(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】二重金属屋根及びシート支持具
(51)【国際特許分類】
E04D 3/00 20060101AFI20240821BHJP
E04D 3/35 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
E04D3/00 E
E04D3/35 L
(21)【出願番号】P 2020141355
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】520324488
【氏名又は名称】日比 真一
(73)【特許権者】
【識別番号】520324499
【氏名又は名称】信田 健男
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】日比 真一
(72)【発明者】
【氏名】信田 健男
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00 - 3/40
E04D 13/00 - 15/07
E04G 23/00 - 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下葺き金属板(4)と上葺き金属板(7)の間に遮熱シート(9)が配設された二重金属屋根において、
遮熱シート(9)は、分散配置された複数のシート支持具(10)により支持され、
シート支持具(10)は、遮熱シート(9)の下面の一部を受ける受面部(14)と、受面部(14)から下方へ延びて下葺き金属板(4)に対し線幅5mm以下の線状に接触する脚部(17)とを含
み、
受面部(14)は正面視で下広がりの台状をなす平面部(15)及び二つの斜面部(16)からなり、脚部(17)は平面部(15)及び二つの斜面部(16)からそれぞれ延びていることを特徴とする二重金属屋根。
【請求項2】
遮熱シート(9)の上面はその面積の95%以上が、上葺き金属板(7)及び上葺き金属板の支持金具(6)に接触していない請求項1記載の二重金属屋根。
【請求項3】
遮熱シート(9)と上葺き金属板(7)の間に遮熱シート(9)の面直方向で10mm以上の上側空間(21)が形成され、遮熱シート(9)と下葺き金属板(4)の間に遮熱シート(9)の面直方向で10mm以上の下側空間(22)が形成されている請求項1又は2記載の二重金属屋根。
【請求項4】
下葺き金属板(4)及び上葺き金属板(7)は共に折板であり、遮熱シート(9)はこれら折板の折曲形状に対応した折曲形状で配設されている請求項1,2又は3記載の二重金属屋根。
【請求項5】
二重金属屋根の下葺き金属板(4)と上葺き金属板(7)の間に配設される遮熱シート(9)を支持するシート支持具(10)であって、
遮熱シート(9)の下面の一部を受ける受面部(14)と、受面部(14)から下方へ延びて下葺き金属板(4)に対し線幅5mm以下の線状に接触する脚部(17)とを含
み、
受面部(14)は正面視で下広がりの台状をなす平面部(15)及び二つの斜面部(16)からなり、脚部(17)は平面部(15)及び二つの斜面部(16)からそれぞれ延びていることを特徴とするシート支持具。
【請求項6】
シート支持具(10)は、二つの斜面部(16)のそれぞれ中間長さの分割位置で分割された、分割位置から上の基本部材(11)と、分割位置から下の二つの延長部材(12)(13)とが、分割位置で連結されてなる請求項1,2,3又は4記載の二重金属屋根。
【請求項7】
シート支持具(10)は、二つの斜面部(16)のそれぞれ中間長さの分割位置で分割された、分割位置から上の基本部材(11)と、分割位置から下の二つの延長部材(12)(13)とが、分割位置で連結されてなる請求項
5記載のシート支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重金属屋根及びそれに用いる遮熱シートを支持するシート支持具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属板を葺いてなる金属屋根は、耐火性が高い、水捌けが良い、価格が安い、施工しやすく工期を短縮できる等のメリットがあり、工場、倉庫、体育館、駐車場等に広く用いられている。しかし、金属製なので、夏場は高温になり建物内部やすい、雨音が響きやすい等のデメリットもある。
【0003】
そのデメリットを軽減するため、従来より、特許文献1のような二重金属屋根が用いられている。これは、
図7に示すように、下葺き折板51と上葺き折板52を二重に葺き、これら折板51,52の間に断熱材53(グラスウール)を入れ、熱抵抗値を上げて内部の温度上昇を抑えるとともに、雨音の響きを軽減しようとするものである。
【0004】
しかしながら、断熱材53により急激な屋根空間内部の温度上昇は抑えられるものの、外部からの熱は断熱材53そのものに蓄熱され、屋根空間内面に輻射熱として発せられ、建物内部温度が上昇してしまう。その主な原因は、熱伝導にある。太陽光と外気温で上葺き折板52が高温となり、やがて建物内部に熱が伝わっていくことにより、内部温度も上昇する。これまでの断熱材53は、この熱伝導を止めることはできず、熱の伝わる速度を遅くしているだけである。
【0005】
そこで、特許文献2のような、断熱材の代わりに熱反射シート(遮熱シート)を用いた二重金属屋根が考えられている。これは、
図8(a)に示すように、鉄骨小梁61に溶接固定されたタイトフレーム62に下葺き折板63が取り付けられている。下葺き折板63の上面に取付け用金属固定金具64が取り付けられ、取付け用金属固定金具64の上面に長尺の取付け用金属65が取り付けられている。取付け用金属65の上に上葺き折板66が取り付けられ、取付け用金具65と上葺き折板66の間に遮熱シート67が挟まれた状態で設置されている。遮熱シート67は、
図8(b)に示すように、多孔質樹脂シート68と、多孔質樹脂シート68の上下面に一体的に形成された一対のアルミニウムからなる金属反射層69とにより構成されている。
【0006】
このように、従来の断熱材を遮熱シート67に置き換えると、断熱性ではなく遮熱性の効果が得られ、上述したような夏場における断熱材への蓄熱や屋根空間内面への輻射熱をある程度軽減することができる。この特許文献2の二重金属屋根は、取付け用金属固定金具64の構造を変更し、また、取付け用金属65を遮熱シート67の上側に位置変更したものが、現実に実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-41847号公報
【文献】特開2008-111260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の(又はそれを変更し実施されている)二重金属屋根であっても、外部からの熱で遮熱シート67が熱を持ち、その熱が金属反射層69の下面に接触した取付け用金属固定金具64(又は構造変更した金具)を経て下葺き折板63に伝わり、やがては建物内部の温度が上昇していた。
【0009】
その一つの原因は、取付け用金属固定金具64(又は構造変更した金具)が下葺き折板63に対して広い面積で接触するため、取付け用金属固定金具64から下葺き折板63への熱伝導性が高いことにあると考えられる。
【0010】
また、別の原因は、遮熱シート67の上面が上葺き折板66(又は上側に位置変更した取付け用金属65)に対して広い面積で接触するため、上葺き折板66から遮熱シート67への熱伝導性が高いことにあると考えられる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、二重金属屋根の建物内部の温度上昇を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、次の手段を採ったものである。
【0013】
[1]二重金属屋根
下葺き金属板と上葺き金属板の間に遮熱シートが配設された二重金属屋根において、
遮熱シートは、分散配置された複数のシート支持具により支持され、
シート支持具は、遮熱シートの下面の一部を受ける受面部と、受面部から下方へ延びて下葺き金属板に対し線幅5mm以下の線状に接触する脚部とを含むことを特徴とする二重金属屋根。
【0014】
ここで、遮熱シートの上面はその面積の95%以上(より好ましくは98%以上、最も好ましくは100%)が、上葺き金属板及び上葺き金属板の支持金具に接触していないことが好ましい。
【0015】
さらに、遮熱シートと上葺き金属板の間に遮熱シートの面直方向で10mm以上(より好ましくは20mm以上)の上側空間が形成され、遮熱シートと下葺き金属板の間に遮熱シートの面直方向で10mm以上(より好ましくは15mm以上)の下側空間が形成されていることが好ましい。
【0016】
下葺き金属板及び上葺き金属板は共に折板であり、遮熱シートはこれら折板の折曲形状に対応した折曲形状で配設されている態様を例示できる。
【0017】
[2]シート支持具
二重金属屋根の下葺き金属板と上葺き金属板の間に配設される遮熱シートを支持するシート支持具において、
遮熱シートの下面の一部を受ける受面部と、受面部から下方へ延びて下葺き金属板に対し線幅5mm以下の線状に接触する脚部とを含むことを特徴とするシート支持具。
【0018】
[作用]
シート支持具の受面部には遮熱シートから熱が伝わり、受面部の熱は脚部に伝わる。しかし、脚部は下葺き金属板に対し線幅5mm以下の線状に接触し、接触面積が小さいため、下葺き金属板への熱伝導性が低く、下葺き金属板及び建物内部の温度上昇を抑えることができるる。
【0019】
また、遮熱シートの上面の面積の95%以上が、上葺き金属板及び上葺き金属板の支持金具に接触していないようにすると、上葺き金属板から遮熱シートへの熱伝導性が低くなり、建物内部の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0020】
また、遮熱シートと上葺き金属板の間に遮熱シートの面直方向で10mm以上の上側空間が形成され、遮熱シートと下葺き金属板の間に遮熱シートの面直方向で10mm以上の下側空間が形成されていると、上葺き金属板から遮熱シートへの熱輻射が緩和され、遮熱シートから下葺き金属板への熱輻射が緩和されるため、建物内部の温度上昇をさらに抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、二重金属屋根の建物内部の温度上昇を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例の二重金属屋根に使用する中サイズのシート支持具を示し、(a)は分解斜視図、(b)は正面図である。
【
図2】
図2の(a)は同二重金属屋根に使用する遮熱シートの拡大図、(b)は同シート支持具を使用した二重金属屋根の斜視図である。
【
図3】
図3は、同二重金属屋根を示し、(a)は断面図、(b)は拡大断面図である。
【
図4】
図4は、大サイズのシート支持具を示す分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同シート支持具を使用した二重金属屋根を示し、(a)は断面図、(b)は拡大断面図である。
【
図6】
図6は、小サイズのシート支持具を使用した二重金属屋根を示し、(a)は断面図、(b)は拡大断面図、(c)は変更例の断面図である。
【
図7】
図7は、従来例の二重金属屋根の断面図である。
【
図8】
図8は、別の従来例の二重金属屋根を示し、(a)は断面図、(b)は使用する遮熱シートの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.二重金属屋根の金属板
金属板の種類としては、特に限定されないが、折板、縦葺き金属板、平葺き金属板等を例示できる。上葺き金属板と上葺き金属板とは、種類が共通していても互いに相違していてもよい。
金属板の材料としては、特に限定されないが、めっき鋼板、塗覆装鋼板、ステンレス鋼板、非鉄金属板、複合金属板等を例示できる。
金属板が折板である場合、その取付構造は特に限定されず、ハゼ締め式、重ね式、嵌合式等を例示できる。
【0024】
2.遮熱シート
遮熱シートは、特に限定されないが、空気を含有する樹脂材又は繊維材からなる空気含有層と、該空気含有層の両側に配設された表面金属層とを含んでなる複数層状の遮熱シートが好ましい。空気含有層と表面金属層とは、直接接合されていてもよいし、他層を介して接合されていてもよい。
空気含有層である空気を含有する樹脂材としては、特に限定されないが、多孔質樹脂シート、発泡樹脂シート、ハニカム構造樹脂シート等を例示できる。
空気含有層である空気を含有する繊維材としては、特に限定されないが、グラスウール、ロックウール、綿状有機繊維等を例示できる。
表面金属層としては、特に限定されないが、金属箔、金属蒸着膜等を例示できる。金属の種類としては、熱線反射率が高く価格が低いことからアルミニウムが好ましい。
遮熱シートの具体例としては、リフレクティックス社の商品名「リフレクティックス」を、好ましい例として挙げることができる。
【0025】
3.シート支持具
シート支持具の材料は、特に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等を例示できる。金属としては、アルミニウム、鋼等を例示でき、強度、軽量性及び低価格性に優れたアルミニウムが好ましい。樹脂は、熱伝導性が低い点で好ましい。
アルミニウム押出材で受面部と脚部とが一体形成され、受面部と脚部が共に板状であるシート支持具を、好ましい例として挙げることができる。
【0026】
脚部は、受面部から下方へ垂直に延びるものでもよいし、斜め下方へ延びるものでもよいし、湾曲しながら下方へ延びるものでもよい。
脚部は、前記のとおり下葺き金属板に対し線幅5mm以下の線状に接触するが、その線幅は4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。その線幅の下限は特にないが、敢えていえば0.1mmである。
脚部は、下葺き金属板に接触する下端に対して、それより上部が、同じ厚さであってもよいし、異なる厚さであってもよい。
【0027】
下葺き金属板が折板である場合、シート支持具を該折板の山部(山頂と斜面上部)に被るように載置できるよう、受面部は正面視で下広がりの台状をなす平面部及び二つの斜面部からなり、脚部は平面部及び二つの斜面部からそれぞれ延びているシート支持具を、好ましい例として挙げることができる。このシート支持具は、次の(1)(2)のいずれの態様でもよい。
(1)シート支持具は、全体が一体形成されている態様。
(2)シート支持具は、二つの斜面部のそれぞれ中間長さの分割位置で分割された、分割位置から上の基本部材と、分割位置から下の二つの延長部材とが、分割位置で連結されてなる態様。折板屋根は様々な規格寸法があるため、斜面部の長さが異なる複数種の延長部材を用意しておき、屋根寸法に応じた斜面部の長さを持つ延長部材を基本部材に連結して対応する。
【0028】
平面部の左右長さは、特に限定されず、折板の山頂幅に応じて決めることができ、例えば40~120mmとすることができる。
斜面部の傾斜長さは、特に限定されず、折板の山高に応じて決めることができ、例えば50~220mmとすることができる。
脚部の長さは、特に限定されないが、下側空間を十分に形成し且つ二重金属屋根を過度に嵩高にしないために、10~50mmが好ましい。
受面部及び脚部の幅(屋根の流れ方向)は、特に限定されないが、遮熱シートを撓み少なく支持し且つ遮熱シートに過度に接触しないために、20~150mmが好ましく、40~100mmがより好ましい。
【実施例】
【0029】
次に、実施例の二重金属屋根及びシート支持具について、図面を参照して説明する。なお、実施例の各部の構造、材料、形状及び寸法は例示であり、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更できる。
【0030】
実施例の二重金属屋根は、下葺き金属板及び上葺き金属板として共に折板が使用され、折板には様々な規格寸法があるため、シート支持具には基本部材、第一延長部材、第二延長部材の3種の組み合わせでサイズを変更できるものが使用された。
図1~
図3に中サイズのシート支持具の使用例を、
図4~
図5に大サイズのシート支持具の使用例を、
図6に小サイズのシート支持具の使用例をそれぞれ示す。
【0031】
[中サイズ例]
まず、
図1~
図3に示す二重金属屋根について詳述する。本例は、折板として山部の高さが中サイズ(90mm)のものが使用され、これに対応して、中サイズのシート支持具が使用されたものである。
【0032】
建物上部には、屋根の左右方向に延びる鉄骨梁1の複数本が、屋根の流れ方向に相互間隔をおいて架設されている。各鉄骨梁1の上にはリップ溝形鋼からなるかさ上げ鋼材2が溶接固定されており、かさ上げ鋼材2の上にはタイトフレーム3がそのベース部において溶接固定されている。タイトフレーム3の山部の上には、屋根の流れ方向に山部が延びる下葺き折板4がハゼ締め式により取り付けられている。具体的には、2枚の折板材の端部を、タイトフレーム3に取り付けられた吊子を巻き込むように曲げ締めて、ハゼ部5を形成することにより下葺き折板4が取り付けられている。
【0033】
下葺き折板4の上には、屋根の流れ方向に山部が延びる上葺き折板7がハゼ締め式により取り付けられている。具体的には、下葺き折板4のハゼ部5に支持金具の一例としての断熱金具6が挟み付けられ、2枚の折板材の端部を、断熱金具6の上に取り付けられた吊子を巻き込むように曲げ締めて、ハゼ部8を形成することにより上葺き折板7が取り付けられている。
【0034】
下葺き折板4と上葺き折板7の間には平面視で両折板と同様の広さの遮熱シート9が、折板4,7の折曲形状に対応した折曲形状で配設されている。遮熱シート9には、前記「リフレクティックス」が使用されている。リフレクティックスは、
図2(a)に示すように、3枚のポリエチレン(PE)シートと、空気含有層としての2枚の多孔質ポリエチレンシートとが交互に積層され、両側のポリエチレンシートに金属層としてのアルミニウム(Al)箔が配設され接合されたものである。リフレクティックスは所定幅の長尺製品であり、その幅方向の端部どうしがアルミニウム粘着テープ(図示略)で連結されて前記広さとなっている。
【0035】
遮熱シート9は、屋根の左右方向と流れ方向にそれぞれ分散して配置された複数のシート支持具10により支持されている。シート支持具10は、遮熱シートの下面の一部を受ける受面部14と、受面部14から下方へ延びて下葺き折板4に対し線幅3mm以下の線状に接触する複数の脚部17とを含み構成されている。アルミニウム押出材で受面部14と脚部17とが一体形成され、受面部14と脚部17は共に板状である。
【0036】
受面部14は正面視で下広がりの台状をなす平面部15及び二つの斜面部16からなり、脚部17は、平面部15から下方へ垂直に延び、二つの斜面部16から面直となる斜め下方に延びている。この台状は下葺き折板4の山部の台状よりも一回り(脚部17の長さ分)大きく、これによりシート支持具10は下葺き折板4の山部に被るように載置されている。
【0037】
図示例では、平面部15の左右長さが80~85mm、斜面部16の傾斜長さが100~120mm、平面部15から延びる脚部17の長さが25~35mm、斜面部16から延びる脚部17の長さが15~25mm、受面部14及び脚部17の(屋根の流れ方向の)幅が60~80mmである。
【0038】
また、受面部14及び脚部17の大半部分は厚さ1.5mmであるが、脚部17の下端部のみが厚さ2mmであり、これにより脚部17は下葺き折板4に対し線幅2mmの線状に接触する。
【0039】
本例のシート支持具10は、二つの斜面部16のそれぞれ中間長さの分割位置で分割されてなる、分割位置から上の基本部材11と、分割位置から下の二つの第一延長部材12とが、分割位置で連結されて構成されたものである。斜面部16の前記傾斜長さは、基本部材11で50~70mm、第一延長部材12で40~60mmに分かれている。基本部材11の丸穴18に、第一延長部材12の丸突条19をスライド挿入して回転可能に嵌合させることにより連結されている。
【0040】
遮熱シート9は、前記のとおり折曲形状で、平面部15及び二つの斜面部16に両面粘着テープにより留め付けられている。
遮熱シート9には、断熱金具6の配設箇所のみに、断熱金具6を逃がす逃がし穴20が最小の大きさで形成されている。
遮熱シート9の上面はその面積の100%が、上葺き折板7及び上葺き折板7の支持金具である断熱金具6に接触していない。
遮熱シート9と上葺き折板7の間には、遮熱シート9の面直方向で20~100mmの上側空間21が形成されている。
遮熱シート9と下葺き折板4の間には、遮熱シート9の面直方向で15~50mmの下側空間22が形成されている。遮熱シート9は下葺き折板4に直接接触してはいない。
【0041】
[大サイズ例]
次に、
図4~
図5に示す二重金属屋根は、下葺き折板4として山部の高さが大サイズ(160mm)のものが使用され、これに対応して、次のとおり大サイズのシート支持具10が使用された点のみが前記中サイズ例と相違し、その他は前記中サイズ例と共通である。
【0042】
本例のシート支持具10は、前記中サイズ例と同じ基本部材11と、前記中サイズ例の第一延長部材12よりも長い二つの第二延長部材13とが、分割位置で連結されて構成されたものである。斜面部16の傾斜長さは180~200mmであり、これが基本部材11で50~70mm、第一延長部材12で120~140mmに分かれている。
【0043】
[小サイズ例]
次に、
図6(a)(b)に示す二重金属屋根は、下葺き折板4として山部の高さが小サイズ(50mm)のものが使用され、これに対応して、前記中サイズ例と同じ基本部材11のみからなる小サイズのシート支持具10が使用された点のみが前記中サイズ例と相違し、その他は前記中サイズ例と共通である。
【0044】
[変更例]
次に、
図6(c)に示す二重金属屋根は、遮熱シート9が折曲形状ではなく左右に直線的に延びた形状(自重で撓んだ場合も含む)で配設されていて、上葺き折板7と下葺き折板4の大きさが変更されている点においてのみ、前記小サイズ例と相違し、その他は前記小サイズ例と共通である。
【0045】
以上のように構成された実施例の二重金属屋根によれば、次の作用効果が得られる。
(1)シート支持具10の受面部14には遮熱シート9から熱が伝わり、受面部14の熱は脚部17に伝わる。しかし、脚部17は下葺き折板4に対し線幅5mm以下(本例では2mm)の線状に接触し、接触面積が小さいため、下葺き折板4への熱伝導性が低く、下葺き折板及び建物内部の温度上昇を抑えることができる。
【0046】
(2)また、遮熱シート9の上面はその面積の95%以上(本例では100%)が、上葺き折板7及び断熱金具6に接触していないため、上葺き折板7から遮熱シート9への熱伝導性が低く、二重金属屋根の建物内部の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0047】
(3)また、遮熱シート9の面直方向で10mm以上(本例では20~100mm)の上側空間21が形成され、遮熱シート9の面直方向で10mm以上(本例では15~50mm)の下側空間22が形成されているため、上葺き折板7から遮熱シート9への熱輻射が緩和され、遮熱シート9から下葺き折板4への熱輻射が緩和され、建物内部の温度上昇をさらに抑えることができる。
【0048】
(4)以上により、軒高4m・面積96m
2 の工場に
図4~
図5に示す実施例の二重金属屋根を施工したところ、外気温が38度まで上がった真夏日の午後でも、工場内部の温度は40度未満であるという実績が得られた。これに対し、同工場にシングル折板屋根が以前施工されていたときは、同様の真夏日の午後に、工場内部の温度は48度となった。
よって、本実施例によれば、冷房費削減が可能であり、ひいては原油使用削減、CO
2 削減などの環境負荷削減にも役立つ。
【0049】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、例えば次のように、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)下葺き折板4と上葺き折板7のいずれ一方又は両方を、折板以外の金属板に変更すること。
(2)シート支持具10の受面部14を平面部15のみで構成すること。
(3)シート支持具10を、鋼板曲げ材で受面部14と脚部17とが連続形成されたものとすること。
【符号の説明】
【0050】
1 鉄骨梁
2 かさ上げ鋼材
3 タイトフレーム
4 下葺き折板
5 ハゼ部
6 断熱金具
7 上葺き折板
8 ハゼ部
9 遮熱シート
10 シート支持具
11 基本部材
12 第一延長部材
13 第二延長部材
14 受面部
15 平面部
16 斜面部
17 脚部
18 丸穴
19 丸突条
20 逃がし穴
21 上側空間
22 下側空間