(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】十分な厚みのリブを設けたフレキシブルなゴルフグリップ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/14 20150101AFI20240821BHJP
【FI】
A63B53/14 E
A63B53/14 G
(21)【出願番号】P 2019042262
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-03-08
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ジェームズ・デイヴィス
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-112576(JP,A)
【文献】特開2000-176061(JP,A)
【文献】特開2003-180892(JP,A)
【文献】特開2010-269149(JP,A)
【文献】特表2011-502000(JP,A)
【文献】実開平04-095064(JP,U)
【文献】登録実用新案第3155820(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00-53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブのシャフト上に受容されるフレキシブルな管状グリップであって:
(a)実質的に閉鎖した端部と開放端部とを有するエラストマ材で形成され、内面が前記シャフトに接する管状部材と;
(b)細長い挿入部であって、管状部材内に配置され、また、前記挿入部が前記管状部材の壁を貫通して内方に延在した状態において前記管状部材の外面に露出する第1面と、前記第1面の反対側にあり、前記管状部材の内周に露出した第2面とを有する、細長い挿入部と、を備え、
前記管状部材は、前記挿入部の両側部付近の外面に形成された溝を有
し、
前記ゴルフクラブの前記シャフト上に前記管状グリップが組み立てられたとき、前記挿入部は、該挿入部の第1面の一部が隆起し、前記管状部材のエラストマ材の前記外面から外方に延びるように変形する、フレキシブル管状グリップ。
【請求項2】
前記挿入部は予備硬化させたエラストマ材で形成されている、請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
前記挿入部は、ショア「A」スケール上で65~80の範囲のデュロメータ硬度を有するエラストマ材で形成されている、請求項2に記載のグリップ。
【請求項4】
前記挿入部が、(i)前記管状部材の前記エラストマ材と異なる色のエラストマ材、(ii)前記管状部材よりも剛性が少なくとも10パーセント(10%)高いエラストマ材、のいずれか一方のエラストマ材で形成されている、請求項1に記載のグリップ。
【請求項5】
前記挿入部は、(i)前記管状部材の前記エラストマ材と異なる手触りのエラストマ材、(ii)前記管状部材の前記エラストマ材より硬質なエラストマ材、のいずれか一方で形成されている、請求項1に記載のグリップ。
【請求項6】
前記挿入部の第1面は前記管状部材の前記外面の外方に1mm以内の量で延在している、請求項
1に記載のグリップ。
【請求項7】
前記挿入部は可撓性材料で形成されている、請求項1に記載のグリップ。
【請求項8】
前記挿入部はエラストマ材で形成されている、請求項1に記載のグリップ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示はゴルフクラブ用のフレキシブルグリップに関する。現在、このようなグリップは、エラストマ材を圧縮成形して、グリップの外側に細長い隆起リブを埋め込むことで、使用者の手中におけるグリップの視覚的および触覚的配向を促進し、クラブの位置合わせを強化できるようになっている。これまで、リブは、グリップの内径面上に突条を設計し、エラストマ製の対応する外部ストリップを外面上に追加することによって形成されてきた。この内側突条はグリップ本体材料の一部として形成されている。エラストマ製の外部ストリップは本体とは別のエラストマで形成されており、また、グリップ本体と区別するために、グリップ本体とは異なる硬さ、質感、色を有してよい。ゴルフシャフト上に設置されると、内側突条がエラストマを圧縮して変形させて、隆起した「お知らせリブ」をグリップの外側に形成する。
【0002】
グリップ本体上に外付けストリップを形成するには、本体の材料部品を鋳型内に配置する圧縮成形プロセスが必要であり、この鋳型上に外付けリブストリップを配置する。圧縮成形シーケンスが実施されたときに、成形中に上昇した温度と圧力によって外付けリブストリップがずれてしまわないように、外付けリブストリップの配置ならびに本体材料の量は注意深くかつ精密に制御されなければならない。このプロセスでは、圧縮成形中におけるリブの材料の位置の維持および制御が困難であることがわかっている。グリップの周囲材料と異なる色の材料でリブを形成する場合、成形中にリブ材料が動くと、リブが望ましくない歪んだ形状に仕上がってしまい、製品の外観が許容できないものとなる。
【0003】
図5を参照すると、リブを採用した圧縮成形タイプの従来技術のフレキシブルグリップの断面全体を符号1で示しており、グリップはエラストマ製の外付けリブストリップ3を備えた環状本体2を有し、リブストリップ3は、周囲のエラストマ材に設けられた凹部4内に配置されており、凹部4は、外付けリブストリップ3と本体2のエラストマ材とを同時に硬化させるべく圧縮成形によって形成されている。グリップ1はクラブシャフト5上に組み立てた状態で示されている。
【0004】
したがって、フレキシブルなゴルフグリップ内に、より際立ち、また、低コストで製造し易いリブ構造体を提供する方法または手段を見つけることが望まれてきた。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、使用者の手中における配向を促進し、把持性を向上させ、また、現在製造されている圧縮成形されたリブ付きゴルフクラブグリップと比べて低コストならびに製造が単純な外付けの細長いリブを外面に設けているタイプの、ゴルフクラブ用のフレキシブルグリップについて記載する。本開示のグリップには、管状グリップの壁厚み全体を貫通して延在し、周囲のグリップ材よりも剛性が高い材料から成るエラストマで形成された挿入部を採用している。挿入部は別個に形成されて、挿入部の内部形状に対応した溝を設けたコアバーと、挿入部を囲んでいる隆起部を外面に有する周囲鋳型キャビティとの間に配置されることが好ましい。挿入部はコアバーの溝と鋳型キャビティの隆起部とによって適所に固定される。鋳型は、コアバーを包囲している鋳型キャビティをエラストマ材で充填するべく鋳型内に射出されたエラストマ材の流れを案内するように配置および配向された射出スプルーを設けて設計されており、成形時にはエラストマ材が挿入部の両側部に結合するため、鋳型から取り出して、コアバーを抜去すると、一体型の単体フレキシブルグリップを形成する。
【0006】
1つのバージョンでは、挿入部は内面に上昇隆起部を設けて設計されているため、クラブシャフト上に組み立てられると、挿入部の外面がグリップの周囲材料の外面から若干上昇して隆起リブを形成するようにエラストマが変形する。所望であれば、外付けリブのいずれかの側でリブの外面に溝を形成して、リブをさらに区別させ、グリップ本体から隔離してよく、これにより、リブの存在がさらに強調される。リブの外面は、その存在をさらに強調し把持性をさらに向上させるために、グリップ本体とは異なる手触りの表面にすることができる。本開示のグリップの1つのバージョンでは、エラストマ製の挿入部は、ショア「A」スケール上で65~80の範囲のデュロメータ硬度を有し;管状グリップの本体のエラストマはショア「A」スケール上で30~60の範囲の硬度を有する。クラブシャフト上に組み立てられると、挿入部の各部が周囲グリップ材料の表面から外方に1mm以内の量で延び得るが、これは、全米ゴルフ協会ならびにロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュースにより指定された現時点での限度である。しかし、適用可能なゴルフゲーム規則によって許されるのであれば、1mmを超える隆起リブの高さを採用してもよいことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ゴルフクラブのシャフトに設置した状態の、本開示による完成品のフレキシブルグリップの斜視図である。
【
図2】鋳型から取り外した状態のままの本開示のグリップの断面図である。
【
図3】射出成形前の、挿入部とコアバーが適所に配置された鋳型の断面図である。
【
図4】
図1の切断指示線4-4に沿った断面図である。
【
図5】クラブシャフト上に組み立てられた、リブを嵌め込んだ状態にある従来技術のグリップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照すると、完成品のゴルフクラブ用のフレキシブルグリップの全体を符号10で示した透視図であり、グリップは、破線で示される実質的に閉鎖した端部12と開放端部16とを設けた、内部にクラブシャフト17の端部を受容した管状本体14を有する。グリップには、全体を符合18で示す細長い挿入部が成形中に形成されるが、これについては以降でより詳しく述べる。
【0009】
図4を参照すると、クラブシャフト上に組み立てられた本開示のゴルフグリップの一つのバージョンを断面図にて示し、ここでは、挿入部18が管状グリップ本体14の内部から外部までの壁厚みを貫通して延在した状態で示されている。挿入部の外面は隆起リブ形状を提供するように若干変形している。この実施では、リブ18の外面20は管状本体14の外面から約1mm外方へ延在してよい。これは、クラブシャフト17上に組み立てる際に、挿入部の内面を偏向または変形させることにより実行される。
【0010】
図2、
図3を参照すると、圧縮鋳型30の上部が、
図3の「PL」で示す分離線に沿って下部32上に組み立てられて示されている。鋳型の上部30には、グリップ本体14の外面にグラフィックデザインまたは手触りを提供するように構成された表面を有し得る鋳型キャビティ34が形成されている。鋳型32の下部は、やはりグリップ本体14の外面にグラフィックデザインまたは手触りを提供するように構成されてよい対応する鋳型キャビティ36を有し:キャビティ36の内部の底には間隔を置いて隆起部38、39が形成され、隆起部38、39の間にはエラストマ製の挿入部18の外面20が配置されている。
【0011】
キャビティ34、36内の中心にはコアバー40が配置されており;コアバー40の下部には溝41が形成され、溝41内には、成形中に挿入部を適所に位置決めし保持するのに役立つように、挿入部18の内面22が受容されている。
【0012】
上型部30には、挿入部18の対向する両側にそれぞれ配置された、1対の下方に向かって延在する成形スプルー42、44が形成されている。各スプルー42、44は交差通路46、48とそれぞれ連通し、交差通路46、48は鋳型キャビティ34、36の対向する両側と連通している。この実施では、コアバー40と挿入部18が適所にある状態で、エラストマ材(図示せず)をスプルー42、44および通路46、48を介して下方向に、鋳型キャビティ34、36内に射出してこれらキャビティを充填すると、エラストマ材(図示せず)が挿入部18の側部50、52に接触し、成形時にはこれらと結合する。あるいは、破線輪郭で示す単体の中央成形スプルー54を上型部30内に設けることにより、エラストマをキャビティ34の上面内へ下方向に射出して、エラストマがコアバーの周囲および挿入部18の側部50、52上に流れるようにすることが可能である。
【0013】
図2を参照すると、挿入部18を内部に一体に成形して硬化させたグリップを、鋳型から取り出したままで、また、コアバーを抜去してリブ22の下面が本体14の内周の内側に若干延在した状態にて示す。リブの上面20は、溝56、58のそれぞれを、下型部32に隆起部38、39によって形成されたものとして、側部50、52の各々の付近に設けている。
【0014】
したがって、本開示は、グリップ本体よりも高い剛性を有するエラストマ材で形成された十分な厚みのリブを一体化させたゴルフクラブ用のユニークなフレキシブルグリップについて記載する。挿入部はグリップの壁厚みを貫通して延在し、その上面または外面は管状グリップの外部に露出しているため、使用者の手中におけるグリップの配向が促進され、把持性が向上する。硬化させたグリップをクラブシャフト上に組み立てた状態では、挿入部の上面各部は約1mmの量で外方に延びてよい。本実施では、管状本体14の材料の剛性よりも高い少なくとも10パーセント(10%)の剛性を持つエラストマ材の挿入部18を形成することが良好であるとわかっている。剛性の増加は、局所的または全体的に繊維で補強することによっても達成できる。挿入部18は、握った時に異なる感覚または触覚が得られるエラストマ材で形成してもよい。これは、ガラスまたは砂のような粒状物質を材料に組み入れて、認識可能な粗さを表面に持たせ、把持性を向上させることにより達成してよい。本実施では、エラストマ製のリブはショア「A」硬度スケール上で65~80の範囲のデュロメータ硬度を有し;管状グリップの本体の材料はショア「A」スケール上で30~60の範囲の硬度を有する。本開示の本方法の実施において、挿入部を鋳型部内にコアバーと共に組み立て;コアバーを包囲している鋳型キャビティ内にエラストマ材を射出し、成形中に射出されたエラストマが挿入部の側部に結合する。本実施では、挿入部18を、予備硬化させたエラストマで形成したり、管状グリップの本体のエラストマ材と異なるエラストマ材のものにしたりしてもよく;挿入部を異なる色、異なる手触りにしてもよい。
【0015】
例示的な実施形態を図面を参照しながら説明および例証した。先述した詳細な説明を読解することによって、他者には改良および変更が思い浮かぶであろうことが明白である。例示的な実施形態は、添付の請求項またはその同等物の範囲に入る限り、こうした改良および変化を全て含むと解釈されることが意図される。
【0016】
部品リスト
10 グリップG/T 1 従来技術グリップG/T
12 管状本体の閉鎖端部 2 管状本体
14 管状本体 3 リブ挿入部
16 管状本体の開放端部 4 本体の溝
17 クラブシャフト 5 クラブシャフト
18 挿入部G/T
20 挿入部外面
22 挿入部内面
24 使用せず
30 上型部
32 下型部
34 上型キャビティ
36 下型キャビティ
38 36の隆起部
40 コアバー
41 コアバー溝
42 スプルー
46 交差通路
50 挿入部の側部
54 単一の中央スプルー
56 挿入部付近の溝