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特許7541419アクリレート官能基を有する線状ブロック共重合体強化剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】アクリレート官能基を有する線状ブロック共重合体強化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20240821BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240821BHJP
   C08L 87/00 20060101ALI20240821BHJP
   C08F 299/02 20060101ALI20240821BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C08G81/00
C08L101/00
C08L87/00
C08F299/02
C08L63/00 A
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2023526328
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-10
(86)【国際出願番号】 US2022025971
(87)【国際公開番号】W WO2023204820
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-06-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519151046
【氏名又は名称】エル・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】ELE’ CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ジア
(72)【発明者】
【氏名】パパダキス,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】テッララヴォーロ,マイケル
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521800(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111171253(CN,A)
【文献】特表2010-505020(JP,A)
【文献】特表2011-506750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,C08L,C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリジメチルシロキサンとビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスプロピルエーテルとの複数の交互単位を含む線状ブロック共重合体であって、-(AB)A-(式中、Aはポリジメチルシロキサンであり、BはビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスプロピルエーテルであって、zは1~100の数である)の配列で配置された、前記線状ブロック共重合体;および
2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基であって、一方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の一端に位置し、他方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の他端に位置した、前記2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基
を含む熱硬化性樹脂用強化剤。
【請求項2】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、xは1~300の数である)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含む、請求項1記載の強化剤。
【請求項3】
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、式CH C( COOR-(式中、Rは-Hまたは-CHのいずれかであって、Rは-CHCH-または-CHCHCH-のいずれかである)を有する、請求項1記載の強化剤。
【請求項4】
前記ポリエチレンオキシドエーテルが、-(OCHCHO-(式中、yは1~100の数である)の配列で配置された、請求項1記載の強化剤。
【請求項5】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=1)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記ポリエチレンオキシドエーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=2;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項1記載の強化剤。
【請求項6】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=2)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記ポリエチレンオキシドエーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=4;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項1記載の強化剤。
【請求項7】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=4)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記ポリエチレンオキシドエーテルが、(-OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=8;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項1記載の強化剤。
【請求項8】
ポリジメチルシロキサンとビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスエチルエーテルとの複数の交互配列を含む線状ブロック共重合体であって、-(AB)A-(式中、Aはポリジメチルシロキサンであり、BはビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスエチルエーテルであって、zは1~100の数である)の配列で配置された、前記線状ブロック共重合体;および
2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基であって、一方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の一端に位置し、他方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の他端に位置した、前記2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基
を含む、熱硬化性樹脂用強化剤。
【請求項9】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、xは1~300の数である)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含む、請求項8記載の強化剤。
【請求項10】
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項8記載の強化剤。
【請求項11】
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルアクリレートである、請求項8記載の強化剤。
【請求項12】
前記ポリエチレンオキシドエーテルが、-(OCHCHO-(式中、yは1~100の数である)の配列で配置された、請求項8記載の強化剤。
【請求項13】
不飽和熱硬化性樹脂;
開始剤;ならびに
強化剤であって、
ポリジメチルシロキサンとビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスプロピルエーテルとの複数の交互単位を含む線状ブロック共重合体であって、-(AB)A-(式中、Aはポリジメチルシロキサンであり、BはビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスプロピルエーテルであって、zは1~100の数である)の配列で配置された、前記線状ブロック共重合体;および
2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基であって、一方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の一端に位置し、他方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の他端に位置した、前記2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基
を含む、前記強化剤
を含む、樹脂系。
【請求項14】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、xは1~300の数である)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;各アクリレートまたはメタクリレート官能基はメタクリレートであって;前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、yは1~100の数である)の配列で配置される、請求項13記載の樹脂系。
【請求項15】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=1)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=2;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項13記載の樹脂系。
【請求項16】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=2)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記エーテルが、(-O-CHCH-)O-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=4;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項13記載の樹脂系。
【請求項17】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=4)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=8;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項13記載の樹脂系。
【請求項18】
前記不飽和熱硬化性樹脂が、ビニルエステル系熱硬化性樹脂である、請求項13記載の樹脂系。
【請求項19】
エポキシ系熱硬化性樹脂;
硬化剤;ならびに
強化剤であって、
ポリジメチルシロキサンとビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスプロピルエーテルとの複数の交互単位を含む線状ブロック共重合体であって、-(AB)A-(式中、Aはポリジメチルシロキサンであり、BはビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスプロピルエーテルであって、zは1~100の数である)の配列で配置された、前記線状ブロック共重合体;および
2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基であって、一方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の一端に位置し、他方のアクリレートまたはメタクリレート官能基が前記線状ブロック共重合体の他端に位置した、前記2つのアクリレートまたはメタクリレート官能基
を含む、前記強化剤
を含む、樹脂系。
【請求項20】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、xは1~300の数である)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
アクリレートまたはメタクリレート官能基はメタクリレートであり;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、yは1~100の数である)の配列で配置された、請求項19記載の樹脂系。
【請求項21】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、xは1~300の数である)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
アクリレートまたはメタクリレート官能基はアクリレートであり;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、yは1~100の数である)の配列で配置された、請求項19記載の樹脂系。
【請求項22】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=1)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=2;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項19記載の樹脂系。
【請求項23】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-、式中、x=2)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=4;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項19記載の樹脂系。
【請求項24】
前記ポリジメチルシロキサンが、-(Si(CHO))Si(CH-(式中、x=4)の配列で配置された複数のジメチルシロキサン単位を含み;
前記エーテルが、-(OCHCHO-(式中、y=5)の配列で配置され;
z=8;および
アクリレートまたはメタクリレート官能基が、プロピルメタクリレートである、請求項19記載の樹脂系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂と共に用いる場合の強化剤(または、タフナーもしくは強靭化剤:toughener)として作用するアクリレート官能基により終端した新規シロキサン-ビスフェノールブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂には、エポキシ、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、ポリウレタン、シリコーン、ポリアミドおよびポリアミド-イミドが含まれ、種々の産業において、複合材料、接着剤および保護コーティングのために使用されている。熱、圧力、紫外線(UV)または電子線(EB)の適用を含む硬化プロセス中に、個々の樹脂分子が架橋して、高い強度、硬度、耐薬品性(または、耐化学性:chemical resistance)、熱安定性を示す3次元ネットワークを形成する。しかしながら、いくつかの硬化した樹脂は、依然として固有の脆性を示し、したがって、破壊および衝撃に対して脆弱な(vulnerable)ままである。
【0003】
ある種の樹脂の脆性の課題に対処するために、硬化に先立ってシロキサン系強化剤を樹脂に添加できる。例えば、米国特許公開第2020/0291188号明細書は、エポキシ官能化ポリオルガノシロキサン強化剤を開示し、これは、エポキシ系熱硬化性樹脂と組み合わせた場合、硬化した複合体を破壊および衝撃に対して脆弱にしにくくする。しかしながら、これらのエポキシ官能化ポリオルガノシロキサン強化剤は、ビニルエステル、不飽和ポリエステルまたはアクリレート官能化(または、機能化:functionalized)樹脂のごとき非エポキシ系熱硬化性樹脂との反応性を制限してきた。
【0004】
したがって、必要とされるものは、硬化相の間非エポキシ系熱硬化性樹脂と化学反応し、強化剤と樹脂マトリックスとの間の永久的結合を生じる強化剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許公開第2020/0291188号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の強化剤の実施形態は、アクリレート官能基で終端したポリシロキサン-アルキルビスフェノールAポリエーテルブロック共重合体を含む。本発明の強化剤の実施形態は、架橋または硬化中に強化剤と樹脂が化学的に反応して強化剤と樹脂マトリックスの間に永久結合を形成し、より高い耐破壊性および耐衝撃性を得られる製品に与えるように、不飽和熱硬化性樹脂と組み合わせ得る。さらに、本発明の強化剤は、不飽和熱硬化性樹脂との良好な適合性(または、融和性もしくは相溶性:compatibility)を示し、硬化または架橋に先立ち、その複合体により良好な貯蔵(または、保存)安定性を提供する。さらに、本発明の強化剤は、他の既存の強化剤よりも低い粘度を有し、色素、フィラー(または、充填剤:filler)、繊維および基材との混合および濡れ性(または、湿潤:wetting)について加工性を改善する。さらに、本発明の強化剤は、熱硬化性樹脂と組み合わせて、EB硬化およびUV硬化に適している。また、本発明の実施形態は、限定されるものではないが、飽和エポキシ樹脂を含めた他のタイプの熱硬化性樹脂用の強化剤としても使用し得る。
【0007】
本発明の強化剤の実施形態を特定のメカニズムに限定することなく、硬化または架橋中に、本発明の強化剤はフェーズアウトし(または、徐々に縮小し:phase out)、樹脂全体に分離したミクロ相を形成し、強化剤富化(toughener-rich)ミクロ相と樹脂マトリックスの間に化学結合を形成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態の一般的な構造を示す。
図2図2は、本発明の3つの特定の実施形態について、図1からのR、R、R、x、yおよびzの値を同定する。
図3図3は、ビニルエステル系熱硬化性樹脂と組み合わせた場合の本発明の実施形態の組成および性能試験結果を示す。
図4a図4a~4eは、棒グラフ形式での図3の性能試験結果を示す。
図4b図4a~4eは、棒グラフ形式での図3の性能試験結果を示す。
図4c図4a~4eは、棒グラフ形式での図3の性能試験結果を示す。
図4d図4a~4eは、棒グラフ形式での図3の性能試験結果を示す。
図4e図4a~4eは、棒グラフ形式での図3の性能試験結果を示す。
図5図5は、エポキシ系熱硬化性樹脂と組み合わせた場合の本発明の実施形態の組成および性能試験結果を示す。
図6a図6a~6eは、棒グラフ形式での図5の性能試験結果を示す。
図6b図6a~6eは、棒グラフ形式での図5の性能試験結果を示す。
図6c図6a~6eは、棒グラフ形式での図5の性能試験結果を示す。
図6d図6a~6eは、棒グラフ形式での図5の性能試験結果を示す。
図6e図6a~6eは、棒グラフ形式での図5の性能試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【発明の詳細な説明】
【0009】
(実施形態の説明)
本発明の以下の実施形態において、ポリマーセグメントは、繰り返しモノマー単位数で表される。これらの数は、各分子内のモノマー単位の統計的平均数をいうと解釈されるべきであり、正確な数値要件をいうものではない。
【0010】
本発明の強化剤100の実施形態は、両端がアクリレート120で終端された線状(または、直鎖状:linear)ブロック共重合体110を含む。線状ブロック共重合体110は、ポリジメチルシロキサン130およびビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスアルキルエーテル140の繰り返し単位を含む。図1は、強化剤100の一般的な構造を示し:式中、
は、-Hまたは-CHのいずれかである。
は、2~3個の炭素を有するアルキル基である。
は、2~3個の炭素を有するアルキル基である。
xはジメチルシロキサン単位の繰り返し数を示し、1~300の範囲にある。
yはエチレンオキシド単位の繰り返し数を示し、1~100の範囲にある。
zは、ポリジメチルシロキサン-ビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスアルキルエーテル単位の繰り返し数を示し、1~100の範囲にある。
【0011】
好ましい実施形態の合成
ポリジメチルシロキサンおよびビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスアリルエーテルは、当業者に知られたいずれの方法でも合成し得る。線状ブロック共重合体は、例えば、反応容器において、10~30グラムの水素化物末端(または、ヒドリド末端:hydride-terminated)ポリジメチルシロキサン、70~90グラムのビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスアリルエーテル、および0.01~0.1グラムのクロロ白金酸(chloroplatinic acid)を混合し、混合物をNガスでパージし、次いで、120℃に1時間加熱して、水素化ケイ素末端(または、シリコンヒドリド末端)線状ブロック共重合体を得ることにより合成し得る。強化剤は、例えば、60~95グラムの水素化ケイ素末端線状ブロック共重合体、5~40グラムのアリルメタクリレート、0.1~1グラムのp-メトキシフェノール(MEHQ)またはフェノチアジン、および0.01~0.1グラムのクロロ白金酸を混合し、次いで、フーリエ変換赤外分光法を用いて水素化ケイ素ピークの消失をモニターすることによって決定できる水素化ケイ素官能基のすべてがアクリレートに変換されるまで、混合物を100℃に加熱することにより合成し得る。
【0012】
重合工程における水素化物末端ポリジメチルシロキサン長、およびビスフェノールAポリ(エチレンオキシド)ビスアリルエーテルに対するその比率を変更することにより、本発明者らは、図2に示す構造特徴を有する3種の好ましい実施形態を同定した。
【0013】
ビニルエステル樹脂との本発明の強化剤の使用
ビニルエステル樹脂との本発明の強化剤の使用に関連する特性向上(enhanced properties)を実証するため,本発明者らは、商品名Hetron 922(登録商標)下で商業上入手可能な一般的なビニルエステル樹脂と共に種々の比率で図2に示す本発明の強化剤を用いて試験サンプルを調製した。本発明者らは、開始剤(または、重合開始剤:initiator)として1.5グラムのメチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)を添加し、次いで、室温で24時間に続いて100℃で4時間、化合物を硬化させた。次いで、本発明者らは、一連の業界標準試験を実施し、硬化した化合物の種々の靭性特性(toughness properties)を決定し、以下を含む:
臨界応力拡大係数(K1c)
臨界歪エネルギー解放率(G1c)
引張強度
伸度(または、伸び:elongation)
ヤング率
硬化前外観
硬化後外観
相対的耐衝撃性(comparative impact resistance)(1=最悪、5=最良)
【0014】
図3の表は、10種のサンプル製剤およびその製剤で行った試験の数値結果を示し;図4a~4eは、棒グラフ形式での試験結果を示す。示すごとく、本発明の強化剤の異なる製剤の結果、種々の靭性特性に対する異なる効果を生じ、製剤の変更は、全体的な靭性改善、または特定の靭性特性に最適化した改善を生じることができることを示す。
【0015】
エポキシ樹脂との本発明の強化剤の使用
不飽和熱硬化性樹脂を用いた本発明の強化剤の使用に加えて、本発明の強化剤の実施形態は、エポキシ系樹脂の強靭性特性の向上にも有用であると証明された。これを実証するために、本発明者らは、図2に示す本発明の強化剤をビスフェノールAジグリシジルエーテルエポキシ樹脂(DGEBAまたはBADGEと通常いわれる)と共に種々の比率で使用した10種のサンプル製剤を調製した。また、比較として,本発明者らは,商業的に入手可能な強化剤を用いた2種のサンプル製剤を調製し、一方は,Hypro(登録商標)1300X8の商品名で商業的に入手可能なペンダントカルボキシル官能性を含むカルボキシル末端ブタジエン-アクリロニトリル共重合体であり,他方はClearstrength(登録商標)XT100の商品名で商業的に入手可能なメチルメタクリル酸ブタジエン-スチレンであった。本発明者らは、硬化剤として13グラムのトリエチレンテトラミン(TETA)を添加し、室温で24時間に続いて100℃で4時間、化合物を硬化させた。次いで、本発明者らは、同一の業界標準試験を行い、硬化物の種々の靭性特性を決定した。図5の表は、12種のサンプル製剤およびその製剤で行った試験の数値結果を示し;図6a~6eは棒グラフ形式での試験結果を示す。示すごとく、本発明の強化剤の異なる製剤の結果、種々の靭性特性に対する異なる効果を生じ、製剤の変更は、全体的な靭性改善、または特定の靭性特性に最適化した改善を生じることができることを示す。
【0016】
さらなる実施形態
本発明の前記の実施形態に記載された本発明の強化剤100は、強化剤が(a)熱硬化性樹脂と組み合わせた場合の1つ以上の靭性特性(または、属性:attributes)(例えば、臨界応力拡大係数、臨界歪エネルギー放出速度、引張強度、伸度(または、伸び)、ヤング率、および耐衝撃性)を向上させ、(b)硬化に先立ち熱硬化性樹脂と共に安定的に貯蔵でき、(c)加工性を維持するため十分に低い粘度を有し、および(d)EBおよびUV硬化に適したままである限り、本発明の精神から逸脱することなく当業者により変更および/または拡張し得る。
【0017】
好ましい実施形態のいくつかは特定の樹脂を同定するが、しかしながら、本発明の強化剤は、限定されるものではないが、ビニルエステル、不飽和ポリエステル、アクリレート官能化樹脂、エポキシ、およびポリウレタンを含めた、当業者に知られているであろう他の樹脂と共に使用し得る。
【0018】
好ましい実施形態のいくつかは、特定の硬化技術、開始剤、および硬化剤を同定するが、しかしながら、樹脂の選択および適用に依存して、当業者に知られるごとく、他の硬化技術および成分を使用し得る。
【0019】
好ましい実施形態のいくつかは、重合された成分のモノマー単位数(すなわち、図1のx、y、およびzの値)に特定の制限を置くが、しかしながら、適用および所望の靭性特性に依存して、本発明の強化剤100の他の実施形態は、重合の全開示範囲を使用し得る。
【0020】
図1に示すごとき本発明の強化剤の構造は、特定の末端官能基および線状ブロック共重合体を必要とするが、しかしながら、強化剤100に他の官能基を追加して、他の特徴または特性を提供し得る。
【0021】
図3および図5に示す樹脂および強化剤の比率は例示的に過ぎず、当業者ならば、過度の実験なくして、本開示の範囲内で他の比率を有する化合物を創成し得る。さらに、当業者ならば、限定されるものではないが、さらなる強化剤、色素、フィラー、繊維、難燃剤、および消泡剤を含めたさらなる成分をこれらの製剤と組み合わせ得る。
【0022】
図1に示すごとき本発明の強化剤100の構造は、ポリエチレンオキシドエーテルを含むが、しかしながら、ポリプロピレンオキシドエーテルおよびポリブチレンオキシドエーテルのごとき他の短いエーテルポリマー、またはそれらのエーテルの組合せを使用できる。
【0023】
好ましい実施形態のいくつかにおいて、アクリレート官能基はプロピルメタクリレートであるが、しかしながら、他の実施形態において、アクリレート官能基は、限定されるものではないが、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、およびプロピルアクリレートを含めたもう一つのアクリレートであり得る。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e