランジ部及び第二フランジ部の接合面からの漏水を防止できる。
【0013】
他の特徴構成は、前記フランジ補強具は、前記下側挟持部材と前記上側挟持部材との間に間隔保持部材を更に備えている点にある。
【0014】
本構成のように下側挟持部材と上側挟持部材との間に間隔保持部材を備えていれば、下側挟持部材と上側挟持部材の間隔を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】筒状部材の斜視図である。
図2】分割部の平面図である。
図3】筒状部材の拡大縦断面図である。
図4】上側挟持部材の被挿入部の概略構成を示す図である。
図5】上側挟持部材の挿入部の概略構成を示す図である。
図6】下側挟持部材の被挿入部の概略構成を示す図である。
図7】下側挟持部材の挿入部の概略構成を示す図である。
図8】マンホール内でフランジ部にフランジ補強具を取付けた状態を示す側面図である。
図9】マンホール内でフランジ部にフランジ補強具を取付けた状態を示す平面図である。
図10図9のX-X矢視図である。
図11】フランジ補強具の設置治具の全体斜視図である。
図12】フランジ補強具の設置治具の部分斜視図である。
図13】マンホール内でのフランジ補強具の設置方法の第一工程~第二工程を示す図である。
図14】マンホール内でのフランジ補強具の設置方法の第三工程を示す図である。
図15】マンホール内でのフランジ補強具の設置方法の第四工程~第五工程を示す図である。
図16】別実施形態1に係るフランジ補強具の縦断面図である。
図17】別実施形態2に係る設置治具の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るフランジ補強具の設置治具およびフランジ補強具の設置方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、重力方向を下、重力方向とは反対方向を上として説明する。
【0017】
本実施形態では、フランジ補強具(以下、「補強具P」と言う。)を用いて、両フランジ部11a,Taおよび両フランジ部Va,12aを補強すると共に、弁箱Vと短管Tとで構成される鋳鉄製の補修弁ケースXの分割部1に押付力を作用させることにより、分割部1からの漏水を防止する場合を説明する。
【0018】
図1図3には、接続管11(第一筒状部材),短管T(第二筒状部材),弁箱V(第三筒状部材)および分岐管12(第四筒状部材)と、短管Tと弁箱Vとの分割部1が示される。短管Tの一端には、弁箱Vの第二分割部1Bが接合される第一分割部1Aが、短管Tの径外方向に突出形成されている。短管Tの他端には、空気弁や消火栓などの接続管11の径外方向に突出した円盤状の接続フランジ部11a(第二のフランジ部の一例)が取付けられる円盤状の短管フランジ部Ta(第二のフランジ部の一例)が、短管Tの径外方向に突出形成されている。また、弁箱Vの一端には、短管Tの第一分割部1Aが接合される第二分割部1Bが、弁箱Vの径外方向に突出形成されている。弁箱Vの他端には、水道本管(不図示)の分岐管12の径外方向に突出した円盤状の分岐フランジ部12a(第一のフランジ部の一例)が取付けられる円盤状の弁箱フランジ部Va(第一のフランジ部の一例)が、弁箱Vの径外方向に延出形成されている。
【0019】
第一分割部1Aおよび第二分割部1Bは、平面視矩形状に形成されている。これら第一分割部1Aおよび第二分割部1Bには、後述するボール弁体Vbを回動操作可能な操作部10が接続されている。
【0020】
図2図3に示すように、第二分割部1Bには、接合方向(上下方向)に貫通する複数(本実施形態では4箇所)の貫通孔3bが周方向に離間して形成されている。また、第一分割部1Aには、接合面1bとは反対側が閉塞された複数の孔部3a(本実施形態では4箇所)が周方向に離間して形成されている。夫々の孔部3aの内周面には雌ねじ3cが形成されており、第一分割部1Aからボルト4が突出しないように、雄ねじ4bを雌ねじ3cに螺合することで第一分割部1Aおよび第二分割部1Bが接合されている。つまり、第二分割部1Bの外側面1aにはボルト4の頭部4aが露出している。
【0021】
図1に示すように、空気弁や消火栓などの接続管11の接続フランジ部11aと短管Tの他端に形成された短管フランジ部Taとは、ボルト41a,ナット41bで連結されている。水道管などの分岐管12の分岐フランジ部12aと、弁箱Vの他端に形成された弁箱フランジ部Vaとは、ボルト42a,ナット42bで連結されている。
【0022】
図3に示すように、弁箱Vの内部には、ボール弁体Vbが収納されており、操作部10の開閉操作によりボール弁体Vbが回動し、流路の連通、非連通が切換えられる。
【0023】
以下、図1および図3に示す接続フランジ部11a,短管フランジ部Ta,第一分割部1A,第二分割部1B,弁箱フランジ部Vaおよび分岐フランジ部12aにおいて、夫々が連結部材により連結された際に接合方向(以下、「上下方向」と言う場合がある。)で相互に対向する面を接合面1bとし、この接合面1bと平行で上下方向に垂直な外表面を外側面1aとして説明する。また、接続フランジ部11a,短管フランジ部Ta,弁箱フランジ部Vaおよび分岐フランジ部12aにおける外周方向の面を外周面1cとして説明する。
【0024】
(フランジ補強具の基本構成)
図8に示すように、補強具Pは、両フランジ部11a,Taおよび両フランジ部Va,12aに装着される鋳鉄製の上側挟持部材10A(第二の挟持部材の一例)および下側挟持部材10B(第一の挟持部材の一例)と、上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとを近接させる近接方向の力を印加する連結機構Rと、を備えている。また、補強具Pは、上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとの間隔を保持する間隔保持部材9を備えている。
【0025】
図8図10に示すように、上側挟持部材10Aは、接続管11の接続フランジ部11aの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット41bの間の領域を押圧する2つの押圧部6B(第二押圧部の一例)を有する第一被挿入部6と、短管Tの短管フランジ部Taの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト41aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部5Cを有する第一挿入部5と、を備えている。また、これら第一挿入部5および第一被挿入部6を、接続管11の接続フランジ部11aおよび短管Tの短管フランジ部Taの接合方向に引き寄せて(近接させて)締付固定する上側締結機構Ka(第二の締結機構の一例)を備えている。本実施形態における上側締結機構Kaは、後述する連結機構Rの連結ボルトRaが兼用されている。
【0026】
図4および図10に示すように、第一被挿入部6は、金属部材により構成され、角筒部6Aと、角筒部6Aの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部6Bとを一体的に備えている。角筒部6Aは、横断面視(接合方向と垂直な断面視)において、外面6aおよび内面6bが両フランジ部11a,Taに近付くほど拡径する台形状を呈した有底角筒状で形成されている。また、押圧部6Bは、角筒部6Aの外面6aの四辺のうちの一辺から外方側に向かって二股状に延出して形成されている。
【0027】
角筒部6Aは、両フランジ部11a,Taの外周面1cと対向する内表面(外面6a)の周方向に沿った両端部に径内方向に突出して形成され、両フランジ部11a,Taに当接可能な当接部6hを有している。第一挿入部5と第一被挿入部6とを上側締結機構Kaで固定する際、当接部6hが両フランジ部11a,Taに当接することで、上側挟持部材10Aの回転が阻止される。
【0028】
角筒部6Aの内部には、両フランジ部11a,Taの接合方向に沿って、後述する第一挿入部5の角筒部5Aを受け入れる筒状内部空間6cが形成されている。筒状内部空間6cは横断面視で台形状に形成され、断面台形状の第一挿入部5の角筒部5Aの外径よりも若干大きく形成されている。このため、第一挿入部5の角筒部5Aの外面5aと第一被挿入部6の角筒部6Aの内面6bとの接合方向に垂直な断面形状は、第一挿入部5を第一被挿入部6に挿入すると、挿入方向(筒状内部空間6cの長手方向)には摺動可能であるが、挿入方向周り(筒状内部空間6cの長手方向に沿った軸周り)での相対回転が不能となるように形成されている。
【0029】
また、筒状内部空間6cにおいて、押圧部6Bが形成された側とは反対側が開口形成されている。筒状内部空間6cにおける押圧部6Bが形成された側は、後述する連結機構Rの連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2が螺合すること無く挿入可能な挿通孔6dが、角筒部5Aの底部を貫通する状態で開口形成されている。
【0030】
押圧部6Bは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成され、先端側に行くにつれて挿通孔6dから遠ざかるテーパー形状に形成されている。また、押圧部6Bのうち筒状内部空間6cの開口側の先端部位が、平坦な押圧面6eとして形成されている。
【0031】
図5および図10に示すように、第一挿入部5は、金属部材により構成され、角筒部5Aと、角筒部5Aの外面5aから全周に亘って外方側に延出する鍔状部5Bと、鍔状部5Bの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部5Cとを一体的に備えている。
角筒部5Aは、横断面視において、外面5aが両フランジ部11a,Taに近付くほど拡径する台形状を呈し、内面5bが円形状の有底角筒状で形成されている。
【0032】
角筒部5Aの内面5bは、後述する連結機構Rの連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2が螺合すること無く挿通可能となっている。鍔状部5Bは、接合方向と垂直な断面視で台形状に形成され、中央部分から角筒部5Aが延出している。押圧部5Cは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成されている。また、押圧部5Cのうち角筒部5A側の先端部位が、平坦な押圧面5eとして形成されている。
【0033】
図10に示すように、上側締結機構Kaは、連結ボルトRaと近接ナット91と位置調整ナット92とを有している。第一被挿入部6の押圧部6Bを接続管11の接続フランジ部11aの外側面1aに当接させた状態で、第一挿入部5の外面5aに当接する位置調整ナット92を連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合することで、第一挿入部5の押圧部5Cが短管Tの短管フランジ部Taの外側面1aに当接し、第一挿入部5の第一被挿入部6に対する相対位置が調整される。そして、近接ナット91を締め付けることにより、第一挿入部5および第一被挿入部6を両フランジ部11a,Taの接合方向に引き寄せて締結固定する。これにより、上側締結機構Kaが機能すると共に、第一被挿入部6の押圧部6Bが接続管11の接続フランジ部11aを下側に押圧して分割部1の接合面1bからの漏水を防止するための連結機構Rが機能する。
【0034】
図8および図10に示すように、下側挟持部材10Bは、弁箱Vの弁箱フランジ部Vaの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット42bの間の領域を押圧する2つの押圧部7B(第一押圧部の一例)を有する第二被挿入部7と、分岐管12の分岐フランジ部12aの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト42aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部8Cを有する第二挿入部8と、を備えている。また、これら第二被挿入部7および第二挿入部8を、弁箱Vの弁箱フランジ部Vaおよび分岐管12の分岐フランジ部12aの接合方向に引き寄せて(近接させて)締付固定する下側締結機構Kb(第一の締結機構の一例)を備えている。本実施形態における下側締結機構Kbは、後述する連結機構Rの連結ボルトRaが兼用されている。
【0035】
図6および図10に示すように、第二被挿入部7は、金属部材により構成され、角筒部7Aと押圧部7Bとを一体的に備えている。角筒部7Aは、横断面視(接合方向と垂直な断面視)において、外面7aおよび内面7bが両フランジ部Va,12aに近付くほど拡径する台形状を呈した有底角筒状で形成されている。また、押圧部7Bは、角筒部7Aの外面7aの四辺のうちの一辺から外方側に向かって二股状に延出して形成されている。
【0036】
角筒部7Aは、両フランジ部Va,12aの外周面1cと対向する内表面(外面7a)の周方向に沿った両端部に径内方向に突出して形成され、両フランジ部Va,12aに当接可能な一対の当接部7hを有している。第二被挿入部7と第二挿入部8とを下側締結機構Kbで固定する際、当接部7hが両フランジ部Va,12aに当接することで、下側挟持部材10Bの回転が阻止される。
【0037】
角筒部7Aの内部には、両フランジ部Va,12aの接合方向に沿って、後述する第二挿入部8の角筒部8Aを受け入れる筒状内部空間7cが形成されている。筒状内部空間7cは横断面視で台形状に形成され、台形状の角筒部8Aの外径よりも若干大きく形成されている。このため、第二挿入部8の角筒部8Aの外面8aと第二被挿入部7の角筒部7Aの内面7bとの接合方向に垂直な断面形状は、第二挿入部8を第二被挿入部7に挿入すると、挿入方向(筒状内部空間7cの長手方向)には摺動可能であるが、挿入方向周り(筒状内部空間7cの長手方向に沿った軸周り)での相対回転が不能となるように形成されている。
【0038】
また、筒状内部空間7cにおいて、押圧部7Bが形成された側とは反対側が開口形成されている。筒状内部空間7cにおける押圧部7Bが形成された側は、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2が螺合すること無く挿入可能な挿通孔7dが、角筒部7Aの底部を貫通する状態で開口形成されている。
【0039】
押圧部7Bは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成され、先端側に行くにつれて挿通孔7dから遠ざかるテーパー形状に形成されている。また、押圧部7Bのうち筒状内部空間7cの開口側の先端部位が、平坦な押圧面7eとして形成されている。
【0040】
図7および図10に示すように、第二挿入部8は、金属部材により構成され、角筒部8Aと、角筒部8Aの外面8aから全周に亘って外方側に延出する鍔状部8Bと、鍔状部8Bの四辺のうちの一辺からさらに外方側に延出する押圧部8Cとを一体的に備えている。
角筒部8Aは、横断面視において、外面8aが両フランジ部Va,12aに近付くほど拡径する台形状を呈し、内面8bが円形状の有底角筒状で形成されている。
【0041】
角筒部8Aの内面8bには、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を螺合可能な雌ねじ部8fが形成されている。鍔状部8Bは、接合方向と垂直な断面視で台形状に形成され、中央部分から角筒部8Aが延出している。押圧部8Cは、平面視で腕の長さが同一の二股状に形成されている。また、押圧部8Cのうち角筒部8A側の先端部位が、平坦な押圧面8eとして形成されている。
【0042】
図10に示すように、下側締結機構Kbは、連結ボルトRaと押圧ナット93と位置決めナット94とを有している。連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を第二挿入部8の角筒部8Aの内面8bの雌ねじ部8fに螺合し、位置決めナット94により押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧するように固定された状態で連結ボルトRaを締め付け、第二被挿入部7および第二挿入部8を両フランジ部Va,12aの接合方向に引き寄せて締結固定する。これにより、下側締結機構Kbが機能すると共に、第二挿入部8の押圧部8Cが分岐管12の分岐フランジ部12aを上側に押圧して分割部1の接合面1bからの漏水を防止するための連結機構Rが機能する。なお、第二被挿入部7の位置を固定するものであれば、押圧ナット93および位置決めナット94に限定されず、連結ボルトRaに一体化した溶接ピース等であっても良い。
【0043】
連結機構Rは、連結ボルトRaを有している。位置決めナット94により押圧ナット93を位置決めした状態で連結ボルトRaを締め付け、第二被挿入部7および第二挿入部8を両フランジ部Va,12aの接合方向に引き寄せている。そして、上側締結機構Kaの位置調整ナット92を連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合すると共に、近接ナット91を締め付けることにより、第一挿入部5および第一被挿入部6を両フランジ部11a,Taの接合方向に引き寄せて締結固定する。その結果、上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとが近接移動して、補修弁ケースXの分割部1に押圧力を付与している。また、上述したように、上側締結機構Kaは、連結機構Rの連結ボルトRaに近接ナット91および位置調整ナット92を螺合して構成されており、下側締結機構Kbは、連結機構Rの連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に押圧ナット93および位置決めナット94を螺合して構成されている。つまり、本実施形態における連結機構Rの連結ボルトRaは、締結機構Ka,Kbと兼用されており、連結ボルトRaを軸として、第一挿入部5および第一被挿入部6の引き寄せと、第二被挿入部7および第二挿入部8の引き寄せと、両挟持部材10A,10Bの近接移動とを実行することができる。
【0044】
図10に示すように、間隔保持部材9は、第一挿入部5の押圧部5Cと第二被挿入部7の押圧部7Bとに亘って係止された弾性部材である。連結ボルトRaで連結された状態の両挟持部材10A,10Bを装着する際、間隔保持部材9の圧縮力により、位置調整ナット92が第一挿入部5の外面5aを押圧するまで第一挿入部5が引っ張られ、押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧するまで第二被挿入部7が引っ張られる。その結果、第一挿入部5の押圧部5Cと第一被挿入部6の押圧部6Bとの間隔が維持され、両フランジ部11a,Taの外側面1aに対向するように、上側挟持部材10Aの押圧部5C,6Bを挿入することができる。また、第二被挿入部7の押圧部7Bと第二挿入部8の押圧部8Cとの間隔が維持され、両フランジ部Va,12aの外側面1aに対向するように、下側挟持部材10Bの押圧部7B,8Cを挿入することができる。
【0045】
(設置治具の基本構成)
図11図12を用いて、特にマンホールMの側壁Maと補修弁ケースXとの間隔が狭い場合に補強具Pを設置するための設置治具E(以下、単に「補強具Pの設置治具E」ともいう)の基本構成について説明する。
【0046】
設置治具Eは、下側挟持部材10Bの背面7Aa(角筒部7Aの外面7aのうち弁箱フランジ部Vaとは反対側の面)に当接して下側挟持部材10Bを保持する金属製の保持機構21と、保持機構21から上下方向に沿って延出し、保持機構21が下側挟持部材10Bを両フランジ部Va,12aに向かって押圧するように操作可能な金属製の棒状部材22と、を備えている(図13も参照)。
【0047】
保持機構21は、図6に示す下側挟持部材10Bの背面7Aaの台形状に沿うように、弁箱フランジ部Vaに近付くほど拡径する台形状の内面21aを含む本体部21Aを有している。本体部21Aは、下側挟持部材10Bの背面7Aaの上側を覆う背面覆部21Aaと、下側挟持部材10Bの上面7Ab(角筒部7Aの外面7aのうち上側挟持部材10A側の面)に当接して係止される当接係止部21Abと、が一体形成されている。また、保持機構21には、空気(流体の一例)を噴出可能な噴出口31aを含む流体噴出路31が設けられている。この流体噴出路31は、棒状部材22の内部を経由して保持機構21の側面に固定されている。さらに、保持機構21の棒状部材22とは反対側の端部には、カッター部材32が本体部21Aに一体形成されている。このカッター部材32は、両フランジ部Va,12aを覆うポリスリーブを切断することができる。なお、背面覆部21Aa,当接係止部21Ab及びカッター部材32は、本体部21Aに一体形成せずに、別部材をボルトや接着等で固定しても良い。
【0048】
棒状部材22は、先端部に保持機構21の本体部21Aがバンドや溶接等により固定された棒本体22Aと、棒本体22Aの延在方向とは垂直な方向に沿って棒本体22Aの基端部(先端部と反対側の端部)に係止された把持部22Bと、を有している。把持部22Bを把持した状態で棒本体22AをマンホールMの側壁Maに当接させるように傾倒させることにより、保持機構21が下側挟持部材10Bを両フランジ部Va,12aに向かって押圧する(図13も参照)。これにより、下側締結機構Kbを締付操作する際、下側挟持部材10Bの回転を防止することができる。
【0049】
続いて、設置治具Eを用いた補強具Pの設置方法について、図13図16を用いて説明する。
【0050】
まず、事前準備として、補修弁ケースXのフランジ部11a,Ta,Va,12aを覆うポリスリーブがある場合は、設置治具EをマンホールMと補修弁ケースXとの間に挿入して、保持機構21の端部に形成されたカッター部材32によりポリスリーブを切断する。そして、補修弁ケースXを覆っているポリスリーブを除去する。また、補修弁ケースXのフランジ部11a,Ta,Va,12aに泥等が付着している場合は、保持機構21の噴出口31aから空気を噴出させて、泥等を除去する。
【0051】
図13に示すように、位置調整ナット92,押圧ナット93および位置決めナット94を螺合した状態の連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を、下側挟持部材10Bの第二挿入部8の雌ねじ部8fに螺合して仮止めする(第一工程、図10も参照)。また、第二被挿入部7の外面7aを押圧ナット93が押圧している状態で、位置決めナット94により押圧ナット93が移動しないように予め位置固定している。そして、この連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に上側挟持部材10Aを挿入し、近接ナット91を螺合する(第一工程)。
同時に、第一挿入部5の押圧部5Cと第二被挿入部7の押圧部7Bとに亘って間隔保持部材9を装着する。このとき、第一被挿入部6の押圧部6Bと第二挿入部8の押圧部8Cとの間隔は、接続フランジ部11aと分岐フランジ部12aとの間隔以上となるように、近接ナット91が第一被挿入部6の外面6aから離間している。また、位置調整ナット92が第一挿入部5の外面5aを押圧することにより第一被挿入部6の押圧部6Bと第一挿入部5の押圧部5Cとの間隔が維持されており、押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧することにより第二被挿入部7の押圧部7Bと第二挿入部8の押圧部8Cとの間隔が維持されている。このように、連結機構R,上側締結機構Kaおよび下側締結機構Kbが仮止めされた状態の上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとを、夫々両フランジ部11a,Taと両フランジ部Va,12aに対向する位置まで近接移動させる。
【0052】
次いで、第二被挿入部7の押圧部7Bを弁箱フランジ部Vaの外側面1aに当接させた状態で、第一被挿入部6の押圧部6Bを接続フランジ部11aの外側面1aに当接させる(第二工程)。また、第一被挿入部6の押圧部6Bを接続フランジ部11aの外側面1aに当接させるとき、第一被挿入部6の押圧部6Bを上下に移動させながら位置調整する。
次いで、マンホールMの側壁Maと両挟持部材10A,10Bとの隙間から設置治具Eを挿入し、保持機構21の当接係止部21Abが下側挟持部材10Bの上面7Abに当接するように、設置治具Eを下側挟持部材10Bに装着する(第三工程)。次いで、把持部22Bを把持した状態で棒本体22AをマンホールMの側壁Maに当接させるように傾倒させることにより、保持機構21が弁箱フランジ部Vaに向かって下側挟持部材10Bを押圧する(第三工程)。次いで、図14に示すように、棒本体22AをマンホールMの側壁Maに当接させた状態で、且つ押圧ナット93が第二被挿入部7の外面7aを押圧している状態で、連結ボルトRaを締め付けることにより、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2を第二挿入部8の雌ねじ部8fに螺合させて、第二挿入部8を第二被挿入部7に引き寄せ固定する(第四工程、図10も参照)。このとき、ラチェットレンチL等の工具を用いて連結ボルトRaの頭部Ra1を締め付けることで第二挿入部8が上側に移動し、分岐フランジ部12aの外側面1aには第二挿入部8の押圧部8Cから上向きの力が作用するため、上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとが近接移動する。これにより、両フランジ部Va,12aの接合面1bからの漏水を防止すると共に、分割部1の接合面1bからの漏水を防止することができる。このように、本実施形態では、連結ボルトRaの頭部Ra1を上側から操作可能な工具を用いて締め付けることで、連結機構Rの機能と下側締結機構Kbの機能とを同時に実行できるため、補修弁ケースXと補修弁ケースXを収容しているマンホールMとの隙間が小さい場合でもマンホールMを取り壊す必要がなく、効率的である。また、上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとの距離が離れている場合でも、上側挟持部材10Aや下側挟持部材10Bの寸法を変更する必要がなく、連結ボルトRaの寸法のみを変更すれば良い。しかも、マンホールMの側壁Maに棒状部材22を当接させるように傾倒させれば、てこの原理により保持機構21が下側挟持部材10Bを弁箱フランジ部Vaに向かって押圧する。その結果、下側締結機構Kbの締付け作業をする際、設置治具Eの姿勢が安定するため、作業効率を更に高めることができる。
【0053】
次いで、図15に示すように、設置治具Eを取り外し、上側から手動により第一挿入部5の外面5aを押圧している位置調整ナット92を回転させて第一挿入部5の押圧部5Cを短管フランジ部Taの外側面1aに当接させる(第五工程)。この位置調整ナット92の回転操作は、マンホールMの上部から手を挿入することで容易に行うことができる。次いで、ラチェットレンチやスパナ等の工具(不図示)を用いて近接ナット91を締め付けて、第一被挿入部6を第一挿入部5に引き寄せ固定する(第五工程)。このとき、工具を用いて近接ナット91を締め付けることで第一被挿入部6が下側に移動し、接続フランジ部11aの外側面1aには第一被挿入部6の押圧部6Bから下向きの力が作用するため、上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとが近接移動すると共に、分割部1を閉じる方向の力が作用する。これにより、両フランジ部Va,12aの接合面1bからの漏水を防止すると共に、分割部1の接合面1bからの漏水を防止することができる。本実施形態では、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合した近接ナット91を上側から操作可能な工具を用いて締め付けることで、上側締結機構Kaを機能させることができるため、補修弁ケースXとマンホールMとの隙間が小さい場合でもマンホールMを取り壊す必要がない。
【0054】
このように、本実施形態では、連結機構Rの連結ボルトRaを上側締結機構Kaおよび下側締結機構Kbに兼用しているので、上側締結機構Kaおよび下側締結機構Kbを引き寄せ固定するボルトを別途設ける必要がなく、部品点数を節約して製造コストを節約できると共に、補強具Pをコンパクトに構成できる。
【0055】
また、上側挟持部材10Aにおける第一挿入部5の第一被挿入部6に対する挿入方向や下側挟持部材10Bにおける第二挿入部8の第二被挿入部7に対する挿入方向は、連結機構Rによる上側挟持部材10Aと下側挟持部材10Bとの近接移動方向(上下方向)と同方向であるため、該同方向による作業が多くなり、マンホールMと補修弁ケースXとの隙間が小さい場合でもマンホールMを取り壊す必要がない。
【0056】
しかも、本実施形態では、上側挟持部材10Aが下側挟持部材10Bよりも上側にあり、第一被挿入部6が第一挿入部5よりも上側にあり、第二被挿入部7が第二挿入部8よりも上側にある。この配置により、連結ボルトRaを上側から工具により回転操作することで連結機構Rおよび下側締結機構Kbを機能させることが可能となり、近接ナット91を上側から工具により回転操作することで上側締結機構Kaを機能させることが可能となる。また、連結ボルトRaを操作することにより第二挿入部8の押圧部8Cから上向きの力が作用し、近接ナット91を操作することにより第一被挿入部6の押圧部6Bから下向きの力が作用し、これらは分割部1を閉じる方向の力であるため、作業中に分割部1の接合面1bを誤って広げることもない。つまり、連結機構R,上側締結機構Kaおよび下側締結機構Kbを全て上側から操作することが可能となるため、補修弁ケースXを収容しているマンホールMと補修弁ケースXとの間隔が狭い場合でも、補強具Pを正しく装着することができる。よって、補強具Pの装着にあたってマンホールMを取り壊す必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0057】
本実施形態の設置治具Eは、下側挟持部材10Bの背面7Aaに当接して下側挟持部材10Bを保持する保持機構21と、保持機構21から上下方向に延出する棒状部材22とを備えている。これにより、下側挟持部材10Bをフランジ部Va,12aに装着する際、保持機構21を下側挟持部材10Bに当接させた状態で棒状部材22を操作することにより、保持機構21が下側挟持部材10Bを押圧する。その結果、下側締結機構Kbを操作して下側挟持部材10Bをフランジ部Va,12aに本固定するとき、下側挟持部材10Bが回転することを防止できる。
【0058】
また、設置治具Eは保持機構21と棒状部材22とで構成されているため、マンホールMの側壁Maと補修弁ケースXとの間隔が狭い場合でも、棒状部材22を把持した状態で該間隔に設置治具Eを挿入することが可能となる。その結果、フランジ部11a,Ta,Va,12aの周辺環境に左右されず、補強具Pを作業効率良く設置することができる。
【0059】
本実施形態の保持機構21のように、下側挟持部材10Bの上面7Abに当接する当接係止部21Abを有していれば、上方から設置治具Eを下側挟持部材10Bに当接させることが可能となるため、作業効率を更に高めることができる。また、噴出口31aを保持機構21に設ければ、フランジ部11a,Ta,Va,12aに付着した泥等を空気により吹き飛ばして洗浄することができる。この噴出口31aを保持機構21に設けているため、作業効率が高い。さらに、設置治具Eにカッター部材32を設けていれば、フランジ部11a,Ta,Va,12aにビニールカバー(ポリスリーブ)が設けてある場合でも、カッター部材32により切断すれば、補強具Pを設置することが可能となる。このカッター部材32を保持機構21に設けているため、作業効率が高い。
【0060】
なお、上側挟持部材10Aにあっては、第一挿入部5が第一被挿入部6よりも上側にあるように構成しても良い。本構成においても、近接ナット91を締め付けることにより、第一挿入部5と第一被挿入部6とが引き寄せられる。この場合でも、上述した実施形態における作用効果を奏することができる。
【0061】
以下、別実施形態に係る補強具Pについて、上述した実施形態と異なる構成のみ説明する。なお、図面の理解を容易にするため、上述した実施形態と同じ部材名称および符号を用いて説明する。
【0062】
[別実施形態1]
図16に示すように、下側挟持部材10Bを上側挟持部材10Aと同一の構成としても良い。この場合、下側挟持部材10Bは、上側挟持部材10Aを上下反転させた状態となっている。つまり、下側挟持部材10Bは、弁箱Vの弁箱フランジ部Vaの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのナット42bの間の領域を押圧する2つの押圧部6Bを有する第一被挿入部6と、分岐管12の分岐フランジ部12aの外側面1aにおいて、周方向に隣り合う2つのボルト42aの頭部の間の領域を押圧する2つの押圧部5Cを有する第一挿入部5と、を備えている。また、下側締結機構Kbは、連結ボルトRaと近接ナット91と位置調整ナット92とを有している。なお、本実施形態における連結ボルトRaは、寸切ボルトを採用しているが頭部を有するボルトを採用しても良い。
【0063】
本実施形態では、連結ボルトRaの雄ねじ部Ra2に螺合した下側挟持部材10Bの近接ナット91を工具を用いて締め付けるとき、側方からの操作が必要となるが、補修弁ケースXとマンホールMとの間に十分な空間があれば問題が無い。
【0064】
別実施形態1の変形例として、下側挟持部材10Bの近接ナット91を回転不能に収容する六角凹部を第一挿入部5に設けても良い。この場合、上述した実施形態と同様に、連結機構R,上側締結機構Kaおよび下側締結機構Kbを全て上側から操作することが可能となる。また、第一挿入部5及び第一被挿入部6を回転不能な多角形状に構成したが、円柱状に構成して回り止め突起等を設けても良い。
【0065】
[別実施形態2]
図17に示すように、保持機構21は、下側挟持部材10B(挟持部材の一例)と、弁箱フランジ部Va(フランジ部の一例)との空間に挿入される挿入突起23とを有している。この挿入突起23には、棒状部材22の外側への移動により該空間に対する挿入状態を解除可能なヒンジ23aが設けられている。本実施形態では、挿入突起23により下側挟持部材10Bを吊り下げることが可能となるため、設置治具Eにより保持した補強具Pをフランジ部11a,Ta,Va,12aに取付け、棒状部材22の操作により下側挟持部材10Bの回転を防止しながら下側締結機構Kbを締結することができる。そして、棒状部材22を外側に移動すれば挿入突起23の挿入状態が解除されるため、設置治具Eを取外すことが可能となる。よって、作業効率を更に高めることができる。
【0066】
[その他の実施形態]
(1)保持機構21のうち、背面覆部21Aa、当接係止部21Ab、カッター部材32及び流体噴出路31の少なくとも何れか1つを省略しても良い。
(2)連結ボルトRaは、雄ねじ部Ra2よりも径内方向に引退した頭部Ra1に限定されず、雄ねじ部Ra2よりも径外方向に突出した頭部Ra1であっても良い。
(3)2つの押圧部5C,6B,7B,8Cの間に、ボルト41a,42a又はナット41b,42bが配置されるように、挟持部材10A,10Bを配置しても良い。つまり、ボルト41a,42a又はナット41b,42bの両側に2つの押圧部5C,6B,7B,8Cが配置されることとなる。
(4)挟持部材10A,10Bの押圧部5C,6B,7B,8Cは、二股状に形成されたものに限定されず、単一の押圧部で構成しても良い。
(5)補強具Pは、両フランジ部11a,Taおよび両フランジ部Va,12aに装着される上側挟持部材10Aおよび下側挟持部材10Bの何れか一方で構成しても良い。
(6)補強具Pは、補修弁ケースXに用いる場合に限定されず、分割部1を有さない配管どうし、流体機器どうし、又は流体機器と配管の接合部に装着しても良く、あらゆる接合部からの漏水を防止するために用いることができる。また、補強具Pを、接合部からの漏水を防止するために用いる場合に限定されず、接合部から他の液体や気体の漏出を防止するために用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、対向する一対のフランジ部を上下方向に挟持する挟持部材と、挟持部材を上下方向に沿って締結する締結機構とを備えたフランジ補強具の設置治具およびフランジ補強具の設置方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1a :外側面
6B :押圧部(第二押圧部)
7Aa :背面
7Ab :上面
7B :押圧部(第一押圧部)
10A :上側挟持部材(第二の挟持部材)
10B :下側挟持部材(挟持部材、第一の挟持部材)
11a :接続フランジ部(第二のフランジ部)
12a :分岐フランジ部(フランジ部、第一のフランジ部)
21 :保持機構
21Ab:当接係止部
22 :棒状部材
23 :挿入突起
31a :噴出口
32 :カッター部材
E :設置治具
Ka :上側締結機構(第二の締結機構)
Kb :下側締結機構(第一の締結機構)
P :補強治具(フランジ補強具)
Ra :連結ボルト
Ta :短管フランジ部(第二のフランジ部)
Va :弁箱フランジ部(第一のフランジ部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17