(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
A47K 5/12 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A47K5/12 Z
A47K5/12 A
(21)【出願番号】P 2020177616
(22)【出願日】2020-10-22
【審査請求日】2023-10-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年10月7日 第90回東京インターナショナル・ギフト・ショーに出品 2020年10月1日 東亜産業総合カタログ 2020 10月号を頒布
(73)【特許権者】
【識別番号】514293008
【氏名又は名称】株式会社東亜産業
(72)【発明者】
【氏名】フ ユアエン
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍志
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2155993(KR,B1)
【文献】特開2022-064514(JP,A)
【文献】特開2022-064057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0017769(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0404405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 5/12
A61L 2/18
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンク部を有する本体部と、
前記本体部から一方向に突出し、下方に向かって前記液体を吐出する吐出口を有する吐出部と、
前記吐出部に物体が近接したことを検出する第1センサーと、
前記第1センサーと異なる位置に配置されて前記物体の温度を検出する第2 センサーと、
前記第2センサーで検出した温度を表示する表示部と、
を備え、
前記第1センサーで物体の近接が検出されたら、前記吐出口から前記液体が吐出され、前記第1センサーで近接を検出した前記物体の温度を前記第2センサーで検出し、前記表示部で表示
し、
前記第1センサーが物体の近接を検出する近接検出ラインは、前記吐出口の近傍から下方に向かい、前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインは、前記吐出部の前面から前側または前側斜め下方に向かうように、前記第1センサーおよび前記第2センサーが配置されているディスペンサー。
【請求項2】
前記第2センサーは、前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインが、前記吐出部の根元部から前記吐出部が延びる方向と、前記吐出部の根元部から前記本体部が延びる方向とでなす角度範囲の方向を向くように配置される請求項1に記載のディスペンサー。
【請求項3】
前記近接検出ラインの延長線と前記温度検出ラインの延長線とは、前記温度検出ラインを含む二次元平面上で互いに交差する請求項
1または
2に記載のディスペンサー。
【請求項4】
前記第1センサーが物体の近接を検出する近接検出ラインと、前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインとは、互いに平行である請求項1に記載のディスペンサー。
【請求項5】
前記近接検出ラインと前記温度検出ラインは、いずれも前記吐出口の近傍から下方に向かうように、前記第1センサーおよび前記第2センサーが配置されている請求項
4に記載のディスペンサー。
【請求項6】
前記第1センサーおよび前記第2センサーに接続され前記吐出口からの液体の吐出および前記表示部の表示を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記第1センサーで前記物体の近接が検出されたら、前記第2センサーで検出した前記物体の温度を前記表示部に表示させる請求項1~
5のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2センサーが検出した温度の値に基づき、前記表示部の背景色を変化させる請求項
6に記載のディスペンサー。
【請求項8】
前記制御部は、前記第2センサーが検出した温度の値に基づいて生成されたコード情報を前記表示部に表示させる請求項
6または
7に記載のディスペンサー。
【請求項9】
前記第1センサーで前記物体の近接を検出できない位置に、物体の温度を検出する第3センサーが設けられ、
前記制御部は、前記第3センサーが温度を検出すると、該検出した温度を前記表示部に表示させる請求項
6~
8のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【請求項10】
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記第1センサーが物体の近接を検出する近接検出ラインと前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインとが、前記吐出口に向かってかざした人の手にそれぞれ向かうように配置されている請求項1~
9のいずれか1項に記載のディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤や洗浄液などの液体を貯留するタンクを有し、このタンクから当該液体を吐出するディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤や洗浄液などの液体を供給するディスペンサーとして、使用者が手を近づけることで、自動的に液体の吐出がなされるものが知られている。このようなディスペンサーは、物体の近接を検出するセンサーを吐出口の近傍に有している。ディスペンサーは、使用者が吐出部の下方に手を差し出すことにより、センサーが物体の近接を検出し、ディスペンサーが有する制御部が吐出駆動部を制御して貯留されている液体を吐出部から吐出させる。このようなディスペンサーとしては、例えば特許文献1に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディスペンサーは、施設等の入口に設置されて、入ってくる人が消毒を行うために用いられているが、同時に別の機器を用いて検温も行われることが多い。このため、ディスペンサーが検温の機能も有していると利便性を高くすることができる。物体の表面温度を検出する温度センサーを設けて、検温を可能としたディスペンサーも存在するが、ディスペンサーの上面など吐出口と関係のない位置に温度センサーが設けられているため、使用者は、液体の供給を受けた後、あるいは前に、温度センサーに手をかざすなどの動作が必要であった。一度の動作で液体の供給と検温ができれば、1人がディスペンサーを使用する時間を短縮できる。
【0005】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、一度の動作で液体の供給と検温ができるディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るディスペンサーは、液体を貯留するタンク部を有する本体部と、
前記本体部から一方向に突出し、下方に向かって前記液体を吐出する吐出口を有する吐出部と、
前記吐出部に物体が近接したことを検出する第1センサーと、
前記第1センサーと異なる位置に配置されて前記物体の温度を検出する第2センサーと、
前記第2センサーで検出した温度を表示する表示部と、
を備え、
前記第1センサーで物体の近接が検出されたら、前記吐出口から前記液体が吐出され、前記第1センサーで近接を検出した前記物体の温度を前記第2センサーで検出し、前記表示部で表示する。
【0007】
前記第1センサーが物体の近接を検出する近接検出ラインは、前記吐出口の近傍から下方に向かい、前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインは、前記吐出部の前面から前側または前側斜め下方に向かうように、前記第1センサーおよび前記第2センサーが配置されているようにしてもよい。
【0008】
前記第2センサーは、前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインが、前記吐出部の根元部から前記吐出部が延びる方向と、前記吐出部の根元部から前記本体部が延びる方向とでなす角度範囲の方向を向くように配置されるようにしてもよい。
【0009】
前記近接検出ラインの延長線と前記温度検出ラインの延長線とは、前記温度検出ラインを含む二次元平面上で互いに交差するようにしてもよい。
【0010】
前記第1センサーが物体の近接を検出する近接検出ラインと、前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインとは、互いに平行であるようにしてもよい。
【0011】
前記近接検出ラインと前記温度検出ラインは、いずれも前記吐出口の近傍から下方に向かうように、前記第1センサーおよび前記第2センサーが配置されているようにしてもよい。
【0012】
前記第1センサーおよび前記第2センサーに接続され前記吐出口からの液体の吐出および前記表示部の表示を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記第1センサーで前記物体の近接が検出されたら、前記第2センサーで検出した前記物体の温度を前記表示部に表示させるようにしてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記第2センサーが検出した温度の値に基づき、前記表示部の背景色を変化させるようにしてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記第2センサーが検出した温度の値に基づいて生成されたコード情報を前記表示部に表示させるようにしてもよい。
【0015】
前記第1センサーで前記物体の近接を検出できない位置に、物体の温度を検出する第3センサーが設けられ、前記制御部は、前記第3センサーが温度を検出すると、該検出した温度を前記表示部に表示させるようにしてもよい。
【0016】
前記第1センサーおよび前記第2センサーは、前記第1センサーが物体の近接を検出する近接検出ラインと前記第2センサーが物体の温度を検出する温度検出ラインとが、前記吐出口に向かってかざした人の手にそれぞれ向かうように配置されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るディスペンサーによれば、第1センサーで物体の近接が検出されたら、第2センサーで当該物体の温度を検出し、検出した温度を表示部に表示させるので、使用者の一度の動作で液体の供給と検温とを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態におけるディスペンサーの斜視図である。
【
図3】ディスペンサーが備える各構成のブロック図である。
【
図4】ディスペンサーの吐出口に手をかざした状態の側面図である。
【
図5】液体吐出および温度検出のフローチャートである。
【
図6】第1変形例に係るディスペンサーの吐出口に手をかざした状態の側面図である。
【
図7】第2変形例に係るディスペンサーの吐出口に手をかざした状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。本実施形態のディスペンサーは、内部に消毒液などの液体を貯留し、吐出口に手をかざすと、それを非接触で検出して液体を吐出するとともに、体温を非接触で検出して、表示することができる。
【0020】
図1に示すように、ディスペンサー10は、箱状に形成された本体部20と、本体部20の上部から一方向に向かって突出する吐出部21とを有している。本体部20は、液体を貯留するタンク部25を有している。本体部20の内部には、電源として用いる電池を収納する電池収納部(図示しない)が設けられる。タンク部25に貯留される液体は、消毒液であるが、それ以外の液体であってもよい。消毒液は、エタノールを含んでいる。また、その他に、ヒアルロン酸、アロエベラ葉エキス等の成分を含んでいてもよい。
【0021】
本体部20の上面には、表示部22と操作部23とが設けられる。表示部22は、液晶や有機ELなどで形成することができ、検出した温度を表示するほか、検出した温度に基づき生成されるコード情報を表示することができる。表示部22において、検出した温度は、「36.5℃」のように数値で表示してもよいし、一定の閾値(例えば37.5℃)より低い場合には「Lo」、閾値より高い場合には「Hi」などと表示してもよい。操作部23は、複数のスイッチで構成され、電源のオン・オフ操作や液体の吐出量の調節操作などを行うことができる。
【0022】
図2に示すように、吐出部21には下方に向かって液体を吐出する吐出口21aが設けられている。また、吐出部21には、吐出口21aの近傍において下方に向かうように第1センサー30が、前面から前方に向かうように第2センサー35が、それぞれ配置される。
【0023】
第1センサー30は、当該第1センサー30が向かう方向に物体が近接したことを検出することができる。また、第2センサー35は、当該第2センサー35が向かう方向において、所定距離内にある物体の表面温度を非接触で検出することができる。このようなセンサーとしては、例えば、物体から放射された赤外線をレンズで集光し、検出素子であるサーモパイルで温度を検出する赤外線センサーが挙げられる。ただし、非接触で物体の表面温度を検出できるものであれば、これに限られない。第2センサー35では、物体の表面温度が検出されるので、使用者の手の表面温度が測定される。制御部40は、検出された表面温度を体温に補正することができる。
【0024】
図3に示すように、ディスペンサー10の内部には、前述の表示部22と操作部23、第1センサー30および第2センサー35の他に、吐出駆動部21および制御部40が設けられる。制御部40は、表示部22、操作部23、第1センサー30、第2センサー35および吐出駆動部21に接続され、第1センサー30や第2センサー35で検出された情報や操作部23で行われた操作に基づき、吐出駆動部21や表示部22を制御する。吐出駆動部21は、吐出口21aに接続されるとともに、タンク部25に流動管を介して接続されており、タンク部25の液体を吐出口21aから所定量、吐出させることができる。
【0025】
図4に示すように、第1センサー30が物体の近接を検出する近接検出ライン30aは、吐出部21から鉛直下方に向かって延びている。また、第2センサー35が温度を検出する温度検出ライン35aは、吐出部21の前面から前側に向かって延びている。使用者が吐出口21aからの液体を受けることできるように手Aをかざすと、手Aの指先部分は近接検出ライン30a上に位置し、手Aの掌底部分は温度検出ライン35a上に位置する。このため、第1センサー30で手Aが近接したことを検出した際に、第2センサー35で手Aの表面温度、すなわち体温を検出することができる。
【0026】
図5に示すように、制御部40は、第1センサー30で物体(手)の近接が検出されたら(S1)、吐出駆動部21を制御してタンク部25の液体を吐出口21aに吐出させる(S2)とともに、第2センサー35に近接した物体(手)の温度を検出させ(S3)、その温度を取得する。制御部40は、第2センサー35で検出した温度を表示部22に表示させる(S4)。このように、本実施形態のディスペンサー10は、第1センサー30で手の近接を検出したら、第2センサー35で温度を検出して表示部22に表示させることで、使用者が液体を手に取るために吐出部21に近接させる1つの動作で、液体の吐出と体温計測を一度に行うことができる。
【0027】
S4において、制御部40は、第2センサー35で検出した温度に基づいて、表示部22の背景色を変化させることができる。例えば、検出された温度が37.5℃未満の場合は、表示部22の背景色を緑色とし、検出された温度が37.5℃以上の場合は、表示部22の背景色を赤色とすることができる。背景色の変化について、閾値および色については、この例に限られず、必要に応じて様々に変更することができる。
【0028】
また、本体部20にスピーカーなどの音響発生部を設けて、第2センサー35で検出した温度が一定値以上の場合に、音響発生部から音を発生させるようにしてもよい。
【0029】
制御部40は、第2センサー35で温度を検出したら、検出した温度の値に基づいて生成されたコード情報を表示部22に表示させてもよい。コード情報は、例えば二次元コードなどである。コード情報には、温度の情報に加えて、温度を検出した日時の情報を含んでいてもよい。使用者は、表示部22に表示されたコード情報を携帯端末のカメラ等で撮影し、撮影したコード情報を提示することで、手指の消毒および検温が済んでいることの証明として使用することができる。
【0030】
第1センサー30と第2センサー35は、近接検出ライン30aと温度検出ライン35aとが、吐出口21aに向かってかざした人の手にそれぞれ向かうように配置されるので、使用者が吐出口21aに向かって手をかざすことで、液体の吐出と体温計測を確実に行うことができる。本例において近接検出ライン30aの延長線と温度検出ライン35aの延長線とは、温度検出ライン35aを含む二次元平面上において直交する。
【0031】
ディスペンサー10の変形例について説明する。
図6に示すように、第2センサー35は、吐出口21aの近傍に配置してもよい。第2センサー35の温度検出ライン35bは、吐出部21から鉛直下方に延びる。このため、温度検出ライン35bは、第1センサー30の近接検出ライン30aと平行となる。このように、近接検出ライン30aと温度検出ライン35bとを平行にして、いずれも吐出部21から鉛直下方に延びるように配置することで、手Aを吐出口21aにかざした際に、温度検出ライン35bが手の指先部分に交わって、手の表面温度を確実に検出することができる。
【0032】
図7に示すように、第2センサー35は、吐出部21の前面に傾斜配置してもよい。第2センサー35の温度検出ライン35cは、吐出部21の前面から前側斜め下方に向かって延びる。第1センサー30は、吐出口21aの近傍から下方に向かう近接検出ライン30aを有するので、使用者が手Aを吐出口21aにかざした際に、温度検出ライン35cがより確実に手Aに交わることができる。これによって、より確実な温度検出が可能である。この場合、近接検出ライン30aの延長線と温度検出ライン35cの延長線は、温度検出ライン35cを含む二次元平面上において、吐出部21の上方で互いに交差する。第2センサー35は、温度検出ライン35cが、吐出部21の根元部から吐出部21が延びる方向と、吐出部21の根元部から本体部20が延びる方向とでなす角度範囲の方向を向くように配置される。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的範囲において様々に適用され得る。例えば、第1センサー30で物体の近接を検出できない位置、例えば本体部20の上面などに、物体の温度を検出する第3センサー(図示しない)を設けてもよい。この場合、第3センサーは制御部40に接続される。制御部40は、第3センサーが物体の温度を検出したら、検出した温度を表示部22に表示させる。これにより、液体の吐出を伴わず検温のみを行うこともできる。
【符号の説明】
【0034】
10 ディスペンサー
20 本体部
21 吐出部
21a 吐出口
22 表示部
23 操作部
25 タンク部
30 第1センサー
30a 近接検出ライン
35 第2センサー
35a 温度検出ライン
35b 温度検出ライン
35c 温度検出ライン
40 制御部