(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】配管用放射線遮蔽構造
(51)【国際特許分類】
G21F 3/00 20060101AFI20240821BHJP
G21F 1/04 20060101ALI20240821BHJP
G21F 7/00 20060101ALI20240821BHJP
H05H 9/00 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
G21F3/00 P
G21F1/04
G21F3/00 L
G21F7/00 Z
H05H9/00 A
H05H9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020201878
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 理恵
(72)【発明者】
【氏名】乗物 丈巳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光徳
(72)【発明者】
【氏名】高岸 智子
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-188192(JP,A)
【文献】特開平04-270997(JP,A)
【文献】特開昭58-052597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00 - 7/06
H05H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線照射装置が設置される照射室と、
通路出入口と、前記通路出入口の上方に設けられるコンクリート垂れ壁と、を有し、前記照射室に通じる通路と、
クランク状に屈曲されるクランク状屈曲部を有し、前記通路の上部に敷設されるとともに、前記コンクリート垂れ壁に形成された貫通孔に接続される配管と、
前記通路の上部に設けられ、
前記コンクリート垂れ壁から前記通路の途中に亘るとともに、前記クランク状屈曲部が埋設されるコンクリート遮蔽部と、
を備える配管用放射線遮蔽構造。
【請求項2】
前記通路は、前記照射室から放射された放射線を前記貫通孔に向けて散乱させる散乱面を有し、
前記クランク状屈曲部は、前記貫通孔側から順に第一屈曲部及び第二屈曲部を有し、
前記第二屈曲部は、前記散乱面から前記貫通孔に向かう散乱線の散乱領域から外れた位置に配置される、
請求項1に記載の配管用放射線遮蔽構造。
【請求項3】
前記クランク状屈曲部は、平面視にてクランク状に屈曲される、
請求項1又は請求項2に記載の配管用放射線遮蔽構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管用放射線遮蔽構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアックが設置される照射室に通じる通路(迷路)の上部に敷設された空調ダクト等の配管が知られている(例えば、特許文献1参照)。この配管は、例えば、通路の通路出入口の上方のコンクリート垂れ壁(遮蔽壁)に形成された貫通孔に接続される。
【0003】
また、放射線を遮蔽するコンクリート遮蔽壁の内部に、屈曲された配管を埋設する配管構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-113452号公報
【文献】特開2011-220968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、コンクリート垂れ壁の手前で、配管を立面視にてU字形状に屈曲させるとともに配管の屈曲部を遮蔽カバーで覆うことにより、コンクリート垂れ壁の貫通孔からの放射線の漏洩を抑制している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術において、通路出入口の上方のコンクリート垂れ壁に形成された貫通孔からの放射線の漏洩を抑制するためには、さらなる改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、通路出入口の上方のコンクリート垂れ壁に形成された貫通孔からの放射線の漏洩を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る配管用放射線遮蔽構造は、放射線照射装置が設置される照射室と、通路出入口と、前記通路出入口の上方に設けられるコンクリート垂れ壁と、を有し、前記照射室に通じる通路と、クランク状に屈曲されるクランク状屈曲部を有し、前記通路の上部に敷設されるとともに、前記コンクリート垂れ壁に形成された貫通孔に接続される配管と、前記通路の上部に設けられ、前記クランク状屈曲部が埋設されるコンクリート遮蔽部と、を備える。
【0009】
第1態様に係る配管用放射線遮蔽構造によれば、照射室には、放射線照射装置が設置される。また、照射室に通じる通路は、通路出入口と、通路出入口の上方に設けられるコンクリート垂れ壁とを有する。通路の上部には、配管が敷設される。この配管は、コンクリート垂れ壁に形成された貫通孔に接続される。
【0010】
ここで、通路の上部には、コンクリート遮蔽部が設けられている。このコンクリート遮蔽部によって、通路からコンクリート垂れ壁の貫通孔に向かう放射線が遮蔽される。したがって、通路出入口の上方のコンクリート垂れ壁に形成された貫通孔からの放射線の漏洩が抑制される。
【0011】
また、配管は、クランク状に屈曲されるクランク状屈曲部を有する。このクランク状屈曲部は、コンクリート遮蔽部に埋設される。これにより、配管内を通る放射線が、クランク状屈曲部を通過する際に、コンクリート遮蔽部に遮蔽される。したがって、コンクリート垂れ壁の貫通孔からの放射線の漏洩がさらに抑制される。
【0012】
第2態様に係る配管用放射線遮蔽構造は、第1態様に係る配管用放射線遮蔽構造において、前記通路は、前記照射室から放射された放射線を前記貫通孔に向けて散乱させる散乱面を有し、前記クランク状屈曲部は、前記貫通孔側から順に第一屈曲部及び第二屈曲部を有し、前記第二屈曲部は、前記散乱面から前記貫通孔に向かう散乱線の散乱領域から外れた位置に配置される。
【0013】
第2態様に係る配管用放射線遮蔽構造によれば、通路は、照射室から放射された放射線を貫通孔に向けて散乱させる散乱面を有する。
【0014】
また、クランク状屈曲部は、貫通孔側から順に第一屈曲部及び第二屈曲部を有する。第二屈曲部は、散乱面から貫通孔に向かう散乱線の散乱領域から外れた位置に配置される。これにより、本発明では、第二屈曲部が散乱領域内に配置された場合と比較して、コンクリート垂れ壁の貫通孔からの散乱線(放射線)の漏洩が抑制される。
【0015】
第3態様に係る配管用放射線遮蔽構造は、第1態様又は第2態様に係る配管用放射線遮蔽構造において、前記クランク状屈曲部は、平面視にてクランク状に屈曲される。
【0016】
第3態様に係る配管用放射線遮蔽構造によれば、クランク状屈曲部は、平面視にてクランク状に屈曲される。これにより、本発明では、立面視にて、クランク状屈曲部がクランク状に屈曲する場合と比較して、コンクリート斜壁部の厚みを薄くすることができる。したがって、コンクリート遮蔽部のコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリート垂れ壁に形成された貫通孔からの放射線の漏洩を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る配管用放射線遮蔽構造が適用された放射線遮蔽室を示す平断面図である。
【
図2】
図1に示される放射線遮蔽室よりも天井スラブ側で切断した平断面図である。
【
図4】
図2に示されるクランク状屈曲部を示す拡大断面図である。
【
図5】一実施形態に係る配管用放射線遮蔽構造の変形例が適用された放射線遮蔽室を示す
図3に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る配管用放射線遮蔽構造について説明する。
【0020】
(放射線遮蔽室)
図1及び
図2には、本実施形態に係る配管用放射線遮蔽構造が適用された放射線遮蔽室10が示されている。放射線遮蔽室10は、平面視にて、矩形状に形成されている。この放射線遮蔽室10は、放射線照射装置20が設置される照射室30と、通路出入口42から照射室30に延びる通路40とを備えている。
【0021】
放射線遮蔽室10は、放射線照射装置20から放射される放射線の漏洩を抑制するために、鉄筋コンクリート造とされている。この放射線遮蔽室10は、外周部に沿って配置される複数のコンクリート外周壁70X,70Yと、照射室30と通路40とを仕切るコンクリート仕切壁72とを有している。これらのコンクリート外周壁70X,70Y、及びコンクリート仕切壁72は、鉄筋コンクリート造とされており、その内部に図示しない壁筋等が埋設されている。
【0022】
複数のコンクリート外周壁70X,70Yのうち、一対のコンクリート外周壁70Xは、後述する放射線照射装置20の回動ヘッド20Hの回動軸Rを挟んで所定方向(矢印X方向)に互いに対向している。また、複数のコンクリート外周壁70X,70Yのうち、他の一対のコンクリート外周壁70Yは、所定方向と直交する直交方向(矢印Y方向)に互いに対向している。
【0023】
一対のコンクリート外周壁70Yの間には、コンクリート仕切壁72が配置されている。このコンクリート仕切壁72は、直交方向(矢印Y方向)に沿って配置されており、照射室30と通路40とを仕切っている。
【0024】
図3に示されるように、放射線遮蔽室10は、照射室30及び通路40の床を形成する床スラブ60と、照射室30及び通路40の天井を形成する天井スラブ62とを有している。これらの床スラブ60及び天井スラブ62は、鉄筋コンクリート造とされており、その内部に図示しない鉄筋等が埋設されている。
【0025】
(放射線照射装置)
放射線照射装置20は、例えば、医療用リニアック等とされる。この放射線照射装置20は、放射線を照射する回動ヘッド20Hを有している。回動ヘッド20Hは、回動軸Rを中心として360度回動可能とされ、例えば、X線、ガンマ線、電子、陽子、ヘリウムイオン、炭素イオン、その他の重イオン、又は中性子を含む放射線を患部に対して照射する。
【0026】
(照射室)
図1及び
図2に示されるように、照射室30は、所定方向(矢印X方向)に互いに対向する一対のコンクリート外周壁70Xと、直交方向(矢印Y方向)に互いに対向する一対のコンクリート外周壁70Y及びコンクリート仕切壁72とを有している。一対のコンクリート外周壁70X、及び照射室30の図示しない天井スラブには、放射線照射装置20の回動ヘッド20Hを側方及び上方から覆う金属遮蔽体74が埋設されている。
【0027】
金属遮蔽体74は、例えば、積層された複数の金属板を有している。この金属遮蔽体74によって、回動ヘッド20Hから照射された放射線が、一対のコンクリート外周壁70Xを透過し難くなっている。
【0028】
照射室30は、照射室出入口32を有している。照射室出入口32は、コンクリート仕切壁72の一端側(通路出入口42と反対側)に形成されている。照射室出入口32の上方には、放射線照射装置20から照射された放射線を遮蔽するコンクリート垂れ壁34が設けられている。この照射室出入口32には、通路40の一端が接続されている。
【0029】
(通路)
通路40は、コンクリート仕切壁72に沿って設けられている。この通路40の一端側は、照射室出入口32に接続されている。また、通路40の他端は、コンクリート外周壁70Xに形成された通路出入口42に接続されている。この通路40は、放射線照射装置20から照射された放射線が、照射室出入口32に直接到達しないように迷路を形成している。
【0030】
図3に示されるように、通路出入口42には、遮蔽扉14が開閉可能に設けられている。遮蔽扉14は、例えば、放射線、特に中性子を遮蔽可能な鉛層及びポリエチレン層を有している。また、通路出入口42の上方には、放射線照射装置20から照射された放射線を遮蔽するコンクリート垂れ壁44が設けられている。
【0031】
(配管)
図2に示されるように、通路40の上方には、配管80が施設されている。配管80は、例えば、照射室30の空調用のダクトとされている。また、配管80は、例えば円筒状に形成されており、通路40に沿って敷設されている。この配管80の一端側は、照射室出入口32の上方のコンクリート垂れ壁44を貫通し、照射室30内に敷設されている。また、配管80の他端側は、通路出入口42の上方のコンクリート垂れ壁44を貫通し、放射線遮蔽室10の外部に敷設されている。
【0032】
コンクリート垂れ壁44の幅方向の中央部には、貫通孔46が形成されている。貫通孔46は、コンクリート垂れ壁44を厚み方向に貫通する円形状の孔とされている。この貫通孔46に、配管80が挿入されている。
【0033】
なお、配管80の外周面と貫通孔46の内周面との隙間には、モルタル、グラウト等の図示しない充填材が充填されている。この充填材によって、配管80の外周面と貫通孔46の内周面との隙間から、放射線の漏洩が抑制されている。
【0034】
図2に示されるように、配管80は、第一配管部82と、クランク状屈曲部84と、第二配管部86とを有している。第一配管部82の一端側は、コンクリート垂れ壁44の貫通孔46に接続されている。また、第一配管部82は、貫通孔46から通路40に沿って照射室出入口32側へ延出している。この第一配管部82の他端側には、クランク状屈曲部84を介して、第二配管部86の一端側が接続されている。
【0035】
クランク状屈曲部84は、平面視にてクランク状に屈曲されている。このクランク状屈曲部84によって、第二配管部86が第一配管部82に対して通路40の幅方向(矢印Y方向)の一方側に寄せられている。具体的には、
図4に示されるように、クランク状屈曲部84は、貫通孔46から順に屈曲された第一屈曲部84A及び第二屈曲部84Cと、第一屈曲部84Aと第二屈曲部84Cとを接続する接続部84Bとを有している。
【0036】
第一屈曲部84Aは、第一配管部82の他端側から通路40の幅方向の一方側へ屈曲された平面視にてL字形状の配管部とされている。この第一屈曲部84Aの他端側には、接続部84Bが接続されている。接続部84Bは、第一屈曲部84Aの他端側から通路40の幅方向に延びる平面視にて直線状の配管部とされている。この接続部84Bの他端側には、第二屈曲部84Cが接続されている。
【0037】
第二屈曲部84Cは、第一屈曲部84Aよりも通路40の幅方向の一方側(照射室30側)に配置されている。また、第二屈曲部84Cは、接続部84Bの他端側から照射室出入口32側へ屈曲された平面視にてL字形状の配管部とされている。この第二屈曲部84Cの他端側には、第二配管部86が接続されている。
図2に示されるように、第二配管部86は、通路40に沿って敷設されるとともに、照射室出入口32の上方のコンクリート垂れ壁34に形成された貫通孔を貫通し、照射室30に敷設されている。
【0038】
(コンクリート遮蔽部)
ここで、放射線照射装置20から発散された放射線は、配管80内を通ってコンクリート垂れ壁44の貫通孔46から放射線遮蔽室10の外部に漏洩する可能性がある。
【0039】
また、
図2に示されるように、放射線照射装置20から照射室出入口32側へ発散した放射線Pは、通路40を形成するコンクリート外周壁70X,70Y、及び床スラブ60の散乱面(一次散乱面)Sで散乱(反射)される。そのため、
図2及び
図3に示されるように、散乱面Sで散乱した散乱線(一次散乱線)Q1,Q2が、通路出入口42の上方のコンクリート垂れ壁44に形成された貫通孔46から漏洩する可能性がある。
【0040】
この対策として本実施形態では、通路40の上部における散乱領域G1,G2にコンクリート遮蔽部90が設けられている。コンクリート遮蔽部90は、例えば、鉄筋コンクリート造とされており、その内部に図示しない鉄筋等が埋設されている。
【0041】
なお、散乱領域G1(
図2参照)は、平面視にて散乱線Q1で囲まれた領域であり、散乱領域G2(
図3参照)は、立面視にて、散乱線Q2で囲まれた領域である。
【0042】
コンクリート遮蔽部90は、天井スラブ62に沿って設けられており、コンクリート垂れ壁44から通路40の途中に亘っている。また、コンクリート遮蔽部90は、通路40の幅方向の全長に亘って設けられている。このコンクリート遮蔽部90によって、散乱面Sから貫通孔46へ向かう散乱線Q1,Q2が遮蔽されている。
【0043】
また、コンクリート遮蔽部90には、配管80のクランク状屈曲部84、及びクランク状屈曲部84に接続された第一配管部82及び第二配管部86の一部が埋設されている。さらに、
図2に示されるように、クランク状屈曲部84の第二屈曲部84Cは、平面視にて、散乱面Sから貫通孔46に向かう散乱線Q1の散乱領域G1から外れた位置に配置されている。
【0044】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0045】
図2及び
図3に示されるように、放射線照射装置20から照射室出入口32側へ放射した放射線Pは、通路40内の散乱面Sで散乱される。そのため、散乱した散乱線Q1,Q2が、コンクリート垂れ壁44の貫通孔46から漏洩する可能性がある。
【0046】
この対策として本実施形態では、通路40の上部における散乱領域G1,G2にコンクリート遮蔽部90が設けられている。このコンクリート遮蔽部90によって、散乱面Sからコンクリート垂れ壁44の貫通孔46へ向かう散乱線Q1,Q2が遮蔽される。したがって、コンクリート垂れ壁44の貫通孔46からの散乱線Q(放射線)の漏洩が抑制される。
【0047】
また、通路40の上部における散乱領域G1,G2にコンクリート遮蔽部90を設けることにより、配管80の下に設ける遮蔽棚を省略することができる。したがって、コストを削減することができる。
【0048】
また、
図4に示されるように、コンクリート遮蔽部90には、配管80のクランク状屈曲部84が埋設されている。これにより、配管80内を通る放射線が、クランク状屈曲部84を通過する際に、コンクリート遮蔽部90に遮蔽される。
【0049】
具体的には、第二配管部86を通って第二屈曲部84Cを透過した放射線L1は、点線で示されるように、コンクリート遮蔽部90によって遮蔽される。また、第二屈曲部84Cで反射され、減衰した放射線L2は、点線で示されるように、コンクリート遮蔽部90によって遮蔽される。したがって、コンクリート垂れ壁44の貫通孔46からの放射線の漏洩が抑制される。
【0050】
なお、放射線は、配管80内で反射を繰り返すことにより徐々に減衰される。したがって、配管80にクランク状屈曲部84を設けることにより、配管80内を通ってコンクリート垂れ壁44の貫通孔46から漏洩する放射線量が低減される。
【0051】
さらに、
図2に示されるように、クランク状屈曲部84の第二屈曲部84Cは、平面視にて、散乱面Sからコンクリート垂れ壁44の貫通孔46に向かう散乱線Qの散乱領域G1から外れた位置に配置されている。これにより、本実施形態では、第二屈曲部84Cが散乱領域G1内に配置された場合と比較して、コンクリート垂れ壁44の貫通孔46からの散乱線Q(放射線)の漏洩が抑制される。
【0052】
しかも、クランク状屈曲部84は、平面視にてクランク状に屈曲されている。これにより、本実施形態では、立面視にて、クランク状屈曲部84がクランク状に屈曲する場合と比較して、コンクリート遮蔽部90の厚みを薄くすることができる。したがって、コンクリート遮蔽部90のコストを削減することができる。
【0053】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0054】
上記実施形態では、配管80のクランク状屈曲部84における第一屈曲部84A及び第二屈曲部84Cが平面視にて90度で屈曲されている。しかし、第一屈曲部84A及び第二屈曲部84Cの屈曲角度は、適宜変更可能であり、例えば、90度未満でも良いし、90度を超えても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、配管80のクランク状屈曲部84の第二屈曲部84Cが、第一屈曲部84Aに対して通路40の幅方向の一方側(照射室30側)に配置されている。しかし、第二屈曲部84Cは、例えば、第一屈曲部84Aに対して通路40の幅方向の他方側に配置されても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、配管80のクランク状屈曲部84が、平面視にてクランク状に屈曲されている。しかし、配管80のクランク状屈曲部は、立面視にて、クランク状に屈曲させても良い。
【0057】
具体的には、
図5に示される変形例では、配管80のクランク状屈曲部100が立面視にて、クランク状に屈曲されている。このクランク状屈曲部100は、貫通孔46から順に屈曲された第一屈曲部100A及び第二屈曲部100Cと、第一屈曲部100Aと第二屈曲部100Cとを接続する接続部100Bとを有している。
【0058】
第二屈曲部100Cは、第一屈曲部100Aよりも上側に配置されるとともに、立面視にて、散乱面Sからコンクリート垂れ壁44の貫通孔46へ向かう散乱線Q2の散乱領域G2から外れた位置に配置されている。これにより、本変形例では、第二屈曲部100Cが散乱領域G2内に配置された場合と比較して、コンクリート垂れ壁44の貫通孔46からの散乱線Q2の漏洩が抑制される。
【0059】
なお、上記実施形態では、第二屈曲部100Cが第一屈曲部100Aよりも上側に配置されている。しかし、第二屈曲部100Cは、第一屈曲部100Aよりも下側に配置されても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、平面視にて、クランク状屈曲部84の第二屈曲部84Cが、散乱面Sからコンクリート垂れ壁44の貫通孔46へ向かう散乱領域G1から外れた位置に配置されている。しかし、第二屈曲部84Cは、散乱領域G1内に配置することも可能である。
【0061】
また、上記実施形態に係る放射線遮蔽構造は、放射線照射装置20(医療用リニアック)が設置された放射線遮蔽室10に適用されている。しかし、上記実施形態に係る放射線遮蔽構造は、医療用リニアックに限らず、放射線を照射する各種の放射線照射装置が設置される放射線遮蔽室に適宜適用可能である。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
20 放射線照射装置
30 照射室
40 通路
42 通路出入口
44 コンクリート垂れ壁
46 貫通孔
80 配管
84 クランク状屈曲部
84A 第一屈曲部
84C 第二屈曲部
90 コンクリート遮蔽部
100 クランク状屈曲部
100A 第一屈曲部
100C 第二屈曲部
P 放射線
G1 散乱領域
G2 散乱領域
S 散乱面