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特許7541503熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シート
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240821BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240821BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240821BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240821BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240821BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240821BHJP
   C09J 201/06 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L21/60 311Q
H01L21/78 M
C09J7/30
C09J201/00
C09J201/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021502232
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2020007302
(87)【国際公開番号】W WO2020175423
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】P 2019032829
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】四宮 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】野末 喬城
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/147097(WO,A1)
【文献】特開2018-171864(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188229(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/078050(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/077958(WO,A1)
【文献】特開2012-169484(JP,A)
【文献】特開2012-169482(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027888(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055859(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/061132(WO,A1)
【文献】特開2014-179377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/31
H01L 21/60
H01L 21/301
C09J 7/30
C09J 201/00
C09J 201/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの突状電極を有する面に貼付し、熱硬化させることによって、前記面に第1保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムであって、
厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムを130℃で2時間加熱することにより、熱硬化させて得られた、大きさが20mm×130mmであり、厚さが40μmである第1保護膜を用い、つかみ器具間距離を80mmとし、引張り速度を200mm/minとして、前記つかみ器具により前記第1保護膜をその表面に対して平行な方向において引っ張ったときの、前記第1保護膜の破断強度が、55MPa以下である、熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂フィルムは、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、熱硬化性成分を含有し、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記熱硬化性成分の含有量の割合が、40質量%以上である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂フィルム。
【請求項3】
第1支持シートを備え、前記第1支持シートの一方の面上に、請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂フィルムを備えた、第1保護膜形成用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートに関する。
本願は、2019年2月26日に日本に出願された特願2019-032829号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、MPUやゲートアレー等に用いる多ピンのLSIパッケージをプリント配線基板に実装する場合には、突状電極(例えば、バンプ、ピラー等)を備えたワーク(例えば、半導体ウエハ等)を用い、所謂フェースダウン方式により、ワーク加工物(例えば、半導体ウエハの分割物である半導体チップ等)中の突状電極を、基板上の相対応する端子部に対面、接触させ、溶融/拡散接合するという、フリップチップ実装方法が採用されてきた。
【0003】
この実装方法を採用する場合、ワークの回路面及び突状電極を保護する目的で、硬化性樹脂フィルムを、突状電極の表面とワークの回路面に貼付し、このフィルムを硬化させて、これらの面に保護膜を形成することがある。
なお、本明細書においては、突状電極の表面と、ワーク又はワーク加工物の回路面と、をあわせたものを、「突状電極形成面」と称することがある。
【0004】
硬化性樹脂フィルムは、通常、加熱により軟化した状態で、ワークの突状電極形成面に貼付される。このようにすることにより、突状電極の頭頂部を含む上部は、硬化性樹脂フィルムを貫通して、硬化性樹脂フィルムから突出する。その一方で、硬化性樹脂フィルムは、ワークの突状電極を覆うようにして突状電極間に広がり、回路面に密着するとともに、突状電極の表面、特に回路面の近傍部位の表面を覆って、突状電極を埋め込む。この後、硬化性樹脂フィルムは、さらに硬化によって、ワークの回路面と、突状電極の回路面の近傍部位の表面と、を被覆して、これらの領域を保護する保護膜となる。
【0005】
半導体ウエハを用いた場合、この実装方法で用いる半導体チップは、例えば、回路面に突状電極が形成された半導体ウエハの、前記回路面とは反対側の面を研削したり、ダイシングして分割することにより得られる。
このような半導体チップを得る過程においては、通常、半導体ウエハの回路面及び突状電極を保護する目的で、硬化性樹脂フィルムを突状電極形成面に貼付し、このフィルムを硬化させて、突状電極形成面に保護膜を形成する。
さらに、半導体ウエハは、半導体チップに分割され、最終的に、突状電極形成面に保護膜を備えた半導体チップ(本明細書においては、「保護膜付き半導体チップ」と称することがある)となる(特許文献1参照)。
【0006】
このような突状電極形成面に保護膜を備えたワーク加工物(本明細書においては、「保護膜付きワーク加工物」と称することがある)は、さらに、基板上に搭載されてパッケージとなり、さらにこのパッケージを用いて、目的とする装置が構成される。保護膜付き半導体チップが基板上に搭載された場合には、これにより得られた半導体パッケージを用いて、目的とする半導体装置が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特許第5515811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1で開示されているものをはじめとして、従来の硬化性樹脂フィルムを用いた場合、ワークの分割(例えば、半導体ウエハの半導体チップへの分割)は、通常、ダイシングブレードを用いたブレードダイシングにより行われていた。しかし、この方法は、最も広く普及しているものの、例えば、サイズが小さいワーク加工物又は厚さが薄いワーク加工物の製造には不向きであった。これは、このようなワーク加工物で割れや欠けが生じ易いためである。
【0009】
そこで本発明は、ワーク又はワーク加工物の突状電極形成面を保護するための保護膜を形成可能な樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムを用いることにより、ワークを分割するための新規の方法を適用可能とする樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ワークの突状電極を有する面に貼付し、熱硬化させることによって、前記面に第1保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムであって、厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上である、熱硬化性樹脂フィルムを提供する。
本発明の熱硬化性樹脂フィルムは、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、熱硬化性成分を含有し、前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記熱硬化性成分の含有量の割合が、40質量%以上であってもよい。
また、本発明は、第1支持シートを備え、前記第1支持シートの一方の面上に、前記熱硬化性樹脂フィルムを備えた、第1保護膜形成用シートを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ワーク又はワーク加工物の突状電極形成面を保護するための保護膜を形成可能な樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムを用いることにより、ワークを分割するための新規の方法を適用可能とする樹脂フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂フィルムを用いて、突状電極形成面に第1保護膜を形成した状態の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートの一例を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートの他の例を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。
図5B】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。
図5C】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。
図6A】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。
図6B】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。
図6C】本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◇熱硬化性樹脂フィルム、第1保護膜形成用シート
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂フィルムは、ワークの突状電極を有する面(本明細書においては、「突状電極形成面」と称することがある)に貼付し、熱硬化させることによって、前記面に第1保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムであって、厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上である。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る第1保護膜形成用シートは、第1支持シートを備え、前記第1支持シートの一方の面上に、前記熱硬化性樹脂フィルムを備えたものである。前記第1保護膜形成用シートにおいて、前記「熱硬化性樹脂フィルム」は、「熱硬化性樹脂層」と称することもある。
【0015】
本実施形態において、ワークとしては、例えば、半導体ウエハ等が挙げられる。
ワーク加工物としては、例えば、半導体ウエハの分割物である半導体チップ等が挙げられる。
ワークの加工には、例えば、分割が含まれる。
突状電極としては、例えば、バンプ、ピラー等が挙げられる。突状電極は、ワークの接続パッド部に設けられており、共晶ハンダ、高温ハンダ、金又は銅等で構成される。
【0016】
前記第1保護膜形成用シートは、その熱硬化性樹脂フィルム(熱硬化性樹脂層)を介して、ワークの突状電極形成面(すなわち、突状電極の表面とワークの回路面)に貼付されて、使用される。そして、貼付後の熱硬化性樹脂フィルムは、加熱によって流動性が増大し、突状電極を覆うようにして突状電極間に広がり、前記回路面と密着するとともに、突状電極の表面、特に前記回路面近傍部位の表面を覆って、突状電極を埋め込む。この状態の熱硬化性樹脂フィルムは、さらに加熱によって硬化して、最終的に第1保護膜を形成し、前記回路面と突状電極とを、これらに密着した状態で保護する。
【0017】
さらに、熱硬化性樹脂フィルムの、ワークの突状電極形成面への貼付時に、突状電極の頭頂部を含む上部は、熱硬化性樹脂フィルムを貫通して、熱硬化性樹脂フィルムから突出することが可能な場合がある。その場合には、ワークは直ちに、基板の回路面にフリップチップ接続可能な状態となる。後述するように、突状電極の上部は、最終的にワーク加工物の段階で露出していることが必要となる。
一方、熱硬化性樹脂フィルムの、ワークの突状電極形成面への貼付時に、このように突状電極の頭頂部を含む上部が熱硬化性樹脂フィルムから突出しなかった場合には、突状電極の上部に残存している熱硬化性樹脂フィルムを、又は、その硬化によって形成された第1保護膜を、別途除去することにより、突状電極の上部を露出させる。これにより、ワーク加工物は基板の回路面にフリップチップ接続可能な状態となる。
【0018】
このように、本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムを用いることで、ワークの回路面と、突状電極の前記回路面近傍の部位、すなわち基部とが、第1保護膜で十分に保護される。
【0019】
第1保護膜形成用シートを貼付した後のワークは、例えば、必要に応じて前記回路面とは反対側の面が研削された後、第1支持シートが取り除かれ、次いで、熱硬化性樹脂フィルムの加熱による突状電極の埋め込み及び第1保護膜の形成が行われる。さらに、ワークの分割(すなわちワーク加工物への個片化)と第1保護膜の切断が行われて、これにより得られた、切断後の第1保護膜を突状電極形成面に備えたワーク加工物(本明細書においては、「第1保護膜付きワーク加工物」と称することがある)を用いて、半導体装置等の目的とする基板装置が製造される。これらの工程については、後ほど詳細に説明する。
【0020】
なお、本明細書においては、特に断りのない限り、単なる「硬化性樹脂フィルム」との記載は、「硬化前の硬化性樹脂フィルム」を意味し、単なる「硬化性樹脂層」との記載は、「硬化前の硬化性樹脂層」を意味する。例えば、「熱硬化性樹脂フィルム」とは、「硬化前の熱硬化性樹脂フィルム」を意味し、「第1保護膜」とは、熱硬化性樹脂フィルムの硬化物を意味する。
【0021】
本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムは、ワークをワーク加工物へ分割(換言すると個片化)する方法として、従来とは異なる方法を適用するのに、好適である。ここで、「従来とは異なる方法」としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
すなわち、前記熱硬化性樹脂フィルムから形成された第1保護膜を突状電極形成面に備えたワークに対して、レーザー光を照射することにより、ワークの内部に改質層を形成する。次いで、この改質層を形成後のワークに対して力を加える。より具体的には、本実施形態においては、ワークをその回路面に対して平行な方向にエキスパンドする。これにより、前記改質層の部位において前記ワークを分割する。このとき、第1保護膜にも力を加えること、より具体的には、第1保護膜をそのワークへの貼付面に対して平行な方向にエキスパンドすること、により、同時に第1保護膜も切断可能な場合がある。このとき、第1保護膜は、ワークの分割箇所に沿って切断される。その場合には、直ちに、ワーク加工物と、前記ワーク加工物の前記突状電極形成面に形成された、切断後の第1保護膜と、を備えた第1保護膜付きワーク加工物が得られる。一方、ワークを分割したとき、同時に第1保護膜を切断できなかった場合には、さらに、ワークの分割後に、第1保護膜を切断する。これにより、上記と同様の第1保護膜付きワーク加工物が得られる。
【0022】
このような改質層の形成を伴うワークの分割方法は、ステルスダイシング(登録商標)と呼ばれており、ワークにレーザー光を照射することにより、照射部位のワークを削り取りながら、ワークをその表面から切断していくレーザーダイシングとは、本質的に全く異なる。
【0023】
<<熱硬化性樹脂フィルムの光の透過率>>
厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルムの、波長1342nmの光の透過率は、上述のとおり、50%以上である。
また、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルムの、波長1342nmの光の透過率は、上述のとおり、50%以上である。
【0024】
ワークを分割してワーク加工物を作製する方法として、先に説明した、ワークの内部における改質層の形成を伴う方法を適用する場合、波長1342nmのレーザー光をワークに照射することで、改質層を形成できる。このとき、レーザー光は、ワークに対して、その回路面側から照射してもよいし、その裏面側から照射してもよい。ただし、レーザー光を、ワークに対して、その回路面側から照射する場合には、回路面に形成されている第1保護膜を介して、レーザー光を照射することになる。
一方、熱硬化性樹脂フィルムと、その硬化物(例えば、第1保護膜)とでは、同じ波長の光の透過率は、ほぼ又は全く同じとなる。したがって、厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂フィルムの、波長1342nmの光の透過率が、50%以上である場合、その硬化物の波長1342nmの光の透過率も、50%以上となる。同様に、前記積層フィルムの、波長1342nmの光の透過率が、50%以上である場合、その硬化物の波長1342nmの光の透過率も、50%以上となる。すなわち、このような光の透過率の条件を満たすものと同様の組成の熱硬化性樹脂フィルムを用いて形成された第1保護膜は、波長1342nmのレーザー光を良好に透過させる。したがって、このような第1保護膜を回路面に備えたワークは、その回路面側からレーザー光を照射して、ワークの内部に改質層を形成するためのものとして、好適である。
【0025】
上述の効果がより顕著となる点では、厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂フィルム、又は、合計の厚さが200μmである積層フィルムの、波長1342nmの光の透過率は、例えば、60%以上、70%以上、80%以上及び85%以上のいずれかであってもよい。
【0026】
厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂フィルム、又は、合計の厚さが200μmである積層フィルムの、波長1342nmの光の透過率の上限値は、特に限定されず、高いほど好ましい。例えば、熱硬化性樹脂フィルムの製造が比較的容易である点では、前記光の透過率は、95%以下であることが好ましい。
【0027】
前記光の透過率は、上述の下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。一実施形態において、前記光の透過率は、例えば、50~95%、60~95%、70~95%、80~95%、及び85~95%のいずれかであってもよい。
【0028】
厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂フィルムと、合計の厚さが200μmである前記積層フィルムとで、これらの含有成分が同じであれば、これら(1層の熱硬化性樹脂フィルムと積層フィルム)の光の透過率は、光の波長が1342nmである場合に限らず、互いに同じとなる。
【0029】
前記積層フィルムを構成する、厚さが200μm未満である熱硬化性樹脂フィルムの層数は、特に限定されないが、2~6であることが好ましい。このような層数であれば、前記積層フィルムをより容易に作製できる。
【0030】
前記積層フィルムを構成する、厚さが200μm未満である熱硬化性樹脂フィルムの厚さは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0031】
本実施形態において、前記光の透過率の特定対象である、1層の前記熱硬化性樹脂フィルム又は積層フィルムにおいて、厚さを200μmに規定する理由は、このような厚さの熱硬化性樹脂フィルム又は積層フィルムを用いることにより、前記光の透過率をより高精度かつ容易に測定できるためである。
本実施形態において、1層の熱硬化性樹脂フィルム、及び2層以上の複数層から熱硬化性樹脂フィルムの厚さはいずれも、後述するように、200μmに限定される訳ではない。
【0032】
前記光の透過率は、例えば、後述する着色剤(I)、充填材(D)等の、熱硬化性樹脂フィルムの含有成分の種類及び含有量、並びに、熱硬化性樹脂フィルムの表面状態、等を調節することにより、調節できる。
【0033】
<<熱硬化性成分の含有量の割合>>
前記熱硬化性樹脂フィルムは、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、熱硬化性成分を含有し、前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記熱硬化性成分の含有量の割合([熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分の含有量(質量部)]/[熱硬化性樹脂フィルムの総質量(質量部)]×100)が、40質量%以上であることが好ましい。熱硬化性樹脂フィルムが2種以上の熱硬化性成分を含有する場合、上述の熱硬化性成分の含有量(質量部)とは、これら2種以上の全種類の熱硬化性成分の合計含有量(質量部)を意味する。
【0034】
このような前記含有量の割合の条件を満たすことで、熱硬化性樹脂フィルムは、ワークの突状電極形成面への貼付時に、突状電極の頭頂部を含む上部における残存を抑制できる。このように、突状電極の上部が、貼付した熱硬化性樹脂フィルムを貫通して突出することによって、最終的に得られるワーク加工物は、フリップチップ実装した際に、その突状電極によって、基板と十分に電気的に結合可能となる。
ワークの突状電極形成面への貼付時に、突状電極の上部において、熱硬化性樹脂フィルムが残存しなければ、このような残存している熱硬化性樹脂フィルムを、又は、その硬化によって形成された第1保護膜を、別途除去することが不要となり、工程を簡略化できる。
【0035】
前記熱硬化性樹脂フィルムにおいて、上述の含有量の割合を規定する「熱硬化性成分」とは、加熱によって硬化反応を示す成分である。ただし、エポキシ基を有するアクリル樹脂は、この熱硬化性成分に含めない。熱硬化性成分としては、例えば、後述する熱硬化性成分(B)が挙げられる。
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなり、これら2種の成分は、いずれも、上述の含有量の割合の規定対象となる。
一方、熱硬化性成分に含めない、エポキシ基を有するアクリル樹脂としては、例えば、後述する重合体成分(A)におけるアクリル樹脂のうち、エポキシ基を有するものが挙げられる。例えば、グリシジル基を有するアクリル樹脂は、エポキシ基を有するアクリル樹脂に含まれる。
【0036】
前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記熱硬化性成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0037】
上述の有利な効果がより顕著に得られる点で、前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記熱硬化性成分の含有量の割合は、例えば、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、及び80質量%以上のいずれかであってもよい。
【0038】
前記含有量の割合の上限値は、特に限定されない。例えば、熱硬化性樹脂フィルムの造膜性がより良好となる点では、前記合計含有量の割合は、90質量%以下であることが好ましい。
【0039】
前記含有量の割合は、上述の下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記含有量の割合は、40~90質量%、50~90質量%、60~90質量%、70~90質量%、及び80~90質量%のいずれかであってもよい。
【0040】
<<X値の合計値>>
前記熱硬化性樹脂フィルムが、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、2種以上の前記熱硬化性成分を含有する場合、熱硬化性樹脂フィルムにおいては、熱硬化性樹脂フィルムが含有する熱硬化性成分について、その種類ごとに、下記式:
X=[熱硬化性成分の熱硬化反応に関わる官能基の当量(g/eq)]×[熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分の含有量(質量部)]/[熱硬化性樹脂フィルムの全種類の熱硬化性成分の合計含有量(質量部)]
で算出されるX値を求め、前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する全種類の前記熱硬化性成分における前記X値の合計値を求めたとき、前記合計値が、例えば、400g/eq以下となってもよい。
【0041】
熱硬化性樹脂フィルムがこのような条件を満たす場合には、先に説明した第1保護膜付きワーク加工物の製造時に、改質層の部位においてワークを分割するときに、同時に、第1保護膜も切断できる。そのため、第1保護膜を切断するための工程を別途設ける必要がなく、第1保護膜付きワーク加工物を高い効率で製造できる。
【0042】
前記X値は、前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する1種の熱硬化性成分について、前記式により算出する。
前記X値の算出対象である「熱硬化性成分」とは、前記熱硬化性樹脂フィルムにおいて、上述の含有量の割合を規定する「熱硬化性成分」と同じである。
【0043】
X値を算出するための「熱硬化性成分の熱硬化反応に関わる官能基」とは、例えば、後述するエポキシ樹脂(B1)の場合には、エポキシ基であり、後述する熱硬化剤(B2)の場合には、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等である。ただし、これらは、前記官能基の一例である。
【0044】
前記熱硬化性樹脂フィルムがp種(pは2以上の整数である)の熱硬化性成分を含有する場合を考える。これら熱硬化性成分を、その種類ごとにM、Mとする。そして、熱硬化性成分Mの前記官能基の当量をm(g/eq)とし、熱硬化性成分Mの前記官能基の当量をm(g/eq)とし、熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分Mの含有量をC(質量部)とし、熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分Mの含有量をC(質量部)とする。
このとき、熱硬化性成分Mについて、前記X値(以下、「X値」と称する)は、下記式により算出される。
【0045】
【数1】
【0046】
同様に、熱硬化性成分Mについても、前記X値(以下、「X値」と称する)は、下記式により算出される。
【0047】
【数2】
【0048】
そして、前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する全種類の熱硬化性成分(M、・・・、M)における前記X値(X、・・・、Xp)の合計値は、以下のとおりとなる。
【0049】
【数3】
【0050】
熱硬化性成分の官能基の当量(m1、(g/eq))が、一定値で特定されず、幅を持って数値範囲で特定されている場合には、その数値範囲の下限値及び上限値から算出される平均値を、官能基の当量として採用すればよい。
【0051】
上述の有利な効果がより顕著に得られる点で、前記熱硬化性樹脂フィルムにおいて、前記X値の合計値は、例えば、375g/eq以下、350g/eq以下、及び325g/eq以下のいずれかであってもよい。
【0052】
前記X値の合計値の下限値は、特に限定されない。例えば、前記熱硬化性樹脂フィルムにおいて、過剰な架橋反応に起因する柔軟性の低下が抑制される点では、前記X値の合計値は、100g/eq以上であることが好ましい。
【0053】
前記X値の合計値は、上述の下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、前記X値の合計値は、100~400g/eq、100~375g/eq、100~350g/eq、及び100~325g/eqのいずれかであってもよい。
【0054】
前記熱硬化性樹脂フィルムで好ましいものとしては、例えば、上述の光の透過率と、熱硬化性成分の含有量の割合と、X値の合計値と、の条件をすべて満たすものが挙げられる。
例えば、前記熱硬化性樹脂フィルムは、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、2種以上の熱硬化性成分を含有し、前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、全種類の前記熱硬化性成分の合計含有量の割合が、40質量%以上であり、
厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記熱硬化性成分について、その種類ごとに、下記式:
X=[熱硬化性成分の熱硬化反応に関わる官能基の当量(g/eq)]×[熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分の含有量(質量部)]/[熱硬化性樹脂フィルムの全種類の熱硬化性成分の合計含有量(質量部)]
で算出されるX値を求め、前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する全種類の前記熱硬化性成分における前記X値の合計値を求めたとき、前記合計値が400g/eq以下となるもの好ましい。
【0055】
<<第1保護膜の破断強度>>
大きさが20mm×130mmであり、厚さが40μmである第1保護膜の、下記方法で測定された破断強度は、例えば、55MPa以下であってもよい。前記破断強度が前記上限値以下である第1保護膜と同じ組成の第1保護膜は、後述するエキスパンドによる切断が、より容易である。
前記第1保護膜の破断強度としては、第1保護膜におけるつかみ器具間距離を80mmとし、第1保護膜の引張り速度を200mm/minとして、つかみ器具により第1保護膜をその表面に対して平行な方向において引っ張ったときに測定される最大応力を採用できる。
最大応力の測定対象である第1保護膜としては、熱硬化性樹脂フィルムを130℃で2時間加熱することにより、熱硬化させて得られたものを使用できる。
【0056】
上述の効果がより顕著となる点では、第1保護膜の前記破断強度は、例えば、52.5MPa以下、50MPa以下、及び47.5MPa以下のいずれかであってもよい。
【0057】
第1保護膜の前記破断強度の下限値は、特に限定されない。第1保護膜の保護能がより高くなる点では、第1保護膜の前記破断強度は、0.1MPa以上であることが好ましい。
【0058】
第1保護膜の前記破断強度は、上述の下限値及び上限値を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。一実施形態において、第1保護膜の前記破断強度は、例えば、0.1~55MPa、0.1~52.5MPa、0.1~50MPa、及び0.1~47.5MPaのいずれかであってもよい。
【0059】
第1保護膜の前記破断強度は、例えば、後述する熱硬化性樹脂層形成用組成物の含有成分、特に、重合体成分(A)、カップリング剤(E)、充填材(D)等の種類及び含有量、並びに、第1保護膜の厚さ(換言すると熱硬化性樹脂フィルムの厚さ)等を調節することにより、調節できる。
【0060】
回路面上に突状電極を有するワーク及びワーク加工物において、回路面とは反対側の面(裏面)は剥き出しとなることがある。そのため、この裏面には、有機材料を含有する保護膜(本明細書においては、第1保護膜と区別するために、「第2保護膜」と称することがある)が形成されることがある。第2保護膜は、ワークの分割やパッケージングの後に、ワーク加工物においてクラックが発生するのを防止するために利用される。このような裏面に第2保護膜を備えた第2保護膜付きワーク加工物は、最終的には半導体装置等の目的とする基板装置に取り込まれる。
一方、第2保護膜には、ワーク加工物に関する情報がレーザーでマーキング可能であったり、ワーク加工物の裏面を隠蔽したりする機能が求められることがある。このような要求を充足するものとして、硬化により第2保護膜を形成可能な、光の透過特性が調節された硬化性樹脂フィルムが知られている。
しかし、ワーク加工物の裏面を保護するための第2保護膜と、ワーク加工物の突状電極形成面を保護するための第1保護膜とでは、ワーク加工物での形成位置が異なるため、求められる特性も互いに異なる。したがって、第2保護膜を形成可能な熱硬化性樹脂フィルムを、第1保護膜の形成用として直ちに用いることは、通常困難である。
【0061】
図1は、本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムを用いて、突状電極形成面に第1保護膜を形成した状態の一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0062】
ここに示すワーク90の回路面90aには、複数個の突状電極91が設けられている。図1中、符号90bは、ワーク90の回路面90aとは反対側の面(裏面)を示す。
突状電極91は、球の一部が平面によって切り取られた形状を有しており、その切り取られて露出した部位に相当する平面が、ワーク90の回路面90aに接触した状態となっている。
突状電極91の形状は、ほぼ球状である。
【0063】
第1保護膜12’は、本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムを用いて形成されたものであり、ワーク90の回路面90aを被覆し、さらに突状電極91の表面91aのうち、突状電極91の頭頂部910とその近傍以外の領域を被覆している。このように、第1保護膜12’は、突状電極91の頭頂部910とその近傍以外の表面91aに密着するとともに、ワーク90の回路面90aにも密着して、突状電極91を埋め込んでいる。
突状電極91の、上記のようなほぼ球状という形状は、前記硬化性樹脂フィルムを用いて第1保護膜を形成するのに、特に有利である。
【0064】
突状電極91の高さH91は特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。突状電極91の高さH91が前記下限値以上であることで、突状電極91の機能をより向上させることができる。突状電極91の高さH91が前記上限値以下であることで、ワーク90の突状電極形成面(すなわち、突状電極91の表面91aと、ワーク90の回路面90a)への熱硬化性樹脂フィルムの貼付時に、突状電極91の頭頂部910を含む上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存を抑制する効果がより高くなり、その結果、突状電極91の上部における第1保護膜12’の形成を抑制する効果がより高くなる。
なお、本明細書において、「突状電極の高さ」とは、突状電極のうち、ワーク又はワーク加工物の回路面から最も高い位置に存在する部位(すなわち頭頂部)での高さを意味する。
【0065】
突状電極91の幅W91は特に限定されないが、50~600μmであることが好ましい。突状電極91の幅W91が前記下限値以上であることで、突状電極91の機能をより向上させることができる。突状電極91の幅W91が前記上限値以下であることで、ワーク90の突状電極形成面(すなわち、突状電極91の表面91aと、ワーク90の回路面90a)への熱硬化性樹脂フィルムの貼付時に、突状電極91の頭頂部910を含む上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存を抑制する効果がより高くなり、その結果、突状電極91の上部における第1保護膜12’の形成を抑制する効果がより高くなる。
なお、本明細書において、「突状電極の幅」とは、ワーク又はワーク加工物の回路面に対して垂直な方向から突状電極を見下ろして平面視したときに、突状電極表面上の異なる2点間を直線で結んで得られる線分の最大値を意味する。
【0066】
隣り合う突状電極91間の距離D91は、特に限定されないが、100~800μmであることが好ましい。突状電極91間の距離D91が前記下限値以上であることで、ワーク90の突状電極形成面(すなわち、突状電極91の表面91aと、ワーク90の回路面90a)への熱硬化性樹脂フィルムの貼付時に、突状電極91の頭頂部910を含む上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存を抑制する効果がより高くなり、その結果、突状電極91の上部における第1保護膜12’の形成を抑制する効果がより高くなる。突状電極91間の距離D91が前記上限値以下であることで、突状電極91の配置形態の自由度がより高くなる。
なお、本明細書において、「隣り合う突状電極間の距離」とは、隣り合う突状電極同士の表面間の距離の最小値を意味する。
【0067】
ワーク90の突状電極91を除いた部位の厚さT90は、ワーク90の使用目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、ワーク90の裏面90bを研削した後の前記厚さT90は、50~500μmであることが好ましい。裏面90bを研削した後のワーク90の厚さT90が、前記下限値以上であることで、ワーク90の分割(換言すると、ワーク加工物への個片化)時に、ワーク加工物の破損を抑制する効果がより高くなる。裏面90bを研削した後のワーク90の厚さT90が、前記上限値以下であることで、薄型のワーク加工物が得られる。
ワーク90の裏面90bを研削する前の前記厚さT90は、250~1500μmであることが好ましい。
【0068】
本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムの使用対象であるワークは、図1に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
【0069】
例えば、図1では、突状電極として上記のようなほぼ球状の形状(球の一部が平面によって切り取られた形状)のものを示しているが、このようなほぼ球状の形状を、高さ方向(図1においては、ワーク90の回路面90aに対して直交する方向)に引き伸ばしてなる形状、すなわち、ほぼ長球である回転楕円体の形状(換言すると、長球である回転楕円体の長軸方向の一端を含む部位が平面によって切り取られた形状)の突状電極や、上記のようなほぼ球状の形状を、高さ方向に押し潰してなる形状、すなわち、ほぼ扁球である回転楕円体の形状(換言すると、扁球である回転楕円体の短軸方向の一端を含む部位が平面によって切り取られた形状)の突状電極も、好ましい形状の突状電極として挙げられる。このような、ほぼ回転楕円体の形状の突状電極も、上記のほぼ球状の突状電極と同様に、本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムを用いて第1保護膜を形成するのに、特に有利である。
突状電極としては、これら以外にも、例えば、円柱状、楕円柱状、角柱状、楕円錐状、角錐状、円錐台状、楕円錐台状又は角錐台状、であるもの;円柱、楕円柱、角柱、円錐台、楕円錐台又は角錐台と、上述のほぼ球又はほぼ回転楕円体と、が組み合わされた形状を有するものも挙げられる。
なお、ここまでで説明した突状電極の形状は、本実施形態の熱硬化性樹脂フィルムの適用に際して、好ましいものの一例に過ぎず、本発明において、突状電極の形状はこれらに限定されない。
以下、本発明の構成について、詳細に説明する。
【0070】
◎第1支持シート
前記第1支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、第1支持シートの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0071】
好ましい第1支持シートとしては、例えば、第1基材と、前記第1基材上に設けられた第1粘着剤層と、を備えたもの(換言すると、第1基材及び第1粘着剤層が、これらの厚さ方向において積層されてなるもの)、第1基材と、前記第1基材上に設けられた第1中間層と、前記第1中間層上に設けられた第1粘着剤層と、を備えたもの(換言すると、第1基材、第1中間層及び第1粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなるもの)、第1基材のみからなるもの、等が挙げられる。
【0072】
本実施形態の第1保護膜形成用シートの例を、このような第1支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
【0073】
図2は、本実施形態の第1保護膜形成用シートの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す第1保護膜形成用シート1は、第1支持シートとして、第1基材及び第1粘着剤層が、これらの厚さ方向において積層されてなるものを用いている。すなわち、第1保護膜形成用シート1は、第1基材11と、第1基材11の一方の面上に設けられた第1粘着剤層13と、第1粘着剤層13の第1基材11側とは反対側の面13a上に設けられた熱硬化性樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム)12と、を備えて、構成されている。
第1支持シート101は、第1基材11及び第1粘着剤層13の積層体である。そして、第1保護膜形成用シート1は、第1支持シート101と、第1支持シート101の一方の面101a上、換言すると第1粘着剤層13の一方の面13a上、に設けられた熱硬化性樹脂層12と、を備えたものであるといえる。
【0074】
第1保護膜形成用シート1中の、厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂層12、又は、厚さが200μm未満である熱硬化性樹脂層12が2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率は、50%以上である。また、第1保護膜形成用シート1中の熱硬化性樹脂層12において、上述の熱硬化性成分の含有量の割合は40質量%以上であってよい。
【0075】
図3は、本実施形態の第1保護膜形成用シートの他の例を模式的に示す断面図である。
なお、図3以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0076】
ここに示す第1保護膜形成用シート2は、第1支持シートとして、第1基材、第1中間層及び第1粘着剤層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなるものを用いている。すなわち、第1保護膜形成用シート2は、第1基材11と、第1基材11の一方の面上に設けられた第1中間層14と、第1中間層14の第1基材11側とは反対側の面上に設けられた第1粘着剤層13と、第1粘着剤層13の第1中間層14側とは反対側の面13a上に設けられた熱硬化性樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム)12と、を備えて、構成されている。
第1支持シート102は、第1基材11、第1中間層14及び第1粘着剤層13の積層体である。そして、第1保護膜形成用シート2は、第1支持シート102を備え、第1支持シート102の一方の面102a上、換言すると第1粘着剤層13の一方の面13a上に、熱硬化性樹脂層12を備えているといえる。
【0077】
第1保護膜形成用シート2は、換言すると、図2に示す第1保護膜形成用シート1において、第1基材11と第1粘着剤層13との間に、さらに第1中間層14を備えたものである。
【0078】
第1保護膜形成用シート2中の、厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂層12、又は、厚さが200μm未満である熱硬化性樹脂層12が2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率は、50%以上である。また、第1保護膜形成用シート2中の熱硬化性樹脂層12において、上述の熱硬化性成分の含有量の割合は40質量%以上であってよい。
【0079】
図4は、本実施形態の第1保護膜形成用シートのさらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す第1保護膜形成用シート3は、第1支持シートとして、第1基材のみからなるものを用いている。すなわち、第1保護膜形成用シート3は、第1基材11と、第1基材11上に設けられた熱硬化性樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム)12と、を備えて、構成されている。
第1支持シート103は、第1基材11のみで構成されている。そして、第1保護膜形成用シート3は、第1支持シート103を備え、第1支持シート103の一方の面103a上、換言すると第1基材11の一方の面11a上に、熱硬化性樹脂層12を備えているといえる。
【0080】
第1保護膜形成用シート3は、換言すると、図2に示す第1保護膜形成用シート1において、第1粘着剤層13が省略されたものである。
【0081】
第1保護膜形成用シート3中の、厚さが200μmである1層の熱硬化性樹脂層12、又は、厚さが200μm未満である熱硬化性樹脂層12が2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率は、50%以上である。また、第1保護膜形成用シート3中の熱硬化性樹脂層12において、上述の熱硬化性成分の含有量の割合は40質量%以上であってよい。
【0082】
次に、第1支持シートの構成について説明する。
本実施形態において、第1支持シートとしては、公知のものを用いてもよく、目的に応じて適宜、第1支持シートを選択できる。
【0083】
○第1基材
前記第1基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
【0084】
第1基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
第1基材は1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0086】
第1基材の厚さは、50~200μmであることが好ましい。
ここで、「第1基材の厚さ」とは、第1基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1基材の厚さとは、第1基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0087】
第1基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0088】
第1基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
後述する第1粘着剤層又は熱硬化性樹脂層がエネルギー線硬化性を有する場合、第1基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0089】
第1基材は、例えば、実施例で後述するような、樹脂製フィルムの片面がシリコーン処理等によって剥離処理されてなる剥離フィルムであってもよい。
【0090】
第1基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する第1基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0091】
○第1粘着剤層
前記第1粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
【0092】
なお、本発明において、「粘着性樹脂」とは、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方を含む概念であり、例えば、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含む。
【0093】
第1粘着剤層は1層(単層)のみであってもよいし、2層以上の複数層であってもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0094】
第1粘着剤層の厚さは、3~40μmであることが好ましい。
ここで、「第1粘着剤層の厚さ」とは、第1粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1粘着剤層の厚さとは、第1粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0095】
第1粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよいし、非エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤を用いて形成された第1粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本発明において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0096】
<第1粘着剤組成物>
第1粘着剤層は、粘着剤を含有する第1粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、第1粘着剤層の形成対象面に第1粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に第1粘着剤層を形成できる。第1粘着剤層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。
【0097】
第1粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0098】
第1粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、第1粘着剤組成物は、溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する第1粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させてもよい。
【0099】
第1粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性粘着剤を含有する第1粘着剤組成物、すなわち、エネルギー線硬化性の第1粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する第1粘着剤組成物(I-1);前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する第1粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性低分子化合物と、を含有する第1粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0100】
<第1粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の第1粘着剤組成物>
第1粘着剤組成物(I-1)、第1粘着剤組成物(I-2)又は第1粘着剤組成物(I-3)の含有成分は、これら3種の第1粘着剤組成物以外の全般的な第1粘着剤組成物(本明細書においては、「第1粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の第1粘着剤組成物」と称する)でも、同様に用いることができる。
【0101】
第1粘着剤組成物(I-1)~(I-3)以外の第1粘着剤組成物としては、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物以外に、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物も挙げられる。
非エネルギー線硬化性の第1粘着剤組成物としては、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)を含有する第1粘着剤組成物(I-4)が挙げられる。
第1粘着剤組成物(I-4)は、前記粘着性樹脂(I-1a)としてアクリル樹脂を含有するものが好ましく、さらに、1種又は2種以上の架橋剤を含有するものがより好ましい。
【0102】
<第1粘着剤組成物の製造方法>
第1粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の前記第1粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、第1粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0103】
○第1中間層
前記第1中間層は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料は目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
例えば、突状電極形成面に設けられている第1保護膜に、前記回路面上に存在する突状電極の形状が反映されることによって、第1保護膜が変形してしまうことの抑制を目的とする場合、前記第1中間層の好ましい構成材料としては、第1中間層の貼付性がより向上する点から、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0104】
第1中間層は1層(単層)のみであってもよいし、2層以上の複数層であってもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0105】
第1中間層の厚さは、保護対象となるワーク又はワーク加工物の表面に存在する突状電極の高さに応じて適宜調節できる。例えば、比較的高さが高い突状電極の影響も容易に吸収できる点では、第1中間層の厚さは、50~600μmであることが好ましい。
ここで、「第1中間層の厚さ」とは、第1中間層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる第1中間層の厚さとは、第1中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0106】
<<第1中間層形成用組成物>>
第1中間層は、その構成材料を含有する第1中間層形成用組成物を用いて形成できる。例えば、第1中間層の形成対象面に第1中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させたり、エネルギー線の照射によって硬化させることで、目的とする部位に第1中間層を形成できる。第1中間層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。
【0107】
第1中間層形成用組成物は、例えば、第1粘着剤組成物の場合と同じ方法で塗工できる。
【0108】
第1中間層形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されず、例えば、第1粘着剤組成物の乾燥条件と同様であってよい。
第1中間層形成用組成物は、エネルギー線硬化性を有する場合、乾燥後に、さらにエネルギー線の照射により硬化させてもよい。
【0109】
<第1中間層形成用組成物の製造方法>
第1中間層形成用組成物は、例えば、配合成分が異なる点以外は、前記第1粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0110】
◎熱硬化性樹脂フィルム(熱硬化性樹脂層)
前記熱硬化性樹脂フィルム(熱硬化性樹脂層)は、ワーク及びワーク加工物の回路面、並びにこの回路面上に設けられた突状電極を保護するためのフィルム(層)である。
前記熱硬化性樹脂フィルムは、熱硬化によって第1保護膜を形成する。
【0111】
なお、本明細書においては、熱硬化性樹脂フィルムが硬化した後(換言すると、第1保護膜を形成した後)であっても、第1支持シート及び熱硬化性樹脂フィルムの硬化物(換言すると、第1支持シート及び第1保護膜)の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「第1保護膜形成用シート」と称する。
【0112】
前記熱硬化性樹脂フィルムは、熱硬化性の特性以外に、エネルギー線硬化性の特性を有していてもよいし、有していなくてもよい。
ただし、熱硬化性樹脂フィルムがエネルギー線硬化性の特性を有する場合、熱硬化性樹脂フィルムからの第1保護膜の形成に対しては、熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きいものとする。
【0113】
前記熱硬化性樹脂フィルムは、エネルギー線硬化性の有無によらず、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。熱硬化性樹脂フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0114】
熱硬化性樹脂フィルムの厚さは、エネルギー線硬化性の有無によらず、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましい。熱硬化性樹脂フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い第1保護膜を形成できる。熱硬化性樹脂フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、ワークの突状電極形成面への熱硬化性樹脂フィルムの貼付時に、突状電極の上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存を抑制する効果がより高くなる。さらに、熱硬化性樹脂フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、ワークの分割時に、第1保護膜をより良好に切断できる。
ここで、「熱硬化性樹脂フィルムの厚さ」とは、熱硬化性樹脂フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる熱硬化性樹脂フィルムの厚さとは、熱硬化性樹脂フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0115】
<<熱硬化性樹脂層形成用組成物>>
熱硬化性樹脂フィルムは、その構成材料を含有する熱硬化性樹脂層形成用組成物を用いて形成できる。例えば、熱硬化性樹脂フィルムは、その形成対象面に熱硬化性樹脂層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。熱硬化性樹脂層形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、熱硬化性樹脂フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0116】
熱硬化性樹脂層形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0117】
熱硬化性樹脂層形成用組成物の乾燥条件は、熱硬化性樹脂フィルムのエネルギー線硬化性の有無によらず、特に限定されない。ただし、熱硬化性樹脂層形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する熱硬化性樹脂層形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させてもよい。ただし、熱硬化性樹脂層形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性樹脂フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0118】
熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて、第1保護膜を形成するときの硬化条件は、第1保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性樹脂フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~170℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~4時間であることがより好ましく、1~3時間であることが特に好ましい。
【0119】
好ましい熱硬化性樹脂フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0120】
<熱硬化性樹脂層形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性樹脂層形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性樹脂層形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0121】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性樹脂フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。重合体成分(A)は、熱可塑性を有し、熱硬化性を有しない。
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0122】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、重合体成分(A)は、ポリビニルアセタール又はアクリル樹脂であることが好ましい。
【0123】
重合体成分(A)における前記ポリビニルアセタールとしては、公知のものが挙げられる。
なかでも、好ましいポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等が挙げられ、ポリビニルブチラールがより好ましい。
ポリビニルブチラールとしては、下記式(i)-1、(i)-2及び(i)-3で表される構成単位を有するものが挙げられる。
【0124】
【化1】
(式中、l、m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。)
【0125】
ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、5000~200000であることが好ましく、8000~100000であることがより好ましい。ポリビニルアセタールの重量平均分子量がこのような範囲であることで、熱硬化性樹脂フィルムを前記突状電極形成面に貼付したときに、突状電極の上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存を抑制する効果がより高くなる。
【0126】
ポリビニルアセタールのガラス転移温度(Tg)は、40~80℃であることが好ましく、50~70℃であることがより好ましい。ポリビニルアセタールのTgがこのような範囲であることで、熱硬化性樹脂フィルムを前記突状電極形成面に貼付したときに、突状電極の上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存を抑制する効果がより高くなる。
【0127】
ポリビニルアセタールを構成する3種以上のモノマーの比率は任意に選択できる。
【0128】
重合体成分(A)におけるアクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸又はその誘導体から誘導された構成単位を有する樹脂を意味する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
また、本明細書において、ある特定の化合物の「誘導体」とは、その化合物の1個以上の水素原子が水素原子以外の基(置換基)で置換された構造を有するものを意味する。例えば、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸の誘導体である。
【0129】
重合体成分(A)における前記アクリル樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0130】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-60~70℃であることが好ましく、-30~50℃であることがより好ましい。アクリル樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、熱硬化性樹脂フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。アクリル樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0131】
アクリル樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0132】
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0133】
アクリル樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものであってもよい。
【0134】
アクリル樹脂を構成するモノマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0135】
アクリル樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、第1保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0136】
本発明においては、例えば、重合体成分(A)として、ポリビニルアセタール及びアクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、ポリビニルアセタール及びアクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、ポリビニルアセタール又はアクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、第1保護膜の第1支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性樹脂フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性樹脂フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0137】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0138】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
【0139】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0140】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0141】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合)は、例えば、重合体成分(A)の種類によらず、5~60質量%、5~45質量%、5~30質量%、及び5~15質量%のいずれかであってもよい。
【0142】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0143】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性を有し、熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて、硬質の第1保護膜を形成するための成分である。
また、熱硬化性樹脂フィルムにおいて、上述の含有量の割合を規定する「熱硬化性成分」と、前記X値の算出対象である「熱硬化性成分」と、の両方に、熱硬化性成分(B)は該当する。
【0144】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0145】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、熱硬化性成分(B)は、エポキシ系熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0146】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
熱硬化性樹脂フィルムにおいて、上述の含有量の割合を規定する「熱硬化性成分」と、前記X値の算出対象である「熱硬化性成分」と、の両方に、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)はともに該当する。
【0147】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0148】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0149】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、第1保護膜形成用シートを用いて得られた第1保護膜付きワーク加工物の信頼性が向上する。
【0150】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0151】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂フィルムの硬化性、並びに硬化後の樹脂膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
【0152】
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~970g/eqであることがより好ましい。
【0153】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0154】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0155】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0156】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0157】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、第1保護膜の第1支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0158】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0159】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0160】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、例えば、0.1~500質量部、1~250質量部、1~150質量部、1~100質量部、1~75質量部、及び1~50質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性樹脂フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルムの吸湿率が低減されて、第1保護膜形成用シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0161】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、例えば、300~1400質量部、400~1300質量部、500~1100質量部、600~1000質量部、及び700~900質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、第1保護膜と第1支持シートとの接着力が抑制されて、第1支持シートの剥離性が向上する。
【0162】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0163】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0164】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部、及び0.1~7質量部のいずれかであってもよい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性樹脂フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、第1保護膜形成用シートを用いて得られた第1保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。
【0165】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性樹脂フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性樹脂フィルムを硬化して得られた第1保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となる。そして、この熱膨張係数を第1保護膜の形成対象物に対して最適化することで、第1保護膜形成用シートを用いて得られた第1保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。また、熱硬化性樹脂フィルムが充填材(D)を含有することにより、第1保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0166】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0167】
充填材(D)の平均粒子径は、目的に応じて適宜選択すればよく、特に限定されず、例えば、0.02~2μmであってもよい。
なお、本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
【0168】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0169】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合)は、例えば、3~60質量%、4~40質量%、5~30質量%、5~20質量%、及び5~15質量%のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、第1保護膜の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0170】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性樹脂フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性樹脂フィルムの硬化物は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0171】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0172】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0173】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、例えば、0.03~20質量部、0.05~10質量部、及び0.1~5質量部のいずれかであってもよい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性樹脂フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0174】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性樹脂フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0175】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0176】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物と、の反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、ウレタン結合を有するとともに、分子の末端部にイソシアネート基を有するプレポリマーを意味する。
【0177】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート;2,6-トリレンジイソシアネート;1,3-キシリレンジイソシアネート;1,4-キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート;3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0178】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0179】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、熱硬化性樹脂フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0180】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0181】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、例えば、0.01~20質量部、0.1~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0182】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性樹脂フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0183】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0184】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0185】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0186】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0187】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0188】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、例えば、1~95質量%、5~90質量%、及び10~85質量%のいずれかであってもよい。
【0189】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0190】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;2-クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1-クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0191】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0192】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、例えば、0.1~20質量部、1~10質量部、及び2~5質量部のいずれかであってもよい。
【0193】
[着色剤(I)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、着色剤(I)を含有していてもよい。
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0194】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0195】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0196】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0197】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性樹脂フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合)は、0.1~5質量%であってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。前記割合が前記上限値以下であることで、熱硬化性樹脂フィルムの光透過性の過度な低下が抑制される。
【0198】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0199】
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及び熱硬化性樹脂フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0200】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0201】
組成物(III-1)が含有する溶媒は、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0202】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0203】
本実施形態の好ましい熱硬化性樹脂フィルムの一例としては、ワークの突状電極を有する面に貼付し、熱硬化させることによって、前記面に第1保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムであって、
厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムが、重合体成分(A)と、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)と、充填材(D)と、を含有し、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量の割合が、40質量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記重合体成分(A)の含有量の割合が、5~30質量%であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、5~20質量%である、熱硬化性樹脂フィルムが挙げられる。
【0204】
本実施形態の好ましい熱硬化性樹脂フィルムの他の例としては、ワークの突状電極を有する面に貼付し、熱硬化させることによって、前記面に第1保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムであって、
厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムは、重合体成分(A)と、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、2種以上の熱硬化性成分と、充填材(D)と、を含有し、
前記熱硬化性成分が、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、全種類の前記熱硬化性成分の合計含有量(換言すると、前記エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)の割合が、40質量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記重合体成分(A)の含有量の割合が、5~30質量%であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、5~20質量%であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記熱硬化性成分について、その種類ごとに、下記式:
X=[熱硬化性成分の熱硬化反応に関わる官能基の当量(g/eq)]×[熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分の含有量(質量部)]/[熱硬化性樹脂フィルムの全種類の熱硬化性成分の合計含有量(質量部)]
で算出されるX値を求め、前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する全種類の前記熱硬化性成分における前記X値の合計値を求めたとき、前記合計値が400g/eq以下となる、熱硬化性樹脂フィルムが挙げられる。
【0205】
本実施形態の好ましい熱硬化性樹脂フィルムの他の例としては、ワークの突状電極を有する面に貼付し、熱硬化させることによって、前記面に第1保護膜を形成するための熱硬化性樹脂フィルムであって、
厚さが200μmである1層の前記熱硬化性樹脂フィルム、又は、厚さが200μm未満である前記熱硬化性樹脂フィルムが2層以上積層されて構成された、合計の厚さが200μmである積層フィルム、の波長1342nmの光の透過率が、50%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムは、重合体成分(A)と、エポキシ基を有するアクリル樹脂以外の、2種以上の熱硬化性成分と、充填材(D)と、を含有し、
前記熱硬化性成分が、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、全種類の前記熱硬化性成分の合計含有量(換言すると、前記エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)の割合が、40質量%以上であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記重合体成分(A)の含有量の割合が、5~30質量%であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムにおける、前記熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、5~20質量%であり、
前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する前記熱硬化性成分について、その種類ごとに、下記式:
X=[熱硬化性成分の熱硬化反応に関わる官能基の当量(g/eq)]×[熱硬化性樹脂フィルムの熱硬化性成分の含有量(質量部)]/[熱硬化性樹脂フィルムの全種類の熱硬化性成分の合計含有量(質量部)]
で算出されるX値を求め、前記熱硬化性樹脂フィルムが含有する全種類の前記熱硬化性成分における前記X値の合計値を求めたとき、前記合計値が400g/eq以下となり、
前記熱硬化性樹脂フィルムを130℃で2時間加熱することにより、熱硬化させて得られた、大きさが20mm×130mmであり、厚さが40μmである第1保護膜を用い、つかみ器具間距離を80mmとし、引張り速度を200mm/minとして、前記つかみ器具により前記第1保護膜をその表面に対して平行な方向において引っ張ったときの、前記第1保護膜の破断強度が、55MPa以下である、熱硬化性樹脂フィルムが挙げられる。
【0206】
<<熱硬化性樹脂層形成用組成物の製造方法>>
組成物(III-1)等の熱硬化性樹脂層形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0207】
◇第1保護膜形成用シートの製造方法
前記第1保護膜形成用シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、第1支持シートを製造するときに、第1基材上に第1粘着剤層又は第1中間層を積層する場合には、第1基材上に上述の第1粘着剤組成物又は第1中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させるか、又はエネルギー線を照射することで、第1粘着剤層又は第1中間層を積層できる。
【0208】
一方、例えば、第1基材上に積層済みの第1粘着剤層の上に、さらに熱硬化性樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム)を積層する場合には、第1粘着剤層上に、熱硬化性樹脂層形成用組成物を塗工して、熱硬化性樹脂層を直接形成することが可能である。同様に、第1基材上に積層済みの第1中間層の上に、さらに第1粘着剤層を積層する場合には、第1中間層上に第1粘着剤組成物を塗工して、第1粘着剤層を直接形成することが可能である。このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに別の組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0209】
例えば、第1基材上に第1粘着剤層が積層され、前記第1粘着剤層上に熱硬化性樹脂層が積層されてなる第1保護膜形成用シート(第1支持シートが第1基材及び第1粘着剤層の積層物である第1保護膜形成用シート)を製造する場合には、第1基材上に第1粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、第1基材上に第1粘着剤層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に熱硬化性樹脂層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に熱硬化性樹脂層を形成しておき、この熱硬化性樹脂層の露出面を、第1基材上に積層済みの第1粘着剤層の露出面と貼り合わせて、熱硬化性樹脂層を第1粘着剤層上に積層することで、第1保護膜形成用シートが得られる。
また、例えば、第1基材上に第1中間層が積層され、前記第1中間層上に第1粘着剤層が積層されてなる第1支持シートを製造する場合には、第1基材上に第1中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させるか、又はエネルギー線を照射することで、第1基材上に第1中間層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に第1粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に第1粘着剤層を形成しておき、この第1粘着剤層の露出面を、第1基材上に積層済みの第1中間層の露出面と貼り合わせて、第1粘着剤層を第1中間層上に積層することで、第1支持シートが得られる。この場合、例えば、さらに別途、剥離フィルム上に熱硬化性樹脂層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に硬化性樹脂層を形成しておき、この硬化性樹脂層の露出面を、第1中間層上に積層済みの第1粘着剤層の露出面と貼り合わせて、熱硬化性樹脂層を第1粘着剤層上に積層することで、第1保護膜形成用シートが得られる。
【0210】
なお、第1基材上に第1粘着剤層又は第1中間層を積層する場合には、上述の様に、第1基材上に第1粘着剤組成物又は第1中間層形成用組成物を塗工する方法に代えて、剥離フィルム上に第1粘着剤組成物又は第1中間層形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させるか、又はエネルギー線を照射することで、剥離フィルム上に第1粘着剤層又は第1中間層を形成しておき、これら層の露出面を、第1基材の一方の表面と貼り合わせることで、第1粘着剤層又は第1中間層を第1基材上に積層してもよい。
いずれの方法においても、剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
【0211】
このように、第1保護膜形成用シートを構成する第1基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、第1保護膜形成用シートを製造すればよい。
【0212】
なお、第1保護膜形成用シートは、通常、その第1支持シートとは反対側の最表層(例えば、熱硬化性樹脂層)の面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、熱硬化性樹脂層形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、第1保護膜形成用シートが得られる。
【0213】
第1支持シートとしては、市販品を用いてもよい。
【0214】
◇第1保護膜付きワーク加工物の製造方法
本発明の一実施形態に係る熱硬化性樹脂フィルム又は第1保護膜形成用シートを用いた場合の、第1保護膜付きワーク加工物の製造方法は、ワークの突状電極を有する面(すなわち突状電極形成面)に、熱硬化性樹脂フィルムを貼付する工程(本明細書においては、「貼付工程」と略記することがある)と、貼付後の前記熱硬化性樹脂フィルムを熱硬化させて、第1保護膜を形成する工程(本明細書においては、「第1保護膜形成工程」と略記することがある)と、前記ワークに対して、その前記第1保護膜を備えている側から、前記第1保護膜を介してレーザー光を照射することにより、前記ワークの内部に改質層を形成する工程(本明細書においては、「改質層形成工程」と略記することがある)と、前記改質層を形成後の前記ワークを、その回路面に対して平行な方向に、前記第1保護膜とともにエキスパンドすることにより、前記改質層の部位において前記ワークを分割し、ワーク加工物を得る工程(本明細書においては、「分割工程」と略記することがある)と、を有する。
以下、図面を参照しながら、前記製造方法について詳細に説明する。
【0215】
図5A図5C、及び図6A図6Cは、前記ワーク加工物の製造方法を、模式的に説明するための拡大断面図である。ここでは、図2に示す第1保護膜形成用シート1を用いた場合の製造方法について、説明する。
【0216】
<<貼付工程>>
前記貼付工程においては、図5Aに示すように、ワーク90の突状電極形成面(すなわち、突状電極91の表面91aとワーク90の回路面90a)に、熱硬化性樹脂フィルム12を貼付する。本工程を行うことにより、熱硬化性樹脂フィルム12が、多数個存在する突状電極91間に広がって、突状電極形成面に密着するとともに、突状電極91の表面91a、特にワーク90の回路面90aの近傍部位の表面91aを覆って、突状電極91を埋め込み、これらの領域を被覆している状態とすることができる。さらに、熱硬化性樹脂フィルム12において、上述の熱硬化性成分の含有量の割合を調節した場合、本工程を行うことにより、突状電極91の頭頂部910を含む上部は、熱硬化性樹脂フィルム12を貫通して、熱硬化性樹脂フィルム12から突出する。
【0217】
貼付工程においては、例えば、熱硬化性樹脂フィルム12を単独で用いてもよいが、ここに示すように、第1支持シート101と、第1支持シート101上に設けられた熱硬化性樹脂フィルム12と、を備えて構成された、第1保護膜形成用シート1を用いることが好ましい。後述するように、ワーク90の裏面90bを研削する場合には、第1支持シート101として、バックグラインド用表面保護テープを用いることができる。
【0218】
貼付工程において、ここに示すような第1保護膜形成用シート1を用いる場合には、第1保護膜形成用シート1中の熱硬化性樹脂フィルム12をワーク90の突状電極形成面に貼付することにより、第1保護膜形成用シート1自体を、ワーク90の突状電極形成面に貼付すればよい。
【0219】
なお、本明細書においては、ここに示すような、ワークの突状電極形成面に、第1保護膜形成用シートが貼付されて構成されたものを、「第1積層構造体」と称することがある。図5Aにおいては、第1積層構造体201として、ワーク90の突状電極形成面に、第1保護膜形成用シート1が貼付されて構成されたものを示している。
【0220】
貼付工程においては、熱硬化性樹脂フィルム12のうち、ワーク90に対向している側の露出面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aを、ワーク90の突状電極形成面(すなわち、突状電極91の表面91aとワーク90の回路面90a)に圧着させることで、熱硬化性樹脂フィルム12を突状電極形成面に貼付できる。
【0221】
貼付工程においては、熱硬化性樹脂フィルム12を加熱しながら突状電極形成面に貼付することが好ましい。このようにすることで、熱硬化性樹脂フィルム12と突状電極形成面との間、すなわち、熱硬化性樹脂フィルム12と、ワーク90の回路面90aと、の間、並びに、熱硬化性樹脂フィルム12と、突状電極91の表面91aと、の間、のいずれにおいても、空隙部の発生をより抑制できる。また、突状電極91の頭頂部910を含む上部において、熱硬化性樹脂フィルム12の残存をより抑制でき、最終的にこの上部において、第1保護膜の残存をより抑制できる。
【0222】
貼付時の熱硬化性樹脂フィルム12の加熱温度は、過度な高温でなければよく、例えば、60~100℃であることが好ましい。ここで、「過度な高温」とは、例えば、熱硬化性樹脂フィルム12の熱硬化が進行するなど、熱硬化性樹脂フィルム12に目的外の作用が発現してしまう温度を意味する。
【0223】
熱硬化性樹脂フィルム12を突状電極形成面に貼付するときに、熱硬化性樹脂フィルム12に加える圧力(本明細書においては、「貼付圧力」と称することがある)は、0.3~1MPaであることが好ましい。
【0224】
貼付工程により、第1積層構造体201を形成した後は、この第1積層構造体201をそのまま次工程で用いてもよいが、必要に応じて、ワーク90の裏面90bを研削することにより、ワーク90の厚さを調節してもよい。ワーク90の裏面90bを研削した後の第1積層構造体201も、ワーク90の厚さが異なる点を除けば、図5Aに示す状態となる。
【0225】
ワーク90の裏面90bの研削は、グラインダーを用いる方法等、公知の方法で行うことができる。
【0226】
ワーク90の裏面90bを研削する前、及び研削した後の、ワーク90の突状電極91を除いた部位の厚さは、先に説明したとおりである。
【0227】
貼付工程により、第1積層構造体201を形成した後は、第1積層構造体201中の熱硬化性樹脂フィルム12から、第1支持シート101を取り除く。ワーク90の裏面90bを研削した場合には、この研削後に、第1支持シート101を取り除くことが好ましい。
このような工程を行うことで、図5Bに示すように、ワーク90の突状電極形成面に、熱硬化性樹脂フィルム12を備えており、第1支持シート101を備えずに構成された、第2積層構造体(換言すると、熱硬化性樹脂フィルム付きワーク)202が得られる。
第2積層構造体202においては、突状電極91の頭頂部910を含む上部は、熱硬化性樹脂フィルム12を貫通して、突出し、露出している。
【0228】
第1粘着剤層13がエネルギー線硬化性である場合には、エネルギー線の照射により、第1粘着剤層13を硬化させて、第1粘着剤層13の粘着性を低下させた後に、熱硬化性樹脂フィルム12から第1支持シート101を取り除くことが好ましい。
【0229】
<<第1保護膜形成工程>>
前記第1保護膜形成工程においては、貼付後の熱硬化性樹脂フィルム12を熱硬化させて、図5Cに示すように、第1保護膜12’を形成する。
第1積層構造体201を形成した場合には、第1保護膜形成工程は、第1支持シート101を取り除いた後に行うことができる。
また、ワーク90の裏面90bを研削した場合には、第1保護膜形成工程は、前記裏面90bの研削後に行うことができる。
本工程を行うことにより、ワーク90の突状電極形成面に、第1保護膜12’を備えて構成された、第3積層構造体(換言すると、第1保護膜付きワーク)203が得られる。図5C中、符号12a’は、第1保護膜12’のワーク90との接触面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)を示す。
【0230】
熱硬化性樹脂フィルム12の硬化条件は、第1保護膜12’が十分にその機能を発揮できる程度の硬化度となる限り特に限定されず、熱硬化性樹脂フィルム12の種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性樹脂フィルム12の熱硬化時における、加熱温度及び加熱時間は、先に説明したとおりである。
熱硬化性樹脂フィルム12の熱硬化時においては、硬化性樹脂フィルム12を加圧してもよく、その場合の加圧圧力は0.3~1MPaであることが好ましい。
【0231】
図5Bに示す第2積層構造体(熱硬化性樹脂フィルム付きワーク)202においては、突状電極91の頭頂部910を含む上部において、熱硬化性樹脂フィルム12の残存が抑制されている。そのため、本工程の終了後、突状電極91の前記上部においては、第1保護膜12’の残存も抑制される。
【0232】
<<改質層形成工程>>
前記改質層形成工程においては、図6Aに示すように、ワーク90に対して、その第1保護膜12’を備えている側から、第1保護膜12’を介してレーザー光Rを照射することにより、ワーク90の内部に改質層900を形成する。
改質層形成工程後は、後述するワーク90の分割(すなわち、ダイシング)を行うため、改質層形成工程は、第3積層構造体(第1保護膜付きワーク)203中の、ワーク90の裏面90bに、ダイシングシート又は第2保護膜形成用シートを貼付してから行うことが好ましい。
【0233】
なお、本明細書においては、このように、ワークの突状電極形成面に第1保護膜を備え、ワークの裏面にダイシングシート又は第2保護膜形成用シートを備えて構成されたものを、「第4積層構造体」と称することがある。
さらに、第4積層構造体中のワークの内部に改質層が形成された構成を有するものを、「第5積層構造体」と称することがある。
図6Aにおいては、第5積層構造体205として、ワーク90の突状電極形成面に第1保護膜12’を備え、ワーク90の裏面90bに第2保護膜形成用シート8を備え、ワーク90の内部に改質層900が形成されて構成されたものを示している。
【0234】
ここに示す第2保護膜形成用シート8は、第2基材81と、第2基材81上に設けられた第2粘着剤層83と、第2粘着剤層83上に設けられた樹脂層(樹脂フィルム)82と、を備えて、構成されている。
第2基材81及び第2粘着剤層83の積層体は、第2支持シート801である。
したがって、第2保護膜形成用シート8は、第2支持シート801と、第2支持シート801の一方の面801a上、換言すると第2粘着剤層83の一方の面83a上、に設けられた樹脂層(樹脂フィルム)82と、を備えたものであるといえる。
【0235】
樹脂層(樹脂フィルム)82は、ワーク90の裏面90bに、第2保護膜を形成するためのものである。第2保護膜は、ワーク90の裏面90bを被覆して保護する。より具体的には、第2保護膜は、ワークの分割時や、ワークの分割によって得られたワーク加工物を、パッケージングして目的とする基板装置を製造するまでの間に、ワーク加工物においてクラックが発生するのを防止する。
【0236】
樹脂層82は、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれか一方のみの特性を有していてもよいし、両方の特性を有していてもよいし、両方の特性を有していなくてもよい。樹脂層82が硬化性である(すなわち、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の少なくとも一方の特性を有する)場合には、その硬化物が第2保護膜である。樹脂層82が非硬化性である(すなわち、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有しない)場合には、樹脂層82がワーク90の裏面90bに貼付された段階で、第2保護膜が設けられたとみなす。
【0237】
第2粘着剤層83は、第1粘着剤層13と同様に、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性である第2粘着剤層83は、その硬化前及び硬化後での物性を、容易に調節できる。
【0238】
第2基材81は、例えば、先に説明した第1保護膜形成用シート中の第1基材(例えば、第1保護膜形成用シート1中の第1基材11)と同様のものであってよい。
【0239】
前記製造方法においては、第2保護膜形成用シートとして、第2保護膜形成用シート8以外のものを用いてもよい。
前記製造方法においては、第2保護膜形成用シート8に限らず、第2保護膜形成用シートとして、公知のものを用いることができる。
同様に、前記製造方法においては、ダイシングシートとして、公知のものを用いることができる。
【0240】
改質層形成工程においては、ワーク90の内部のうち、ワーク90の分割箇所となる特定の領域に焦点を設定し、この焦点に集束するように、レーザー光Rを照射する。このレーザー光Rの照射により、照射領域に改質層900が形成される。
【0241】
熱硬化性樹脂フィルム12及び第1保護膜12’が、波長1342nmの光の透過性を有し、好ましくは、熱硬化性樹脂フィルム12及び第1保護膜12’の、波長1342nmの光の透過率が、先に説明したように高い場合には、波長1342nmのレーザー光が第1保護膜12’を良好に透過する。したがって、ワーク90に対して、その第1保護膜12’を備えている側から、第1保護膜12’を介してレーザー光Rを照射しても、ワーク90の内部に改質層900を良好に形成できる。
【0242】
<<分割工程>>
前記分割工程においては、改質層900を形成後のワーク90を第1保護膜12’とともに、換言すると第5積層構造体205を、その回路面90aに対して平行な方向(図6A中、矢印Eの方向)にエキスパンドすることにより、改質層900の部位においてワーク90を分割し、ワーク加工物9を得る。
本工程を行うことにより、例えば、図6Bに示すように、突状電極形成面に未切断の第1保護膜12’を備えたワーク加工物9が、第2支持シート801上に、複数個(多数)整列した状態の、第5中間積層構造体205’が得られる。
【0243】
又は、前記分割工程においては、上述のとおりエキスパンドすることにより、改質層900の部位においてワーク90を分割するとともに、第1保護膜12’を切断することが可能な場合がある。その場合には、図6Bではなく、図6Cに示すように、ワーク加工物9と、ワーク加工物9の突状電極形成面(すなわち、突状電極91の表面91aとワーク加工物9の回路面9a)に形成された第1保護膜(切断後の第1保護膜120’ )と、を備えた第1保護膜付きワーク加工物990が直ちに得られる(この場合、本工程を「分割・切断工程」と称することがある)。
すなわち、前記製造方法は、前記分割工程(換言するとワーク加工物を得る工程)において、前記改質層の部位において前記ワークを分割するとともに、前記第1保護膜を切断するものであってもよい。
この場合、本工程を行うことにより、突状電極形成面に切断後の第1保護膜120’を備えたワーク加工物9(すなわち第1保護膜付きワーク加工物990)が、第2支持シート801上に、複数個(多数)整列した状態の、第6積層構造体206が得られる。図6C中、符号120a’は、切断後の第1保護膜120’のワーク加工物9との接触面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)を示し、符号9bは、ワーク加工物9の裏面を示す。
【0244】
前記分割・切断工程において、第1保護膜12’は、ワーク90の分割箇所に沿って切断され、最終的には、ワーク加工物9の外周に沿って切断された状態となる。
【0245】
本工程において、ワーク90の分割時に、同時に第1保護膜12’が切断されるか否かは、第1保護膜12’、換言すると熱硬化性樹脂フィルム12の組成や、エキスパンドの条件で決定される。
【0246】
例えば、第1保護膜12’が、前記X値の合計値の条件を満たす熱硬化性樹脂フィルム12から形成されている場合には、分割工程において、第1保護膜12’は容易に切断できる(分割・切断工程)。その結果、突状電極形成面に切断後の第1保護膜120’を備えたワーク加工物9を、高い効率で製造できる。本工程において、第1保護膜12’は、ワーク加工物9の外周に沿って切断される。
【0247】
一方、第1保護膜12’が、前記X値の合計値の条件を満たさない熱硬化性樹脂フィルム12から形成されている場合には、分割工程において、第1保護膜12’の切断は困難である。
その場合には、ワーク90の分割後(すなわち前記分割工程後)に、第1保護膜12’を切断する(本明細書においては、本工程を「切断工程」と称することがある)。これにより、上記と同様の第1保護膜付きワーク加工物990が得られる。
前記切断工程は、例えば、ワーク加工物9(より具体的には、未切断の第1保護膜を備えたワーク加工物)を、第2支持シート801から引き離してピックアップする工程で、同時に行うことができる。このように、ワーク9の分割後に別途、第1保護膜12’の切断工程を行う場合には、前記切断工程において、ワーク加工物9は、必ずしも、図6Cに示すように、第2保護膜形成用シート8をそのままの状態で備えているとは限らない。
【0248】
分割工程(又は分割・切断工程)において、前記エキスパンドは、-15~5℃の温度条件下で行うことが好ましい。エキスパンド時の温度が前記上限値以下であることで、第1保護膜12’の切断がより容易となる。エキスパンド時の温度が前記下限値以上であることで、過剰冷却が避けられる。
【0249】
ここでは、前記分割工程(又は分割・切断工程)を行うことにより、第2保護膜形成用シート8中の樹脂層82も切断した場合を示しているが、樹脂層82の切断は、分割工程(又は分割・切断工程)後に、公知の方法によって別途行ってもよい。図6B図6C中、切断後の樹脂層82には、符号820を付している。また、ここでは、樹脂層82を切断した場合を示しているが、樹脂層82の段階では切断せずに、これを硬化させて得られた第2保護膜を切断してもよい。
【0250】
前記製造方法において、樹脂層82又は第2保護膜は、第1保護膜12’の場合と同様に、ワーク90の分割箇所に沿って切断される。
なお、本明細書においては、前記樹脂層が切断された後であっても、第2支持シート及び前記樹脂層(換言すると、第2支持シート及び切断後の前記樹脂層)の積層構造が維持されている限り、この積層構造を「第2保護膜形成用シート」と称する。
【0251】
前記貼付工程において、突状電極91の頭頂部910を含む上部が、熱硬化性樹脂フィルム12を貫通せず、熱硬化性樹脂フィルム12から突出しなかった場合には、前記貼付工程後のいずれかの段階において、突状電極の上部に残存している熱硬化性樹脂フィルムを、又は、その硬化物である第1保護膜を除去することにより、突状電極の上部を露出させる、熱硬化性樹脂フィルム除去工程又は第1保護膜除去工程を、別途行う。前記熱硬化性樹脂フィルム除去工程は、前記貼付工程後、前記第1保護膜形成工程前に行い、前記第1保護膜除去工程は、前記第1保護膜形成工程後に行う。これにより、最終的に、図6Cに示す第6積層構造体206が得られる。
残存している熱硬化性樹脂フィルム又は第1保護膜の除去は、例えば、熱硬化性樹脂フィルム又は第1保護膜に対するプラズマの照射によって行うことができる。
【0252】
◇基板装置の製造方法
上述の製造方法により、第1保護膜付きワーク加工物(換言すると第6積層構造体)を得た後は、公知の方法により、この第1保護膜付きワーク加工物を、基板の回路面にフリップチップ接続した後、パッケージとし、このパッケージを用いることにより、目的とする基板装置を製造できる(図示略)。第1保護膜付き半導体チップを用いた場合には、半導体パッケージを作製した後、この半導体パッケージを用いることにより、目的とする半導体装置を製造できる。また、第1保護膜及び第2保護膜を備えた半導体チップを用いた場合には、これら保護膜付き半導体チップをフリップチップ接続し、目的とする半導体装置を製造できる。
【実施例
【0253】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
なお、以下に示す比較例で製造している各目的物には、便宜上、実施例で製造している各目的物と同じ名称を付している。
【0254】
熱硬化性樹脂層形成用組成物の製造に用いた成分を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:ポリビニルブチラール(積水化学工業社製「エスレックSV-10」、重量平均分子量65000、ガラス転移温度66℃)
(A)-2:ポリビニルブチラール(積水化学工業社製「エスレックBL-10」、重量平均分子量25000、ガラス転移温度59℃)
(A)-3:アクリル酸n-ブチル(55質量部)、アクリル酸メチル(10質量部)、メタクリル酸グリシジル(20質量部)及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(15質量部)を共重合してなるアクリル樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度-28℃)。
[熱硬化性成分(B)]
・エポキシ樹脂(B1)
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「EXA-4810-1000」、エポキシ当量404~412g/eq)
(B1)-2:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「EPICLON HP-7200」、エポキシ当量265g/eq)
(B1)-3:液状変性エポキシ樹脂(三菱化学社製「YX7110」、エポキシ当量962g/eq)
(B1)-4:液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びアクリルゴム微粒子の混合物(日本触媒社製「BPA328」、エポキシ当量235g/eq)
(B1)-5:固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1055」、分子量1600、軟化点93℃、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-6:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD-1000-L」、エポキシ当量248g/eq)
・熱硬化剤(B2)
(B2)-1:ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工社製「ショウノールBRG-556」、水酸基当量104g/eq)
(B2)-2:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH-3636AS」、固体分散型潜在性硬化剤、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「YA050C-MKK」、平均粒子径0.05μm)
(D)-2:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたシリカフィラー、平均粒子径500nm)
(D)-3:シリカフィラー(タツモリ社製「SV-10」、平均粒子径8μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:シランカップリング剤(三菱化学社製「MKCシリケートMSEP2」、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを付加させたシリケート化合物)
[着色剤(I)]
(I)-1:カーボンブラック(三菱化学社製「MA-600B」)
【0255】
[実施例1]
<<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートの製造>>
<熱硬化性樹脂層形成用組成物の製造>
重合体成分(A)-1(9.9質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(37.8質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(25.0質量部)、熱硬化剤(B2)-1(18.1質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.2質量部)及び充填材(D)-1(9.0質量部)を混合し、さらに、メチルエチルケトンで希釈して、23℃で撹拌することで、上述のメチルエチルケトン以外の6成分の合計濃度が55質量%である熱硬化性樹脂層形成用組成物(III-1)を調製した。これら成分と、その含有量を表1に示す。なお、表1中の含有成分の欄の「-」との記載は、熱硬化性樹脂層形成用組成物がその成分を含有していないことを意味する。また、表1中の「熱硬化性成分の含有量の割合(質量%)」とは、「熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、熱硬化性成分の含有量の割合」を意味する。
【0256】
<熱硬化性樹脂フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた熱硬化性樹脂層形成用組成物(III-1)を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ30μmの熱硬化性樹脂フィルムを作製した。
【0257】
<第1保護膜形成用シートの製造>
次いで、得られた熱硬化性樹脂フィルムの露出面(換言すると、前記剥離フィルムを備えている側とは反対側の面)に、バックグラインド用表面保護テープ(リンテック社製「Adwill E-8180HR」)の一方の面を貼り合わせることにより、第1保護膜形成用シートを作製した。前記表面保護テープは、第1支持シートに相当する。
【0258】
<<第1保護膜付き半導体チップの製造>>
上記で得られた第1保護膜形成用シート中の熱硬化性樹脂フィルムから、前記剥離フィルムを取り除き、これにより生じた熱硬化性樹脂フィルムの露出面(換言すると、前記表面保護テープを備えている側とは反対側の面)を、半導体ウエハのバンプ形成面に圧着させることで、半導体ウエハのバンプ形成面に第1保護膜形成用シートを貼付した。このとき、第1保護膜形成用シートの貼付は、貼付装置(ローラー式ラミネータ、リンテック社製「RAD-3510 F/12」)を用いて、テーブル温度90℃、貼付速度2mm/sec、貼付圧力0.5MPaの条件で、熱硬化性樹脂フィルムを加熱しながら行った。半導体ウエハとしては、バンプの高さが210μmであり、バンプの幅が250μmであり、隣り合うバンプ間の距離が400μmであり、バンプを除いた部位の厚さが750μmであるものを用いた。
以上により、半導体ウエハのバンプ形成面に、第1保護膜形成用シートが貼付されて構成された、第1積層構造体を得た。
【0259】
次いで、グラインダー(ディスコ社製「DGP8760」)を用いて、得られた第1積層構造体における半導体ウエハの、バンプ形成面とは反対側の面(裏面)を研削した。このとき、半導体ウエハのバンプを除いた部位の厚さが250μmとなるまで、前記裏面を研削した。
【0260】
次いで、前記表面保護テープ(換言すると第1支持シート)を第1積層構造体中の熱硬化性樹脂フィルムから取り除いた。
以上により、半導体ウエハのバンプ形成面に、熱硬化性樹脂フィルムを備えて構成された、第2積層構造体(熱硬化性樹脂フィルム付き半導体ウエハ)を得た。
【0261】
次いで、熱硬化装置(リンテック社製「RAD-9100 m/12」)を用いて、上記で得られた第2積層構造体中の熱硬化性樹脂フィルムを、処理温度130℃、処理圧力0.5MPa、処理時間2時間の条件で加熱加圧処理することにより熱硬化させて、第1保護膜を形成した。
以上により、半導体ウエハのバンプ形成面に、第1保護膜を備えて構成された、第3積層構造体(換言すると第1保護膜付き半導体ウエハ)を得た。
【0262】
次いで、得られた第3積層構造体中の、半導体ウエハの前記裏面(換言すると研削面)に、ダイシングテープ(リンテック社製「Adwill D-841」)を貼付することにより、半導体ウエハのバンプ形成面に第1保護膜を備え、前記裏面にダイシングテープを備えて構成された、第4積層構造体を得た。前記ダイシングテープは、第2支持シートに相当する。
【0263】
次いで、ダイシング装置(ディスコ社製「DFL7361」)を用いて、第4積層構造体中の半導体ウエハに対して、その内部に設定された焦点に集束するように、その第1保護膜を備えている側から、第1保護膜を介してレーザー光を照射することにより、半導体ウエハの内部に改質層を形成した。このとき、レーザー光の波長は1342nmとし、出力は0.7Wとし、周波数は90kHzとした。
以上により、第4積層構造体中の半導体ウエハの内部に改質層が形成された構成を有する、第5積層構造体を得た。
【0264】
次いで、0℃の環境下で、この改質層を形成後の半導体ウエハ(換言すると第5積層構造体)を、その回路面に対して平行な方向に、第1保護膜とともにエキスパンドすることにより、改質層の部位において、半導体ウエハを分割するとともに、第1保護膜を半導体ウエハの分割箇所に沿って切断した。このとき、ダイセパレーター(ディスコ社製「DDS2300」)を用い、第5積層構造体中の第2支持シートをダイセパレーター中のテーブル上に載置するとともに、第5積層構造体の周縁部を固定し、この状態で、突き上げ速度50mm/sec、突き上げ量20mmの条件でテーブルを突き上げることにより、半導体ウエハ及び第1保護膜をエキスパンドした。得られた半導体チップの大きさは2mm×2mmであった。
以上により、バンプ形成面に切断後の第1保護膜を備えた半導体チップ(すなわち第1保護膜付き半導体チップ)が、第2支持シート(換言すると前記ダイシングテープ)上に、複数個(多数)整列した状態の、第6積層構造体を得た。
【0265】
<<熱硬化性樹脂フィルムの評価>>
<バンプの上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存抑制性の確認>
上述の第1保護膜付き半導体チップの製造時に、半導体ウエハのバンプ形成面側から、走査型電子顕微鏡(キーエンス社製「VE-9800」)を用い、加速電圧を5keVとして、第1積層構造体を観察した。そして、下記評価基準に従って、第1積層構造体中のバンプの上部における熱硬化性樹脂フィルムの残存抑制性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:バンプと熱硬化性樹脂フィルムとの境界を確認でき、バンプの上部に熱硬化性樹脂フィルムが残存していないことを確認できる。
B:バンプと熱硬化性樹脂フィルムとの境界を確認できず、バンプの上部に熱硬化性樹脂フィルムが残存していることを確認できる。
【0266】
<熱硬化性樹脂フィルムの光の透過率の測定>
熱硬化性樹脂層形成用組成物(III-1)の塗工量を変更した点以外は、上述の熱硬化性樹脂フィルムの製造時と同じ方法で、試験用の熱硬化性樹脂フィルム(厚さ40μm)を5枚製造した。
次いで、これら5枚の試験用の熱硬化性樹脂フィルムを、これらの厚さ方向において積層することにより、積層フィルム(厚さ200μm)を得た。
次いで、分光光度計(SHIMADZU社製「UV-VIS-NIR SPECTROPHOTOMETER UV-3600」)を用いて、この積層フィルムについて、波長1342nmの光の透過率を測定した。結果を表1に示す。
【0267】
<<第1保護膜の評価>>
<半導体ウエハの分割性の評価>
デジタル顕微鏡(キーエンス社製「VH-Z100」)を用いて、上記で得られた第6積層構造体を、その第1保護膜側から観察した。このとき、観察領域としては、第2支持シートの、第1保護膜付き半導体チップの整列面のうち、中央部に相当する第1領域と、第1領域に対して点対称となる周縁部側の位置にあり、かつ、第1領域からの距離が同等である第2領域、第3領域、第4領域及び第5領域と、の合計5領域を選択した。これら5領域は、いずれも、半導体ウエハが正常に分割されたと仮定したとき、5行5列で25個の第1保護膜付き半導体チップを含む領域とした。また、第2領域と第3領域を結ぶ第1線分のほぼ中央部に第1領域が存在し、第4領域と第5領域を結ぶ第2線分のほぼ中央部に第1領域が存在して、時計回りに、第2領域、第4領域、第3領域及び第5領域がこの順に位置するように、これら5領域を選択した。第1線分と第2線分は、互いに直交することになる。そして、これら5領域を観察し、下記評価基準に従って、半導体ウエハの分割性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:5領域すべて(第1領域~第5領域のすべての領域)において、半導体ウエハが正常に分割されている。
B:少なくとも1領域(第1領域~第5領域の少なくともいずれかの領域)において、半導体ウエハが正常に分割されていない箇所がある。
【0268】
<半導体ウエハの分割時における第1保護膜の切断性の評価>
上述の半導体ウエハの分割性の評価時に、同時に、下記評価基準に従って、第1保護膜の切断性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:5領域すべて(第1領域~第5領域のすべての領域)において、第1保護膜が正常に切断されている。
B:少なくとも1領域(第1領域~第5領域の少なくともいずれかの領域)において、第1保護膜が正常に切断されていない箇所がある。
【0269】
<第1保護膜の破断強度の測定>
熱硬化性樹脂層形成用組成物(III-1)の塗工量を変更した点以外は、上述の熱硬化性樹脂フィルムの製造時と同じ方法で、試験用の熱硬化性樹脂フィルム(厚さ40μm)を製造した。
次いで、この試験用の熱硬化性樹脂フィルムを、130℃で2時間加熱することにより、熱硬化させた。
次いで、この硬化物(すなわち第1保護膜)から、大きさが20mm×130mmである切片を切り出し、これを試験片とした。
万能引張試験機(島津製作所社製「オートグラフAG-IS」)を用い、つかみ器具間距離を80mmとし、引張り速度を200mm/minとして、前記試験片をその表面に対して平行な方向において、つかみ器具により引っ張り、このときの前記試験片の最大応力を測定し、これを第1保護膜の破断強度として採用した。結果を表1に示す。
【0270】
[実施例2]
<<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートの製造>>
<熱硬化性樹脂層形成用組成物の製造>
重合体成分(A)-2(10.0質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(30.0質量部)、エポキシ樹脂(B1)-3(33.0質量部)、熱硬化剤(B2)-1(16.0質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.2質量部)及び充填材(D)-1(11.0質量部)を混合し、さらに、メチルエチルケトンで希釈して、23℃で撹拌することで、上述のメチルエチルケトン以外の6成分の合計濃度が55質量%である樹脂層形成用組成物を調製した。これら成分と、その含有量を表1に示す。
【0271】
<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートの製造>
樹脂層形成用組成物として、上記で得られたものを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートを製造した。
【0272】
<<第1保護膜付き半導体チップの製造>>
第1保護膜形成用シートとして、上記で得られたものを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、第1保護膜付き半導体チップ(換言すると第6積層構造体)の製造を試みた。
【0273】
<<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜の評価>>
本実施例で製造した熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜について、実施例1の場合と同じ方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0274】
[比較例1]
<<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートの製造>>
<熱硬化性樹脂層形成用組成物の製造>
重合体成分(A)-3(21.0質量部)、エポキシ樹脂(B1)-4(10.0質量部)、エポキシ樹脂(B1)-5(2.0質量部)、エポキシ樹脂(B1)-6(5.6質量部)、熱硬化剤(B2)-2(0.5質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.5質量部)、充填材(D)-2(6.0質量部)、充填材(D)-3(54.0質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)及び着色剤(I)-1(1.9質量部)を混合し、さらに、メチルエチルケトンで希釈して、23℃で撹拌することで、上述のメチルエチルケトン以外の10成分の合計濃度が55質量%である樹脂層形成用組成物を調製した。これら成分と、その含有量を表1に示す。
【0275】
<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートの製造>
樹脂層形成用組成物として、上記で得られたものを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜形成用シートを製造した。
【0276】
<<第1保護膜付き半導体チップの製造>>
第1保護膜形成用シートとして、上記で得られたものを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、第1保護膜付き半導体チップ(換言すると第6積層構造体)の製造を試みた。
【0277】
<<熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜の評価>>
本比較例で製造した熱硬化性樹脂フィルム及び第1保護膜について、実施例1の場合と同じ方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0278】
【表1】
【0279】
上記結果から明らかなように、実施例1においては、半導体ウエハの分割性が良好であった。
実施例1の熱硬化性樹脂フィルムの、波長1342nmの光の透過率が高く、その結果、このフィルムから形成された第1保護膜の光の透過率も同様に高く、第1保護膜を介して半導体ウエハにレーザー光を照射したときに、半導体ウエハの内部に改質層を良好に形成できた。
【0280】
また、実施例1の熱硬化性樹脂フィルムは、半導体ウエハのバンプ形成面への貼付時に、バンプの上部における残存を抑制でき、好ましい特性を有していた。
実施例1の熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、熱硬化性成分の含有量の割合は、80.9質量%であった。
【0281】
なお、実施例1においては、半導体ウエハの分割時における第1保護膜の切断性も良好であった。
実施例1において、X値の合計値は296(={408×37.8/(37.8+25.0+18.1)}+{265×25.0/(37.8+25.0+18.1)}+{104×18.1/(37.8+25.0+18.1)})g/eqであり、第1保護膜の破断強度は、45MPaであった。
【0282】
実施例2においても、半導体ウエハの分割性が良好であった。
実施例2の熱硬化性樹脂フィルムの、波長1342nmの光の透過率が高く、その結果、このフィルムから形成された第1保護膜の光の透過率も同様に高く、第1保護膜を介して半導体ウエハにレーザー光を照射したときに、半導体ウエハの内部に改質層を良好に形成できた。
【0283】
また、実施例2の熱硬化性樹脂フィルムも、半導体ウエハのバンプ形成面への貼付時に、バンプの上部における残存を抑制でき、好ましい特性を有していた。
実施例2の熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、熱硬化性成分の含有量の割合は、78.8質量%であった。
【0284】
なお、実施例2においては、半導体ウエハの分割時における第1保護膜の切断性が劣っていたが、この第1保護膜は、以降の工程で切断可能であり、第1保護膜付き半導体チップを製造可能なものであった。
実施例2において、X値の合計値は524(={265×30.0/(30.0+33.0+16.0)}+{962×33.0/(30.0+33.0+16.0)}+{104×16.0/(30.0+33.0+16.0)})g/eqであり、第1保護膜の破断強度は、60MPaであった。
【0285】
これに対して、比較例1においては、半導体ウエハの分割性が劣っていた。
比較例1の熱硬化性樹脂フィルムの、波長1342nmの光の透過率が低く、その結果、このフィルムから形成された第1保護膜の光の透過率も同様に低く、第1保護膜を介して半導体ウエハにレーザー光を照射したときに、半導体ウエハの内部に改質層を適切に形成できなかった。その結果、半導体ウエハを正常に分割できなかった。
【0286】
また、比較例1の熱硬化性樹脂フィルムは、半導体ウエハのバンプ形成面への貼付時に、バンプの上部における残存を抑制できず、実施例1~2の熱硬化性樹脂フィルムよりも特性が劣っていた。
比較例1の熱硬化性樹脂フィルムにおける、熱硬化性樹脂フィルムの総質量に対する、熱硬化性成分の含有量の割合は、17.8質量%であった。
【0287】
比較例1では、半導体ウエハの分割時に第1保護膜を切断できなかったが、この結果に、第1保護膜自体の特性がどの程度影響を与えているのかを判断できず、半導体ウエハの分割時における第1保護膜の切断性は評価不能であった。ただし、第1保護膜の破断強度が25MPaと小さかったことから、第1保護膜を切断できなかった原因は、主に半導体ウエハの分割性が劣っていたことにある、と推測された。
【産業上の利用可能性】
【0288】
本発明は、フリップチップ実装方法で使用される、接続パッド部に突状電極を有するワーク加工物等の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0289】
1,2,3・・・第1保護膜形成用シート、11・・・第1基材、11a・・・第1基材の一方の面、12・・・熱硬化性樹脂層(熱硬化性樹脂フィルム)、12’・・・第1保護膜、120’・・・切断後の第1保護膜、13・・・第1粘着剤層、13a・・・第1粘着剤層の一方の面、14・・・第1中間層、101,102,103・・・第1支持シート、101a,102a,103a・・・第1支持シートの表面、206・・・第6積層構造体、90・・・ワーク、90a・・・ワークの回路面、91・・・突状電極、91a・・・突状電極の表面、900・・・改質層、990・・・第1保護膜付きワーク加工物、R・・・レーザー光
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C