(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】位置決めシステム及び位置決め制御方法
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240821BHJP
B60B 33/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B60B33/00 V
B60B33/00 502D
(21)【出願番号】P 2023199792
(22)【出願日】2023-11-27
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518270023
【氏名又は名称】ニチエツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 高志
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-104295(JP,A)
【文献】国際公開第2023/127554(WO,A1)
【文献】米国特許第10093334(US,B1)
【文献】米国特許第5007793(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする位置決めシステムであって、
前記装置に接合部が設けられ、
前記移動先に前記接合部と接合可能な被接合部が設けられ、
前記搬送ロボットは、走行用車輪と、前記走行用車輪を回転駆動及び旋回駆動する車輪駆動部とを備え、
前記装置は、前記車輪駆動部の周囲に配置された複数の自在キャスタを備え、
前記接合部と前記被接合部とは、互いに接続し合う接続機構をそれぞれ有し、
前記接合部と前記被接合部のいずれか一方は、水平移動機構と位置決め機構を有し、
前記水平移動機構は、前記接合部と前記被接合部とを水平方向へ相対移動自在にし、前記接続機構による前記接合部と前記被接合部との接続を前記装置が前記規定位置からずれた位置でも可能にし、
前記位置決め機構は、前記接続機構によって接続された前記接合部と前記被接合部とを水平方向に相対移動させて、前記装置を前記規定位置に位置決めする、
ことを特徴とする位置決めシステム。
【請求項2】
前記装置は、前記複数の自在キャスタのキャスタ車輪をそれぞれ旋回駆動して、キャスタ走行方向を変更するキャスタ旋回駆動部を備える、
請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項3】
前記接続機構により前記接合部と前記被接合部とが接続された後、前記位置決め機構により前記接合部と前記被接合部とを位置決めする前に、前記搬送ロボットの前記走行用車輪と前記自在キャスタのキャスタ車輪の向きを、前記水平移動機構による前記接合部と前記被接合部との相対移動方向と平行にする制御部を備える、
請求項2に記載の位置決めシステム。
【請求項4】
前記接合部と前記被接合部とを上下方向に相対移動させる上下移動機構を更に備える、
請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項5】
前記装置は、物品を載せる積載部を昇降駆動する昇降駆動部と、前記積載部から前記物品の受け渡し先までの搬送路となる搬送部と、を備える、
請求項1に記載の位置決めシステム。
【請求項6】
前記搬送部は、前記積載部の前記物品を搬入出する側の端部に、アーム基端部が回転自在に支持されたアーム部材と、前記アーム部材を回転駆動するアーム駆動部と、を備え、
前記アーム部材には、アーム長手方向に沿って複数の搬送ローラが並設されている、
請求項5に記載の位置決めシステム。
【請求項7】
前記アーム部材には、前記アーム部材の傾斜角度を検出する角度検出部が設けられ、
前記アーム駆動部は、前記角度検出部による傾斜角度の検出結果に基づき、前記アーム部材の前記搬送路の高さを前記受け渡し先の搬送路の高さに一致するように、前記アーム部材を回転させる、
請求項6に記載の位置決めシステム。
【請求項8】
無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする位置決め制御方法であって、
前記搬送ロボットは、走行用車輪と、前記走行用車輪の回転駆動及び前記走行用車輪を旋回駆動してロボット走行方向を変更する車輪駆動部とを備え、
前記装置は、前記走行用車輪の周囲に配置された複数の自在キャスタを備え、
前記搬送ロボットを前記装置とともに前記移動先へ移動させる工程と、
前記移動先で、前記装置に設けられた接合部と、前記移動先に設けられた被接合部とを、前記接合部と前記被接合部のそれぞれに設けた接続機構により接続させる工程と、
前記接合部と前記被接合部とが前記接続機構によって接続された状態で、前記接合部と前記被接合部とを水平方向に相対移動させて、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする工程と、
を有することを特徴とする位置決め制御方法。
【請求項9】
前記接合部と前記被接合部とが接続された後で、前記接合部と前記被接合部とを位置決めする前に、前記搬送ロボットの前記走行用車輪と前記自在キャスタのキャスタ車輪の向きを、前記接合部と前記被接合部との前記移動先の規定位置に位置決めする際の相対移動方向と平行にする、
請求項8に記載の位置決め制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決めシステム及び位置決め制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顧客ニーズの細分化や人手不足を背景として、工場の製造ラインの柔軟な組み換えを目的とした生産設備の搬送や、成形工場における金型の交換を、迅速かつ柔軟に人手をかけずに実施する要望が高まっている。例えば、無人搬送車(AGV:Automatic Guides Vehicle)、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)を用いた無軌道式の搬送ロボットの利用により、上記した生産設備や金型等の円滑な自動搬送が実現されつつある。
【0003】
ところで、搬送対象が装置である場合、その重量は数百kgから数tonに及ぶことがあり、しかも、高い位置決め精度が要求されることが多い。ところが、無軌道式の搬送ロボットにおいては、一般的にガイド機構を使用せず移動させるため、位置決め精度を高めることが難しい。
【0004】
無軌道式の搬送ロボットには種々の駆動方式があるが、コスト面や装置の大きさを考慮した場合、固定軸の駆動輪を2つ有する搬送ロボットが採用されることが多い。これは、同軸上の離れた位置にある2つの駆動輪を個別に制御することで、直線的にも曲線的にも走行でき、さらに同じ場所で回転して向きを変えることもでき、狭い場所での移動に適しているためである。
【0005】
このような無軌道式の搬送ロボットを使用して装置を移動させる場合、装置の下方に搬送ロボットを配置することがある。これは狭い工場で装置を移動させる際に、小回りを利かせて装置と搬送ロボットとを合わせた床面積を最小限にするためである。その場合、装置の積載部の底面外周付近には、自在キャスタが設置されることが多い。この構成にすると、搬送ロボットの移動開始後に自在キャスタの車輪の向きが搬送ロボットの走行方向と揃うため、装置の制御を省略でき、製造コストを抑えられる。
【0006】
ところで、自在キャスタは、車輪の旋回中心位置と、車輪の向きを決める回転中心位置とが水平面上で互いにずれて配置される。これにより、キャスタが現在の走行方向と異なる方向に押されたとき、車輪の向きを容易に変更できる。このような自在キャスタを使用した搬送ロボットにおいては、走行中に連続して方向転換させた場合、車輪の向きはその方向転換に追従できるが、ある場所で停止し、その後に移動方向を完全に変更する場合には上記した車輪の追従が難しくなる。
【0007】
具体的には、搬送ロボットが一旦停止し、搬送ロボットが搬送装置と共に旋回して走行方向を変更する場合、また、搬送ロボットが走行後、搬送ロボットの固定輪が搬送装置の向きを固定した状態で旋回する場合には、各自在キャスタの車輪の方向は直前の走行方向に向いたままとなる。このように移動前の車輪の方向が搬送ロボットの走行方向や回転方向に合っていないと、走行開始時に大きな抵抗が生じて移動できなかったり、搬送ロボットに意図しないずれが生じたりすることがある。このことは、特に搬送装置や搬送対象物の重量が大きいときに顕著に生じる。
【0008】
そこで、搬送ロボットのモータを大型化して走行動作に必要な駆動力を得ることもできるが、その場合でも、搬送ロボットの走行開始後しばらくしてから各自在キャスタの車輪の向きが走行方向に向く動作となる。そのため、搬送ロボットの初期走行時において、しばらくの間、蛇行を生じることが避けられない。
【0009】
このような蛇行や位置ずれは、方向変更後に例えば搬送装置の長さの2倍程度の距離を走行することで解消される場合がある。しかし、生産設備等が多数配置されて走行する通路幅が狭い工場内では、そのような距離を十分に確保できないことが多く、搬送装置の移動精度や位置決め精度を低下させていた。
【0010】
上記の問題を解決すべく、特許文献1には、無人搬送車の自在キャスタ(遊輪機構)において、パルスモータにより車輪の旋回軸を強制的に回転させ、車輪を走行しようとする方向に旋回させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の自在キャスタであっても、無人搬送車の走行方向を変更した後の移動距離が短い場合には、車輪の横振れを十分に減少できず、目標位置に対して車体が位置ずれするおそれがある。また、一般的な無軌道式の搬送ロボットは、機械的なガイドを使用せずに移動するが、搬送ロボット単体の走行では、低速かつ高精度に位置を制御しても、走行時の軌道が数mmから数十mmの範囲内でばらつくことがある。
【0013】
一方で、搬送対象が機械装置等である場合には0.01mm単位の高い位置決め精度が要求されることがある。そのため、一般的な無軌道式の搬送ロボットにおいては、自律走行時の走行性能のみに頼った位置決めは困難であった。また、工場内の生産設備の設置は設備メーカーの設置担当者などが行うことが多いが、重量物を微小に動かしながらの位置調整は容易ではなく、熟練の設置担当者でも数時間~数日程度かかる場合があった。
【0014】
また、機械的なガイドを使用する無軌道式の搬送ロボットとして、搬送ロボットが目標位置に近づいた時点でガイドを使用して移動するものがある。その場合のガイドは、目標物とのクリアランスが最初に目標物と接触させる段階では大きくされ、その後、目標物へ更に接近するにしたがって小さくされる。これによれば、目標位置に到達した時点で所望の精度を確保しやすくなる。ところが、クリアランスの減少が急激であると、無軌道式の搬送ロボットは円滑に走行できないため、搬送ロボットがその走行方向を変更した後に移動する移動距離を、ある程度長く確保する必要があった。
【0015】
そこで本発明は、搬送ロボットを使用して装置の搬送を行う際に、人手を介することなく、短時間で高精度な位置決めを実現できる位置決めシステム及び位置決めの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は下記の構成からなる。
(1) 無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする位置決めシステムであって、
前記装置に接合部が設けられ、
前記移動先に前記接合部と接合可能な被接合部が設けられ、
前記搬送ロボットは、走行用車輪と、前記走行用車輪を回転駆動及び旋回駆動する車輪駆動部とを備え、
前記装置は、前記車輪駆動部の周囲に配置された複数の自在キャスタを備え、
前記接合部と前記被接合部とは、互いに接続し合う接続機構をそれぞれ有し、
前記接合部と前記被接合部のいずれか一方は、水平移動機構と位置決め機構を有し、
前記水平移動機構は、前記接合部と前記被接合部とを水平方向へ相対移動自在にし、前記接続機構による前記接合部と前記被接合部との接続を前記装置が前記規定位置からずれた位置でも可能にし、
前記位置決め機構は、前記接続機構によって接続された前記接合部と前記被接合部とを水平方向に相対移動させて、前記装置を前記規定位置に位置決めする、
ことを特徴とする位置決めシステム。
(2) 無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする位置決め制御方法であって、
前記搬送ロボットは、走行用車輪と、前記走行用車輪の回転駆動及び前記走行用車輪を旋回駆動してロボット走行方向を変更する車輪駆動部とを備え、
前記装置は、前記走行用車輪の周囲に配置された複数の自在キャスタを備え、
前記搬送ロボットを前記装置とともに前記移動先へ移動させる工程と、
前記移動先で、前記装置に設けられた接合部と、前記移動先に設けられた被接合部とを、前記接合部と前記被接合部のそれぞれに設けた接続機構により接続させる工程と、
前記接合部と前記被接合部とが前記接続機構によって接続された状態で、前記接合部と前記被接合部とを水平方向に相対移動させて、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする工程と、
を有することを特徴とする位置決め制御方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、搬送ロボットを使用して装置の搬送を行う際に、人手を介することなく、短時間で高精度な位置決めを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、位置決めシステムが適用される成形工場における複数の成形機の斜視図である。
【
図3】
図3は、搬送装置の下方から視た斜視図である。
【
図5】
図5は、自在キャスタをフォークとフォーク支持部との間で分離させた斜視図である。
【
図6】
図6は、自在キャスタの回転軸に沿って断面視した斜視図である。
【
図7】
図7は、昇降用弾性部材及び規制用弾性部材を備えた自在キャスタの例を示すキャスタ車輪、フォーク及びフォーク支持部の斜視図である。
【
図8】
図8は、フォークに支持されたキャスタ車輪の旋回を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、フォークに支持されたキャスタ車輪の旋回を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、成形機に設けられた被接合部の斜視図である。
【
図13】
図13は、被接合部の正面側から視た分解斜視図である。
【
図15】
図15は、被接合部の背面側から視た分解斜視図である。
【
図16】
図16は、接合部と被接合部との位置決め前の状態における、接合部を断面視した被接合部の平面図である。
【
図17】
図17は、接合部と被接合部との位置決め後の状態における、接合部を断面視した被接合の平面図である。
【
図18】
図18は、位置決めシステムが適用された成形工場における制御系を示す概略構成図である。
【
図19】
図19は、搬送装置の走行経路の一例を説明するための成形機のレイアウトを示す平面図である。
【
図21】
図21は、搬送装置の搬送ロボット及び自在キャスタのキャスタ車輪の状態を示す模式図である。
【
図22】
図22は、搬送装置の搬送ロボット及び自在キャスタのキャスタ車輪の状態を示す模式図である。
【
図23】
図23は、変形例に係る被接合部の第1固定部側から視た分解斜視図である。
【
図24】
図24は、変形例に係る被接合部の第2固定部側から視た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(全体構成)
本例の位置決めシステムは、無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、移動先の規定位置に位置決めする。本例では、搬送ロボットに搭載される装置として成形工場で金型を搬送する搬送装置を例示して説明するが、本例の位置決めシステムの適用例はこれに限らない。
【0020】
図1は、位置決めシステムが適用される成形工場における複数の成形機200の斜視図である。
図1に示すように、本例の位置決めシステムは、例えば、複数の成形機200が配列されて設置された成形工場に適用され、金型交換装置として用いられる搬送装置100の位置決めを行う。
【0021】
各成形機200は、搬送装置100が走行可能な隙間をあけて並列に配置されている。成形機200は、成形機基台211と、型締め装置213と、射出装置215とを備える。型締め装置213は、固定盤217と可動盤219とを有し、これらの固定盤217と可動盤219との間が金型固定空間Sとなる。成形機200は、金型固定空間Sの側方に搬送装置100が並設された状態において、搬送装置100との間で金型101の受け渡しが行われる。
【0022】
搬送装置100は、例えば、成形機200の配列に沿う走行方向へ移動し、さらに、指定の移動先である金型101の受け渡し対象の成形機200の側方の通路を、受け渡し位置へ向かって移動する(
図1における点線矢印参照)。その後、搬送装置100は、受け渡し対象の成形機200の金型固定空間Sの側方に到達したら、成形機200の金型固定空間Sへ向かって移動し、受け渡し対象の成形機200に接合される。そして、この成形機200金型固定空間Sとの間で金型101の搬入出が行われる。
【0023】
(搬送装置)
図2は、搬送装置100の斜視図である。
図3は、搬送装置100の下方から視た斜視図である。
【0024】
図2及び
図3に示すように、搬送装置100は、金型101等の物品を搬送する装置であり、搬送ロボット113に搭載されている。搬送ロボット113は、搬送装置100を搭載して床面を走行する。
【0025】
搬送装置100の上部には、金型101を載せる積載部111が設けられている。搬送装置100は、
図1に示す金型固定空間Sの側方に移動し、積載部111から金型固定空間Sへの金型101の供給、及び金型固定空間Sから積載部111への金型Sの排出を行なう。積載部111の上部には搬送台121が設けられる。この搬送台121に金型101が載置される。搬送台121は、複数の昇降ロッド123によって支持されている。昇降駆動部124が、昇降ロッド123を伸縮駆動することにより、積載部111の搬送台121が昇降される。また、搬送台121は複数のローラ125を備える。これらのローラ125の上に金型101が載置される。各ローラ125は、互いに平行に配置されており、駆動部(図示略)によって同一方向へ回転される。搬送台121は、複数のローラ125が回転されることにより、上部の金型101が移動され、成形機200との間で金型101の受け渡しが可能となる。
【0026】
搬送ロボット113は、走行用車輪137と、車輪駆動部131とを備える。車輪駆動部131は、走行用車輪137を回転駆動し、走行用車輪137を旋回駆動してロボット走行方向を変更する。車輪駆動部131は、2つの走行用車輪137を回転駆動して走行駆動力を床面に伝達する際、2つの走行用車輪137の回転量及び回転方向を制御して、搬送装置100の走行と旋回とを行う。
【0027】
また、搬送装置100には、搬送ロボット113の走行用車輪137を備えた車輪駆動部131の周囲に、複数の自在キャスタ10が配置される。自在キャスタ10は、それぞれキャスタ車輪11を備えている。自在キャスタ10は、それぞれキャスタ旋回駆動部19を備える。キャスタ旋回駆動部19は、自在キャスタ10のキャスタ車輪11をそれぞれ旋回駆動して、各自在キャスタ10のキャスタ走行方向を個別に変更する。このように、搬送装置100は、複数の自在キャスタ10を補助輪として備えており、複数の自在キャスタ10は、搬送ロボット113を囲んだ搬送装置100の底部における四隅に取り付けられている。そして、搬送装置100は、搬送ロボット113とともに、複数の自在キャスタ10によって床面に支持される。
【0028】
(自在キャスタ)
図4は、自在キャスタ10の斜視図である。
図5は、自在キャスタ10をフォーク13とフォーク支持部15との間で分離させた斜視図である。
図6は、自在キャスタ10の回転軸53に沿って断面視した斜視図である。
【0029】
図4~
図6に示すように、自在キャスタ10は、キャスタ車輪11と、フォーク13と、フォーク支持部15と、キャスタ基台部17と、キャスタ旋回駆動部19と、を備えている。
【0030】
キャスタ車輪11は、フォーク13に回転自在に支持されている。キャスタ車輪11を支持するフォーク13は、フォーク支持部15に支持される。キャスタ基台部17は、フォーク支持部15の上部に配置され、フォーク支持部15は、キャスタ基台部17に支持される。キャスタ旋回駆動部19は、キャスタ基台部17の側部に設けられている。キャスタ車輪11は、フォーク13に設けられた支軸21によって水平方向の軸線を中心に回転可能に支持されている。
【0031】
フォーク13は、一対の支持板部23と、固定板部25とを有し、固定板部25の下面側に支持板部23が取り付けられている。支持板部23は、互いに平行に配置され、その前部が連結部27によって連結されている。キャスタ車輪11は、支持板部23の間に配置され、支軸21の両端が支持板部23に固定されている。これにより、キャスタ車輪11は、一対の支持板部23の間で、支軸21によって回転自在に支持される。
【0032】
図6に示すように、固定板部25の後部側には、下方へ突出する支持片31が設けてある。また、固定板部25の前部側には、上方へ突出するピン33が設けてあり、固定板部24の後部側には、上方へ突出する旋回軸41が設けてある。支持板部23の後部側における上部は、揺動軸35によって支持片31と連結されている。これにより、一対の支持板部23は、揺動軸35によって水平方向の軸心を中心に揺動可能となっている。
【0033】
図7は、昇降用弾性部材37及び規制用弾性部材45を備えた自在キャスタ10の例を示すキャスタ車輪11、フォーク13及びフォーク支持部15の斜視図である。固定板部25と、支持板部23の連結部27との間には、コイルバネからなる昇降用弾性部材37が設けてある。これにより、キャスタ車輪11を支持するフォーク13は、フォーク支持部15に対して昇降用弾性部材37によって弾性付勢される。このように、フォーク13の支持板部23に支持されたキャスタ車輪11は、揺動軸35によって揺動されることにより、フォーク支持部15に対して昇降用弾性部材37によって下方へ付勢された状態で昇降可能となる。これにより、複数の自在キャスタ10を搬送装置100に設けた場合に、その搬送装置100の各自在キャスタ10のキャスタ車輪11は、床面にとの接触が良好となり、床面に円滑に追従するようになる。
【0034】
キャスタ車輪11が設けられたフォーク13を支持するフォーク支持部15は、板状に形成されており、フォーク13の固定板部25の上面に沿って配置されている。このフォーク支持部15は、その後部側に、ベアリング40を有しており、このベアリング40に、フォーク13の旋回軸41が回転可能に支持されている。これにより、キャスタ車輪11が設けられたフォーク13は、フォーク支持部15に対して、その後部側の旋回軸41によって鉛直方向の軸線を中心に旋回可能となる。
【0035】
また、フォーク支持部15には、その前部側に、円弧溝43を有している。この円弧溝43は、旋回軸41を中心とした円弧状に形成されている。この円弧溝43には、フォーク13の固定板部25のピン33が挿入されており、これにより、フォーク13は、ピン33が挿入されたフォーク支持部15の円弧溝43の範囲で旋回可能である。このように、フォーク支持部15とフォーク13との間には、円弧溝43とピン33とからなる可動角度規制機構が設けられ、この可動角度規制機構によって規制された旋回範囲で旋回可能となっている。
【0036】
円弧溝43には、ピン33の両側に、コイルバネからなる規制用弾性部材45を収容してもよい。このように、ピン33の両側に規制用弾性部材45を収容することにより、これらの規制用弾性部材45によってピン33が円弧溝43の長手方向の中央の中立位置へ付勢される。また、フォーク支持部15におけるフォーク13との対向面には、摺動板46が設けられている。この摺動板46は、フォーク13の固定板部25と摺動可能とされており、この摺動板46を介してキャスタ車輪11からの荷重がフォーク支持部15よりも上方側で受け止められる。これにより、フォーク13を旋回可能に支持するベアリング40及び旋回軸41への負荷が抑えられる。
【0037】
図8及び
図9は、フォーク13に支持されたキャスタ車輪11の旋回を説明する説明図である。
図8に示すように、自在キャスタ10において、フォーク13は、旋回軸41を中心として一方側へ可動角度θ1で旋回可能であり、
図9に示すように、旋回軸41を中心として他方側へ可動角度θ2で旋回可能である。
【0038】
この可動角度範囲内で旋回したフォーク13は、旋回後、自在キャスタ10の移動に追従して可動角度範囲の中央位置に戻され、自在キャスタ10の進行方向にキャスタ車輪11の向きが合わされる。なお、ピン33の両側に、
図7に示す規制用弾性部材45を収容した場合、フォーク13は、一対の規制用弾性部材45によって、旋回軸41の軸回りの可動角度範囲(θ1+θ2)の中央の中立位置に向けて弾性付勢される。これにより、床面の段差や異物によってキャスタ車輪11に突発的に外力がかかったときに進路が乱れるのを防止できる。なお、フォーク13の可動角度を規制する機構としては、フォーク13に円弧溝を形成し、この円弧溝にフォーク支持部15に設けたピンを挿入した構造でもよい。
【0039】
図6に示すように、キャスタ基台部17は、中心に挿通孔51を有する円柱状に形成されている。このキャスタ基台部17には、挿通孔51に回転軸53が挿通されている。回転軸53は、その上下端近傍がベアリング55によって回転可能に支持されている。回転軸53は、その下端がフォーク支持部15に固定され、回転軸53を中心にフォーク支持部15を回転自在に支持している。
【0040】
キャスタ基台部17の下端には、外方へ張り出すフランジ部57が形成されている。キャスタ基台部17は、フランジ部57をボルト59によって搬送ロボットの台座等に締結固定される。これにより、自在キャスタ10が搬送ロボットに装着される。
【0041】
また、回転軸53は、キャスタ車輪11が床面に接する面の中心Oから鉛直方向に延びる架空線Lと一致するように配置されている。そして、キャスタ車輪11を支持するフォーク13の旋回軸41は、回転軸53から水平方向にずれて配置されて偏心して配置されている。
【0042】
キャスタ基台部17の上部には、固定板61が固定されている。この固定板61に形成された孔部61aに回転軸53が挿通されている。固定板61は、キャスタ基台部17の側方へ延びる延在部63を有し、延在部63にキャスタ旋回駆動部19が固定されている。キャスタ旋回駆動部19は、駆動軸71を有するモータなどの駆動源である。
【0043】
また、固定板61には、回転軸53の回転位置を検出する回転検出部69が設けてある。回転検出部69は、例えば、径方向外側に突出する1つの凸部67aを有し、回転軸53に固定された検知板67と、検知板67に対向して固定板61の孔部61aの縁部に沿って取り付けられた複数(本例では8個)のマイクロスイッチ65とを備える。これらのマイクロスイッチ65が検知板67の凸部67aを検知することで回転軸53の回転位置が検出される。なお、回転検出部69としては、上記したマイクロスイッチ65に限らず、近接センサ等の他のセンサを用いたものでもよい。
【0044】
キャスタ旋回駆動部19の駆動軸71には、駆動プーリ73が取り付けられている。また、回転軸53の上端には、従動プーリ75が取り付けられている。そして、これら駆動プーリ73及び従動プーリ75には、無端状の伝達ベルト77が掛け回されている。これにより、回転軸53にはキャスタ旋回駆動部19の回転駆動力が伝達可能となっている。
【0045】
なお、回転軸53と駆動軸71との回転伝達機構は、スプロケット及びチェーンなどからなる他の伝達機構でもよい。また、回転軸53にキャスタ旋回駆動部19の駆動軸71を直接接続して、駆動軸71の回転駆動力を回転軸53へ直接伝達させてもよい。
【0046】
上記構成の自在キャスタ10は、キャスタ旋回駆動部19による駆動軸71の回転駆動力が駆動プーリ73、伝達ベルト77及び従動プーリ75によって回転軸53に伝達される。すると、フォーク支持部15が回転軸53を中心に回転され、フォーク支持部15に支持されたフォーク13とともにキャスタ車輪11の向きが変更される。
【0047】
また、キャスタ車輪11の向きが変更されると、回転軸53とともに回転する検知板67の凸部67aが、回転検出部69を構成する複数のマイクロスイッチ65のうちの一つによって検知され、キャスタ車輪11の向きが検出される。
【0048】
一般に、自在キャスタ車輪10として、球状のキャスタであるボールキャスタを用いるものがある。しかし、ボールキャスタは床面に対して非常に狭い面積で接触するため、床面への接触圧が高く、床面にダメージを与えやすく、金型等の重量物の搬送には適さない。また、特に無軌道式の搬送ロボットの強制的な向きの変更は、走行用車輪を摩耗させるとともに、床面を損傷させるおそれがあった。
【0049】
本構成例の搬送装置100では、ボールキャスタと比べて床面との接触面積が大きなキャスタ車輪11を有する複数の自在キャスタ10を補助輪として備えている。しかも、自在キャスタ10は、キャスタ車輪11がキャスタ旋回駆動部19によって同軸上で旋回駆動される。したがって、接触圧による床面へのダメージ及び搬送ロボット113の走行用車輪137の摩耗を抑えることができる。
【0050】
(接合部及び被接合部)
図10は、搬送装置100及び成形機200の斜視図である。
図11は、成形機200に設けられた被接合部310の斜視図である。
図10に示す搬送装置100には、接合部300が設けられている。また、搬送装置100が位置決めされる移動先の成形機200には、被接合部310が設けられている。
【0051】
接合部300は、搬送装置100における金型101の搬入出が行われる少なくとも一方の側面に設けられるが、これに限らず他の側面にも設けてもよい。接合部300は、対角位置に設けられた一対の接続孔部301と、他の対角位置に設けられた一対のロック孔部303とを有している。これら接合部300と被接合部310は、互いに接続し合う機構を備えたそれぞれ異なる構造体であって、成形機200側に接合部300を設け、搬送装置100側に被接合部310を設けてもよい。被接合部310は、
図1に示すように、各成形機200に固定されたフレーム315(
図11参照)にそれぞれ設けられ、いずれかの成形機200に搬送装置100の接合部300を選択的に接合することであってもよい。
【0052】
図12は、被接合部310を正面側から視た斜視図である。
図13は、被接合部310の正面側から視た分解斜視図である。被接合部310は、詳細を後述する第1固定部321と、第1固定部321の背面側に配置された第2固定部323と、第2固定部323に固定された突出片駆動部351とを有する。
【0053】
図14は、被接合部310の背面側から視た斜視図である。
図15は、被接合部310の背面側から視た分解斜視図である。
図14,
図15に示すように、被接合部310は、第1固定部321に設けられた詳細を後述する突出片受容部361を有する。
【0054】
図12~
図15に示すように、被接合部310は、対角位置に設けられた一対の接続ピン311と、他の対角位置に設けられた一対のクランパ313とを有する。接続ピン311は、先端へ向かって次第に窄まる先細り部311aを有している。クランパ313は、複数の接続ボール313aを有している。これらの接続ボール313aは、クランパ313の周囲に配列されている。クランパ313では、エアの供給によって各接続ボール313aが径方向外側へ突出される。
【0055】
被接合部310には、搬送装置100の接合部300が接合可能に構成されている。具体的には、被接合部310の接続ピン311が接合部300の接続孔部301に接続されるとともに、被接合部310のクランパ313が接合部300のロック孔部303に接続される。
【0056】
また、クランパ313では、ロック孔部303に接続された状態でエアの供給により接続ボール313aが外周へ突出し、ロック孔部303の内縁部に接続する。これにより、クランパ313とロック孔部303が互いにロックされ、搬送装置100の接合部300が成形機200の被接合部310に接合される。
【0057】
このように、接合部300と被接合部310とは、互いに接続し合う接続孔部301と接続ピン311及びロック孔部303とクランパ313とからなる接続機構をそれぞれ有している。
【0058】
被接合部310は、接合部300との水平位置ずれを補正するための水平移動機構320を備えている。この水平移動機構320は、接合部300と被接合部310とが、接続孔部301と接続ピン311及びロック孔部303とクランパ313とからなる接続機構によって接続された状態で、接合部300と被接合部310とを水平方向に相対移動させる機構である。この水平移動機構320によって、接合部300と被接合部310とを水平方向に相対移動させることにより、搬送装置100を移動先である成形機200の規定位置に位置決めする。本例の場合、水平移動機構320は、成形機200の規定位置に対して搬送装置100が水平方向に位置ずれを生じている場合に、搬送装置100を水平方向へ微動させて成形機200の規定位置、即ち、搬送装置100から成形機200へ金型101の受け渡しが可能な水平位置に位置決めする。
【0059】
水平移動機構320は、第1固定部321と、第2固定部323を備えている。第1固定部321は、第2固定部323に対して、水平方向へ相対移動可能に支持されている。第1固定部321は、可動板325を有しており、この可動板325に、前述した接続機構を構成する接続ピン311とクランパ313とが設けられている。
【0060】
第2固定部323は、固定板327を有する。この固定板327は、成形機200のフレーム315(
図11)に固定される。固定板327の上下辺の近傍位置における第1固定部321の可動板325との対向面には、それぞれ水平方向に延びる水平レール331が固定されている。これら一対の水平レール331には、水平レール331に沿ってスライド可能な一対のスライダ333がそれぞれ設けられている。これらのスライダ333は、第1固定部321の可動板325における第2固定部323の固定板327との対向面にネジ335によって固定される。これにより、水平レール331とスライダ333とによって、可動板325が固定板327に対して水平方向へ相対移動可能に支持される。
【0061】
また、第1固定部321と第2固定部323との間には、可動板325と固定板327との水平方向の相対移動を弾性反発力によって規制する一対のコイルバネからなる弾性部材341(
図15)が設けられている。可動板325には、1つのバネ受け343が固定され、固定板327には、可動板325のバネ受け343の両脇に配置される2つのバネ受け345が設けられる。そして、弾性部材341は、バネ受け343と345との間にそれぞれ配置され、端部がバネ受け343,345に支持されている。このように、第1固定部321と第2固定部323との間に弾性部材341を設けることにより、可動板325と固定板327との水平方向の相対移動が弾性部材341の弾性反発力によって規制される。
【0062】
これにより、被接合部310と接合部300とが水平方向に位置ずれを生じた状態で、前述した接続機構により互いに接続されても、第1固定部321の可動板325が弾性部材341の弾性反発力によって水平移動するため、位置ずれが許容されて被接合部310と接合部300とが接続される。このことは、接続ピン311の接続に際しても同様であって、接続ピン311には先細り部311aが形成されているので、接続相手の接続孔部301(
図10)に接続ピン311が差し込まれて、ずれが上記した水平移動によって吸収される。このように、第1固定部321と第2固定部323とは、互いにがたつきを抑えて接合可能となっている。
【0063】
また、第2固定部323には、突出片駆動部351が設けられている。この突出片駆動部351は、棒状の突出片353を第1固定部321へ向けて進退させる。突出片駆動部351は、例えば、エアシリンダ等のアクチュエータであり、ピストン351aを進退させる。この突出片駆動部351のピストン351aには、連結板352によって突出片353が固定されている。第2固定部323の固定板327には、その中央に開口部355が形成されている。突出片駆動部351は、ピストン351aを進退させることにより、突出片353を進退させ、開口部355を通して第1固定部321の可動板325へ向かって突出片353を出没させる。突出片353は、その先端部分における水平方向の幅の両側に、傾斜面353aを有している。このように、突出片353は、水平方向の幅が先端部に向かうほど先細りとなる、くさび形状に形成されている。
【0064】
第1固定部321には、突出片受容部361が設けられている。第1固定部321の可動板325は、その中央に挿通口363を有しており、この挿通口363に突出片受容部361が設けられている。突出片受容部361では、第2固定部323の突出片駆動部351から突出された突出片353の先端部が挿通口363に挿入される。
【0065】
突出片受容部361は、一対の回転ローラ365を有している。これらの回転ローラ365は、挿通口363の水平方向の両側に配置されており、鉛直方向の軸線を中心に回転可能に支持されている。突出片受容部361では、第2固定部323の突出片駆動部351から突出された突出片353の先端部が回転ローラ365の間に挿し込まれる。すると、各回転ローラ365が、突出片353の傾斜面353aに接触し、突出片353が回転ローラ365の間に水平方向に挟み込む。
【0066】
図16は、接合部300と被接合部310との位置決め前の状態における、接合部300を断面視した被接合部310の平面図である。
図17は、接合部300と被接合部310との位置決め後の状態における、接合部300を断面視した被接合部310の平面図である。
【0067】
搬送装置100の接合部300が成形機200の被接合部310に突き当てられると、被接合部310の接続ピン311が接合部300の接続孔部301に接続されるとともに、被接合部310のクランパ313が接合部300のロック孔部303に接続される。このように、接合部300と被接合部310とが接続されると、第2固定部323の固定板327に対して第1固定部321の可動板325が押圧されて近接する。
【0068】
第1固定部321の可動板325の両側近傍には、第2固定部323の固定板327との対向面に、近接センサ371が設けられている。これらの近接センサ371は、第2固定部323の固定板327に対して第1固定部321の可動板325が押圧されて近接したことを検知し、検知信号を出力する。こうして、近接センサ371から出力される検知信号によって、接合部300と被接合部310との接続状態が検知される。
【0069】
上記のように、接合部300に固定された第1固定部321と、被接合部310側の第2固定部323とが水平方向にずれている場合には、傾斜面353aに沿って接合部300と一体となった第1固定部321が水平方向に移動する(
図17の矢印SL)。この水平移動によって搬送装置100が規定位置に配置されることになる。
【0070】
つまり、水平移動機構320の第2固定部323の突出片駆動部351によって突出片353が突出されると、この突出片353の先端部が回転ローラ365の間に挿し込まれる。すると、各回転ローラ365が突出片353の傾斜面353aに接触し、これらの回転ローラ365によって突出片353が水平方向に挟み込まれる。これにより、第1固定部321の可動板325には、水平方向において、位置ずれと逆方向へ向かう力が生じ、この力によって位置ずれと逆方向へ移動される。つまり、回転ローラ365間に突出片353が挿し込まれることにより、第2固定部323の固定板327に対して第1固定部321の可動板325の水平方向に位置決めされる。すると、被接合部310に接合された接合部300が水平方向における位置ずれ方向と逆方向へ移動されることとなり、搬送装置100が成形機200の規定位置に位置決めされる。
【0071】
このように、本構成例に係る位置決めシステムによれば、搬送装置100の接合部300が移動先である成形機200の被接合部310に接続した状態で、水平移動機構320によって接合部300と被接合部310とが水平方向に相対移動される。これにより、成形機200の規定位置に対して、人手を介することなく短時間で搬送装置100を規定位置へ高精度に位置決めできる。
【0072】
(制御系)
図18は、位置決めシステムが適用された成形工場における制御系を示す概略構成図である。
図18に示すように、搬送装置100は制御部401を備えており、成形機200は制御部403を備えている。また、成形工場は総括制御装置405を備えている。
【0073】
搬送装置100の制御部401は、搬送装置100における搬送台121を昇降させる昇降駆動部124、搬送台121のローラ125の駆動部、搬送ロボット113の車輪駆動部131及び自在キャスタ10のキャスタ旋回駆動部19等の各駆動部を制御する。成形機200の制御部403は、成形機200における型締め装置213、射出装置215、被接合部310のクランパ313や水平移動機構320の突出片駆動部351等の各駆動部を制御する。総括制御装置405は、搬送装置100及び成形機200の各制御部401,403と通信し、制御部401,403の制御及び制御部401,403への指示を行う。制御部401,403、及び総括制御装置405は、コンピュータデバイスから構成され、ネットワークや通信回線等により相互通信が可能となっている。
【0074】
(搬送装置の制御例)
次に、搬送装置100を移動させて成形機200に対して金型101を受け渡す場合の制御部401,403及び総括制御装置による制御について説明する。
図19は、搬送装置100の走行経路の一例を説明するための成形機200のレイアウトを示す平面図である。
図20は、搬送装置100の動きを説明する説明図である。
図21及び
図22は、搬送装置100の搬送ロボット113及び自在キャスタ10のキャスタ車輪11の状態を示す模式図である。
【0075】
ここで、搬送装置100の移動方法や走行経路は、成形機200の配置等によって様々な場合が考えられる。例えば、成形機200同士の間の通路が狭く、搬送装置100を回転させるだけの十分なスペースを確保できない場合がある。このような場合、例えば、
図19に示すように、搬送装置100は、まず、移動開始位置P1から成形機200の配列に沿う走行方向PS1へ移動する。次に、金型101の受け渡し対象の成形機200の側方の通路の方向変換位置P2に達したら、受け渡し位置へ向かって通路の中央付近を走行方向PS2へ移動する。その後、受け渡し対象の成形機200の金型固定空間Sの側方の方向変換位置P3に達したら、走行方向を変更して成形機200の金型固定空間Sへ向かって走行方向PS3へ移動し、受け渡し対象の成形機200に接続する。
【0076】
上記の経路で搬送装置100を移動させる場合、
図20に示すように、受け渡し対象の成形機200の金型固定空間Sの側方の方向変換位置P3に達した搬送装置100は、搬送ロボット113の走行用車輪137とともに、各自在キャスタ10のキャスタ車輪11が走行方向PS2に合わせられている(
図20における白矢印参照)。
【0077】
この状態から、
図21に示すように、搬送装置100は、搬送ロボット113の走行用車輪137の向きを変えて走行方向PS3に向け、さらに、自在キャスタ10のキャスタ車輪11の向きを走行方向PS3に合わせる。このとき、複数のキャスタ車輪11の向きを同時に変更すると、キャスタ車輪11の向きの変更の影響により搬送装置100が変動することがある。このため、自在キャスタ10のキャスタ車輪11の向きを一つずつ変えるのが好ましい。
【0078】
その後、搬送装置100は、成形機200の金型固定空間Sへ向かって移動し、受け渡し対象の成形機200の被接合部310に搬送装置100の接合部300が突き当てられる。これにより、被接合部310の接続ピン311が接合部300の接続孔部301に接続されるとともに、被接合部310のクランパ313が接合部300のロック孔部303に接続される(
図17参照)。
【0079】
また、接合部300と被接合部310とが接続されることにより、近接センサ371から検知信号が出力される。すると、
図22に示すように、搬送装置100は、搬送ロボット113及び自在キャスタ10が制御され、搬送ロボット113の走行用車輪137と自在キャスタ10のキャスタ車輪11の向きが、被接合部310の水平移動機構320による接合部300と被接合部310との相対移動方向と平行にされる。また、向きを変更した後の走行用車輪137は、ブレーキを解除した回転自在な状態にするのが好ましい。そして、このときも、自在キャスタ10のキャスタ車輪11の向きを一つずつ変えることにより、キャスタ車輪11の向きの変更による搬送装置100の変動を抑えるのが好ましい。
【0080】
その後、水平移動機構320の第2固定部323の突出片駆動部351によって突出片353が突出されて突出片受容部361の回転ローラ365の間に挿し込まれ、第2固定部323の固定板327に対して第1固定部321の可動板325の水平方向の位置が位置決めされる(
図17参照)。これにより、被接合部310に接合部300が接合された搬送装置100が成形機200の規定位置に対して水平方向へ位置ずれが生じていても、水平方向における位置ずれと逆方向へ移動され、成形機200の規定位置に位置決めされる。これにより、移動先である成形機200の規定位置に対して人手を介することなく短時間で搬送装置100を高精度に位置決めできる。
【0081】
このとき、搬送ロボット113の走行用車輪137と自在キャスタ10のキャスタ車輪11の向きが、水平移動機構320による接合部300と被接合部310との相対移動方向と平行にされている。したがって、搬送装置100の接合部300が移動先の被接合部310に接続した状態で、水平移動機構320によって接合部300と被接合部310とを無理なく水平方向に相対移動させることができる。これにより、移動先の規定位置に対して、搬送装置100をより高精度に位置決めできる。
【0082】
次に、変形例について説明する。以下の説明では、上記した実施形態と同一構成部分は、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0083】
(被接合部の変形例)
図23は、変形例に係る被接合部310Aの第1固定部321側から視た分解斜視図である。
図24は、変形例に係る被接合部310Aの第2固定部323側から視た分解斜視図である。
【0084】
図23及び
図24に示すように、変形例に係る被接合部310Aは、第1固定部321が、1枚の可動板325に代えて、前面板325Aと、中間板325Bとを有している。
【0085】
被接合部310Aでは、第1固定部321の前面板325Aに、接続機構を構成する接続ピン311とクランパ313とが設けられている。
【0086】
また、被接合部310Aでは、第1固定部321の中間板325Bに、第2固定部323の固定板327の水平レール331に沿ってスライドする一対のスライダ333が固定されている。このように、第1固定部321は、中間板325Bが、第2固定部323の固定板327に対して水平方向へ相対移動可能に支持される。
【0087】
さらに、中間板325Bは、第2固定部323の固定板327との間に弾性部材341が設けられ、この弾性部材341を受けるバネ受け343が固定されている。つまり、第2固定部323の固定板327に対して水平方向へ移動した第1固定部321の中間板325Bが弾性部材341の弾性反発力によって初期位置に戻されるようになっている。
【0088】
また、中間板325Bには、挿通口363と、回転ローラ365とを有する突出片受容部361が設けられている。そして、この突出片受容部361の挿通口363に水平移動機構320の突出片353が挿し込まれ、水平方向の両側の回転ローラ365に接触する。また、前面板325Aには、その中央に、突出片353との干渉を避ける逃げ孔373が形成されている。
【0089】
被接合部310Aでは、中間板325Bの両側部近傍における前面板325Aとの対向面に、鉛直方向に延びる鉛直レール381が固定されている。これらの鉛直レール381には、鉛直レール381に沿ってスライドする一対のスライダ383がそれぞれ設けられている。これらのスライダ383は、前面板325Aにおける中間板325Bとの対向面に固定される。これにより、鉛直レール381とスライダ383とによって、前面板325Aが中間板325Bに対して鉛直方向へ相対移動可能に支持される。
【0090】
このように、変形例に係る被接合部320Aによれば、第1固定部321が、互いに鉛直方向へ相対移動可能な前面板325Aと中間板325Bとから構成されているので、移動先である成形機200の規定位置と搬送装置100との鉛直方向の位置ずれを許容しつつ水平方向に位置決めできる。
【0091】
また、変形例に係る被接合部320Aには、前面板325Aと中間板325Bとの間に、前面板325Aと中間板325Bとの鉛直方向の相対移動を弾性反発力によって規制する一対のコイルバネからなる弾性部材391が設けられている。中間板325Bには、1つのバネ受け393が固定され、前面板325Aには、中間板325Bのバネ受け393の上下に配置される2つのバネ受け395が固定されている。そして、弾性部材391は、バネ受け393,395の間に配置され、端部がバネ受け393,395に支持されている。このように、前面板325Aと中間板325Bとの間に弾性部材391を設けることにより、前面板325Aと中間板325Bとの鉛直方向の相対移動が弾性部材391の弾性反発力によって規制される。つまり、中間板325Bに対して鉛直方向へ移動した前面板325Aが弾性部材391の弾性反発力によって初期位置に戻される。したがって、前面板325Aと中間板325Bとのがたつきを抑えることができる。また、中間板325Bに固定されたバネ受け393には、前面板325Aと中間板325Bとの高さのずれを検出する高さずれ検出部(図示略)を備えている。そして、この高さずれ検出部からの検出結果に基づいて、搬送装置100の積載部111の高さを容易に補正することが可能とされている。高さずれ検出部は、ばね受け393の位置に限らず、高さずれが検出できればよく、その配置位置は限定されない。
【0092】
(搬送装置の変形例)
図25は、変形例に係る搬送装置100Aの斜視図である。
図26は、搬送部140の動きを示す概略構成図である。変形例に係る搬送装置100Aは、積載部111に、搬送部140を備えている。この搬送部140は、物品である金型101の受け渡し先である成形機200との間の搬送路となる。
【0093】
この搬送部140は、アーム部材141と、アーム駆動部143とを備えている。アーム部材141は、積載部111の金型101を搬入出する側の端部において、そのアーム基端部141aが回転自在に支持されている。アーム部材141には、アーム長手方向に沿って複数の搬送ローラ145が並設されている。アーム駆動部143は、駆動モータからなるもので、アーム部材141を回転駆動させる。
【0094】
この搬送装置100Aでは、走行中においては、アーム部材141を上方へ延在させた姿勢とする。これにより、アーム部材141の周辺機器等への接触なく、搬送装置100Aが走行可能とされる。そして、この搬送装置100Aが成形機200との間で金型101の受け渡しを行う際には、アーム駆動部143によってアーム部材141が回動されて成形機200に架け渡される。この状態において、金型101は、搬送部140のアーム部材141に設けられた搬送ローラ145上を移動される。これにより、積載部111と受け渡し先の成形機200との間で金型101を円滑に搬入出させることができる。
【0095】
また、搬送装置100Aの搬送部140は、アーム部材141に、例えば、ジャイロセンサ等からなる角度検出部147が設けられている。そして、この角度検出部147によって、鉛直方向に対するアーム部材141のアーム傾斜角度θから姿勢を検出し、その検出結果からアーム先端141bの高さhを演算で求めることが可能となっている。そして、この角度検出部147を備えることにより、角度検出部147の検出結果から求めたアーム部材141の高さhに基づいて、アーム駆動部143がアーム部材141を回動させるとともに、昇降駆動部124によって積載部111の搬送台121の高さを調整し、アーム部材141によって形成される搬送路の高さを受け渡し先である成形機200の搬送路の高さに一致させる。これにより、搬送装置100の沈み込みによる高さ方向の位置ずれに関わらず、積載部111の搬送台121と成形機200との間で金型101をより円滑に搬入出させることができる。
【0096】
なお、積載部111の搬送台121の高さを調整せずに、角度検出部147の検出結果から求めたアーム部材141の高さhに基づいて、受け渡し先である成形機200の搬送路の高さに合わせてアーム部材141を回動させて成形機200に架け渡してもよい。
【0097】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0098】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする位置決めシステムであって、
前記装置に接合部が設けられ、
前記移動先に前記接合部と接合可能な被接合部が設けられ、
前記搬送ロボットは、走行用車輪と、前記走行用車輪を回転駆動及び旋回駆動する車輪駆動部とを備え、
前記装置は、前記車輪駆動部の周囲に配置された複数の自在キャスタを備え、
前記接合部と前記被接合部とは、互いに接続し合う接続機構をそれぞれ有し、
前記接合部と前記被接合部のいずれか一方は、水平移動機構と位置決め機構を有し、
前記水平移動機構は、前記接合部と前記被接合部とを水平方向へ相対移動自在にし、前記接続機構による前記接合部と前記被接合部との接続を前記装置が前記規定位置からずれた位置でも可能にし、
前記位置決め機構は、前記接続機構によって接続された前記接合部と前記被接合部とを水平方向に相対移動させて、前記装置を前記規定位置に位置決めする、
ことを特徴とする位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、搬送ロボットが規定位置からずれていても、装置の接合部が移動先の被接合部に接続した状態にでき、その接続状態のまま、水平移動機構によって接合部と被接合部とを水平方向に相対移動されるため、搬送ロボットを移動先の規定位置に対して、人手を介することなく短時間で装置を高精度に位置決めできる。
【0099】
(2) 前記装置は、前記複数の自在キャスタのキャスタ車輪をそれぞれ旋回駆動して、キャスタ走行方向を変更するキャスタ旋回駆動部を備える、(1)に記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、搬送ロボットの走行用車輪と自在キャスタのキャスタ車輪の向きを自在に変更できる。これにより、装置の移動をより円滑にでき、かつ移動先の規定位置に対して装置を高精度に位置決めできる。
【0100】
(3) 前記接続機構により前記接合部と前記被接合部とが接続された後、前記位置決め機構により前記接合部と前記被接合部とを位置決めする前に、前記搬送ロボットの前記走行用車輪と前記自在キャスタのキャスタ車輪の向きを、前記水平移動機構による前記接合部と前記被接合部との相対移動方向と平行にする制御部を備える、(1)又は(2)に記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、装置の接合部が移動先の被接合部に接続した状態で、水平微動機構によって接合部と被接合部とを無理なく水平方向に相対移動させることができる。これにより、移動先の規定位置に対して、装置をより高精度に位置決めできる。
【0101】
(4) 前記接合部と前記被接合部とを上下方向に相対移動させる上下移動機構を更に備える、(1)から(3)のいずれか1つに記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、移動先での装置の高さにずれが生じた場合でも、装置の高さを容易に規定の高さに補正できる。
【0102】
(5) 前記装置は、物品を載せる積載部を昇降駆動する昇降駆動部と、前記積載部から前記物品の受け渡し先までの搬送路となる搬送部と、を備える、
(1)から(4)のいずれか1つに記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、物品を載せる積載部を昇降駆動部で昇降させて積載部を受け渡し先の高さに合わせた状態で、搬送部の搬送路によって受け渡し先との間で物品を容易に受け渡しできる。
【0103】
(6) 前記搬送部は、前記積載部の前記物品を搬入出する側の端部に、アーム基端部が回転自在に支持されたアーム部材と、前記アーム部材を回転駆動するアーム駆動部と、を備え、
前記アーム部材には、アーム長手方向に沿って複数の搬送ローラが並設されている、(5)に記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、アーム部材を回転させて受け渡し先に架け渡すことにより、積載部と受け渡し先との間で物品を円滑に搬入出させることができる。
【0104】
(7) 前記アーム部材には、アーム傾斜角度を検出する角度検出部が設けられ、
前記アーム駆動部は、前記角度検出部による検出結果に基づき、前記アーム部材の前記搬送路の高さを、前記受け渡し先の搬送路の高さに一致するように、前記アーム部材を回転させる、(6)に記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、角度検出部によって検出されるアーム傾斜角度から算出されるアーム先端の高さに基づいて、アーム部材の搬送路の高さを、受け渡し先の搬送路の高さに一致させることにより、積載部と受け渡し先との間で物品を円滑に搬入出させることができる。
【0105】
(8) 無軌道式の搬送ロボットに搭載された装置を指定の移動先に移動させ、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする位置決め制御方法であって、
前記搬送ロボットは、走行用車輪と、前記走行用車輪の回転駆動及び前記走行用車輪を旋回駆動してロボット走行方向を変更する車輪駆動部とを備え、
前記装置は、前記走行用車輪の周囲に配置された複数の自在キャスタを備え、
前記搬送ロボットを前記装置とともに前記移動先へ移動させる工程と、
前記移動先で、前記装置に設けられた接合部と、前記移動先に設けられた被接合部とを、前記接合部と前記被接合部のそれぞれに設けた接続機構により接続させる工程と、
前記接合部と前記被接合部とが前記接続機構によって接続された状態で、前記接合部と前記被接合部とを水平方向に相対移動させて、前記装置を前記移動先の規定位置に位置決めする工程と、
を有することを特徴とする位置決め制御方法。
この位置決め制御方法によれば、接合部と被接合部とを水平方向に相対移動させることにより、移動先の規定位置に対して人手を介することなく短時間で装置を高精度に位置決めできる。
【0106】
(9) 前記接合部と前記被接合部とが接続された後で、前記接合部と前記被接合部とを位置決めする前に、前記搬送ロボットの前記走行用車輪と前記自在キャスタのキャスタ車輪の向きを、前記接合部と前記被接合部との前記移動先の規定位置に位置決めする際の相対移動方向と平行にする、(8)に記載の位置決め制御方法。
この位置決め制御方法によれば、搬送ロボット又は装置の接合部が移動先の被接合部に接続した状態で、接合部と被接合部とを無理なく水平方向に相対移動させることができる。これにより、移動先の規定位置に対して、装置をより高精度に位置決めできる。
【0107】
<付記>
また、本明細書には次の事項も開示されている。
[1] 前記水平微動機構は、
いずれか一方の側の前記接続機構が設けられた第1固定部と、
前記第1固定部に対して水平方向へ相対移動可能に前記第1固定部に支持された第2固定部と、
前記第2固定部に設けられ、棒状の突出片を前記第1固定部に向けて進退させる突出片駆動部と、
前記第1固定部に設けられ、突出された前記突出片の先端部が挿入される突出片受容部と、
を有し、
前記突出片の挿入に伴い前記突出片と前記突出片受容部とが接触し合う双方の接触面のうち、少なくとも一方の接触面は、前記突出片の進退方向から水平面内で傾斜したくさび形の傾斜面を含み、前記突出片の挿入による前記傾斜面での前記接触面同士の接触によって、前記接合部と前記被接合部との水平方向の相対移動を生じさせる、
位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、突出片受容部に突出片を挿入させることにより、第1固定部と第2固定部とが水平方向へ相対移動する。これにより、接合部と被接合部との水平方向の相対移動を生じさせ、移動先の規定位置に対して装置を容易に位置決めできる。
【0108】
[2] 前記突出片には、該突出片の水平方向の幅を前記先端部に向かうほど先細りになる前記傾斜面が形成され、
前記突出片受容部は、前記突出片の前記傾斜面を水平方向に挟み込む一対の回転ローラを有する、[1]に記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、突出片受容部に突出片を挿入させることにより、傾斜面を有する先細りの突出片が回転ローラに挟み込まれる。これにより、接合部と被接合部との水平方向の相対移動を生じさせ、移動先の規定位置に対して装置を容易に位置決めできる。
【0109】
[3] 前記第1固定部と前記第2固定部のいずれか一方に水平方向に延びる水平レールが固定され、いずれか他方に前記水平レールに沿って移動するスライダが固定されている、[1]又は[2]に記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、水平レールとスライダとによって第1固定部と第2固定部とを円滑に水平方向へ相対移動可能にできる。これにより、移動先の規定位置に対して装置を円滑に位置決めできる。
【0110】
[4] 前記第1固定部と前記第2固定部との水平方向の相対移動を弾性反発力によって規制する弾性部材を備える、[1]から[3]のいずれか1つに記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、第1固定部と第2固定部との水平方向の相対移動が弾性部材の弾性反発力によって規制されることにより、第1固定部と第2固定部とのがたつきを抑えて位置決め精度を高めることができる。
【0111】
[5] 前記第1固定部は、前記接合部が設けられた前面板と、前記前面板と前記第2固定部との間に配置された中間板とを有し、
前記前面板と前記中間板のいずれか一方に鉛直方向に延びる鉛直レールが固定され、いずれか他方に前記鉛直レールに沿って移動するスライダが固定されている、[1]から[4]のいずれか1つに記載の位置決めシステム。
この位置決めシステムによれば、前面板と中間板とを鉛直方向へ相対的に移動可能にできる。これにより、移動先の規定位置と装置との鉛直方向の位置ずれを許容しつつ水平方向に位置決めできる。
【符号の説明】
【0112】
10 自在キャスタ
11 キャスタ車輪
19 キャスタ旋回駆動部
100 搬送装置(装置)
101 金型(物品)
111 積載部
113 搬送ロボット
124 昇降駆動部
131 車輪駆動部
137 走行用車輪
140 搬送部
141 アーム部材
141a アーム基端部
143 アーム駆動部
145 搬送ローラ
147 角度検出部
200 成形機(移動先)
300 接合部
301 接続孔部(接続機構)
303 ロック孔部(接続機構)
310 被接合部
311 接続ピン(接続機構)
313 クランパ(接続機構)
320 水平移動機構
321 第1固定部
323 第2固定部
325A 前面板
325B 中間板
331 水平レール
333 スライダ
341 弾性部材
351 突出片駆動部
357 突出片
357a 傾斜面
361 突出片受容部
365 回転ローラ
381 鉛直レール
383 スライダ
401 制御部
【要約】
【課題】搬送ロボットを使用して装置の搬送を行う際に、人手を介することなく、短時間で高精度な位置決めを実現する。
【解決手段】位置決めシステムは搬送ロボット113に搭載された装置を指定の移動先に移動させて規定位置に位置決めする。装置に接合部300が設けられ、移動先に被接合部310が設けられる。搬送ロボット113は走行用車輪と車輪駆動部を備え、装置は複数の自在キャスタ10を備える。接合部300と被接合部310とは互いに接続し合う接続機構をそれぞれ有し、いずれか一方は水平移動機構320と位置決め機構を有する。水平移動機構は、接合部300と被接合部310とを水平方向へ相対移動自在にし、接続機構による接続を装置が規定位置からずれた位置でも可能にする。位置決め機構は、接続された接合部300と被接合部310とを水平方向に相対移動させて、装置を規定位置に位置決めする。
【選択図】
図17