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特許7541482安定化RSV Fタンパク質およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】安定化RSV Fタンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/08 20060101AFI20240821BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20240821BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240821BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240821BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240821BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240821BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240821BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240821BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240821BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240821BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240821BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240821BHJP
   C12N 15/40 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
C07K14/08
A61K39/12
A61P31/14
A61P37/04
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/12
A61K47/28
A61K39/39
C12N15/40 ZNA
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020540744
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 US2019014873
(87)【国際公開番号】W WO2019147749
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】62/623,184
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【弁理士】
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ラン
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】デュール,エベラール
(72)【発明者】
【氏名】ベット,アンドリュー
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/172890(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/130584(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの組換えRSV Fペプチドを含む、組換え呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質三量体であって、
ここで、該組換えFペプチドは、配列番号:26又は27のいずれかで規定されるアミノ酸配列からなる
組換え呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質三量体。
【請求項2】
請求項1記載の組換えRSV Fタンパク質三量体及び薬学的に許容される担体を含むRSV免疫原性組成物。
【請求項3】
組換えRSV F三量体または組換えRSV Fペプチドに対する抗原特異的免疫応答を生成するための有効量で製剤化された、請求項2記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
アジュバントで製剤化された、請求項2~3のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
アジュバントがアルミニウムアジュバントである、請求項4記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
アルミニウムアジュバントが無定形ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩またはヒドロキシリン酸アルミニウムの水性懸濁液である、請求項5記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
1以上のカチオン性脂質およびポリ(エチレングリコール)-脂質(PEG脂質)を含む脂質ナノ粒子を更に含む、請求項2~6のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記の1以上のカチオン性脂質が、イオン化可能なカチオン性脂質である、請求項7記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
イオン化可能なカチオン性脂質が、
DLinDMA;DlinKC2DMA;DLin-MC3-DMA;CLinDMA;S-オクチルCLinDMA;
(2S)-1-{7-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘプチルオキシ}-3-[(4Z)-デカ-4-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-[(4Z)-デカ-4-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
1-[(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-イル]グアニジン;
1-[(2R)-1-{7-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘプチルオキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
1-[(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
(2S)-1-({6-[(3β))-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘキシル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
(3β)-3-[6-{[(2S)-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-2-(ピロリジン-1-イル)プロピル]オキシ}ヘキシル)オキシ]コレスタ-5-エン;
(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;
(2R)-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン;
(2R)-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-3-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
(2R)-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(2Z)-ペンタ-2-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
(2S)-1-ブトキシ-3-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
(2S-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-3-[2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロノニル)オキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
2-アミノ-2-{[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジオール;
2-アミノ-3-((9-(((3S,10R,13R)-10,13-ジメチル-17-(6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)ノニル)オキシ)-2-((((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)オキシ)メチル)プロパン-1-オール;
2-アミノ-3-((6-(((3S,10R,13R)-10,13-ジメチル-17-(6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)ヘキシル)オキシ)-2-((((Z)-オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)メチル)プロパン-1-オール;
(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン;
(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-9-アミン;
(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン;
(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン;
(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン;
(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン;
(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン;
(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン;
(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン;
(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン;
(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン;
(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン;
(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン;
(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン;
(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン;
(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン;
(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18-エン-10-アミン;
(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17-エン-9-アミン;
(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン;
N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン;
(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン;
1-[(11Z,14Z)-1-ノニルイコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン;
(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-20-エン-10-アミン;
(15Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-15-エン-10-アミン;
(14Z)-N,N-ジメチルノナコサ-14-エン-10-アミン;
(17Z)-N,N-ジメチルノナコサ-17-エン-10-アミン;
(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコンタ-24-エン-10-アミン;
(20Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20-エン-10-アミン;
(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22-エン-10-アミン;
(16Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16-エン-8-アミン;
(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘニコサ-12,15-ジエン-1-アミン;
(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプタデカン-8-アミン;
1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン;
N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘニコサン-10-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン;
N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン;
1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン;
1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン;および
(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,23-トリエン-10-アミン;
またはそれらの薬学的に許容される塩または前記のいずれかの立体異性体
から選択される、請求項8記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
イオン化可能なカチオン性脂質が、(2S)-1-({6-[(3β))-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘキシル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン;およびN,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプタデカン-8-アミン、またはそれらの薬学的に許容される塩または前記のいずれかの立体異性体からなる群から選択される、請求項9記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
30~75モル%のイオン化可能なカチオン性脂質および0.1~20モル%のPEG脂質を含む、請求項10記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
リン脂質、リン脂質誘導体、脂肪酸、及び、ステロール、または、それらの組合せから選択される1以上の非カチオン性脂質を更に含む、請求項7~11のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
ステロールがコレステロール、スチグマステロールまたはスチグマスタノールである、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
リン脂質が、ホスファチジルセリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1、2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンおよび1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)から選択される、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
PEG-脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール メトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)またはPEG-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である、請求項7~14のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
20~99.8モル%のイオン化可能なカチオン性脂質、0.1~65モル%の非カチオン性脂質および0.1~20モル%のPEG-脂質を含む、請求項12~15のいずれか1項記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
非カチオン性脂質がコレステロールとDSPCとの混合物を含む、請求項16記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
(2S)-1-({6-[(3β))-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘキシル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミンおよびN,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプタデカン-8-アミンからなる群から選択される34~59モル%のイオン化可能なカチオン性脂質、30~48モル%のコレステロール、10~24%のDSPCおよび1~2モル%のPEG-DMGを含む、請求項12記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
対象におけるRSV Fタンパク質に対する免疫応答を生成させるための、請求項1記載のRSV Fタンパク質三量体又は請求項2記載のRSV免疫原性組成物。
【請求項20】
対象が、RSV Fタンパク質三量体またはRSV免疫原性組成物の単一用量を投与される、請求項19記載のRSV Fタンパク質三量体又はRSV免疫原性組成物。
【請求項21】
対象が、RSV Fタンパク質三量体またはRSV免疫原性組成物の、少なくとも1つのブースター用量を投与される、請求項19記載のRSV Fタンパク質三量体又はRSV免疫原性組成物。
【請求項22】
対象が、RSV Fタンパク質三量体またはRSV免疫原性組成物を皮内注射または筋肉内注射により投与される、請求項19~21のいずれか1項記載のRSV Fタンパク質三量体又はRSV免疫原性組成物。
【請求項23】
対象がRSVウイルスに曝露されているか、対象がRSVウイルスに感染しているか、または、対象がRVSウイルスによる感染のリスクを有する、請求項19~22のいずれか1項記載のRSV Fタンパク質三量体又はRSV免疫原性組成物。
【請求項24】
対象においてRSV Fタンパク質免疫応答を誘導する方法における使用のための、請求項1記載のRSV Fタンパク質三量体または請求項2~18のいずれか1項記載のRSV免疫原性組成物であって、
該方法が、対象に抗原特異的免疫応答を生成させるのに有効な量のRSV Fタンパク質三量体またはRSV免疫原性組成物を対象に投与することを含む、RSV Fタンパク質三量体またはRSV免疫原性組成物。
【請求項25】
対象においてRSV Fタンパク質免疫応答を誘導する方法において使用するための医薬の製造における、請求項1記載のRSV Fタンパク質三量体または請求項2~18のいずれか1項記載のRSV免疫原性組成物の使用であって、
該方法が、対象に抗原特異的免疫応答を生成させるのに有効な量のRSV Fタンパク質三量体またはRSV免疫原性組成物を対象に投与することを含む、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、安定なRSV Fタンパク質およびそれを含有する免疫原性組成物、ならびに、RSV Fタンパク質を含む免疫原性組成物および組成物の使用方法に関する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本出願は2018年1月29日付け出願の米国仮特許出願第62/623,184号(その内容の全体を参照により本明細書に組み入れることとする)の利益を主張するものである。
【0003】
電子的に提出された配列表に対する言及
本出願の配列表は、ファイル名「24566WOPCT-SEQLIST-18JAN2019.TXT」、作成日2019年1月18日およびサイズ167kbを有するASCII形式の配列表としてEFS-Webを介して電子的に提出されている。EFS-Webを介して提出されたこの配列表は本明細書の一部であり、その全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
【背景技術】
【0004】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)はニューモウイルス科のメンバーである。RSV感染は、幼児および高齢者(65歳以上)の両方における下気道感染の主要原因である。現在、利用可能な認可されたワクチンは存在せず、治療選択肢は限られている。
【0005】
RSVのエンベロープは3つの表面糖タンパク質、すなわち、F、GおよびSHを含有する。GおよびFタンパク質は防御抗原であり、中和抗体の標的である。しかし、Fタンパク質は、RSV株および型(AおよびB)の間でより保存されている。RSV Fは、準安定融合前形態から非常に安定な融合後形態へと、構造的に再編成するI型ウイルス融合タンパク質である。中和モノクローナル抗体の標的はFタンパク質の融合後コンホメーション上に存在するが、中和Ab応答は主に、RSVに自然感染した人々におけるFタンパク質融合前コンホメーションを標的とする(Magro Mら,Proc Natl Acad Sci USA;109(8):3089-94,2012;Ngwuta JOら,Sci Transl Med 2015;7(309):309ra162)。したがって、融合前コンホメーションにおいて安定化された操作されたRSV Fタンパク質は、RSV Fワクチン抗原を開発するための魅力的な戦略である。例えば、「DS-Cav1」置換(155C、290C、190Fおよび207L)を含む組換えRSV F三量体は、融合後Fに基づくRSV免疫原に関して観察される応答よりも大きい、動物モデルおける中和免疫応答を誘発することが既に示されている(McLellanら,Science,342:592-598,2013)。関心のある融合前形態においてより一層安定である新規RSV抗原を本明細書に記載する。
【発明の概要】
【0006】
発明の概括
本開示は、98~146位におけるRSV F野生型アミノ酸の欠失をそれぞれが含む3つの組換えRSV Fペプチドと、RSV F野生型アミノ酸の97位と147位との間の8~14アミノ酸のリンカーとを含む組換え呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F三量体を提供し、ここで、該組換えFペプチドは、融合前コンホメーションにおける組換えRSV F三量体を安定化させる以下の修飾を含む:(i)190Fおよび207Lアミノ酸置換、(ii)155Cおよび290Cアミノ酸置換、ならびに、以下の(a)~(f)の1つ(またはそれ以上):(a)486Cおよび490Cアミノ酸置換;(b)180Cおよび186Cアミノ酸置換;(c)486Cおよび489Cアミノ酸置換;(d)512Cおよび513Cアミノ酸置換;(e)505Cアミノ酸置換;および(f)RSV F野生型アミノ酸482~513の欠失。1つの実施形態においては、各RSV Fペプチドは、RSV F野生型膜貫通ドメインと細胞質ドメインとの欠失をC末端に更に含む(例えば、C末端にRSV F野生型アミノ酸525~574の欠失を含む)。もう1つの実施形態においては、各RSV Fペプチドは、RSV F野生型アミノ酸514~574の欠失を含む。
【0007】
組換えRSV F三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドのそれぞれは、各ペプチドのC末端にフォールドン(foldon)配列を更に含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は該ペプチドのC末端から始まり、RSV F野生型膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインに取って代わる(例えば、フォールドンドメインは、RSV F野生型アミノ酸525~574に取って代わる)。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は、野生型RSV Fのアミノ酸513位の後から始まる(すなわち、フォールドン配列は野生型RSV-Fのアミノ酸514~574に取って代わる)。もう1つの実施形態においては、RSV Fペプチドが野生型RSV Fのアミノ酸482~513の追加の欠失を含有する場合、フォールドンドメインの配列は、野生型RSV Fのアミノ酸481位の後から始まる(例えば、配列番号44を参照されたい)。幾つかの実施形態においては、フォールドン配列は配列番号8を含む。
【0008】
RSV F三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドはそれぞれ、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、486Cおよび490Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、各組換えFペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV F三量体は、486Cおよび490Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の1以上の非天然のペプチド間ジスルフィド結合を含む。もう1つの実施形態においては、組換えRSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0009】
RSV F三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドはそれぞれ、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、180Cおよび186Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、各組換えRSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合および/または190Cおよび186Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、組換えRSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0010】
組換えRSV F三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドはそれぞれ、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、486Cおよび489Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、各組換えRSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV F三量体は、486Cおよび489Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド間ジスルフィド結合を含む。もう1つの実施形態においては、組換えRSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0011】
RSV三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドはそれぞれ、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、512Cおよび513Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、各組換えRSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV F三量体は、512Cおよび513Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド間ジスルフィド結合を含む。もう1つの実施形態においては、組換えRSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0012】
組換えRSV F三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドはそれぞれ、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、505Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。もう1つの実施形態においては、各組換えRSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、組換えRSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0013】
組換えRSV F三量体の1つの実施形態においては、組換えFペプチドはそれぞれ、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸482~513の欠失、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、各組換えRSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、組換えRSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0014】
1つの実施形態においては、リンカーは、8、10、12または14アミノ酸長である。1つの実施形態においては、リンカーは、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、リンカーは、配列番号1、2、3または4のいずれかに示されているアミノ酸配列を有する。
【0015】
1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号22に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号24に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号26に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号28に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号30に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号44に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。
【0016】
本開示はまた、98~146位におけるRSV F野生型アミノ酸の欠失をそれぞれが含む3つの組換えRSV Fペプチドと、RSV F野生型アミノ酸の97位と147位との間の8~14アミノ酸のリンカーとを含む組換え呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F三量体を含むRSV免疫原性組成物を提供し、ここで、該組換えFペプチドは、融合前コンホメーションにおける組換えRSV F三量体を安定化させる以下の修飾を含む:(i)190Fおよび207Lアミノ酸置換、(ii)155Cおよび290Cアミノ酸置換、ならびに、以下の(a)~(f)の1つ(またはそれ以上):(a)486Cおよび490Cアミノ酸置換;(b)180Cおよび186Cアミノ酸置換;(c)486Cおよび489Cアミノ酸置換;(d)512Cおよび513Cアミノ酸置換;(e)505Cアミノ酸置換;および(f)RSV F野生型アミノ酸482~513の欠失。1つの実施形態においては、各RSV Fペプチドは、C末端に、RSV F野生型膜貫通ドメインの欠失および細胞質ドメインの欠失を更に含む(例えば、C末端にRSV F野生型アミノ酸525~574の欠失を含む)。もう1つの実施形態においては、各RSV Fペプチドは、RSV F野生型アミノ酸514~574の欠失を含む。
【0017】
免疫原性組成物の1つの実施形態においては、組換えFペプチドのそれぞれは各ペプチドのC末端にフォールドン配列を更に含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は、野生型RSV Fのアミノ酸513位の後から始まる(すなわち、フォールドン配列は野生型RSV-Fのアミノ酸514~574に取って代わる)。もう1つの実施形態においては、RSV Fペプチドが野生型RSV Fのアミノ酸482~513の追加の欠失を含有する場合、フォールドンドメインの配列は野生型RSV Fのアミノ酸481位の後から始まる(例えば、配列番号44を参照されたい)。幾つかの実施形態においては、フォールドン配列は配列番号8を含む。
【0018】
免疫原性組成物の1つの実施形態においては、RSV F三量体は、本明細書に記載されているRSV三量体のいずれかである。免疫原性組成物のもう1つの実施形態においては、RSV F三量体の組換えFペプチドはそれぞれ、配列番号22、24、26、28、30および44のいずれかに示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれらからなる、またはそれらからなる。
【0019】
本開示はまた、98~146位のRSV F野生型アミノ酸の欠失と、RSV F野生型の97位と147位との間の8~14アミノ酸のリンカーと、融合前コンホメーションにおけるそのような組換えRSVペプチドの3つを含有する組換えRSV F三量体を安定化させるための追加的修飾とを含むRSVペプチドを提供する。該一本鎖RSVペプチドにおけるそのような追加的修飾は、(i)190Fおよび207Lアミノ酸置換、(ii)155Cおよび290Cアミノ酸置換、ならびに、以下の(a)~(f)の1つ(またはそれ以上)を含む:(a)486Cおよび490Cアミノ酸置換;(b)180Cおよび186Cアミノ酸置換;(c)486Cおよび489Cアミノ酸置換;(d)512Cおよび513Cアミノ酸置換;(e)505Cアミノ酸置換;および(f)RSV F野生型アミノ酸482~513の欠失。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、C末端に、RSV F野生型膜貫通ドメインの欠失および細胞質ドメインの欠失を更に含む(例えば、C末端にRSV F野生型アミノ酸525~574の欠失を含む)。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドはRSV F野生型アミノ酸514~574の欠失を含む。
【0020】
1つの実施形態においては、RSV FペプチドはC末端にフォールドン配列を更に含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は野生型RSV Fのアミノ酸513位の後から始まる(すなわち、フォールドン配列は野生型RSV-Fのアミノ酸514~574に取って代わる)。もう1つの実施形態においては、RSV Fペプチドが野生型RSV Fのアミノ酸482~513の追加の欠失を含有する場合、フォールドンドメインの配列は野生型RSV Fのアミノ酸482位の後から始まる(例えば、配列番号44を参照されたい)。幾つかの実施形態においては、フォールドン配列は配列番号8を含む。
【0021】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、486Cおよび490Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドのC末端はフォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0022】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、180Cおよび186Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合ならびに/または190Cおよび186Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドのC末端はフォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0023】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、486Cおよび489Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドのC末端はフォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0024】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、512Cおよび513Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドのC末端はフォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0025】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、505Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。もう1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドのC末端はフォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0026】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、190Fおよび207Lアミノ酸置換、155Cおよび290Cアミノ酸置換、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸482~513の欠失、ならびに野生型RSV Fのアミノ酸514~574の欠失を含む。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、155Cおよび290Cアミノ酸置換により導入されたシステインの間の非天然のペプチド内ジスルフィド結合を更に含む。もう1つの実施形態においては、RSV FペプチドのC末端はそれぞれ、フォールドンドメインの配列を含む。もう1つの実施形態においては、フォールドンドメインの配列は配列番号8を含む。
【0027】
1つの実施形態においては、リンカーは、8、10、12または14アミノ酸長である。1つの実施形態においては、リンカーは、配列番号46に示されているアミノ酸配列を含む。もう1つの実施形態においては、リンカーは、配列番号1、2、3または4のいずれかに示されているアミノ酸配列を有する。
【0028】
1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、配列番号22に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、配列番号24に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、配列番号26に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、配列番号28に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、配列番号30に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。1つの実施形態においては、RSV Fペプチドは、配列番号44に示されている成熟アミノ酸配列を含む、実質的にそれからなる、またはそれからなる。
【0029】
1つの実施形態においては、RSVペプチドは、組換え法により産生された場合、本明細書に記載されているRSV F三量体を形成する。
【0030】
本開示はまた、本明細書に記載されている一本鎖RSVペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。1つの実施形態においては、単離された核酸分子はDNA分子である。本開示は更に、該核酸分子を含むベクターを提供する。
【0031】
本開示はまた、本明細書に記載されている組換え呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F三量体の製造方法を提供し、該方法は、(i)それぞれ前記に記載されている核酸分子またはベクターを発現させること、および(ii)それから産生された組換えRSV F三量体を精製することを含む。
【0032】
本開示はまた、本明細書に記載されているRSV F三量体に対する、または本明細書に記載されているRSV Fペプチドに対する全長抗体および抗体誘導体を含む抗体分子を提供する。
【0033】
幾つかの実施形態においては、免疫原性組成物はアジュバントと共に製剤化(処方)される。1つの実施形態においては、アジュバントはアルミニウムアジュバントである。幾つかの実施形態においては、アルミニウムアジュバントはMAAまたはMAPAである。
【0034】
幾つかの実施形態においては、それぞれ本明細書に記載されている組換えRSV F三量体またはRSV Fペプチドは、カチオン性脂質、PEG修飾脂質、ステロールおよび非カチオン性脂質を含む脂質ナノ粒子(LNP)と共に製剤化される。
【0035】
本開示の幾つかの実施形態は、本明細書に記載されている免疫原性組成物のいずれか、または本明細書に記載されている組換えRSV F三量体を、RSV F特異的免疫応答を生成するのに有効な量で対象に投与することを含む、対象におけるRSV F特異的免疫応答方法を提供する。幾つかの実施形態においては、抗原特異的免疫応答はT細胞応答またはB細胞応答を含む。
【0036】
幾つかの実施形態においては、該方法は、本明細書に記載されているRSV F三量体または免疫原性組成物の単一用量(ブースター用量無し)を対象に投与することを含む。もう1つの実施形態においては、該方法は、本明細書に記載されているRSV F三量体または免疫原性組成物の第2(ブースター)用量を対象に投与することを更に含む。もう1つの実施形態においては、該方法は、RSV F三量体またはRSV免疫原性組成物の、少なくとも1つのブースター用量を投与することを更に含む。追加の用量を投与してもよい。
【0037】
幾つかの実施形態においては、RSV免疫原性組成物またはRSV F三量体は、皮内注射、筋肉内注射または鼻腔内投与により対象に投与される。幾つかの実施形態においては、RSVワクチンは筋肉内注射により対象に投与される。
【0038】
幾つかの実施形態においては、RSV F三量体または免疫原性組成物は、最大1または2年間、RSVに対して対象を免疫化する。幾つかの実施形態においては、RSV F三量体または免疫原性組成物は、2年より長く、3年より長く、4年より長く、または5~10年間、RSVに対して対象を免疫化する。1つの実施形態においては、免疫原性組成物はワクチンとして毎年投与される。
【0039】
幾つかの実施形態においては、対象は約5歳以下である。例えば、対象は約1~約5歳(例えば、約1、2、3、4または5歳)、または約6ヶ月~約1歳(例えば、約6、7、8、9、10、11または12か月)でありうる。幾つかの実施形態においては、対象は約12ヶ月以下(例えば、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2か月または1か月)である。幾つかの実施形態においては、対象は約6か月以下である。
【0040】
幾つかの実施形態においては、対象は満期(例えば、約37~42週間)で生まれた。幾つかの実施形態においては、対象は、例えば妊娠の約36週以下(例えば、約36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26または25週)で早産で生まれた。例えば、対象が妊娠の約32週以下で生まれた場合も可能である。幾つかの実施形態においては、対象は妊娠の約32週~約36週に早産で生まれた。そのような対象において、ワクチンは後年に、例えば約6か月~約5歳以上の年齢で投与されうる。
【0041】
幾つかの実施形態においては、対象は約20歳~約50歳(例えば、約20、25、30、35、40、45または50歳)の若年成人である。
【0042】
幾つかの実施形態においては、対象は約50~60歳、60歳、約70歳以上、80歳以上、90歳以上(例えば、約60、65、70、75、80、85または90歳)の高齢対象である。幾つかの実施形態においては、対象は免疫無防備状態である(例えば、免疫障害または自己免疫障害を有する)。
【0043】
幾つかの実施形態においては、対象は、RSV免疫原性組成物が投与される際に妊娠している。幾つかの実施形態においては、対象は、慢性肺疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息を有する。
【0044】
幾つかの実施形態においては、対象はRSVに曝露されており、またはRSVに感染しており、またはRSVによる感染のリスクを有する。
【0045】
本開示の種々の実施形態の詳細は以下の説明に記載されている。本開示の他の特徴、目的および利点は本明細書および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0046】
詳細な説明
RSV Fタンパク質は、RSV-AおよびRSV-B抗原亜群間を含む臨床分離株間でよく保存されているI型融合糖タンパク質である。Fタンパク質は、融合前状態とより安定な融合後状態との間で移行し、それにより標的細胞への侵入が促進される。RSV F糖タンパク質は、最初はF前駆体タンパク質として合成される。RSV Fは三量体へとフォールディングし、これは、F1およびF2サブユニットを含む成熟融合前タンパク質へのフューリン切断により活性化される(Bolt,ら,Virus Res.,68:25,2000)。融合前コンホメーションにおいて安定化されたRSV Fタンパク質は、融合後コンホメーションにおいて安定化されたRSV Fタンパク質で観察されるものより大きな中和免疫応答を動物モデルにおいて生成する(McLellanら,Science,342:592-598,2013)。したがって、安定化された融合前RSV Fタンパク質は、RSVワクチンに配合するための良好な候補である。「DS-Cav1」置換を含む、融合前コンホメーションにおいて安定化された可溶性RSVエクトドメインは既に作製されている。WO 2014/160463A1およびWO 2017/172890A1(これらのそれぞれの内容を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0047】
融合前安定化RSV F構築物DS-Cav1は、4℃での長期保存時にコンホメーション変化を受け、中間構造を形成することが既に示されている(Flynn JAら,PLoS ONE 2016;11(10):e0164789)。4℃以上での長期安定性は、RSV Fサブユニットワクチン抗原にとって望ましい特性である。融合前コンホメーションにおけるRSV F三量体の安定性を更に改善するための、構造に基づく追加的な修飾が本明細書に記載されている。そのような構築物は、DS-Cav1と比較して増強した4℃での安定性を有する一方で、免疫原性を保持している。
【0048】
本明細書中でそれぞれ用いる「RSV融合タンパク質」および「RSV Fタンパク質」は、ウイルスおよび細胞膜の融合を促進するRSVエンベロープ糖タンパク質を意味する。天然においては、RSV Fタンパク質は、Fと称される単一ポリペプチド前駆体へと合成され、これは、小胞体への局在化を導くシグナルペプチドを含み、小胞体においてシグナルペプチドが切断される。残りのF残基はオリゴマー化して三量体を形成し、2つの保存されたフューリン切断配列においてプロテアーゼによりタンパク質分解プロセシングされて、2つのジスルフィド結合断片、すなわち、FおよびFを生成する。天然においては、3つのF-Fペプチドが三量体へとオリゴマー化して成熟Fタンパク質を形成し、これは融合前コンホメーションをとり、これは準安定性であり、融合後コンホメーションへのコンホメーション変化を受けうる。
【0049】
「RSV F膜貫通ドメイン」は、野生型RSV Fの膜貫通ドメイン(すなわち、配列番号10のアミノ酸525~550)に対応する。
【0050】
「RSV F細胞質ドメイン」または「RSV F細胞質尾部」は、野生型RSV Fの細胞質テール部ドメイン(すなわち、配列番号10のアミノ酸551~574)に対応する。
【0051】
本明細書中で用いる「D25」または「D25抗体」は、融合前RSV Fペプチドに特異的に結合する中和抗体を意味する。この抗体は米国特許出願公開番号US 2010/0239593(その全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0052】
「一本鎖RSV変異体」は、一本鎖RSV変異体が細胞内で産生された場合にFペプチドが別々のF鎖およびF鎖へと切断されないように、フューリン切断部位を含まないように修飾されているRSV Fタンパク質である。一本鎖RSV変異体の非限定的な例は、一本鎖RSV変異体が生成されるように、柔軟性リンカーによりFペプチドの97~147位に連結されたFポリペプチドの97位を含む。
【0053】
本明細書中でそれぞれ用いる「DS-Cav1」、「DS-Cav1置換」は、置換(例えば、S155CおよびS290C置換)により導入されるシステインの間の非天然のジスルフィド結合を導入する「DS」置換である155Cおよび290Cと、190Fおよび207Lキャビティ充填アミノ酸置換(例えば、S190FおよびV207L)を含む「Cav1」置換とを含有する、RSV Fタンパク質への遺伝的修飾を意味する。DS-Cav1は、WO 2014/160463(その全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0054】
本明細書中でそれぞれ用いる「フォールドンドメイン」または「フォールドン」は、三量体構造を天然で形成するアミノ酸配列を含むT4フィブリチン三量体化ドメインを意味する。幾つかの例においては、RSV Fタンパク質の配列は、フォールドンドメインを含有するように修飾されている。他の例においては、一本鎖RSV変異体はフォールドンドメインを含有する。フォールドン三量体化ドメインの一例は、配列番号8に示されているアミノ酸配列を含む。
【0055】
本明細書中で用いる「シグナルペプチド」または「シグナル配列」は、新たに合成された分泌性または膜タンパク質を膜へと及び膜を越えて導いて真核生物および原核生物の両方におけるほとんどのタンパク質の分泌経路進入を普遍的に制御する短いアミノ酸配列である。小胞体プロセシングは成熟タンパク質を生成し、この場合、前駆体タンパク質からシグナルペプチドが切断される。本明細書中で言及する「成熟アミノ酸配列」は、シグナルペプチドを含有しない。一本鎖RSV変異体の成熟アミノ酸配列はシグナルペプチドを含有しない。また、3つの成熟一本鎖RSV変異体からなるRSV三量体は、シグナルペプチド配列を含有しない。
【0056】
ポリペプチドに言及する場合に本明細書中で用いる「置換」、「アミノ酸置換」または「置換変異体」なる語は、天然または出発配列における少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、異なるアミノ酸が同じ位置のその部位に挿入されることを意味する。置換は、分子内の1つだけのアミノ酸が置換されている単一置換であってもよく、あるいは、同じ分子内で2以上(例えば、3、4または5個)のアミノ酸が置換されている複数置換であってもよい。例えば、本明細書中で用いる、RSV Fタンパク質または一本鎖RSV F変異体における「155C」置換に対する言及は、155位にシステイン残基を有する一本鎖RSV Fタンパク質に関するものであり、該システイン残基はRSV Fタンパク質における155位の対応する天然残基に取って代わっている。参考として示すと、配列番号10は該置換の位置に関する参照配列である。例えば、「S155C」置換は、配列番号10の155位におけるSの、Cによる置換である。
【0057】
「単離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおいては、それらが産生される細胞または細胞培養物からの他の生物学的分子が少なくとも部分的に除去されている。そのような生物学的分子には、他の核酸、タンパク質、脂質、炭水化物、または細胞破片および増殖培地のような他の物質が含まれる。それにおいては更に、発現系成分、例えば宿主細胞からの生物学的分子またはその増殖培地が少なくとも部分的に除去されていてもよい。一般に、「単離された」なる語は、そのような生物学的分子の完全な非存在を意味するものではなく、また、水、バッファーまたは塩の非存在を意味するものでもなく、また、該ポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含む医薬製剤の成分に関するものでもない。
【0058】
「ポリペプチド変異体」は、そのアミノ酸配列において天然配列または参照配列と異なる分子である。アミノ酸配列変異体は、天然配列または参照配列と比較して、アミノ酸配列内のある位置において、置換、欠失、挿入または前記の任意の2つまたは3つの組合せを有しうる。通常、変異体は天然配列または参照配列に対して少なくとも50%の同一性を有する。幾つかの実施形態においては、変異体は、天然配列または参照配列に対して少なくとも80%の同一性または少なくとも90%の同一性を有する。
【0059】
「類似体」は、1以上のアミノ酸変化、例えば、親または開始ポリペプチドの特性の1以上を尚も維持する、アミノ酸残基の置換、付加または欠失において異なるポリペプチド変異体を含むと意図される。
【0060】
本開示は、変異体および誘導体を含む、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに基づく幾つかのタイプの組成物を提供する。これらには、例えば、置換、挿入、欠失および共有結合変異体および誘導体が含まれる。「誘導体」なる語は「変異体」なる語と同義であり、参照分子または出発分子と比較していずれかの様態で修飾および/または改変された分子を一般に意味する。
【0061】
したがって、参照配列、特に本明細書に開示されているポリペプチド配列に関連して置換、挿入および/または付加、欠失および共有結合修飾を含有するペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本開示の範囲内に含まれる。例えば、配列タグ、または、アミノ酸例えば1以上のリジンが、ペプチド配列に(例えば、N末端またはC末端において)付加されうる。配列タグは、ペプチドの検出、精製または局在化のために使用されうる。リジンは、ペプチドの溶解度を増加させるため、またはビオチン化を可能にするために使用されうる。あるいは、ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ末端領域およびアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基は、トランケート化(truncated)配列を得るために、所望により欠失されうる。あるいは、配列の用途に応じて、例えば、可溶性である又は固体支持体に連結されている、より大きな配列の一部としての該配列の発現においては、あるアミノ酸(例えば、C末端残基またはN末端残基)が欠失されうる。
【0062】
本明細書中で用いる「保存的アミノ酸置換」なる語は、配列内に通常存在するアミノ酸が、類似したサイズ、電荷または極性の別のアミノ酸で置換されることを意味する。保存的置換の例には、無極性(疎水性)残基、例えばイソロイシン、バリンおよびロイシンの、別の無極性残基による置換が含まれる。同様に、保存的置換の例には、極性(親水性)残基同士の置換、例えばアルギニンとリジンとの置換、グルタミンとアスパラギンとの置換、およびグリシンとセリンとの置換が含まれる。また、塩基性残基、例えばリジン、アルギニンまたはヒスチジンの、別の塩基性残基による置換、あるいは酸性残基、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸の、別の酸性残基による置換が、保存的置換の追加的な例である。非保存的置換の例には、無極性(疎水性)アミノ酸残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、メチオニンの、極性(親水性)残基、例えばシステイン、グルタミン、グルタミン酸もしくはリジンによる置換、および/または無極性残基の、極性残基による置換が含まれる。
【0063】
ポリペプチドに言及する場合に本明細書中で用いる「ドメイン」なる語は、1以上の特定可能な構造的または機能的特徴または特性(例えば、結合能、タンパク質-タンパク質相互作用のための部位として機能する)を有するポリペプチドのモチーフを意味する。
【0064】
ポリペプチドに言及する場合に本明細書中で用いる「部位」なる語は、それが、アミノ酸に基づく実施形態に関するものである場合には、「アミノ酸残基」および「アミノ酸側鎖」と同義で用いられる。ポリヌクレオチドに言及する場合に本明細書中で用いる「部位」なる語は、それが、ヌクレオチドに基づく実施形態に関するものである場合には、「ヌクレオチド」と同義で用いられる。部位は、ポリペプチドに基づく又はポリヌクレオチドに基づく分子において修飾、操作、改変、誘導体化または変異体化されうる、ペプチドもしくはポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける位置を表す。
【0065】
ポリペプチドまたはポリヌクレオチドに言及する場合に本明細書中で用いる“termini”または“terminus”なる語は、それぞれポリペプチドまたはポリヌクレオチドの末端を意味する。そのような末端はポリペプチドまたはポリヌクレオチドの最初または最後の部位のみに限定されるものではなく、末端領域内の追加的なアミノ酸またはヌクレオチドを含みうる。ポリペプチドに基づく分子は、N末端[遊離アミノ基(NH2)を含有するアミノ酸で終結するもの]およびC末端[遊離カルボキシル基(COOH)を有するアミノ酸で終結するもの]の両方を有するものとして特徴づけられうる。タンパク質は、幾つかの場合においては、ジスルフィド結合または非共有結合力(多量体、オリゴマー)により結合された複数のポリペプチド鎖から構成される。これらのタンパク質は、複数のN末端およびC末端を有する。あるいは、ポリペプチドの末端は、場合に応じて、有機コンジュゲートのような非ポリペプチドに基づく部分で開始または終結するように修飾されうる。
【0066】
当業者に認識されるとおり、タンパク質断片、機能的タンパク質ドメインおよび相同タンパク質も、関心のあるポリペプチドの範囲内であるとみなされる。例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100アミノ酸の長さ、または100アミノ酸より長い長さを有する、参照タンパク質の任意のタンパク質断片(参照ポリペプチド配列より少なくとも1つのアミノ酸残基だけ短いが、それ以外は同一であるポリペプチド配列を意味する)を、本発明において提供する。もう1つの例においては、本明細書に記載されている配列のいずれかに対して40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一である、20、30、40、50または100個の(連続的)アミノ酸の伸長を含む任意のタンパク質が、本開示に従い使用されうる。幾つかの実施形態においては、ポリペプチドは、本発明で提供される又は本明細書中で参照される配列のいずれかに示されているとおり、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の変異を含む。もう1つの例においては、本明細書に記載されている配列のいずれかに対して少なくとも80%、90%、95%または100%同一である20、30、40、50または100アミノ酸の伸長を含む任意のタンパク質であって、本明細書に記載されている配列のいずれかに対して80%、75%、70%、65%~60%未満の同一性を有する5、10、15、20、25または30アミノ酸の伸長を有するものが、本開示に従い使用されうる。
【0067】
本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子は、参照分子(例えば、参照ポリペプチドまたは参照ポリヌクレオチド)、例えば当技術分野で記載されている分子(例えば、操作もしくは設計された分子または野生型分子)に対してある程度の配列類似性または同一性を有しうる。当技術分野で公知のとおり、「同一性」なる語は、配列を比較することにより決定される2以上のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列の間の関係を意味する。当技術分野においては、同一性はまた、2以上のアミノ酸残基または核酸残基の伸長の間のマッチ(一致)の数により決定される2つの配列の間の配列関連性の度合を意味する。同一性は、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(例えば、「アルゴリズム」)により対処されるギャップアラインメント(存在する場合)を伴う2以上の配列の小さいほうの配列間の同一マッチの割合を示す。関連ペプチドの同一性は公知方法によって容易に計算されうる。「%同一性」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列に適用される場合には、配列をアライメントさせ(必要に応じて)ギャップを導入して最大同一性を得た後、第2の配列のアミノ酸配列または核酸配列における残基と同一である候補アミノ酸または核酸配列における残基(アミノ酸残基または核酸残基)の百分率として定義される。アラインメントのための方法およびコンピュータプログラムは当技術分野でよく知られている。同一性は%同一性の計算に基づくが、計算において導入されたギャップおよびペナルティゆえに値が異なりうる。一般に、個々のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、本明細書に記載されており当業者に公知の配列アライメントプログラムおよびパラメーターによる測定で、その個々の参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対して少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%かつ100%未満の配列同一性を有する。アライメントのためのそのようなツールには、BLASTスイート(Stephen F.Altschulら(1997).“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402)のものが含まれる。もう1つの一般的なローカルアライメント技術はスミス-ウォーターマン(Smith-Waterman)アルゴリズム(Smith,T.F.& Waterman,M.S.(1981)“Identification of common molecular subsequences”.J.Mol.Biol.147:195-197)に基づく。動的プログラミングに基づく一般的なグローバルアライメント技術としては、ニードルマン-ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman,S.B.& Wunsch,C.D.(1970)“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequences of two proteins”.J.Mol.Biol.48:443-453)が挙げられる。より近年、ニードルマン-ブンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズムを含む他の最適グローバルアライメント法より速くヌクレオチドおよびタンパク質配列のグローバルアライメントを生成するとされる高速最適グローバル配列アライメントアルゴリズム(Fast Optimal Global Sequence Alignment Algorithm)(FOGSAA)が開発された。他のツールは、本明細書中に、特に後記の「同一性」の定義において記載されている。
【0068】
本明細書中で用いる「相同性」なる語は、ポリマー性分子間、例えば核酸分子(例えば、DNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的関連性を意味する。マッチ残基のアラインメントにより決定される類似性または同一性の閾値レベルを共有するポリマー性分子[例えば、核酸分子(例えば、DNA分子)および/またはポリペプチド分子]は相同と称される。相同性は、分子間の関係を示す定性的用語であり、定量的な類似性または同一性に基づきうる。類似性または同一性は、2つの比較配列間の配列マッチの度合を定める定量的用語である。幾つかの実施形態においては、ポリマー性分子が互いに「相同」であるとみなされるのは、それらの配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一または類似である場合である。「相同」なる語は、必然的に、少なくとも2つの配列(ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列)間の比較に関するものである。2つのポリヌクレオチド配列が相同であるとみなされるのは、それらがコードするポリペプチドが、少なくとも20アミノ酸の少なくとも1つの伸長に関して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または更には99%である場合である。幾つかの実施形態においては、相同ポリヌクレオチド配列は、少なくとも4~5個のユニーク(一意的)に特定されるアミノ酸の伸長をコードする能力により特徴づけられる。60ヌクレオチド長未満のポリヌクレオチド配列に関しては、相同性は、少なくとも4~5個のユニークに特定されるアミノ酸の伸長をコードする能力により決定される。2つのタンパク質配列が相同とみなされるのは、それらのタンパク質が、少なくとも20アミノ酸の少なくとも1つの伸長に関して、少なくとも50%、60%、70%、80%または90%同一である場合である。
【0069】
相同性は、比較される配列が進化において共通起源から分岐したことを意味する。「ホモログ」なる語は、共通の祖先配列からの系統により第2のアミノ酸配列または核酸配列に関連する第1のアミノ酸配列または核酸配列[例えば、遺伝子(DNAまたはRNA)またはタンパク質配列]を意味する。「ホモログ」なる語は、種分化の事象により分離された遺伝子および/またはタンパク質の間の関係、あるいは遺伝子重複の事象により分離された遺伝子および/またはタンパク質の間の関係に適用されうる。「オルソログ」は、種分化により共通祖先遺伝子(またはタンパク質)から進化した、異なる種における遺伝子(またはタンパク質)である。典型的には、オルソログは進化の過程において同じ機能を保有する。「パラログ」は、ゲノム内の重複により関連する遺伝子(またはタンパク質)である。オルソログは進化の過程において同じ機能を保有するが、パラログは、たとえこれが元の機能に関連しているとしても、新たな機能を進化させる。
【0070】
「同一性」なる語は、ポリマー性分子間、例えば、ポリヌクレオチド分子(例えば、DNA分子)間および/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を意味する。2つのポリ核酸配列の%同一性の計算は、例えば、最適な比較目的で2つの配列をアライメントすることにより行われうる(例えば、最適なアライメントのために、第1核酸配列および第2核酸配列の一方または両方においてギャップが導入可能であり、非同一配列は比較目的には無視されうる)。ある実施形態においては、比較目的でアライメント(整列)される配列の長さは参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%である。ついで対応ヌクレオチド位置のヌクレオチドが比較される。第1配列内の位置が第2配列内の対応位置と同じヌクレオチドにより占有されている場合、それらの分子はその位置において同一である。2つの配列間の%同一性は、それらの配列により共有される同一位置の数の関数であり、この場合、ギャップの数および各ギャップ(これはそれらの2つの配列の最適アライメントのために導入される必要がある)の長さが考慮される。2つの配列間の配列の比較および%同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成されうる。例えば、2つの核酸配列間の%同一性は、例えば以下のものに記載されている方法を用いて決定されうる:Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,New York,1993;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編,Humana Press,New Jersey,1994;ならびにSequence Analysis Primer,Gribskov,M.およびDevereux,J.編,M Stockton Press,New York,1991(それらのそれぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)。例えば、2つの核酸配列間の%同一性は、PAM120重み残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyersおよびMiller(CABIOS,1989,4:11-17)のアルゴリズムを使用して決定されうる。あるいは、2つの核酸配列間の%同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックスを使用して、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して決定されうる。配列間の%同一性を決定するために一般に使用される方法には、Carillo,H.およびLipman,D.,SIAM J Applied Math.,48:1073(1988)(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている方法が含まれるが、これらに限定されるものではない。同一性を決定するための技術は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいてコード化されている。2つの配列間の相同性を決定するための例示的なコンピュータソフトウェアには、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら,Nucleic Acids Research,12,387(1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul,S.F.ら,J.Molec.Biol.,215,403(1990))が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
脂質ナノ粒子
本明細書中で用いる「脂質ナノ粒子」または「LNP」は、リポソームまたは小胞(これらに限定されるものではない)を含む、生成物を送達するために使用されうる任意の脂質組成物を意味し、ここで、水性体積部分は、両親媒性脂質二重層(例えば、単一;単層または複数;多層)により被包され、あるいは、他の実施形態においては、該脂質は、予防用生成物または脂質凝集体もしくはミセルを含む内部物質を被覆し、ここで、該脂質被包治療用生成物は、比較的無秩序な脂質混合物内に含有される。特に示されていない限り、脂質ナノ粒子は抗原性ポリペプチドを内部に取り込んでいる必要はなく、同じ製剤(処方)において、生成物を送達するために使用されうる。
【0072】
本明細書中で用いる「ポリアミン」は、2以上のアミノ基を有する化合物を意味する。具体例には、プトレシン、カダベリン、スペルミジンおよびスペルミンが含まれる。
【0073】
特に示されていない限り、モル%は全脂質に対するモルパーセントを意味する。一般に、本発明の組成物のLNPは、1以上のカチオン性脂質(イオン化可能なカチオン性脂質を含む)および1以上のポリ(エチレングリコール)-脂質(PEG-脂質)からなる。ある実施形態においては、LNPは、1以上の非カチオン性脂質を更に含む。1以上の非カチオン性脂質は、リン脂質、リン脂質誘導体、ステロール、脂肪酸またはそれらの組合せを含みうる。
【0074】
LNPに適したカチオン性脂質およびイオン化可能なカチオン性脂質は、本明細書に記載されている。イオン化可能なカチオン性脂質はそれらの脂質頭部基の弱塩基性により特徴づけられ、これは脂質の表面電荷にpH依存的に影響を及ぼして、それらを酸性pHにおいては正荷電状態にするが、生理的pHにおいては電荷中性に近い状態にする。カチオン性脂質は、それらの頭部基上の一価または多価カチオン電荷により特徴づけられ、これはそれらを中性pHにおいて正荷電状態にする。ある実施形態においては、カチオン性およびイオン化可能脂質は、親水性生物活性分子と複合体形成して、二相水性/有機系の有機相に分配する疎水性複合体を生成しうる。生物活性分子との疎水性複合体を形成させるために、一価カチオン性脂質および多価カチオン性脂質の両方が使用されうると想定される。
【0075】
幾つかの実施形態においては、LNPの形成に使用されるカチオン性およびイオン化可能カチオン性脂質には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N-(2,3ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,Nトリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,NジステアリルN,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N-(2,3ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DODAP」);1,2ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP);3-(N-(N,N-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」;ジヘプタデシルアミドグリシルスペルミジン(「DHGS」)およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)。加えて、本発明において使用されうるカチオン性脂質および他の成分の多数の市販調製物が入手可能である。これらには、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよび1,2ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(「DOPE」)を含む、GIBCOBRL,Grand Island,N.Y.,USAから商業的に入手可能なカチオン性脂質ナノ粒子)、およびLIPOFECTAMINE(登録商標)[GIBCOBRLから商業的に入手可能なN-(1-(2,3ジオレイルオキシ)プロピル)N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(「DOSPA」)および(「DOPE」)]が含まれる。以下の脂質はカチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、4-(2,2-ジオクタ-9,12-ジエニル-[1,3]ジオキソラン-4-イルメチル)-ジメチルアミン、DLinKDMA(WO 2009/132131 A1)、DLin-K-C2-DMA(WO2010/042877)、DLin-M-C3-DMA(WO2010/146740および/またはWO2010/105209)、DLin-MC3-DMA(ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル 4-(ジメチルアミノ)ブタノアート(Jayaramanら,2012,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.51:8529-8533)、2-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエンリロキシル]プロパン-1-アミン)(CLinDMA)など。本発明での使用に適した他のカチオン性脂質には、例えば、米国特許第5,208,036号、第5,264,618号、第5,279,833号および第5,283,185号、ならびに米国特許出願公開第2008/0085870号および2008/0057080号に記載されているカチオン性脂質が含まれる。本発明での使用に適した他のカチオン性脂質には、例えば、国際特許出願公開番号WO2011/076807の表6(112~139ページ)に開示されている脂質E0001~E0118またはE0119~E0180が含まれる(前記国際特許出願公開はこれらのカチオン性脂質の製造方法および使用方法も開示している)。
【0076】
幾つかの実施形態においては、カチオン性脂質は以下のいずれかを含む:DLinDMA;DlinKC2DMA;DLin-MC3-DMA;CLinDMA;S-オクチルCLinDMA;
(2S)-1-{7-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘプチルオキシ}-3-[(4Z)-デカ-4-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-[(4Z)-デカ-4-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
1-[(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-イル]グアニジン;
1-[(2R)-1-{7-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘプチルオキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
1-[(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
(2S)-1-({6-[(3β))-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ヘキシル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
(3β)-3-[6-{[(2S)-3-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-2-(ピロリジン-1-イル)プロピル]オキシ}ヘキシル)オキシ]コレスタ-5-エン;
(2R)-1-{4-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]ブトキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;
(2R)-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン;
(2R)-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-3-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
(2R)-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(2Z)-ペンタ-2-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン;
(2S)-1-ブトキシ-3-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
(2S-1-({8-[(3β)-コレスタ-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-3-[2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロノニル)オキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン;
2-アミノ-2-{[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]メチル}プロパン-1,3-ジオール;
2-アミノ-3-((9-(((3S,10R,13R)-10,13-ジメチル-17-(6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)ノニル)オキシ)-2-((((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)オキシ)メチル)プロパン-1-オール;
2-アミノ-3-((6-(((3S,10R,13R)-10,13-ジメチル-17-(6-メチルヘプタン-2-イル)-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル)オキシ)ヘキシル)オキシ)-2-((((Z)-オクタデカ-9-エン-1-イル)オキシ)メチル)プロパン-1-オール;
(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン;
(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-9-アミン;
(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン;
(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン;
(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン;
(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン;
(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン;
(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン;
(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン;
(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン;
(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン;
(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン;
(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン;
(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン;
(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン;
(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン;
(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18-エン-10-アミン;
(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17-エン-9-アミン;
(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン;
N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン;
(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン;
1-[(11Z,14Z)-1-ノニルイコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン;
(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-20-エン-10-アミン;
(15Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-15-エン-10-アミン;
(14Z)-N,N-ジメチルノナコサ-14-エン-10-アミン;
(17Z)-N,N-ジメチルノナコサ-17-エン-10-アミン;
(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコンタ-24-エン-10-アミン;
(20Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20-エン-10-アミン;
(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22-エン-10-アミン;
(16Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16-エン-8-アミン;
(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘニコサ-12,15-ジエン-1-アミン;
(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプタデカン-8-アミン;
1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン;
N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘニコサン-10-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン;
N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン;
1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン;
1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン;
N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン;および
(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,23-トリエン-10-アミン;
またはその薬学的に許容される塩または前記のいずれかの立体異性体。
【0077】
本発明のこの実施形態のある態様においては、LNPは以下のイオン化可能カチオン性脂質の1以上を含む:DLinDMA、DlinKC2DMA DLin-MC3-DMA、CLinDMAまたはS-オクチル CLinDMA(国際特許出願公開番号WO2010/021865を参照されたい)。本発明のこの実施形態の他の態様においては、LNPは以下のイオン化可能およびカチオン性脂質の1以上を含み:(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミンまたはN,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、それらのそれぞれは、WO 2012/040184として公開されているPCT/US2011/0523238に記載されている(その全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)。
【0078】
本発明のこの実施形態のある態様においては、イオン化可能およびカチオン性脂質は、WO 2017/049245(その全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている脂質を含みうる。
【0079】
本発明のこの実施形態のある態様においては、LNPは、国際特許出願公開番号WO2011/022460 A1に記載されている1以上のイオン化可能カチオン性脂質、またはその任意の薬学的に許容される塩、または該化合物またはその塩のいずれかの立体異性体を含む。
【0080】
同じ構成の構造が特定の原子または基の空間的配置に関して異なる場合、それらは立体異性体であり、それらの相互関係を分析する上で重要な考慮事項は形態上のものである。2つの立体異性体間の関係が目的物とその重ね合わせ不能鏡像との関係である場合、2つの構造はエナンチオマー(鏡像異性)的であり、各構造はキラルであると言われる。立体異性体には、ジアステレオマー、シス-トランス異性体およびコンホメーション(配座)異性体も含まれる。ジアステレオ異性体はキラルまたはアキラルであることが可能であり、互いの鏡像ではない。シス-トランス異性体は特定の平面に対する原子の位置においてのみ異なり、この場合、これらの原子は剛構造の一部であり、あるいは剛構造の一部であるかのようにみなされる。コンホメーション異性体は形式上の単結合の周りの回転により相互変換されうる異性体である。そのようなコンホメーション異性体の例には、椅子配座よび舟配座を有するシクロヘキサンコンホメーション;炭水化物;ねじれ配座、重なり配座およびゴーシュ配座を有する線状アルカンコンホメーションなどが含まれる。J.Org.Chem.35,2849(1970)を参照されたい。
【0081】
多数の有機化合物は、平面偏光の平面を回転させる能力を有する光学活性形態で存在する。光学活性化合物を記述する際には、そのキラル中心に関する分子の絶対配置を示すために、接頭辞DおよびL、またはRおよびSが用いられる。接頭辞dおよびl、または(+)および(-)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために用いられる。(-)は、化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞が付された化合物は右旋性である。与えられた化学構造に関して、エナンチオマーは、それらが互いの重ね合わせ不能鏡像であることを除き、同一である。エナンチオマーの混合物は、しばしば、エナンチオマー混合物と称される。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物と称される。本明細書に記載されているカチオン性脂質の多くは1以上のキラル中心を有する可能性があり、したがって、種々のエナンチオマー形態で存在しうる。所望により、キラル炭素がアスタリスク(*)で示されうる。本発明の式においてキラル炭素への結合が直線として描かれている場合、キラル炭素の(R)配置および(S)配置の両方、したがって両方のエナンチオマーおよびそれらの混合物が式に含まれると理解される。当技術分野で用いられているとおり、キラル炭素に関する絶対配置を指定することが望まれる場合には、キラル炭素への結合の一方はくさび(平面の上の原子への結合)として表示可能であり、もう一方は一連の又はくさび形の短い平行線(平面の下の原子への結合)として表示可能である。キラル炭素に(R)または(S)配置を割り当てるために、Cahn-Inglod-Prelog系が用いられうる。
【0082】
本発明のカチオン性脂質が1つのキラル中心を含有する場合、該化合物は2つのエナンチオマー形態で存在し、本発明は、両方のエナンチオマーおよびエナンチオマー混合物、例えばラセミ混合物と称される特定の50:50混合物を含む。エナンチオマーは、当業者に公知の方法、例えば、結晶化により分離されうるジアステレオ異性体塩の形成(David KozmaによるCRC Handbook of Optical Resolutions via Diastereomeric Salt Formation(CRC Press,2001)を参照されたい);例えば結晶化、気-液または液体クロマトグラフィーにより分離されうるジアステレオ異性誘導体または複合体の形成;1つのエナンチオマーとエナンチオマー特異的試薬との選択的反応、例えば酵素的エステル化;あるいはキラル環境における、例えばキラル担体、例えば結合キラルリガンドを含有するシリカ上、またはキラル溶媒の存在下での気-液または液体クロマトグラフィーにより分割されうる。前記の分離方法の1つによって所望のエナンチオマーが別の化学物質に変換される場合、所望のエナンチオマーを遊離させるために更なる工程が必要であると理解されるであろう。あるいは、光学活性試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成により、または一方のエナンチオマーを不斉変換により他方に変換することにより、特定のエナンチオマーが合成されうる。
【0083】
本明細書に記載されているカチオン性脂質のキラル炭素における特定の絶対配置の表示は、該化合物の表示エナンチオマー形態がエナンチオマー過剰(ee)である、または換言すれば他のエナンチオマーを実質的に含有しないことを意味すると理解される。例えば、該化合物の「R」形態は該化合物の「S」形態を実質的に含有せず、したがって、「S」形態のエナンチオマー過剰である。逆に、該化合物の「S」形態は、該化合物の「R」形態を実質的に含有せず、したがって、「R」形態のエナンチオマー過剰である。本明細書中で用いるエナンチオマー過剰は、50%を超える特定のエナンチオマーの存在である。特定の絶対配置が示されている特定の実施形態においては、示されている化合物のエナンチオマー過剰率は少なくとも約90%である。
【0084】
本明細書に記載されているカチオン性脂質が2以上のキラル炭素を有する場合、それは、2個を超える光学異性体を有することが可能であり、ジアステレオ異性形態で存在しうる。例えば、2個のキラル炭素が存在する場合、該化合物は最大4個の光学異性体と2つのペアのエナンチオマー((S,S)/(R,R)および(R,S)/(S,R))とを有しうる。エナンチオマーのペア(例えば、(S,S)/(R,R))は互いの鏡像立体異性体である。鏡像ではない立体異性体(例えば、(S,S)および(R,S))はジアステレオマーである。ジアステレオ異性体のペアは、当業者に公知の方法、例えばクロマトグラフィーまたは結晶化により分離可能であり、各ペアにおける個々のエナンチオマーは前記のとおりに分離可能である。本明細書に記載されているLNPは、そのようなカチオン性脂質の各ジアステレオ異性体およびそれらの混合物を含む。
【0085】
LNPはまた、本明細書に記載されているカチオン性脂質の2以上の任意の組合せを含みうる。ある態様においては、カチオン性脂質は、典型的には、該粒子内に存在する全脂質の約0.1~約99.9モル%を含みうる。ある態様においては、カチオン性脂質は約80~約99.9%モル%を含みうる。他の態様においては、カチオン性脂質は、該粒子内に存在する全脂質の約2%~約70%、約5%~約50%、約10%~約45%、約20%~約99.8%、約30%~約70%、約34%~約59%、約20%~約40%、または約30%~約40%(モル%)を含む。
【0086】
本明細書に記載されているLNPは非カチオン性脂質を更に含むことが可能であり、これは、安定な複合体を生成しうる任意の種々の中性無荷電の、両性イオン性またはアニオン性脂質でありうる。それらは好ましくは中性であるが、それらは負荷電でありうる。本発明において有用な非カチオン性脂質の例には、リン脂質関連物質、例えば天然リン脂質、合成リン脂質誘導体、脂肪酸、ステロール、およびそれらの組合せが含まれる。天然リン脂質には、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(ホスファチダート)(PA)、ジパルミトイルホスファチジルコリン、モノアシル-ホスファチジルコリン(リゾPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、N-アシル-PE、ホスホイノシチド、およびホスホスフィンゴ脂質が含まれる。リン脂質誘導体には、ホスファチジン酸(DMPA、DPPA、DSPA)、ホスファチジルコリン(DDPC、DLPC、DMPC、DPPC、DSPC、DOPC、POPC、DEPC)、ホスファチジルグリセロール(DMPG、DPPG、DSPG、POPG)、ホスファチジルエタノールアミン(DMPE、DPPE、DPPE DOPE)、およびホスファチジルセリン(DOPS)が含まれる。脂肪酸には、C14:0、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、およびアラキドン酸(C20:4)、C20:0、C22:0、およびレチシンが含まれる。
【0087】
本明細書に記載されているLNPのある実施形態においては、非カチオン性脂質はレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、セファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスファート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)およびジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシラート(DOPE-mal)から選択される。非カチオン性脂質には、ステロール、例えばコレステロール、スチグマステロールまたはスチグマスタノールも含まれる。コレステロールは当技術分野で公知である。米国特許出願公開番号US 2006/0240554およびUS 2008/0020058を参照されたい。ある実施形態においては、LNPはリン脂質とステロールとの組合せを含む。
【0088】
非カチオン性脂質は、存在する場合には、LNP内に存在する全脂質に対するモルパーセントとして表された場合、典型的には、約0.1%~約65%、約2%~約65%、約10%~約65%、または約25%~約65%を含む。本明細書に記載されているLNPは、二重層安定化成分として役立ちうるポリエチレングリコール(PEG)脂質コンジュゲート(「PEG-脂質」)を更に含む。PEG脂質の脂質成分は、天然リン脂質、合成リン脂質誘導体、脂肪酸、ステロールおよびそれらの組合せを含む、前記の任意の非カチオン性脂質でありうる。本明細書に記載されているLNPのある実施形態においては、PEG-脂質には、例えば、国際特許出願公開番号WO 05/026372に記載されているジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(PEG-DAA)、米国特許公開第20030077829号および第2005008689号に記載されているジアシルグリセロールに結合したPEG(PEG-DAG)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)に結合したPEG(PEG-PE)、または1,2-ジ-O-ヘキサデシル-sn-グリセリドに結合したPEG(PEG-DSG)、またはそれらの任意の混合物(例えば、米国特許第5,885,613号を参照されたい)が含まれる。
【0089】
1つの実施形態においては、PEG-DAGコンジュゲートは、ジラウリルグリセロール(C12)-PEGコンジュゲート、PEGジミリスチルグリセロール(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミトイルグリセロール(C16)コンジュゲート、PEG-ジラウリルグリカミド(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルグリカミド(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミトイルグリカミド(C16)コンジュゲート、またはPEG-ジステリルグリカミド(C18)である。他のジアシルグリセロールもPEG-DAGコンジュゲートにおいて使用されうると当業者は容易に理解するであろう。
【0090】
ある実施形態においては、PEG-脂質には、PEG-ジミリストルグリセロール(PEG-DMG)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)、およびPEG-1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
ある実施形態においては、PEG-脂質は、ジミリストイルグリセロールに結合したPEG(PEG-DMG)、例えば、Abramsら,2010,Molecular Therapy 18(1):171ならびに米国特許出願公開番号US 2006/0240554およびUS 2008/0020058に記載されているもの、例えば、2KPEG/PEG200-DMGを含む。
【0092】
ある実施形態においては、PEG-DAG、PEG-コレステロール、PEG-DMBのようなPEG-脂質は、約500ダルトン~約10,000ダルトン、約750ダルトン~約5,000ダルトン、約1,000ダルトン~約5,000ダルトン、約1,500ダルトン~約3,000ダルトンの範囲、または約2,000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールを含む。ある実施形態においては、PEG-脂質は、PEG400、PEG1500、PEG2000またはPEG5000を含む。
【0093】
前記の脂質のいずれかにおけるアシル基は、好ましくは、約C10~約C24の炭素鎖を有する脂肪酸に由来するアシル基である。1つの実施形態においては、アシル基は、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイルまたはオレオイルである。
【0094】
PEG-脂質コンジュゲートは、典型的には、前記粒子内に存在する全脂質に対するモル%として表される、約0.1%~約15%、約0.5%~約20%、約1.5%~約18%、約4%~約15%、約5%~約12%、約1%~約4%、または約2%を含む。
【0095】
本発明のある実施形態においては、LNPは、1以上のカチオン性脂質、コレステロール、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール メトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)を含む。
【0096】
本発明のある実施形態においては、LNPは、1以上のカチオン性脂質、コレステロール、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、および1,2-ジミリストイル-sn-グリセロール メトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)を含む。
【0097】
本発明のある実施形態においては、LNPは、以下のモル比の範囲内で構築された脂質化合物を含む:
カチオン性脂質(20~99.8モル%);
非カチオン性脂質(0.1~65モル%);および
PEG-DMG(0.1~20モル%)。
【0098】
本発明のある実施形態においては、LNPは、以下のモル比の範囲内で構築された脂質化合物を含む:
カチオン性脂質(30~70モル%);
非カチオン性脂質(20~65モル%);および
PEG-DMG(1~15モル%)。
【0099】
この実施形態のある態様においては、非カチオン性脂質はコレステロールである。例示的なLNPは、およそ以下のモル比、すなわち、58/30/10でカチオン性脂質/コレステロール/PEG-DMGを含みうる。
【0100】
この実施形態のある態様においては、非カチオン性脂質は、コレステロールおよびDSPCである。例示的なLNPは、およそ以下のモル比、すなわち、59/30/10/1;58/30/10/2;43/41/15/1;42/41/15/2;40/48/10/2;39/41/19/1;38/41/19/2;34/41/24/1;および33/41/24/2で、カチオン性脂質/コレステロール/DSPC/PEG-DMGを含みうる。
【0101】
LNPの製造
LNPは、限定容量混合装置、例えば、限定された容量Tミキサー、マルチ・インレット・ボルテックス・ミキサー(MIVM)またはマイクロフルイディクス混合装置(後記のとおり)を使用して、エタノールに溶解した脂質成分を水溶液と微量混合することを要する急速沈殿法により形成されうる。該脂質溶液は、エタノール中に、1以上のカチオン性脂質、1以上の非カチオン性脂質(例えば、DSPC)、PEG-DMG、および所望によりコレステロールを、特定のモル比で含む。該水溶液はクエン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウム緩衝塩溶液からなり、2~6、好ましくは3.5~5.5の範囲のpHを有する。それらの2つの溶液を、25℃~45℃、好ましくは30℃~40℃、の範囲の温度に加熱し、ついで限定容量ミキサー中で混合し、それによりLNPを瞬間生成させる。限定された容量Tミキサーを使用する場合、Tミキサーは0.25~1.0mmの内径(ID)範囲を有する。該アルコール溶液および水溶液を、10~600mL/分の全流量で、プログラム可能なシリンジポンプを使用してTミキサーの注入口に供給する。該アルコール溶液および水溶液を、1:1~1:3 vol:volの範囲の比で、1:1.1~1:2.3を目標として、限定された容量ミキサー内で混合する。この混合段階で用いるエタノール体積分率、試薬溶液流量およびtーミキサーチューブIDの組合せは、LNPの粒径を30~300nmに制御する効果を有する。得られたLNP懸濁液を、連続的多段インライン混合プロセスで、6~8の範囲の、より高いpHのバッファー中に2回希釈する。最初の希釈では、該LNP懸濁液を、1:1~1:3 vol:volの範囲の混合比で、1:2 vol:volの混合比を目標として、より高いpH(pH6~7.5)の緩衝溶液と混合する。この緩衝溶液は15~40℃の範囲の温度であり、目標温度は30~40℃である。得られたLNP懸濁液を更に、1:1~1:3 vol:volの範囲の混合比で、1:2 vol:volの混合比を目標として、より高いpH(例えば、6~8)の緩衝溶液と混合する。この後者の緩衝溶液は15~40℃の範囲の温度であり、目標温度は16~25である。該混合LNPを、アニオン交換濾過工程前に、30分~2時間維持する。インキュベーション時間中の温度は15~40℃の範囲であり、目標温度は30~40℃である。インキュベーション後、該LNP懸濁液を、アニオン交換分離工程を含む0.8μmフィルターで濾過する。このプロセスは、1mm ID~5mm IDの範囲のチューブIDおよび10~2000mL/分の流量を用いる。LNPを限外濾過法により濃縮しダイアフィルトレーションし、ここで、アルコールを除去し、バッファーを、最終バッファー溶液、例えばリン酸緩衝食塩水、または凍結保存に適したバッファー系(例えば、スクロース、トレハロースまたはそれらの組合せを含有するもの)と交換する。該限外濾過法は接線流濾過形態(TFF)を用いる。このプロセスは、30~500KDの範囲(目標値100KD)の膜公称分子量カットオフを用いる。該膜形態は、中空糸またはフラットシートカセットでありうる。適切な分子量カットオフを用いるTFF法は、LNPを保持液中に保持し、濾液または透過液は、アルコールおよび最終バッファー廃棄物を含有する。TFF法は、20~30mg/mLの脂質濃度までの初期濃度を用いる複数工程法である。濃縮後、LNP懸濁液を最終バッファー(例えば、pH7~8のリン酸緩衝食塩水(PBS)、10mM Tris、pH7~8の140mM NaClまたは10mM Tris、70mM NaCl、pH7~8の5重量% スクロース)に対して5~20容量にわたって透析濾過(ダイアフィルトレーション)してアルコールを除去し、バッファー交換を行う。ついで該物質を限外濾過により更に1~3倍に濃縮する。LNP製造方法の最終工程は、無菌条件下で適切な容器内に濃縮LNP溶液を滅菌濾過することである。滅菌濾過は、LNP溶液をプレフィルター(Acropak 500 PES 0.45/0.8μmカプセル)およびバイオバーデン低減フィルター(Acropak 500 PES 0.2/0.8μmカプセル)に通過させることにより達成される。濾過後、バイアル入りのLNP生成物を、適切な保存条件下(2℃~8℃、または凍結製剤の場合は-20℃)で保存する。
【0102】
幾つかの実施形態においては、本発明で提供する組成物のLNPは、1000nm未満の平均幾何学的直径を有する。幾つかの実施形態においては、LNPは50nm超かつ500nm未満の平均幾何学的直径を有する。幾つかの実施形態においては、LNPの集団の平均幾何学的直径は、約60nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、375nm、400nm、425nm、450nmまたは475nmである。幾つかの実施形態においては、平均幾何学的直径は、100~400nm、100~300nm、100~250nm、または100~200nmである。幾つかの実施形態においては、平均幾何学的直径は、60~400nm、60~350nm、60~300nm、60~250nm、または60~200nmである。幾つかの実施形態においては、平均幾何学的直径は75~250nmである。幾つかの実施形態においては、LNPの集団のLNPの30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が500nm未満の直径を有する。幾つかの実施形態においては、LNPの集団のLNPの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が、50nm超かつ500nm未満の直径を有する。幾つかの実施形態においては、LNPの集団のLNPの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が、約60nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、225nm、250nm、275nm、300nm、325nm、350nm、375nm、400nm、425nm、450nmまたは475nmの直径を有する。幾つかの実施形態においては、LNPの集団のLNPの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が、100~400nm、100~300nm、100~250nmまたは100~200nmの直径を有する。幾つかの実施形態においては、LNPの集団のLNPの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上が、60~400nm、60~350nm、60~300nm、60~250nmまたは60~200nmの直径を有する。
【0103】
特定の実施形態においては、LNPのサイズは、約1~1000nmの範囲、好ましくは約10~500nmの範囲、より好ましくは約100~300nmの範囲、好ましくは100nmである。
【0104】
核酸/ポリヌクレオチド
本開示のDNAは、幾つかの実施形態においては、コドン最適化されている。コドン最適化方法は当技術分野で公知であり、本明細書に記載されているとおりに用いられうる。幾つかの実施形態においては、コドン最適化は、標的生物および宿主生物におけるコドン使用頻度を合致させて適切なフォールディングを確保するために;mRNAの安定性が増強し、または二次構造が減少するようにGC含有量を偏らせるために;遺伝子の構築または発現を損ないうる縦列反復コドンまたは塩基伸長を最小限に抑えるために;転写および翻訳制御領域を個別修飾(カストマイズ)するために;タンパク質輸送配列を挿入または除去するために;コード化タンパク質における翻訳後修飾部位(例えば、グリコシル化部位)を除去/付加するために;タンパク質ドメインを付加、除去またはシャッフルするために;制限部位を挿入し、または欠失させるために;リボソーム結合部位およびmRNA分解部位を修飾するために;タンパク質の種々のドメインが適切にフォールディングすることが可能になるように翻訳率を調節するために;あるいはポリヌクレオチド内の問題のある二次構造を減少させまたは排除するために、用いられうる。コドン最適化ツール、アルゴリズムおよびサービスは当技術分野で公知であり、非限定的な例には、DNA2.0(Menlo Park CA)、GeneArt(Life Technologies)からのサービスおよび/または独自の方法が含まれる。幾つかの実施形態においては、オープンリーディングフレーム(ORF)配列は、最適化アルゴリズムを使用して最適化される。
【0105】
幾つかの実施形態においては、コドン最適化配列は、天然に存在するまたは野生型の配列に対して95%未満の配列同一性、90%未満の配列同一性、85%未満の配列同一性、80%未満の配列同一性または75%未満の配列同一性を有する。
【0106】
幾つかの実施形態においては、コドン最適化配列は、天然に存在するまたは野生型の配列に対して65%~85%(例えば、約67%~約85%、または約67%~約80%)の配列同一性を有する。幾つかの実施形態においては、コドン最適化配列は、天然に存在するまたは野生型の配列に対して65%~75%または約80%の配列同一性を有する。
【0107】
治療方法
本発明は、ヒトおよび他の哺乳動物におけるRSVの予防および/または治療のための組成物(例えば、医薬組成物)、方法、キットおよび試薬を提供する。RSVウイルスワクチンは、治療用または予防用物質として使用されうる。それらは、感染症を予防および/または治療するために医薬において使用されうる。例示的な態様においては、本開示のRSV免疫原性組成物は、RSVウイルスからの予防的防御をもたらすためのワクチンとして使用される。RSVウイルスからの予防的防御は、本開示のRSVワクチンの投与の後で達成されうる。ワクチンは1回、2回、3回、4回またはそれ以上投与されうる。治療応答を得るために感染個体にワクチンを投与することが可能であるが、これはそれほど望ましくはない。投与は相応に調整される必要がありうる。
【0108】
幾つかの実施形態においては、本開示のRSV免疫原性組成物は、対象におけるRSV感染を予防する方法として使用可能であり、該方法は、本発明で提供される少なくとも1つのRSV免疫原性組成物を該対象に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、本開示のRSV免疫原性組成物は、対象におけるRSV感染を治療する方法として使用可能であり、該方法は、本発明で提供される少なくとも1つのRSV免疫原性組成物を該対象に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、本開示のRSV免疫原性組成物は、対象におけるRSVの発生頻度を低下させる方法として使用可能であり、該方法は、本発明で提供される少なくとも1つのRSV免疫原性組成物を該対象に投与することを含む。幾つかの実施形態においては、本開示のRSV免疫原性組成物は、RSVに感染している第1対象から、RSVに感染していない第2対象へのRSVの拡散を抑制する方法として使用可能であり、該方法は、該第1対象および該第2対象の少なくとも1つに、本明細書で提供される少なくとも1つのRSV免疫原性組成物を投与することを含む。
【0109】
本発明の幾つかの態様においては、RSVに対する対象における免疫応答を誘発する方法を提供する。該方法は、本明細書に記載されているRSV免疫原性組成物を対象に投与し、それにより、RSVに特異的な免疫応答を対象において誘導することを含む。
【0110】
予防的有効量は、臨床的に許容されるレベルの、該ウイルスによる感染を予防する治療的有効量である。幾つかの実施形態においては、治療的有効量は、ワクチンの添付文書に記載されている用量である。
【0111】
治療用組成物および予防用組成物
本発明では、例えばヒトおよび他の哺乳動物におけるRSVの予防、治療または診断のための組成物(例えば、医薬組成物)、方法、キットおよび試薬が提供する。ワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、治療用または予防用物質として使用されうる。それらは、感染症を予防および/または治療するために医薬において使用されうる。幾つかの実施形態においては、本開示によるRSV免疫原性組成物は、RSVの治療に使用されうる。
【0112】
RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、潜伏期の感染初期もしくは症状の発症後の活発な感染中にまたは健常個体に能動免疫化法の一部として、予防用または治療用に投与されうる。幾つかの実施形態においては、細胞、組織または対象に投与される本開示のワクチンの量は、免疫予防に有効な量でありうる。
【0113】
RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、他の予防用または治療用化合物と共に投与されうる。非限定的な例として、予防用または治療用化合物は、アジュバントまたはブースターでありうる。ワクチンのような予防用組成物に言及する場合に本明細書中で用いる「ブースター」なる語は、予防用(ワクチン)組成物の追加的投与を意味する。ブースター(またはブースターワクチン)は、予防用組成物の、より早い投与の後で投与されうる。予防用組成物の初回投与とブースターとの間の投与の時間は、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、15分、20分、35分、40分、45分、50分、55分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、1日、36時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、18か月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年、11年、12年、13年、14年、15年、16年、17年、18年、19年、20年、25年、30年、35年、40年、45年、50年、55年、60年、65年、70年、75年、80年、85年、90年、95年または99年以上でありうるが、これらに限定されるものではない。幾つかの実施形態においては、予防用組成物の初回投与とブースターとの間の投与の時間は、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月、3か月、6か月または1年であるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
幾つかの実施形態においては、RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、当技術分野で公知の不活化ワクチンの投与と同様に、筋肉内、皮内または鼻腔内に投与されうる。幾つかの実施形態においては、RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は筋肉内に投与される。
【0115】
RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、感染の流行または満たされていない医学上の需要の程度もしくはレベルに応じて、種々の状況において使用されうる。ワクチンは、商業的に入手可能な抗ウイルス剤/組成物より遥かに大きな抗体価を生成し、早く応答を生成する点で、優れた特性を有する。
【0116】
本発明は、所望により1以上の薬学的に許容される賦形剤と組合されていてもよい、RSV免疫原性組成物を包含する医薬組成物を提供する。
【0117】
RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、単独でまたは1以上の他の成分と組合されて、製剤化または投与されうる。例えば、そのような組成物は、アジュバント(これに限定されるものではない)を包含する他の成分を含みうる。
【0118】
幾つかの実施形態においては、RSV免疫原性組成物はアジュバントを含まない(それらはアジュバント非含有物である)。
【0119】
アルミニウムは、主にTH2応答を刺激することにより、共投与抗原に対する免疫応答を刺激することが古くから示されている。本発明で提供される組成物のアルミニウムアジュバントは、アルミニウム沈殿物の形態ではないことが好ましい。アルミニウム沈殿ワクチンは標的抗原に対する免疫応答を増強しうるが、非常に不均一な製剤であることが示されており、一貫性のない結果を示している(Lindblad E.B.Immunology and Cell Biology 82:497-505(2004)を参照されたい)。これとは対照的に、アルミニウム吸着ワクチンは、標準化された方法で実施可能であり、これは、ヒトへの投与のためのワクチン製剤の必須の特徴である。更に、アルミニウムアジュバント上への所望の抗原の物理的吸着は、おそらく部分的には注射部位からのより遅い除去を可能にすることにより、または抗原提示細胞による抗原のより効率的な取り込みを可能にすることにより、アジュバント機能において重要な役割を果たすと考えられている。
【0120】
本発明のアルミニウムアジュバントは、水酸化アルミニウム(Al(OH))、リン酸アルミニウム(AlPO)、ヒドロキシリン酸アルミニウム、無定形ヒドロキシリン酸アルミニウム硫酸塩(AAHS)、または、いわゆる「ミョウバン」(KA1(S04)-12H20)の形態でありうる[Kleinら,Analysis of aluminium hydroxyphosphate vaccine adjuvants by (27)A1 MAS NMR.,J.Pharm.Sci.89(3):311-21(2000)を参照されたい]。本出願で提供される本発明の例示的な実施形態においては、アルミニウムアジュバントは、ヒドロキシリン酸アルミニウムまたはAAHSである。アルミニウムアジュバント中のアルミニウムに対するホスファートの比率は0~1.3の範囲でありうる。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、アルミニウムに対するホスファートの比率は、0.1~0.70の範囲内である。特に好ましい実施形態においては、アルミニウムに対するホスファートの比率は、0.2~0.50の範囲内である。MAPAはヒドロキシリン酸アルミニウムの水性懸濁液である。MAPAは、塩化アルミニウムとリン酸ナトリウムとを1:1の体積比で混合してヒドロキシリン酸アルミニウムを沈殿させることにより製造される。混合処理後、物質を、高剪断ミキサーでサイズを減少させて、2~8μmの範囲の目標凝集体粒子サイズを得る。ついで生成物を生理食塩水に対してダイアフィルトレーションし、蒸気滅菌する。例えば、国際特許出願公開番号WO2013/078102を参照されたい。
【0121】
本発明の幾つかの実施形態においては、アルミニウムアジュバントはAAHS[本明細書においてはMerck(メルク)アルミニウムアジュバント(MAA)と互換的に呼称される]の形態である。MAAは中性pHでゼロの電荷を有し、一方、AIOHは正味の正電荷を有し、AIPOは、典型的には、中性pHで正味の負電荷を有する。
【0122】
当業者は、標的化抗原性ポリペプチドに対する免疫応答を増強するのに安全かつ有効なアルミニウムアジュバントの最適用量を決定しうるであろう。アルミニウムの安全性プロファイル、およびFDA認可ワクチンに含まれるアルミニウムの量の考察は、Baylorら,Vaccine 20:S18-S23(2002)を参照されたい。一般に、アルミニウムアジュバントの有効かつ安全な用量は、150~600μg/用量(300~1200μg/mlの濃度)で変動する。本発明の製剤および組成物の特定の実施形態においては、ワクチンの用量当たり200~300μgのアルミニウムアジュバントが存在する。本発明の製剤および組成物の代替的実施形態においては、ワクチンの用量当たり300~500μgのアルミニウムアジュバントが存在する。
【0123】
RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、1以上の薬学的に許容される賦形剤と組合せて製剤化(処方)または投与されうる。幾つかの実施形態においては、該組成物は、少なくとも1つの追加的な活性物質、例えば治療用活性物質、予防用活性物質または両方の組合せを含む。該組成物は無菌、発熱物質非含有、または無菌かつ発熱物質非含有でありうる。ワクチン組成物のような医薬物質の製剤および/または製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)において見いだされうる。幾つかの実施形態においては、RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、ヒト、ヒト患者または対象に投与される。
【0124】
本明細書に記載されているRSV免疫原性組成物の製剤は、薬理学の分野で公知のまたは今後開発される任意の方法により製造されうる。一般に、そのような製造方法は、有効成分(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を賦形剤および/または1以上の他の補助成分と一緒にし、ついで、必要および/または所望に応じて、生成物を、所望の単一または複数用量単位に分割、成形および/または包装する工程を含む。
【0125】
本開示による医薬組成物における有効成分、薬学的に許容される賦形剤および/または任意の追加的成分の相対量は、治療される対象の本質、サイズおよび/または症状に応じて、そして更には該組成物が投与される経路に応じて変動するであろう。例えば、該組成物は、0.1%~100%、例えば0.5~50%、1~30%、5~80%、少なくとも80%(w/w)の有効成分を含みうる。
【0126】
ワクチン投与方法
RSVワクチンを包含するRSV免疫原性組成物は、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路により投与されうる。これらには、皮内、筋肉内、鼻腔内および/または皮下投与が含まれるが、これらに限定されるものではない。本開示は、組成物を、それを要する対象に投与することを含む方法を提供する。必要とされる厳密な量は、対象の種、年齢および全身状態、疾患の重症度、個々の組成物、その投与様式、その活性様態などに応じて、対象によって異なる。RSV免疫原性組成物は、典型的には、投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与単位形態として製剤化される。しかし、ワクチン組成物の1日の合計使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で主治医により決定されうると理解されるであろう。具体的な患者に対する具体的な治療的有効量、予防的有効量または適切なイメージング投与レベルは、治療される障害および障害の重症度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別および食事;使用される具体的な化合物の投与時間、投与経路および排泄速度;治療期間;使用される具体的な化合物と組合せて又は同時に使用される薬物;ならびに医学分野でよく知られている同様の要素を含む種々の要因に依存するであろう。
【0127】
幾つかの実施形態においては、RSV免疫原性組成物は、所望の治療効果、診断効果、予防効果またはイメージング効果を得るために、1日当たり、1週間当たり、1か月当たりなどに1回以上、対象の体重当たり0.0001mg/kg~100mg/kg、0.001mg/kg~0.05mg/kg、0.005mg/kg~0.05mg/kg、0.001mg/kg~0.005mg/kg、0.05mg/kg~0.5mg/kg、0.01mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~40mg/kg、0.5mg/kg~30mg/kg、0.01mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、または1mg/kg~25mg/kgを送達するのに十分な投与量レベルで投与されうる。例示的な実施形態においては、RSV免疫原性組成物ワクチン組成物は、0.0005mg/kg~0.01mg/kg、例えば、約0.0005mg/kg~約0.0075mg/kg、例えば、約0.0005mg/kg、約0.001mg/kg、約0.002mg/kg、約0.003mg/kg、約0.004mg/kgまたは約0.005mg/kgを送達するのに十分な投与量レベルで投与されうる。
【0128】
幾つかの実施形態においては、RSV免疫原性組成物は、0.025mg/kg~0.250mg/kg、0.025mg/kg~0.500mg/kg、0.025mg/kg~0.750mg/kg、または0.025mg/kg~1.0mg/kgを送達するのに十分な投与量レベルで1回または2回(またはそれ以上)投与されうる。
【0129】
本明細書に記載されているRSV免疫原性医薬組成物は、本明細書に記載されている剤形、例えば、鼻腔内、気管内または注射可能(例えば、静脈内、眼内、硝子体内、筋肉内、皮内、心臓内、腹腔内、鼻腔内および皮下)剤形に製剤化されうる。
【0130】
本発明は、その適用において、以下の説明に記載されている又は図面に例示されている構成の詳細および成分の配置に限定されるものではない。本発明は他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施または実行されうる。また、本明細書において用いられている表現および用語は説明を目的としたものであり、限定的であるとみなされるべきではない。本明細書における「包含する」、「含む」または「有する」、「含有する」、「伴う」およびそれらの変化形の使用は、その後に挙げてある項目およびその均等物ならびに追加的な項目を包含することを意味する。
【0131】
図面の簡潔な説明
前記および他の目的、特徴および利点は、添付図面に例示されている本発明の特定の実施形態の以下の説明から明らかであろう。添付図面においては、同様の参照文字は種々の図面の全てにおいて同じ部分を示す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の種々の実施形態の原理を例示することに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0132】
図1図1Aおよび1Bは、LZF40(8アミノ酸リンカーを含有するDS-Cav1)の新たに回収されたトランスフェクション後第7日の細胞培養上清(supe)(図1A)、または、4℃で8日間保存されたもの(図1B)の、D25およびSynagis(シナジス)(登録商標)(パリビズマブ)モノクローナル抗体への結合を示す。
図2図2A~2Fは、LZF55(F55)、LZF56(F56)およびLZF57(F57)(それぞれ10、12または14アミノ酸リンカーを含有するDS-Cav1;それぞれ図2A、2Bおよび2C)の新たに回収されたトランスフェクション後第3日の細胞培養上清(supe)、または、4℃で7日間保存されたもの(それぞれ図2D、2Eおよび2F)の、D25およびSynagis(登録商標)(パリビズマブ)への結合を示す。
図3図3は、DS-Cav1と比較した、一本鎖RSV変異体LZF55、LZF56およびLZF57の抗RSV F血清でのウエスタンブロットの結果を示す。
図4図4A~4Cは、ELISAにより測定された、DS-Cav1(図4A)、LZF57(図4B)またはLZF111(図4C)の新たに回収された細胞培養上清の、D25および4D7モノクローナル抗体への結合を示す。図4Dは、還元(R)または非還元(NR)条件下でSDS-PAGEにより分析された精製DS-Cav1、F57およびF111を示す。
図5図5Aおよび5Bは、それぞれ、LZF111およびDS-Cav1のCDスペクトルを示す。
図6図6は、分離された3D構造を有するタンパク質の、CDスペクトルで訓練されたニューラルネットワークを使用するDS-Cav1およびLZF111のCDスペクトル(185nm~260nm)の再構築による二次構造分析を示す。
図7図7は、示差走査蛍光分析(DSF)により分析された精製LZF111およびDS-Cav1の熱安定性を示す。
図8図8A~8Eは、ELISA結合アッセイにおいてD25、4D7およびSynagis(登録商標)(パリビズマブ)への結合により評価された、凍結状態または4℃で1か月間(図8A~8C)、2か月間(図8D)または3か月間(図8E)保存された精製DS-Cav1タンパク質またはLZF111の長期安定性を示す。
図9図9Aおよび9Bは融合前Fタンパク質に対するPD2マウス血清のED10 ELISA力価(図9A)およびRSV ロング(Long)株に対するPD2マウス血清の血清中和力価(図9B)を示す。水平の破線は検出限界を示す。データは、LZF111が、種々の用量で、DS-Cav1と比較して類似したレベルの中和抗体を誘導したことを示している。
図10図10はLZF111(上)、DS-Cav1(中央)およびLZF57(下)の概要図を示す。
図11図11は、mRNAワクチンおよび対照製剤によりコットンラットにおいて誘導された、RSV Aに対する血清中和抗体価[NT50(個別)およびGMT(95%信頼区間を有するもの)]を示す。
図12図12は、第56日(4週PD2)に測定されたD25(部位φ)、パリビズマブ(部位II)および4D7(部位I)に対する血清抗体競合ELISA力価[IT50(個別)およびGMT(95%信頼区間を有するもの)]を示す。
図13図13は、コットンラットをRSV Aでチャレンジした後の肺および鼻におけるRSV含有量を示す。
図14図14は、mRNAワクチンおよび対照製剤によりアフリカミドリザルにおいて誘導された、RSV Aに対する血清中和抗体価[NT50(個別)およびGMT(95%信頼区間を有するもの)]を示す。
図15図15は、第10週(2週PD3)に測定されたD25(部位φ)、パリビズマブ(部位II)および4D7(部位I)に対する血清抗体競合ELISA力価[IT50(個別)およびGMT(95%信頼区間を有するもの)]を示す。
図16図16A~16CはAGMのチャレンジの後の気管支肺胞(BAL)液中のRSV含有量を示す。図16Aは高用量免疫化である。図16Bは低用量免疫化である。図16Cは曲線下面積を示す。
図17図17A~17CはAGMのチャレンジの後の鼻スワブにおけるRSV含有量を示す。図17Aは高用量免疫化である。図17Bは低用量免疫化である。図17Cは曲線下面積を示す。
図18図18は、mRNAワクチンおよび対照製剤によりアフリカミドリザルにおいて生じた、RSV Aに対する血清中和抗体価[NT50(個別)およびGMT(95%信頼区間を有するもの)]を示す。
図19図19は、第10週(2週PD3)に測定されたD25(部位φ)、パリビズマブ(部位II)および4D7(部位I)に対する血清抗体競合ELISA力価[IT50(個別)およびGMT(95%信頼区間を有するもの)]を示す。
【0133】
実施例
実施例1:ペプチドリンカーにより連結されたF断片およびF断片を有する一本鎖変異体の作製
野生型RSV Fポリペプチドは翻訳後に宿主フューリンプロテアーゼによりF断片およびF断片へと切断される。フューリンにより切断されずに、単一ポリペプチドとして残存する一本鎖RSV変異体を評価するために、WT RSVのアミノ酸98~146(このアミノ酸はフューリン切断部位、p27ペプチド、および融合ペプチドの一部を含む)を、融合前安定化DS-Cav1変異(S155C、S190F、V207LおよびS290C)のバックグラウンドにおいて、種々の長さ(8~14アミノ酸)の柔軟アミノ酸リンカーで置換した(McLellanら,2013)。これらの変異体においては、T4ファージフィブリチン三量体化ドメイン(フォールドン)をRSV FエクトドメインのC末端に付加し、それに続いてプロテアーゼ切断部位および精製タグを付加した。変異RSV F配列を、哺乳類コドン使用頻度にいてコドン最適化し、発現ベクター内にクローニングし、Expi293浮遊細胞(Life Technologies)内に一過性にトランスフェクトした。細胞培養上清をプラスミドトランスフェクション後の第3日~第7日に回収し、RSV Fに対する種々の抗体へのこれらの変異体の結合を評価した。簡潔に説明すると、96ウェルNi-NTA被覆プレート(Thermo Scientific)を細胞培養上清で室温で1時間コーティング(被覆)した。非結合部位をPBS中の2%(v/v)ウシ血清アルブミン(BSA)の添加および室温で1時間のインキュベーションによりブロッキングした。プレートを、0.05%(v/v)Tween(トゥイーン)(商標)20(ポリソルベート20)を含有するPBS(PBS-T)で洗浄し、抗体[D25またはSynagis(登録商標)(パリビズマブ)]の系列希釈物と共に室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tで再び洗浄し、1:2,000に希釈されたヤギ抗ヒトIgG HRP結合二次抗体(Thermo Fisher)と共に室温で1時間インキュベートした。PBS-Tでの更なる洗浄およびddHOでの手短なすすぎの後、Super AquaBlue ELISA基質(eBiosience)を加え、プレートを直ちに405nmで5分間読取った。各ウェルのmOD/分を計算した。
【0134】
図1Aおよび1Bは、構築物40a(8アミノ酸リンカーを含有するDS-Cav1)の新たに回収されたトランスフェクション後第7日の細胞培養上清(図1A)または4℃で8日間保存されたもの(図1B)の、D25およびSynagis(シナジス)(登録商標)(パリビズマブ)モノクローナル抗体への結合を示す。LZF40a変異体は低い融合前特異的mAb D25結合を示した。パリビズマブ(これは融合前Fと融合後Fとの両方と反応する)への結合は高かった。このことは、該変異体が良好に発現されたことを示唆している。図2Aおよび2Bは、LZF55a、LZF56aおよびLZF57a(それぞれ10、12または14アミノ酸リンカーを含有するDS-Cav1;それぞれ図2A、2B、2C)の新たに回収されたトランスフェクション後第3日の細胞培養上清または4℃で7日間保存されたもの(それぞれ図2D、2Eおよび2F)の、D25およびパリビズマブへの結合を示す。パリビズマブへの反応性に基づけば、これらの3つの変異体の全ては良好に発現された。これらの変異体のうち、LZF57a(14アミノ酸リンカーを含有するDS-Cav1)が最高の融合前特異的mAb D25結合を示し、4℃で7日間の保存の後にD25結合を保持した。
【0135】
ELISAに加えて、トランスフェクション後の種々の時点で回収された細胞培養上清を、抗RSV F血清を使用するウエスタンブロットで分析した。上清を、還元剤(Life Technologies)とともにSDSローディングバッファーで処理し、ゲル電気泳動に適用し、ついでニトロセルロース膜(Life Technologies)上にエレクトロトランスファーした。1×TBST(Tris緩衝生理食塩水+トゥイーン)中で調製されたブロッティング等級ブロッカー(BioRad)中で該膜を4℃で一晩ブロッキングした。該膜を、野生型RSV Fタンパク質の外部ドメインに対するポリクローナルモルモット血清(Sino Biological)と共にインキュベートし、ついでAP結合ヤギ抗モルモットIgG二次抗体(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベートした。一本鎖RSV変異体LZF55a、LZF56aおよびLZF57aは、元のDS-Cav1と比較して有意に改善された発現レベルを示した(図3)。DS-Cav1はゲル上で2つのバンドとして現れ:上のバンドは未切断Fタンパク質を表し、下のバンドはフューリン切断F断片を表す。一本鎖RSV変異体LZF55、LZF56およびLZF57は、未切断Fに相当する単一の優勢なバンドとしてゲル上に現れた。
【0136】
実施例2:追加的な安定化変異
モノクローナル抗体4D7はRSV融合後Fタンパク質上の抗原部位Iと反応し、融合前F構造の安定性の評価に使用されうる(Flynnら,2016)。DS-Cav1または構築物LZF57aの新たに回収された細胞培養上清を、D25および4D7結合に関してELISAにより評価した(図4C)。構築物LZF57aはD25結合を保持しており、その融合前コンホメーションを示しているが、元のDS-Cav1構築物と比較して増強した4D7結合を示しているようであり、このことは、一本鎖リンカーが導入された場合に微妙なコンホメーション変化が存在しうることを示唆している。LZF57a一本鎖RSV変異体構築物を更に安定化させるために、ジスルフィド結合変異、キャビティ充填変異および/または融合後不安定化変異を有する変異体を作製するために、構造に基づく設計を行った。特に、融合前Fタンパク質の結晶構造に基づくジスルフィド変異体D486C/D489Cのモデルは、3.8オングストローム内の分子間ジスルフィド結合が融合前コンホメーションを更に安定化させるのに役立ちうることを示唆した(データ非表示)。選択された変異をLZF57a変異と組合せ、前記のとおりに融合前特異的mAb D25および4D7で評価した。変異体LZF 111a(これは、D486C/D489C変異を有するLZF57aに対応する)は、構築物LZF57aと比較して低減した4D7結合を示した。このことは、それが、より融合前に類似したコンホメーションをとりうることを示唆している(図4B、4Cおよび4D)。図10はLZF111およびLZF57構築物の概要を示す。
【0137】
LZF111変異体を更に特徴づけるために、RSV Fタンパク質(DS-Cav1およびLZF111a)を、既に記載されているもの(McLellan 2013)から採用された変法で培養上清から精製した。簡潔に説明すると、Ni-セファロース(Sepharose)クロマトグラフィー(GE Healthcare)を使用してhisタグ付きタンパク質を精製した。トロンビンでの一晩消化によりタグを除去した。イミダゾール濃度を減少させるために、透析中に消化を行った。共溶出汚染物質および未切断Fタンパク質を除去するために、サンプルを第2のNi-セファロース(Sepharose)クロマトグラフィーにかけた。Fタンパク質をゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex 200,GE Healthcare)により更に精製し、50mM HEPES(pH7.5)、300mM NaClのバッファー中で保存した。ジスルフィド結合形成を評価するために、還元条件下および非還元条件下でSDS-PAGE分析を行った(図4D)。簡潔に説明すると、精製タンパク質サンプルを還元剤(Life Technologies)の存在下または非存在下でSDSローディングバッファーで処理し、95℃で2~3分間加熱し、NuPAGE(Invitrogen)ゲル電気泳動に適用した。ゲルをゲルコードブルー染色溶液(Pierce)で染色し、水で脱染した。還元条件下では、予想通り、DS-Cav1は、切断F1断片およびF2断片を表す2本のバンドとしてゲル上に現れた。非還元条件下では、DS-Cav1は、主に、50kDa近くのバンドとして現れ、これは、天然ジスルフィド結合により連結された1つの切断F断片および1つのF断片を表す。予想どおり、一本鎖RSV変異体LZF57は、どちらの条件下でも、主に未切断単量体Fバンドとしてゲル上に現れた。還元条件下および非還元条件下のLZF57の移動度の変化は、見掛け分子量の増加を招き、還元条件下の緻密性の喪失により引き起こされる可能性が高い。一本鎖RSV変異体LZF111も、還元条件下、主に未切断単量体F0バンドとしてゲル上で現れた。非還元条件下では、単量体形態および二量体形態に合致する2つの亜優勢(サブドミナント)バンドが50kDaおよび100kDaに存在するが、LZF111の優勢(ドミナント)バンドは150kDa近くにシフトし、これは三量体の分子量に合致する。D486C/D489C変異はLZF57構築物とLZF111構築物との間の唯一の差異であったため、このデータは、設計された分子間ジスルフィド結合が実際にLZF111分子の大部分において形成されることを示唆した。
【0138】
実施例3:LZF111安定性試験
精製RSV Fタンパク質の二次構造を分析するために、円偏光二色性(「CD」)スペクトルをChirascan分光計(Applied Photophysics LtD,UK)で得た。Zebaスピンカラム(Pierce)を使用して10mM NaHPO中にバッファー交換し、ついで10mM NaHPO中に1:2希釈して、3.9μMおよび4.4μMの、それぞれDsCav-1およびLZF111の最終タンパク質濃度を得た後、サンプルを分析した。光路長0.5mmの石英キュベットを使用して、未希釈状態でCDスペクトルを記録した。温度制御を20℃に設定した。帯域幅を1nmに設定した。1時点当たり5秒のサンプリング時間で1nm間隔で185nmと260nmとの間のデータ点を得た。サンプルおよびバッファーのスペクトルは、それぞれ3回の技術的反復(technical replicate)を適用して、温度平衡化の10分後に得た。平均バッファースペクトルをサンプルスペクトルから差し引いた。得られたデータ点を、Origin Pro 7.5 SR7ソフトウェアパッケージ(Origin Lab Corporation)を使用してSavitzky-Golayアルゴリズム(多項式次数2、左右に2つのデータ点)で平滑化した。DS-Cav1とLZF 111とのCDスペクトルはほぼ同じであった(図5Aおよび5B)。分離された3D構造を有するタンパク質のCDスペクトルでトレーニングされたニューラルネットワーク[ソフトウェアCDNN:円二色性神経ネットワーク(Circular Dichroism Neuronal Network)]を使用するDS-Cav1およびLZF111のCDスペクトル(185nm~260nm)の再構築により、二次構造を更に分析し(図6)、これは、LZF111の修飾が融合前Fタンパク質の二次構造における有意な変化をもたらさなかったことを示している。
【0139】
DS-Cav1およびLZF111タンパク質を使用して、それらの安定性を評価するために、示差走査蛍光分析(DSF)分析を行った。50mM HEPES、300mM NaCl(pH7.5)中のDS-Cav1タンパク質(0.27~35μM)の溶液を系列希釈により調製した。Cary温度コントローラー(Agilent Technologies,CA)を備えたCary Eclipse蛍光光度計を使用して、3mM×3mmの光路長を有する微小石英キュベット(Thermo Fisher)内のそれぞれ85μLのタンパク質サンプルの蛍光シグナルを検出した。固有タンパク質蛍光を330nmおよび350nmで記録した。スリット幅10nmで励起波長を280nmに設定した。発光スリット幅を2.5nmに設定した。蛍光シグナルを最大にするために、光電子増倍管電圧を各測定前に500V~800Vの値に調節した。20℃から95℃までの増分0.5℃の1℃/分の温度勾配を用いて、熱アンフォールディング実験を行った。サンプルを開始温度で1分間平衡化し、蛍光シグナルを各データ点に関して1.5秒間平均化した。マルチセルホルダーは最大4個のサンプルの同時分析を可能にした。温度の関数として蛍光強度の融解曲線を得るために、Origin Pro(登録商標)7.5 SR7を使用して更なる処理を行うために生データをエクスポートした。融解曲線を平滑化し(多項式次数=1、点の数=12)、350nmと330nmとの間の比率の1次導関数のピーク中心を融解温度(Tm)として使用した。異なるタンパク質サンプルまたはタンパク質濃度の比較を助けるために、データを最高シグナル強度により正規化した。DS-Cav1は2つの移行中点(60.85±1.98℃および80.7±0.93℃)を有し、これらは、同じサンプル型に関して分析された全タンパク質濃度から得られた平均として示された(Flynnら,2016)(図7)。LZF111に関しては、示されているTm(約81℃)は、15μMの単一濃度から得られた(図7)。約60.85℃の低いほうのTmの非存在、および約81℃の高いほうのTmのより狭いピークは、LZF111がDS-CAV1と比較して改善された安定性を有することを示唆した。
【0140】
4℃以上での長期安定性は、サブユニットワクチン抗原にとって望ましい特性である。DS-Cav1の長期安定性を評価するために、本発明者らは、D25および4D7を使用する抗体結合アッセイ、ならびに生物物理学的分析を既に用いている。DS-Cav1は4℃での長期保存時にコンホメーション変化を受けて、4D7への結合能を獲得する代替的構造をとっていることを本発明者らのデータは示した(Flynnら,2016)。LZF111の長期安定性を評価するために、精製DS-Cav1タンパク質または構築物LZF111を凍結状態または4℃で1、2または3か月間保存し、ELISA結合アッセイにおいて、D25、4D7およびパリビズマブを使用して評価した。簡潔に説明すると、精製タンパク質をPBSで1μg/mLに希釈し、96ウェルELISAプレート(NUNC)上で4℃で一晩コーティングした。PBS中の2%(v/v)ウシ血清アルブミン(BSA)添加および室温で1時間のインキュベーションにより、未結合部位をブロッキングした。プレートを、0.05%(v/v)Tween(登録商標)20(ポリソルベート20)を含有するPBS(PBS-T)で洗浄し、抗体(D25またはパリビズマブ)の系列希釈物で室温で1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tで再び洗浄し、1:2,000に希釈されたヤギ抗ヒト(D25およびパリビズマブ用)または抗マウス(4D7用)IgG HRP結合二次抗体(Thermo Fisher)と共に室温で1時間インキュベートした。PBS-Tでの更なる洗浄およびddHOでの手短なすすぎの後、Super AquaBlue ELISA基質(eBiosience)を加え、プレートを直ちに405nmで5分間読取った。各ウェルのmOD/分を計算した。図8A、8Bおよび8Cが示すところによると、4℃で1か月の保存の後、D25およびパリビズマブの関連性は両方の構築物に関して維持されていたが、DS-Cav1では4D7結合の有意な増強が検出されたが、改善されたLZF111では検出されなかった。更に、LZF111では4℃で2か月および3か月の保存の後も4D7結合の増強は観察されず(図8Dおよび8E)、このことは、LZF111の長期安定性がDS-Cav1より優れていることを示唆している。
【0141】
実施例4:免疫原性試験
DS-Cav1およびLZF111サブユニットワクチンの免疫原性を比較するために、マウス免疫原性試験を設計した。試験した動物は、Charles River Laboratoriesから入手した雌BALB/cマウスであった。1群当たり10匹のマウスをアルミニウムアジュバントの存在下の3つの異なる用量(2μg、0.4μgおよび0.2μg)の精製DS-Cav1またはLZF111aタンパク質で第0週および第3週に2回免疫化した。各免疫化の2週後に血液を採集し、血清を分析した。融合前Fタンパク質に対する結合抗体価を評価するため、イムロン(immulon)12HBマイクロタイタープレート(NUNC)を2μg/mlの精製組換えRSV Fタンパク質DS-CAV1でコーティング(被覆)し、4℃で一晩インキュベートした。ついで該プレートを洗浄し、3% 脱脂乳を含有するPBS-T(ブロッキングバッファー)で室温で1時間ブロッキングした。試験サンプルをブロッキングバッファー中で系列4倍希釈し(1:50希釈から開始)、該RSV F被覆プレートに移し、室温で2時間インキュベートした。PBS-Tでの3回の洗浄の後、ブロッキングバッファー中で1:3,000希釈されたHRP結合抗マウスIgG二次抗体(Invitrogen)を該プレートに加え、更に1時間インキュベートした。該プレートを再び洗浄し、SuperBlu Turbo TMB(Virolabs)で暗所で現像した。反応を5分後に停止させ、VersaMax ELISAマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)で450nmの吸光度を読取った。最大シグナルの10%を示す血清サンプルの有効希釈度を示すED10 ELISA力価をGraphPad Prism 7ソフトウェアにおいて4パラメーター曲線フィットにより決定した。図9Aは用量2投与後血清の融合前Fタンパク質に対するED10 ELISA力価を示す。下の水平破線は検出限界を示す。データは、LZF111が、種々の用量で、DS-Cav1と比較して類似した抗融合前F抗体レベルを誘導したことを示している。
【0142】
試験前に補体を不活性化するために56℃で30分間処理されたマウス血清に対して、中和アッセイも行った。2% FBSを含有するEMEM中で、1:4希釈から開始する血清サンプルの2倍系列希釈液を調製した。希釈血清を96ウェルプレートに二重に加え、100μlの総体積中のRSVロング(Long)株(100 pfu/mL)と混合した。ウイルスおよび血清サンプルの混合物を、5% COの存在下、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェル当たり1.5×10 細胞の濃度のHep-2細胞を添加した。該プレートを、5% COの存在下、37℃で3日間インキュベートした。ついで該細胞を洗浄し、80% アセトンで15分間固定した。ついでRSV感染細胞を免疫染色した。簡潔に説明すると、RSV F-およびN-特異的モノクローナル抗体を、該固定細胞を含有する試験プレートに加え、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ビオチン化ヤギ抗マウスIgGを加え、1時間インキュベートした。該プレートを再び洗浄し、二重チャネル近赤外線検出(NID)系で現像した。RSV特異的シグナルを検出するための赤外線色素-ストレプトアビジンおよびアッセイ正規化用の2つの細胞染料を96ウェルプレートに加え、暗所で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、暗所で20分間乾燥させ、細胞正規化用の700チャネルレーザーおよびRSV特異的シグナルの検出用の800チャネルレーザーを使用するLicor Aerius1自動イメージングシステム(Automated Imaging System)で読取った。800/700比を計算し、GraphPad Prism 7ソフトウェアにおいて4パラメーター曲線フィットにより血清中和力価(IC50)を決定した。RSVロング(Long)株に対するPD2血清の血清中和力価を図9Bに示す。下の水平破線は検出限界を示す。データは、LZF111が、種々の用量において、DS-Cav1と比較して類似したレベルの中和抗体を誘導することを示した。
【0143】
実施例5:コットンラット免疫原性試験
この実施例においては、コットンラットRSVチャレンジモデルにおけるmRNA/LNPワクチンの免疫原性および有効性を試験するためのアッセイを行った。より詳細には、雌シグモドン・ヒスピダス(Sigmodon hispidus)コットンラットを使用し、6~7週齢で免疫化を開始した。使用したmRNAワクチンは、脂質ナノ粒子において作製し製剤化した。この試験において評価したmRNAワクチンには、以下のものが含まれた:
MRK-04膜結合DS-Cav1(安定化融合前Fタンパク質)、
MRK-04 nopoly(ノポリ)A 3mut膜結合DS-Cav1(安定化融合前Fタンパク質)、
mVRC-1(v2)膜結合一本鎖sc9 mDS-Cav1,A149C,Y458C(安定化融合前Fタンパク質)、
mLZF-111膜結合一本鎖mDS-Cav1,D486C,D489C(安定化融合前Fタンパク質)。
【0144】
8匹のコットンラットの群を、各大腿四頭筋内への50μLによる送達で、100μLのワクチンで筋肉内に免疫化した。該群に以下のワクチンを接種した。
【表1】
【0145】
実験の第0日および第28日に該動物を免疫化した。第28日および第56日に、血液を各動物から採取し、血清学的アッセイに使用した。第56日に、コットンラットを1×105.5 PFU RSV A2で鼻腔内チャレンジした。接種の4日後、CO吸入により動物を犠死させ、肺(左葉)および鼻甲介を取り出し、ウェットアイス(wet ice)上にSPGを含有する10容量のハンクス平衡塩溶液(Lonza)中でホモジナイズ(均質化)した。サンプルを2000rpmで10分間の遠心分離により清澄化し、アリコート化し、瞬間凍結し、直ちに-70℃で凍結保存した。
【0146】
RSV中和アッセイ:
各動物からのコットンラット血清を、RSV-A(Long株)の中和に関して以下の手順で評価した。
【0147】
1.全ての血清サンプルを、56℃に設定されたドライバスインキュベーター内に30分間配置することにより熱不活性化した。ついでサンプルおよび対照血清をウイルス希釈液(EMEM中の2% FBS)中で1:3希釈し、二重のサンプルをアッセイプレートに加え、系列希釈した。
【0148】
2.RSV-Longストックウイルスを冷凍庫から取り出し、37℃の水浴内で素早く解凍した。ウイルスをウイルス希釈液中で2000 pfu/mLに希釈した。
【0149】
3.「ウイルス非含有」対照として使用した1つの列の細胞を除く、96ウェルプレートの各ウェルに、50μLの希釈ウイルスを加えた。
【0150】
4.HEp-2細胞をトリプシン処理し、洗浄し、ウイルス希釈液に1.5×10細胞/mlで再懸濁させ、該懸濁細胞の100mLを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。ついで該プレートを5% CO、37℃で72時間インキュベートした。
【0151】
5.72時間のインキュベーションの後、細胞をPBSで洗浄し、PBSに溶解した80% アセトンを使用して16~24℃で10~20分間固定した。固定剤を除去し、プレートを風乾させた。
【0152】
6.ついでプレートをPBS+0.05% Tweenで十分に洗浄した。検出用モノクローナル抗体143-F3-1 B8および34C9をアッセイ希釈液(1% BSA-PBS-0.1% Tween)中で2.5μg/mLに希釈し、該希釈抗体の50μLを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。ついでプレートを、加湿チャンバー内で振とう装置(ロッカー)上で16~24℃で60~75分間インキュベートした。
【0153】
7.インキュベーション後、プレートを十分に洗浄した。
【0154】
8.ビオチン化ウマ抗マウスIgGをアッセイ希釈液中で1:200希釈し、96ウェルプレートの各ウェルに加えた。前記のとおりにプレートをインキュベートし、洗浄した。
【0155】
9.IRDye 800CWストレプトアビジン(1:1000の最終希釈)、Sapphire 700(1:1000希釈)および5mM DRAQ5溶液(1:10,000希釈)のカクテルをアッセイ希釈液中で調製し、該カクテルの50mLを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。前記のとおりにプレートを暗所でインキュベートし、洗浄し、風乾させた。
【0156】
10.ついでアエリウス・イメージャー(Aerius Imager)を使用してプレートを読取った。ついでGraphpad Prismにおいて4パラメーター曲線フィットを用いて血清中和力価を計算した。
【0157】
用量1投与後(第28日)および用量2投与後(第56日)に決定された力価を図11に示す。中和力価は全てのmRNAワクチンに対して用量依存的に誘導されることが判明した。全てのmRNAワクチンは、評価用量には無関係に、第2用量投与後に力価の増加をもたらした。mVRC-1(v2)およびmLZF111の両方はMRK-04およびMRK-04 nopolyA 3mutより高い力価を誘導し、5倍低い用量で、より優れたまたは類似した血清中和力価を示した。
【0158】
競合alphaLISA(アルファライザ)
中和抗体に対するRSV Fタンパク質上の特定のエピトープに対する免疫応答を特徴づけした。抗原部位IIは、リスクを有する乳幼児におけるRSVの下気道感染の予防のために開発されたモノクローナル抗体であるパリビズマブに対する結合部位である。抗原部位φは、RSVの自然感染により誘導される、より強力な中和抗体に対する結合部位である。また、本発明者らは、融合前コンホメーションにおいては提示されないエピトープである部位Iを標的化する抗体(4D7)を生成させている。したがって、D25とは対照的に、4D7競合抗体の誘導は融合後(post-F)様タンパク質のインビボ生成を示唆している。mRNAに基づく種々のワクチンに対する抗原部位φ、抗原部位Iおよび抗原部位II応答を特徴づけるために、競合alphaLISAを開発した。
【0159】
競合抗体価を測定するために、HiBlockバッファー(PerkinElmer)中で系列希釈された10μlのサンプルを384ウェルalphaLISAプレート内に配置する。希釈サンプルを、融合前安定化RSV Fタンパク質(DS-Cav1)または融合後RSV Fタンパク質(RSV F wt)に予め結合された5μlのAlphaLISAアクセプタービーズ(100μg/ml)と混合する。室温で30分間のインキュベーションの後、10μlのビオチン化D25、パリビズマブ、または、4D7抗体(Hiblockバッファー中で希釈されたもの)を各ウェルに加える。更に30分間のインキュベーションの後、HiBlockバッファー中の25μlのストレプトアビジンドナービーズ(20μg/ml)を各ウェルに加え、暗所で30分間インキュベートする。ついでプレートをEnVision Alphaリーダー(615nmで検出)で読取る。
【0160】
第56日(4週PD2)に測定されたパリビズマブ、D25および4D7の競合抗体力価を図12に示す。mVRC-1(v2)はより低いレベルの4D7融合後F競合抗体を誘導するが、D25融合前力価およびパリビズマブ力価は影響を受けないことを、該競合データは示した。この異なる競合プロファイルは、mVRC-1(v2)mRNAがMRK-04 nopolyA 3mutおよびmLZF-111より多くの融合前安定化タンパク質を発現することと相関している。
【0161】
C.コットンラットチャレンジの結果
コットンラットの肺および鼻ホモジネートにおけるRSV力価を測定するための手順を以下に示す。肺および鼻ホモジネートを遠心分離により清澄化し、EMEM中で1:10および1:100希釈した。コンフルエントHEp-2単層にウェル当たり50μlを二重に感染させ、この場合、未希釈(ニート)サンプルから開始し、ついで希釈ホモジネートを24ウェルプレートにおいて使用した。5% COインキュベーターにおける37℃で1時間のインキュベーションの後、ウェルを0.75% メチルセルロース培地で覆い(オーバーレイし)、プレートを37℃のインキュベーター内に戻した。4日間のインキュベーションの後、該オーバーレイを除去し、細胞を0.1% クリスタルバイオレット染色液で1時間固定し、ついで洗浄し、風乾させた。プラークを計数し、ウイルス力価を組織1グラム当たりのプラーク形成単位として表した。
【0162】
ワクチン媒介性防御を評価するために、チャレンジの5日後に肺および鼻においてウイルス力価を測定した。肺においては全てのmRNAワクチンが完全な防御を達成したが、鼻においてはmVRC-1(v2)およびmLZF111が防御の改善を示し、これらは、5倍低い用量で、MRK-04およびMRK-04 nopolyA 3mutと比較して優れたまたは類似した効果を示した(図13)。
【0163】
実施例6:アフリカミドリザルの免疫原性および有効性
この実施例においては、アフリカミドリザルRSVチャレンジモデルにおけるmRNA/LNPワクチンの免疫原性および有効性を試験するためのアッセイを行った。
【0164】
より詳細には、中和抗体価によりRSV陰性であることが確認された、1.6~2.65kgの範囲の体重を有する雄および雌の成体アフリカミドリザルを使用した。使用したmRNAワクチンは、脂質ナノ粒子において作製し製剤化した。この試験において評価したmRNAワクチンには、以下のものが含まれた:
MRK-04 nopoly(ノポリ)A 3mut膜結合DS-Cav1(安定化融合前Fタンパク質)、
mVRC-1(v2)膜結合一本鎖sc9 mDS-Cav1,A149C,Y458C(安定化融合前Fタンパク質)、
mLZF-111膜結合一本鎖mDS-Cav1,D486C,D489C(安定化融合前Fタンパク質)。
【0165】
4頭のアフリカミドリザルの群を、500μLのワクチンで1つの三角筋に筋肉内に免疫化した。表1に示すように、該群に以下のワクチンを接種した。
【表2】
【0166】
実験の第0日、第28日および第56日に該動物を免疫化した。第0日、第14日、第28日、第42日、第56日および第70日に、血液を各動物から採取し、血清学的アッセイに使用した。第70日に、アフリカミドリザルを1×105.5 PFU RSV A2で鼻腔内チャレンジした。チャレンジ後第1日~第14日に鼻咽頭スワブを集め、チャレンジ後第3日、第5日、第7日、第9日、第12日および第14日に肺洗浄サンプルを集めて、ウイルス複製を試験した。
【0167】
A.RSV中和アッセイ:
各動物からのサル血清を、前記のとおりに、RSV-A(Long株)の中和に関して評価した。用量1投与後および用量2投与後に決定されたNT50力価を図14に示す。各用量投与後、mRNAワクチンが投与された全ての群において、力価が増加することが認められた。第10週(用量3投与の2週間後)にmRNAワクチンで得られたGMTは、試験された用量およびmRNAに応じて、RSV A2が投与された動物より1~2桁高かった。mVRC-1(v2)免疫化動物からの血清サンプルは最高の中和力価を示し、MRK-04 nopolyA 3mutと比較して5倍高い効力を示した。
【0168】
B.競合ELISA
前記のとおりにmRNAに基づく種々のワクチンに対する抗原部位φ、抗原部位Iおよび抗原部位IIの応答を特徴づけるために、パリビズマブ、D25および4D7に関して競合ELISA力価を決定した。
【0169】
第10週(2週PD3)に測定されたパリビズマブ、D25および4D7の競合抗体力価を図15に示す。mVRC-1(v2)はより低いレベルの4D7融合後F競合抗体を誘導するが、一方で、D25融合前力価およびパリビズマブ力価は影響を受けないことを、該競合データは示した。この異なる競合プロファイルは、mVRC-1(v2)mRNAがMRK-04 nopolyA 3mutおよびmLZF-111より多くの融合前安定化タンパク質を発現することと相関している。
【0170】
C.アフリカミドリザルチャレンジの結果
前記のように、ワクチンの有効性を評価するために、ワクチン接種後第70日にアフリカミドリザルを1×105.5 PFU RSV A2で鼻腔内チャレンジし、チャレンジ後に鼻咽頭スワブおよび肺洗浄サンプルを集めて、ウイルスの存在に関して試験した。
【0171】
アフリカミドリザル肺洗浄液サンプルにおけるRSV力価を測定するために、ウイルス力価を測定するためのウイルスプラークアッセイの手順を以下のとおりに行った。簡潔に説明すると、サンプルを希釈し、コンフルエントHEp-2細胞単層を含有する24ウェルプレートに二重に加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートした。1時間のインキュベーションの後、サンプル接種物を吸引し、0.75% メチルセルロースを含有する1mlのオーバーレイを加えた。プレートを37℃で5日間インキュベートした。5日間のインキュベーションの後、細胞を固定し、クリスタルバイオレット/グルタルアルデヒド溶液で染色した。プラークを計数し、力価をpfu/mlとして表した。気管支肺胞洗浄(BAL)液におけるウイルス含量の分析(図16A~16C)は、mVRC-1(V2)(25μg)のみが肺における完全な防御をもたらし、より低い用量(5μg)で最良の防御をもたらすことを示した。
【0172】
アフリカミドリザル鼻咽頭スワブにおけるRSV力価を測定するために、RSV Aを検出するためのRSV RT-qPCRアッセイを以下のとおりに行った。
【0173】
1)装置および材料:
A.装置
1.Stratagene Mx3005PリアルタイムPCRシステムおよびMxProソフトウェア
2.Jouan GR422遠心分離機または同等物
3.Jouanプレートキャリアまたは同等物
B.試薬
1.Quantitect(登録商標)プローブRt-PCRキット(1000)カタログ番号204445
2.水、分子生物学等級DNAアーゼ非含有かつプロテアーゼ非含有、5プライム(Prime)、カタログ番号2900136
3.TEバッファー、10mM Tris 1mM EDTA(ph 8.0)、Fisher Bioreagents、カタログ番号BP2473-100
4.ウイルスプライマー:RSV Aフォワードプライマーおよびリバースプライマー、Sigma特製、HPLC精製。プライマーストックは分子等級の水中で100μMに再構成され、-20℃で保存される。
5.RSV二重標識プローブ、Sigma特製、HPLC精製。プローブストックはTEバッファー中で100μMに再構成され、遮光状態で-20℃で保存される。
6.RSV A標準は社内で作製し、-20℃で保存した。アッセイ用標準は、RSV AのN遺伝子に対するプライマーペアを設計することにより作製した。RSV A標準の生成物の長さは885bpである。QIAGEN OneStep RT-PCRを使用して、この標準を作製した。
【0174】
【表3】
【0175】
7.Promega,Maxwell(登録商標)16ウイルス全核酸精製キット(製品番号AS1150)
【0176】
C.サプライ
1.Stratagene光学キャップ8×ストリップ、カタログ番号401425
2.Stratagene Mx3000P 96ウェルプレート、スカート(skirted)、カタログ番号401334
3.ARTフィルター付きピペットチップ
【0177】
2)RT-PCR反応および準備
A.完全マスターミックス(Complete Master Mix)の調製
1.最終的な反応体積が50μLになるように以下の設定に従い完全マスターミックスを調製する。以下の表はウェル当たりの体積である。最終的なプライマー濃度は300nMであり、最終的なプローブ濃度は200nMである。
【表4】
【0178】
2.各ウェルに45μLの完全マスターミックスを加える。プレートをプレートカバーで覆い、アルミホイルで包んで光から保護する。
【0179】
B.検量線の作成
1.標準を-20℃から取り出す。
2.標準を、10倍希釈を用いて、1e6コピー/5μL~1コピー/5μLの最終濃度に希釈する。
【0180】
C.サンプルの調製
1.Maxwell(登録商標)16ウイルス全核酸精製キット(Promega、製品番号AS1150)を使用して、RT-PCR反応のために鼻咽頭スワブおよび肺洗浄液サンプルを調製する。
2.製造業者のプロトコルに従い200μLのサンプルを抽出し、PCR反応に使用される50μL中に溶出する。
【0181】
D.サンプルの添加
1.適切なウェルに5μLの抽出サンプルを加える。サンプルの添加の後、標準曲線を加える前に、サンプルウェルを注意深くキャップで覆う。
2.適切なウェルに5μLの希釈標準を加え、キャップで覆う。
3.鋳型非含有対照(NTC)ウェルに5μLの分子等級の水を加える。
4.プレートをアルミホイルで包み、プレートを遠心分離機に移す。
5.プレートを100rpmで2分間回転させて、ウェルの側面上に存在しうるサンプルまたはマスターミックスを引き落とす。
6.プレートをアルミホイルで包み、Stratagene装置に移す。
【0182】
E.サーモサイクラー:Stratagene MX 3005P
1.プレートをStratagene Mx3005P内に配置し、熱プロファイル条件を以下のとおりに設定する。
【表5】
【0183】
2.Stratagene Mx3005pソフトウェアを使用して、結果を分析する。
【0184】
鼻サンプルにおいて検出された平均RNAコピー数を図17A~17Cに示す。mRNAに基づく全てのワクチンの防御効果は鼻においてはそれほど明白ではなかったが、この場合も再び、mVRC-1(v2)は、MRK-04 nopolyA 3mutより5倍高い効力を示した。
【0185】
実施例6:RSVを経験したアフリカミドリザルにおける免疫原性
LNP中で製剤化されたmRNAワクチンの免疫原性を、RSVを経験したアフリカミドリザルにおいて試験した。
【0186】
ELISAおよび中和抗体価によりRSV血清陽性であることが確認された、2.85~4.65kgの範囲の体重を有するいずれかの性別(n=4または5/群)の健常成体アフリカミドリザルを、試験のために選択した。この試験のために選択された動物の集団は以前の研究でRSVに実験的に感染しており、全ての群が試験開始時に類似した群GMTを有するように、それらの試験前RSV中和力価に基づいて試験群全体に分配した。RSVを経験した動物は、血清陽性ヒト成人において予想されうる応答を反映しうるワクチン接種に対する免疫記憶想起応答のモデルとなるが、この場合に注意すべきは、RSV曝露後のAGMにおける抗体応答が、融合後Fタンパク質エピトープに対してヒト免疫レパートリーより傾向していることである。
【0187】
単一ワクチン用量を、筋肉内(IM)経路で第0週に各動物に投与した。PBSのみの投与を受ける対照群も試験計画に含めた。表2に記載されているとおりにワクチンを投与した。ワクチン接種後、接種部位における何らかの変化またはワクチンに対する有害反応を示しうる活動または食習慣における他の変化に関して動物を毎日観察したが、何も認められなかった。RSV中和抗体価、ならびに、パリビズマブ(部位II)、D25(部位φ)および4D7(部位I)競合抗体価の評価のために、血清サンプルを収集した。
【0188】
【表6】
【0189】
前記の方法を用いて、ベースライン及びワクチン接種の2週間後に収集された血清サンプルにおいて個々の動物のNT50力価を測定し、結果を図18に示す。RSV Fに結合する血清抗体のレベルの増加(融合前RSV Fと融合後RSV Fとの両方;データ非表示)および血清中和抗体レベルの増加により示されるとおり、全てのワクチンは高免疫原性であることが判明した。mVRC-1(v2)は中和力価における最高の上昇(最高用量で100倍超)を誘発し、MRK-04 nopolyA 3mutと比較して5倍低い用量で類似した効力を示した。同様に、mLZF-111も、MRK-04 nopolyA 3mutと比較して増強した効力を示した。PBS対照群においては力価の増加は観察されなかった。
【0190】
ワクチン接種動物における応答の増強の質を評価するために、パリビズマブ(部位II)、D25(部位φ)および4D7(部位I)競合抗体価を、ワクチン接種の2週間後に収集された血清において測定した(図19)。前記のとおり、抗原部位IIは、Fタンパク質の融合前と融合後との両方のコンホメーションに見られる中和エピトープであり、サイトφは融合前特異的中和エピトープであり、4D7は融合後特異的エピトープである。融合後コンホメーションに対するベースライン免疫傾向ゆえに、RSVを経験したAGMは、免疫化前に、検出可能なD25競合抗体価を有さない。しかし、3つのmRNA抗原は全て、高いD25競合抗体価を誘導し、このことは、AGMが、免疫化により増強されうるRSV感染後の抗原部位φ免疫応答を増強することを示している。mVRC-1(v2)免疫化後のD25競合抗体価の上昇が最も高く(450倍超)、この場合も再び、MRK-04 nopolyA 3mutの5倍低い用量で類似した効力を示した。ナイーブ動物(コットンラットおよびAGM)とは対照的に、mVRC-1(v2)群におけるRSVを経験したAGMでは、4D7/融合後F特異的抗体の高い上昇が観察され、このことは、ベースライン抗体プールが免疫化後のエピトープ特異的抗体プロファイルの結果を決定しうることを示している。ヒトにおける自然RSV感染からのB細胞記憶プールは、融合前コンホメーションに強く傾向していると考えられるため、本発明者らは、ヒトにおけるmVRC-1(v2)免疫化が、より強力な中和活性を有することが知られているこれらのエピトープに対する抗体を優先的に上昇させて、MRK-04 nopolyA 3mutと比較して増強した効力をもたらすと推測している。
【0191】
【表7】
【0192】
当業者は、本明細書に記載されている開示の特定の実施形態の多数の均等物を認識し、または単なる通常の実験を用いて確認することが可能であろう。そのような均等物は以下の特許請求の範囲に含まれると意図される。
【0193】
本明細書に開示されている特許文献を含む全ての参考文献の全体を参照により本明細書に組み入れることとする。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18
図19
【配列表】
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