(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】データ処理装置およびデータ処理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/06 20120101AFI20240821BHJP
G06Q 40/02 20230101ALI20240821BHJP
【FI】
G06Q20/06 300
G06Q40/02
(21)【出願番号】P 2020033425
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】523286071
【氏名又は名称】株式会社NTTデータ
(73)【特許権者】
【識別番号】597111590
【氏名又は名称】株式会社 横浜銀行
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 淳士
(72)【発明者】
【氏名】森 あかり
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】二木 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】島山 幸晴
(72)【発明者】
【氏名】河原 孝尚
【審査官】佐藤 光起
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-026821(JP,A)
【文献】特開2016-126793(JP,A)
【文献】特許第6633715(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに関連付けられるシステムアカウントをユーザ端末に発行する手段であって、前記システムアカウントは、任意の金融機関の口座識別子を示し、前記金融機関の口座識別子に含まれる店番号は、前記金融機関における仮想店舗の店番号を示す、手段と、
前記システムアカウントと第1の金額とを含む第1の振込データを銀行システムから受信し、前記システムアカウントに関連付けられる残高に前記第1の金額を加算し、前記第1の振込データに基づく入金データを生成する手段であって、前記第1の振込データは、前記金融機関におけるプール口座に入金された振込の振込データを示す、手段と、
チャージ依頼を前記ユーザ端末から受信する手段であって、前記チャージ依頼は、複数の電子マネー事業者候補の中から前記ユーザによって選択されたチャージ先の電子マネー事業者、チャージ先の個人アカウント、および第2の金額を含む、手段と、
前記チャージ依頼に含まれる前記第2の金額を前記チャージ先の電子マネー事業者の銀行アカウントに対してチャージする第1のチャージ指示、および前記第2の金額を前記銀行アカウントから前記チャージ先の個人アカウントに送金する第2のチャージ指示を
一括して送信する手段と
を備えたデータ処理装置。
【請求項2】
前記システムアカウントに関連付けられる残高の情報を格納する第1の格納手段と、
前記システムアカウントに関連付けられる前記入金データおよび出金データを格納する第2の格納手段と
をさらに備えた、請求項1のデータ処理装置。
【請求項3】
前記データ処理装置は、第1のシステムアカウントから第2のシステムアカウントに対する送金処理を行うようにさらに構成され、
前記送金処理は、
前記第1のシステムアカウントに関連付けられる前記第1の格納手段の残高の情報を送金額だけ減額し、前記送金額に関連付けられる前記出金データを前記第2の格納手段に格納することと、
前記第2のシステムアカウントに関連付けられる前記第1の格納手段の残高の情報を送金額だけ加算し、前記送金額に関連付けられる前記入金データを前記第2の格納手段に格納することと
によって実行される、請求項2のデータ処理装置。
【請求項4】
前記チャージ先の個人アカウントは、前記ユーザに関連付けられる、請求項1のデータ処理装置。
【請求項5】
前記チャージ先の個人アカウントは、前記ユーザとは異なる第2のユーザに関連付けられる、請求項1のデータ処理装置。
【請求項6】
データ処理装置によって実行されるデータ処理方法であって、
ユーザに関連付けられるシステムアカウントをユーザ端末に発行することであって、前記システムアカウントは、任意の金融機関の口座識別子を示し、前記金融機関の口座識別子に含まれる店番号は、前記金融機関における仮想店舗の店番号を示す、ことと、
前記システムアカウントと第1の金額とを含む第1の振込データを銀行システムから受信し、前記システムアカウントに関連付けられる残高に前記第1の金額を加算し、前記第1の振込データに基づく入金データを生成することであって、前記第1の振込データは、前記金融機関におけるプール口座に入金された振込の振込データを示す、ことと、
チャージ依頼を前記ユーザ端末から受信することであって、前記チャージ依頼は、複数の電子マネー事業者候補の中から前記ユーザによって選択されたチャージ先の電子マネー事業者、チャージ先の個人アカウント、および第2の金額を含む、ことと、
前記チャージ依頼に含まれる前記第2の金額を前記チャージ先の電子マネー事業者の銀行アカウントに対してチャージする第1のチャージ指示、および前記第2の金額を前記銀行アカウントから前記チャージ先の個人アカウントに送金する第2のチャージ指示を
一括して送信することと
を備えるデータ処理方法。
【請求項7】
ユーザに関連付けられる振込を電子マネーで受け取るためのシステムであって、
前記システムは、データ処理装置、銀行システム、および電子マネー事業者システムを備え、
前記データ処理装置は、
ユーザに関連付けられるシステムアカウントをユーザ端末に発行する手段であって、前記システムアカウントは、任意の金融機関の口座識別子を示し、前記金融機関の口座識別子に含まれる店番号は、前記金融機関における仮想店舗の店番号を示す、手段と、
前記システムアカウントと第1の金額とを含む第1の振込データを銀行システムから受信し、前記システムアカウントに関連付けられる残高に前記第1の金額を加算し、前記第1の振込データに基づく入金データを生成する手段であって、前記第1の振込データは、前記金融機関におけるプール口座に入金された振込の振込データを示す、手段と、
チャージ依頼を前記ユーザ端末から受信する手段であって、前記チャージ依頼は、複数の電子マネー事業者候補の中から前記ユーザによって選択されたチャージ先の電子マネー事業者、チャージ先の個人アカウント、および第2の金額を含む、手段と、
前記チャージ依頼に含まれる前記第2の金額を前記チャージ先の電子マネー事業者の銀行アカウントに対してチャージする第1のチャージ指示、および前記第2の金額を前記銀行アカウントから前記チャージ先の個人アカウントに対して送金する第2のチャージ指示を
一括して送信する手段と
を備え、
前記銀行システムは、
第2の振込データを受信する手段と、
前記第2の振込データに含まれる店番号が前記金融機関における仮想店舗の店番号を示すことを条件として、前記第2の振込データに基づいて前記プール口座に入金処理を行う手段と、
前記プール口座に入金処理が行われた前記第2の振込データに基づいて前記第1の振込データを生成し、前記データ処理装置に送信する手段と、
前記電子マネー事業者システムからの口振依頼に基づいて、前記プール口座の金額情報を減額し、前記電子マネー事業者システムに口振依頼結果を通知する手段と
を備え、
前記電子マネー事業者システムは、
前記第1のチャージ指示および前記第2のチャージ指示を前記データ処理装置から受信したことに応答して、前記銀行システムに前記口振依頼を送信する手段と、
前記口振依頼結果に応答して、前記第2の金額を前記銀行アカウントにチャージし、前記第2の金額を前記銀行アカウントから前記個人アカウントに送金する手段と
を備えた、システム。
【請求項8】
前記銀行アカウントから前記個人アカウントに送金する手段は、
前記銀行アカウントの残高に前記口振依頼結果に含まれる口振金額を加算した後、前記銀行アカウントの残高から前記口振金額を減額し、かつ前記個人アカウントの残高に前記口振金額を加算する処理を行うように構成される、請求項7のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置およびデータ処理方法に関する。より詳細に言えば、本発明は、被振込をユーザのシステムアカウントに関連付けられるバリューで受け取り、および受け取ったバリューを使用して所定の電子マネーのアカウントにチャージし、所定の宛先に送金し、所定の手段で現金化することが可能なデータ処理装置およびデータ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キャッシュレス化が進んでおり、現金の代替支払い手段として電子マネーが多く利用されるようになっている。電子マネーのような電子的支払手段は、日本人ばかりでなく、訪日外国人にも広く利用されるようになってきている。
【0003】
従来、賃金の支払いは、労働基準法および厚生労働省令により、手渡し、あるいは銀行口座への振込によって行われていた。このため、電子マネーによる給与支払いの構想はあったものの(特許文献1、2)、実現できていなかった。ところが、2018年12月、政府の国家戦略特区諮問会議が、現行法で認められていない電子マネーによる給与支払いを解禁する方針を打ち出した。このことが実現した場合、給与支払元企業が個人の電子マネーアカウントを指定して給与支払いを行うことにより、給与受取人は、直接的に給与を電子マネーとして受け取ることが現実に可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-157344号公報
【文献】特許第5141158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、多くの給与支払元企業は、給与支払手段として振込を利用しており、電子マネーによる給与支払いを行おうとすると、給与支払い元企業が給与支払いのためのシステムを電子マネーでのチャージを行えるように改修したり、新規にシステムを導入したりする必要がある。
【0006】
一方、給与支払い元企業がシステム改修や新規システム導入を行わないと、給与支払いを受けた個人が各自の口座から現金を引き出すなどして、各自で電子マネーのチャージを行い、電子マネー残高を加算する必要がある。このようなやり方は、ユーザ自身の手間がかかり、かつチャージ先の電子マネー事業者のシステムトラブルや倒産などが生じた場合に電子マネーが使用できなくなったりするなど、不都合な点が多い。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、給与支払元企業が従前の給与支払い手続きおよび給与支払いシステムを変更することなく、給与受取人が電子マネーで給与を受け取ることを実現するデータ処理装置およびデータ処理方法を提供することを目的とする。また、本発明は、給与受取人が受け取った給与などの入金データを利用して所望の電子マネーにチャージすることができるデータ処理装置およびデータ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様であるデータ処理装置は、
ユーザに関連付けられるシステムアカウントをユーザ端末に発行する手段であって、前記システムアカウントは、金融機関の口座識別子を示し、前記金融機関の口座識別子に含まれる店番号は、前記金融機関における仮想店舗の店番号を示す、手段と、
前記システムアカウントと第1の金額とを含む第1の振込データを銀行システムから受信し、前記システムアカウントに関連付けられる残高に前記第1の金額を加算し、前記第1の振込データに基づく入金データを生成する手段であって、前記第1の振込データは、前記金融機関における前記ユーザの口座に振り込まれない振込情報の内容を示す、手段と、
チャージ依頼を前記ユーザ端末から受信する手段であって、前記チャージ依頼は、チャージ先の電子マネー事業者、チャージ先の個人アカウント、および第2の金額を含む、手段と、
前記チャージ先の電子マネー事業者に関連付けられる銀行アカウントのIDで電子マネー事業者システムにログインし、前記チャージ先の個人アカウントに対して前記第2の金額をチャージする指示を送信する手段と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、給与支払元企業が従前の給与支払い手続きおよび給与支払いシステムを変更することなく、給与受取人が電子マネーで給与を受け取ることが可能となり、給与支払元企業は、電子マネーによる給与払いを導入する際のシステム改修が不要となる。
【0010】
本発明によれば、ユーザは、ユーザのシステムアカウントに関連付けられるバリューで受け取った給与を、どの電子マネー事業者が提供する電子マネーサービスで使用するかをユーザが選択可能になる。ユーザが受け取った給与などの振込額は、金融機関のプール口座に格納されており、データ処理装置10がシステムアカウントごとに残高管理をしているため、仮に電子マネー事業者が倒産したとしても、ユーザ自身の資産が棄損されるリスクを低減することができる。
【0011】
本発明によれば、銀行に口座開設をしていない者(例えば、外国人など)であっても、電子マネーで給与を受け取ることができるようになる。
【0012】
本発明によれば、ユーザの電子マネー事業者の個人アカウントへのチャージは、リアルタイム口振および銀行アカウントからの送金により実現するため、対象となる電子マネー事業者の給与電子マネー支払い対応状況に関係なく利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書において開示される実施形態の詳細な理解は、添付図面に関連して例示される以下の説明から得ることができる。
【
図1】本発明の実施形態に係るシステム全体の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るデータ処理装置10のシステム構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアカウント管理DB106のデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る残高管理107-1および明細管理107-2のデータ構造の一例を示す図である。
【
図5】本発明に係るシステムアカウント管理に関する処理を説明するフロー図である。
【
図6】アカウント管理DB106のデータ内容の一例を示す。
【
図7】本発明に係る振込受取処理を説明するフロー図である。
【
図8】S706の処理によって更新された残高管理107-1および明細管理107-2のデータ内容の一例を示す。
【
図9】本発明に係る電子マネーのチャージ処理を説明するフロー図である。
【
図10】本発明に係るデータ処理装置10内での送金処理を説明するフロー図である。
【
図11】本発明に係る、システムアカウントの残高の現金化処理を説明するフロー図である。
【
図12】本発明に係る、給与の前借処理を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書では、「銀行」とは、一般社団法人全国銀行協会(本明細書では「全銀協」と呼ぶことにする)によって付与された4桁の金融機関コードを有する金融機関(例えば、銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協系、ゆうちょ銀行、など)を意味するものとして使用する。
【0015】
本明細書では、「電子マネー」とは、貨幣価値をデジタル・データとしてICカードやインターネットに接続されたサーバに記録し、貨幣価値の授受を電子的に行う仕組み(広辞苑第七版)を意味し、電子マネーの概念には、チャージ可能な電子的支払手段が含まれるが、特定のサービスに限定されることはない。電子マネーによる決済は、ICカードのような物理的媒体を介して行われてもよく、ユーザ機器に格納された所定のアプリケーションを介して行われてもよく、あるいは、ユーザ機器が店頭の決済用コードを読み取るか、ユーザ機器に表示された決済用コードを店頭側の機器が読み取ることを介して行われてもよく、特に限定されることはない。
【0016】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るデータ処理装置10、銀行システム11、企業システム12、ユーザ端末13、および電子マネー事業者システム14を含むシステム全体の構成図である。
図1では、各要素は1つずつしか示されていないが、これらは複数存在し得る。
【0017】
図1に示されるように、データ処理装置10は、銀行システム11、ユーザ端末13、および電子マネー事業者システム14と相互に通信可能に接続される。銀行システム11は、データ処理装置10、企業システム12、および電子マネー事業者システム14と相互に通信可能に接続される。企業システム12は、銀行システム11と相互に通信可能に接続され、および任意選択でユーザ端末13と相互に通信可能に接続される。
【0018】
データ処理装置10は、ユーザ端末13からのシステムアカウント登録要求に応答して、銀行システム11に関連付けられるシステムアカウントをユーザ(従業員)に割り当て、割り当てたシステムアカウントをユーザ端末13に送信する。本明細書で、「システムアカウント」は、金融機関の口座識別子(すなわち、金融機関コード、店番号、預金種目、および口座番号)に相当し、かつデータ処理装置10にログインするためのユーザIDとして利用可能である。データ処理装置10にログインするためのユーザIDは、システムアカウントそのものであってもよく、あるいは、システムアカウントに関連付けられる任意のユーザIDであってもよい。システムアカウントに含まれる店番号は、金融機関における仮想店舗の店番号を示す。また、データ処理装置10は、ユーザ端末13から、各種依頼や指示を受信し、当該依頼や指示に関連する処理を実行し、関連する依頼や指示を対応するシステムに送信する。
【0019】
データ処理装置10は、ユーザのシステムアカウントに対する振込データ(本明細書で「第1の振込データ」と呼ぶこととする)を銀行システム11から受信し、第1の振込データに基づいて入出金管理データベース(DB)(
図2の入出金管理DB107)を更新する。第1の振込データは、ユーザの預金口座(金融機関に開設した実在口座)に振り込まれない振込情報の内容を示す。
【0020】
銀行システム11は、勘定系システムを有し、勘定系システムは、企業や個人の口座、銀行自身の管理口座、および本明細書で説明するプール口座を有する。プール口座は、仮想店舗宛ての振込金額を一括して格納しておく(プールする)口座である。銀行システム11は、受信した振込データに基づいて対応する口座への振込およびプール口座への入金処理を制御する。銀行システム11は、プール口座に入金された振込の振込データを第1の振込データとしてデータ処理装置10に送信する。銀行システム11は、電子マネー事業者システム14からのリアルタイム口振指示に応答して、プール口座の金額を更新し、更新結果を電子マネー事業者システム14に送信する。
【0021】
企業システム12は、従業員の勤怠管理を行って給与計算を行い、従業員に対する振込データを生成して銀行システム11に送信する。企業システム12は、従業員から振込先情報を電子的に受信するように構成されていてもよい。
【0022】
ユーザ端末13は、有線または無線環境において動作可能な任意のタイプのデバイスである。ユーザ端末13は、システムアカウント登録要求を送信して、銀行システム11に関連付けられるシステムアカウントを受信する。システムアカウントは、データ処理装置10にログインするためのユーザIDとして利用可能である。ユーザ端末13は、データ処理装置10にログインして、チャージ依頼や送金依頼などの、各種依頼や指示をデータ処理装置10に送信する。
【0023】
電子マネー事業者システム14は、ユーザに関連付けられる個人アカウントおよび銀行システム11に関連付けられる銀行アカウントを有する。電子マネー事業者システム14は、銀行アカウントに対する電子マネーのチャージ要求および銀行アカウントからユーザの個人アカウントに対する電子マネーのチャージ要求をデータ処理装置10から受信し、当該要求に応答して銀行システム11にリアルタイム口振指示を送信し、その結果に応じて銀行アカウントに対するチャージ、および銀行アカウントからユーザの個人アカウントに対する送金を行って、処理結果をデータ処理装置10に送信する。
【0024】
(システム構成)
図2は、本発明の実施形態に係るデータ処理装置10のシステム構成図である。
図2に示すように、データ処理装置10は、一般的なコンピュータと同様に、バス120などによって相互に接続された制御部101、主記憶部102、補助記憶部103、インターフェース(IF)部104、および出力部105を備える。データ処理装置10は、ファイル/データベースなどの形式で、アカウント管理DB106および入出金管理DB107を備える。
【0025】
制御部101は、中央処理装置(CPU)とも呼ばれ、データ処理装置10の各構成要素の制御やデータの演算を行い、また、補助記憶部103に格納されている各種プログラムを主記憶部102に読み出して実行する。主記憶部102は、メインメモリとも呼ばれ、受信した各種データ、コンピュータ実行可能な命令および当該命令による演算処理後のデータなどを記憶する。補助記憶部103は、ハードディスク(HDD)などに代表される記憶装置であり、データやプログラムを長期的に保存する際に使用される。
【0026】
図2の実施形態は、制御部101、主記憶部102および補助記憶部103を同一のコンピュータの内部に設ける実施形態について説明するが、他の実施形態として、データ処理装置10は、制御部101、主記憶部102および補助記憶部103を複数個使用することにより、複数のコンピュータによる並列分散処理を実現するように構成することもできる。また、他の実施形態として、データ処理装置10のための複数のサーバを設置し、複数サーバが一つの補助記憶部103を共有する実施形態にすることも可能である。
【0027】
IF部104は、他のシステムや装置との間でデータを送受信する際のインターフェースの役割を果たし、また、システムオペレータから各種コマンドや入力データ(各種マスタ、テーブルなど)を受け付けるインターフェースを提供する。出力部105は、処理されたデータを表示する表示画面や当該データを印刷するための印刷手段などを提供する。
【0028】
アカウント管理DB106は、ユーザのシステムアカウントに関連する情報を格納する。
図3は、本発明の実施形態に係るアカウント管理DB106のデータ構造の一例を示す図である。アカウント管理DB106は、金融機関コード301、店番号302、預金種目303、口座番号304、およびユーザ情報305を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他のデータ項目も含むことが可能である。
【0029】
金融機関コード301は、金融機関の識別子であり、全銀協によって各金融機関に割り振られた統一金融機関コードに相当する。店番号302は、当該金融機関ごとに予め定められた仮想店舗を示す識別子である。すなわち、店番号302は、当該金融機関の実際の店舗に付与された番号以外の番号、すなわち、仮想店舗に付与された番号を示す。預金種目303は、口座の預金種目(例えば、「普通」「当座」など)を示す。口座番号304は、ユーザに割り振られた口座番号である。ユーザ情報305は、ユーザの氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所、連絡先(例えば、電子メールアドレス)、ログインパスワード(PW)、1または複数の任意の電子マネー事業者システム14のユーザの個人アカウント情報、ユーザによって指定された個人アカウントへのチャージ指定日時などの情報を含むが、これら以外の情報を含むことも可能である。
【0030】
図2に戻って説明すると、入出金管理DB107は、ユーザのシステムアカウントに関連付けられるバリュー(すなわち、金銭的な価値に相当する情報)を格納する残高管理107-1および明細管理107-2を含む。残高管理107-1は、バリューの残高情報を格納する。明細管理107-2は、バリューの入出金明細情報を格納する。
【0031】
図4は、本発明の実施形態に係る残高管理107-1および明細管理107-2のデータ構造の一例を示す図である。残高管理107-1は、金融機関コード301、店番号302、預金種目303、口座番号304、および残高401を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他のデータ項目も含むことが可能である。金融機関コード301、店番号302、預金種目303、および口座番号304は、
図3を参照しながら上述した通りであるので説明を省略する。残高401は、ユーザのシステムアカウントに関連付けられるバリューの現在の残高情報を示す。
【0032】
明細管理107-2は、金融機関コード301、店番号302、預金種目303、口座番号304、取扱日411、入金額412、出金額413、差引残高414、および摘要415を含むことができるが、これらのデータ項目に限定されることはなく他のデータ項目も含むことが可能である。金融機関コード301、店番号302、預金種目303、および口座番号304は、
図3を参照しながら上述した通りであるので説明を省略する。取扱日411は、バリューに関する入出金データが発生した日付および時間情報を示す。入金額412は、バリューに対する入金データが発生した場合の入金額を示す。出金額413は、バリューに対する出金データが発生した場合の出金額を示す。差引残高414は、バリューに関する入出金データが発生した後の差引残高情報を示す。最新の差引残高414の値は、残高401の値と等しくなる。摘要415は、バリューに関する入出金データの摘要情報を示す。
【0033】
本発明の他の実施形態では、残高管理107-1および明細管理107-2を統合して1つのファイル/データベースとして構成することも可能である。
【0034】
(処理フロー:システムアカウント管理)
図5は、本発明に係るシステムアカウント管理に関する処理を説明するフロー図である。
図5の処理フローでは、振込を電子マネーで受け取ることを希望するユーザに対して、システムアカウントを発行する処理内容を説明する。
【0035】
S501にて、データ処理装置10は、システムアカウント登録要求をユーザ端末13から受信する。システムアカウント登録要求は、金融機関の識別子(金融機関コード)、およびユーザ情報(例えば、氏名、カナ氏名、性別、生年月日、住所、連絡先(例えば、電子メールアドレス)、ログインパスワード(PW)など)を含む。
【0036】
S502にて、データ処理装置10は、ユーザのシステムアカウント登録要求に応答して、金融機関の識別子に関連付けられるシステムアカウントを生成し、ユーザ端末13に送信する。システムアカウントは、金融機関の口座識別子(すなわち、金融機関コード、店番号、預金種目、および口座番号)に相当し、かつデータ処理装置10にログインするためのユーザIDとして利用可能である。例えば、システムアカウントは、金融機関コード301、店番号302、預金種目303、および口座番号304の情報を含む。店番号302は、金融機関における仮想店舗の店番号である。口座番号304は、ユーザに割り振られた当該金融機関の仮想店舗の口座番号であり、データ処理装置10は、重複しないように口座番号304をユーザに割り振る。データ処理装置10は、金融機関の仮想店舗ごとに、ユーザに割り振った口座番号304の情報を管理するテーブルを備えるように構成される。生成されたシステムアカウントは、アカウント管理DB106に格納される。
図6は、アカウント管理DB106のデータ内容の一例を示す。
【0037】
上述の処理により、システムアカウントの発行が完了する。これ以後、ユーザは、システムアカウントをユーザIDとして利用して、データ処理装置10にログインし、データ処理装置10によって提供される各種サービスを利用することができる。また、データ処理装置10は、ユーザ端末13からの要求に応答して、システムアカウント情報の更新処理および削除処理を行うことができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、上記のS501およびS502の処理の際に、あるいはその後に、データ処理装置10は、総務省によって提供されている公的個人認証サービスなどとの連携により、マイナンバーカードや運転免許証などを利用した電子本人確認処理を行うように構成されることができる。
【0039】
ユーザは、システムアカウントを給与支払元企業に給与受取用口座の情報として提供することができる。上述したように、システムアカウントは、全銀協によって定められている口座体系に一致しているため、企業システム12がシステムアカウントを給与振込用口座として登録しても問題なく利用でき、給与支払元企業は、企業システム12を改修する必要はない。システムアカウントを給与振込用口座として登録することは、企業システム12のオペレータによって行われてもよく、あるいは、ユーザ端末13から行われてもよく、特に限定されない。
【0040】
(処理フロー:振込受取処理)
図7は、本発明に係る振込受取処理を説明するフロー図である。
図7の処理フローでは、自行内での給与振込を一例として説明するが、本発明の技術思想は、ユーザに対する、給与振込以外の振込、および他行からの振込に対しても適用可能である。本処理フローの前提として、ユーザのシステムアカウントが給与振込用口座として企業システム12に登録されているものとして説明する。
【0041】
S701にて、企業システム12は、ユーザを含む従業員の給与計算を行い、振込データを銀行システム11に送信し、銀行システム11は、振込データを受信する。振込データは、全銀協のフォーマットに従った、従来と同じフォーマットのデータである。電子マネーで給与を受け取ることを望んでいるユーザの振込データについては、上述したシステムアカウントが被振込口座情報として使用されている。
【0042】
S702にて、銀行システム11は、受信した振込データに含まれる店番号が仮想店舗を示すかどうかを判定する。銀行システム11は、仮想店舗の店番号を格納するテーブルを有していてよい。読み出した店番号が仮想店舗を示す場合、S703に処理が進み、示さない場合、S704に処理が進む。
【0043】
S703にて、銀行システム11は、振込データに基づいて、振込元企業口座からプール口座に入金処理を行う。プール口座は、仮想店舗宛ての振込金額を一括して格納しておく(プールする)口座である。本発明の他の実施形態では、プール口座を口座番号ごと、すなわち、システムアカウントごとに分けて管理するように構成することも可能である。
【0044】
S704にて、銀行システム11は、振込データに基づいて、振込元企業口座からユーザの口座に対する入金処理を行い、振込処理結果を企業システム12に送信する。所定の理由により振込不可となった場合には、通常の手続に従い、組戻し処理や付替による振替入金などの事後処理が行われる。
【0045】
S705にて、銀行システム11は、プール口座に入金処理が行われた振込データ(すなわち、プール口座に対する入金明細データ)に基づいて、第1の振込データを生成し、データ処理装置10に送信する。データ処理装置10は、銀行システム11から第1の振込データを受信する。
【0046】
S706にて、データ処理装置10は、受信した第1の振込データに含まれる金融機関コード、店番号、預金種目、および口座番号(すなわち、システムアカウント)を検索キーとして残高管理107-1の対応するシステムアカウントのデータを特定し、第1の振込データの金額を残高401の金額に加算する。データ処理装置10は、第1の振込データに基づいて入金データを生成し、明細管理107-2に追加する。
図8は、S706の処理によって更新された残高管理107-1および明細管理107-2のデータ内容の一例を示す。この例では、従前の残高が0だったシステムアカウントに対して30万円の給与入金がなされたことを示している。なお、システムアカウントのデータが特定できない場合、データ処理装置10は、銀行システム11に通知し、組戻し処理や付替による振替入金などの事後処理を行うよう依頼する。
【0047】
本発明の一実施形態では、データ処理装置10は、ユーザ端末13からの要求に応答して、ログインユーザのシステムアカウントに関連付けられる残高管理107-1および明細管理107-2のデータをユーザ端末13に送信することができ、これにより、ユーザは、自身に振り込まれた金額の明細および残高を照会することができるようになる。
【0048】
本発明の一実施形態では、給与などの振込額の一部をシステムアカウントの残高に加算し、残りをユーザの預金口座などに入金することができる。かかる場合、データ処理装置10は、ユーザ端末13から、システムアカウントへの入金額を指定する命令を受け取り、銀行システム11に当該入金額を送信する。銀行システム11は、ユーザのシステムアカウント宛ての振込額のうち入金額に相当する金額を、プール口座に入金し、残りの金額をユーザの預金口座に入金する処理を行うことができる。プール口座に入金された金額は、
図7を参照しながら説明したように、第1の振込データとしてデータ処理装置10に送信され、システムアカウントの残高に加算される。ユーザの預金口座の情報は、ユーザ端末13からデータ処理装置10に送信され、データ処理装置10から銀行システム11に送信される。
【0049】
(処理フロー:電子マネーのチャージ処理)
図9は、本発明に係る電子マネーのチャージ処理を説明するフロー図である。なお、「チャージ」と「送金」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0050】
S901にて、データ処理装置10は、ユーザ端末13からのアクセスに応答して、チャージ先の候補となる複数の電子マネー事業者をユーザ端末13に送信する。ユーザは、ユーザ端末13の画面上にて自らのシステムアカウントの残高情報を参照しながら、チャージ先の電子マネーの種類(電子マネー事業者)、チャージ先の個人アカウント、およびチャージ金額を入力する。ユーザ端末13は、チャージ先の電子マネー事業者、チャージ先の個人アカウント、およびチャージ金額を含むチャージ依頼をデータ処理装置10に送信する。データ処理装置10は、チャージ依頼をユーザ端末13から受信する。チャージ金額に指定可能な金額は、ログインユーザのシステムアカウントに関連付けられている残高管理107-1の残高401の金額以下である。
【0051】
S902にて、データ処理装置10は、受信したチャージ依頼に含まれているチャージ先の電子マネー事業者の銀行アカウントを識別し、識別した銀行アカウントのIDおよびPWを利用して対応する電子マネー事業者システム14にログインする。データ処理装置10は、チャージ依頼に含まれるチャージ金額を銀行アカウントに対してチャージする第1のチャージ指示、および、チャージ金額を銀行アカウントからユーザの個人アカウントに対して送金する第2のチャージ指示を電子マネー事業者システム14に送信する。第1のチャージ指示および第2のチャージ指示は、一括して送信されてよく、両者をまとめて「チャージ指示」と呼んでもよい。データ処理装置10は、チャージ先の電子マネー事業者の銀行アカウントおよびPWの情報を有するように構成されていてよい。
【0052】
S903にて、電子マネー事業者システム14は、チャージ指示に応答して、銀行アカウントに関連付けられる銀行システム11に対して、チャージ指示に含まれる金額のリアルタイム口振依頼を送信する。銀行アカウントは、電子マネー事業者における各銀行のアカウントであり、ログインした銀行アカウントによってリアルタイム口振依頼の送信先である銀行システム11が特定される。
【0053】
銀行システム11は、リアルタイム口振依頼に応答して、プール口座から該当金額を減額する処理を行い、その処理結果(正常または異常)を電子マネー事業者システム14に送信する。
【0054】
S904にて、電子マネー事業者システム14は、銀行システム11から受信した処理結果が正常を示す場合、該当金額を銀行アカウントの残高に加算する。この処理により、銀行システム11のプール口座から、電子マネー事業者システム14の銀行アカウントへの送金が行われたことになる。次に、電子マネー事業者システム14は、チャージ指示によって示されているユーザの個人アカウントに対して、該当金額を加算するとともに、銀行アカウントの残高から該当金額を減算する。この処理により、電子マネー事業者システム14内の銀行アカウントからユーザの個人アカウントに対する送金が行われたことになる。
【0055】
S905にて、電子マネー事業者システム14は、チャージ指示の処理結果をデータ処理装置10に送信し、データ処理装置10は、チャージ指示の処理結果を受信する。データ処理装置10は、チャージ指示の処理結果が成功裏に処理が完了したことを示すものである場合、ユーザのシステムアカウントの残高401を減額するとともに、出金データを明細管理107-2に追加する。
【0056】
S906にて、データ処理装置10は、チャージ依頼に対する処理結果をユーザ端末13に送信する。
【0057】
上述の処理では、データ処理装置10は、ユーザ端末13からの依頼に応答して、指定された電子マネーへのチャージを行うように構成されていたが、本発明の他の実施形態では、所定の設定条件に基づいて、自動でチャージ処理を行うように構成されることも可能である。
【0058】
一実施形態では、データ処理装置10は、ユーザ端末13からチャージ指定日時の情報をさらに受け取ることにより、上述したチャージ処理を指定日時に実行するように構成されることができる。また、他の実施形態では、データ処理装置10は、
図7を参照しながら説明したような、給与などの振込があったことをトリガーとして、チャージ処理を実行するように構成されることができる。いずれの場合であっても、ユーザ端末13が、上述したチャージ依頼のデータとともに、指定日時あるいはトリガーを事前に指定することにより、データ処理装置10は、ユーザからの都度のチャージ依頼を受け取ることなく、自動でチャージ処理を実行することができるようになる。
【0059】
本発明の他の実施形態では、ユーザが他人の個人アカウントに対して送金を行うことも可能である。かかる場合、S901にて説明したチャージ依頼にチャージ先の電子マネー事業者、チャージ先の他人の個人アカウント、およびチャージ金額を含めるようにすればよい。すなわち、個人アカウントをユーザ自身のものとするか、他人の個人アカウントとするかに応じて、自身の電子マネーへのチャージを行うか、他人の電子マネーへの送金を行うかを制御することができる。
【0060】
本発明の他の実施形態では、チャージ先の電子マネーの種類(電子マネー事業者)は、地域通貨であってもよく、あるいは任意のポイントサービスであってもよい。かかる場合、システムアカウントの残高と地域通貨やポイントとの間の交換比率は、自治体や金融機関などによって任意に決定されることができる。
【0061】
(処理フロー:データ処理装置10内での送金処理)
上記では、チャージ依頼に含まれる個人アカウントにユーザあるいは他人の個人アカウントを設定することにより、任意の電子マネーを指定した送金処理を行うことを説明したが、本発明の他の実施形態では、データ処理装置10内で、複数のシステムアカウント同士の間で送金を行うことも可能である。
【0062】
図10は、本発明に係るデータ処理装置10内での送金処理を説明するフロー図である。本処理フローにより、データ処理装置10によってシステムアカウントを発行されたユーザ同士の間で、送金を行うことができる。すなわち、複数のユーザの残高管理107-1および明細管理107-2の値を更新することにより、複数のユーザ間で送金処理を行うことができる。なお、本処理フローの前提として、送金先のシステムアカウントに関連付けられるユーザの電子本人確認処理が成功裏に完了しているものとする。なお、送金を行うことが可能なのは、異なるユーザ間に限定されることはなく、同一のユーザのシステムアカウント同士の間でも行うことができ、これにより、ユーザは、自身への振込額を2つのシステムアカウントに分けて受け取ることができるようになる。
【0063】
S1001にて、データ処理装置10は、ユーザ端末13からの要求に応答して、送金画面をユーザ端末13に表示させる。ユーザは、送金画面において、送金先のシステムアカウントおよび送金額を指定し、送金ボタンを押下する。データ処理装置10は、送金先のシステムアカウントおよび送金額を含む送金指示をユーザ端末13から受信する。なお、送金元は、ログインしたユーザのシステムアカウントである。
【0064】
S1002にて、データ処理装置10は、受信した送金指示に含まれる送金先のシステムアカウント(すなわち、金融機関コード301、店番号302、預金種目303、および口座番号304)に基づいて、残高管理107-1を検索して対応するユーザのシステムアカウントが存在するかどうかを判定する。存在する場合には、S1003に処理が進み、一方、存在しない場合には、S1004に処理が進む。
【0065】
S1003にて、データ処理装置10は、送金指示に含まれる送金額を、送金元の銀行システム11のプール口座から送金先の銀行システム11のプール口座に対して振込する振込依頼を送金元の銀行システム11に送信し、振込処理完了メッセージを受信する。振込処理完了メッセージを受信したことに応答して、データ処理装置10は、送金元システムアカウントの残高管理107-1の残高401から送金指示に含まれる送金額を減算するとともに、対応する出金明細データを明細管理107-2に追加する。データ処理装置10は、送金先システムアカウントの残高管理107-1の残高401に送金指示に含まれる送金額を加算するとともに、対応する入金明細データを明細管理107-2に追加する。これらの処理により、複数のシステムアカウントの間で送金処理を実現することができるようになる。なお、送金元と送金先の金融機関が同一の場合、プール口座間の振込は不要なため、この処理は省略される。
【0066】
S1004にて、データ処理装置10は、送金先のシステムアカウントが存在しないことを示すメッセージをユーザ端末13に送信する。
【0067】
(処理フロー:システムアカウントの残高の現金化処理)
図11は、本発明に係る、システムアカウントの残高の現金化処理を説明するフロー図である。現金化処理は、大きく分けて2つある。1つは、ユーザの預金口座に対する入金処理を行うことによって現金化処理を行うことであり、もう1つは、ATMからの出金を可能にする処理である。
【0068】
S1101にて、データ処理装置10は、ユーザ端末13からの要求に応答して、現金化方法の選択画面をユーザ端末13に表示させ、ユーザに現金化方法を選択させる。選択画面は、ユーザの預金口座への入金、あるいはATMからの出金を選択できるように構成される。データ処理装置10は、ユーザによって選択された現金化方法が、預金口座への入金であるのか、あるいはATMからの出金であるのかを判定する。預金口座への入金である場合、S1102に処理が進み、一方、ATMからの出金である場合、S1110に処理が進む。
【0069】
S1102にて、データ処理装置10は、ユーザ端末13から、振込先口座情報および入金額を含む振込出金指示を受信する。振込先口座情報は、ユーザの任意の預金口座を識別する情報である。
【0070】
S1103にて、データ処理装置10は、振込出金指示に基づいて、プール口座からユーザの預金口座に対する振込依頼を銀行システム11に送信する。銀行システム11は、振込依頼に従って振込処理を行い、振込結果をデータ処理装置10に送信する。
【0071】
S1104にて、データ処理装置10は、銀行システム11から受信した振込結果が、処理が成功裏に完了したことを示す場合、ユーザのシステムアカウントに関連付けられる残高管理107-1の残高401から振込結果に含まれる振込額を減算するとともに、対応する出金明細データを明細管理107-2に追加する。その後、データ処理装置10は、ユーザの預金口座に対する振込が成功裏に完了したことを示すメッセージをユーザ端末13に送信する。一方、銀行システム11から受信した振込結果が、処理が成功裏に完了したことを示さない場合、データ処理装置10は、ユーザの預金口座に対する振込が失敗したことを示すメッセージをユーザ端末13に送信する。
【0072】
これらの処理により、ユーザは、システムアカウントの残高を自らの口座に入金することができるため、現金として利用することができるようになる。上記の実施形態では、データ処理装置10が、ユーザ端末13から振込出金指示を受信したことに応じて、即座に振込処理を行うことを説明したが、本発明の他の実施形態では、データ処理装置10は、振込出金指示を先日付で行う(例えば、5営業日後に行う)ように構成されてもよく、あるいは、給与などの振込があったことをトリガーとして、振込処理を実行するように構成されてもよい。
【0073】
S1110にて、データ処理装置10は、ユーザ端末13から、ATM出金額と金融機関を指定したATM出金依頼を受信する。
【0074】
S1111にて、データ処理装置10は、指定された金融機関の銀行システム11に、ATM出金額を含むATM出金処理依頼を送信する。銀行システム11は、ATM出金処理依頼に応答して、プール口座からATM出金口座(不図示)にATM出金額を資金移動するとともに、ATM出金依頼に関連付けられるATM出金明細番号を発行し、データ処理装置10に送信する。ATM出金口座は、ATM出金明細番号および出金額の情報を含む。
【0075】
S1112にて、データ処理装置10は、ATM出金明細番号をユーザ端末13に送信する。
【0076】
このような処理を行うことにより、ユーザは、ユーザ端末13に表示されたATM出金明細番号を出金額とともに当該金融機関のATMにて入力し、現金を得ることができるようになる。出金額は、ユーザしか知り得ないため、パスワードの代替物として使用され得る。本発明の一実施形態では、ATM出金明細番号に有効期限を設けるように構成されてもよい。例えば、発行日から1週間以内にATMから出金されなかった場合、ATMからの出金はできなくなり、当該金額は、ATM出金口座からプール口座に資金移動され、ATM出金口座から該当データが削除される。
【0077】
(処理フロー:給与の前借処理)
図12は、本発明に係る、給与の前借処理を説明するフロー図である。
【0078】
S1201にて、データ処理装置10は、ユーザ端末13から、前借金額を含む前借依頼を受信する。
【0079】
S1202にて、データ処理装置10は、前借依頼を受信したことに応答して、ユーザのシステムアカウントに関連付けられる明細管理107-2のうち、毎月の入金額を取得し、予め定められた条件に基づいて、ユーザの与信額を決定する。また、データ処理装置10は、外部の信用情報機関システムにアクセスし、当該ユーザの信用情報を取得した上で、与信額を決定するように構成されてもよい。決定された与信額は、ユーザ情報305に格納されてもよい。
【0080】
S1203にて、データ処理装置10は、前借金額が決定された与信額の範囲内である場合に、前借指示を銀行システム11に送信する。与信額の範囲内でない場合、データ処理装置10は、前借不可のメッセージをユーザ端末13に送信する。
【0081】
S1204にて、銀行システム11は、前借指示に応答して、銀行管理口座(銀行自身の口座)からプール口座に資金移動し、プール口座に対する入金処理の入金明細データに基づいて第1の振込データを生成し、データ処理装置10に送信する。銀行システム11は、前借を行ったユーザのシステムアカウントを記憶しておく。
【0082】
データ処理装置10は、S706で説明した通り、第1の振込データの金額をユーザに関連付けられる残高管理107-1の残高401の金額に加算する。データ処理装置10は、第1の振込データに基づいて明細管理107-2にデータを追加する。このような処理により、ユーザは、金融機関から与信額の範囲内で給与の前借をすることができる。
【0083】
S1205にて、銀行システム11は、前借を行ったユーザのシステムアカウント宛ての後続の振込が発生した場合、前借金額を相殺した後の金額についてプール口座に入金することにより、資金を回収することができる。相殺される前借金額は、所定の条件の下、利息を含んでもよい。
【0084】
以上、例示的な実施形態を参照しながら本発明の原理を説明したが、本発明の要旨を逸脱することなく、構成および細部において変更する様々な実施形態を実現可能であることを当業者は理解するだろう。すなわち、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施態様をとることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 データ処理装置
11 銀行システム
12 企業システム
13 ユーザ端末
14 電子マネー事業者システム
101 制御部
102 主記憶部
103 補助記憶部
104 インターフェース(IF)部
105 出力部
106 アカウント管理DB
107 入出金管理DB
107-1 残高管理
107-2 明細管理107-2