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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】無人航空機を用いた荷物配送システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/083 20240101AFI20240821BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240821BHJP
   B64D 9/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G06Q10/083
B64C39/02
B64D9/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020132722
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029387
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】502312719
【氏名又は名称】株式会社愛媛新聞社
(73)【特許権者】
【識別番号】591117413
【氏名又は名称】株式会社菊池製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】520291537
【氏名又は名称】株式会社斎藤工業
(74)【代理人】
【識別番号】100180080
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 幸男
(72)【発明者】
【氏名】三輪 昌史
(72)【発明者】
【氏名】谷川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 英臣
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 勇一
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102257(JP,A)
【文献】特開2011-072376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0103429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B64C 39/02
B64D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を飛行配送するための無人航空機と、前記荷物の発送側で操作される発送側端末装置と、前記荷物の受取側で操作される受取側端末装置であってネットワークを介して前記発送側端末装置と相互に通信可能に接続される受取側端末装置とを含む荷物配送システムであって、
前記発送側端末装置が、前記無人航空機の飛行開始に関するコマンドである飛行開始コマンドを送信する飛行開始コマンド送信部を備え、
前記受取側端末装置が、前記発送側端末装置から送信された前記飛行開始コマンドを前記無人航空機のコントローラに対し中継して送信するネットワーク中継部を備えている、荷物配送システム。
【請求項2】
前記受取側端末装置が、前記無人航空機の飛行開始を要求する通知である飛行開始要求を前記ネットワークを介して前記発送側端末装置に送信する飛行開始要求送信部を備えている、請求項1に記載の荷物配送システム。
【請求項3】
前記発送側端末装置が、前記受取側端末装置から送信されてくる前記飛行開始要求の受信に基づいて前記飛行開始コマンドを送信するよう構成されている、請求項2に記載の荷物配送システム。
【請求項4】
荷物を飛行配送するための無人航空機と、前記荷物の発送側で操作される発送側端末装置と、前記荷物の受取側で操作される受取側端末装置であってネットワークを介して前記発送側端末装置と相互に通信可能に接続される受取側端末装置とを含むシステムにおいて実行される荷物配送方法であって、
前記無人航空機を飛行させて所定の荷物を前記発送側から前記受取側に配送する配送プロセスと、
前記受取側が前記荷物を受け取った後、前記無人航空機を前記発送側へ帰還させる帰還プロセスとを含み、
前記帰還プロセスのステップが、
前記受取側端末装置が、前記受取側の操作に基づいて、前記無人航空機の飛行開始を要求するコマンドである飛行開始要求を前記ネットワークを介して前記発送側端末装置に送信するステップと、
前記発送側端末装置が、前記飛行開始要求の受信に基づいて、前記無人航空機の飛行開始に関する飛行開始コマンドを前記ネットワークを介して前記受取側端末装置に送信するステップと、
前記受取側端末装置が、前記発送側端末装置から送信された前記飛行開始コマンドを前記無人航空機のコントローラに対し中継して送信するステップと
を含む、荷物配送方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン等の小型の無人航空機を用いた荷物配送システム、及び荷物無人飛行配送システムにおいて実行される配送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小口輸送の非効率性やCO排出量の削減を図るため、ドローン等の小型の無人航空機を使用した荷物配送システムの実用化が検討されている。一方で、荷物の無人配送に際しては、発送側と受取側との間の空域で無人航空機を補助者なしでいわゆる「目視外飛行」させることになる。そのため、無人飛行配送サービスの運営には、機体自体の信頼性のみならず、無人航空機を飛ばす側(具体的には操縦者又は配送サービス事業者)において安全性を十分確保するための重い飛行管理責任が生じることとなる。
【0003】
無人航空機を用いた荷物の配送においては、いうまでもなく、受取側に荷物を配達した後に、無人飛行機を発送側に帰還させる必要がある。しかし、一旦、着地した無人航空機を離陸・飛行させる際の操作や安全性の確保に係る責任全般を、配送サービスを受ける一般のユーザに強いることは現実的ではない。このような問題に関連して、例えば特許文献1には、無人航空機に搭載されたカメラで撮影した周辺画像やセンサで計測された気圧・風速等の気候に関するデータから帰還に適した環境であると判断した場合に飛行を開始させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-22309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、無人航空機の安全な飛行運用を確保しつつ、荷物を受け取る側である一般ユーザの責任や負担を軽減できるようにした荷物配送システム及び荷物配送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、荷物を飛行配送するための無人航空機と、前記荷物の発送側で操作される発送側端末装置と、前記荷物の受取側で操作される受取側端末装置であってネットワークを介して前記発送側端末装置と相互に通信可能に接続される受取側端末装置とを含む荷物配送システムであって、前記発送側端末装置が、前記無人航空機の飛行開始に関するコマンドである飛行開始コマンドを送信する飛行開始コマンド送信部を備え、前記受取側端末装置が、前記発送側端末装置から送信された前記飛行開始コマンドを前記無人航空機のコントローラに対し中継して送信するネットワーク中継部を備えている、荷物配送システムである。
【0007】
荷物配送システムは、前記受取側端末装置が、前記無人航空機の飛行開始を要求する通知である飛行開始要求を前記ネットワークを介して前記発送側端末装置に送信する飛行開始要求送信部を備えていることが好ましい。
【0008】
また、荷物配送システムは、前記発送側端末装置が、前記受取側端末装置から送信されてくる前記飛行開始要求の受信に基づいて前記飛行開始コマンドを送信するよう構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、荷物を飛行配送するための無人航空機と、前記荷物の発送側で操作される発送側端末装置と、前記荷物の受取側で操作される受取側端末装置であってネットワークを介して前記発送側端末装置と相互に通信可能に接続される受取側端末装置とを含むシステムにおいて実行される荷物配送方法であって、前記無人航空機を飛行させて所定の荷物を前記発送側から前記受取側に配送する配送プロセスと、前記受取側が前記荷物を受け取った後、前記無人航空機を前記発送側へ帰還させる帰還プロセスとを含み、前記帰還プロセスのステップが、前記受取側端末装置が、前記受取側の操作に基づいて、前記無人航空機の飛行開始を要求するコマンドである飛行開始要求を前記ネットワークを介して前記発送側端末装置に送信するステップと、前記発送側端末装置が、前記飛行開始要求の受信に基づいて、前記無人航空機の飛行開始に関する飛行開始コマンドを前記ネットワークを介して前記受取側端末装置に送信するステップと、前記受取側端末装置が、前記発送側端末装置から送信された前記飛行開始コマンドを前記無人航空機のコントローラに対し中継して送信するステップとを含む、荷物配送方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無人航空機を用いた荷物配送サービスの運用において、荷物を受け取る側の責任や負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による荷物配送システムの概略構成を示す図である。
図2】ドローンのシステム構成を説明するためのブロック図である。
図3】配送プロセスにおける各要素機器間の通信プロトコルを示すフローチャートである。
図4】帰還プロセスにおける各要素機器間の通信プロトコルを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、所定の荷物を無人航空機に搭載して発送側から受取側に飛行配送する、本発明に係る荷物配送システムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による荷物配送システムの概略構成を示す図である。荷物配送システムは、荷物を飛行配送するための無人航空機であるドローン10と、荷物の発送側で操作される発送側端末装置20と、荷物の受取側で操作される受取側端末装置30とを構成要素機器としている。発送側端末装置20と受取側端末装置30とは広域のネットワーク40を介して相互に通信可能に接続される。ネットワーク40は、例えばインターネット、固定電話回線網、携帯電話のキャリア回線網等を利用することができる。
【0013】
また、発送側端末装置20及び受取側端末装置30のぞれぞれは、ドローン10との相互方向の無線通信を確立し、そしてネットワーク40との接続を中継するネットワーク中継部21、31を有している。ネットワーク中継部21、31は、具体的に例えばWi-Fi又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に適合したルータを用いることができる。
【0014】
図2は、本配送システムに使用されるドローン10のシステム構成を説明するためのブロック図である。ドローン10は、回転翼であるローターシステム120と、ローターシステム120を駆動制御するよう構成されたフライトコントローラ110とを備えている。ローターシステム120は、具体的には例えば4個のDCブラシレスモータ又はステッピングモーター(以下、単に「モーター」という。)と、各モーターに直結する複数枚のプロペラ(羽根)から構成される。ローターシステム120の各モーターは、ESC(Electric Speed Controller)121により回転数が制御される。
【0015】
フライトコントローラ110は、オートパイロット機能を実現するためガイダンスシステム及びナビゲーションシステムを備えている。そのために、フライトコントローラ110には、IMU(Inertial Measurement Unit)130、3軸方位センサ(電子コンパス)141、GPS(Global Positioning System)142、高度(気圧)センサ143が接続されている。IMU130は、3軸周りにおける角速度を検知可能なジャイロセンサ131と、3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサ132を搭載している。すなわち、IMU130と3軸方位センサ141とによって、ドローン10の姿勢方位基準装置(AHRS; Attitude Heading Reference)が構成されている。
【0016】
また、ドローン10のフライトコントローラ110には、地上からの有視界飛行操縦を行うためのリモートコントロースシステム160や、離陸及び/又は着陸の際の安全を確認するため機体周囲を撮影可能なカメラ150を備えてもよい。
【0017】
本実施形態によるドローン10は、後述する荷物配送通信プロトコルに従って荷物の配送ミッションを実行するための制御装置であるコンパニオンマイコン111を搭載している。コンパニオンマイコン111に備えられる記憶部112には、発送側情報、受取側情報、航路マップ情報等が予め記憶されている。
【0018】
発送側情報は、例えば、荷物の発送元である例えば販売店の位置情報(緯度・経度)、発送元の名称又はID、配送スケジュール(発送時刻、配達時刻、帰還時刻等)、伝票情報(荷物の内容、配達先情報等)の情報を含む。受取側情報は、荷物の配達先の位置情報(緯度・経度)、名称又はID、配達スケジュール(発送時刻、配達時刻等)、伝票情報(荷物の内容、発送元情報等)を含む。例えば共通する伝票情報に基づいて、発送側情報と受取側情報とが関連付けられている。
【0019】
航路マップ情報は、荷物の発送元(発送側)を中心にした想定される配送範囲をカバーする地図情報である。このような地図情報には、無人航空機の飛行が制限されているエリアや、航行に支障や影響を及ぼすおそれがある構造物等(例えば橋梁、高層ビル、高圧送電線等)を避けるウェイポイント情報が予め記載されている。
【0020】
コンパニオンマイコン111には、上述のネットワーク中継部21、31の通信規格に適合した無線LANアダプタ113が接続されている。ドローン10は、無線LANアダプタ113を介して、発送側端末装置20、受取側端末装置30との間で制御コマンドやデータの取り交わしを行う。コンパニオンマイコン111には、また、荷物の配達箱11のロック/アンロックするためのケースロック114が接続されている。
【0021】
図1に示した荷物配送システムにおいて、発送側端末装置20及び受取側端末装置30は、マイコンを搭載した専用端末装置であってもよいが、本システムの配送サービス事業者が提供するアプリケーションソフトをダウンロードして動作するパーソナルコンピュータ、タブレット端末又はスマートフォン等の汎用のコンピュータ装置であってもよい。また、ネットワーク中継部21、31は、図1に例示する外付けの装置以外にも、CPUボードに組み込まれた内蔵デバイスであってもよい。
【0022】
発送側端末装置20は、無人飛行配送のオペレーション中に、例えば図1に示すような「発送通知」、「発送開始」、「到着」、「帰還」等の現在の動作状況(ステイタス)を、ランプボタン22、23、24、25の点灯により表示可能なタッチパネル20Aを備えている。同様に、受取側端末装置30は、例えば図1に示すような「発送了承」、「発送」、「到着通知」、「帰還開始」等の動作状況を、ランプボタン32、33、34、35の点灯により表示可能なタッチパネル30Aを備えている。
【0023】
なお、本実施形態において、タッチパネル20A、30Aに表示されたランプボタン22、23、24、25、32、33、34、35が白に点灯したときは、対応する操作の操作入力待ち状態であることを示し、緑に点灯したときには対応する動作状況のステイタスを示すものとする。
【0024】
上述の荷物配送システムにおいて実行される荷物配送方法は、ドローン10、発送側端末装置20及び受取側端末装置30の各要素機器間のネットワーク40を介した通信連携により実現される。以下、フローチャートを参照しながら、本システムにおける荷物配送方法の具体例を説明する。
【0025】
ドローン10による荷物の無人飛行配送サービスは、荷物を発送元(例えば荷物の販売店又は発送所)から配達先(例えば荷物を購入した顧客)に配送する配送プロセスと、受取側が荷物を受け取った後、ドローン10を発送側へ帰還させる帰還プロセスとを含む。なお、以下の説明において「発送側」とは、荷物の発送元で無人飛行配送サービスを提供する側の者(人間)をいい、「受取側」とは、荷物の配達先で無人飛行配送サービスを受ける側の者(人間)をいう。
【0026】
図3は、配送プロセスにおける各要素機器間の通信プロトコルを示すフローチャートである。先ず、発送元で、ドローン10のバッテリーが充電され、所定の荷物が配達箱11に収容される等の発送飛行開始の準備が完了すると、発送側端末装置20は、タッチパネル20Aの発送通知ランプボタン22を白に点灯する(ステップS11)。この状態で発送側が、点灯した発送通知ランプボタン22をタッチ操作又はクリック操作(以下、これらの操作を単に「操作」という。)すると(ステップS12)、発送側端末装置20は、受取側端末装置30に対し、ドローン10による発送を開始してもよいかを打診する発送通知を送信する(ステップS13)。なお、荷物の配達先にある受取側端末装置30のネットワークアドレスは、発送側端末装置20に登録された当該荷物の配達伝票等のデータ情報内において紐付かれている。
【0027】
受取側端末装置30は、発送側端末装置20からの発送通知を受信すると、タッチパネル30Aの発送了承ランプボタン32を白に点灯する(ステップS14)。これにより、受取側では、これから荷物の発送がされることを知ることができる。上述したようにランプボタン32が白に点灯したときは操作待ちの状態であり、受取側は、荷物の受け取りが可能であれば、発送了承ランプボタン32を操作することができる。そして、発送了承ランプボタン32が操作されると(ステップS15)、受取側端末装置30は、受取側が発送を了承した意思の表示である発送了承通知を発送側端末装置20に送信する(ステップS16)。
【0028】
なお、この発送了承通知は、同時に発送側端末装置20にドローン10の飛行開始を要求する通知である「飛行開始要求」でもある。上述のステップS16の処理ブロックは、受取側端末装置30がネットワーク40を介して発送側端末装置20に飛行開始要求を送信する飛行開始要求送信部によりなされる。
【0029】
発送側端末装置20が、受取側端末装置30からの発送了承通知(飛行開始要求)を受信すると、タッチパネル20Aの発送通知ランプボタン22が緑に点灯し、発送開始ランプボタン23が白に点灯する(ステップS17)。このとき、発送通知ランプボタン22が緑にステイタス表示されることにより、発送側では、配達先での荷物受け取りの許可が下りたと知ることができる。発送側が、白に点灯した操作待ちの発送開始ランプボタン23を操作すると、発送側端末装置20から発送開始通知が受取側端末装置30に送信される(ステップS18)。受取側端末装置30は、発送開始通知を受信したとき、タッチパネル30Aの発送ランプボタン33を緑に表示する(ステップS19)。この発送ランプボタン33のステイタス表示により、受取側では、発送側で飛行配送が開始されたことを知ることができる。
【0030】
発送開始ランプボタン23が操作されると(ステップS18)、発送側端末装置20の飛行開始コマンド送信部は、ネットワーク中継部21を経由して、発送開始コマンドをドローン10のコンパニオンマイコン111に送信する(ステップS20)。そして、タッチパネル20Aの発送開始ランプボタン23の表示を緑に変更する(ステップS21)。なお、この発送開始コマンドは、ドローン10の飛行開始に関するコマンドである「飛行開始コマンド」に該当する。
【0031】
ドローン10のコンパニオンマイコン111は、発送側端末装置20から送信された発送開始コマンドを受信すると(ステップS22)、記憶部112に記録されている発送側情報、受取側情報及び航路マップ情報に基づいて往路のウェイポイントファイルを設定しフライトコントローラ110に転送する(ステップS23)。これにより、ドローン10は、配達先に向けての配送ミッション飛行を開始する(ステップS24)。
【0032】
次に、図4は、帰還プロセスにおける各要素機器間の通信プロトコルを示すフローチャートである。帰還プロセスでは、ドローン10が目的の配達先に近づくか又は到着した際に、コンパニオンマイコン111が、ネットワーク中継部31との通信を確立してネットワーク40に接続する。そして、コンパニオンマイコン111は、機体が着地したことを検知すると、受取側端末装置30に到着通知を送信する(ステップS21)。
【0033】
受取側端末装置30は、ドローン10から到着通知を受信すると、タッチパネル30Aの到着通知ランプボタン34を緑の表示にする(ステップS22)。同時に、受取側端末装置30は、ネットワーク40を介して、この到着通知を発送側端末装置20に転送する(ステップS23)。発送側端末装置20は、この到着通知を受けて、タッチパネル20Aの到着ランプボタン24を緑の表示にする(ステップS24)。発送側端末装置20の到着ランプボタン24が緑にステイタス表示されることにより、発送側ではドローン10が発送先に無事到着したことを知ることができる。
【0034】
一方、ドローン10のコンパニオンマイコン111は、配達箱11から荷物が取り出されたことを検知すると(ステップS25)、ケースロック114を作動し、配達箱11をロックするとともに、受取完了通知を受取側端末装置30に送信する(ステップS26)。受取側端末装置30は、この受取完了通知を受けて、帰還開始ランプボタン35を白に点灯させ、受取側の操作を待つ(ステップS27)。
【0035】
荷物の受取側は、ドローン10周囲の障害物の有無や気候が安定しているかなど確認し、ドローン10が問題なく離陸できる状況にあると判断すると、帰還開始ランプボタン35を操作する(ステップS28)。受取側端末装置30の飛行開始要求送信部は、受取側により「帰還開始」の操作がされると、帰還開始通知を、ネットワーク40を介して発送側端末装置20に送信する(ステップS29)。なお、この帰還開始通知は、発送側端末装置20にドローン10の飛行開始を要求する通知である「飛行開始要求」でもある。
【0036】
発送側端末装置20は、受取側端末装置30からの帰還開始通知を受信すると(ステップS30)、飛行開始コマンド送信部が帰還開始コマンドを受取側端末装置30に返信する(ステップS31)。なお、帰還開始コマンドは、ドローン10の飛行開始に関するコマンドである「飛行開始コマンド」に該当する。
【0037】
また、受取側端末装置30は、帰還開始通知(飛行開始要求)とともに、ドローン10に搭載したカメラ150で機体周囲を撮影した画像データ等を発送側端末装置20に送信してもよい。その場合において、発送側端末装置20の飛行開始コマンド送信部は、配達先での画像データ等を解析し安全と判断したときのみ帰還開始コマンドを出力するようにしてもよい。
【0038】
発送側端末装置20は、帰還開始コマンドの出力と同時に、タッチパネル20Aの帰還ランプボタン25を緑に点灯して、帰還開始のステイタスになったことを表示する(ステップS32)。
【0039】
受取側端末装置30は、発送側端末装置20から送信された帰還開始コマンドを、ネットワーク中継部31で中継して、ドローン10のコンパニオンマイコン111に送信する(ステップS33)。同時に、帰還開始ランプボタン35を緑に点灯して、帰還開始のステイタスを表示する(ステップS34)。
【0040】
ドローン10のコンパニオンマイコン111は、帰還開始コマンドを受信すると(ステップS35)、記憶部112に記録されている発送側情報、受取側情報及び航路マップ情報に基づいて帰路のウェイポイントファイルを設定し、フライトコントローラ110に転送する(ステップS36)。これにより、ドローン10は、発送元に向けての帰還ミッション飛行を開始する(ステップS37)。
【0041】
上述した実施形態のドローン10を用いた荷物配送システム及び方法によれば、受取側端末装置30が、ドローン10とネットワーク40との通信接続を中継するネットワーク中継部31を備えている。この構成により、発送側端末装置30から送信される飛行制御に関するコマンドをドローン10のコントローラ110、111に対し中継して送信することができる。したがって、例えば、一旦着地したドローン10を発送元に帰還させる帰還プロセスにおいて、受取側端末装置30が直接、ドローン10を飛行制御するのではなく、あくまでも発送側端末装置20の制御下で、ドローン10の離陸及び帰還ミッション飛行を行うことができるようになる。受取側端末装置30が担うのは、発送側端末装置20からのコマンドを中継するだけなので、荷物の配送サービスを受け取る側である一般ユーザはドローン10の飛行に係る安全管理責任を負わずに済み、また飛行操作における負担を大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 ドローン
11 配達箱
20 発送側端末装置
20A タッチパネル
21 ネットワーク中継部
22 発送通知ランプボタン
23 発送開始ランプボタン
24 到着ランプボタン
25 帰還ランプボタン
30 受取側端末装置
30A タッチパネル
31 ネットワーク中継部
32 発送了承ランプボタン
33 発送ランプボタン
34 到着ランプボタン
35 帰還開始ランプボタン
40 ネットワーク
110 フライトコントローラ
111 コンパニオンマイコン
112 記憶部
113 無線LANアダプタ
114 ケースロック
120 ローターシステム
121 ESC(Electric Speed Controller)
130 IMU
131 3軸ジャイロセンサ
132 3軸加速度センサ
141 3軸方位センサ
142 GPS
143 高度(気圧)センサ
150 カメラ
160 リモートコントロールシステム

図1
図2
図3
図4