(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】爪用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20240821BHJP
A61Q 3/02 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K8/81
A61Q3/02
(21)【出願番号】P 2023221716
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-02-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509226174
【氏名又は名称】株式会社ネイルセレクト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100203208
【氏名又は名称】小笠原 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 竜司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一秀
(72)【発明者】
【氏名】松山 文偉
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0000640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 8/00- 8/40
A45D 24/00-31/00
A45D 42/00-97/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分
【化1】
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物である、請求項1に記載の爪用組成物。
【化2】
【化3】
【請求項3】
前記(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含む、請求項1に記載の爪用組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の爪用組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の爪用組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の爪用組成物。
【請求項7】
前記(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上90質量部以下である、請求項1に記載の爪用組成物。
【請求項8】
前記(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上40質量部以下である、請求項1に記載の爪用組成物。
【請求項9】
ジェルネイルに用いるための、請求項1~8のいずれか一項に記載の爪用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を重合した重合体は膜形成性があり、当該化合物は爪用組成物に用いられる。
【0003】
爪用組成物に求められる特性として、まず、形成される膜(人工爪)と天然爪との良好な接着性が挙げられる。例えば、特許第7104391号公報(特許文献1)では、かかる爪用組成物として、以下の(A)成分から(C)成分を含有する人工爪組成物が提案されている。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物
(B)成分:以下の式で表される化合物
【化1】
(C)成分:ラジカル重合開始剤
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、爪用組成物には、形成される膜と天然爪との良好な接着性の他、爪を美しく見せる目的や施術を安全に行う目的から、耐白濁性、高光沢、低硬化熱等も求められる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、良好な接着性、良好な耐白濁性及び高い光沢を有する膜の形成が可能であると共に、硬化熱も低い爪用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物及びラジカル重合開始剤を含有する爪用組成物において、酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する特定の重合性化合物を用いることにより、低い硬化熱で、良好な接着性、良好な耐白濁性及び高い光沢を有する膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
従って、本発明の組成物は、以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物である。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分であって、下記一般式(I)で表される化合物を含む成分
【化2】
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
【0009】
本発明の組成物の好適例においては、前記一般式(I)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物である。
【化3】
【化4】
【0010】
本発明の組成物の好適例において、前記(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含む。
【0011】
本発明の組成物の他の好適例において、前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレートを含む。
【0012】
本発明の組成物の他の好適例において、前記(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む。
【0013】
本発明の組成物の他の好適例において、前記(メタ)アクリレートモノマーは、イソボルニル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む。
【0014】
本発明の組成物の他の好適例において、前記(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上90質量部以下である。
【0015】
本発明の組成物の他の好適例において、前記(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上40質量部以下である。
【0016】
本発明の組成物の他の好適例においては、ジェルネイルに用いるための爪用組成物である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、良好な接着性、良好な耐白濁性及び高い光沢を有する膜の形成が可能であると共に、硬化熱も低い爪用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、爪用組成物に関する。本明細書では、本発明の爪用組成物を単に「本発明の組成物」とも称する。
【0019】
本発明において、爪用組成物とは、爪を美しく見せる目的で、又は、爪の保護若しくは補強や損傷した爪の修復の目的で、爪に使用される組成物である。例えば、爪用組成物は、マニキュア、ペディキュア又はジェルとして使用され、この場合、爪用組成物を爪に塗布し、硬化させることで、爪の表面に膜を形成させることができる。また、爪用組成物は、プライマー又はボンダーとしても使用することができ、これにより爪に接着力を付与することができる。また、爪用組成物は、付け爪(例えば、ネイルティップ、エクステンション、スカルプチュア等)の材料として用いることも可能である。
【0020】
本発明においては、爪用組成物から形成された爪に適用される物質(膜や付け爪等)を「人工爪」と称し、爪自体を「天然爪」と称する場合がある。
【0021】
<爪用組成物>
本発明の組成物は、以下の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する爪用組成物であり、さらに(D)成分を含んでいてもよい。また、本発明の組成物は、さらなる成分として各種添加剤を含むこともできる。
(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分
(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分
(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分
(D)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基を有する化合物(ただし、酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物を除く。)からなる成分
【0022】
本発明の組成物は、分子内のラジカル重合性不飽和二重結合を介した重合反応を利用することで人工爪を形成することが可能な組成物である。ラジカル重合性不飽和二重結合としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基またはアリル基を構成する炭素-炭素二重結合等が挙げられる。
【0023】
本発明の組成物は、紫外線、可視光線、電子線等の活性エネルギー線又は熱により硬化させることができる組成物である。
【0024】
本発明の組成物は、マニキュア、ペディキュア又はジェルとして使用されることが好ましく、ジェルとして使用されることが特に好ましい。
【0025】
本発明の組成物は、ジェルネイルへの使用に特に好ましい。ジェルネイルとは、紫外線や熱などにより硬化するジェルを利用し、人工爪を形成する技術を意味する用語であり、また、当該技術により形成される人工爪それ自体をジェルネイルと称する場合もある。ジェルネイルは、多くの場合、複数層、例えば、艶出しや保護の目的で表面側に設けられるトップジェル層、爪との接着性を確保するために爪側に設けられるベースジェル層、及びトップジェル層とベースジェル層の間に発色のために設けられるカラー層といった積層構造から形成されるが、本発明の組成物は、ジェルネイルを構成する層の一部又は全部に使用することができる。
【0026】
本発明において、ラジカル重合性不飽和二重結合を1つ有する化合物を単官能化合物と称し、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物を2つ以上有する化合物を多官能化合物と称する。また、多官能化合物について、ラジカル重合性不飽和二重結合を2つ有する化合物を二官能化合物、ラジカル重合性不飽和二重結合を3つ有する化合物を三官能化合物などとも称する。
【0027】
また、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーのいずれであってもよい。
【0028】
〔(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分〕
(A)成分は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物からなる成分であるが、酸性基を有する化合物は(A)成分から除かれる。酸性基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0029】
(A)成分に該当する化合物は、ラジカル重合性不飽和二重結合を1~9個有することが好ましい。
【0030】
(A)成分に該当する化合物は、一種単独で用いてもよいが、二種以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0031】
(A)成分に該当する化合物として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルキルフェノールのアルキレンオキサイド付加物とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等の単官能モノマーが挙げられる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する単官能モノマーも挙げられる。これら単官能モノマーは、フルオロ基等の置換基を分子内に有していてもよい。
【0032】
また、(A)成分に該当する化合物として、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオール又はポリオールのアルキレンオキサイド付加物とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。ポリオール又はポリオールのアルキレンオキサイド付加物とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルである(メタ)アクリレートとしては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセンリトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら多官能モノマーは、フルオロ基等の置換基を分子内に有していてもよい。
【0033】
また、(A)成分に該当する化合物として、例えば、ビスフェノールA、F、S等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド変性体とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルであるジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、F、S等の水添ビスフェノール類とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルであるジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、F、S等の水添ビスフェノール類のアルキレンオキサイド変性体とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルであるジ(メタ)アクリレート、トリスフェノール類のアルキレンオキサイド変性体とアクリル酸又はメタクリル酸のエステルであるジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーも挙げられる。これら多官能モノマーは、フルオロ基等の置換基を分子内に有していてもよい。
【0034】
(A)成分に該当する単官能モノマー及び多官能モノマーは、(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0035】
(メタ)アクリレートの用語は、メタクリレート又はアクリレートを意味する。また、(メタ)アクリロイル基の用語は、メタクリロイル基又はアクリロイル基を意味する。
【0036】
また、(A)成分に該当する化合物として、例えば、多官能オリゴマー、好ましくは分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。分子内に複数の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、複数のモノマーが重合して鎖状となった分子構造と、分子内に複数の(メタ)アクリロイル基とを分子内に有するオリゴマーが挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、複数のウレタン結合を分子鎖中に有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシドの開環反応によって生じた分子鎖を有するエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、複数のエステル結合を分子鎖中に有するポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、複数のエーテル結合を分子鎖中に有するポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0038】
(A)成分に該当する化合物として使用されるオリゴマーの重量平均分子量は、通常、4500以上50,000以下である。
【0039】
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量であり、標準物質にはポリスチレンが使用される。
【0040】
(A)成分は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、(メタ)アクリレートモノマーとを含むことが好ましい。ここで、(A)成分は、(メタ)アクリレートモノマーとして、イソボルニル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことが更に好ましい。また、(メタ)アクリレートモノマー、イソボルニル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートはそれぞれメタクリレートモノマー、イソボルニルメタクリレート及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートであることが好ましい。
【0041】
(A)成分がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことにより、爪用組成物から形成される人工爪の割れが生じにくいという利点があり、また、天然爪と人工爪との接着性を向上させることができる。また、(A)成分がイソボルニル(メタ)アクリレートを含むことにより、より優れた硬度を有する人工爪を形成することが可能となる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは、他の(A)成分との相溶性が良好であり、(A)成分が2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことにより、適切な硬度や接着性を有する人工爪を形成することが可能となる。
【0042】
(A)成分は、(メタ)アクリレートモノマーとして、アルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。(A)成分がアルキル(メタ)アクリレートを含むことにより、より優れた硬度を有する人工爪を形成することが可能となる。
【0043】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと(メタ)アクリレートモノマーの質量比は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー:(メタ)アクリレートモノマー=10:90~70:30の範囲内にあることが好ましく、30:70~50:50の範囲内にあることがより好ましい。
【0044】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの含有量は、爪用組成物100質量部に対して10~50質量部であることが好ましく、20~40質量部であることが更に好ましい。
【0045】
(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、爪用組成物100質量部に対して30~90質量部であることが好ましく、40~60質量部であることが更に好ましい。
【0046】
(A)成分がイソボルニル(メタ)アクリレートを含む場合、イソボルニル(メタ)アクリレートの含有量は、爪用組成物100質量部に対して10~70質量部であることが好ましく、10~30質量部であることが更に好ましい。
【0047】
(A)成分が2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含む場合、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、爪用組成物100質量部に対して20~50質量部であることが好ましく、30~40質量部であることが更に好ましい。
【0048】
(A)成分がアルキル(メタ)アクリレートを含む場合、アルキル(メタ)アクリレートの含有量は、爪用組成物100質量部に対して20~80質量部であることが好ましく、30~60質量部であることが更に好ましい。
【0049】
(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
特に本発明の組成物がジェルネイルに使用される場合、(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、10質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましく、50質量部以上であることが特に好ましい。また、(A)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0051】
〔(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分〕
(B)成分は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分である。リン酸基とは、-O-P(=O)(OH)2を指す。また、リン酸エステル基とは、リン酸基の水素の1つ又は2つが有機基で置き換わった構造を有する基を指すが、酸性基としてのリン酸エステル基とは、リン酸基の水素の1つが有機基で置き換わった構造を有する基を指し、これをリン酸モノエステル基と称する場合もある。
【0052】
本発明の組成物は、(B)成分として、下記一般式(I)で表される化合物を含む。本発明の組成物には、一般式(I)で表される複数の化合物が含まれていてもよい。
【化5】
(式中、
Xは、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、前記連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよく、
aは、1~10であり、
nは、1又は2であり、
mは、1又は2であり、
n+mは、3である。)
【0053】
上記式(I)において、リンカーは、Xのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基と、リン原子に結合した酸素原子とを連結する3~14個の炭素原子からなる連結部を表し、ここで、連結部は、更に酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい。連結部にヘテロ原子が含まれる場合、ヘテロ原子の数は、1つ又は複数である。また、連結部を構成する炭素原子の数は、nが1である場合、6~12個であることが好ましく、8~10個であることが更に好ましく、10個であることが特に好ましい。連結部を構成する炭素原子の数は、nが2である場合、3~6個であることが好ましい。連結部としては、例えば、直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基からなる連結部、環骨格全体が炭素原子からなる炭素環(例えば、シクロヘキサン環、トリシクロデカン環、イソボルナン環、ベンゼン環等)からなる連結部、複素環からなる連結部、炭素環又は複素環と直鎖又は枝分かれ鎖の炭化水素基を組み合わせてなる連結部、1つ又は複数のエーテル結合又はエステル結合を含む連結部〔例えば、式:-(R)xO-R-で表される連結部(ここで、Rは2価の炭化水素基であり、xは1以上の整数である)等〕等が挙げられる。
【0054】
aは、リンカーに結合しているアクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基の数を表す。nが1である場合、aは、1~6であることが好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~2であることが特に好ましい。nが2である場合、aは、1~6であることが好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~2であることが特に好ましい。
【0055】
本発明の組成物は、一般式(I)で表される化合物として、下記式(1)で表される化合物及び/又は下記式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
【化6】
【化7】
【0056】
式(1)の化合物は、メタクリル酸10-(ホスホノオキシ)デシル等と称される化合物である。
式(2)の化合物は、ビス(GDMA)ホスフェート、ビス(グリセリルジメタクリレート)ホスフェート、メタクリル酸ホスフィニコビス(オキシ-2,1,3-プロパントリイル)エステル等と称される化合物であり、CAS番号168191-79-5が付された化合物である。
【0057】
また、一般式(I)で表される化合物としては、式(1)で表される化合物及び式(2)で表される化合物のメタクリロイルオキシ基をアクリロイルオキシ基に置き換えた化合物、すなわち、
アクリル酸10-(ホスホノオキシ)デシル等と称される化合物、
ビス(グリセリルジアクリレート)ホスフェート、アクリル酸ホスフィニコビス(オキシ-2,1,3-プロパントリイル)エステル等と称される化合物
等も好適である。
【0058】
(B)成分は、酸性基を有する化合物であることから、本発明の組成物から形成される人工爪に良好な接着性を付与することが可能である。(B)成分として使用される一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物であり、電気陰性度の観点から炭素と酸素が比較的に強い結合になるため、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を有しないこと以外は同構造の化合物と比べてプロトン供与力が弱い。このため、一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基を有しない低分子の酸性有機化合物に比べて耐水性が良好である。よって、一般式(I)の化合物を用いることで、本発明の組成物から形成される人工爪に白濁を生じにくくすることができる。また、一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基とリン酸基又はリン酸エステル基の間に特定の連結部を有することにより硬化熱が分散でき、硬化熱の上昇が抑えられる。また、一般式(I)の化合物は、アクリロイルオキシキ基又はメタクリロイルオキシ基とリン酸基又はリン酸エステル基の間に特定の連結部を有することによって、本発明の組成物を硬化した後のレベリングが良好であり、光沢の高い人工爪が得られる。
【0059】
一般式(I)の化合物の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましく、2~7質量部であることが更に好ましい。本発明の組成物が一般式(I)で表される複数の化合物を含む場合、一般式(I)の化合物の含有量は、当該複数の化合物の総量である。
【0060】
本発明の組成物は、(B)成分として、一般式(I)で表される化合物に加えて、さらなる化合物を含むこともできる。
【0061】
(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して90質量部以下であることが好ましく、70質量部以下であることがより好ましい。
【0062】
特に本発明の組成物がジェルネイルに使用される場合、(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましい。また、(B)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して40質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましく、8質量部以下であることが特に好ましい。
【0063】
〔(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分〕
(C)成分は、ラジカル重合開始剤からなる成分である。ラジカル重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線や熱によって活性種であるラジカルを発生し、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて使用され得る(D)成分の重合を開始させる作用を有する。紫外線等の活性エネルギー線によってラジカルを発生する重合開始剤を「光ラジカル重合開始剤」と称し、熱によってラジカルを発生する重合開始剤を「熱ラジカル重合開始剤」と称する。本発明の組成物は、(C)成分として、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤のいずれを含んでいてもよいが、硬化性の観点から、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤を用いることで、活性エネルギー線を数十秒から数分程度照射することで組成物の硬化を完了することができる。なお、爪用組成物に使用される重合開始剤としてカチオン重合開始剤も知られているが、毒性の問題を生じ得るため、カチオン重合開始剤の使用は好ましくない。
【0064】
(C)成分としてのラジカル重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤を併用することも可能である。
【0065】
(C)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0066】
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-フェニル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタール等のベンゾイン系開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系開始剤;α-アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2-エチルアントラキノン、4’,4’’-ジエチルイソフタロフェノン等のケトン系開始剤;2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-イミダゾール等のイミダゾール系開始剤;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系開始剤;カルバゾール系開始剤等が挙げられる。
【0067】
光ラジカル重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
【0069】
[熱ラジカル重合開始剤]
熱ラジカル重合開始剤は、常温でもラジカルを発生することが可能な重合開始剤であることが好ましい。ここで、常温とは、15~25℃の温度を意味する。
【0070】
常温でもラジカルを発生することが可能な熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
【0071】
有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3、3.5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-ヘキシルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、m-トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-s-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α’-ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシマレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-m-トルイルベンゾエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシアセテート、ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等が挙げられる。
【0072】
アゾ化合物としては、例えば、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-クロロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(4-ヒドロフェニル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(フェニルメチル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(3,4,5,6-テトラヒドロピリミジンー2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、ジメチル2,2-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0073】
熱ラジカル重合開始剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
熱ラジカル重合開始剤の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。
【0075】
〔(D)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基を有する化合物(ただし、酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物を除く。)からなる成分〕
(D)成分は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基を有する化合物からなる成分であるが、酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物、即ち(B)成分に該当する化合物は(D)成分から除かれる。(D)成分の酸性基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0076】
(D)成分に該当する化合物は、ラジカル重合性不飽和二重結合を1~10個有することが好ましく、1~4個有することが更に好ましい。
【0077】
本発明の組成物は、(D)成分を含んでいてもよい。(D)成分は、酸性基を有する化合物であることから、本発明の組成物から形成される人工爪に良好な接着性を付与することが可能である。
【0078】
本発明の組成物は、(D)成分として、下記一般式(II)で表される化合物を含むことが好ましい。本発明の組成物には、一般式(II)で表される複数の化合物が含まれていてもよい。
【化8】
(式中、
Aは、環骨格全体が5~8個の炭素原子からなる環構造を表し、ここで、前記環構造は1つ又は複数のアルキル基が結合されていてもよく、
COOHは、Aの環構造に結合しているカルボキシル基を表し、
COOは、Aの環構造に結合しているカルボニルオキシ基を表し、
Bは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を表し、
リンカーは、Aの環構造に結合しているCOO(カルボニルオキシ基)とBのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基とを連結する2~14個の炭素原子からなる直鎖または枝分かれ鎖を表す。)
【0079】
上記式(II)において、Aは、環骨格全体が5~8個の炭素原子からなる環構造を表す。ここで、環構造は、炭素原子が環状に結合している構造で、その環の中に二重結合があってもよい。最多数の共役二重結合を含んでいない環構造を脂環式炭化水素構造と称し、最多数の共役二重結合を含む環構造を芳香環と称し、特に6個の炭素原子からなる芳香環をベンゼン環と称する。上記式(II)において、Aは、6個の炭素原子からなる環構造であることが好ましく、シクロヘキサン環又はベンゼン環であることが更に好ましい。
【0080】
上記式(II)において、Aの環構造は、1つ又は複数のアルキル基が結合されていてもよい。アルキル基としては、メチル基が特に好ましい。
【0081】
上記式(II)において、カルボキシル基(COOH)とカルボニルオキシ基(COO)のAの環構造への結合位置は特に制限されるものではないが、カルボキシル基(COOH)とカルボニルオキシ基(COO)とが隣接する炭素原子に結合していることが好ましい。例えば、Aの環構造がベンゼン環である場合、ベンゼン環に結合しているカルボキシル基(COOH)とカルボニルオキシ基(COO)はオルトの位置関係にあることが好ましい。
【0082】
上記式(II)において、リンカーは、Aの環構造に結合しているCOO(カルボニルオキシ基)とBのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基とを連結する2~14個の炭素原子からなる直鎖または枝分かれ鎖を表す。具体的には、Aの環構造に結合しているCOO(カルボニルオキシ基)のオキシ部分と、Bのアクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基のオキシ部分を連結する部分を指す。リンカーは、直鎖であることが好ましく、メチレン鎖であることが更に好ましい。リンカーの炭素原子の数は2~8個であることが好ましく、2~4個であることが更に好ましく、2個であることが特に好ましい。
【0083】
一般式(II)で表される化合物としては、下記式(3)~(6)で表される化合物が好適に挙げられる。本発明の組成物には、式(3)~(6)で表される化合物から選択される複数の化合物が含まれていてもよい。
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0084】
式(3)の化合物は、ヘキサヒドロフタル酸水素2-(アクリロイルオキシ)エチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチル又はヘキサヒドロフタル酸2-(アクリロイルオキシ)エチル等と称される化合物である。
式(4)の化合物は、ヘキサヒドロフタル酸水素2-(メタクリロイルオキシ)エチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチル又はヘキサヒドロフタル酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル等と称される化合物である。
式(5)の化合物は、フタル酸水素2-(メタクリロイルオキシ)エチル、フタル酸モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチル又はフタル酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル等と称される化合物である。
式(6)の化合物は、フタル酸水素2-(アクリロイルオキシ)エチル、フタル酸モノ-2-(アクリロイルオキシ)エチル又はフタル酸2-(アクリロイルオキシ)エチル等と称される化合物である。
【0085】
一般式(II)の化合物は、炭素環に加えて、炭素環に結合したエステル結合(COO部分)と(メタ)アクリロイルオキシ基の間のリンカーを疎水基として有する化合物である。また、一般式(II)の化合物は、酸性基としてカルボキシル基を有する化合物であり、電気陰性度の観点から炭素と酸素が比較的に強い結合になるため、プロトン供与力が弱い。式(3)~(6)の化合物は、このような疎水基と酸性基との適切な組み合わせにより、耐水性が良好である。このため、一般式(I)の化合物に加えて一般式(II)の化合物を用いることで、耐白濁性をさらに向上させることができる。更に、一般式(II)の化合物は、複数のカルボン酸エステル構造を有する化合物であり、水素結合成分と極性成分のいずれの点からも、天然爪の爪甲から人工爪を除去する際に使用される主な有機溶剤として知られるアセトンなどに近い溶解パラメーター(SP値)を有する化合物であるといえる。このため、一般式(II)の化合物を用いると、本発明の組成物から形成される人工爪は、有機溶剤に対する膨潤性が高くなり、天然爪の爪甲から除去する際により柔軟になり、天然爪からの除去が容易になる。
【0086】
一般式(II)で表される化合物の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5~8質量部であることが好ましく、2~5質量部であることが更に好ましい。本発明の組成物が一般式(II)で表される複数の化合物を含む場合、一般式(II)で表される化合物の含有量は、当該複数の化合物の総量である。
【0087】
本発明の組成物は、(D)成分として、下記式(7)で表される化合物及び/又は下記式(8)で表される化合物を含むことができる。
【化13】
【化14】
【0088】
式(7)の化合物は、アクリル酸である。
式(8)の化合物は、メタクリル酸である。
【0089】
一般式(I)で表される化合物と共に式(7)の化合物及び/又は式(8)の化合物を用いることで、形成される人工爪の天然爪との接着性を大幅に向上させることができる。式(7)の化合物及び/又は式(8)の化合物は、小分子であり、ラジカル重合反応を起こしやすく、また、併用される材料に対する相溶性も良好であり、均一な硬化物の形成に貢献しているものと考えられる。これにより、天然爪との密着性の向上効果が高くなると考えられる。
【0090】
式(7)の化合物及び/又は式(8)の化合物の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5~10質量部であることが好ましく、2~7質量部であることが更に好ましい。「式(7)の化合物及び/又は式(8)の化合物の含有量」とは、本発明の組成物が式(7)の化合物と式(8)の化合物の一方のみを含む場合はその化合物の含有量であり、本発明の組成物が式(7)の化合物と式(8)の化合物の両方を含む場合は式(7)の化合物と式(8)の化合物の総量である。
【0091】
(D)成分の含有量は、爪用組成物100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましく、2質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。
【0092】
〔さらなる成分〕
本発明の組成物は、さらなる成分として添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、重合促進剤、重合禁止剤、着色剤、変色防止剤、蛍光剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、揮発性有機溶媒等、増感剤が挙げられる。
【0093】
本発明の組成物は、必要に応じて適宜選択される成分を混合することで調製できる。
【0094】
本発明の組成物は、その25℃における粘度が、1~100Pa・sの範囲内にあることが好ましく、5~60Pa・sの範囲内にあることが更に好ましい。
【0095】
特に本発明の組成物がジェルである場合、その25℃における粘度が、5~100Pa・sの範囲内にあることが好ましく、10~60Pa・sの範囲内にあることが更に好ましい。
【0096】
本発明において、組成物の粘度は、B型粘度計を用いて測定できる。
【0097】
本発明の組成物を天然爪に塗布する際には、ブラシ等の公知の塗布手段を使用することができる。
【0098】
本発明の組成物の硬化は、(C)成分として光ラジカル重合開始剤を用いた場合、紫外線等の活性エネルギー線の照射が行われる。活性エネルギー線の光源としては、LEDランプ等を好適に使用できる。また、(C)成分として熱ラジカル重合開始剤を用いた場合には、通常、加熱が行われるが、常温でもラジカルを発生することが可能な熱ラジカル重合開始剤を用いた場合、加熱の必要はなく、本発明の組成物を塗布した後、一定時間置いておくだけで硬化を行うことができる。
【0099】
本発明の組成物は、硬化熱が低い。ここで、本発明の組成物の硬化中の温度は、最高温度が40℃未満であることが好ましく、35℃未満であることが更に好ましく、30℃未満であることが特に好ましい。
【0100】
本発明の組成物は、高い光沢を有する硬化物を形成することができる。ここで、本発明の組成物の硬化物の光沢度は、80以上であることが好ましく、90以上であることが更に好ましく、100以上であることが特に好ましい。光沢度の上限値としては、例えば、1000以下である。
【0101】
本発明において、光沢度は、60°鏡面光沢度である。スライドガラスの平滑面上に本発明の組成物を塗布し、硬化させることで得られる厚さ約0.2mmの硬化膜を測定用サンプルとし、光沢計(例えばHoriba社製IG-410)を用いて硬化物の光沢度を測定することができる。
【0102】
本発明の組成物から形成される人工爪は、アセトンなどの有機溶剤を浸したコットン等を用いることで天然爪から容易に除去することができる。
【実施例】
【0103】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
<使用した成分>
爪用組成物の調製に用いた成分を以下に示す。
【0105】
〔(A)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる成分〕
A1:ウレタンアクリレートオリゴマー(ポリエーテル系)
A2:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
A3:イソボルニルメタクリレート
【0106】
〔(B)成分:分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる成分〕
B1:メタクリル酸10-(ホスホノオキシ)デシル、式(1)の化合物
B2:ビス(GDMA)ホスフェート、式(2)の化合物
B3:リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル
B4:リン酸ビス〔2-(メタクリロイルオキシ)エチル〕
B5:リン酸2-(アクリロイルオキシ)エチル
B6:リン酸ビス〔2-(アクリロイルオキシ)エチル〕
【0107】
B3~B6の化合物の構造式を以下に示す。
B3:リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル
【化15】
B4:リン酸ビス〔2-(メタクリロイルオキシ)エチル〕
【化16】
B5:リン酸2-(アクリロイルオキシ)エチル
【化17】
B6:リン酸ビス〔2-(アクリロイルオキシ)エチル〕
【化18】
【0108】
〔(C)成分:ラジカル重合開始剤からなる成分〕
C1:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
【0109】
<爪用組成物の調製>
表1~表2に示す成分を電子天秤により表1~表2に示す量(質量部)計量し、これら成分を攪拌混合することで、爪用組成物を調製した。爪用組成物の25℃における粘度(Pa・s)を測定し、得られた結果を表1~表2に示す。調製された組成物はいずれもジェル状であった。
【0110】
【0111】
【0112】
<評価>
爪用組成物の接着性の評価を以下の接着性試験1及び2で行い、爪用組成物の硬化熱の評価を以下の硬化熱試験1で行い、爪用組成物の光沢の評価を以下の光沢試験1で行い、爪用組成物の耐白濁性の評価を以下の耐白濁性試験1及び2で行った。
【0113】
[接着性試験1]
接着性試験1では、爪用組成物の被着体としてスライドガラスを使用した。爪用組成物をスライドガラスの平滑面に塗布し、硬化させた場合の接着性(接着性1)を評価した。接着性試験1の詳細な手順を以下に示す。
【0114】
(接着性試験1用サンプルの作製)
まず、スライドガラス(松浪硝子工業社製S1214)を無水エタノールで洗浄し、これを被着体とする。
【0115】
続いて、スペーサー(厚み0.2mm)を使用し、スライドガラスの平滑面の縦50mm×横10mmの領域に、硬化後の厚さが約0.2mmとなるように爪用組成物を塗布し、市販のジェルネイル専用LEDライト(ネイルセレクト社製パラライトV)を使用して30秒間の紫外線照射により爪用組成物の硬化物を得る。
【0116】
続いて、硬化物表面には未硬化層があるので、未硬化層を、エタノールを浸したワイプでふき取り、接着性試験1用サンプルを得る。
【0117】
(接着性試験1における接着性の評価)
続いて、スライドガラス上の硬化物の長手方向より、カミソリ刃(フェザー社製、剃刀替刃(片刃))をスライドガラスの平滑面に対して25°の角度で当てて、硬化物をスライドガラス上から剥離するように押し込む。
【0118】
そして、硬化物とスライドガラスの間にカミソリ刃を押し込んだ状態を目視にて観察し、接着性1を評価した。接着性1の評価基準を表3に示す。得られた結果を表9~表10に示す。
【0119】
【0120】
[接着性試験2]
接着性試験2では、爪用組成物を被験者の天然爪に塗布し、硬化させて人工爪を作製し、その後、一定期間の日常生活を送った後の人工爪の接着性(接着性2)を評価した。接着性試験2の詳細な手順を以下に示す。
【0121】
(接着性試験2用サンプルの作製)
天然爪表面を、エタノールを浸したワイプでふき取り、粉塵の除去と油分除去を行う。
【0122】
続いて、天然爪表面に爪用組成物をベースジェルとして塗布し、ジェルネイル専用LEDライト(ネイルセレクト社製パラライトV)を使用して30秒間の紫外線照射により硬化させ、ベースジェル硬化層を得る。
【0123】
続いて、ベースジェル硬化層上にトップジェルを塗布し、ジェルネイル専用LEDライトを使用して30秒間の紫外線照射により硬化させ、トップジェル硬化層を得る。これにより、天然爪上に人工爪が形成される。なお、トップジェルには、ネイルセレクト社製のパラポリッシュを使用した。
【0124】
(接着性試験2における接着性の評価)
天然爪上に人工爪が形成された状態で、被験者は、14日間の日常生活を送る。そして、14日間の日常生活を送った後の人工爪の状態を目視にて観察し、接着性2を評価した。接着性2の評価基準を表4に示す。得られた結果を表9~表10に示す。
【0125】
【0126】
[硬化熱試験1]
硬化熱試験1では、爪用組成物の被着体としてスライドガラスを使用した。爪用組成物をスライドガラスの平滑面に塗布し、硬化させ、その際に硬化中の爪用組成物の温度を測定し、爪用組成物の硬化熱を評価した。硬化熱試験1の詳細な手順を以下に示す。
【0127】
まず、スライドガラス(松浪硝子工業社製S1214)を無水エタノールで洗浄し、これを被着体とする。
【0128】
続いて、スペーサー(厚み0.2mm)を使用し、スライドガラスの平滑面の縦50mm×横10mmの領域に、硬化後の厚さが約0.2mmとなるように爪用組成物を塗布する。
【0129】
次に、市販のジェルネイル専用LEDライト(ネイルセレクト社製パラライトV)を使用して爪用組成物に紫外線を30秒照射する。照射中、サーモグラフィ(Apiste社製Fsv-1200)を使用して爪用組成物の温度を測定する。紫外線の照射及び爪用組成物の温度の測定は室温(25℃)にて行われる。
【0130】
照射時の爪用組成物の最高温度を記録し、硬化熱を評価した。硬化熱の評価基準を表5に示す。得られた結果を表9~表10に示す。
【0131】
【0132】
[光沢試験1]
光沢試験1では、爪用組成物の被着体としてスライドガラスを使用した。爪用組成物をスライドガラスの平滑面に塗布し、硬化させることで得られる硬化物の光沢を評価した。光沢試験1の詳細な手順を以下に示す。
【0133】
まず、スライドガラス(松浪硝子工業社製S1214)を無水エタノールで洗浄し、これを被着体とする。
【0134】
続いて、スペーサー(厚み0.2mm)を使用し、スライドガラスの平滑面の縦50mm×横15mmの領域に、硬化後の厚さが約0.2mmとなるように爪用組成物を塗布する。
【0135】
次に、市販のジェルネイル専用LEDライト(ネイルセレクト社製パラライトV)を使用して爪用組成物に紫外線を30秒照射し、爪用組成物の硬化物を得る。高光沢グロスチェッカー(Horiba社製IG-410)を用いて硬化物の光沢を測定する。
【0136】
光沢試験を3回行い、測定された光沢値の平均値を求め、光沢を評価した。光沢の評価基準を表6に示す。得られた結果を表9~表10に示す。
【0137】
【0138】
[耐白濁性試験1]
耐白濁性試験1では、爪用組成物の被着体としてスライドガラスを使用した。爪用組成物をスライドガラスの平滑面に塗布し、硬化させた場合の耐白濁性(耐白濁性1)を評価した。
【0139】
(耐白濁性試験1用サンプルの作製)
上記(接着性試験1用サンプルの作製)と同様の手順で耐白濁性試験1用サンプルを得る。
【0140】
(耐白濁性試験1における耐白濁性の評価)
耐白濁性試験1用サンプルを密閉容器に入れ、市販恒温器(強制対流式、アズワン社製OFP-600V)にて40℃において飽和湿度で密閉保管する。密閉容器には、2つの小さな開口瓶が設置されており、開口瓶のそれぞれには水を含ませたスポンジが置かれている。このため、サンプルは、直接に水に触れていない。そして、24時間後、サンプルを密閉容器から取り出し、サンプルの白濁発生状態等を観察し、耐白濁性1を評価する。耐白濁性1の評価基準を表7に示す。得られた結果を表9~表10に示す。
【0141】
【0142】
[耐白濁性試験2]
耐白濁性試験2では、爪用組成物を被験者の天然爪に塗布し、硬化させて人工爪を作製し、その後、一定期間の日常生活を送った後の人工爪の耐白濁性(耐白濁性2)を評価した。耐白濁性試験2の詳細な手順を以下に示す。
【0143】
(耐白濁性試験2用サンプルの作製)
上記(接着性試験2用サンプルの作製)と同様の手順で耐白濁性試験2用サンプルを得る。
【0144】
(耐白濁性試験2における白濁性の評価)
天然爪上に人工爪が形成された状態で、被験者は、14日間の日常生活を送る。そして、14日間の日常生活を送った後の人工爪の状態を目視にて観察し、耐白濁性2を評価した。耐白濁性2の評価基準を表8に示す。得られた結果を表9~表10に示す。
【0145】
【0146】
[試験結果]
接着性試験1及び2、硬化熱試験1、光沢試験1、並びに耐白濁性試験1及び2の評価結果を表9及び表10に示す。
【0147】
【0148】
【0149】
[考察]
以下に評価結果を考察する。
【0150】
[接着性]
接着性1の評価が「×」又は「××」である爪用組成物は、爪甲表面に対する接着性が低く、短期間で剥離及び/又は脱落を生じると推測される。一方、接着性1の評価が「〇」である爪用組成物は、爪甲表面に対する良好な接着性があり、爪甲表面に対して長期に渡り接着し、剥離及び脱落が生じないと推測される。
【0151】
接着性試験1において、実施例1~16は良好な接着性を示した一方で、比較例1では十分な接着性が得られなかった。
【0152】
接着性2の評価が「×」又は「××」である爪用組成物は、天然爪の爪甲表面に対する接着性が低く、短期間で剥離及び/又は脱落が生じる。一方、接着性2の評価が「〇」又は「◎」である爪用組成物は、爪甲表面に対する良好な接着性があり、少なくとも14日間に亘って爪甲表面に接着し、剥離及び脱落が実質的に生じない。
【0153】
接着性試験2において、実施例1~16は良好な接着性を示した一方で、比較例1では十分な接着性が得られなかった。
【0154】
接着性試験1及び接着性試験2の結果から、実施例1~16の爪用組成物は、天然爪との良好な接着性を有するものと考えられる。
【0155】
実施例1~16では、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)からなる(A)成分の重合反応から得られる高い接着強度と、B1及び/又はB2からなる(B)成分によって得られる被着体との高い密着性によって良好な接着性が得られたものと推察される。
【0156】
一方、比較例1では十分な接着性が得られなかった。これは、比較例1に係る組成物は、分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物からなる(B)成分を含有しておらず、被着体との十分な密着性が得られなかったためと推察される。
【0157】
[硬化熱]
硬化熱の評価が「×」である爪用組成物は、施術の際、熱による刺激や痛みが感じられることがあり、場合により施術継続が困難となる可能性も考えられる。一方、硬化熱の評価が「〇」、「◎」又は「◎◎」である爪用組成物は、施術の際、熱を感じるものの、通常であれば耐え得る硬化熱であり、施術を困難にさせるものではないと考えられる。
【0158】
硬化熱試験1において、実施例1~16に係る爪用組成物はいずれも低い硬化熱であった。特に、B1及び/又はB2を一定以上の割合で含む実施例3~16に係る爪用組成物では、硬化熱の最高温度が30℃を下回る結果であった。一方、(B)成分を含まない比較例1に係る爪用組成物や、(B)成分として一般式(I)に該当しない化合物を少量含む比較例2、5、9及び12に係る爪用組成物では、高い硬化熱が観察された。この結果から、B1及びB2の化合物は、硬化の際に組成物内での熱分散効果が高く、硬化熱の最高温度の低下に大きく貢献していると考えられる。
【0159】
[光沢]
光沢の評価が「×」である爪用組成物は、硬化物の艶が少ないため、爪甲表面の鮮やかな見た目を損なう可能性がある。一方、光沢の評価が「〇」、「◎」又は「◎◎」である爪用組成物は、爪甲表面を鮮やかな見た目とすることができ、表面加工や色のアレンジにも適した人工爪を提供することができる。
【0160】
光沢試験1において、実施例1~16に係る爪用組成物はいずれも高い光沢を有する硬化物が得られた。特に、B1を一定の割合で含む実施例3、5、7、9及び13~16に係る爪用組成物では、優れた光沢を有する硬化物が得られた。一方、(B)成分を含まない、又は(B)成分として一般式(I)に該当しない化合物を含む比較例に係る爪用組成物の硬化物はそのほとんどが光沢の低いものであった。この結果から、B1及びB2の化合物、特にB1の化合物は、爪用組成物の硬化物に光沢を付与する効果が高い化合物であると考えられる。
【0161】
[耐白濁性]
耐白濁性1の評価が「××」又は「×」である爪用組成物は、その硬化物の耐水性が悪く白濁が生じ、変色や加水分解反応が発生しやすいと推測される。一方、耐白濁性1の評価が「〇」又は「◎」である爪用組成物は、爪甲表面で安定の色が維持でき、爪甲表面において加水分解反応起因の色ムラ、剥離等の現象が生じないと推測される。
【0162】
耐白濁性試験1において、実施例1~16は良好な耐白濁性を示した一方で、比較例2~15では十分な耐白濁性が得られなかった。特に(B)成分としてB5及び/又はB6の化合物を用いた比較例9~15では、耐白濁性1の評価が最も低いものであった。
【0163】
耐白濁性試験2の評価が「××」又は「×」である爪用組成物は、日常生活の環境によって試験期間中において白濁化等の現象が生じる。一方、耐白濁性試験2が「〇」である爪用組成物は、その硬化物の耐白濁性が良好であり、少なくとも14日間に亘って透明性が持続し、変化は生じない。
【0164】
耐白濁性試験2において、実施例1~16は良好な耐白濁性を示した一方で、比較例11、14、15では十分な耐白濁性が得られなかった。
【0165】
耐白濁性試験1及び耐白濁性試験2から、実施例1~16の爪用組成物は、良好な耐白濁性を有するものと考えられる。
【0166】
(B)成分に該当する化合物は、親水性であるリン酸基又はリン酸エステル基を有するため、一般には耐水性が低い化合物として認識されている。このため、(B)成分を含む組成物から得られる硬化物は、例えば湿気の多い環境下において白濁が生じやすいと考えていたが、耐白濁性試験1及び耐白濁性試験2の結果から、(B)成分に該当する化合物として特定の化合物、即ち一般式(I)の化合物を選択することによって良好な耐白濁性が得られることが分かる。
【要約】 (修正有)
【課題】良好な接着性、良好な耐白濁性及び高い光沢を有する膜の形成が可能であると共に、硬化熱も低い爪用組成物を提供する。
【解決手段】以下の成分を含有する爪用組成物。(A):分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物(ただし、酸性基を有する化合物を除く。)、(B):分子内に少なくとも1個のラジカル重合性不飽和二重結合及び酸性基としてリン酸基又はリン酸エステル基を有する化合物であって、下記一般式(I)で表される化合物、(C):ラジカル重合開始剤。
(式中、Xはアクリロイルオキシ基等を表し、a、n、mは、特定の整数を表す。)
【選択図】なし