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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ナノ構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20240821BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20240821BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20240821BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20240821BHJP
   H01L 33/24 20100101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L31/10 A
H01L33/08
H01L33/16
H01L33/24
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020504445
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018059205
(87)【国際公開番号】W WO2018189205
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】1705755.5
(32)【優先日】2017-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512101187
【氏名又は名称】ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー(エヌティーエヌユー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フィムランド、ビョルン オヴェ マイキング
(72)【発明者】
【氏名】ヴェマン、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】レン、ディンディン
【合議体】
【審判長】山村 浩
【審判官】芝沼 隆太
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-27298(JP,A)
【文献】特開2017-17114(JP,A)
【文献】特開2014-135450(JP,A)
【文献】国際公開第2017/009394(WO,A1)
【文献】特開2009-91212(JP,A)
【文献】特開2006-310850(JP,A)
【文献】特開2008-66591(JP,A)
【文献】特表2009-542560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意にドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造を含み、
前記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物を含む、組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのナノ構造が、ドープ、例えば、p型ドープされた、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つのナノ構造が、径方向ヘテロ構造又は軸方向ヘテロ構造を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
任意にドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた少なくとも1つのコア半導体ナノ構造であって、少なくとも1つのIII-V族化合物を含むコア半導体ナノ構造と、
前記コア半導体ナノ構造を取り囲む半導体シェルであって、少なくとも1つのIII-V族化合物を含むシェルと、を含み、
前記コア半導体ナノ構造は、ドープされてn型半導体又はp型半導体を形成しており、
前記シェルは、ドープされて前記コア半導体ナノ構造とは反対側にp型半導体又はn型半導体を形成している、組成物であって、
電極コンタクトを形成する前記シェルの少なくとも一部を取り囲む外側導電被膜を含む、組成物。
【請求項5】
任意にドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた少なくとも1つの半導体ナノ構造であって、少なくとも1つのIII-V族化合物を含むナノ構造を含み、
前記半導体ナノ構造が、軸方向にn型半導体領域及びp型半導体領域を含有するようにドープされた、組成物。
【請求項6】
前記ナノ構造が、III-N族化合物を含む、請求項1~5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ構造が、AlGaN、InGaN又はAlInGaNを含む、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ構造が、ナノワイヤ又はナノピラミッドである、請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記ナノワイヤの直径が400nm以下であり、長さが最長で5ミクロンまで、例えば、最長で2ミクロンまでである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記基板が、複数のナノワイヤを含み、前記ナノワイヤは、好ましくは実質的に平行である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記基板上に孔パターンマスクをさらに含み、前記ナノ構造が、前記マスクの孔を通って成長している、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の組成物を含む、例えば、太陽電池、光検出器、LED又はレーザダイオードといった、電子デバイス、特に光電子デバイスなどのデバイス。
【請求項13】
ドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
前記β-Ga23基板と電気的に接触している第1の電極と、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している、光反射層の形態であってもよい第2の電極と、を含み、
前記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含む、発光ダイオードデバイス。
【請求項14】
ドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に、好ましくは前記ドープされたβ-Ga23基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、直接、エピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
前記ドープされたβ-Ga23基板と電気的に接触している第1の電極と、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触しているか、又は、前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している第2の電極と接触している光反射層であって、第2の電極として機能してもよい光反射層と、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと電気的に接触している第2の電極であって、前記光反射層が電極として機能しない場合には必須である第2の電極と、を含み、
前記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含み、
使用時に、前記デバイスから前記光反射層とは実質的に反対の方向へ光が放出される、発光ダイオードデバイス。
【請求項15】
ドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に、好ましくは前記基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、直接、エピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
前記基板と電気的に接触している第1の電極と、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している光反射層であって、第2の電極として機能してもよい光反射層と、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと電気的に接触している第2の電極であって、前記光反射層が電極として機能しない場合には必須である第2の電極と、を含み、
前記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含み、
使用時に、前記デバイスから前記光反射層とは実質的に反対の方向へ光が放出される、発光ダイオードデバイス。
【請求項16】
ドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた複数のIII-V族化合物半導体ナノ構造を含み、
前記ナノ構造のそれぞれが、前記基板から突出し、各ナノ構造が、pn接合又はpin接合を含み、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップ部が、光反射層又は透明コンタクト層で覆われてナノ構造群に対する少なくとも1つのコンタクトを形成しており、
電極が、前記ドープされたβ-Ga23基板と電気的に接触しており、
前記光反射層又は透明コンタクト層が、前記ナノ構造を介して第1の電極と電気的に接触している、ナノ構造LED。
【請求項17】
任意にドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造を製造するプロセスであって、
(I)β-Ga23基板の表面にIII-V族元素を用意する工程と、
(II)前記β-Ga23基板の表面から少なくとも1つのナノ構造をエピタキシャル成長させる工程と、を含むプロセス。
【請求項18】
無触媒プロセスである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記基板が、孔パターンマスクで被覆される、請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記孔パターンマスクが、例えば、電子ビーム蒸着、CVD、PE-CVD又はスパッタリングにより堆積した、TiO2、SiO2又はSi34を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
n(p)ドープされたβ-Ga23基板の(-201)面又は(100)面上に直接、エピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、p(n)ドープされたナノ構造と、
前記ドープされたβ-Ga23基板と電気的に接触している第1の電極と、
前記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している、光反射層の形態であってもよい第2の電極と、を含む、紫外光検出デバイスなどの光検出デバイスであって、
前記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-N族化合物半導体を含み、
使用時に、前記β-Ga23基板側から前記デバイスに光が吸収される、光検出デバイス。
【請求項22】
前記複数のナノ構造が、前記n(p)ドープされたβ-Ga23基板上の孔パターンマスクの孔を通って成長している、請求項21に記載の光検出デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばナノ構造をβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させるための分子線エピタキシー技術又は有機金属気相エピタキシー(MOVPE)技術を用いて、半導体ナノ構造をβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させるプロセスに関する。結果として得られるナノ構造は、本発明の更なる態様を成す。ナノ構造は、好ましくは半導体材料であり、例えばエレクトロニクス産業や太陽電池用途において、幅広く応用される。組成物を発光ダイオード(LED)や光検出器において使用することが特に好ましい。
【背景技術】
【0002】
背景
ワイドバンドギャップGaNとそれに関連する三元又は四元III-N族半導体化合物は、それらの顕著な光学的特性、電気的特性及び物理的特性により、エレクトロニクス及び光電子デバイス用の最も重要な半導体の部類に入ると認められている。それにもかかわらず、GaNをベースとするデバイスの商業化は、利用できる基板が限られていることにより、妨げられている。低コストで熱伝導性の良好なSi及びサファイア(Al)が従来から採用されているが、これらの材料は、GaNとの格子不整合及び熱膨張不整合が比較的大きい。
【0003】
近年、β-Ga基板が、深紫外(バンドギャップ:約4.8eV(260nm))の光に対する透明性が高く、且つn型導電性が高いことから、III族窒化物LED及びパワーデバイス用の基板として登場してきている。従って、β-Gaは、今日のIII族窒化物LED及びパワーデバイスのほとんどに用いられているサファイア(Al)基板の代わりとなり得る。近年、E. G. Villoraらが、GaNのヘテロエピタキシャル堆積用の基板としてのβ-Gaと、LED及びパワーデバイスにおけるこれらの材料の応用を提案している(Proc. SPIE 8987 89871U (2014))。ここでは、GaNは、薄膜として堆積される。
【0004】
しかしながら、β-Gaは、β-Gaの(001)面及び(-201)面におけるGaNとの格子不整合度が、それぞれ、2.6%及び4.7%である。このような格子不整合は、III族窒化物薄膜の成長にとって大きな問題である。この問題を解決するためには、高度なバッファ層を用いる必要がある。それでもなお、転位密度が、β-Gaの(-201)面上に成長させたInGaNエピ層の場合、5x10cm-2と、高いままである(M. M. Muhammedら, High-quality III-nitride films on conductive, transparent (-201)-oriented β-Ga2O3 using a GaN buffer layer, Scientific Reports 6, 27947, (2016))。
【0005】
従って、複雑なバッファ層を使用せずに格子不整合の問題を解決する代替の組成物を開発する必要性が残っている。1つの解決策は、半導体と同じ材料からなる基板を用いること、例えば、GaN半導体の場合にはGaN基板を用いることである。しかしながら、このような基板は、非常に高価であり、透明性が近紫外(バンドギャップ:3.4eV(365nm))に限定されてしまう。
【0006】
これらの問題を克服するために、本発明は、β-Ga基板上での半導体ナノ構造、特にIII族窒化物ナノ構造のエピタキシャル成長と、組成物を含むLEDなどの電子デバイスに関する。そのため、本発明者らは、半導体III-V族材料の薄膜のエピタキシャル成長ではなく、ナノ構造、例えばナノワイヤ又はナノピラミッドを提案する。
【0007】
ナノ構造のボトムアップ成長は、β-Ga上に高品質なヘテロエピタキシャルIII族窒化物材料を得る新しい機会を提供する。上記の薄膜化とは異なり、本発明者らは、基板上のナノ構造の断面積が小さいことにより格子不整合を吸収することができることを見出した。このことは、ナノ構造空間(nanostructure volume)内に延出する自由表面において、塑性歪み緩和ではなく弾性歪み緩和を誘起する。発生した歪みや発生し得るミスフィット転位は、ナノ構造/基板界面に限られるため、ナノ構造自体には影響を及ぼさない。このため、エピタキシャル材料の結晶品質は、下地基板の結晶特性とほぼ無関係である。アスペクト比が大きい結果、直径が臨界直径を超えるナノ構造の場合に発生し得る転位線は、[111]方向(閃亜鉛鉱III-V族半導体ナノ構造の場合)又は[0001]方向(ウルツ鉱III-V族半導体ナノ構造の場合)に垂直に延びるのではなく、ナノ構造側壁に向かって曲がるようにその長さを短くすることによってエネルギーが最小となるようにする傾向がある。これにより、ナノ構造の上部から構造欠陥が無くなる。
【0008】
β-Gaの結晶構造は、空間グループC2/mを有する単斜晶系であるため、その対称性は、非常に低く、立方晶構造又は六方晶構造を通常有する他の一般的な半導体基板とは非常に異なっている。このことは、ごく最近までβ-Gaが有用な基板と考えられてこなかった理由の1つである。しかしながら、β-Gaの(100)面及び(-201)面では、原子配列が六方配列に近く、[111]配向した閃亜鉛鉱半導体結晶及び[0001]配向したウルツ鉱半導体結晶の六方原子配列とのエピタキシャル関係が可能である。格子不整合は高品質な薄膜の成長には依然として大きすぎるものの、ナノ構造の使用は、β-Ga基板をベースとして事実上無転位の半導体デバイスを成長させる方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Proc. SPIE 8987 89871U (2014)
【文献】M. M. Muhammedら, High-quality III-nitride films on conductive, transparent (-201)-oriented β-Ga2O3 using a GaN buffer layer, Scientific Reports 6, 27947, (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ナノ構造は、そのフットプリントが小さいことにより、薄膜よりもはるかに大きい格子不整合を吸収することができる。従って、β-Gaの(100)面及び(-201)面上での高品質な無転位の半導体ナノ構造の成長を提案する。これは、高度なバッファ層を必要とせずに達成することができる。このことは、III族窒化物ナノ構造の成長にとって特に魅力がある。なぜなら、β-Ga基板を垂直フリップチップLED、特に、約280nmという短い波長で放出するUV-LED、などのLED用の透明導電電極として用いることができるようになるからである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
従って、本発明は、一態様において、任意にドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造(ナノ構造体)を含み、
上記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物を含む、組成物を提供する。
【0012】
本発明は、別の態様において、
任意にドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つのコア半導体ナノ構造であって、少なくとも1つのIII-V族化合物を含むナノ構造と、
上記コアナノ構造を取り囲む半導体シェルであって、少なくとも1つのIII-V族化合物を含むシェルと、を含み、
上記コア半導体ナノ構造は、ドープされてn型半導体又はp型半導体を形成しており、
上記シェルは、ドープされて前記コアとは反対側にp型半導体又はn型半導体を形成している、組成物であって、
電極コンタクトを形成する上記シェルの少なくとも一部を取り囲む外側導電被膜を含む、組成物を提供する。
【0013】
本発明は、別の態様において、
任意にドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つの半導体ナノ構造であって、少なくとも1つのIII-V族化合物を含むナノ構造を含み、
上記半導体ナノ構造が、軸方向にn型半導体領域及びp型半導体領域を含有するようにドープされた、組成物を提供する。
【0014】
本発明は、別の態様において、任意にドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造を作製するプロセスであって、
(I)任意にドープされたβ-Ga基板の表面にIII-V族元素を提供する工程と、
(II)上記β-Ga基板の表面から少なくとも1つのナノ構造をエピタキシャル成長させる工程と、を含むプロセスを提供する。
【0015】
本発明は、別の態様において、上記の組成物を含む、例えば太陽電池又はLEDといった、電子デバイスなどのデバイスを提供する。
【0016】
本発明は、別の態様において、
ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
上記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触している第1の電極と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している、光反射層の形態であってもよい第2の電極と、を含み、
上記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含む、LEDデバイスを提供する。使用時に、光が、ドープされたβ-Ga基板を通過して、ナノ構造の成長方向に対して実質的に平行且つ反対の方向へ放出されることが好ましい。
【0017】
本発明は、別の態様において、
ドープされたβ-Ga基板上に、好ましくは上記ドープされたβ-Ga基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、エピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
上記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触している第1の電極と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触しているか、又は、上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している第2の電極と接触している光反射層であって、第2の電極として機能してもよい光反射層と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと電気的に接触している第2の電極であって、上記光反射層が電極として機能しない場合には必須である第2の電極と、を含み、
上記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含み、
使用時に、上記デバイスから上記ドープされたβ-Ga基板を通過して上記光反射層とは実質的に反対の方向へ光が放出される、発光ダイオードデバイスを提供する。
【0018】
本発明は、別の態様において、
ドープされたβ-Ga基板上に、好ましくは前記基板上の任意の孔パターンマスクの孔を通して、エピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
上記基板と電気的に接触している第1の電極と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している光反射層であって、第2の電極として機能してもよい光反射層と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと電気的に接触している第2の電極であって、上記光反射層が電極として機能しない場合には必須である第2の電極と、を含み、
上記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含み、
使用時に、上記デバイスから上記ドープされたβ-Ga基板を通過して上記光反射層とは実質的に反対の方向へ光が放出される、発光ダイオードデバイスを提供する。
【0019】
本発明は、別の態様において、
ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数のIII-V族化合物半導体ナノ構造を含み、
上記ナノ構造のそれぞれが、上記基板から突出し、各ナノ構造が、pn接合又はpin接合を含み、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップ部が、光反射層又は透明コンタクト層で覆われてナノ構造群に対する少なくとも1つのコンタクトを形成しており、
電極が、前記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触しており、
上記光反射層又は透明コンタクト層が、上記ナノ構造を介して第1の電極と電気的に接触している、ナノ構造LEDを提供する。
【0020】
本発明は、別の態様において、上記に記載のLEDデバイスの、特に紫外領域のスペクトルにおける、LEDとしての使用を提供する。
【0021】
さらなる実施形態において、本発明は、光検出器に関する。本発明のデバイスは、光を放出するのではなく、光を吸収した後、光電流を生成することにより、光を検出するように構成し得る。
【0022】
従って、本発明は、別の態様において、
ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、pn接合又はpin接合を有するナノ構造と、
上記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触している第1の電極と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している、光反射層の形態であってもよい第2の電極と、を含む光検出デバイスであって、
上記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体を含み、
使用時に、該デバイスに光が吸収される、光検出デバイスを提供する。
【0023】
本発明は、別の態様において、
n(p)ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数のナノ構造であって、p(n)ドープされたナノ構造と、
上記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触している第1の電極と、
上記ナノ構造の少なくとも一部のトップと接触している、光反射層の形態であってもよい第2の電極と、を含む、紫外光検出デバイスなどの光検出デバイスであって、
上記ナノ構造が、少なくとも1つのIII-N族化合物半導体を含み、
使用時に、該デバイスに光が吸収される、光検出デバイスを提供する。
【0024】
本発明は、別の態様において、
ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数のIII-V族化合物半導体ナノ構造を含むナノ構造光検出器であって、
上記ナノ構造のそれぞれが、上記基板から突出し、各ナノ構造が、pn接合又はpin接合を含み、
上記複数のナノ構造のうちの各ナノ構造又は少なくとも1つのナノ構造群のトップ部が、透明コンタクト層で覆われてナノ構造群に対する少なくとも1つのコンタクトを形成しており、
電極が、上記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触しており、
上記透明コンタクト層が、上記ナノ構造のpn接合又はpin接合を介して第1の電極と電気的に接触している、ナノ構造光検出器を提供する。
【0025】
本発明は、別の態様において、上記に記載の光検出デバイスの、特に深紫外領域のスペクトルにおける、光検出器としての使用を提供する(いわゆるソーラーブラインド光検出器)。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、可能なフリップチップ設計を示している。
図2図2は、本発明の一つの可能なナノワイヤを示す。
図3図3は、ナノワイヤが径方向に成長し、コアシェル構造体を形成する別のチップ設計を示す。
図4図4は、ナノワイヤを示し、このナノワイヤは、径方向に成長しているが、シェル構造体内に図2のものと同じ構成要素を有する。
図5図5は、β-Ga単位格子を示し、(100)、(-201)及び(010)結晶面がそれぞれ赤、青及び緑で示されている。
図6図6は、(-201)及び(010)結晶面を有するβ-Ga単位格子と、β-Ga基板のいくつかの物理的特性とを示す。
図7a図7(a)は、(-201)表面配向を有するβ-Ga基板上に[0001]方向に成長させた(Al,In)GaNナノワイヤの例を示す。(Al,In)GaNナノワイヤは、(-201)表面配向を有するβ-Gaの上に、薄いエピタキシャルIII-V族バッファ層は無し。
図7b図7(b)は、(-201)表面配向を有するβ-Ga基板上に[0001]方向に成長させた(Al,In)GaNナノワイヤの例を示す。(Al,In)GaNナノワイヤは、(-201)表面配向を有するβ-Gaの上に、薄いエピタキシャルIII-V族バッファ層は有り。
図7c図7(c)は、n型ドープされたGaNバッファ層を有する(-201)β-Ga基板の上に成長させた垂直n型ドープGaNナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。
図8a図8(a)は、p型エピタキシャル(Al,In)GaNバッファ層無しで、n型β-Ga基板上に成長させたp型(Al,In)GaNナノワイヤを示す。
図8b図8(b)では、n型β-Ga基板上に、エピタキシャルn型(Al,In)GaNバッファ層無しで、nipドープされた(Al,In)GaNナノワイヤをエピタキシャル成長させている。
図8c図8(c)は、p型エピタキシャル(Al,In)GaNバッファ層有りで、n型β-Ga基板上に成長させたp型(Al,In)GaNナノワイヤを示す。
図8d図8(d)では、n型β-Ga基板上に、エピタキシャルn型(Al,In)GaNバッファ層有り(d)で、nipドープされた(Al,In)GaNナノワイヤをエピタキシャル成長させている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
III-V族化合物とは、III族から少なくとも1つのイオンとV族から少なくとも1つのイオンとを含むものを意味する。各族から2つ以上の元素が含まれていてもよく、例えば、AlGaN(すなわち、三元化合物)、AlInGaN(すなわち、四元化合物)などが挙げられる。Al(In)GaNという表示は、AlGaN又はAlInGaNのいずれかを意味する、すなわち、Inの存在は任意であることを意味する。括弧で囲まれた元素は、含まれていても含まれていなくてもよい。
【0028】
ナノ構造という用語は、ナノワイヤ又はナノピラミッドに適用される。
【0029】
本明細書において使用するナノワイヤという用語は、ナノメートル寸法の固体のワイヤー様構造を指す。ナノワイヤは、好ましくは、ナノワイヤの大部分、例えば、その長さの少なくとも75%にわたって均一な直径を有する。ナノワイヤという用語は、ナノロッド、ナノピラー、ナノコラム又はナノウィスカーの使用を包含するものであり、それらのいくつかは、テーパー状構造を有する場合もある。ナノワイヤは、本質的に、その幅又は直径がナノメートル寸法であり且つその長さが通常数百nm~数μmの範囲内である1次元形態であるといえる。理想的には、ナノワイヤの直径は、50~500nmであるが、直径は、数ミクロンを超えてもよい(マイクロワイヤと呼ばれる)。
【0030】
理想的には、ナノワイヤのベース及びナノワイヤのトップの直径は、ほぼ同一(例えば、互いの20%以内)であるべきである。
【0031】
ナノピラミッドという用語は、固体ピラミッド型構造を指す。本明細書において、ピラミッド型(pyramidal)という用語は、ベースを有し、一般に該ベースの中心の上方の単一の点に向かって側面が先細になる構造を定義するのに用いられる。当然のことながら、単一の頂点が面取りされたように見える場合もある。ナノピラミッドは、3~8面又は4~7面など、複数の面を有していてもよい。従って、ナノピラミッドのベースは、正方形、五角形、六角形、七角形、八角形などであるかもしれない。ピラミッドは、面がベースから中心点に向かって先細になる(従って、三角形の面を形成する)ように形成される。三角形の面は、通常、(1-101)面又は(1-102)面で終端している。(1-101)ファセットを有する三角形の側面は、先端の単一の点に収束するか、又は先端に収束する前に新しいファセット((1-102)面)を形成し得る。場合によっては、ナノピラミッドは、そのトップが{0001}面で終端され、切頂されている。ベース自体は、ピラミッド構造を形成すべく先細になり始めるまでは、断面が均一な部分を有していてもよい。従って、ベースの厚さは200nm以下、例えば、50nmであってもよい。
【0032】
ナノピラミッドのベースは、その最も広い点で直径が50nm及び500nmであり得る。ナノピラミッドの高さは、200nm~数ミクロン、例えば、長さ400nm~1ミクロンであってもよい。
【0033】
当然のことながら、基板は、複数のナノ構造を含むことが好ましい。これは、ナノ構造のアレイと呼ばれることがある。
【0034】
エピタキシーという用語は、「上方に(above)」を意味するギリシャ語起源のepiと、「規則正しい状態に(in ordered manner)」を意味するtaxisに由来する。ナノワイヤの原子配列は、基板の結晶構造に基づく。これは当技術分野でよく使用される用語である。本明細書において、エピタキシャル成長とは、基板の配向を模倣するナノワイヤの基板上での成長を意味する。
【0035】
好ましくは、エピタキシャル成長は、成長がβ-Ga基板の(-201)面又は(100)面から起こる場合に起こる。
【0036】
ナノ構造は、必要に応じて触媒を使用して、例えば気相-金属触媒支援液相-固相(VLS)法により、成長させることができる。しかしながら、触媒を使用しないのが好ましい。選択領域成長(SAG)は、位置決めされたナノ構造を成長させる最も有望な方法である。この方法は、金属触媒がナノワイヤ又はナノピラミッドの成長のための核生成サイトとして機能する、金属触媒支援気相-液相-固相(VLS)法とは異なる。ナノ構造を成長させるための他の無触媒法は、ナノ構造がβ-Ga基板上のランダムな位置で核生成される、自己組織化成長や自発的成長などである。これらの方法では、ナノ構造の長さと直径が大きく変動する。
【0037】
SAG法は、通常、ナノ孔パターンを有するマスクを基板上に必要とする。ナノ構造は、基板上のパターンマスクの孔内で核生成する。これにより、ナノ構造は、均一なサイズで、所定の位置に得られる。
【0038】
マスクという用語は、基板上に直接堆積させたマスク材を指す。理想的には、マスク材は、LEDの場合では、放出光(可視、UV-A、UV-B又はUV-Cであり得る)を吸収せず、光検出器の場合では、対象となる入射光を吸収しない。マスクはまた、電気的に非導電性でなければならない。マスクは、Al、SiO、Si、TiO、Wなどを含む1つ又は2つ以上の材料を含み得る。その後、マスク材における孔パターンを、電子ビームリソグラフィー又はナノインプリントリソグラフィー及びドライエッチング又はウェットエッチングを用いて作製することができる。
【0039】
MBEは、結晶基板上に堆積物を形成する方法である。MBEプロセスは、真空中で結晶基板を加熱して、基板の格子構造を活性化させることにより行われる。その後、原子ビーム又は分子量ビームを基板表面に照射する。上記で用いた元素という用語は、その元素の原子、分子又はイオンの適用を包含するものとする。照射された原子又は分子が基板の表面に到達すると、照射された原子又は分子は、以下に詳細に説明するように、基板の活性化された格子構造にぶつかる。時間の経過と共に、入射原子がナノ構造を形成する。
【0040】
有機金属気相成長法(MOCVD)とも呼ばれるMOVPEは、結晶基板上に堆積物を形成するためのMBEの代替方法である。MOVPEの場合、堆積材料は有機金属前駆体の形態で供給され、高温の基板に到達すると分解し、基板表面に原子が残る。さらに、この方法は、基板表面全体にわたって堆積材料(原子/分子)を運ぶためにキャリアガス(通常、H及び/又はN)を必要とする。他の原子と反応するこれらの原子は、基板表面上にエピタキシャル層を形成する。堆積パラメーターを注意深く選択することにより、ナノワイヤ又はナノピラミッドが形成される。
【0041】
n(p)型ドーピングという表記は、n型ドーピング又はp型ドーピングであることを意味する。ナノ構造がpn又はpin接合を含む場合、接合の順序は指定しない。例えば、pin接合は、基板に最も近いのがpドーピング領域であるかnドーピング領域であるかにかかわらず、ナノワイヤに存在し得る。言い換えれば、pn又はpin及びnp又はnipは同じである。
【0042】
[発明の詳細な説明]
本発明は、β-Ga基板、特にドープされたβ-Ga基板上におけるナノ構造のエピタキシャル成長に関する。本発明の組成物は、基板と、その上にエピタキシャル成長させたナノ構造との両方を含む。
【0043】
ナノ構造をエピタキシャル成長させることにより、形成された材料に均質性が付与され、例えば、機械的特性、光学的特性又は電気的特性など、様々な最終特性を向上させ得る。
【0044】
エピタキシャルナノ構造は、気体又は液体の前駆体から成長させてもよい。基板は、種結晶としての機能を果たすため、堆積したナノワイヤは、基板と同一の格子構造及び配向になり得る。これは、多結晶膜又は非晶質膜を単結晶基板上にさえ堆積する、薄膜堆積法とは異なる。
【0045】
[基板]
ナノ構造成長用の基板はβ-Gaである。結晶構造を図5に示す。図6は、この材料の詳細も示している。これらの基板は、商業的供給者から、2インチのウェハサイズで購入可能である。ウェハは、十分に厚いので、自立し、別個の支持体は不要である。
【0046】
商業的に重要なナノ構造を製造するためには、これらが、格子不整合に起因する転位を発生させずに、基板上にエピタキシャル成長することが必須である。また、成長が基板に対して直角に、よって理想的には、閃亜鉛鉱III-V族半導体ナノ構造の場合には[111]方向又はウルツ鉱III-V族半導体ナノ構造の場合には[0001]方向に、起こることも理想的である。ナノ構造をβ-Ga基板の(-201)面から成長させることが特に好ましい。
【0047】
成長させるナノ構造と基板材料が異なる特定の基板で成長が可能であるという保証はない。しかしながら、本発明者らは、半導体ナノ構造内の原子と基板内の原子との間の可能な格子整合を特定することにより、エピタキシャル成長が可能であることを見出した。特に、GaNと、表面が(100)面又は(-201)面であるβ-Ga基板の場合は、格子不整合度は、それぞれ、2.6%及び4.7%である。従って、格子不整合度が5%未満であることが好ましい。
【0048】
III族窒化物ナノ構造の成長を、例えばβ-Gaの(100)面上で、開始させるために、窒化工程を採用してもよい。この工程によると、下にあるGa原子の六方配列を露出させ、第1のナノエピタキシャルGaN単分子層を形成することができるように、基板の表面の酸素原子が窒素で置き換えられる。窒化は、アンモニア(NH)(MOVPE成長法若しくはMBE成長法を用いる場合)又は窒素プラズマ源(MBE成長法を用いる場合)を用いて達成することができる。アンモニア(NH)によるMBEで窒化を行うためには、800℃よりも高い温度と10Pa以上の圧力とが使用され得る。
【0049】
III族窒化物ナノ構造をβ-Gaの(-201)面上に成長させる場合、表面の酸素原子は、第1のナノエピタキシャルIII族窒化物単分子層を誘導するのに必要な六方配列を既に形成しているため、窒化工程は不要であるかもしれない。
【0050】
MBEを用いる場合は、任意の窒化工程後に、Nが豊富な条件(サファイア基板又はシリコン基板上での通常のIII族窒化物ナノ構造の成長と同様の成長条件)下で、窒素プラズマ源を用いて、通常800℃前後の温度で、III族窒化物ナノ構造を成長させることができる。MOVPEを用いる場合は、600℃を上回る温度でβ-Ga基板が水素と化学反応することのないように、まず、数nmの厚さのGaNバッファを窒素雰囲気下450~550℃で成長させてもよい。その後のIII族窒化物ナノ構造の成長(サファイア基板又はシリコン基板上での通常のIII族窒化物ナノ構造の成長と同様の成長条件)には、水素及び/又は窒素雰囲気下で、通常1000℃前後の温度と5~100sccm前後のアンモニア(NH)流量とを使用することができる。
【0051】
従って、本発明は、一態様において、ナノ構造の成長の前に基板を窒化工程で処理することを可能にする。窒化工程は、通常、数nmの厚さ、例えば5nm以下の厚さの窒化物層を基板上に導入する。
【0052】
上記窒化プロセスの代わりとして、バッファ/核生成層を基板上に転写するか又は成長させることができる。例えば、ナノワイヤの成長を開始する表面を得るために、GaNバッファ層をGaの上に550℃前後の温度で成長させることができる。対象となるバッファ層は、GaNなどのIII-V族化合物をベースとするものである。成長したバッファ層の厚さは、1原子の厚さからミリメートル規模までもの間でさまざまであり得、例えば、10nm~500nmであり得る。バッファ層は、直接エピタキシャル成長によって付与してもよく、例えばGaNバッファ層をβ-Ga基板の上に配置するための転写法によってβ-Ga基板の上に転写してもよい。バッファ層は好ましくは窒化物である。バッファ層は好ましくは二元窒化物である。
【0053】
一実施形態においては、孔パターンマスク層が基板の上に用いられる。このようなマスク層が用いられる場合は、上記バッファは、基板の上、且つ孔パターンマスクの孔内に位置し得る。
【0054】
従って、本発明は、一態様において、GaNバッファ層などのIII-V族化合物バッファ層と、任意にドープされたβ-Ga層とを含む基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造を含み、
該ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物を含む、組成物を提供する。
【0055】
本発明は、別の態様において、任意にドープされたβ-Ga層を含む基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造を含み、該基板が、該ナノ構造が通って成長する孔パターンマスク層を担持する、組成物であって、
該ナノ構造が、少なくとも1つのIII-V族化合物を含み、該基板に隣接する該孔パターンマスク層の孔の底が、GaNバッファなどのIII-V族化合物バッファで被覆された、組成物を提供する。
【0056】
本発明は、別の態様において、任意にドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた少なくとも1つのナノ構造を作製するプロセスであって、
(I)III-V族化合物バッファ層が付与されたβ-Ga基板の表面にIII-V族元素を提供する工程と、
(II)上記基板の表面から少なくとも1つのナノ構造をエピタキシャル成長させる工程と、を含むプロセスを提供する。
【0057】
別の見方をすると、マスクの孔内に存在するバッファがナノ構造の一部を形成しているとみなすこともできる。
【0058】
使用されるバッファ層は、基板上にエピタキシャル成長することが好ましい。組成物の他の層について本明細書中に説明したようなドーピング技術を用いてバッファ層をドープすることが可能であり、例えばバッファ層をn型ドープすることが可能である。バッファ層のドーピング及び/又はそれに対応するβ-Ga基板のドーピングによって、基板/バッファ層構造及びナノ構造にpn又はpin接合を形成することができる。当然のことながら、ナノ構造は、基板のバッファ層表面から成長させる。すなわち、バッファ層が、ナノ構造が成長することのできる表面となる。
【0059】
バッファ層を成長させる前に、基板をサーマルクリーニングすることが好ましい。
【0060】
エピタキシャル(Al,In)GaNバッファ層、とりわけn型エピタキシャル(Al,In)GaNバッファ層を用いることが特に好ましい。
【0061】
当然のことながら、β-Ga基板はドープされることが好ましい。たいていのデバイスの場合、基板はドープされる。例えば、nドープされる。このことは、基板製造者がSn又はSiをドーピングすることによって達成できる。
【0062】
[ナノ構造の成長]
商業的に重要なナノ構造を製造するためには、これらが基板上にエピタキシャル成長することが好ましい。また、成長がエピタキシャルに且つ基板に対して直角に、よって理想的には、閃亜鉛鉱III-V族半導体の場合には[111]方向又はウルツ鉱III-V族半導体結晶の場合には[0001]方向に、起こることも理想的である。
【0063】
本発明者らは、半導体内の原子と基板内の原子との格子整合度が小さく、基板上のナノ構造のフットプリントが小さいことにより、β-Ga基板上での高品質なエピタキシャルIII-V族半導体ナノ構造の成長が可能であることを見出した。
【0064】
成長するナノピラミッドにおいて、三角形の面は、通常、(1-101)面又は(1-102)面で終端している。(1-101)ファセットを有する三角形の側面は、先端の単一の点に収束するか、又は先端に収束する前に新しいファセット((1-102)面)を形成し得る。場合によっては、ナノピラミッドは、そのトップが{0001}面で終端され、切頂されている。
【0065】
成長するナノ構造と基板との間に格子不整合がないことが理想的であるが、ナノ構造は、薄膜よりもはるかに大きな格子不整合を吸収できる。本発明のナノワイヤ又はナノピラミッドは、基板に対して最大約10%までの格子不整合度を有していてもよく、エピタキシャル成長は依然として可能である。理想的には、格子不整合度は、7.5%以下であるべきで、例えば、5%以下である。
【0066】
GaN(a=3.189Å)及びAlN(a=3.111Å)のような一部の半導体の場合には、格子不整合度が非常に小さい(<約5%)ため、β-Gaの(100)面及び(-201)面上において、これらの半導体ナノワイヤ又は半導体ナノピラミッドの優れた成長が期待できる。
【0067】
ナノ構造の成長は、フラックス比により制御することができる。III族窒化物ナノピラミッドは、例えば、高いNフラックスが使用される場合に促進される。
【0068】
本発明において成長させるナノワイヤの長さは、250nm~数ミクロンであってもよく、例えば、2μmなど、最高5μmまでであってもよい。好ましくは、ナノワイヤの長さは少なくとも1μmである。複数のナノワイヤを成長させる場合、それらが全てこれらの寸法要件を満たすのが好ましい。基板上に成長させるナノワイヤの少なくとも90%は、長さが1ミクロン以上であるのが理想的である。実質的に全てのナノワイヤの長さが1μm以上であるのが好ましい。
【0069】
ナノピラミッドは、高さが250nm~1ミクロンであってもよく、例えば、約500nmなど、400~800nmの高さであってもよい。
【0070】
さらに、成長させたナノ構造が同じ寸法、例えば、互いの10%以内の寸法を有することが好ましい。よって、基板上のナノ構造の少なくとも90%(好ましくは、実質的に全て)が、同一の直径及び/又は同一の長さ(すなわち、互いの直径/長さの10%以内)であるのが好ましい。従って、本質的に、当業者は、均質性と、寸法が実質的に同一であるナノ構造とを求めている。
【0071】
ナノ構造の長さは、成長プロセスが実行される時間の長さによって制御されることが多い。プロセスの時間が長い程、通常、ナノワイヤ又はナノピラミッドは(かなり)長くなる。
【0072】
ナノワイヤは、通常、六角形の断面形状を有する。ナノワイヤの断面直径(すなわち、その厚さ)は、25nm~数百nmであり得る。直径は、通常、400nmを超えることはなく、例えば200nmである。上述の如く、直径は、理想的には、ナノワイヤの大部分にわたって一定である。ナノワイヤの直径は、下記に更に説明するように、ナノワイヤの作製に使用される原子の割合を操作することにより制御することができる。
【0073】
さらに、ナノ構造の長さ及び直径は、それらが形成される温度に影響され得る。温度が高いほど、アスペクト比が高くなる(すなわち、ナノワイヤ又はナノピラミッドが長く及び/又は薄くなる)。直径は、マスク層のナノ孔開口サイズを操作することによっても制御することができる。当業者は、成長プロセスを操作し、所望の寸法のナノ構造を設計することができる。
【0074】
本発明のナノ構造は、少なくとも1つのIII-V族化合物半導体から形成される。好ましくは、ナノ構造は、後述するように、任意にドープされたIII-V族化合物から成る。なお、複数の異なるIII-V族化合物が存在していてもよいが、存在する全ての化合物が、III-V族化合物であることが好ましい。
【0075】
III族元素の選択肢は、B、Al、Ga、In及びTlである。好ましい選択肢は、Ga、Al及びInである。
【0076】
V族の選択肢は、N、P、As、Sbである。全てが好ましく、特にNが好ましい。
【0077】
勿論、III族から2つ以上の元素及び/又はV族から2つ以上の元素を使用することも可能である。ナノワイヤ又はナノピラミッド製造用の好ましい化合物としては、AlAs、GaSb、GaP、BN、GaN、AlN、AlGaN、AlGaInN、GaAs、InP、InN、InGaN、InGaAs、InSb、InAs又はAlGaAsが挙げられる。Nと組み合わせたAl、Ga及びInをベースとする化合物が最も好ましい。GaN、AlGaN、InGaN、AlInGaN又はAlNの使用が非常に好ましい。
【0078】
ナノ構造は、(後述の任意のドーピング原子と共に)Ga、Al、In及びNから成るのが最も好ましい。
【0079】
二元材料の使用が可能である一方で、本発明においては、AlGaNのような、1つのV族アニオンと共に2つのIII族カチオンが存在する三元ナノワイヤ又は三元ナノピラミッドの使用が好ましい。従って、この三元化合物は、式XYZ(但し、XはIII族元素であり、YはXとは異なるIII族であり、ZはV族元素である)のものであってもよい。XYZにおけるXのYに対するモル比は、好ましくは0.1~0.9であり、すなわち、上記式は、好ましくはX1-xZ(但し、添字xは0~1である)である。
【0080】
四元系も使用することが可能であり、式A1-x-yD(但し、A、B及びCは異なるIII族元素であり、DはV族元素である)で表すことができる。ここでも、添字x及びyは、通常、0~1である。他の選択肢は、当業者には明らかであろう。
【0081】
GaN、AlGaN、InGaN及びAlInGaNのナノ構造の成長が、特に好ましい。これらのナノ構造を含むデバイスによって放出される光の波長は、Al、In及びGaの含有量を操作することにより調整することができる。また、ナノワイヤ又はナノピラミッドのピッチ及び/又は直径を変化させ、放出される光の性質を変えることができる。
【0082】
ナノワイヤ又はナノピラミッドが化合物が異なる領域を含むことが更に好ましい。従って、ナノワイヤ又はナノピラミッドは、GaNなどの第1のIII-V族半導体の領域と、それに続く、AlGaNなどの異なるIII-V族半導体の領域とを含み得る。ナノ構造は、2つ以上又は3つ以上などの複数の領域を含むことができる。これらの領域は、軸方向に成長したナノワイヤにおける層であってもよく、径方向に成長したナノワイヤ又はナノピラミッドにおけるシェルであってもよい。
【0083】
III-V族半導体は、[111]配向した閃亜鉛鉱結晶構造又は[0001]配向したウルツ鉱結晶構造で成長することが、特に好ましい。
【0084】
[ドーピング]
本発明のナノ構造は、ドープされていることが好ましく、例えばp型ドープ、特には、例えばpn又はpin接合を含むようにp型ドープ及びn型ドープされていることが好ましい。基板をドープし、ナノ構造をドープして、両者間にpn接合を形成することも可能である。従って、本発明のデバイス、とりわけpin接合をベースとするデバイスは、任意に、p型半導体領域とn型半導体領域との間に非ドープ真性半導体領域を備えている。ドープされたトップ部分の領域は、オーミック接触に使用されるため、通常、高濃度にドープされている。ドープされたβ-Ga基板は、通常、デバイス内に他方のオーミック接触を形成し、このことにより、垂直デバイス構成が可能になる。
【0085】
従って、ナノワイヤ又はナノピラミッドは、ドープされていることが好ましい。ドーピングは、通常、例えば、MBE又はMOVPEによる成長中に、ナノワイヤ又はナノピラミッドに不純物イオンを導入することを必要とする。ドーピングレベルは、約1015/cm~1020/cmに制御することができる。ナノワイヤ又はナノピラミッドは、必要に応じてp型ドープ又はn型ドープすることができる。ドープされた半導体は、外因性導体(extrinsic conductor)である。
【0086】
真性半導体にドナー(アクセプタ)不純物をドープすることにより、n(p)型半導体は、正孔(電子)濃度よりも高い電子(正孔)濃度を有する。III-V族化合物、特に窒化物用の好適なドナー(アクセプタ)は、Si(Mg、Be及びZn)であり得る。ドーパントは、成長プロセスの間に、又は形成後のナノワイヤ若しくはナノピラミッドのイオン注入により、導入することができる。
【0087】
本発明のナノ構造は、径方向又は軸方向にヘテロ構造形態を有するように成長させることができる。例えば、軸方向にヘテロ構造化されたナノワイヤまたはナノピラミッドの場合、p型ドープされたコアを最初に成長させた後、nドープされたコアを続けて成長させる(又はその逆)ことによりpn接合を軸方向に形成することができる。ナノ構造のコアは、通常、β-Ga基板と同じ型でドープされるべきである(つまり、n(p)型基板上にn(p)型コア)。真性領域は、pin型のナノワイヤ又はナノピラミッドの場合、ドープされたコアの間に配置することができる。径方向にヘテロ構造化されたナノ構造の場合は、pドープされたナノワイヤ又はナノピラミッドコアを最初に成長させた後、nドープされた半導体シェルを成長させる(又はその逆)ことによりpn接合を径方向に形成することができる。pin型のナノワイヤ又はナノピラミッドの場合、ドープされた領域の間に真性シェルを配置することができる。
【0088】
ナノ構造は、軸方向に成長させ、従って、ナノ構造の軸方向上方に向かって第1のセクション及び第2のセクションから形成されることが好ましい。これら2つのセクションに異なるドープをし、pn接合又はpin接合を生成する。ナノ構造のトップセクション又はボトムセクションは、pドープ又はnドープされたセクションである。
【0089】
pinナノ構造では、電荷キャリアがそれぞれのp領域及びn領域に注入されると、それらはi領域で再結合し、この再結合により光が生成される。pn接合の場合、再結合は空間電荷領域で生じる(真性領域がないため)。光は、各ナノワイヤ又はナノピラミッドの内部でランダムに生成され、全方向に放出される。このような構造における一つの問題は、生成された光の一部しか所望の方向に向けられないため、そのかなりの部分が無駄になることである。
【0090】
従って、光反射層の使用により、放出光が、確実に所望の方向、特に、反射層とは反対の方向に向かってデバイスから出射されるようになる。
【0091】
本発明のナノ構造は、エピタキシャル成長するのが好ましい。それらは、β-Ga基板との準ファンデルワールス(quasi van der Waals)結合、イオン結合、及び共有結合が複雑に入り混じったものを介して下地基板に結合する。従って、基板とナノワイヤ又はナノピラミッドのベースとの接合部において、ナノワイヤ又はナノピラミッド内に結晶面がエピタキシャルに形成される。これらは、同じ結晶学的方向に互いに積み重なり合うことにより、ナノ構造をエピタキシャル成長させる。ナノワイヤは、垂直に成長するのが好ましい。本明細書において使用する「垂直に」という用語は、ナノワイヤが、基板に対して直角に成長することを意味する。当然のことながら、実験科学では、成長角度は正確に90°でなくてもよいが、「垂直に」という用語は、ナノワイヤが、垂直/直角方向の約10°以内、例えば、5°以内にあることを意味する。共有結合を介したエピタキシャル成長により、ナノ構造とβ-Ga基板とが密接に接触することが期待される。
【0092】
当然のことながら、基板は、複数のナノ構造を含む。ナノ構造は、互いにほぼ平行に成長するのが好ましい。従って、少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、好ましくは実質的に全てのナノ構造が、基板の同一面から同一方向に成長するのが好ましい。
【0093】
当然のことながら、エピタキシャル成長が起こり得るβ-Ga基板内には主に2つの面が存在する((100)及び(-201))。実質的に全てのナノ構造が同一面から成長するのが好ましい。その面が、基板表面に平行であることが好ましい。理想的には、成長したナノ構造は、実質的に平行である。ナノ構造は、β-Ga基板に対して実質的に直角に成長するのが好ましい。
【0094】
本発明のナノ構造は、好ましくは、閃亜鉛鉱III-V族半導体の場合は[111]方向に、ウルツ鉱III-V族半導体結晶の場合は[0001]方向に、成長すべきである。
【0095】
ナノ構造は、好ましくは、MBE又はMOVPEにより成長させる。MBE法では、基板に各反応物の分子ビームを照射する。例えば、III族元素とV族元素とを同時に供給することが好ましい。基板上におけるナノ構造の核生成及び成長は、MBE技術を用いて、例えばIII族元素とV族元素とを交互に供給することができるマイグレーション・エンハンスト・エピタキシー(MEE)又は原子層MBE(ALMBE)を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0096】
窒化物の場合の好ましい技術は、プラズマ支援固体ソースMBEであり、ガリウム、アルミニウム及びインジウム等の非常に純粋な元素を、ゆっくりと蒸発し始めるまで、別個のエフュージョンセル内で加熱する。通常、rfプラズマ窒素源を使用し、低エネルギーの窒素原子ビームを生成する。その後、ガス状の元素は、基板上で凝結し、そこで互いに反応し得る。ガリウム及び窒素の例においては、単結晶GaNが形成される。「ビーム」という用語の使用は、プラズマ源からの蒸発した原子(例えば、ガリウム)及び窒素原子が、基板に到達するまで、互いに又は真空チャンバーガスと相互作用しないことを意味する。III族窒化物ナノ構造をMBEによってβ-Ga基板の(100)面上に成長させるのであれば、初期窒化工程にはアンモニア(NH)が必要となる。
【0097】
MBEは、バックグラウンド圧力が通常約10-10~10-9Torrの超高真空中で行われる。ナノ構造は、通常、1時間あたり最高で数μmまでの速度などで、ゆっくりと成長させる。これにより、ナノ構造をエピタキシャル成長させることができ、構造性能が最大化される。
【0098】
放出光の性質は、ナノ構造の寸法および組成によって決まる。ナノ構造のバンドギャップを調整するために、温度及びフラックスを使用することができる。
【0099】
MOVPE法において、基板は、反応器内に保持され、キャリアガス及び各反応物の有機金属ガス、例えば、III族元素を含む有機金属前駆体及びV族元素を含む有機金属前駆体が基板に供給される。典型的なキャリアガスは、水素、窒素又はこれら2つの混合物である。基板上におけるナノ構造の核生成及び成長は、MOVPE技術を用いて、例えば、III族元素とV族元素とを交互に供給することができるパルス層成長技術を使用することによって、より高度に制御し得る。
【0100】
[ナノワイヤ又はナノピラミッドの選択領域成長]
本発明のナノ構造は、選択領域成長(SAG)法により成長させるのが好ましい。この方法は、β-Ga基板上に堆積したナノ孔パターンを有するマスクを必要とする場合もある。
【0101】
成長したナノ構造の高さ及び直径がより均一な、より規則的なナノ構造のアレイを作製するために、本発明者らは、β-Ga基板上におけるマスクの使用を想定している。このマスクには規則的な孔を設けることができ、そしてそこで、ナノ構造が、基板全体にわたって規則的な配列で均一なサイズに成長することができる。マスクの孔パターンは、従来のフォト/電子ビームリソグラフィー又はナノインプリントを用いて容易に製造することができる。従って、マスクを基板に適用し、基板表面を露出させる孔を、場合によっては規則的なパターンで、マスクにエッチングすることができる。さらに、孔のサイズ及びピッチを慎重に制御することができる。孔を規則的に配置することにより、規則的なパターンのナノ構造を成長させることができる。
【0102】
さらに、孔のサイズを制御し、各孔内に確実に1つのナノ構造しか成長できないようにすることができる。最終的に、孔は、ナノ構造の成長を可能にするのに十分な大きさのサイズに作ることができる。このようにして、規則的なナノ構造のアレイを成長させることができる。
【0103】
孔のサイズを変化させることにより、ナノ構造のサイズを制御することができる。孔のピッチを変化させることにより、ナノ構造からの光の光抽出を最適化することができる。
【0104】
マスク材は、堆積時、下地基板を損傷することのない任意の材料であり得る。マスクは、放出光(LED)及び入射光(光検出器)に対して透明でなければならない。孔の最小サイズは、50nm、好ましくは、少なくとも100~200nmである。マスクの厚さは、10~100nm、例えば、10~40nmとすることができる。
【0105】
マスク自体は、不活性化合物、例えば、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などで作ることができる。特に、孔パターンマスクは、例えば、電子ビーム蒸着、CVD、PE-CVD、スパッタリング又はALDにより堆積される、SiO、Si、HfO、TiO又はAlなどの少なくとも1つの絶縁材料を含む。従って、マスクは、電子ビーム堆積、CVD、プラズマ強化CVD、スパッタリング及び原子層堆積(ALD)によるなど、任意の好都合な技術により基板表面に設けることができる。
【0106】
ナノワイヤを成長させる前に窒化又は酸化されたTiマスクは、均一なナノ構造の成長を可能にすることが分かっているため、そのようなマスクの使用が特に好ましい。
【0107】
さらなる実施形態において、本発明は、グラフェンがGa基板に最も近くなる、グラフェン/SiO又はグラフェン/Siの孔パターンマスクの転写を含み得る。それは、グラフェンと第2の層(例えば、SiO又はSi)との両方を貫通する孔を有するマスクである。成長は、Gaから孔を通して起こり、マスクは、成長の際にGaの残りの部分を保護する。
【0108】
選択領域成長法では、均一な長さ及び直径のナノ構造が所定の位置に生成される。ナノ構造は、ナノ孔パターンを有するマスク無しで成長させることも可能である。その場合、ナノ構造は、サイズ(長さ及び直径)が不均一となり、ランダムな位置に配置されることになる。
【0109】
次に、ナノ構造の成長のために、基板温度を、対象のナノ構造の成長に適した温度に設定することができる。成長温度は、300~1200℃の範囲内であり得る。しかしながら、使用する温度は、ナノワイヤ又はナノピラミッドの材料の性質と、使用される方法(MBE又はMOVPE)とにより特定される。例えばMBEでは、GaNナノ構造の成長のための好ましい温度は、700~950℃であり、例えば、700~850℃、例としては765℃などである。AlGaNの場合、その範囲はやや高く、例えば、800~980℃、例としては830~950℃など、例えば、850℃である。
【0110】
従って、当然のことながら、ナノ構造は、ナノ構造内に異なるIII-V族半導体を含むことができ、例えば、GaN基部に始まり、続いて、AlGaN成分又はAlGaInN成分といった具合である。
【0111】
MBEによるIII族窒化物ナノ構造の成長は、Gaエフュージョンセル、窒素プラズマセル及びドーパントセルのシャッターを同時に開くことにより開始され、ドープGaNナノワイヤ又はドープGaNナノピラミッド(本明細書においては「基部」と呼ぶ)の成長を開始することができる。GaN基部の長さは、10nmから数百ナノメートルの間に維持することができる。その後、必要に応じて基板温度を上昇させ、Alシャッターを開きAlGaNナノ構造の成長を開始することができる。GaN基部を成長させることなく、基板上においてAlGaNナノ構造の成長を開始することもできる。nドープ及びpドープされたナノ構造は、ナノ構造の成長中に、それぞれ、nドーパントセル及びpドーパントセルのシャッターを開くことにより得られる。例えば、ナノ構造のnドーピングのためのSiドーパントセル、及びナノ構造のpドーピングのためのMgドーパントセルなど。
【0112】
エフュージョンセルの温度により、MBEにおける成長速度を制御することができる。従来の面(層ごとの)成長中に測定される、好都合な成長速度は、1時間あたり0.05~2μm、例えば、1時間あたり0.1μmである。エフュージョンセルの温度を変えることによってAl/Gaの比率を変化させることができる。
【0113】
成長させるナノワイヤ又はナノピラミッドの性質に応じて、分子ビームの圧力を調節することもできる。好適なレベルのビーム等価圧力は、1x10-7~1x10-4Torrである。
【0114】
反応物(例えば、III族原子及びV族分子など)間のビームフラックス比は変化させることができ、好ましいフラックス比は、他の成長パラメーター及び成長させるナノワイヤ又はナノピラミッドの性質によって決まる。窒化物の場合、ナノワイヤ又はナノピラミッドは、常に窒素が豊富な条件下で成長させる。
【0115】
本発明のナノ構造は、好ましくは、np又はnip型のAl(In)GaN又はAlGaNナノワイヤあるいはnp又はnip型のAl(In)GaN又はAlGaNナノピラミッドを含む。活性層(i領域)は、Alx1Gay1N/Alx2Gay2N(x1>x2及びx1+y1=x2+y2=1)多重量子井戸又は超格子構造から成り得る。p領域は、少数キャリア(電子)のp領域へのオーバーフローを防ぐために電子ブロック層(単一又は複数の量子バリア層)を含み(include/comprise)得る。
【0116】
従って、好ましい実施形態は、ナノ構造が多重量子井戸を有するものである。よって、好ましい実施形態は、ナノ構造が電子ブロック層を有するものである。理想的には、ナノ構造は、電子ブロック層及び多重量子井戸の両方を有する。
【0117】
従って、本発明の一実施形態では、2段階成長法などの多段階成長法を採用し、例えば、β-Ga基板上におけるナノ構造の核生成とナノ構造の成長とを別々に最適化する。
【0118】
MBEの大きな利点は、例えば、反射高エネルギー電子回折(RHEED)を用いることによって、成長するナノ構造をその場で分析できることである。RHEEDは、結晶材料の表面の特徴を明らかにするために通常使用される技術である。この技術は、ナノ構造がMOVPEなどの他の技術によって形成される場合には、容易に適用することはできない。
【0119】
MOVPEの大きな利点は、ナノ構造を、はるかに速い成長速度で成長させることができることである。この方法は、例えば、真性AlN/Al(In)GaN多重量子井戸(MQW)から成るシェルとAlGaN電子ブロック層(EBL)とpドープされた(Al)GaNシェルとを有するnドープされたGaNコアなどの、径方向にヘテロ構造化されたナノ構造及びマイクロワイヤの成長に有利である。この方法はまた、例えば、V/IIIモル比を低くする、基板温度を高くする、など、成長パラメーターを変更した連続成長モード又はパルス成長技術などの技術を用いて、軸方向にヘテロ構造化されたナノ構造の成長も可能にする。本発明のナノ構造は、径方向又は軸方向のヘテロ構造を含むのが好ましい。
【0120】
より詳細には、MOVPE反応器は、サンプルを配置した後、排気しなければならず、且つ、反応器内の酸素及び水分を除去するためにNでパージされる。これは、成長温度でのβ-Ga基板への損傷を避けるためであり、且つ、前駆体と酸素及び水との望ましくない反応を避けるためである。全圧は、50~400Torrになるよう設定する。基板温度は、その後、対象のナノワイヤ又はナノピラミッドの成長に適した温度に設定することができる。初期成長工程において、600℃を上回る温度でβ-Ga基板が水素と化学反応することのないように、数nmの厚さのGaNバッファを、窒素雰囲気下450~550℃で成長させてもよい。任意のバッファ層の後は、III族窒化物ナノ構造の成長温度を700~1200℃の範囲にし得る。しかしながら、使用する温度は、ナノ構造の材料の性質により特定される。GaNの場合、好ましい温度は、800~1150℃であり、例えば、900~1100℃、例としては1100℃などである。AlGaNの場合、その範囲はやや高く、例えば、900~1250℃、例としては1050~1250℃などであり、例えば、1250℃である。
【0121】
有機金属前駆体は、Gaの場合、トリメチルガリウム(TMGa)又はトリエチルガリウム(TEGa)、Alの場合、トリメチルアルミニウム(TMAl)又はトリエチルアルミニウム(TEAl)、及びInの場合、トリメチルインジウム(TMIn)又はトリエチルインジウム(TEIn)のそれぞれいずれかであり得る。ドーパント用の前駆体は、シリコンの場合、SiH、また、Mgの場合、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(CpMg)又はビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム((MeCp)Mg)であり得る。TMGa、TMAl及びTMInの流量は、5~100sccmに維持することができる。NHの流量は、5~150sccmの間で変化させることができる。
【0122】
特に、簡易な気相-固相成長の使用により、ナノ構造を成長させ得る。従って、MBEの場合、触媒を用いることなく基板に反応物(例えば、In及びN)を簡易適用することにより、ナノ構造を形成し得る。これは、従って、β-Ga基板上における上記の元素から形成された半導体ナノ構造の直接成長を提供する本発明の更なる態様を成す。よって、直接という用語は、成長を可能にする触媒が存在しないことを意味する。
【0123】
本発明は、別の態様において、ドープされたβ-Ga基板上に、好ましくは、該ドープされたβ-Ga基板上の孔パターンマスクの孔を通して、エピタキシャル成長させた複数のIII-V族ナノ構造を含む組成物であって、
該ナノ構造が、真性領域によって分離されていてもよいnドープ領域及びpドープ領域を有する、組成物を提供する。
【0124】
上記各領域は、ナノ構造内の層又はナノ構造を形成するコア上のシェルにより示し得る。従って、本発明は、真性多重量子井戸を含むシェルを備えたnドープコアと電子ブロックシェル層(EBL)とpドープシェルとをこの順に有する、ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数の径方向III-V族ナノ構造を更に提供する。ナノ構造のコアは、通常は、β-Ga基板と同じ型でドープされているべきである(つまり、n(p)型基板上にn(p)型コア)。n領域は、少数キャリア(正孔)のn領域へのオーバーフローを防止するために正孔ブロック層(単一又は複数の量子バリア層)を含み(include/comprise)得る。
【0125】
[反射層/電極]
本発明の組成物は、LEDにおいて、好ましくはフリップチップ配置において、用いられることが好ましい。デバイスを作製するために、ナノ構造のトップは、トップ電極と、LEDの実施形態の場合には好ましくは反射層と、を有する必要がある。いくつかの実施形態において、これらの層は一体であってもよい。
【0126】
デバイスは、2つの電極を備えている。第1の電極は、ドープされたβ-Ga基板と接触して配置される。この電極は、Ni、Au、Ti若しくはAlなどの金属元素又はそれらの混合物若しくはそれらの積層体(例えば、Ti/Al/Ni/Auの積層体など)をベースとし得る。第1の電極は、nドープされたβ-Ga基板上に堆積したn電極となることが多い。この電極は、基板のいずれかの表面上にあり、好ましくは、垂直デバイス構成を可能にするために、成長したナノ構造とは反対側の表面上にある。
【0127】
第2の電極は、成長したナノ構造の上にトップコンタクトとして配置される。この電極は、p電極となることが多い。好適な電極材料としては、Ni、Ag、Pd及びCuが挙げられる。特に、Ni/Au積層体を使用することができる。この電極は、ヒートシンクとしても機能し得る。以下でさらに詳細に説明するように、本発明のLEDデバイスは、好ましくは、フリップチップの形態である。よって、トップコンタクト電極は、フリップチップアセンブリのボトムに位置する。従って、この電極は、光を反射するか、又は光反射層を備えているかのいずれかであるのが好ましい。光反射層は、理想的には金属である。光反射コンタクト層はいくつかの方法で形成することができるが、PVD(物理蒸着)法及び周知のマスク技術を用いるのが好ましい方法である。リフレクタは、好ましくは、アルミニウム又は銀からなるが、他の金属又は金属合金を使用してもよい。光反射層の目的は、光が好ましい方向以外の方向に構造体から出光することを防ぐことと、放出光を単一方向に集束させることである。さらに、光反射層は、ナノワイヤ又はナノピラミッドに対するトップコンタクト電極として機能し得る。LEDによって放出された光は、反射層とは反対の方向に、すなわちフリップチップのトップの外に導かれる。
【0128】
反射層は、光を反射する必要があり、ヒートシンクとしても機能し得る。好適な厚さは、20~400nm、例えば50~200nmである。
【0129】
光検出器の実施形態において、反射層を使用する必要はないが、場合によっては、入射光をナノ構造に反射して光検出を向上させるため、そのような層を使用することもできる。
【0130】
好ましい実施形態において、光検出器は紫外光検出器である。例えば、炎検出、紫外放射キャリブレーション及びモニタリング、化学的及び生物学的分析、天文研究などに、いわゆるソーラーブラインドUVC光検出器が有用である。特に、光検出デバイスは、
n(p)ドープされたβ-Ga基板上にエピタキシャル成長させた複数のp(n)ドープされたIII-N族ナノ構造を含む。
【0131】
第1の電極が、通常はナノ構造とは反対側で、上記ドープされたβ-Ga基板と電気的に接触していてもよい。
【0132】
好ましくは、この光検出器は、高濃度にp型(p++)ドープされたGaNナノ構造を成長させた低濃度にn型ドープされた(n-)β-Ga基板をベースとするものである。この場合、光吸収領域は、主にβ-Ga基板内にあり、260nmに対応するバンドギャップであれば、UVC(約260nmよりも短い波長)に対してのみ感受性を持つ。p-GaNナノ構造の役割は、UVC光吸収後にn型β-Ga空乏領域内に生じた正孔をp-GaNナノ構造を通してp電極に輸送することができるように、β-Ga基板との高品質なエピタキシャルヘテロ接合を形成することである。UVC光吸収後にn型β-Ga空乏領域内に生じた電子は、n型β-Ga基板を通してn電極に輸送される。β-Ga基板の低濃度nドーピングとp-GaNナノ構造の高濃度ドーピングとにより、空乏領域(光電流生成領域)のほぼ全てがβ-Ga内にあり、非常に薄い空乏領域が基板/p-GaN界面の隣のp-GaNナノ構造内にある。この非常に薄いp-GaN空乏領域により、ほんのわずかな光電流がp-GaN内に生じるはずである(UVA及びUVBの光吸収からいくらかの最小限の光電流「ノイズ」を発生させる)。β-Gaのp型ドープ及びβ-Ga上での薄膜p-GaNの成長は非常に難しいため、基板はヘテロ界面における欠陥密度が非常に高く、このようなデバイスは今日では効率的でない。
【0133】
[フィラー]
フィラーが例えば紫外光に対して透明である限り、フィラーを使用してフリップチップアセンブリを包囲することは、本発明の範囲内である。フィラーは、ナノワイヤ間若しくはナノピラミッド間の空間及び/又はアセンブリ全体の周囲に存在してもよい。ナノワイヤ間又はナノピラミッド間の空間には、アセンブリ全体とは異なるフィラーを使用してもよい。
【0134】
[応用]
本発明は、主としてLED、特にUV-LED、とりわけUV-A、UV-B又はUV-C LEDに関する。LEDは、通常のデバイスと比べてチップが反転した、いわゆる「フリップチップ」として設計されることが好ましい。
【0135】
LED構成全体は、平均直列抵抗を低減させるように配置及び分離された、フリップチップボンディング用のコンタクトパッドを備える。このようなナノ構造LEDは、LEDチップのナノワイヤ又はナノピラミッド上のpコンタクトパッド及びβ-Ga基板上のnコンタクトパッドの位置に対応するコンタクトパッドを有するキャリア上に配置し、はんだ付け、超音波溶接、ボンディングを使用して又は導電性接着剤の使用により取り付けることができる。キャリア上のコンタクトパッドは、LEDパッケージの適切な電源リード線に電気的に接続することができる。
【0136】
このようなナノワイヤベースのLEDデバイスは、通常、機械的支持及び電気的接続を提供するキャリア上に搭載される。効率の向上したLEDを構成するための1つの好ましい方法は、フリップチップデバイスを作製することである。反射率の高い光反射層を、ナノワイヤ又はナノピラミッドの上に形成する。ナノワイヤ又はナノピラミッドのトップに向けられた放出光は、反射層に当たると反射されることにより、構造体から出射する光の明らかに優位な方向を作り出す。構造体を製造するこの方法により、放出光の大部分を所望の方向に導くことが可能となり、LEDの効率を高めることができる。従って、本発明は、可視LED及びUV-LEDの製造を可能にする。
【0137】
本発明はまた、デバイスが光を吸収し、光電流を生成する光検出器にも関する。光反射層は、光検出を向上させるために、デバイスへの入射光をナノワイヤ又はナノピラミッドに反射し得る。
【0138】
他の応用先としては、太陽電池及びレーザダイオードが挙げられる。
【0139】
ここで、以下の非限定的実施例及び図面と関連させ、本発明について更に検討する。
【0140】
[図面の簡単な説明]
図面は、一定の縮尺で作成されたものではない。図1は、可能なフリップチップ設計を示している。従って、使用時、光はデバイスのトップを通過し放出される(hυと記載)。層1は、β-Ga基板である。
【0141】
ナノワイヤ2は、基板1からエピタキシャル成長している。理想的には、β-Ga基板はn型ドープされ、ナノワイヤは、Al(In)GaN、AlN又はGaNからなり、ドープされてnip接合又はnp接合を形成している。
【0142】
フィラー3は、成長したナノワイヤの間に配置することができる。トップ電極/光反射層4は、ナノワイヤ2の上に配置されている。光反射層は、Ni又はAuを含むp電極を備えていてもよい。使用時には、この層は、デバイスが放出した光を反射し、光が確実に反射層の反対側のデバイスのトップを通過し放出されるようにする。これは、従来のLEDと比べて、デバイスが逆さであるため、いわゆるフリップチップ配置である。
【0143】
n電極8は、基板1上に配置されている。この電極は、Ti、Al、Ni又は/及びAuを含んでいてもよい。基板は、基板上の限定された位置にナノワイヤを成長させるためにマスク5を備えてもよい。
【0144】
デバイス全体が、はんだ層7を介してサブマウント6に半田付けされている。
【0145】
順方向電流がデバイスを垂直に通過すると、組成物に応じて可視光又は紫外光が、ナノワイヤ内で生成され、場合によっては反射層で反射された後、デバイスのトップから放出される。
【0146】
逆電流がデバイスを通過し、デバイスが可視光又は紫外光に暴露されると、ナノワイヤは組成物に応じて可視光又は紫外光を吸収し、電流に変換することにより、光検出器として機能する。
【0147】
図2は、本発明の一つの可能なナノワイヤを示す。ナノワイヤは、成長段階において供給する元素を変えることにより、軸方向に異なる成分を有する。まず、n型ドープされたGaN材料をn型ドープされたβ-Ga基板上に堆積し、続いてn-AlN又はn-(Al)GaNを堆積している。図示されているように、ナノワイヤの中央部には、(In)(Al)GaNから形成された一連の多重量子井戸がある。そして、GaN、AlGaN又は(Al)GaNをベースとしたp型ドープ領域と、p-Al(Ga)Nをベースとした電子ブロック層と、最後に、p電極へのオーミック接触のための高ドープされたp-GaN層とが続く。
【0148】
図3は、ナノワイヤが径方向に成長し、コアシェル構造体を形成する別のチップ設計を示す。よって、使用時に、光は、デバイスのトップを通過し放出される(hυと記載)。
【0149】
層1は、β-Ga基板である。ナノワイヤ2は、基板層1からエピタキシャル成長している。理想的には、β-Ga基板はn型ドープされ、ナノワイヤは、Al(In)GaN、AlN又はGaNからなり、ドープされてnip接合又はnp接合を形成している。基板1は、マスク層5を備え得る。
【0150】
フィラー3は、成長したナノワイヤの間に配置することができる。トップ電極/光反射層4は、ナノワイヤ2の上に配置されている。光反射層は、Ni又は/及びAuを含むp電極を備えていてもよい。使用時には、この層は、デバイスが放出した光を反射し、光が確実に反射層の反対側のデバイスのトップを通過し放出されるようにする。これは、従来のLEDと比べて、デバイスが逆さであるため、いわゆるフリップチップ配置である。
【0151】
n電極8は、nドープされた基板1上に配置されている。順方向電流がデバイスを垂直に通過すると、組成物に応じて可視光又は紫外光が、ナノワイヤ内で生成され、場合によっては反射層で反射された後、デバイスのトップから放出される。
【0152】
デバイス全体が、はんだ層7を介してサブマウント6に半田付けされている。
【0153】
逆電流がデバイスを通過し、デバイスが可視光又は紫外光に暴露されると、ナノワイヤは組成物に応じて可視光又は紫外光を吸収し、電流に変換することにより、光検出器として機能する。
【0154】
図4は、ナノワイヤを示し、このナノワイヤは、径方向に成長しているが、シェル構造体内に図2のものと同じ構成要素を有する。ナノワイヤは、成長段階において供給する元素を変えることにより、半径方向に異なる成分を有する。まず、n型ドープされたGaNコア材料を堆積し、続いてn-AlN又はn-(Al)GaNを堆積している。図示されているように、ナノワイヤの中心シェルには、(In)(Al)GaNから形成された一連の多重量子井戸がある。そして、Al(Ga)Nをベースとしたp型ドープ領域と、p-Al(Ga)Nをベースとした電子ブロックシェルと、最後にp電極のオーミック接触のための高ドープされたp-GaNシェルとが続く。
【0155】
図5は、β-Ga単位格子を示し、(100)、(-201)及び(010)結晶面がそれぞれ赤、青及び緑で示されている。酸素原子は赤で示され、Ga原子は緑で示されている。
【0156】
図6は、(-201)及び(010)結晶面を有するβ-Ga単位格子と、β-Ga基板のいくつかの物理的特性とを示す。酸素原子は赤で示され、Ga原子は緑で示されている。
【0157】
図7は、(-201)表面配向を有するβ-Ga基板上に[0001]方向に成長させた(Al,In)GaNナノワイヤの例を示す。β-Gaと(Al)GaNとの間、すなわち[-201]/[0001]の格子不整合が非常に小さいため、高品質な垂直(Al,In)GaNナノワイヤをβ-Ga基板の(-201)表面上にエピタキシャル成長させることができる。具体的な応用例としては、ソーラーブラインド光検出器をp型(Al,In)GaNナノワイヤ/n型β-Ga基板から作ることができ、LEDをn型β-Ga基板の上のnip型(Al,In)GaNナノワイヤから作製することができる。
【0158】
(Al,In)GaNナノワイヤは、(-201)表面配向を有するβ-Gaの上に、薄いエピタキシャルIII-V族バッファ層の有無(図7(a)は無し、図7(b)は有り)に関わらず、直接成長させることができる。バッファ層は、図7(b)に示すように、例えば(Al,In)GaNからなり得る。
【0159】
図7(c)は、n型ドープされたGaNバッファ層を有する(-201)β-Ga基板の上に成長させた垂直n型ドープGaNナノワイヤの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。GaNナノワイヤとGaNバッファ層とは、実験手順の部分で説明するように窒素プラズマ支援MBEによって成長させたものである。
【0160】
図8(a)及び図8(c)は、それぞれ、p型エピタキシャル(Al,In)GaNバッファ層無し(a)、p型エピタキシャル(Al,In)GaNバッファ層有り(c)で、n型β-Ga基板上に成長させたp型(Al,In)GaNナノワイヤを示す。これにより、nドープされたGa基板とp型(Al,In)GaNナノワイヤとの間にpn接合が形成され、ソーラーブラインドフォトダイオード検出器用の材料として用いることができる。
【0161】
図8(b)及び図8(d)では、n型β-Ga基板上に、それぞれ、エピタキシャルn型(Al,In)GaNバッファ層無し(b)、エピタキシャルn型(Al,In)GaNバッファ層有り(d)で、nipドープされた(Al,In)GaNナノワイヤをエピタキシャル成長させている。ここでは、Ga基板は、例えば、垂直電流注入型(Al,In)GaNナノワイヤLED用の透明(Gaバンドギャップ約4.8eV以下のエネルギーを持つ光子に対して)で導電性を有する電極として機能する。
【0162】
<実施例1>
Veeco社のGEN930分子線エピタキシーシステムにおいて、高周波窒素プラズマ源(PA-MBE、アイソレーションゲートバルブ付き)を用いて、Nが豊富な条件下で、nドープβ-Ga基板の(-201)面上にn型ドープGaNナノワイヤを成長させた。基板は、成長チャンバーに入れる前に、準備チャンバーにおいて500℃で1時間サーマルクリーニングした。n型ドープGaNバッファ層を、550℃、Gaフラックス0.1ML/s、N流量2.5sccm、495Wで、60分間成長させた。バッファの成長は、GaシャッターとNゲートバルブ及びシャッターとを同時に開くことによって開始させた。バッファ層の成長が成功した後、基板温度を765℃まで徐々に上昇させた。次いで、GaシャッターとNゲートバルブ及びシャッターとを同時に開くことによってナノワイヤの成長を開始させた。ナノワイヤの成長は、Gaフラックス0.5ML/s、N流量2.5sccm、495Wで、4時間進行させた。GaNバッファ層とナノワイヤとを、1100℃のSiセル温度で、Siでn型ドープした。
【0163】
<実施例2>
PA-MBEを用いて、Nが豊富な条件下で、nドープβ-Ga基板の(-201)面上にnドープGaNナノワイヤを成長させた。Ga及びSi原子を供給するために標準のクヌーセン(Knudsen)エフュージョンセルを用い、原子状窒素は450Wで動作する高周波プラズマ源から生成した。基板は、成長チャンバーに入れる前に、準備チャンバーにおいて350℃で1時間サーマルクリーニングした。次いで、無触媒の自己組織化nドープGaNナノワイヤを、中間バッファ層なしで、nドープβ-Ga基板上に直接成長させた。この成長プロセスは、GaシャッターとNシャッターとを同時に開くことによって開始させた。すなわち、基板の表面で意図的な窒化は行わなかった。GaNナノワイヤを、セル温度800℃、成長時間90分間で、Siでn型ドープした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d