IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三明製作所の特許一覧

<>
  • 特許-転造装置 図1
  • 特許-転造装置 図2
  • 特許-転造装置 図3
  • 特許-転造装置 図4
  • 特許-転造装置 図5
  • 特許-転造装置 図6
  • 特許-転造装置 図7
  • 特許-転造装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】転造装置
(51)【国際特許分類】
   B21H 3/06 20060101AFI20240821BHJP
   B21H 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
B21H3/06 A
B21H1/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2024061032
(22)【出願日】2024-04-04
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2023109655
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592178897
【氏名又は名称】株式会社三明製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】宇野 義哲
(72)【発明者】
【氏名】林 範繁
(72)【発明者】
【氏名】小幡 祐三
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-279966(JP,A)
【文献】特開平7-224830(JP,A)
【文献】特開2008-105049(JP,A)
【文献】特開2021-175576(JP,A)
【文献】特開2000-55624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 1/00 - 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース台上に固定されており、固定側転造面部を有する固定平ダイスと、
前記ベース台上を転造方向に沿って往復移動自在に配されており、転造時に前記固定側転造面部に対向する移動側転造面部を有する移動平ダイスと、
を備えた転造装置において、
前記移動平ダイスの上死点の位置を、手動操作により前記転造方向に沿って位置調整させる上死点位置調整手段と、
前記移動平ダイスを、前記上死点の位置から前記転造方向に沿って所定量だけ移動させて母材を半回転させる当該移動平ダイスの往動動作と、当該移動平ダイスを該上死点の位置へ復帰させる当該移動平ダイスの復動動作とを自動制御することにより、前記母材に前記固定側転造面部に基づく溝状の固定側条痕と前記移動側転造面部に基づく溝状の移動側条痕とがそれぞれ形成されたテストピースを得る制御内容を具備するテスト移動制御手段と、
前記テストピースを正面視した状態で前記固定側条痕の溝中心線を延長してなる仮想溝中心線上に前記移動側条痕の溝中心線が位置している状態を移動側条痕の適正位置として、前記テストピースの軸に沿った方向において前記適正位置に対する前記移動側条痕の位置ずれ量の入力を受け付ける位置ずれ量入力手段と、
入力された位置ずれ量に基づいて、前記移動平ダイスの適正な上死点の位置までの距離を前記移動平ダイスの補正移動量として算出する制御内容を具備する補正移動量算出制御手段とを備えており、
さらに、前記固定平ダイスと前記移動平ダイスとの少なくとも一方が、前記固定側転造面部と前記移動側転造面部とが向き合う対向方向に沿って位置変換可能に配されており、
前記固定平ダイスと前記移動平ダイスとの前記対向方向の相対的な位置を、手動操作により位置調整させる対向位置調整手段と、
前記固定平ダイスと前記移動平ダイスとの前記対向方向の相対位置を検出する対向位置検出手段と、
前記テスト移動制御手段により得た前記テストピースの前記固定側条痕と前記移動側条痕とにおける該テストピースの径方向の食い込み深さの入力を受け付ける食い込み入力出手段と、
前記補正移動量算出制御手段により算出された補正移動量と、前記対向位置検出手段により検出された前記対向方向の相対位置に基づく対向位置情報と、前記食い込み深さ入力手段で入力を受け付けた食い込み深さとを出力する調整値出力手段と
を備える
ことを特徴とする転造装置。
【請求項2】
前記調整値出力手段は、
前記食い込み深さ入力手段で入力を受け付けた食い込み深さを、所定の表示部に表示する制御内容と、
前記対向位置情報を、前記対向位置調整手段による前記対向方向への相対位置の位置調整に応じて、前記表示部に逐次表示する制御内容と
を具備する
請求項1に記載の転造装置。
【請求項3】
前記調整値出力手段は、所定の表示部に移動量対応図形部を表示するものであり、
前記補正移動量算出制御手段は、
前記補正移動量を、前記移動平ダイスにおける前記転造方向並びに前記固定側転造面部及び前記移動側転造面部の対向する対向方向に各々直交する方向に沿った移動量に応じた前記移動量対応図形部を生成し、生成した前記移動量対応図形部を前記調整値出力手段に出力させる制御内容を具備する
請求項1又は請求項2に記載の転造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にねじの転造に用いられる転造装置であって、固定平ダイスと移動平ダイスの相対位置の補正を行うことのできる転造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に開示されている転造圧監視装置のような、母材に加わる転造圧を監視し、転造が適切に行われたか否かを判定するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-175576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転造装置において固定平ダイスと移動平ダイスの相対位置は精密さが求められる。具体的には、固定平ダイス側で形成された塑性変形跡と移動平ダイス側で形成された塑性変形跡とが一致する必要がある。特にねじの転造にあっては、前記塑性変形跡がずれると転造加工品が製品として成り立たない場合がある。
【0005】
従来であれば、固定平ダイスと移動平ダイスとの位置の補正は熟練者に頼る部分が大きく、それであっても複数回のテストを繰り返さなければならなかった。
【0006】
そこで本発明は、固定平ダイスと移動平ダイスとの相対位置の補正を簡便に行うことのできる転造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベース台上に固定されており、固定側転造面部を有する固定平ダイスと、前記ベース台上を転造方向に沿って往復移動自在に配されており、転造時に前記固定側転造面部に対向する移動側転造面部を有する移動平ダイスと、を備えた転造装置において、前記移動平ダイスの上死点の位置を、手動操作により前記転造方向に沿って位置調整させる上死点位置調整手段と、前記移動平ダイスを、前記上死点の位置から前記転造方向に沿って所定量だけ移動させて母材を半回転させる当該移動平ダイスの往動動作と、当該移動平ダイスを該上死点の位置へ復帰させる当該移動平ダイスの復動動作とを自動制御することにより、前記母材に前記固定側転造面部に基づく溝状の固定側条痕と前記移動側転造面部に基づく溝状の移動側条痕とがそれぞれ形成されたテストピースを得る制御内容を具備するテスト移動制御手段と、前記テストピースを正面視した状態で前記固定側条痕の溝中心線を延長してなる仮想溝中心線上に前記移動側条痕の溝中心線が位置している状態を移動側条痕の適正位置として、前記テストピースの軸に沿った方向において前記適正位置に対する前記移動側条痕の位置ずれ量の入力を受け付ける位置ずれ量入力手段と、入力された位置ずれ量に基づいて、前記移動平ダイスの適正な上死点の位置までの距離を前記移動平ダイスの補正移動量として算出する制御内容を具備する補正移動量算出制御手段とを備えており、さらに、前記固定平ダイスと前記移動平ダイスとの少なくとも一方が、前記固定側転造面部と前記移動側転造面部とが向き合う対向方向に沿って位置変換可能に配されており、前記固定平ダイスと前記移動平ダイスとの前記対向方向の相対的な位置を、手動操作により位置調整させる対向位置調整手段と、前記固定平ダイスと前記移動平ダイスとの前記対向方向の相対位置を検出する対向位置検出手段と、前記テスト移動制御手段により得た前記テストピースの前記固定側条痕と前記移動側条痕とにおける該テストピースの径方向の食い込み深さの入力を受け付ける食い込み入力出手段と、前記補正移動量算出制御手段により算出された補正移動量と、前記対向位置検出手段により検出された前記対向方向の相対位置に基づく対向位置情報と、前記食い込み深さ入力手段で入力を受け付けた食い込み深さとを出力する調整値出力手段とを備えることを特徴とする転造装置である。
【0008】
かかる構成にあっては、まず前記テスト移動制御手段によって母材に対して所要範囲で条痕を形成させ、かかる条痕が固定側条痕と移動側条痕で構成されているテストピースを得る。そして、前記テストピースに形成された前記固定側条痕と前記移動側条痕との位置ずれ量を前記位置ずれ量入力手段を用いて入力する。すると前記補正移動量算出制御手段により、前記適正位置が得られる移動平ダイスの位置までの補正移動量が算出され、算出された補正移動量が調整値出力手段により出力される。この補正移動量に基づいて、上死点位置調整手段で移動平ダイスの上死点の位置を位置調整することにより、該上死点の位置を、固定側条痕と移動側条痕とを一致させる適正な位置とできる。なお、本発明において各条痕を形成するべく母材を半回転させる所定量としては、母材を略半回転させる構成が提案され、具体的には、母材が半回転する構成であってもよいし、各条痕が過剰に重複して測定不能とならない程度に母材がわずかに半回転を超えるところまで回転する構成であってもよいし、各条痕が重複しない程度に母材がわずかに半回転を超えないところまで回転する構成であってもよい。好ましくは、各条痕が重複しない程度に母材がわずかに半回転を超えないところまで回転する構成である。また、母材の回転方向は、特に正逆を問わない。
【0009】
さらに、前記テストピースに形成された固定側条痕と移動側条痕との食い込み深さと、この固定側条痕と移動側条痕とを形成した際における固定平ダイスと移動平ダイスとの対向位置情報とに基づいて、対向位置調整手段で固定平ダイスと移動平ダイスとの対向方向の相対位置を調整することにより、該対向方向の相対位置を適正な食い込み深さとなる位置にできる。ここで、食い込み深さによりねじのピッチと転造圧力(転造加工時における固定平ダイスと移動平ダイスとによる圧力)とが定まることから、適正な食い込み深さとすることにより該ねじのピッチ合わせと転造圧力の適正化とを行うことができる。これにより、高い精度でねじのピッチを合わせることができるため、ピッチの成形不良の発生を抑制できると共に、適正な転造圧力で転造加工することができるため、転造加工中の滑りの発生を抑制でき、該滑りによる成形不良の発生を抑制できる。このように食い込み深さを適正とすることにより、転造加工における成形不良の発生確率(以下、成形不良率という)を低減できる。
【0010】
このように本発明の構成は、テストピースに形成した固定側条痕と移動側条痕とに基づいて、移動平ダイスの上死点の位置を調整すると共に該移動平ダイスと固定平ダイスとの対向方向の相対位置を調整することにより、ねじの転造加工精度を高めることができ、かつ成形不良率を低減できる。そして、本構成では、移動平ダイスの上死点の位置を前記補正移動量に従って調整できると共に、前記対向方向の相対位置を対向位置情報と食い込み深さとによって調整できることから、こうした調整を作業者の経験や勘に頼ること無く行うことができると共に、該調整の作業に要する負担を軽減できる。したがって、ねじを所望の製品規格に高精度で安定して成形でき、優れた品質のねじを安定して製造することができる。
【0011】
前述した本発明の転造装置にあって、前記調整値出力手段は、前記食い込み深さ入力手段で入力を受け付けた食い込み深さを、所定の表示部に表示する制御内容と、前記対向位置情報を、前記対向位置調整手段による前記移動平ダイスの前記対向方向への位置調整に応じて、前記表示部に逐次表示する制御内容とを具備する構成が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、表示部で表示される食い込み深さと対向位置情報とに基づいて、対向位置調整手段で固定平ダイスと移動平ダイスとの対向方向の相対位置を位置調整することにより、該相対位置を所望の食い込み深さとなる位置にできる。このように所望の製品規格に適した食い込み深さを生ずる前記相対位置に、容易かつ安定して位置調整することができる。
【0013】
尚、本構成にあって、調整値出力手段が、食い込み深さ入力手段で入力された食い込み深さと、テストピースに固定側条痕と移動側条痕とを形成した際における対向位置情報とに基づいて、所望の食い込み深さとなる対向方向の相対位置を示す補正位置情報を算出する補正位置情報算出手段を備え、該補正位置情報を、前記表示部で表示する制御内容を具備する構成であっても良い。
この構成によれば、補正位置情報に従って、対向位置調整手段を操作することにより、所望の食い込み深さに一層容易かつ安定して位置調整できる。
【0014】
前述した本発明の転造装置にあって、前記調整値出力手段は、所定の表示部に移動量対応図形部を表示するものであり、前記補正移動量算出制御手段は、前記補正移動量を、前記移動平ダイスにおける前記転造方向並びに前記固定側転造面部及び前記移動側転造面部の対向する対向方向に各々直交する方向に沿った移動量に応じた前記移動量対応図形部を生成し、生成した前記移動量対応図形部を前記調整値出力手段に出力させる制御内容を具備する構成が提案される。
【0015】
前記移動量対応図形部は、例えば中心を適正位置とした左右に伸びる棒状の図形として表示され、移動平ダイスの現在位置が適正位置からどれくらいずれているかが図形内において示唆され、移動平ダイスを動かすことにより現在位置を示す図形を、適正位置を示す図形と適合させる態様が例示される。これにより、作業者は、視覚情報に基づいて極めて容易に作業することができる。なお、前記移動対応図形部は種々の形態をとりうる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転造装置は、固定平ダイスと移動平ダイスとの相対位置の補正を簡便に行うことのできる優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明にかかる実施例の転造装置1を、固定平ダイス3側から示す斜視図である。
図2】転造装置1を、移動平ダイス4側から示す斜視図である。
図3】固定平ダイス3を拡大して示す平面図である。
図4】母材60に固定側条痕62と移動側条痕63とを形成する態様を示す説明図である。
図5】テストピース61の、(A)一部を拡大して示す拡大図と、(B)一部の縦断面を示す拡大図である。
図6】固定平ダイス3と移動平ダイス4とを位置検出する位置検出装置35を示す概略図である。
図7】タッチパネル37における、補正用図形部81の表示態様を示す説明図である。
図8】タッチパネル37における、食い込み深さと対向位置情報との表示態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を、実施例に従って説明する。なお本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜、設計変更が可能である。
【0019】
図1図2に示すように、転造装置1は、ベース台2を備えている。ベース台2上には、固定側転造面部11を有する固定平ダイス3と、移動側転造面部21を有する移動平ダイス4と、が備えられている。移動平ダイス4は転造方向に沿って往復移動する。移動平ダイス4は、転造装置1が作動していない間は転造が行われる前の待機位置で停止している。この待機位置は、具体的には図1図2に示すように、固定平ダイス3から転造方向に離間した位置であり、後述する転造開始の位置(上死点)と異なる。
【0020】
本実施例において、転造方向に直交し、なおかつ固定側転造面部11と移動側転造面部21とが向き合う方向を、対向方向(図1図2参照)として説明する。
【0021】
前記固定平ダイス3は、図示しないクランプ手段によってダイブロック25に固定されている。ダイブロック25は、締結ボルト10,10によってベース台2に締結されるものであり、該締結ボルト10,10が締結された状態で、前記固定平ダイス3と共にベース台2に移動不能に固定される。
【0022】
前記移動平ダイス4は、上下方向および対向方向に移動不能に設けられると共に、転造方向に沿ってベース台2に配設された案内レール(図示せず)により該転造方向へ往復移動可能に設けられている。ベース台2には、図示しない駆動制御装置が配設されており、該駆動制御装置により移動平ダイス4の往復移動が制御される。
【0023】
この移動平ダイス4は、前述したように転造装置1の作動していない状態で、固定平ダイス3に対して転造方向の一方に位置する前記待機位置で停止されており(図1,2)、転造開始する際に後述の上死点まで移動される(図4(A))。転造加工の際には、移動平ダイス4が前記上死点から転造方向に沿って往復移動され、転造加工の終了後に該移動平ダイス4が前記待機位置に戻る。また、本実施例の構成は、移動平ダイス4の上死点の位置(転造方向に沿う位置)を位置調整するための補正用ボルト8が設けられており(図2)、該補正用ボルト8を正回転又は逆回転させることによって、移動平ダイス4の上死点の位置を転造方向に沿って位置調整自在とされている。
【0024】
また、固定平ダイス3の一側には、母材60を該固定平ダイス3と移動平ダイス4との間に投入するための誘導路部19が設けられている。本実施例の転造装置1は、この誘導路部19により投入された母材60を、固定平ダイス3の固定側転造面部11と移動平ダイス4の移動側転造面部21とで狭圧して、該移動平ダイス4を転造方向に往復移動させることによって転造加工する。本実施例の転造装置1にあっては、略丸棒状の母材を転造加工することにより、雄ねじを成形する。
【0025】
本実施例にあって、移動平ダイス4を往復移動させる構成(案内レール、駆動制御装置など)、固定側転造面部11、および移動側転造面部21等は、従来から知られている構成を適用できることから、その詳細については省略する。
【0026】
次に、本発明の要部について説明する。
本実施例にあっては、図1,2に示すように、ベース台2に、前記ダイブロック25を対向方向へ移動可能に取り付けられたブロック位置基準部26が設けられている。そして、ダイブロック25は、前記締結ボルト10,10を緩めた状態で、ブロック位置基準部26(ベース台2)に対して対向方向へ移動可能となっており、該状態で対向方向へスライドできる。これにより、ダイブロック25に固定平ダイス3が固定された状態で、該固定平ダイス3とダイブロック25とを、対向方向へ一体的に移動させることができる。
【0027】
ブロック位置基準部26には、転造方向の両端寄り部位に、位置変換引抜ボルト31,31が夫々設けられている。そして、各位置変換引抜ボルト31よりも両端側の部位には、上下に並設された位置変換押付ボルト32,32が夫々設けられている。これら位置変換引抜ボルト31と位置変換押付ボルト32とは、夫々対向方向に沿って設けられている。
【0028】
位置変換引抜ボルト31は、ブロック位置基準部26に回動自在に取り付けられており、先端部が該ブロック位置基準部26よりもダイブロック25側へ突出されて該ダイブロック25に螺合されている。この位置変換引抜ボルト31を一方(例えば左方)へ回動させることにより、ダイブロック25を、対向方向で移動平ダイス4から離れる方向へ動かすことができる。各位置変換引抜ボルト31は個別に回動操作可能であり、夫々を回動操作することによって、ダイブロック25(固定平ダイス3)の転造方向の両端寄り位置を、対向方向で移動平ダイス4から離れる方向へ夫々位置変換できる。
【0029】
位置変換押付ボルト32は、ブロック位置基準部26に回動自在に取り付けられており、先端部が該ブロック位置基準部26よりもダイブロック25側へ突出されて、該ダイブロック25に当接される。この位置変換押付ボルト32を一方向(例えば右方)へ回動させることにより、ダイブロック25を、対向方向で移動平ダイス4に近づく方向へ押し付けて動かすことができる。各位置変換押付ボルト32は個別に回動操作可能であり、夫々を回動操作することによって、ダイブロック25(固定平ダイス3)の転造方向の両端寄り位置を、対向方向で移動平ダイス4に近づく方向へ夫々位置変換できる。
【0030】
尚、こうした二個の位置変換引抜ボルト31と四個の位置変換押付ボルト32とを適宜回動操作することによって、ダイブロック25(固定平ダイス3)の対向方向の位置を調整する機構は、一般的に用いられた機構を適用できることから、その詳細については省略する。
【0031】
さらに、ブロック位置基準部26には、転造方向の両端寄り部位に、ダイブロック25(固定平ダイス3)の対向位置の位置(以下、対向方向位置という)を検出する対向位置検出センサ33,33が配設されている(図6参照)。この対向位置検出センサ33,33は、固定平ダイス3の転造方向の両端寄り部位を夫々検出する。これにより、固定平ダイス3の両端寄り部位の、夫々の対向位置を検出できる。
【0032】
また、本実施例にあっては、固定平ダイス3が、前記締結ボルト10,10を緩めた状態で、ブロック位置基準部26に対して転造方向へスライド可能に設けられている。そして、ブロック位置基準部26には、固定平ダイス3を転造方向へ位置変換させる調整ボルト(図示せず)が設けられており、該調整ボルトを回動操作することによって、固定平ダイス3を転造方向へスライドできる。そして、ブロック位置基準部26には、固定平ダイス3の転造方向の位置(以下、転造方向位置という)を検出する転造位置検出センサ34が配設されている(図6参照)。
【0033】
このように本実施例の固定平ダイス3は、前記締結ボルト10,10を緩めた状態で、前記位置変換引抜ボルト31および前記位置変換押付ボルト32の回動操作により対向方向へ位置変換できると共に、前記調整ボルトの回動操作により転造方向へ位置変換できる。そして、締結ボルト10,10を締結することによって、固定平ダイス3を位置決め固定できる。
【0034】
本実施例の転造装置1は、図6に示すように、前記対向位置検出センサ33,33と前記転造位置検出センサ34とを備えた位置検出装置35を備えている。位置検出装置35は、制御用PC36とタッチパネル37とを備えており、該制御用PC36に前記対向位置検出センサ33,33で検出された信号と前記転造位置検出センサ34で検出された信号とが入力される。制御用PCは、中央制御装置と記憶装置とを備え、タッチパネル37を表示制御する。
【0035】
前記位置検出装置35は、さらに、移動平ダイス4の上死点の位置を検出する上死点検出センサ39を備えており、該上死点検出センサ39で検出された信号が前記制御用PC36に入力される。ここで、上死点検出センサ39は、転造加工を開始する移動平ダイス4の上死点(転造加工の開始位置)を検出するためのものであり、ベース台2に配設されている。
【0036】
制御用PC36の記憶装置には、転造加工するねじの製品規格情報(呼び径やピッチ等の情報)と、この規格情報に基づいて転造加工の条件等を算出する各種プログラム等とが予め記憶されている。具体的なプログラムとして、移動平ダイス4を往復移動させる移動量を算出するプログラム、該移動平ダイス4の上死点の位置を補正する補正移動量を算出するプログラム、および固定平ダイス3の対向方向位置の補正位置情報を算出するプログラム等が前記記憶装置に記憶されている。
【0037】
ここで、移動平ダイス4の往復移動量を算出する前記プログラムは、前記した製品規格情報の外径データに基づいて、該往復移動量を算出する。また、上死点の補正移動量を算出する前記プログラムは、前記した製品規格情報の呼び径やピッチの情報、および作業者により入力される入力情報に基づいて、該補正移動量を算出する。入力情報は、後述するようにタッチパネル37で入力される情報であり、ねじ方向、移動平ダイス4の高低に関する情報、および位置ずれ量P等を示し、後述のテストピース61から実測されるデータである。このプログラムでは、製品規格情報の呼び径およびピッチと、後述するように作業者により入力された位置ずれ量Pと、同じく入力された移動平ダイス4の高低に関する情報と、円周率とを用いて、前記補正移動量を算出する。こうして算出された補正移動量に従って、前記補正用ボルト8を操作することにより、移動平ダイス4を適正な上死点に調整できる。
【0038】
また、固定平ダイス3の対向方向位置の補正位置情報を算出する前記プログラムは、前記した製品規格情報の呼び径やピッチの情報、およびテストピース61で実測したデータなどに基づいて、該補正位置情報を算出する。具体的には、後述するように作業者により入力された食い込み深さTと、製品規格情報の呼び径およびピッチと、前記した対向位置検出センサ33,33で検出された対向方向位置の情報等とを用いて、前記した各検出センサ33,33の検出位置に夫々対応する補正位置情報を算出する。これら各検出位置の補正位置情報に従って、位置変換引抜ボルト31と位置変換押付ボルト32とを操作することにより、適正な食い込み深さで加工できる位置に固定平ダイス3を調整できる。
【0039】
タッチパネル37は、前記制御用PCの表示制御によって、図7に示す移動平ダイス4の上死点の補正移動量と、図8に示す固定平ダイス3の対向方向位置の補正位置情報とを切り替えて表示する。こうした表示の切り替えは、作業者の操作により行うことができる。尚、この切り替えの処理や操作などについては、従来から公知の手段を適用できることから、詳細を省略する。
【0040】
前記した移動平ダイス4の上死点の補正移動量を表示する場合には、図7に示すように、タッチパネル37の画面に、ねじの規格(呼び径、ピッチ、およびねじ方向など)を選択的に表示する規格表示部41と、入力された移動平ダイス4の高低に関する情報を表示する高低表示部74と、入力された位置ずれ量Pを表示する位置ずれ量表示部75と、棒状の補正用図形部81とが表示される。このタッチパネル37は、一般的に用いられるものと同じであり、作業者が所定部位に触れることにより操作できる。具体的には、規格表示部41に作業者が触れて操作することにより、予め設定された複数の製品規格情報から一を選択して表示できる。補正用図形部81には、長手方向の中心に縦線状の目標位置表示部82が表示されると共に、前記補正移動量に対応する縦線状の現在位置表示部83が表示される。この現在位置表示部83の表示位置が目標位置表示部82から隔離された間隔によって、前記補正移動量を示しており、該補正移動量が小さくなるに従って該目標位置表示部82に接近する。そして、補正移動量=0で、現在位置表示部83が目標位置表示部82と一致して表示される。また、タッチパネル37には、前記した補正用ボルト8の回転方向を示す回動方向指示表示部78と、現在位置表示部83が目標位置表示部82と一致したことを示す目標値到達表示部79とが表示される。
【0041】
一方、固定平ダイス3の対向方向位置の補正位置情報を表示する場合には、図8に示すように、タッチパネル37の画面に、前記した規格表示部41と、入力された食い込み深さTを表示する食い込み量表示部44と、前記対向位置検出センサ33,33および前記転造位置検出センサ34により検出された固定平ダイス3の現在位置情報を表示する第一~第三現在値表示部43a~43cと、これら各検出センサ33,34の検出位置に夫々対応する前記固定平ダイス3の補正位置情報を表示する第一~第三補正位置情報表示部42a~42cとが表示される。
【0042】
次に、転造加工前に、製品規格(ネジの呼び径)に合わせて移動平ダイス4の上死点の位置調整と固定平ダイス3の対向方向位置の位置調整とを行う補正方法について説明する。ここで、補正方法は、母材60を転造加工して得たテストピース61を用いて行う。
【0043】
まず、テストピース61の作成を行う。テストピース61の作成は、タッチパネル37を介してテストピース61の作成を指示することによって実行される(図示せず)。本実施例にあっては、前記したベース台2に配設された前記駆動制御装置が、前記タッチパネル37の操作に従ってテストピース作成用の制御作動を実行する。この駆動制御装置が、本発明にかかるテスト移動制御手段に相当する。
【0044】
詳述すると、タッチパネル37を介して製造しようとするねじ製品の製品規格(呼び径、ピッチ、及びねじ方向)の選択的に入力し、テストピース61の作成工程の実行開始を示する。
【0045】
テストピース61は、図4(a)に示すように、固定平ダイス3の固定側転造面部11と、上死点にある移動平ダイス4の移動側転造面部21との間に母材60が挟持された状態から、図4(b)に示すように、母材60が半回転するまで移動平ダイス4を転造方向の正方向へ進ませる。これにより、母材60に固定側転造面部11に基づく溝状の固定側条痕62と、移動側転造面部21に基づく移動側条痕63と、が形成される(図5参照)。
【0046】
なお、母材60が半回転するまで移動平ダイス4を進ませる点に関しては、事前に製造されるべきねじ製品の呼び径やねじピッチ等が入力されていることから、前記位置検出装置35の前記プログラムによって、テストピース61の加工部分の外周長さに基づいて移動平ダイス4の移動量を算出する。そして、この移動量だけ移動平ダイス4を上死点から自動で往動動作させる制御を前記駆動制御装置が実行する。
【0047】
前記した母材60の半回転後に、移動平ダイス4を上死点まで自動で復帰させる(復動動作)。このように移動平ダイス4を自動で往復移動させる制御を前記駆動制御装置が行うことにより、母材60に固定側条痕62と移動側条痕63とが形成され、これら条痕62,63を有するテストピース61を得る。
【0048】
このテストピース61には、図5に示すように、固定側条痕62と移動側条痕63とが形成されている。ここで、固定側条痕62として形成されている溝のいずれかを選択し、テストピース61の正面視において、選択した当該溝の長手方向に沿って形成された中心線である溝中心線を定める。その上で、当該溝中心線を延長してなる仮想溝中心線Wに対して、対応する移動側条痕63として形成されている溝に定められた移動側溝中心線Vの、仮想溝中心線Wに対する位置ずれ量Pを測定する。この位置ずれ量Pは、仮想溝中心線Wに移動側溝中心線Vが位置している場合を適正位置として、テストピース61の軸に沿った方向における、適正位置に対する移動側溝中心線Vの位置ずれの量として測定される。例えば、仮想溝中心線Wに対して移動側溝中心線Vは0.29mm低い(テストピース61の頭部より下がっている)と計測される。
【0049】
このように測定した位置ずれ量Pが、タッチパネル37を用いて入力される。図7(A)に示すように、タッチパネル37に位置ずれ量Pを入力する画面が表示された状態とし、作業者が、前記した位置ずれ量表示部75に前記位置ずれ量(具体的には0.29mm)を入力すると共に、高低表示部74に移動平ダイス4の位置(具体的には移動平ダイス4の方が低いか高いか)を入力する。
【0050】
タッチパネル37に前記位置ずれ量P等が入力されると、位置検出装置35が、前述したように、製品規格情報の呼び径、ねじピッチおよびねじ方向と、入力した移動平ダイス4の高低に関する情報および位置ずれ量Pとを用いて、移動平ダイス4の上死点を調整するための補正移動量を自動的に算出する。そして、この算出した補正移動量を示す位置に前記現在位置表示部83を表示した補正用図形部81が、タッチパネル37に表示される。さらに、回動方向指示表示部78も表示される。
【0051】
作業者は、この補正用図形部81及び回動方向指示表示部78を見ながら、補正用ボルト8を操作し、現在位置表示部83が目標位置表示部82に重なるようにすることで、移動平ダイス4の上死点を、前記移動側溝中心線Vと仮想溝中心線Wとが一直線状で一致する適正な位置に調整することができる。このように作業者が、移動平ダイス4の位置ずれとその量をより視覚的に認識して、補正用ボルト8を操作することができる。
【0052】
現在位置表示部83と目標位置表示部82とが重なると、図7(B)に示すように回動方向指示表示部78に代わって目標値到達表示部79が表示されて移動平ダイス4の位置の補正が完了したことが報知される。かかる構成であれば、熟練者でなくても転造装置1のダイスの位置補正を容易に行うことができる。
【0053】
一方、前記テストピース61に形成された固定側条痕62と移動側条痕63とのいずれかの溝を選択し、該溝の深さを測定する。ここで、溝の深さは、図5(B)に示すように、固定側条痕62等の形成前におけるテストピース61の外表面に対する食い込み深さTとして測定する。例えば、食い込み深さTが、0.011mmと計測される。
ここで、食い込み深さTを調整することによって、転造圧力の調整とピッチ合わせとを行うことができる。すなわち、ピッチ合わせを行うことにより、製品規格のピッチに合った製品を成形できる。また、転造圧力を調整することにより、転造加工時に滑りが生じることを抑制できる。このようにピッチ合わせと転造圧力の調整とを行うことで、転造加工による成形不良の発生を抑制できる。
【0054】
このように測定した食い込み深さTが、タッチパネル37を用いて入力される。図8に示すように、タッチパネル37に食い込み深さTを入力する画面が表示された状態とし、作業者が、前記した食い込み量表示部44に前記食い込み深さT(具体的には0.011mm)を入力する。
【0055】
タッチパネル37に前記食い込み深さTが入力されると、位置検出装置35が、前述したように、製品規格情報の呼び径およびピッチと、前記対向位置検出センサ33,33で検出した固定平ダイス3の現在の対向方向位置の情報と、入力された食い込み深さTとを用いて、該固定平ダイス3の対向方向位置を調整するための、各検出センサ33,33に夫々対応する補正位置情報を自動的に算出する。そして、これら補正位置情報が、タッチパネル37の各補正位置情報表示部42a~42cに表示されると共に、固定平ダイス3の現在位置情報が、各現在値表示部43a~43cに表示される。
【0056】
作業者は、固定平ダイス3を固定する締結ボルト10,10を緩めて、該固定平ダイス3を対向方向と転造方向とにスライド可能な状態とし、各補正位置情報表示部42a~42cと各現在値表示部43a~43cを見比べながら、位置変換引抜ボルト31、位置変換押付ボルト32、および調整ボルトを操作する。この操作によって、現在値表示部43a~43cの各情報を、各補正位置情報表示部42a~42cに示された補正位置情報と夫々一致させることで、固定平ダイス3の対向方向位置を、転造加工時に所望の食い込み深さ(所望の転造圧力と、製品規格に合ったピッチ)で成形できる適正ない位置に調整することができる。このように作業者が、固定平ダイス3の対向方向位置と補正位置情報とを視覚的に認識して、位置変換引抜ボルト31、位置変換押付ボルト32、および調整ボルトを操作できる。
【0057】
尚、こうした上死点の位置調整と固定平ダイス3の対向方向位置の調整とを行う作業の際にテストピース61を半回転させるのは、第一に、固定側条痕62と移動側条痕63とが重ならないようにするためである。また、第二に、固定側条痕62の溝中心線を延長した仮想溝中心線Wと移動側条痕63の移動側溝中心線Vとの間で算出される位置ずれ量が計測しやすいためである。従って、仮想溝中心線Wと移動側溝中心線Vとの間の位置ずれ量Pが適正に計測できる限り、母材60の回転量は半回転以下であっても構わない。なお、母材60の回転量が半回転を超えると、固定側条痕62と移動側条痕63とが重なって形成されてしまい、各中心線W,Vが正しく認識できなくなるおそれがある。また、固定側条痕62と移動側条痕63とが重なると、食い込み深さTと適正に適正に計測し難くなるおそれもある。
【0058】
このように本実施例の転造装置1は、テストピース61に形成した固定側条痕62と移動側条痕63とで測定した位置ずれ量Pと食い込み深さTとを用いて、移動平ダイス4の上死点を位置調整する補正移動量と固定平ダイス3を位置調整する補正位置情報とを算出し、これらをタッチパネル37に表示させるようにした。作業者が、タッチパネル37を見ながら、補正用ボルト8を操作することによって、移動平ダイス4の上死点を位置調整できると共に、位置変換引抜ボルト31と位置変換押付ボルト32とを操作することによって、固定平ダイス3の対向方向位置を位置調整できる。このように位置調整を視覚的に認識して行うことができるため、該位置調整を容易かつ安定して行うことができる。これにより、作業者は、経験や勘に頼ること無く、転造加工する雄ねじに適した加工開始位置に移動平ダイス4と固定平ダイス3とを正確かつ容易に位置調整することができる。また、本実施例は、作業者による移動平ダイス4および固定平ダイス3の位置調整作業を補助する機能を有するものであることから、この位置調整作業という実作業を通じて技能教育を行うことができる。これにより、作業者の技能向上を効率的に進めることができると共に、技能継承などにも役立つ。
【0059】
また、本実施例の構成によれば、作業者間の熟練度の相違による品質のばらつきが抑制されるため、ねじの品質管理に対する負担が軽減され、ダイスの命数も向上する利点がある。また、事前準備の時間短縮が図られることで、作業者の作業負担が軽減されるとともに、転造装置の稼働率が向上する利点もある。また、本加工するまでのブランクに要するコストを低減できる利点もある。
【0060】
前述した本実施例の構成にあって、補正用ボルト8が、本発明にかかる上死点位置調整手段に相当する。制御用PC36とタッチパネル37とが、本発明にかかる位置ずれ量入力手段および食い込み入力手段に相当し、該タッチパネル37が、本発明にかかる表示部に相当する。位置検出装置35が、本発明にかかる補正移動量算出制御手段および調整値出力手段に相当する。位置変換引抜ボルト31と位置変換押付ボルト32とが、本発明にかかる対向位置調整手段に相当する。対向位置検出センサ33,33が、本発明にかかる対向位置検出手段に相当し、第一,第二現在位置情報が、本発明にかかる検出対向位置情報に相当する。補正用図形部81が、本発明にかかる移動量対応図形部に相当する。
【0061】
上記実施例において、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。
例えば補正移動量に対応して補正用ボルトを回動させることを自動制御する構成であってもよい。また、位置調整を行う手段としては、補正用ボルトに限定されず、ターンバックルなどの他の構成を採用しても勿論よい。
また、仮想溝中心線に対する移動側溝中心線の位置ずれ量を、転造装置に設置したカメラで撮像した情報から自動で計測可能とした構成であってもよい。同様に、テストピースの食い込み深さを前記カメラで撮像した情報から自動で計測可能とすることもできる。
【0062】
実施例の転造装置は、固定平ダイスを対向方向に移動可能として対向方向位置を調整できる構成としたが、これに限らず、移動平ダイスを対向方向に移動可能として、該移動平ダイスの対向方向位置を調整することにより、食い込み深さを調整する構成としても良い。又は、固定平ダイスと移動平ダイスとの両方を夫々対向方向へ移動可能として、夫々の対向方向位置を調整可能とした構成であっても良い。
【0063】
実施例の転造装置は、移動平ダイスの上死点の位置を検出する上死点検出センサを設けた構成であるが、これに限らず、該移動平ダイスの位置を測定可能な様々な手段が適用できる。例えば、移動平ダイスの移動した距離(移動量)を測定する手段を設け、該移動量に基づいて該移動平ダイスの位置が得られる構成とすることもできる。この構成では、前記した補正移動量と移動平ダイスを移動させた移動量とを用いることにより、該移動平ダイスを所望の上死点に調整させることができ得る。
【0064】
実施例の転造装置は、固定平ダイスの両端寄り部位に位置変換引抜ボルトと位置変換押付ボルトとを夫々設けた構成であるが、これに限らず、これら位置変換引抜ボルトと位置変換押付ボルトとの配設位置や配設個数は適宜変更することが可能である。例えば、固定平ダイスの転造方向の略中央に位置変換引抜ボルトと位置変換押付ボルトとを夫々一個設け、これらの回動操作により固定平ダイスの対向方向位置を調整できるようにしても良い。又は、位置変換引抜ボルトと位置変換押付ボルトとを夫々三個や四個設けることも可能である。
【0065】
実施例の転造装置は、位置変換引抜ボルトと位置変換押付ボルトとを夫々回動操作することにより固定平ダイスの対向方向位置を変換できる構成であるが、これに限らず、一の位置変換ボルトにより固定平ダイスを対向方向へ位置変換する構成とすることもできる。こうした位置変換ボルトは、配設個数や配設位置を適宜定めることが可能である。
【0066】
前述の実施例は、雄ねじを転造加工する転造装置を例示したものであるが、雄ねじ以外の製品の転造加工を行う装置にも適用可能である。例えば、ローレット転造加工を行う転造装置や、フォームローリング転造加工(溝入れ加工など)を行う転造装置などにも適用でき、前述の実施例と同様に、作業効率の改善や品質の安定化を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 転造装置
2 ベース台
3 固定平ダイス
4 移動平ダイス
8 補正用ボルト
11 固定側転造面部
21 移動側転造面部
31 位置変換引抜ボルト
32 位置変換押付ボルト
33 対向位置検出センサ
35 位置検出装置
36 制御用PC
37 タッチパネル
60 母材
61 テストピース
62 固定側条痕
63 移動側条痕
V 移動側溝中心線
W 仮想溝中心線
P 位置ずれ量
T 食い込み深さ
【要約】
【課題】固定平ダイスと移動平ダイスとの相対位置の補正を簡便に行うことのできる転造装置を提供する。
【解決手段】転造装置1は、母材に固定側条痕と移動側条痕とを形成してテストピースを得る制御内容と、固定側条痕の仮想溝中心線と移動側条痕の溝中心線との位置ずれ量の入力を受け付けて、該位置ずれ量に基づいて移動平ダイス4を上死点に補正すべき補正移動量を算出して出力する制御内容を備える。さらに、テストピースの固定側条痕と移動側条痕との食い込み深さの入力を受け付けて出力する制御内容を備える。かかる構成によれば、前記位置ずれ量に基づいて移動平ダイス4の上死点を容易に位置調整できると共に、前記食い込み深さに基づいて固定平ダイス3の対向方向位置を容易に位置調整できる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8