(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】回転電機の制御装置、プログラム、回転電機の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240821BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20240821BHJP
H02P 25/16 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P27/06
H02P25/16
(21)【出願番号】P 2020210162
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩史
(72)【発明者】
【氏名】青木 康明
(72)【発明者】
【氏名】木村 光徳
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-069842(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/021647(JP,A1)
【文献】特開2013-191989(JP,A)
【文献】特開2005-229714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02P 27/06
H02P 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多相の巻線(11)を有する回転電機(10)と、
直列接続された上アームスイッチ(22)と下アームスイッチ(23)とを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータ(20)と、
直列接続された上アームスイッチ(32)と下アームスイッチ(33)とを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータ(30)と、
前記第1インバータの高電位側及び前記第2インバータの高電位側を接続する高電位側接続線(LE)と、
前記第1インバータの低電位側及び前記第2インバータの低電位側を接続する低電位側接続線(LG)と、
を備える回転電機システム(100)に適用される回転電機の制御装置(50)であって、
前記回転電機システムは、
前記第1インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第1ブートストラップコンデンサを有する第1ブートストラップ回路(26)と、
前記第2インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第2ブートストラップコンデンサを有する第2ブートストラップ回路(36)と、を備え、
前記第1インバータと前記第2インバータとのうち、一方のインバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、他方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する上アームオン固定動作と、
前記一方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記他方のインバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する下アームオン固定動作と、を切り替えて行う制御部と、
前記第1ブートストラップコンデンサと前記第2ブートストラップコンデンサとのうち、前記一方のインバータに対応するブートストラップコンデンサの電圧を取得する電圧取得部と、を備え、
前記制御部は、前記上アームオン固定動作中に取得された前記ブートストラップコンデンサの電圧が電圧閾値よりも低い場合に、前記上アームオン固定動作を前記下アームオン固定動作に切り替える回転電機の制御装置。
【請求項2】
前記上アームオン固定動作は、
前記第2インバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、前記第1インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する第1動作と、
前記第1インバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、前記第2インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する第2動作と、を含み、
前記下アームオン固定動作は、
前記第1インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記第2インバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する第3動作と、
前記第2インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記第1インバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する第4動作と、を含み、
前記制御部は、前記第1動作と、前記第2動作と、前記第3動作と、前記第4動作と、を切り替えて行い、
前記電圧取得部は、前記第1ブートストラップ回路が有する前記第1ブートストラップコンデンサの電圧を取得し、
前記制御部は、前記第2動作中に取得された前記第1ブートストラップコンデンサの電圧が前記電圧閾値よりも低い場合に、前記第2動作を前記第3動作に切り替える請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2インバータにおける下アームスイッチの温度又は該温度と相関を有するパラメータのいずれかである温度パラメータを取得し、
前記第2動作中において、取得された前記第1ブートストラップコンデンサの電圧が前記電圧閾値よりも低く、且つ取得された温度パラメータが示す温度が温度閾値よりも低いことを条件に、前記第2動作を前記第3動作に切り替える請求項2に記載の回転電機の制御装置。
【請求項4】
前記電圧閾値は、第1電圧閾値であり、
前記制御部は、前記第2動作を前記第3動作に切り替えた後、前記第3動作中に取得された前記第1ブートストラップコンデンサの電圧が、前記第1電圧閾値よりも高く設定された第2電圧閾値よりも高い場合に、前記第3動作を前記第2動作に切り替える請求項2または3に記載の回転電機の制御装置。
【請求項5】
前記第3動作に切り替えられてからの経過時間を取得する経過時間取得部を備え、
前記制御部は、取得された経過時間が充電基準期間よりも長い場合に、前記第3動作を前記第2動作に切り替える請求項2または3に記載の回転電機の制御装置。
【請求項6】
前記第2インバータにおける下アームスイッチの温度又は該温度と相関を有するパラメータのいずれかである温度パラメータと前記充電基準期間とが対応付けられた相関情報が記憶された記憶部(70)を備え、
前記制御部は、
前記第2インバータにおける下アームスイッチの温度パラメータを取得し、
前記第2動作中において取得された温度パラメータ及び前記相関情報に基づいて前記充電基準期間を設定し、
前記相関情報は、温度パラメータが示す温度が高い場合、温度パラメータが示す温度が低い場合よりも前記充電基準期間が短く設定されている情報である請求項5に記載の回転電機の制御装置。
【請求項7】
前記上アームオン固定動作は、
前記第2インバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、前記第1インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する第1動作と、
前記第1インバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、前記第2インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する第2動作と、を含み、
前記下アームオン固定動作は、
前記第1インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記第2インバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する第3動作と、
前記第2インバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記第1インバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する第4動作と、を含み、
前記制御部は、前記第1動作と、前記第2動作と、前記第3動作と、前記第4動作と、を切り替えて行い、
前記電圧取得部は、前記第2ブートストラップ回路が有する前記第2ブートストラップコンデンサの電圧を取得し、
前記制御部は、前記第1動作中に取得された前記第2ブートストラップコンデンサの電圧が前記電圧閾値よりも低い場合に、前記第1動作を前記第4動作に切り替える請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1インバータにおける下アームスイッチの温度又は該温度と相関を有するパラメータのいずれかである温度パラメータを取得し、
前記第1動作中において、取得された前記第2ブートストラップコンデンサの電圧が前記電圧閾値よりも低く、且つ取得された温度パラメータが示す温度が温度閾値よりも低いことを条件に、前記第1動作を前記第4動作に切り替える請求項7に記載の回転電機の制御装置。
【請求項9】
前記電圧閾値は、第1電圧閾値であり、
前記制御部は、前記第1動作を前記第4動作に切り替え後、前記第4動作中に取得された前記第2ブートストラップコンデンサの電圧が、前記第1電圧閾値よりも高く設定された第2電圧閾値よりも高い場合に、前記第4動作を前記第
1動作に切り替える請求項7または8に記載の回転電機の制御装置。
【請求項10】
前記第4動作に切り替えられてからの経過時間を取得する経過時間取得部を備え、
前記制御部は、取得された経過時間が充電基準期間よりも長い場合に、前記第4動作を前記第1動作に切り替える請求項7または8に記載の回転電機の制御装置。
【請求項11】
前記第1インバータにおける下アームスイッチの温度又は該温度と相関を有するパラメータのいずれかである温度パラメータと前記充電基準期間とが対応付けられた相関情報が記憶された記憶部(70)を備え、
前記制御部は、
前記第1インバータにおける下アームスイッチの温度パラメータを取得し、
前記第1動作中において取得された温度パラメータ及び前記相関情報に基づいて前記充電基準期間を設定し、
前記相関情報は、温度パラメータが示す温度が高い場合、温度パラメータが示す温度が低い場合よりも前記充電基準期間が短く設定されている情報である請求項10に記載の回転電機の制御装置。
【請求項12】
多相の巻線(11)を有する回転電機(10)と、
直列接続された上アームスイッチ(22)と下アームスイッチ(23)とを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータ(20)と、
直列接続された上アームスイッチ(32)と下アームスイッチ(33)とを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータ(30)と、
前記第1インバータの高電位側及び前記第2インバータの高電位側を接続する高電位側接続線(LE)と、
前記第1インバータの低電位側及び前記第2インバータの低電位側を接続する低電位側接続線(LG)と、
を備える回転電機システム(100)に適用されるプログラムであって、
前記回転電機システムは、
前記第1インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第1ブートストラップコンデンサを有する第1ブートストラップ回路(26)と、
前記第2インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第2ブートストラップコンデンサを有する第2ブートストラップ回路(36)と、を備え、
コンピュータに、
前記第1インバータと前記第2インバータとのうち、一方のインバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、他方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する上アームオン固定動作と、
前記一方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記他方のインバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する下アームオン固定動作と、を切り替えて行う制御処理と、
前記第1ブートストラップコンデンサと前記第2ブートストラップコンデンサとのうち、前記一方のインバータに対応するブートストラップコンデンサの電圧を取得する電圧取得処理と、を実行させ、
前記制御処理において、前記上アームオン固定動作中に取得された前記ブートストラップコンデンサの電圧が電圧閾値よりも低い場合に、前記上アームオン固定動作を前記下アームオン固定動作に切り替える、プログラム。
【請求項13】
多相の巻線(11)を有する回転電機(10)と、
直列接続された上アームスイッチ(22)と下アームスイッチ(23)とを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータ(20)と、
直列接続された上アームスイッチ(32)と下アームスイッチ(33)とを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータ(30)と、
前記第1インバータの高電位側及び前記第2インバータの高電位側を接続する高電位側接続線(LE)と、
前記第1インバータの低電位側及び前記第2インバータの低電位側を接続する低電位側接続線(LG)と、
を備える回転電機システム(100)に適用される回転電機の制御方法であって、
前記回転電機システムは、
前記第1インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第1ブートストラップコンデンサを有する第1ブートストラップ回路(26)と、
前記第2インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第2ブートストラップコンデンサを有する第2ブートストラップ回路(36)と、を備え、
前記第1インバータと前記第2インバータとのうち、一方のインバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、他方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する上アームオン固定動作と、
前記一方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記他方のインバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する下アームオン固定動作と、を切り替えて行う制御ステップと、
前記第1ブートストラップコンデンサと前記第2ブートストラップコンデンサとのうち、前記一方のインバータに対応するブートストラップコンデンサの電圧を取得する電圧取得ステップと、を備え、
前記制御ステップにおいて、前記上アームオン固定動作中に取得された前記ブートストラップコンデンサの電圧が電圧閾値よりも低い場合に、前記上アームオン固定動作を前記下アームオン固定動作に切り替える、回転電機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の制御装置、プログラム、及び回転電機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オープン巻線を有する回転電機を備える回転電機システムが知られている(例えば、特許文献1)。この回転電機システムでは、回転電機を構成する各相の巻線の両端のうち第1端には、第1インバータが接続され、第2端には、第2インバータが接続されている。また、第1インバータの高電位側と第2インバータの高電位側とが、高電位側接続線により接続され、第1インバータの低電位側と第2インバータの低電位側とが、低電位側接続線により接続されている。上述した回転電機システムでは、回転電機を駆動する際に、各インバータの上、下アームスイッチにスイッチング駆動を実施するHブリッジ駆動を実施できる。
【0003】
Hブリッジ駆動では、第1インバータと第2インバータのうち、一方のインバータにおいてスイッチング駆動が実施され、他方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのうち、一方のアームスイッチがオフされ、他方のアームスイッチがオンされる。そして、スイッチング駆動を実施するインバータが所定期間毎に切り替えられる。そのため、例えば第1インバータがスイッチング駆動を実施する期間が、第2インバータがスイッチング駆動を実施する期間よりも長いと、第1インバータにおける上、下アームスイッチにスイッチング損失が集中し、これらのスイッチの温度が過度に上昇する。特許文献1に記載の技術では、第1インバータと第2インバータとを、同じ振幅で極性を反転させた駆動信号で駆動する。これにより、第1インバータと第2インバータとのうち、一方のインバータにスイッチング損失が集中することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1,第2インバータの上アームスイッチを駆動するための回路として、ブートストラップ回路が知られている。ブートストラップ回路では、下アームスイッチがオンされている場合に、上アームスイッチに対応して設けられたブートストラップ回路のブートストラップコンデンサが充電される。そして、ブートストラップコンデンサに充電された電荷により上アームスイッチがオンされる。
【0006】
Hブリッジ駆動では、スイッチング駆動を実施しないインバータにおいて、上アームスイッチがオンに維持されることがある。この場合に、上アームスイッチがオンに維持される期間が長期化した場合には、ブートストラップコンデンサの放電によりブートストラップコンデンサの電圧が低下し、上アームスイッチをオンに維持することができなくなり得る。その結果、第1,第2インバータの駆動を継続できないことが懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、第1,第2インバータの駆動を適正に継続できる回転電機の制御装置、プログラム、及び回転電機の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、多相の巻線を有する回転電機と、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第1端に接続される第1インバータと、直列接続された上アームスイッチと下アームスイッチとを相毎に有し、それら上アームスイッチと下アームスイッチとの接続点が各相の前記巻線の両端のうち第2端に接続される第2インバータと、前記第1インバータの高電位側及び前記第2インバータの高電位側を接続する高電位側接続線と、前記第1インバータの低電位側及び前記第2インバータの低電位側を接続する低電位側接続線と、を備える回転電機システムに適用される回転電機の制御装置であって、前記回転電機システムは、前記第1インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第1ブートストラップコンデンサを有する第1ブートストラップ回路と、前記第2インバータの上アームスイッチをオンするための電圧を生成する第2ブートストラップコンデンサを有する第2ブートストラップ回路と、を備え、前記第1インバータと前記第2インバータとのうち、一方のインバータにおいて、上アームスイッチをオンに維持して且つ下アームスイッチをオフに維持し、他方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施する上アームオン固定動作と、前記一方のインバータにおいて、上、下アームスイッチのスイッチング駆動を実施し、前記他方のインバータにおいて、上アームスイッチをオフに維持して且つ下アームスイッチをオンに維持する下アームオン固定動作と、を切り替えて行う制御部と、前記第1ブートストラップコンデンサと前記第2ブートストラップコンデンサとのうち、前記一方のインバータに対応するブートストラップコンデンサの電圧を取得する電圧取得部と、を備え、前記制御部は、前記上アームオン固定動作中に取得された前記ブートストラップコンデンサの電圧が電圧閾値よりも低い場合に、前記上アームオン固定動作を前記下アームオン固定動作に切り替える。
【0009】
オープン巻線を有する回転電機を備える回転電機システムでは、第1インバータと第2インバータとを用いて回転電機を駆動する場合に、上アームオン固定動作が実施される。上アームオン固定動作では、第1インバータと第2インバータとのうち、一方のインバータ(以下、対象インバータ)における上アームスイッチがオンに維持されるため、上アームオン固定動作の動作期間が長期化すると、対象インバータに対応するブートストラップ回路が有するブートストラップコンデンサの放電により、対象インバータの上アームスイッチをオンに維持することができないことが懸念される。
【0010】
この点、上記構成では、上アームオン固定動作と下アームオン固定動作とが切り替えて行われる。下アームオン固定動作では、対象インバータにおける上、下アームスイッチがスイッチング駆動されることで、対象インバータに対応するブートストラップコンデンサが充電される。そのため、上アームオン固定動作中に取得された対応コンデンサの電圧が電圧閾値よりも低い場合に、上アームオン固定動作を下アームオン固定動作に切り替えることで、対応コンデンサの過剰な放電を抑制できる。また、上アームオン固定動作と下アームオン固定動作とでは、回転電機の各相の巻線に印加される相電圧の極性が等しい。そのため、上アームオン固定動作を下アームオン固定動作に切り替えることで、切り替えに伴う回転電機の制御性低下を抑制して第1,第2インバータの駆動を適正に継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】第1~第4動作におけるU相巻線へのバッテリ電圧印加態様を示す図。
【
図4】第1実施形態に係る切替制御処理のフローチャート。
【
図6】第1,第2インバータの各スイッチの状態の推移を示すタイムチャート。
【
図8】第1制御信号と第2制御信号との生成過程を示す図。
【
図9】第1制御信号と第2制御信号との切り替え過程を示す図。
【
図10】第2実施形態に係る切替制御処理のフローチャート。
【
図11】第3実施形態に係る切替制御処理のフローチャート。
【
図12】第4実施形態に係る切替制御処理のフローチャート。
【
図13】下アームスイッチの温度と充電基準期間との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る回転電機の制御装置を、車載の回転電機システム100に適用した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る回転電機システム100は、回転電機10と、第1インバータ20と、第2インバータ30と、回転電機10を制御対象とする制御装置50と、を備えている。
【0014】
回転電機10は、回生発電及び力行駆動の機能を有し、具体的には、MG(Motor Generator)である。回転電機10は、バッテリ40との間で電力の入出力を行うものであり、力行時には、バッテリ40から供給される電力により車両に推進力を付与し、回生時には、車両の減速エネルギーを用いて発電を行い、直流電源であるバッテリ40に電力を出力する。
【0015】
回転電機10は、オープン型の3相の巻線11を有する。巻線11は、U,V,W相巻線11U,11V,11Wを含む。回転電機10のロータは、車両の駆動輪と動力伝達が可能なように接続されている。回転電機10は、例えば同期機である。
【0016】
回転電機10の各相の巻線11は、第1,第2インバータ20,30を介して、バッテリ40に接続されている。バッテリ40は、充放電可能な蓄電池であり、具体的には、複数のリチウムイオン蓄電池が直列接続された組電池である。なお、バッテリ40は、他の種類の蓄電池であってもよい。
【0017】
第1,第2インバータ20,30は、バッテリ40から入力される直流電力を交流電力に変換して回転電機10に出力する。本実施形態において、第1,第2インバータ20,30は、3相のものである。第1,第2インバータ20,30は、スイッチング素子としての上アームスイッチ及び下アームスイッチの直列接続体を3相分備えている。
【0018】
第1インバータ20は、高電位側のスイッチング素子である上アームスイッチ22(22A,22B,22C)、及び低電位側のスイッチング素子である下アームスイッチ23(23A,23B,23C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。各相の上アームスイッチ22と下アームスイッチ23との接続点には、回転電機10の対応する相の巻線11の第1端が接続されている。なお、本実施形態では、スイッチ22,23として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはNチャネルMOSFETを用いている。各スイッチ22,23には、ボディダイオード24が内蔵されている。
【0019】
また、第1インバータ20は、第1温度センサ25と、第1駆動回路26とを備えている。第1温度センサ25は、各スイッチ22,23の温度を検出する。以下、第1温度センサ25が検出する上アームスイッチ22の温度をTU1といい、第1温度センサ25が検出する下アームスイッチ23の温度をTD1という。本実施形態では、第1温度センサ25は感温ダイオードであり、各スイッチ22,23と第1温度センサ25とは、半導体モジュールとして一体化されている。なお、第1温度センサ25は、サーミスタ、又は各スイッチ22,23を冷却する冷却水の温度を検出する水温センサであってもよい。後述する第2温度センサ35についても同様である。
【0020】
第1駆動回路26は、制御装置50から出力される第1駆動信号SG1に基づいて、第1インバータ20における各相の上アームスイッチ22及び下アームスイッチ23を駆動する。
図2(A)に、第1駆動回路26の回路構成を示す。第1駆動回路26は、第1ブートストラップ回路GB1と、上アームスイッチ22を駆動する第1上アーム駆動回路GH1と、下アームスイッチ23を駆動する第1下アーム駆動回路GL1と、を備える。
【0021】
第1ブートストラップ回路GB1は、第1ブートストラップコンデンサCA1に充電された電荷を用いて、上アームスイッチ22をオンするための電圧を生成する。第1ブートストラップコンデンサCA1の第1電極は、ブートストラップダイオードDA及び抵抗RAを介して直流電圧源BAの高圧端子に接続されており、第1ブートストラップコンデンサCA1の第2電極は、対応する相の上アームスイッチ22と下アームスイッチ23との接続点に接続されている。直流電圧源BAの低圧端子は、下アームスイッチ23の低電圧側の主端子に接続されている。
【0022】
第1ブートストラップ回路GB1では、下アームスイッチ23がオンされるオン期間に、ブートストラップダイオードDA及び抵抗RAを介して直流電圧源BAにより第1ブートストラップコンデンサCA1が充電される。第1上アーム駆動回路GH1は、ブートストラップコンデンサCAの第1電極及び第2電極に接続されており、下アームスイッチ23がオフされるオフ期間に、ブートストラップコンデンサCAに蓄積された電荷を用いて上アームスイッチ22をオンする。つまり、第1ブートストラップコンデンサCA1は、蓄積された電荷を用いて上アームスイッチ22をオンするための電圧を生成し、第1上アーム駆動回路GH1は、ブートストラップコンデンサCAが生成した電圧により上アームスイッチ22をオンする。第1下アーム駆動回路GL1は、直流電圧源BAの高圧端子及び低圧端子に接続されており、直流電圧源BAの出力電圧(例えば定格電圧)により下アームスイッチ23をオンする。
【0023】
第2インバータ30は、高電位側のスイッチング素子である上アームスイッチ32(32A,32B,32C)、及び低電位側のスイッチング素子である下アームスイッチ33(33A,33B,33C)の直列接続体が、並列に接続されて構成されている。各相の上アームスイッチ32と下アームスイッチ33との接続点には、回転電機10の対応する相の巻線11の第2端が接続されている。なお、本実施形態では、スイッチ32,33として、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的にはNチャネルMOSFETを用いている。各スイッチ32,33には、ボディダイオード24が内蔵されている。
【0024】
また、第2インバータ30は、第2温度センサ35と、第2駆動回路36とを備えている。第2温度センサ35は、各スイッチ32,33の温度を検出する。以下、第2温度センサ35が検出する上アームスイッチ32の温度をTU2といい、第2温度センサ35が検出する下アームスイッチ33の温度をTD2という。本実施形態では、第2温度センサ35は感温ダイオードであり、各スイッチ32,33と第2温度センサ35とは、半導体モジュールとして一体化されている。
【0025】
第2駆動回路36は、制御装置50から出力される第2駆動信号SG2に基づいて、第2インバータ30における各相の上アームスイッチ32及び下アームスイッチ33を駆動する。
図2(B)に、第2駆動回路36の回路構成を示す。第2駆動回路36は、第2ブートストラップ回路GB2と、上アームスイッチ32を駆動する第2上アーム駆動回路GH2と、下アームスイッチ33を駆動する第2下アーム駆動回路GL2と、を備える。
【0026】
第2ブートストラップ回路GB2は、第2ブートストラップコンデンサCA2に充電された電荷を用いて、上アームスイッチ32をオンするための電圧を生成する。なお、第2ブートストラップ回路GB2の回路構成は、第1ブートストラップ回路GB1の回路構成と同一であり、重複した説明を省略する。
【0027】
バッテリ40の高電位側と第1インバータ20の高電位側と第2インバータ30の高電位側とは、バスバー等の高電位側接続線LEにより接続されている。バッテリ40の低電位側と第1インバータ20の低電位側と第2インバータ30の低電位側とは、バスバー等の低電位側接続線LGにより接続されている。また、高電位側接続線LEと低電位側接続線LGとは、コンデンサ41により接続されている。コンデンサ41は、第1インバータ20よりもバッテリ40側において、高電位側接続線LEと低電位側接続線LGとの間を接続する。
【0028】
回転電機システム100は、バッテリ40の電源電圧を検出する第1電圧センサ51と、回転電機10の各相の巻線11に流れる相電流を検出する電流センサ52、及び回転電機10の回転角を検出する角度センサ53(例えばレゾルバ)を備えている。また、回転電機システム100は、第1ブートストラップコンデンサCA1の端子電圧である第1コンデンサ電圧を検出する第2電圧センサ54及び第2ブートストラップコンデンサCA2の端子電圧である第2コンデンサ電圧を検出する第3電圧センサ55を備える。各センサ51~55の検出値は、制御装置50に入力される。制御装置50は、入力された検出値に基づき、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、第1インバータ20と第2インバータ30とを制御する。制御量は、例えばトルクである。
【0029】
具体的には、制御装置50は、第1インバータ20の制御において、デッドタイムを挟みつつ上アームスイッチ22と下アームスイッチ23とを交互にオンすべく、各スイッチ22,23に対応する第1駆動信号SG1を出力する。第1駆動信号SG1は、各スイッチ22,23のオンへの切り替えを指示するオン指令と、オフへの切り替えを指示するオフ指令とのいずれかをとる。第1駆動回路26では、オン指令の第1駆動信号SG1により下アームスイッチ23がオンされるオン期間に、第1ブートストラップコンデンサCA1が充電される。第1上アーム駆動回路GH1は、オフ指令の第1駆動信号SG1により下アームスイッチ23がオフされるオフ期間に、第1ブートストラップコンデンサCA1に蓄積された電荷を用いて上アームスイッチ22のゲートにゲート駆動信号を出力する。これにより、上アームスイッチ22のゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、上アームスイッチ22がオンされる。
【0030】
また、制御装置50は、第2インバータ30の制御において、デッドタイムを挟みつつ上アームスイッチ32と下アームスイッチ33とを交互にオンすべく、各スイッチ32,33に対応する第2駆動信号SG2を出力する。第2駆動信号SG2は、各スイッチ32,33のオンへの切り替えを指示するオン指令と、オフへの切り替えを指示するオフ指令とのいずれかをとる。第2駆動回路36では、オン指令の第2駆動信号SG2により下アームスイッチ33がオンされるオン期間に、第2ブートストラップコンデンサCA2が充電される。第2上アーム駆動回路GH2は、オフ指令の第2駆動信号SG2により下アームスイッチ33がオフされるオフ期間に、第2ブートストラップコンデンサCA2に蓄積された電荷を用いて上アームスイッチ32のゲートにゲート駆動信号を出力する。これにより、上アームスイッチ32がオンされる。
【0031】
さらに、制御装置50は、入力された検出値に基づいて、回転電機10の動作状態を取得する。回転電機10の動作状態は、例えば高速回転状態や低速回転状態である。そして、取得された動作状態に基づいて、第1駆動信号SG1と第2駆動信号SG2とを生成する。
【0032】
例えば、回転電機10が高速回転状態である場合、第1インバータ20と第2インバータ30とがHブリッジ駆動される。Hブリッジ駆動では、第1インバータ20と第2インバータ30とのうち、一方のインバータがスイッチング駆動としてのPWM駆動により制御される。PWM駆動は、回転電機10への出力電圧の目標値である電圧指令値V*と、三角波信号等のキャリア信号SDとの大小比較に基づいて、各スイッチの状態を制御する駆動である。なお、電圧指令値V*とキャリア信号SDとに基づく各スイッチの駆動信号の生成方法については、
図7を用いて後述する。また、他方のインバータでは、上アームスイッチと下アームスイッチのうち、一方のスイッチがオン固定され、他方のスイッチがオフ固定される。
【0033】
Hブリッジ駆動では、第1動作と第2動作とが交互に実施される。
図3に、第1動作及び第2動作におけるU相巻線11Uへのバッテリ電圧印加態様を例示する。なお、V相巻線11V及びW相巻線11Wへのバッテリ電圧印加態様は、U相巻線11Uへのバッテリ電圧印加態様と同様であり、説明を省略する。
【0034】
図3に示すように、第1動作では、第1インバータ20の上,下アームスイッチ22A,23AがPWM駆動され、第2インバータ30の上アームスイッチ32Aがオンされ且つ下アームスイッチ33Aがオフされるように制御される。これにより、回転電機10のU相巻線11Uには、第2インバータ30が高電位となり、第1インバータ20側が低電位となる極性の相電圧が印加される。
【0035】
また、第2動作では、第2インバータ30の上,下アームスイッチ32A,33AがPWM駆動され、第1インバータ20の上アームスイッチ22Aがオンされ且つ下アームスイッチ23Aがオフされるように制御される。これにより、回転電機10のU相巻線11Uには、第1インバータ20側が高電位となり、第2インバータ30側が低電位となる極性の相電圧が印加される。そのため、第1動作と第2動作とが交互に実施されることで、回転電機10の各相の巻線11に交流電流が流れる。以下、第1動作と第2動作とを交互に実施する制御を、第1交流制御という。なお、本実施形態において、第1動作及び第2動作が「上アームオン固定動作」に相当する。
【0036】
ところで、第1動作及び第2動作では、PWM駆動が実施されないインバータにおいて、上アームスイッチ22A,32Aがオンされ、下アームスイッチ23A,33Aがオフされる。そのため、上アームスイッチ22A,32Aがオンされる期間が長期化し、第1,第2ブートストラップコンデンサCA1,CA2の放電により第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2が、第1,第2インバータ20,30の上アームスイッチ22A,32Aをオンする閾値電圧Vthよりも低下する。この場合、上アームスイッチ22A,32Aをオンに維持することができず、第1,第2インバータ20,30の駆動を継続できないことが懸念される。
【0037】
そこで、本実施形態では、Hブリッジ駆動において、第1交流制御に加え、第3動作と第4動作とを交互に実施する第2交流制御が実施される。
図3に、第3動作及び第4動作におけるU相巻線11Uへのバッテリ電圧印加態様を例示する。なお、V相巻線11V及びW相巻線11Wへのバッテリ電圧印加態様は、U相巻線11Uへのバッテリ電圧印加態様と同様であり、説明を省略する。
【0038】
図3に示すように、第3動作では、第1インバータ20の上,下アームスイッチ22A,23AがPWM駆動され、第2インバータ30の上アームスイッチ32Aがオフされ且つ下アームスイッチ33Aがオンされるように制御される。これにより、回転電機10のU相巻線11Uには、第1インバータ20側が高電位となり、第2インバータ30側が低電位となる極性の相電圧が印加される。
【0039】
また、第4動作では、第2インバータ30の上,下アームスイッチ32A,33AがPWM駆動され、第1インバータ20の上アームスイッチ22Aがオフされ且つ下アームスイッチ23Aがオンされるように制御される。これにより、回転電機10のU相巻線11Uには、第2インバータ30側が高電位となり、第1インバータ20側が高電位となる極性の相電圧が印加される。そのため、第3動作と第4動作とが交互に実施されることで、回転電機10の各相の巻線11に交流電流が流れる。なお、本実施形態において、第3動作及び第4動作が「下アームオン固定動作」に相当する。
【0040】
そして、本実施形態おいて、制御装置50は、第1交流制御中に第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2を取得し、これらの電圧VC1,VC2のいずれか一方が第1電圧閾値VDthよりも低い場合に、第1交流制御を第2交流制御に切り替える切替制御処理を実施する。第1電圧閾値VDthは、上アームスイッチ22,32の閾値電圧Vthよりも高く且つ直流電圧源BAの出力電圧よりも低い電圧に設定されている。
【0041】
図4に本実施形態の切替制御処理のフローチャートを示す。制御装置50は、回転電機10の力行動作中又は回生動作中に、所定期間毎に切替制御処理を繰り返し実施する。
【0042】
切替制御処理を開始すると、まずステップS11において、回転電機10を第1交流制御する第1制御期間であるかを判定する。本実施形態では、所定の制御期間毎に、第1交流制御と第2交流制御とを切り替えて実施しており、第1制御期間である場合、ステップS11で肯定判定し、ステップS12に進む。一方、第2制御期間である場合、ステップS11で否定判定し、ステップS33に進む。
【0043】
ステップS12では、第1フラグF1がオンであるかを判定する。第1フラグF1は、第1ブートストラップコンデンサCA1の第1コンデンサ電圧VC1が第1電圧閾値VDthよりも低くなった場合にオンとなり、オンとなった後に第1コンデンサ電圧VC1が第2電圧閾値VUthよりも高くなった場合にオフとなる。第2電圧閾値VUthは、第1電圧閾値VDthよりも高く且つ直流電圧源BAの出力電圧よりも低い電圧に設定されている。ステップS12で肯定判定すると、ステップS30に進む。一方、ステップS12で否定判定すると、ステップS13に進む。
【0044】
ステップS13では、第2フラグF2がオンであるかを判定する。第2フラグF2は、第2ブートストラップコンデンサCA2の第2コンデンサ電圧VC2が第1電圧閾値VDthよりも低くなった場合にオンとなり、オンとなった後に第2コンデンサ電圧VC2が第2電圧閾値VUthよりも高くなった場合にオフとなる。ステップS13で肯定判定すると、ステップS34に進む。一方、ステップS13で否定判定すると、ステップS14に進む。
【0045】
ステップS14では、第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2を取得する。続くステップS15では、ステップS14で取得された第1コンデンサ電圧VC1が第1電圧閾値VDthよりも低いか否かを判定する。ステップS15で肯定判定すると、ステップS16において、第1フラグF1をオンに切り替え、ステップS20に進む。一方、ステップS15で否定判定すると、ステップS17に進む。なお、本実施形態において、ステップS14の処理が「電圧取得部」に相当する。
【0046】
ステップS17では、ステップS14で取得された第2コンデンサ電圧VC2が第1電圧閾値VDthよりも低いか否かを判定する。ステップS17で肯定判定すると、ステップS18において、第2フラグF2をオンに切り替え、ステップS20に進む。一方、ステップS17で否定判定すると、ステップS19において、第1交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。
【0047】
ステップS20では、回転電機10の交流制御を第2交流制御に切り替える。続くステップS21では、第2交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。
【0048】
一方、ステップS30では、第1コンデンサ電圧VC1を取得する。続くステップS31では、ステップS30で取得された第1コンデンサ電圧VC1が第2電圧閾値VUthよりも高いか否かを判定する。ステップS31で肯定判定すると、ステップS32において、第1フラグF1をオフに切り替え、ステップS37に進む。一方、ステップS31で否定判定すると、ステップS33において、第2交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。
【0049】
また、ステップS34では、第2コンデンサ電圧VC2を取得する。続くステップS35では、ステップS34で取得された第2コンデンサ電圧VC2が第2電圧閾値VUthよりも高いか否かを判定する。ステップS35で肯定判定すると、ステップS36において、第2フラグF2をオフに切り替え、ステップS37に進む。一方、ステップS35で否定判定すると、ステップS33において、第2交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。
【0050】
ステップS37では、回転電機10の交流制御を第1交流制御に切り替える。続くステップS38では、第1交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS20,S37の処理が「制御部」に相当する。
【0051】
続いて、
図5に、切替制御処理の一例を示す。
図5は、第1制御期間における第1ブートストラップコンデンサCA1の充放電状態の推移を示す。
図5において、(A)は、第1ブートストラップコンデンサCA1の充放電状態の推移を示し、(B)は、回転電機10の交流制御の推移を示し、(C)は、第1フラグF1の推移を示す。
【0052】
図5に示すように、時刻t1までの第2制御期間において、第1ブートストラップコンデンサCA1は、第3,第4動作により充電されており、第1フラグF1はオフされている。
【0053】
時刻t1に第1制御期間に切り替わると、回転電機10の交流制御が、第2交流制御から第1交流制御に切り替わる。これにより、第1ブートストラップコンデンサCA1は第2動作により放電され、第1コンデンサ電圧VC1が低下する。なお、第1交流制御において、第1ブートストラップコンデンサCA1は、第1動作により充電されるが、第2動作による放電量が第1動作による充電量よりも多いため、第1ブートストラップコンデンサCA1は放電状態となる。
【0054】
そして、時刻t2に第1コンデンサ電圧VC1が第1電圧閾値VDthよりも低下すると、第1フラグF1がオンし、回転電機10の交流制御が、第1交流制御から第2交流制御に切り替わる。つまり、第1制御期間において、第2交流制御が実施される。
【0055】
第2交流制御において、第1ブートストラップコンデンサCA1は、第3,第4動作により充電される。そして、その後の時刻t3に第1コンデンサ電圧VC1が第2電圧閾値VUthよりも高くなると、第1フラグF1がオフし、回転電機10の交流制御が、第2交流制御から第1交流制御に切り替わる。つまり、第1制御期間において、一時的に第2交流制御となっていた回転電機10の交流制御が、第1交流制御に戻る。
【0056】
その後の時刻t4に第1制御期間が終了すると、回転電機10の交流制御が、第1交流制御から第2交流制御に切り替わる。
【0057】
続いて、
図6に、第1交流制御と第2交流制御における第1,第2インバータ20,30の各スイッチ22,23,32,33の状態の推移を示す。
図6において、(A)は、各相の巻線11に印加される相電圧の推移を示し、(B)は、上アームスイッチ22の駆動状態の推移を示し、(C)は、下アームスイッチ23の駆動状態の推移を示し、(D)は、上アームスイッチ32の駆動状態の推移を示し、(E)は、下アームスイッチ33の駆動状態の推移を示す。
【0058】
図6に示すように、第1交流制御が実施される第1制御期間では、第1動作と第2動作とが交互にN1回ずつ実施される。N1回は、2以上の整数である。
【0059】
第1動作及び第2動作において、第1インバータ20の上アームスイッチ22は、第1制御信号SC1により制御される。第1制御信号SC1は、第1動作が実施される第1動作期間において、オン指令が出力される状態(以下、オン出力状態)とオフ指令が出力される状態(以下、オフ出力状態)とが切り替えられ、第2動作が実施される第2動作期間において、オン出力状態に維持される。また、第1インバータ20の下アームスイッチ23は、第1制御信号SC1のオン出力状態とオフ出力状態とを反転させた第1反転信号SR1により制御される。つまり、第1動作及び第2動作において、第1制御信号SC1と第1反転信号SR1により、第1駆動信号SG1が構成されている。
【0060】
また、第2インバータ30の上アームスイッチ32は、第2制御信号SC2により制御される。第2制御信号SC2は、第1動作期間において、オン出力状態に維持され、第2動作期間において、オン出力状態とオフ出力状態とが切り替えられる。また、第2インバータ30の下アームスイッチ33は、第2制御信号SC2のオン出力状態とオフ出力状態とを反転させた第2反転信号SR2により制御される。つまり、第1動作及び第2動作において、第2制御信号SC2と第2反転信号SR2により、第2駆動信号SG2が構成されている。
【0061】
第2交流制御が実施される第2制御期間では、第3動作と第4動作とが交互にN2回ずつ実施される。N2回は、2以上の整数である。第1交流制御と第2交流制御とが切り替えられることで、第1~第4動作が、切り替えて実施される。なお、繰り返し数N2は、繰り返し数N1と等しくてもよければ、異なっていてもよい。
【0062】
第3動作及び第4動作において、第1インバータ20の上アームスイッチ22は、第2反転信号SR2により制御され、第1インバータ20の下アームスイッチ23は、第2制御信号SC2により制御されている。つまり、第3動作及び第4動作において、第2反転信号SR2と第2制御信号SC2により、第1駆動信号SG1が構成されている。
【0063】
また、第2インバータ30の上アームスイッチ32は、第1反転信号SR1により制御されており、第2インバータ30の下アームスイッチ33は、第1制御信号SC1により制御されている。つまり、第3動作及び第4動作において、第1反転信号SR1と第1制御信号SC1により、第2駆動信号SG2が構成されている。
【0064】
つまり、本実施形態では、第1交流制御と第2交流制御とにおいて、各インバータ20,30に入力される制御信号SC1,SC2及び反転信号SR1,SR2が切り替えられる。また、各インバータ20,30において、上アームスイッチ22,32及び下アームスイッチ23,33に入力される信号の種類が切り替えられる。これにより、同一の制御信号SC1,SC2を用いて、第1,第2インバータ20,30の各スイッチ22,23,32,33の状態が制御される。
【0065】
続いて、
図7,8を用いて、第1制御信号SC1と第2制御信号SC2との生成方法について説明する。
図7に、第1制御信号SC1と第2制御信号SC2とを生成する信号生成回路60の回路構成を示す。信号生成回路60は、制御装置50に設けられている。
【0066】
図8に、1相分の第1制御信号SC1と第2制御信号SC2とを示す。
図8に示すように、第1制御信号SC1と第2制御信号SC2とは、電圧指令値V*とキャリア信号SDとに基づいて生成される。各相における電圧指令値V*の位相は電気角で120°ずつずれており、各相において共通のキャリア信号SDが用いられる。なお、本実施形態の搬送波としてのキャリア信号SDは、振幅がVAであり、その中心電圧がゼロである三角波信号である。
【0067】
図7に示すように、第1加算回路61は、電圧指令値V*を取得し、取得した電圧指令値V*にキャリア信号SDの振幅であるVAを加算する。第1加算回路61は、加算後の第1電圧指令値V1*を、第1オペアンプ62の非反転入力端子62Aに出力する。
図8(C)に示すように、第1電圧指令値V1*は、その中心電圧がVAである信号となる。
【0068】
第1オペアンプ62の反転入力端子62Bには、キャリア信号SDが入力されている。第1オペアンプ62は、第1電圧指令値V1*がキャリア信号SDよりも大きい場合にオン指令となり、第1電圧指令値V1*がキャリア信号SDよりも小さい場合にオフ指令となる第1制御信号SC1を、出力端子62Cから出力する。
【0069】
また、第2加算回路63は、電圧指令値V*を取得し、取得した電圧指令値V*に-VAを加算する。第2加算回路63は、加算後の第2電圧指令値V2*を、第2オペアンプ64の負極側入力端子64Bに出力する。
図8(D)に示すように、第2電圧指令値V2*は、その中心電圧が-VAである信号となる。
【0070】
第2オペアンプ64の正極側入力端子64Aには、キャリア信号SDが入力されている。第2オペアンプ64は、キャリア信号SDが第2電圧指令値V2*よりも大きい場合にオン指令となり、キャリア信号SDが第2電圧指令値V2*よりも小さい場合にオフ指令となる第2制御信号SC2を、出力端子64Cから出力する。
【0071】
そのため、第1制御信号SC1は、第1電圧指令値V1*が中心電圧VAよりも大きくなる半周期において、オン出力状態に維持され、第1電圧指令値V1*がその中心電圧VAよりも小さくなる半周期において、オン出力状態とオフ出力状態とが切り替えられる。第1制御信号SC1がオン出力状態に維持される期間は、第1制御期間において第2動作期間に相当し、第2制御期間において第3動作期間に相当する。また、第1制御信号SC1のオン出力状態とオフ出力状態とが切り替えられる期間は、第1制御期間において第1動作期間に相当し、第2制御期間において第4動作期間に相当する。
【0072】
また、第2制御信号SC2は、第2電圧指令値V2*がその中心電圧-VAよりも大きくなる半周期において、オン出力状態とオフ出力状態とが切り替えられ、第2電圧指令値V2*が中心電圧-VAよりも小さくなる半周期において、オン出力状態に維持される。つまり、第1制御信号SC1と第2制御信号SC2とでは、オン出力状態とオフ出力状態とが切り替えられる期間と、オン出力状態に維持される期間とが互いに異なっている。第2制御信号SC2のオン出力状態とオフ出力状態とが切り替えられる期間は、第1制御期間において第2動作期間に相当し、第2制御期間において第3動作期間に相当する。また、第2制御信号SC2がオン出力状態に維持される期間は、第1制御期間において第1動作期間に相当し、第2制御期間において第4動作期間に相当する。
【0073】
制御期間の切り替わりにより第1交流制御と第2交流制御とが切り替えられる場合には、各インバータ20,30に入力される制御信号SC1,SC2及び反転信号SR1,SR2が切り替えられる。この場合、第1交流制御と第2交流制御とを切り替えるのに所定の切り替え期間が必要とされ、この切り替え期間においてインバータ20,30の動作が停止される。一方、第1制御期間において第1交流制御と第2交流制御とを切り替える場合には、該切り替え期間に亘ってインバータ20,30の動作を停止させることができない。
【0074】
そこで、本実施形態では、第1制御期間において第1交流制御と第2交流制御とが切り替えられる場合には、第1,第2加算回路61,63において、電圧指令値V*に加算する値が切り替えられる。
図9に、第1制御期間において第1交流制御と第2交流制御とを切り替える場合における第1,第2電圧指令値V1*,V2*の推移を示す。
【0075】
図9では、時刻t1から時刻t4までの第1制御期間において、時刻t2に回転電機10の交流制御が、第1交流制御から第2交流制御に切り替えられる。この場合、第1加算回路61において、電圧指令値V*に加算していた値が、VAから-VAに切り替えられる。これにより、
図9(C)に示すように、第1電圧指令値V1*は、中心電圧がVAである信号から中心電圧が-VAである信号へと切り替わる。また、第2加算回路63において、電圧指令値V*に加算していた値が、-VAからVAに切り替えられる。これにより、
図9(D)に示すように、第2電圧指令値V2*は、中心電圧が-VAである信号から中心電圧がVAである信号へと切り替わる。この結果、第1制御信号SC1は、上記切り替えが無かった場合の第2反転信号SR2に切り替わるとともに、第2制御信号SC2は、上記切り替えが無かった場合の第1反転信号SR1に切り替わる。そのため、第1交流制御における第1動作期間に第4動作が実施され、第1交流制御における第2動作期間に第3動作が実施される。
【0076】
また、時刻t3に回転電機10の交流制御が、第2交流制御から第1交流制御に切り替えられる。この場合、第1加算回路61において、電圧指令値V*に加算していた値が、-VAからVAに切り替えられる。また、第2加算回路63において、電圧指令値V*に加算していた値が、VAから-VAに切り替えられる。この結果、第1交流制御における第1動作期間に第1動作が実施され、第1交流制御における第2動作期間に第2動作が実施される。
【0077】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0078】
・本実施形態では、第1交流制御の第2動作中に第1ブートストラップコンデンサCA1の第1コンデンサ電圧VC1が取得され、取得された第1コンデンサ電圧VC1が第1電圧閾値VDthよりも低い場合に、第1交流制御を第2交流制御に切り替え、第2動作を第3動作に切り替えられる。第3動作では、第1インバータ20における上、下アームスイッチ22,23がPWM駆動されることで、第1ブートストラップコンデンサCA1が充電される。そのため、第1ブートストラップコンデンサCA1の過剰な放電を抑制することができる。また、第2動作と第3動作とでは、回転電機10の各相の巻線11に印加される相電圧の極性が等しい。そのため、第2動作を第3動作に切り替えることで、切り替えに伴う回転電機10の制御性低下を抑制して第1,第2インバータ20,30の駆動を適正に継続できる。
【0079】
また、第1交流制御の第1動作中に第2ブートストラップコンデンサCA2の第2コンデンサ電圧VC2が取得され、取得された第2コンデンサ電圧VC2が第1電圧閾値VDthよりも低い場合に、第1交流制御を第2交流制御に切り替え、第1動作を第4動作に切り替えられる。第4動作では、第2インバータ30における上、下アームスイッチ32,33がPWM駆動されることで、第2ブートストラップコンデンサCA2が充電される。そのため、第2ブートストラップコンデンサCA2の過剰な放電を抑制することができる。また、第1動作と第4動作とでは、回転電機10の各相の巻線11に印加される相電圧の極性が等しい。そのため、第1動作を第4動作に切り替えることで、切り替えに伴う回転電機10の制御性低下を抑制して第1,第2インバータ20,30の駆動を適正に継続できる。
【0080】
・本実施形態では、第1~第4動作を切り替えて実施する。第1,第3動作と第2,第4動作とでは、PWM駆動が実施されるインバータが異なる。また、第1,第2動作と第3,第4動作とでは、PWM駆動が実施されないインバータにおいて、オン固定されるスイッチが異なる。そのため、これらの動作を切り替えて実施することで、特定のスイッチにPWM駆動及びオン固定により損失が集中することを抑制できる。つまり、各スイッチ22,23,32,33における発熱を均等化することができ、特定のスイッチにおける温度の過度な上昇を抑制できる。その上で本実施形態では、第1,第2ブートストラップコンデンサCA1,CA2の放電により第1,第2動作を継続することができない場合には、第3,第4動作に切り替えることで、特定のスイッチにおける温度の過度な上昇を抑制しつつ、第1,第2インバータ20,30の駆動を適正に継続できる。
【0081】
・本実施形態では、第1制御期間において、第1,第2ブートストラップコンデンサCA1,CA2の放電により第1,第2動作を継続することができない場合には、第3,第4動作に切り替える。これにより、第1,第2インバータ20,30の駆動を適正に継続することができるため、第1,第2動作を第3,第4動作に切り替えた場合には、第1制御期間が終了するまで第3,第4動作に維持することも考えられる。この場合、第1,第2動作の動作期間が減少するとともに、第3,第4動作の動作期間が増加し、特定のスイッチにおける温度が過度に上昇することが懸念される。
【0082】
この点、本実施形態では、第1ブートストラップコンデンサCA1の放電により第2動作を第3動作に切り替えた場合には、切り替え後の第1ブートストラップコンデンサCA1の第1コンデンサ電圧VC1を取得し、取得された第1コンデンサ電圧VC1が第2電圧閾値VUthよりも高い場合に、第3動作を第2動作に切り替える。また、第2ブートストラップコンデンサCA2の放電により第1動作を第4動作に切り替えた場合には、切り替え後の第2ブートストラップコンデンサCA2の第2コンデンサ電圧VC2を取得し、取得された第2コンデンサ電圧VC2が第2電圧閾値VUthよりも高い場合に、第4動作を第1動作に切り替える。これにより、第1,第2動作の動作期間と第3,第4動作の動作期間との不均衡が抑制され、特定のスイッチにおける温度の過度な上昇を抑制できる。
【0083】
・第1~第4動作の切り替えにおいて、特定の切り替えにより損失が増加する場合がある。特定の切り替えは、具体的には例えば、オンに維持するスイッチを、上アームスイッチ22,32から下アームスイッチ23,33に切り替えることである。特定の切り替え回数は少ないことが望ましい。
【0084】
この点、本実施形態では、第1交流制御において、第1動作と第2動作とが交互に実施され、オンに維持されるスイッチが上アームスイッチ22,32に限られる。また、第2交流制御において、第3動作と第4動作とが交互に実施され、オンに維持されるスイッチが下アームスイッチ23,33に限られる。そのため、第1交流制御及び第2交流制御を実施している期間には、特定の切り替えが実施されず、発生する損失を抑制できる。また、本実施形態では、第1制御期間において、第1,第2動作を第3,第4動作に切り替える場合には、第1交流制御を第2交流制御に切り替える。これにより、切り替え後の第2交流制御においても、特定の切り替えが実施されず、発生する損失を抑制できる。
【0085】
・本実施形態では、第1制御期間において、第1交流制御と第2交流制御とを切り替える場合には、第1,第2加算回路61,63において、電圧指令値V*に加算する値を切り替える。これにより、各インバータ20,30に入力される制御信号SC1,SC2及び反転信号SR1,SR2を切り替える場合に比べて、早期に回転電機10の交流制御を切り替えることができ、第1制御期間において第1,第2インバータ20,30の駆動を適正に継続できる。
【0086】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に
図10を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1交流制御から第2交流制御への切り替え判定に、第1,第2インバータ20,30における下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2がさらに用いられる点で第1実施形態と異なる。
【0087】
図10に、本実施形態の切替制御処理のフローチャートを示す。なお、
図10において、先の
図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0088】
図10に示すように、本実施形態の設定処理では、ステップS15で肯定判定すると、ステップS40において、第2インバータ30における下アームスイッチ33の温度TD2を取得する。続くステップS41では、ステップS40で取得された温度TD2が温度閾値Tthよりも低いか否かを判定する。温度閾値Tthは、下アームスイッチ23,33の動作上限温度である。ステップS41で肯定判定すると、ステップS16に進む。
【0089】
ステップS41で否定判定すると、ステップS19に進む。つまり、ステップS14で取得された第1コンデンサ電圧VC1が第1電圧閾値VDthよりも低く、且つステップS40で取得された温度TD2が温度閾値Tthよりも高い場合に、第2交流制御に切り替える。一方、ステップS14で取得された第1コンデンサ電圧VC1が第1電圧閾値VDthよりも低くても、ステップS40で取得された温度TD2が温度閾値Tthよりも高い場合には、第2交流制御に切り替えずに第1交流制御を継続する。
【0090】
また、ステップS17で肯定判定すると、ステップS42において、第1インバータ20における下アームスイッチ23の温度TD1を取得する。続くステップS43では、ステップS42で取得された温度TD1が温度閾値Tthよりも低いか否かを判定する。ステップS43で肯定判定すると、ステップS18に進む。なお、本実施形態において、温度TD1,TD2が「温度パラメータ」に相当する。
【0091】
ステップS43で否定判定すると、ステップS19に進む。つまり、ステップS14で取得された第2コンデンサ電圧VC2が第1電圧閾値VDthよりも低く、且つステップS43で取得された温度TD1が温度閾値Tthよりも高い場合に、第2交流制御に切り替える。一方、ステップS14で取得された第2コンデンサ電圧VC2が第1電圧閾値VDthよりも低くても、ステップS42で取得された温度TD1が温度閾値Tthよりも高い場合には、第2交流制御に切り替えずに第1交流制御を継続する。
【0092】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0093】
第3動作では、下アームスイッチ33がオンに維持されるため、下アームスイッチ33の温度TD2が上昇する。また、第4動作では、下アームスイッチ23がオンに維持されるため、通電により下アームスイッチ23の温度TD1が上昇する。そのため、下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が高い場合にも関わらず第1交流制御を第2交流制御に切り替えると、第2交流制御中に下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が過度に上昇することが懸念される。
【0094】
その点、本実施形態では、第1,第2インバータ20,30における下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2に基づいて第1交流制御を第2交流制御に切り替えるか否かを判定し、下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が温度閾値Tthよりも高い場合には、第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2が第1電圧閾値VDthよりも低くても第1交流制御を第2交流制御に切り替えないようにした。そのため、下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が過度に上昇することを抑制できる。
【0095】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、先の第1実施形態との相違点を中心に
図11を参照しつつ説明する。本実施形態では、切替制御処理において、第1制御期間に第1交流制御を第2交流制御に切り替えた場合に、第2交流制御に切り替えてからの経過時間tを取得し、この経過時間tに基づいて第2交流制御を第1交流制御に切り替える点で第1実施形態と異なる。
【0096】
図11に、本実施形態の切替制御処理のフローチャートを示す。なお、
図11において、先の
図4に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0097】
図11に示すように、本実施形態の設定処理では、ステップS12で肯定判定すると、ステップS50において、経過時間tを取得し、ステップS51に進む。経過時間tは、ステップS20において回転電機10の交流制御を第1交流制御から第2交流制御に切り替えてからの経過時間である。ステップS51では、ステップS50で取得された経過時間tが第1充電基準期間よりも長いか否かを判定する。第1充電基準期間は、第3,第4動作により第1ブートストラップコンデンサCA1の第1コンデンサ電圧VC1を第1電圧閾値VDthから第2電圧閾値VUthまで充電するための期間である。本実施形態では、第1充電基準期間は、予め一定の値に設定されている。
【0098】
ステップS51で肯定判定すると、ステップS32において、第1フラグF1をオフに切り替え、ステップS37に進む。一方、ステップS51で否定判定すると、ステップS33において、第2交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。
【0099】
また、ステップS13で肯定判定すると、ステップS52において、経過時間tを取得し、ステップS53に進む。ステップS53では、ステップS52で取得された経過時間tが第2充電基準期間よりも長いか否かを判定する。第2充電基準期間は、第3,第4動作により第2ブートストラップコンデンサCA2の第2コンデンサ電圧VC2を第1電圧閾値VDthから第2電圧閾値VUthまで充電するための期間である。本実施形態では、第2充電基準期間は、予め一定の値に設定されている。なお、第2充電基準期間は、第1充電基準期間と等しくてもよければ、異なっていてもよい。本実施形態において、ステップS50,S52の処理が「経過時間取得部」に相当する。
【0100】
ステップS53で肯定判定すると、ステップS36において、第2フラグF2をオフに切り替え、ステップS37に進む。一方、ステップS53で否定判定すると、ステップS33において、第2交流制御を実施し、切替制御処理を終了する。
【0101】
以上詳述した本実施形態によれば、第1制御期間に第1交流制御を第2交流制御に切り替えた場合に、第2交流制御の経過時間tを取得する。そして、この経過時間tが第1,第2充電基準期間よりも長い場合に、第2交流制御を第1交流制御に切り替える。これにより、切り替え後の第2交流制御において、第1ブートストラップコンデンサCA1の第1コンデンサ電圧VC1又は第2ブートストラップコンデンサCA2の第2コンデンサ電圧VC2を取得する必要がなく、第2交流制御を第1交流制御に切り替えるのに必要な処理を簡素化することができる。
【0102】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、先の第3実施形態との相違点を中心に
図12,
図13を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1,第2インバータ20,30における下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2に基づいて第1,第2充電基準期間を設定する点で第3実施形態と異なる。
【0103】
図12に、本実施形態の切替制御処理のフローチャートを示す。なお、
図12において、先の
図11に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一のステップ番号を付して説明を省略する。
【0104】
図12に示すように、本実施形態の設定処理では、ステップS50で経過時間tを取得すると、ステップS60において、第2インバータ30における下アームスイッチ33の温度TD2を取得する。続くステップS61では、ステップS60で取得された温度TD2と第1マップMP1とに基づいて第1充電基準期間を設定し、ステップS51に進む。
【0105】
第1マップMP1は、所定の温度範囲における温度TD2と第1充電基準期間とが対応付けられた相関情報である。第1マップMP1は、制御装置50に設けられた記憶部70(
図1参照)に記憶されている。
図13に示すように、第1マップMP1では、温度TD2が高いほど、第1充電基準期間が短くなるように設定されている。そのため、温度TD2が高い場合には、第3動作の動作期間が短くなり、温度TD2の上昇が抑制される。
【0106】
また、ステップS52で経過時間tを取得すると、ステップS62において、第1インバータ20における下アームスイッチ23の温度TD1を取得する。続くステップS63では、ステップS62で取得された温度TD1と第2マップMP2とに基づいて第2充電基準期間を設定し、ステップS53に進む。
【0107】
第2マップMP2は、所定の温度範囲における温度TD1と第2充電基準期間とが対応付けられた相関情報であり、記憶部70に記憶されている。なお、第2マップMP2は、第1マップMP1と等しくてもよければ、異なっていてもよい。
図13に示すように、第2マップMP2では、温度TD1が高いほど、第2充電基準期間が短くなるように設定されている。そのため、温度TD1が高い場合には、第4動作の動作期間が短くなり、温度TD1の上昇が抑制される。
【0108】
なお、各マップMP1,MP2における充電基準期間は、対応する下アームスイッチ23,33の温度特性を考慮して設定されている。本実施形態では、下アームスイッチ23,33としてMOSFETが用いられており、MOSFETの主端子間のドロップ電圧は正の温度特性を有する。本実施形態では、各マップMP1,MP2における充電基準期間が、MOSFETにおける正の温度特性に基づいて調整されている。
【0109】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0110】
第3動作では、下アームスイッチ33がオンに維持され、通電により下アームスイッチ33の温度TD2が上昇する。また、第4動作では、下アームスイッチ23がオンに維持されるために、通電により下アームスイッチ23の温度TD1が上昇する。そのため、第1制御期間に第1交流制御を第2交流制御に切り替えた場合に、下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が高いにも関わらず、予め定められた第1,第2充電基準期間にわたって第2交流制御が実施されると、第1,第2充電基準期間中に下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が過度に上昇することが懸念される。
【0111】
その点、本実施形態では、温度TD1と第1充電基準期間とが対応付けられた第1マップMP1及び温度TD2と第2充電基準期間とが対応付けられた第2マップMP2が、制御装置50の記憶部70に記憶されている。そして、第2交流制御を実施している期間に取得された下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が高い場合に、第1,第2マップMP1,MP2に基づいて第1,第2充電基準期間が短くなるように設定する。これにより、第1,第2充電基準期間中に下アームスイッチ23,33の温度TD1,TD2が過度に上昇することを抑制できる。
【0112】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0113】
・回転電機10としては、3相のものに限らず、2相のものまたは4相以上のものであってもよい。第1インバータ20と第2インバータ30としては、回転電機10が有する相数分の上,下アームスイッチの直列接続体を備えるインバータであればよい。
【0114】
・第1インバータ20と第2インバータ30とが備えるスイッチとしては、MOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。スイッチがIGBTである場合、スイッチに逆接続されるダイオードとしてフリーホイールダイオードが用いられる。また、IGBTの主端子間のドロップ電圧は負の温度特性を有するため、充電基準期間がIGBTにおける負の温度特性に基づいて調整されてもよい。
【0115】
・上記実施形態では、所定の制御期間毎に、第1交流制御と第2交流制御とを交互に切り替えて実施する例を示したが、第1交流制御と第2交流制御とのうち、第1交流制御を原則として実施するようにしてもよい。この場合、第1交流制御において第1,第2ブートストラップコンデンサCA1,CA2の第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2が第1電圧閾値VDthよりも低くなったことを条件に、例外として第2交流制御を実施するようにしてもよい。この場合に、第2制御期間を、第2交流制御に切り替えられるまでの第1制御期間に基づいて設定することで、第1,第2動作の動作期間と第3,第4動作の動作期間とを均衡に設定することができ、特定のスイッチにおける温度の過度な上昇を抑制できる。
【0116】
・上記実施形態では、第1,第2ブートストラップコンデンサCA1,CA2の第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2を取得し、その取得結果に基づいて第1交流制御を第2交流制御に切り替える例を示したが、第1交流制御と第2交流制御との切り替えの態様はこれに限られない。例えば、回転電機10の動作周期及び各スイッチ22,23,32,33のドロップ電圧等により第1,第2コンデンサ電圧VC1,VC2が第1電圧閾値VDthよりも低くなるまでの期間が予め算出できる場合には、その期間に基づいて第1交流制御を第2交流制御に切り替えるようにしてもよい。
【0117】
・各インバータ20,30のスイッチの温度は、温度センサの検出値に限らず、例えば、スイッチの温度推定値であってもよい。温度推定値は、例えば、各スイッチに流れる電流検出値に基づいて算出されてもよければ、ボディダイオードなどのスイッチ近傍に存在する素子の温度を検出し、その温度に基づいてスイッチの温度が推定されてもよい。
【0118】
・回転電機10は、車両に適用されるものに限られず、船舶又は航空機などに適用されるものであってもよい。
【0119】
・本開示に記載の制御装置及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0120】
10…回転電機、11…巻線、20…第1インバータ、22…上アームスイッチ、23…下アームスイッチ、26…第1駆動回路、30…第2インバータ、32…上アームスイッチ、33…下アームスイッチ、36…第2駆動回路、50…制御装置、100…回転電機システム、LE…高電位側接続線、LG…低電位側接続線。