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特許7541434サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
B41J2/335 101D
B41J2/335 101H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019111099
(22)【出願日】2019-06-14
(65)【公開番号】P2020203389
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】桐山 愛世
【審判官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114050(JP,A)
【文献】特開2009-184272(JP,A)
【文献】特開2019-14233(JP,A)
【文献】特開平5-270033(JP,A)
【文献】特開平7-96618(JP,A)
【文献】特開2002-36548(JP,A)
【文献】特開2019-35709(JP,A)
【文献】特開2005-167258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315-2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に支持され且つ主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され且つ前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
前記基板と前記抵抗体層との間に介在する絶縁層と、を備え、
前記基板は、前記基板の厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なる空洞部と、前記空洞部を塞ぐ主板部と、を有し、
前記主板部は、前記厚さ方向において前記空洞部と前記絶縁層との間に位置し且つ前記基板の他の部位と同じ材料によって一体的に形成されており、前記厚さ方向の寸法が1μ m以上10μm以下である、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記基板は、単結晶半導体からなる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記基板は、Siからなる、請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記基板は、前記絶縁層が形成された主面と、前記主面から突出し且つ主走査方向に延びる凸部を有し、
前記凸部は、前記主面からの距離が最も大きい頂部と、当該頂部に対して副走査方向に繋がり且つ前記主面に対して傾斜した第1傾斜部と、を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記空洞部は、副走査方向視において前記第1傾斜部と重なる、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記発熱部の副走査方向における大きさよりも小さい、請求項1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記発熱部の副走査方向における大きさと同じである、請求項1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記絶縁層に対して前記複数の発熱部とは反対側に位置し且つ前記複数の発熱部の厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なり、前記絶縁層よりも熱反射率が大きい反射層を備える、請求項1ないしのいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記反射層は、Cuを含む、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
単結晶半導体からなる基板材料に、主面から凹む複数の穴部を形成する穴部形成工程と、
前記複数の穴部の底側部分同士を連結する処理と、前記複数の穴部の開口側部分を塞ぐ処理と、を含み、前記基板材料内に空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記主面を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層上に抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、
前記抵抗体層上に配線層を形成する配線層形成工程と、を備え、
前記抵抗体層のうち前記配線層から露出した部分であり且つ主走査方向に配列された複数の発熱部と前記空洞部とが、前記基板材料の厚さ方向視において重なり、
前記空洞部形成工程においては、水素アニールを用いて前記基板材料の単結晶半導体を部分的に移動させることにより、前記複数の穴部の底側部分同士を連結する処理と、前記複数の穴部の開口側部分を塞ぐ処理と、を一括して行い、且つ前記空洞部を塞ぐとともに前記基板材料によって一体的に形成され且つ前記厚さ方向の寸法が1μm以上10μm以下である主板部を形成し、
前記絶縁層形成工程においては、前記絶縁層により前記主板部を覆う、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に開示されたサーマルプリントヘッドは、配線層および抵抗体層が形成された第1基板と、ドライバICが搭載された第2基板とを備える。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。
【0003】
サーマルプリントヘッドによる印刷においては、抵抗体層の発熱部が、通電により発熱する。この熱が伝達されることにより印刷用紙が発色し、印刷がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-65021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、印字品質を向上させることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、前記基板に支持され且つ主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、前記基板に支持され且つ前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、前記基板と前記抵抗体層との間に介在する絶縁層と、を備え、前記基板は、前記基板の厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なる空洞部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のサーマルプリントヘッドによれば、印字品質を向上させることが可能なサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法を提供することができる。
【0008】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
図3】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
図4図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
図6】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図7】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図8】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大平面図である。
図9図8のIX-IX線に沿う断面図である。
図10】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図11】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図12】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図13】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図14】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図15】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図16】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図17】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部断面図である。
図18】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示す要部拡大断面図である。
図19】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの変形例を示す要部拡大断面図である。
図20】本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図21】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
図22】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第1変形例を示す要部拡大断面図である。
図23】本開示の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドの第2変形例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0012】
<第1実施形態>
図1図6は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、第1基板1、絶縁層19、保護層2、配線層3、抵抗体層4、第2基板5、ドライバIC7および放熱部材8を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ91との間に挟まれて搬送される印刷媒体(図示略)に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0013】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。図2は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。図3は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部断面図である。図6は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大断面図である。図1図3においては、理解の便宜上、保護層2を省略している。図1および図2においては、理解の便宜上、後述の保護樹脂78を省略している。図2においては、理解の便宜上、後述のワイヤ61を省略している。図1図3においては、副走査方向yの図中下側が上流側であり、図中上側が下流側である。図4図6においては、副走査方向yの図中右側が上流側であり、図中左側が下流側である。
【0014】
第1基板1は、配線層3および抵抗体層4を支持するものであり、本開示の基板に相当する。第1基板1は、主走査方向xを長手方向とし、副走査方向yを幅方向とする細長矩形状である。以降の説明においては、第1基板1の厚さ方向を厚さ方向zとして説明する。第1基板1の大きさは特に限定されないが、一例を挙げると、第1基板1の厚さは、たとえば300μm以上1000μm以下であり、たとえば725μmである。また、第1基板1の主走査方向x寸法は、たとえば25mm以上160mm以下であり、副走査方向y寸法は、たとえば1.0mm以上5.0mm以下である。
【0015】
本実施形態においては、第1基板1は、単結晶半導体からなり、たとえばSiによって形成されている。図4および図5に示すように、第1基板1は、第1主面11および第1裏面12を有する。第1主面11および第1裏面12は、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向いている。配線層3および抵抗体層4は、第1主面11の側に設けられる。第1主面11は、本開示の主面に相当する。
【0016】
第1基板1は、凸部13を有する。凸部13は、第1主面11から厚さ方向zに突出しており、主走査方向xに長く延びている。図示された例においては、凸部13は、第1基板1の副走査方向y下流側寄りに形成されている。また、凸部13は、第1基板1の一部であることから、単結晶半導体であるSiからなる。
【0017】
本実施形態においては、凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131および一対の第2傾斜部132を有する。
【0018】
頂部130は、凸部13のうち第1主面11からの距離が最も大きい部分である。本実施形態においては、頂部130は、第1主面11と平行な平面からなる。頂部130は、厚さ方向z視において主走査方向x方向に長く延びる細長矩形状の面である。
【0019】
一対の第1傾斜部131は、頂部130の副走査方向y両側に繋がっている。一対の第1傾斜部131は、各々が第1主面11に対して角度α1だけ傾斜している。第1傾斜部131は、厚さ方向z視において主走査方向x方向に長く延びる細長矩形状の平面である。なお、凸部13は、一対の第1傾斜部131に繋がり、頂部130の主走査方向x両端に隣接する傾斜部(図示略)を有していてもよい。
【0020】
一対の第2傾斜部132は、一対の第1傾斜部131に対して副走査方向y両側に繋がっている。一対の第2傾斜部132は、各々が第1主面11に対して角度α1よりも大きい角度α2だけ傾斜している。第2傾斜部132は、厚さ方向z視において主走査方向x方向に長く延びる細長矩形状の平面である。本実施形態においては、一対の第2傾斜部132は、第1主面11に繋がっている。なお、凸部13は、一対の第2傾斜部132に繋がり、頂部130の主走査方向x両端の主走査方向x外方に位置する傾斜部(図示略)を有していてもよい。
【0021】
本実施形態においては、第1主面11が(100)面である。後述の製造方法例によれば、第1傾斜部131が第1主面11となす角度α1は、30.1度であり、第2傾斜部132が第1主面11となる角度α2は、54.8度である。凸部13の厚さ方向z寸法は、たとえば、100μm以上300μm以下である。
【0022】
第1基板1は、空洞部14を有する。空洞部14は、z方向視において後述の抵抗体層4の複数の発熱部41と重なる。本実施形態においては、空洞部14は、主走査方向xに長く延びており、すべての複数の発熱部41とz方向視において重なる。第1基板1は、主板部18を有する。主板部18は、空洞部14の厚さ方向z図中上方に位置する部分であり、空洞部14を厚さ方向zから塞いでいる部分である。
【0023】
空洞部14および主板部18の各部の大きさは何ら限定されない。一例を挙げると、空洞部14の厚さ方向z寸法は、3μm以上10μm以下であり、副走査方向y寸法は、10μm以上30μm以下である。主板部18の副走査方向y寸法は、空洞部14の副走査方向y寸法と同じであり、主板部18の厚さ方向z寸法は、1μm以上10μm以下である。
【0024】
図5および図6に示すように、絶縁層19は、第1主面11および凸部13を覆っており、第1基板1の第1主面11側をより確実に絶縁するためのものである。絶縁層19は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO2やSiNまたはTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)からなり、本実施形態においては、TEOSが採用されている。絶縁層19の厚さは特に限定されず、その一例を挙げるとたとえば15μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
【0025】
抵抗体層4は、第1基板1に支持されており、本実施形態においては、絶縁層19を介して第1基板1に支持されている。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有している。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱するものである。複数の発熱部41は、主走査方向xに沿って配置されており、主走査方向xにおいて互いに離間している。発熱部41の形状は特に限定されず、本実施形態においては、厚さ方向z視において副走査方向yを長手方向とする長矩形状である。抵抗体層4は、たとえばTaNからなる。抵抗体層4の厚さは特に限定されず、たとえば0.02μm以上0.1μm以下であり、好ましくは0.05μm以上0.07μm以下ある。
【0026】
図3および図6に示すように、本実施形態においては、発熱部41は、頂部410、一対の第1部411および一対の第2部412を有する。頂部410は、発熱部41のうち凸部13の頂部130の副走査方向yにおける少なくとも一部に形成された部分である。第1部411は、発熱部41のうち凸部13の第1傾斜部131の副走査方向yにおける少なくとも一部に形成された部分である。第2部412は、発熱部41のうち凸部13の第2傾斜部132の副走査方向yにおける少なくとも一部に形成された部分である。なお、本実施形態においては、第1基板1と抵抗体層4との間に絶縁層19が介在しているが、上述したとおり絶縁層19は十分に薄い層である。このため、発熱部41が、厚さ方向z視もしくは頂部130、第1傾斜部131および第2傾斜部132のそれぞれの法線方向視において重なるように形成されている場合、頂部130、第1傾斜部131および第2傾斜部132に形成されていると説明し、以下も同様である。
【0027】
本実施形態においては、頂部410は、頂部130の副走査方向y全長にわたって形成されている。また、発熱部41は、頂部130と一対の第1傾斜部131との境界を跨いでいる。また、一対の第1部411は、一対の第1傾斜部131の副走査方向y全長にわたって形成されている。発熱部41は、一対の第1傾斜部131と一対の第2傾斜部132との境界を跨いでいる。また、一対の第2部412は、第2傾斜部132の副走査方向yにおける一部のみに形成されている。
【0028】
本実施形態においては、空洞部14の副走査方向y寸法は、発熱部41の副走査方向y寸法よりも小さい。また、空洞部14の副走査方向y寸法は、凸部13の頂部130の副走査方向y寸法よりも小さい。また、空洞部14は、副走査方向y視において凸部13の第1傾斜部131と重なる。また、空洞部14は、厚さ方向zにおいて第1主面11よりも頂部130側に位置している。
【0029】
配線層3は、複数の発熱部41に通電するための通電経路を構成するためのものである。配線層3は、第1基板1に支持されており、本実施形態においては、図5および図6に示すように、抵抗体層4上に積層されている。配線層3は、抵抗体層4よりも低抵抗な金属材料からなり、たとえばCuからなる。また、配線層3は、Cuからなる層と、当該層と抵抗体層4との間に介在するTiからなる15nm以上100nm以下の厚さの層とを有する構成であってもよい。配線層3の厚さは特に限定されず、たとえば0.3μm以上2.0μm以下である。
【0030】
図1図3図5および図6に示すように、本実施形態においては、配線層3は、複数の個別電極31および共通電極32を有する。図3および図6に示すように、抵抗体層4のうち、複数の個別電極31と共通電極32との間において配線層3から露出した部分が、複数の発熱部41となっている。
【0031】
図3および図6に示すように、複数の個別電極31は、各々が概ね副走査方向y方向に延びる帯状であり、複数の発熱部41に対して副走査方向y上流側に配置されている。本実施形態においては、個別電極31の副走査方向y下流側端は、凸部13の副走査方向y上流側の第2傾斜部132に重なる位置に配置されている。図2および図5に示すように、個別電極31は、個別パッド311を有する。個別パッド311は、ドライバIC7と導通させるためのワイヤ61が接続される部分である。
【0032】
図2図3図5および図6に示すように、共通電極32は、連結部323と複数の帯状部324とを有する。複数の帯状部324は、複数の発熱部41に対して副走査方向y下流側に配置されている。複数の帯状部324の副走査方向y上流側端は、複数の個別電極31の副走査方向y下流側端と、発熱部41を挟んで対向している。帯状部324の副走査方向y上流側端は、凸部13の副走査方向y下流側の第2傾斜部132に重なる位置に配置されている。連結部323は、複数の帯状部324の副走査方向y下流側に位置し、複数の帯状部324が繋がっている。連結部323は、主走査方向xに延びており、帯状部324の主走査方向x方向寸法よりも副走査方向y寸法が大きい、比較的幅広の部分である。図1に示すように、連結部323は、複数の発熱部41の副走査方向y下流側から、主走査方向x両側を迂回して、副走査方向y上流側へと延びている。
【0033】
本実施形態においては、複数の帯状部324の副走査方向y下流側部分と連結部323とが、第1基板1の第1主面11に形成されている。
【0034】
保護層2は、配線層3および抵抗体層4を覆っている。保護層2は、絶縁性の材料からなり、配線層3および抵抗体層4を保護している。保護層2の材質は、たとえばSiO2、SiN、SiC、AlN等であり、これらの単層もしくは複数層によって構成される。保護層2の厚さは特に限定されず、たとえば1.0μm以上10μm以下である。
【0035】
図5に示すように、本実施形態においては、保護層2は、パッド用開口21を有する。パッド用開口21は、保護層2を厚さ方向zに貫通している。複数のパッド用開口21は、個別電極31の複数の個別パッド311を露出させている。
【0036】
第2基板5は、図1および図4に示すように、第1基板1に対して副走査方向y上流側に配置されている。第2基板5は、たとえばPCB基板であり、ドライバIC7や後述のコネクタ59が搭載される。第2基板5の形状等は特に限定されず、本実施形態においては、主走査方向xを長手方向とする長矩形状である。第2基板5は、第2主面51および第2裏面52を有する。第2主面51は、第1基板1の第1主面11と同じ側を向く麺であり、第2裏面52は、第1基板1の第1裏面12と同じ側を向く面である。本実施形態においては、第2主面51は、第1主面11よりも厚さ方向z図中下方に位置している。
【0037】
ドライバIC7は、第2基板5の第2主面51に搭載されており、複数の発熱部41に個別に通電させるためのものである。本実施形態においては、ドライバIC7は、複数のワイヤ61によって複数の個別電極31に接続されている。ドライバIC7の通電制御は、第2基板5を介してサーマルプリントヘッドA1外から入力される指令信号に従う。ドライバIC7は、複数のワイヤ62によって第2基板5の配線層(図示略)に接続されている。本実施形態においては、複数の発熱部41の個数に応じて、複数のドライバIC7が設けられている。
【0038】
ドライバIC7、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62は、保護樹脂78に覆われている。保護樹脂78は、たとえば絶縁性樹脂からなりたとえば黒色である。保護樹脂78は、第1基板1と第2基板5とに跨るように形成されている。
【0039】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をプリンタ(図示略)に接続するために用いられる。コネクタ59は、第2基板5に取付けられており、第2基板5の配線層(図図示略)に接続されている。
【0040】
放熱部材8は、第1基板1および第2基板5を支持しており、複数の発熱部41によって生じた熱の一部を第1基板1を介して外部へと放熱するためのものである。放熱部材8は、たとえばアルミ等の金属からなるブロック状の部材である。本実施形態においては、放熱部材8は、第1支持面81および第2支持面82を有する。第1支持面81および第2支持面82は、各々が厚さ方向z上側を向いており、副走査方向yに並んで配置されている。第1支持面81には、第1基板1の第1裏面12が接合されている。第2支持面82には、第2基板5の第2裏面52が接合されている。
【0041】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、図7図18を参照しつつ、以下に説明する。
【0042】
まず、図7に示すように、基板材料1Aを用意する。基板材料1Aは、単結晶半導体からなり、たとえばSiウエハである。基板材料1Aの厚さは特に限定されず、本実施形態においては、たとえば300μm以上1000μm以下であり、たとえば725μmである。基板材料1Aは、互いに反対側を向く主面11Aおよび裏面12Aを有する。主面11Aは、(100)面である。
【0043】
次に、図8および図9に示すように、穴部形成工程を行う。図8は、基板材料1Aの要部平面図であり、図9は、図8のIX-IX線に沿う要部拡大断面図である。基板材料1Aの主面11Aにボッシュ法等の深掘りエッチングを施す。これにより、複数の穴部14Aを形成する。複数の穴部14Aの配置は特に限定されず、本実施形態においては、図8に示すように、マトリクス状に形成されている。複数の穴部14Aは、主走査方向xに長く延びる帯状領域に形成される。また、本実施形態においては、図9に示すように、穴部14Aの厚さ方向zに直角である断面積が、厚さ方向zにおいて略均一となるように深掘りエッチング(ボッシュ法等)を行う。
【0044】
次に、図10に示すように、空洞部形成工程を行う。空洞部形成工程は、複数の穴部14Aの底側部分同士を連結する処理と、複数の穴部14Aの開口側部分を塞ぐ処理と、を含む。本実施形態においては、還元性雰囲気中の熱処理を用いる。具体的には、たとえば、水素アニール用いて基板材料1Aの単結晶半導体を部分的に移動させることにより、複数の穴部14Aの底側部分同士を連結する処理と、複数の穴部14Aの開口側部分を塞ぐ処理と、を一括して行う。この水素アニールは、たとえば、減圧下の水素雰囲気において基板材料1Aを1,000℃~1,200℃に加熱し、この状態を所定時間保持することによって行う。これにより、複数の穴部14Aの底側部分同士が連結された空洞部14が形成される。また、複数の穴部14Aの開口側部分が連結されることにより、これらの開口部分を塞ぐ主板部18が形成される。主板部18は、図中上面が主面11Aの一部を構成し、図中下面が空洞部14の内面の一部を構成する。また、本実施形態においては、空洞部形成工程が完了した状態で、空洞部14は、主板部18によって密閉されている。空洞部14が、1,000℃~1,200℃の水素雰囲気において密閉状態で形成されるため、空洞部14内の気圧は、通常の大気圧よりも低い。ただし、たとえば一部の穴部14Aが残存することにより、空洞部14は、密閉されていない構成であってもよい。空洞部形成工程を経て形成される空洞部14および主板部18の厚さ方向z寸法の一例を挙げると、空洞部14の厚さ方向z寸法(深さ)が3μm以上10μm以下であり、主板部18の厚さ方向z寸法(厚さ)が1μm以上10μm以下である。
【0045】
次いで、主面11Aを所定のマスク層で覆った後に、たとえばKOHを用いた異方性エッチングを行う。このマスク層は、厚さ方向z視において空洞部14と重なるように設けられる。これにより、図11に示すように、基板材料1Aには、凸部13Aが形成される。凸部13Aは、主面11Aから突出しており、主走査方向xに長く延びている。凸部13Aは、頂部130Aおよび一対の傾斜部132Aを有する。頂部130Aは、主面11Aと平行は面であり、本実施形態においては、(100)面である。一対の傾斜部132Aは、頂部130Aの副走査方向y両側に位置しており、頂部130Aと主面11Aとの間に介在している。傾斜部132Aは、頂部130Aおよび主面11Aに対して傾斜した平面である。本実施形態においては、傾斜部132Aと主面11Aおよび頂部130Aがなす角度は、54.8度である。
【0046】
次いで、前記マスク層を除去した後に、例えばKOHを用いたエッチングを再度行う。これにより、基板材料1Aが、図12および図13に示す第1主面11、第1裏面12および凸部13を有する第1基板1となる。凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131および一対の第2傾斜部132を有する。頂部130は、頂部130Aであった部分であり、一対の第2傾斜部132は、一対の第2傾斜部132であった部分である。一対の第1傾斜部131は、頂部130Aと一対の傾斜部132Aとの境界がKOHによってエッチングされた部分である。一対の第1傾斜部131が第1主面11となす角度α1は、30.1度であり、一対の第2傾斜部132が第1主面11となす角度α2は、54.8度である。
【0047】
次いで、図14に示すように、絶縁層19を形成する。絶縁層19の形成は、たとえばCVDを用いて反射層15にTEOSを堆積させることによって行う。
【0048】
次いで、図15に示すように、抵抗体膜4Aを形成する。抵抗体膜4Aの形成は、たとえば、スパッタリングによって絶縁層19上にTaNの薄膜を形成することによって行う。
【0049】
次いで、図16に示すように、抵抗体膜4Aを覆う導電膜3Aを形成する。導電膜3Aの形成は、たとえばめっきやスパッタリング等によってCuからなる層を形成することによって行う。また、Cu層を形成する前に、Ti層を形成してもよい。
【0050】
次いで、図17および図18に示すように、導電膜3Aの選択的なエッチングと抵抗体膜4Aの選択的なエッチングとを施すことにより、配線層3および抵抗体層4が得られる。配線層3は、上述の複数の個別電極31と共通電極32とを有する。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有する。
【0051】
次いで、保護層2を形成する。保護層2の形成は、たとえばCVDを用いて絶縁層19、配線層3および抵抗体層4上にSiNおよびSiCを堆積させることにより実行される。また、保護層2をエッチング等によって部分的に除去することによりパッド用開口21を形成する。この後は、第1支持面81への第1基板1および第2基板5の取付け、ドライバIC7の第2基板5への搭載、複数のワイヤ61および複数のワイヤ62のボンディング、保護樹脂78の形成等を経ることにより、上述のサーマルプリントヘッドA1が得られる。
【0052】
次に、サーマルプリントヘッドA1およびサーマルプリントヘッドA1の製造方法の作用について説明する。
【0053】
本実施形態によれば、第1基板1に空洞部14が形成されている。空洞部14は、厚さ方向z視において発熱部41と重なる。これにより、抵抗体層4に通電されることにより複数の発熱部41が発熱した際に、第1基板1を介して第1裏面12側に逃げる熱の量を抑制することが可能である。これにより、より多くの熱を印刷用紙に伝えることが可能である。したがって、サーマルプリントヘッドA1によれば、印字のエネルギー効率と印字品質とを向上させることができる。
【0054】
第1基板1がSiからなる場合、第1基板1の熱伝導率は比較的高い。このため、発熱部41からの熱が第1基板1を伝って第1裏面12へと過度に逃げることを回避することが可能である。一方、厚さ方向z視において発熱部41から明らかに退避した領域においては、不要な熱を第1裏面12側等へと速やかに伝熱することができる。
【0055】
また、第1基板1の凸部13は、頂部130および第1傾斜部131を有している。発熱部41は、頂部130に形成された頂部410と第1傾斜部131に形成された第1部411とを有しており、頂部130と第1傾斜部131との境界を跨いで形成されている。このため、図4に示すように、サーマルプリントヘッドA1にプラテンローラ91が押し当てられると、プラテンローラ91の弾性変形により、プラテンローラ91が頂部410および第1部411のいずれか一方または双方に接する。図4に示すように、プラテンローラ91の中心910が副走査方向yにおいて凸部13の中心と一致する構成の場合、プラテンローラ91は、頂部410と強い圧力で接する。一方、プラテンローラ91の中心910が凸部13の中心に対して副走査方向yに意図せずずれてしまうと、プラテンローラ91と頂部410との圧力が低下する。しかしながら、本実施形態においては、発熱部41が第1部411を有するため、プラテンローラ91がずれた場合には、プラテンローラ91が第1部411に対して接する割合が大きくなり、依然として発熱部41に適切に押し当てられる。したがって、サーマルプリントヘッドA1によれば、プラテンローラ91が意図せずにずれた場合や、あるいはプラテンローラ91の直径が異なる場合等であっても、印字品質の低下を抑制することが可能であり、印字品質を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、頂部410が頂部130の副走査方向y全長にわたって形成されており、頂部410の副走査方向y両側に一対の第1部411が設けられている。このため、プラテンローラ91のずれが、副走査方向yの上流側および下流側のいずれに生じても、印字品質の低下を抑制することができる。また、一対の第1部411は、第1傾斜部131の副走査方向y全長にわたって形成されている。これは、プラテンローラ91が意図せずずれた場合の印字品質の低下を抑制するのに好ましい。
【0057】
また、本実施形態においては、凸部13は、一対の第2傾斜部132を有している。すなわち、凸部13は、頂部130(第1主面11)に対して2段階の傾斜となった第1傾斜部131および第2傾斜部132が副走査方向yに並んだ構成となっている。このため、頂部130と第1傾斜部131とがなす角度を小さくすることが可能であり、印字品質の向上に好ましい。また、頂部130と第1傾斜部131とのなす角度が小さいほど、印字における印刷用紙の通過による保護層2の摩耗防止を抑制することができる。また、第1部411が第1傾斜部131を副走査方向y全長にわたって設けられていることにより、個別電極31および共通電極32の副走査方向y端が一対の第1傾斜部131上に位置しておらず一対の第2傾斜部132上に位置している。このため、第1傾斜部131と重なる位置に、配線層3の端縁の存在による段差が生じることを回避可能であり、印刷用紙のスムーズな通過や、紙かすの付着防止に有利である。また、一対の第2部412が設けられていることは、プラテンローラ91が意図せずずれた場合の印字品質の低下を抑制するのにさらに好ましい。
【0058】
空洞部14が頂部130と厚さ方向z視において重なり、副走査方向y寸法が頂部130よりも小さい構成により、発熱部41のうちプラテンローラ91に強く押し当てられる部位から熱が過度に逃げることを抑制することができる。これは、印字品質の低下を抑制するのに好ましい。また、空洞部14が副走査方向y視において第1傾斜部131と重なる位置に設けられていることは、空洞部14を発熱部41により近づけることとなり、伝熱の抑制に好ましい。
【0059】
図19図23は、本開示の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0060】
<第1実施形態 変形例>
図19は、サーマルプリントヘッドA1の変形例を示す要部拡大断面図である。本変形例のサーマルプリントヘッドA11は、反射層15を有する。
【0061】
反射層15は、絶縁層19に対して抵抗体層4とは反対側に設けられている。本実施形態においては、反射層15は、絶縁層19と第1基板1との間に介在している。反射層15は、絶縁層19よりも熱反射率が大きい材質からなる。本開示において、熱反射率は、物体が熱放射(輻射とも称される)によって受けた熱についての透過率および吸収率との和が1となる物性値である。すなわち、相対的に透過率や吸収率が小さい材質ほど、熱反射率が大きくなる傾向がある。反射層15の材質は特に限定されず、好ましくは金属が用いられる。反射層15を構成する金属としては、たとえばCu、Ti、Al等が挙げられる。図示された例においては、反射層15は、Cuからなる。また、反射層15の厚さは特に限定されず、本実施形態においては、たとえば配線層3よりも薄く、たとえば0.05μm以上0.3μm以下であり、好ましくは0.08μm以上0.15μm以下である。反射層15の形成は、たとえばスパッタリングやCVDを用いることができる。
【0062】
反射層15は、抵抗体層4のうち後述の発熱部41を構成する部分の厚さ方向視、本実施形態においては厚さ方向z視において、複数の発熱部41と重なる位置に設けられている。図示された例においては、反射層15は、第1基板1の第1主面11および凸部13のすべてを覆っており、反射第1部151、反射第2部152、反射第3部153および反射第4部154を有する。
【0063】
反射第1部151は、z方向視において発熱部41と重なる部分である。反射第2部152は、z方向視において凸部13と重なる部分である。図示された例においては、反射第1部151は、反射第2部152に含まれている。反射第3部153は、反射第2部152に対してy方向上流側に位置する部分であり、z方向視において第1主面11と重なっている。反射第4部154は、反射第2部152に対してy方向下流側に位置する部分であり、z方向視において第1主面11と重なっている。
【0064】
本例の反射層15は、配線層3および抵抗体層4から絶縁されている。すなわち、反射層15と配線層3および抵抗体層4との間には、絶縁層19が全域に渡って介在している。
【0065】
本変化例によっても、サーマルプリントヘッドA1と同様の作用効果を奏する。また、絶縁層19を備えることにより、抵抗体層4に通電されることにより複数の発熱部41が発熱した際に、熱放射によって発熱部41から絶縁層19を透過してきた熱を、反射層15によって発熱部41側へと反射することが可能である。これにより、たとえば第1基板1を通じて第1裏面12側へと逃げる熱を抑制することが可能であり、より多くの熱を印刷用紙に伝えることが可能である。したがって、サーマルプリントヘッドA11によれば、印字のエネルギー効率と印字品質とを向上させることができる。
【0066】
<第2実施形態>
図20は、本発明の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、第1基板1が複数の空洞部14を有する点が、上述した実施形態と異なっている。
【0067】
複数の空洞部14は、z方向に並んでおり、z方向視において互いに重なるように配置されている。このような複数の空洞部14は、たとえば図8および図9に示す製造方法において、複数の穴部14Aの深さ(アスペクト比)や形成密度を適宜設定することにより形成することができる。
【0068】
このような実施形態によっても、過度な伝熱の抑制により、印字のエネルギー効率と印字品質とを向上させることができる。また、本実施形態から理解されるように、第1基板1に形成される空洞部14の個数は何ら限定されない。
【0069】
<第3実施形態>
図21は、本発明の第3実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。本実施形態のサーマルプリントヘッドA3は、サーマルプリントヘッドA1における凸部13が第1基板1に形成されていない。第1基板1の厚さ方向z図中上側は、全面が第1主面11とされている。
【0070】
サーマルプリントヘッドA3においても、空洞部14は、厚さ方向z視において発熱部41と重なる位置に設けられている。また、図示された例においては、空洞部14の副走査方向y寸法は、発熱部41の副走査方向y寸法よりも小さい。
【0071】
本実施形態によっても、過度な伝熱の抑制により、印字品質を向上させることができる。また、本実施形態から理解されるように、第1基板1は、凸部13を有さない、全体として平坦な形状のものであってもよい。
【0072】
<第3実施形態 第1変形例>
図22は、サーマルプリントヘッドA3の第1変形例を示す要部拡大断面図である。本例のサーマルプリントヘッドA31においては、空洞部14の副走査方向y寸法は、発熱部41の副走査方向y寸法と同じとされている。厚さ方向z視において発熱部41の副走査方向y端縁と空洞部14の副走査方向y端縁とは、互いにほぼ一致している。
【0073】
本実施形態によっても、過度な伝熱の抑制により、印字品質を向上させることができる。また、本実施形態から理解されるように、空洞部14の副走査方向y寸法は適宜設定可能である。
【0074】
<第3実施形態 第2変形例>
図23は、サーマルプリントヘッドA3の第2変形例を示す要部拡大断面図である。本例のサーマルプリントヘッドA32においては、空洞部14の副走査方向y寸法は、発熱部41の副走査方向y寸法よりも大きい。厚さ方向z視において空洞部14は、発熱部41から副走査方向yに延出している。
【0075】
本実施形態によっても、過度な伝熱の抑制により、印字のエネルギー効率と印字品質とを向上させることができる。また、本実施形態から理解されるように、空洞部14の副走査方向y寸法は適宜設定可能である。
【0076】
本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリントヘッドの製造方法の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0077】
〔付記1〕
基板と、
前記基板に支持され且つ主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され且つ前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
前記基板と前記抵抗体層との間に介在する絶縁層と、
を備え、
前記基板は、前記基板の厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なる空洞部を有する、サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記基板は、単結晶半導体からなる、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記基板は、Siからなる、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記基板は、前記絶縁層が形成された主面と、前記主面から突出し且つ主走査方向に延びる凸部を有し、
前記凸部は、前記主面からの距離が最も大きい頂部と、当該頂部に対して副走査方向に繋がり且つ前記主面に対して傾斜した第1傾斜部と、を有する、付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記発熱部は、前記頂部と前記第1傾斜部との境界を跨いで、前記頂部の副走査方向における少なくとも一部と前記第1傾斜部の副走査方向における少なくとも一部とに形成されている、付記4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記凸部は、前記頂部を挟んで副走査方向両側に位置する一対の前記第1傾斜部を有する、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記凸部は、前記一対の第1傾斜部を挟んで副走査方向両側に位置する一対の第2傾斜部を有する、付記6に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記発熱部は、前記第1傾斜部と前記第2傾斜部との境界を跨いで、前記第2傾斜部の副走査方向における少なくとも一部にさらに形成されている、付記7に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記発熱部の副走査方向における大きさよりも小さい、付記4ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記頂部の副走査方向における大きさよりも小さい、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記空洞部は、副走査方向視において前記第1傾斜部と重なる、付記4ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記発熱部の副走査方向における大きさよりも小さい、付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記空洞部の副走査方向における大きさは、前記発熱部の副走査方向における大きさと同じである、付記1ないし3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記絶縁層に対して前記複数の発熱部とは反対側に位置し且つ前記複数の発熱部の厚さ方向視において前記複数の発熱部と重なり、前記絶縁層よりも熱反射率が大きい反射層を備える、付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記反射層は、Cuを含む、付記14に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
単結晶半導体からなる基板材料に、主面から凹む複数の穴部を形成する穴部形成工程と、
前記複数の穴部の底側部分同士を連結する処理と、前記複数の穴部の開口側部分を塞ぐ処理と、を含み、前記基板材料内に空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記主面を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層上に抵抗体層を形成する抵抗体層形成工程と、
前記抵抗体層上に配線層を形成する配線層形成工程と、を備え、
前記抵抗体層のうち前記配線層から露出した部分であり且つ主走査方向に配列された複数の発熱部と前記空洞部とが、前記基板材料の厚さ方向視において重なる、サーマルプリントヘッドの製造方法。
【符号の説明】
【0078】
A1,A11,A2,A21:サーマルプリントヘッド
A22 :サーマルプリントヘッド
1 :第1基板
1A :基板材料
2 :保護層
3 :配線層
3A :導電膜
4 :抵抗体層
4A :抵抗体膜
5 :第2基板
7 :ドライバIC
8 :放熱部材
11 :第1主面
11A :主面
12 :第1裏面
12A :裏面
13,13A:凸部
14 :空洞部
14A :穴部
15 :反射層
18 :主板部
19 :絶縁層
21 :パッド用開口
31 :個別電極
32 :共通電極
41 :発熱部
51 :第2主面
52 :第2裏面
59 :コネクタ
61,62:ワイヤ
78 :保護樹脂
81 :第1支持面
82 :第2支持面
91 :プラテンローラ
130,130A:頂部
131 :第1傾斜部
132 :第2傾斜部
132A :傾斜部
151 :反射第1部
152 :反射第2部
153 :反射第3部
154 :反射第4部
311 :個別パッド
323 :連結部
324 :帯状部
410 :頂部
411 :第1部
412 :第2部
910 :中心
x :主走査方向
y :副走査方向
z :方向
α1,α2:角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23