IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】操作された標的特異的な塩基エディター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240821BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240821BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240821BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N5/10
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/09 110
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021510000
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 US2019047172
(87)【国際公開番号】W WO2020041249
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】62/721,903
(32)【優先日】2018-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/753,696
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/817,153
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/867,565
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】フリードリック・ファウザー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・シー・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・リバー
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/119243(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/209809(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/218206(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177278(US,A1)
【文献】国際公開第2018/218166(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0047805(US,A1)
【文献】国際公開第2018/119359(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/119354(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/070633(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/133554(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/039438(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090761(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0198268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0068164(US,A1)
【文献】特表2009-532053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA中のアデニンまたはシトシン塩基を編集するためのシステムを発現するための1つまたは複数の発現ベクターであって、該システムが、
アデノシンまたはシチジンデアミナーゼの第1の不活性なドメインおよび第1のジンクフィンガータンパク質(ZFP)DNA結合ドメインを含む第1の融合タンパク質
デアミナーゼの第2の不活性なドメイン、第2のZFP DNA結合ドメイン、および触媒的に活性または不活性なニッカーゼドメインを含む第2の融合タンパク質、および
触媒的に活性または不活性なニッカーゼドメインおよび第3のZFP DNA結合ドメインを含む第3の融合タンパク質
を含み、
デアミナーゼの第1および第2の不活性なドメインは、二量体化して活性なデアミナーゼを形成し、かつ
第2および第3の融合タンパク質は、触媒的に活性および不活性なニッカーゼドメインの二量体化を介して活性なニッカーゼを形成する、1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項2】
第2の融合タンパク質が、触媒的に活性なニッカーゼドメインを含み、かつ
第3の融合タンパク質が、触媒的に不活性なニッカーゼドメインを含む
請求項に記載の1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項3】
システムが、ウラシルDNAグリコシラーゼインヒビター(UGI)をさらに含む、請求項1に記載の1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項4】
UGIが、融合タンパク質のNまたはC末端にある、請求項に記載の1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項5】
発現ベクターが、ウイルスベクター、プラスミドベクター、またはmRNAベクターである、請求項1~4のいずれか一項に記載の1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項6】
発現ベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項に記載の1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項7】
DNA中の塩基を編集する際の使用のためのキットであって、請求項1~6のいずれか一項に記載の1つまたは複数の発現ベクターを含む、キット。
【請求項8】
請求項に記載のキットであって、1つまたは複数の発現ベクターが、1つまたは複数のプラスミド、ウイルス、またはmRNAベクターである、キット。
【請求項9】
請求項1~6のいずれかに記載の1つまたは複数の発現ベクターを含む細胞
【請求項10】
細胞におけるDNA中の塩基を編集する際の使用のための、請求項1~6のいずれか一項に記載の1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項11】
編集が、
(i)シトシン塩基をウラシル塩基に編集することであって、ウラシル塩基は、DNA複製中にチミン塩基で置き換えられてもよい、編集すること;または
(ii)アデニン塩基をヒポキサンチン塩基に編集することであって、ヒポキサンチン塩基は、複製中にグアニン塩基で置き換えられてもよい、編集すること
を含む、請求項1に記載の使用のための1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項12】
細胞における編集が、
(i)C:G塩基対を、T:A塩基対に変更すること;
(ii)A:T塩基対を、G:C塩基対に変更すること;
(iii)停止コドンの導入;および/または
(iv)スプライシング配列を編集する、もしくは作り出すこと
をもたらす、請求項1または1に記載の使用のための1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項13】
編集が、疾患突然変異を修正する、請求項10~のいずれか一項に記載の使用のための1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項14】
エクソンが編集される、請求項10~のいずれか一項に記載の使用のための1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項15】
塩基が、細胞における染色体または染色体外エピソーム中にある、請求項10~のいずれか一項に記載の使用のための1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項16】
細胞が、編集を必要とする細胞であるかまたは編集を必要とする対象から得られる、請求項10のいずれか一項に記載の使用のための1つまたは複数の発現ベクター。
【請求項17】
疾患を処置することを必要とする対象において疾患を処置する際の使用のための、請求項に記載の細胞あって、細胞が対象に投与される、細胞
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年8月23日に出願された米国仮出願第62/721,903号;2018年10月31日に出願された米国仮出願第62/753,696号;2019年3月12日に出願された米国仮出願第62/817,153号;および2019年6月27日に出願された米国仮出願第62/867,565号の利益を主張し、これらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、これは、その全体が参照により組み入れられる。前記ASCIIコピーは、2019年8月20日に作成され、8325-0180-S180-PCT_SL.txtと名付けられ、225,507バイトのサイズである。
【0003】
本開示は、ポリペプチドおよびゲノム工学の分野に属する。
【背景技術】
【0004】
人工ヌクレアーゼ、例えば操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RNAガイドヌクレアーゼとも称される操作されたcrRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)を有するCRISPR/Casシステム、および/またはアルゴノートシステムをベースとしたヌクレアーゼのような転写活性化因子は、医学、生物工学および農業の分野に革命をもたらすものである。これらの分子ツールは、生物において、これまで不可能であったレベルまでゲノムを遺伝子操作(例えば編集)することを可能にするものである。人工ヌクレアーゼは、切断の後、細胞が、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)、またはカット部位に隣接する領域との相同性を有する基質DNAの存在下における相同組換え修復(HDR)を介した基質DNAの挿入のいずれかによって破断を「修正」させるように、DNAを切断することが可能である。これらのプロセスはどちらも、DNAにおける二本鎖破断(DSB)から始まる。
【0005】
一部の場合において、操作されたヌクレアーゼは、場合によって、遺伝学的に編集された細胞の染色体における複数のDSBの誘発に起因して起こる可能性がある不要な結果(例えば転移、転位および欠失)を引き起こす可能性がある。ヌクレアーゼ処理の後、例えば、転移、転位および欠失を含む染色体再編成のいくつかの証拠が観察されており(Kosicki, et al. (2018) Nat Biotechnol 36:765およびShin, et al. (2017) Nat Comm doi:10.1038/ncomms15646)、ごく最近、一部の細胞において、CRISPR/Casシステムを使用するアポトーシスを引き起こす切断後のp53経路の誘発の懸念が示されている(Ihry, et al. (2018) Nat Med 24:939-946 および Haapaniemi, et al. (2018) Nat Med 24:927-930)。またHDRは、典型的に、ほとんどの真核生物において極めて非効率的でもあり、これが遺伝子修正を難しくしている(Eid, et al. (2018) Biochem J 475:1955-1964)。
【0006】
加えて、Cas9塩基エディター、例えばAID-dCas9、APOBEC-dCas9(例えばAPOBEC3GまたはAPOBEC1)、BE2、BE3およびBE4(例えば、Komor, et al. (2016) Nature 533:420-424; Komor, et al. (2017) Science Advances 3(8), eaao4774; Kim, et al. (2017) Nat Biotechnol 35(4):371-376を参照)は、特異性の欠如を示す可能性があり(Kim, et al. (2019) Nat Biotechnol 10.1038/s41587-019-0050-1; Zuo, et al. (2019) Science DOI:10.1126/science.aav9973を参照)、これが、インビボ(in vivo)およびエクスビボ(ex vivo)での治療的な適用を含む様々な目的にとってそれらを不適切にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、二本鎖破断を誘発させずに高い特異性を有するゲノム(塩基)の編集を達成する必要が未だある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、標的DNA(例えば、編集されるゲノム)中に二本鎖のカットを生じさせない(例えば、単一の塩基の)編集を含む、細胞中のDNAを選択的に編集する方法および組成物(例えば、塩基エディター)を提供する。このような塩基エディターは、C:GをT:Aに変更するシトシン塩基エディター(CBE)、またはA:TをG:Cに変更するアデニン塩基エディター(ABE)であり得る。さらに、二本鎖破断が誘発されないため、内因性標的中に遊離のDNA末端がなく、転移は起こらない。本明細書に記載される塩基エディターは、遺伝子ノックアウト(例えばシトシン塩基エディターを使用して、例えば正規のコドンを停止コドンに変更すること、および/またはシトシンまたはアデニン塩基エディターのいずれかを使用して、スプライスアクセプター部位を突然変異させること);遺伝子の制御エレメント(例えば、プロモーター領域)に突然変異を導入すること(例えば、突然変異を活性化または抑制すること);疾患の原因となる突然変異(例えば点突然変異)を修正すること(元に戻すこと);および/または治療上の利益をもたらす突然変異を誘発させることに使用することができる。本明細書に記載される塩基エディターは、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドの形態での塩基編集のために提供することができる(インビトロ(in vitro)もしくはエクスビボでの使用のために細胞に、またはインビボで対象に)。他の利点の中でも、本発明の塩基エディターは、(1)結合部位の追加のDNA結合ドメイン/長さにより、特異性を増加させることができ、PAM要件の低減により、精度または標的化密度を増加させることができ;(2)PAMの制限を拡大して(緩めて)、現状で標的化可能ではない部位の標的化を可能にし;(3)性能が不十分なPAM部位における編集効率を増加させることができ;および/または(4)ZFPが固定されていない試薬で標的化可能な標的部位における効率を改善することができ、それゆえに、より低い用量を維持し、次いで、より低いオフターゲット活性ももたらす。
【0009】
したがって、少なくとも1つの機能性ドメイン(例えば、DNA不安定化分子、例えばニッカーゼ、タンパク質および/またはヌクレオチド)および少なくとも1つのDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガータンパク質)を含む塩基編集組成物が本明細書に記載される。特定の実施形態において、塩基編集組成物は、DNA中のアデニン(A)またはシチジン(C)塩基を編集し、ここで組成物は、(1)少なくとも1つのジンクフィンガータンパク質(ZFP)DNA結合ドメイン;(2)少なくとも1つのDNA不安定化分子;および(3)少なくとも1つのアデニンまたはシトシンデアミナーゼを含み、ここで組成物は、DNA中に二本鎖のカットを作製しない。
【0010】
本明細書に記載される組成物において、あらゆるDNA不安定化分子を、あらゆる組合せで使用することができ、DNA不安定化分子としては、これらに限定されないが、Cas9ニッカーゼ、単一ガイドRNA(sgRNA)に作動可能に連結したCas9タンパク質(例えば、dCas)、あらゆるRNAプログラム可能システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼニッカーゼ(ZFNニッカーゼ)、TALENニッカーゼ、表Aに示されるものなどの1つまたは複数のタンパク質、および/または1つまたは複数の(one more)ヌクレオチド(例えば、1つまたは複数のペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)および/または架橋された核酸(BNA))が挙げられる。特定の実施形態において、塩基編集組成物は、1つより多くのDNA不安定化分子、例えば1つまたは複数のタンパク質(例えば、表A、ニッカーゼなど)および/または1つまたは複数のヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、組成物は、ZFNニッカーゼ、ならびに1つまたは複数の追加のタンパク質および/またはヌクレオチドであるDNA不安定化分子(例えば、表Aの1つまたは複数のタンパク質、および/または本明細書に記載される1つまたは複数のヌクレオチド)を含む。特定の態様において、塩基編集組成物は、Cas9タンパク質を含まないが、他のCasタンパク質(例えば非Cas9 RNAプログラム可能システム)を含んでいてもよい。特定の実施形態において、DNA不安定化分子は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ニッカーゼを含む。
【0011】
塩基編集組成物の少なくとも1つのジンクフィンガータンパク質(ZFP)DNA結合ドメインは、塩基編集組成物の他の成分の1つまたは複数に、例えば、DNA不安定化分子の1つまたは複数に(例えば、Cas9ニッカーゼ、dCas9などに)、および/または少なくとも1つのアデニンまたはシトシンデアミナーゼに、作動可能に連結されていてもよい。特定の実施形態において、少なくとも1つのZFP DNA結合ドメインは、アデニンまたはシトシンデアミナーゼに作動可能に連結されている。他の実施形態において、塩基編集組成物は、第1および第2のZFP DNA結合ドメインを含み、第1のZFP DNA結合ドメインは、Cas9ニッカーゼに作動可能に連結されている。ZFP DNA結合ドメインは、3、4、5、6個またはそれより多くのフィンガーを含んでいてもよく、編集しようとする標的化された塩基のどちらかの側(5’または3’)で標的部位に結合していてもよい。特定の実施形態において、ZFPは、標的化された塩基のどちらかの側の1から100(またはそれらの間のあらゆる数の)ヌクレオチドである標的部位に結合する。他の実施形態において、ZFPは、標的化された塩基のどちらかの側の1から50(またはそれらの間のあらゆる数の)ヌクレオチドである標的部位に結合する。
【0012】
野生型および/または進化したドメインを含むあらゆるアデニンまたはシトシンデアミナーゼを、本明細書に記載される組成物において使用することができる。特定の実施形態において、アデニンまたはシトシンデアミナーゼは、二量体化して活性なアデニンまたはシトシンデアミナーゼを形成する第1および第2の不活性ドメインで構成されている。特定の実施形態において、アデニンまたはシトシンデアミナーゼの第1の不活性ドメインは、Cas9ニッカーゼに作動可能に連結されており、アデニンまたはシトシンデアミナーゼの第2の不活性ドメインは、ZFP DNA結合ドメインに作動可能に連結されている。よりさらなる実施形態において、アデニンまたはシトシンデアミナーゼおよびZFP DNA結合ドメインはどちらも、Cas9ニッカーゼに作動可能に連結されている。他の実施形態において、塩基エディターは、第1および第2のZFP DNA-ドメインを含み、第1のZFPは、Cas9ニッカーゼに作動可能に連結されており、第2のZFP DNA結合ドメインは、アデニンまたはシトシンデアミナーゼに作動可能に連結されている。
【0013】
本明細書に記載される1つまたは複数の塩基編集組成物をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドも提供される。ポリヌクレオチドは、ウイルス(例えば、AAV、Adなど)および/または非ウイルス(例えば、プラスミド、mRNAなど)ベクターで運搬され得る。さらに、本明細書に記載される1つもしくは複数の組成物および/または1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む細胞または細胞の集団、ならびにこのような細胞の後代であって、細胞は、編集された塩基を含む、細胞または細胞の集団も提供される。
【0014】
また、本明細書に記載される組成物および/またはポリヌクレオチドの1つまたは複数を使用して、標的DNA(例えば、DNA二本鎖内因性遺伝子または染色体外(エピソーム)の配列)における塩基を編集する方法も提供される。特定の実施形態において、本方法は、(i)シチジン塩基(「C」)を、ウラシル塩基(「U」)に編集することであって、Uは、DNA複製中にチミジン塩基(「T」)で置き換えられてもよい、編集すること;(ii)アデニン塩基(「A」)を、イノシン(「I」)に編集することであって、Iは、複製中にグアニン塩基(「G」)で置き換えられてもよい、編集すること;および/または(iii)CAもしくはACジヌクレオチドを、UIもしくはIUに編集することを含む。他の実施形態において、細胞における編集は、(i)C:G塩基対を、T:A塩基対に変更すること;(ii)C:G塩基対を、G:C塩基対に変更すること;(iii)A:T塩基対を、G:C塩基対に変更すること;(iv)停止コドンの導入;および/または(v)スプライシング配列を編集する、もしくは作り出すことをもたらす。本方法は、あらゆる疾患突然変異(例えば、点突然変異)を修正する、例えばエクソンまたはイントロンにおいて修正するのに使用することができる。細胞または対象における染色体または染色体外エピソーム中のDNAが編集される。本方法は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで実行され得る。
【0015】
一態様において、DNA編集組成物(例えば、塩基編集組成物、本明細書では塩基編集複合体とも言及される)を含む組成物およびシステムが本明細書に記載される。DNA編集複合体は、少なくとも1つの機能性ドメインおよびDNA結合ドメインを含む。特定の実施形態において、DNA編集組成物複合体は、DNA結合ドメインに加えて、少なくとも1つのDNA不安定化分子、例えば二本鎖DNA中に一本鎖のカットを生じさせるニッカーゼドメイン(例えば、DNA-ニッカーゼ)を含む融合分子を含む。他の実施形態において、DNA編集組成物(複合体)は、複数の(2つまたはそれより多くの)融合分子を含み、例えば、第1のDNA結合ドメインおよびニッカーゼドメインを有する、ニッカーゼを含む第1の触媒的に活性な融合分子、ならびに第2のDNA結合ドメインおよび適宜1つまたは複数の追加の融合分子を含む第2の触媒的に不活性な融合分子を含み、それぞれ、本明細書に記載される追加のDNA結合ドメインおよび1つまたは複数の機能性ドメインを含む。特定の実施形態において、塩基エディターは、図1A~1Dのいずれかで示される組成物を含む。特定の実施形態において、第1および第2(および適宜追加のDNA結合ドメイン)の結合は、例えば、触媒的に活性な、および触媒的に不活性な融合分子が二量体化するとき、塩基の編集をもたらす。一部の実施形態において、適宜の追加のDNA結合ドメインは、二本鎖DNAに結合し、一方で他の実施形態において、DNA結合ドメインは、一本鎖DNAに結合する。一部の実施形態において、DNAニッカーゼは、ZFNニッカーゼ、TALENニッカーゼまたはCRISPR/Casニッカーゼであり、これらにおいて、少なくとも1つの機能性(ニッカーゼ)ドメインは、DNA結合ドメイン(例えば、ZFP DNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、およびCRISPR/Casシステムとの使用のためのsgRNA)に作動可能に連結されている。一部の実施形態において、DNAニッカーゼ(例えば、融合分子)は、ニッカーゼドメインとDNA結合ドメインとの間にリンカー配列を含む。ニッカーゼドメインは、融合分子のNまたはC末端側(DNA結合ドメインに対してNおよび/またはC末端)を含む、DNA結合ドメインのどちらの側に配置されていてもよい。一部の実施形態において、リンカーは、大きいリンカーライブラリー(>10e8個のメンバー)からの細菌の選択システムにより選択される。一部の実施形態において、リンカーは、4から22アミノ酸残基の範囲である。一部の実施形態において、リンカーは、DNA結合ドメインに対する機能性ドメイン(例えばニッカーゼドメイン)の特異的な配置(例えば、ニッカーゼドメインを、DNA結合ドメインのNまたはC末端側に連結すること)を可能にする。一部の例において、リンカーは、Paschon, et al. (2019) Nat Commun. 10 :1133に開示された方法を使用して選択される。塩基エディター(またはその成分)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、コンストラクト)も提供される。
【0016】
本明細書に記載されるDNA編集複合体は、これらに限定されないが、1つまたは複数のアデニンデアミナーゼドメイン、1つまたは複数のシチジンデアミナーゼ、および/または1つまたは複数のウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤などの、1つまたは複数の機能性ドメインを含む。1つまたは複数の機能性ドメインは、本明細書に記載されるDNA編集複合体の触媒的に活性な、および/または触媒的に不活性な融合分子中に含まれていてもよい。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼは、アポリポタンパク質B mRNA編集複合体1(APOBEC1)ドメインである。一部の実施形態において、シチジンデアミナーゼは、活性化誘導デアミナーゼ(AID)である。一部の実施形態において、デアミナーゼは、アデニンデアミナーゼである。一部の実施形態において、アデニンデアミナーゼは、野生型または突然変異した(進化した)TadA(tRNAアデニンデアミナーゼ(Gaudelli, et al. (2017) Nature 551 :464-471を参照)である。一部の実施形態において、アデニンデアミナーゼは、ABE7.8、ABE7.9またはABE7.10(Gaudelli、同書中)またはABEmax(Koblan, et al. (2018) Nat Biotechnol. 36(9) :843-846)である。一部の実施形態において、デアミナーゼ(アデニンまたはシチジン)機能性ドメインは、作動可能に連結したジンクフィンガーを含む2つのポリペプチド(例えば、スプリット酵素(split enzyme))からアセンブルされるか、またはスプリット酵素の1つの部分に作動可能に連結した1つまたは複数のZFP、およびスプリット酵素の他方の成分に作動可能に連結したCas9ニッカーゼからアセンブルされる(例えば、図1Bを参照)。一部の実施形態において、デアミナーゼのアセンブリーは、ポリペプチドがアセンブリー可能になる配置になるように、作動可能に連結したジンクフィンガーをDNA標的に結合させることによって駆動される。一部の実施形態において、塩基エディターは、ウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(UGI)をさらに含む。
【0017】
一態様において、塩基エディターは、CRISPRシステム、例えばCas9(例えば、天然に存在するおよび/または操作されたCas9)タンパク質(例えば、ニッカーゼ)または非Cas9タンパク質由来の、DNA巻き戻し(DNA不安定化とも称される)システムを含む。特定の実施形態において、塩基エディターは、は、ZFPが、Cas9タンパク質(例えば、野生型または操作されたニッカーゼ)のあらゆる成分にあらゆる方向で作動可能に連結されていてもよいジンクフィンガータンパク質DNA結合ドメインをさらに含むCas9塩基エディターであり、例えば、Cas9タンパク質に作動可能に連結したZFP(ZFPアンカー)、Cas9ニッカーゼのsgRNAまたはデアミナーゼ(deamimase)を含む塩基エディター(野生型または操作された(進化した)ABEまたはCBE)である。特定の実施形態において、ZFPは、塩基エディターのCas9ドメインに作動可能に連結されている。特定の実施形態において、塩基エディターは、図3のCas9塩基エディターに示される成分を含む。
【0018】
別の態様において、塩基エディターは、Cas9タンパク質由来のDNA巻き戻し(DNA不安定化)エレメントを含まない(「Cas9非含有」とも称される)。特定の実施形態において、本発明のCas9非含有塩基エディターは、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質およびZFNニッカーゼを含み、さらに、1つまたは複数のDNA不安定化因子を含んでいてもよい。特定の実施形態において、DNA不安定化因子は、タンパク質(例えば、表Aで示されるような)またはオリゴヌクレオチド(例えば、1つまたは複数のPNA、LNAおよび/またはBNA)である。1つまたは複数の非Cas9 DNA不安定化(巻き戻し)因子(例えば、表Aのタンパク質、LNA、PNA、BNAなど)は、塩基エディターのあらゆる成分に作動可能に連結されていてもよく、例えば、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質のいずれかの成分および/またはZFNニッカーゼの成分のいずれかに作動可能に連結されていてもよい。一部の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のタンパク質および1つまたは複数のヌクレオチドDNA不安定化(巻き戻し)因子を含む。よりさらなる実施形態において、本明細書に記載されるCas9非含有塩基エディターは、CRISPRシステム由来の1つまたは複数のタンパク質を含み、このようなタンパク質は、Cas9ではないが、DNA不安定化(巻き戻し)特性を有する。
【0019】
特定の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のヌクレオチド配列、例えば、1つまたは複数のDNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)および/または架橋された核酸(BNA)を含み、これらは、標的部位に塩基エディターのための一本鎖DNA基質を提供するのに使用することができる。これは、例えば二重鎖侵入、三重鎖侵入またはテールクランプによって促進することができる(Quijano, et al. (2017) Yale J. Biol and Med. 90:583-598; Pellestor and Paulasova (2004) European J. Human Genetics 12:694-700; Schleifman, et al. (2011) Chem & Bio. 18:1189-1198)。塩基エディターの1つまたは複数のヌクレオチド配列の構造は、標的配列の組成に応じて、DNAおよび/またはRNAおよび/またはLNAおよび/またはLNAおよび/またはBNA塩基の長さ、数および配置;ホスホロチオエート結合;これらのオリゴヌクレオチドの他の一般的な修飾において様々であると予想される。
【0020】
特定の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のPNA、例えば、結合の強化、溶解性の増加およびデリバリーの改善のためのミニPEG置換およびガンマ位を含有するガンマPNAを含む(Bahal, et al. (2014) Current Gene Ther. 14(5):331-342)。特定の実施形態において、PNAは、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示す1つまたは複数のO、および/または1つまたは複数のシトシン(C)もしくはプソイドイソシトシン残基を含む。1つまたは複数のリシン(Lys)残基は、PNA中に含まれていてもよく、例えば、PNA配列のNおよび/またはC末端に含まれていてもよい。特定の実施形態において、1、2、3、4、5個またはそれより多くのLys残基が、PNAの一方または両方の末端に含まれる。特定の実施形態において、2つまたはそれより多くのPNAが、塩基エディター中で、例えば互いに同じまたは逆の方向で使用される。特定の実施形態において、PNAは、図8Bから8Eで示されるような1つまたは複数のPNA、例えば、これらに限定されないが、構造:N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;および/またはN-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-Cなどの1つまたは複数のPNAを含み、式中、Oは、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示し、Cは、シトシンを示す。PNA配列のNおよび/またはC末端におけるLys残基は適宜であり、シトシンが、プソイドイソシトシンで置換されていてもよい。
【0021】
他の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のLNAを含む。LNAは、性能の改善のために、スタッキングリンカー(stacking linker)および2’-グリシルアミノ-LNAを含んでいてもよい(Geny, et al. (2016) Nucleic Acids Res. 44(5):2007-2019)。特定の実施形態において、LNAは、1つまたは複数のホスホロチオエート結合を含み、これらは1つまたは複数のLNA残基および/またはDNA残基の間に含まれていてもよい。他の実施形態において、LNAは、1つまたは複数のコレステロール-TEGを含み、これは、細胞への取り込みを増加させることができる。特定の実施形態において、塩基エディターは、図8Fまたは8Gで示されるように、1つまたは複数のLNAを含み、例えば、これらに限定されないが、5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-3’(配列番号1);5’-N*n*NnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnn*N*n-3’(配列番号69);および/または5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-Chol-TEG-3’(配列番号70)構造を有する1つまたは複数のLNAを含み、式中、LNAヌクレオチドは、大文字で示され;DNAヌクレオチドは、小文字で示され;「*」は、ホスホロチオエート結合を示し;Chol-TEGは、細胞への取り込みの増加のための3’コレステロール-TEGを示す。
【0022】
本明細書に記載される塩基編集組成物の成分は、あらゆる組合せで含まれていてもよく(1つまたは複数のニッカーゼドメイン、1つまたは複数のDNA結合ドメイン、1つまたは複数の機能性ドメインなど)、これらの成分は、互いにあらゆる順番で配置されていてもよい。一部の実施形態において、UGI、シチジンおよび/またはアデニンデアミナーゼは、触媒的に不活性な融合分子のDNA結合ドメインのN末端であるか、および/またはDNA編集複合体の触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインに対するN末端である。一部の実施形態において、シチジンおよび/またはアデニンデアミナーゼおよび/またはUGIは、触媒的に不活性な融合分子のDNA結合ドメインのC末端であるか、および/または触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインに対するC末端である。一部の実施形態において、1つまたは複数のUGI、シチジンおよび/またはアデニンデアミナーゼは、DNA結合ドメインとニッカーゼドメイン(触媒的に活性なドメイン中の)との間に配置される。一部の実施形態において、融合分子は、シチジンデアミナーゼおよびアデニンデアミナーゼドメインまたはUGIを含み、UGI、シチジンおよびアデニンデアミナーゼは、互いにDNA結合ドメインに対して、および/またはニッカーゼドメインに対して、あらゆる方式で配置される(例えば、両方とも、あらゆる順番で触媒的に不活性な融合分子のDNA結合ドメインに対してN末端に、両方とも、あらゆる順番で触媒的に不活性な融合分子のDNA結合ドメインに対してC末端に、一方が、触媒的に不活性な融合分子のDNA結合ドメインに対してN末端に、一方が、触媒的に不活性な融合分子のDNA結合ドメインに対してC末端に、触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインおよび/またはDNA結合ドメインに対してN末端に、触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインおよび/またはDNA結合ドメインに対してC末端に、一方が、触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインおよび/またはDNA結合ドメインに対してC末端に、一方が、触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインおよび/またはDNA結合ドメインに対してN末端に、触媒的に活性な融合分子のニッカーゼドメインとDNA結合ドメインとの間に、など)。塩基編集組成物の1つまたは複数の融合分子の立体配置の非限定的な例は、添付の図面および実施例に示される。一部の実施形態において、UGI、シチジンおよび/またはアデニンデアミナーゼドメインは、当業界において公知のリンカーを使用して、DNA編集複合体の他のメンバーに連結されている。塩基エディターまたはその成分をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドも提供される。
【0023】
よりさらなる態様において、DNA編集複合体は、少なくとも1つのウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(例えばUGI)ドメインを含む1つまたは複数の機能性ドメインを含む。UGIドメインは、DNA編集複合体が機能できるようなあらゆる方式でDNA編集複合体に取り込まれる。一部の実施形態において、塩基編集複合体は、バクテリオファージGamタンパク質を含む。一部の実施形態において、塩基編集複合体は、デアミナーゼ、ニッカーゼ、UGIおよび/またはGAMタンパク質を含む。一部の実施形態において、塩基編集複合体の成分は、1、2つまたはそれより多くの融合タンパク質をコードする1、2つまたはそれより多くの遺伝子発現コンストラクト中に提供される。一部の実施形態において、1つまたは複数のウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤ドメインは、上述される、および当業界において公知のリンカーを使用して、複合体の他のメンバーに連結されている。一部の実施形態において、リンカーは、ウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤を、複合体の他のメンバーに連結するのに使用され、リンカーは、Paschon, et al. (2019) Nat Commun. 10 :1133に開示された方法を使用して同定される。
【0024】
一部の実施形態において、DNA編集(塩基編集)複合体は、二本鎖DNAヘリックスを開くことにおいて補助となる分子をさらに含む。一部の実施形態において、このような分子は、酵素を含む。一部の実施形態において、酵素は、ヘリカーゼ(例えば、RecQヘリカーゼ(WRN、BLM、RecQL4およびRecQ5(Mo, et al. (2018) Cancer Lett. 413:1-10), DNA2 (Jia, et al. (2017) DNA Repair (Amst). 59:9-19を参照)、および他のあらゆる真核生物ヘリカーゼ、例えば、FANCJ、XPD、XPB、RTEL1、およびPIF1など(Brosh (2013) Nat Rev Canc 13(8):542-558))である。一部の実施形態において、酵素は、細菌および/またはウイルスヘリカーゼである。例示的なウイルスヘリカーゼとしては、ミオウイルス科のウイルスによってコードされたもの(例えばgp41、Dda、UvsW、遺伝子α、およびBan);ポドウイルス科(Podpviridae)のウイルスによってコードされたもの(例えば4B);シホウイルス科、バキュロウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科(Palillomaviridae)およびポックスウイルス科によってコードされたもの(例えば、G40P、p143、UL5、UL9、TAG、E1、NPH-I、NPH-II、A18R、およびVETF)、または当業界において公知の他のあらゆるウイルスヘリカーゼ(例えばFrickおよびLam (2006) Curr Pharm Des 12(11):1315-1338を参照)が挙げられる。一部の実施形態において、ヘリカーゼ酵素は、細菌酵素である。例示的な細菌ヘリカーゼとしては、緑膿菌(P.aeruginosa)SF4 DnaB様ヘリカーゼ、または細菌における大腸菌(E coli)およびH.ピロリ(H. pylori)などの細菌RecBCD複合体の一部であるRecBおよびRecDヘリカーゼ(Shadrick, et al. (2013) J. Biomol Screen 18(7) :761-781)が挙げられる。一部の実施形態において、単量体のヘリカーゼ活性をもたらす多量体ヘリカーゼの操作されたまたは進化した変異体が使用される(例えばBrendza, et al. (2005) PNAS 102(29):10076-70081を参照)。一部の実施形態において、分子は、CRISPR/Cas複合体を含む。一部の実施形態において、CRISPR/Cas複合体は、ガイドRNAを含む。一部の実施形態において、複合体は、そのヌクレアーゼドメインにおいて触媒的に欠陥のあるCas酵素を含む。一部の実施形態において、複合体は、そのヌクレアーゼドメイン(例えばニッカーゼ)の1つにおいて触媒的に欠陥のあるCas酵素を含む。一部の実施形態において、Cas酵素は、そのPAM認識において欠陥がある(Anders, et al. (2014) Nature 513(7519):569-573)。一部の実施形態において、Cas酵素は、天然PAM配列と比較して、緩い(拡大された)PAM要件を有する(例えばNishimasu, et al. (2018) Science 361:1259-1262を参照)。特定の実施形態において、本明細書に記載されるCas塩基エディターは、SpCas9のNGG PAM配列と比較して、緩い(拡大された)PAM要件を示す。一部の実施形態において、分子は、ヘリックスを不安定化する特性を有する。例示的なヘリックスを不安定化する分子としては、単純疱疹ウイルスI型由来のICP8(Boehmer and Lehman (1993) J Virol 67(2):711-715)、Purアルファ(Darbinian, et al. (2001) J Cell Biochem 80(4):589-95)、およびウシ胸腺DNAヘリックス不安定化タンパク質(Kohwi-Shigematsu, et al. (1978) Proc Natl Acad Sci USA 75(10):4689-93)が挙げられる。一部の実施形態において、分子は、転写および/またはDループ形成/安定化に関与する。このクラスの例示的な分子としては、Rad51、Rad52、RPA1、RPA2およびRPA3、Exo1、BLM、ならびにHMGB1およびHMGB2が挙げられる。利用可能な他のタンパク質としては、Bovin ROA1および大腸菌(E.coli)RecAまたは大腸菌rad51が挙げられる。DNAヘリックス不安定化因子として作用し得る他のタンパク質ドメインとしては、Cas9由来のRecIおよびRecIIドメインまたはそれ自体RecIIドメイン、ならびにCas9由来の他のあらゆるヘリックス不安定化領域が挙げられる。表Aに、本明細書に記載される塩基エディターでの使用に好適なタンパク質ドメインの他の非限定的な例を示す。
【0025】
一部の実施形態において、分子は、核酸、例えば、これらに限定されないが、オリゴヌクレオチド、PNA、LNA、BNAなどである。一部の実施形態において、核酸は、標的化された編集部分に近い領域に対して相同性を有するDNAである。一部の実施形態において、核酸は、標的化された編集部分に近い領域に対する相同性を有するRNAである。一部の実施形態において、RNAは、改変されている。一部の実施形態において、融合分子は、融合分子の1つまたは複数のドメインの間にアミノ酸リンカー配列を含む。一部の実施形態において、二本鎖DNAヘリックスを開くことにおける補助に使用される分子は、上述したリンカーを使用して、DNA編集複合体の他のメンバーに連結されている。一部の実施形態において、二本鎖DNAヘリックスを開くことにおける補助に使用される分子は、DNA編集複合体の他のメンバーに連結されており、公知の方法を使用して同定される。
【0026】
特定の実施形態において、核酸は、PNA、例えば、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示す1つまたは複数のO、および/または1つまたは複数のシトシン(C)もしくはプソイドイソシトシン残基を含むPNAを含む。1つまたは複数のリシン(Lys)残基は、PNA中に含まれていてもよく、例えば、PNA配列のNおよび/またはC末端に含まれていてもよい。特定の実施形態において、1、2、3、4、5個またはそれより多くのLys残基が、PNAの一方または両方の末端に含まれる。特定の実施形態において、2つまたはそれより多くのPNAが、塩基エディター中で、例えば互いに同じまたは逆の方向で使用される。特定の実施形態において、1つまたは複数のPNAは、N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;および/またはN-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C(PNA#5)を含み、式中、Oは、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示し、Cは、シトシンを示す。PNA配列のNおよび/またはC末端におけるLys残基は適宜であり、シトシンが、プソイドイソシトシンで置換されていてもよい。図8Bから8Eも参照されたい。
【0027】
他の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のLNAを含む。LNAは、性能の改善のために、スタッキングリンカーおよび2’-グリシルアミノ-LNAを含んでいてもよい(Geny, et al. (2016) Nucleic Acids Res. 44(5):2007-2019。特定の実施形態において、LNAは、1つまたは複数のホスホロチオエート結合を含み、これらは1つまたは複数のLNA残基および/またはDNA残基の間に含まれていてもよい。他の実施形態において、LNAは、1つまたは複数のコレステロール-TEGを含み、これは、細胞への取り込みを増加させることができる。特定の実施形態において、1つまたは複数のLNAは、5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-3’(配列番号1);5’-N*n*NnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnn*N*n-3’(配列番号69);および/または5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-Chol-TEG-3’(配列番号70)を含み、式中、LNAヌクレオチドは、大文字で示され;DNAヌクレオチドは、小文字で示され;「*」は、ホスホロチオエート結合を示し;「Chol-TEG」は、細胞への取り込みの増加のための3’コレステロール-TEGを示す。図8Fおよび8Gも参照されたい。
【0028】
これらの分子は全て、本明細書に記載される塩基編集システムに取り込まれていてもよいし、編集効率を増加させる、オフターゲットの塩基編集を減少させる、塩基編集ウィンドウを調整する、または核酸塩基の標的化されるタイプを変更するように作用し得る。
【0029】
一部の実施形態において、本明細書に記載される機能性ドメインは、単一の融合分子中に含まれる。代替として、複数の機能性ドメインを含むDNA編集複合体は、あらゆる方式で別々の融合分子に分離していてもよい。一部の実施形態において、1つの融合分子は、DNA結合ドメイン、シチジンおよび/またはアデニンデアミナーゼならびにUGIを含み、一方で第2の融合分子は、ニッカーゼまたはハーフニッカーゼドメインを含む。一部の実施形態において、1つの融合分子は、デアミナーゼドメインに融合したDNA結合ドメインに融合した、触媒的に不活性な(死んでいる)FokIドメインを含み、第2の融合タンパク質は、ハーフFokIニッカーゼタンパク質、DNA結合ドメインおよびUGIドメインを含む。一部の実施形態において、1つの融合タンパク質は、UGIドメインに融合したデアミナーゼドメインに融合した触媒的に不活性な(死んでいる)FokIドメインを含み、一方で第2の融合分子は、機能性ニッカーゼタンパク質を含む。一部の実施形態において、本明細書で開示される1つまたは複数の融合タンパク質は、機能することができる融合分子内のドメインのあらゆる順番で融合している。一部の実施形態において、ニッカーゼドメインは、Casニッカーゼドメインであり、一部の実施形態において、ニッカーゼドメインは、TALENニッカーゼドメインである。一部の実施形態において、機能性ドメインの1つまたは複数は、上述したリンカーを使用して、複合体の1つまたは複数の他のメンバーに連結されている。一部の実施形態において、1つまたは複数の機能性ドメインは、Paschon, et al. (2019) Nat Commun. 10:1133で開示された方法を使用して同定されたリンカーを使用して、複合体の1つまたは複数の他のメンバーに連結されている。
【0030】
本明細書に記載される塩基エディターは、1つまたは複数のポリヌクレオチドによってコードされていてもよい。1つまたは複数のポリヌクレオチドは、ウイルスベクター(AAV、Adなど)、非ウイルスベクター(プラスミド、mRNAなど)またはそれらの組合せで運搬することができる。特定の実施形態において、1つのポリヌクレオチドは、塩基エディターの全ての成分を含み、一方で他の実施形態において、塩基エディターの成分は、2つまたはそれより多くのポリヌクレオチドによって運搬される(例えば、スプリット酵素および/またはZFPを運搬する別々のポリヌクレオチド)。
【0031】
別の態様において、本明細書に記載される1つまたは複数のDNA編集複合体を使用するDNA分子の編集方法(例えば、遺伝子編集方法)が本明細書に記載される。記載される方法は、DNA分子が編集されるように、1つまたは複数のDNA編集複合体を細胞に導入する。細胞は、単離されていてもよいし、または生きている対象中にあってもよい(例えば、対象への静脈内または他の投与を介して)。一部の実施形態において、DNA分子は、細胞中の染色体または染色体外エピソームである。一部の実施形態において、染色体または染色体外エピソームは、シチジン塩基(「C」)を含み、これは、本明細書で開示される融合タンパク質によってウラシル塩基(「U」)に脱アミノ化される。一部の実施形態において、Uは、DNA複製中にチミジン塩基(「T」)で置き換えられる。一部の実施形態において、染色体または染色体外エピソームは、アデニン塩基(「A」)を含み、これは、本明細書で開示される融合タンパク質によってイノシン(「I」)塩基に脱アミノ化される。一部の実施形態において、Iは、複製中に、グアニン塩基(「G」)で置き換えられる。一部の実施形態において、染色体または染色体外エピソームは、アデニンおよびシチジン塩基を含み、これは、CAまたはACジヌクレオチドが、UIまたはIUジヌクレオチドに脱アミノ化されるように、本明細書で開示されるデアミナーゼによって脱アミノ化される(例示的なシステムについて、図1)。
【0032】
一部の実施形態において、ニッカーゼドメインは、FokI DNA切断ドメイン由来である(米国特許第5,436,150号;8,703,489号;9,200,266号;および9,631,186号を参照)。一部の実施形態において、FokIニッカーゼは、親FokIニッカーゼと比較して、1つまたは複数の突然変異を含む。本明細書に記載される突然変異としては、これらに限定されないが、切断ドメインの電荷を変更する突然変異、例えば正電荷を有する残基の正電荷を有さない残基への突然変異(例えば、KおよびR残基の突然変異(例えば、Sに突然変異した);N残基への突然変異(例えば、Dへの)、およびQ残基への突然変異(例えば、Eへの);分子モデリングに基づいてDNA主鎖に近いと予測され、FokIホモログにおいて変化を示す残基への突然変異;ならびに/または他の残基における突然変異(例えば、米国特許第8,623,618号およびGuo, et al. (2010) J. Mol. Biol. 400(1):96-107)が挙げられる。ニッカーゼは、ZFNニッカーゼ、TALENニッカーゼおよびCRISPR/Casシステム、例えばCasニッカーゼであり得る。
【0033】
一部の実施形態において、塩基エディターは、FokIまたはFokIホモログ由来である切断ドメインを含むDNA結合ドメイン(例えば、操作されたニッカーゼドメイン)を含み、配列番号5で示される野生型全長FokIに対して番号付けされた、アミノ酸残基416、418、422、447、448、476、479、481および/もしくは525、またはFokIホモログにおける対応する残基の1つまたは複数に突然変異を含む。一部の実施形態において、FokI由来の切断ハーフドメインは、アミノ酸残基414~426、443~450、467~488、501~502、および/または521~531の1つまたは複数、例えば、387、393、394、398、400、416、418、422、427、434、439、441、442、444、446、448、472、473、476、478、479、480、481、487、495、497、506、516、523、525、527、529、534、559、569、570、および/または571の1つまたは複数などに突然変異を含む。突然変異は、対応する配置におけるFokIに相同な天然の制限酵素に見出される残基への突然変異を含み得る。一部の実施形態において、突然変異は、置換であり、例えば、野生型残基の、あらゆる異なるアミノ酸での、例えばアラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはスレオニン(T)での置換である。一部の実施形態において、FokIヌクレアーゼドメインは、416、418、422、476、447、479、481および/または525の1つまたは複数における突然変異を含む(野生型、配列番号5に対して番号付けされる)。ヌクレアーゼドメインはまた、418位、432位、441位、448位、476位、481位、483位、486位、487位、490位、496位、499位、523位、527位、537位、538位および559位における1つまたは複数の突然変異、例えば、これらに限定されないが、ELD、KKR、ELE、KKSなどを含んでいてもよい。例えば、米国特許第8,623,618号を参照されたい。一部の実施形態において、切断ドメインは、残基419、420、425、446、447、470、471、472、475、478、480、492、500、502、521、523、526、530、536、540、545、573および/または574の1つまたは複数における突然変異を含む。特定の実施形態において、本明細書に記載される変異型切断ドメインは、ヌクレアーゼ二量体化に関与する残基への突然変異(二量体化ドメインの突然変異)、および1つまたは複数の追加の突然変異;例えば、リン酸接触残基への追加の突然変異:例えば、二量体化突然変異体(例えばELD、KKR、ELE、KKSなど)と、例えばリン酸接触に参加する可能性があるアミノ酸残基における、二量体化ドメインの外側のアミノ酸配置における1、2、3、4、5、6個またはそれより多くの突然変異との組合せを含む。一部の実施形態において、416位、418位、422位、447位、448位、476位、479位、481位および/または525位における突然変異は、正電荷を有するアミノ酸の、電荷を有さない、または負電荷を有するアミノ酸での置き換えを含む。他の実施形態において、446位、472位および/または478位(および適宜、例えば二量体化または触媒ドメインにおける追加の残基)における突然変異が作製される。一部の実施形態において、突然変異は、I479Qおよび/またはQ481A突然変異を含む。
【0034】
一部の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、本明細書に記載される突然変異に加えて、二量体化ドメインにおける突然変異、例えば、アミノ酸残基490、537、538、499、496および486を含む。一部の実施形態において、本発明は、操作された切断ハーフドメインが、本明細書に記載される1つまたは複数の突然変異に加えて、486位における野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置き換えられ、499位における野生型Ile(I)残基がLeu(L)残基で置き換えられ、496位における野生型Asn(N)残基がAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換えられている(「ELD」または「ELE」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。一部の実施形態において、操作されたニッカーゼハーフドメインは、野生型FokIまたはFokIホモログの切断ハーフドメイン由来であり、アミノ酸残基416、418、422、447、448、476、479、481または525における1つまたは複数の突然変異に加えて、野生型FokI(配列番号5)に対して番号付けされたアミノ酸残基490、538および537における突然変異を含む。一部の実施形態において、本発明は、操作されたニッカーゼハーフドメインが、本明細書に記載される1つまたは複数の突然変異に加えて、490位における野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、538位における野生型Ile(I)残基がLys(K)残基で置き換えられ、537位における野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられている(「KKK」または「KKR」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,962,281号を参照)(米国特許公開第2018/0087072号を参照)。
【0035】
一部の実施形態において、人工ヌクレアーゼを生産する、本明細書に記載されるDNA結合ドメインおよび操作されたFokIまたはそのホモログの切断ハーフドメインを含む融合分子が提供される。一部の実施形態において、融合分子のDNA結合ドメインは、ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、操作されたジンクフィンガー結合ドメイン、ZFP)である。一部の実施形態において、ジンクフィンガーの1つまたは複数は、上記のPaschon, et al.で開示された方法を使用して同定されたリンカーを使用して、一緒に連結されている。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、TALE DNA結合ドメイン(TALE)である。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、DNA結合分子(例えばガイドRNA)および触媒的に不活性なCasまたはCpf1(Cas12aとしても公知)タンパク質(例えばdCas9またはdCpf1)を含む。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、触媒的に不活性なCas(dCas)タンパク質に融合したZFPを含む。一部の実施形態において、ZFP-dCas融合タンパク質は、PAMの特異性を変更するための突然変異を含む。一部の実施形態において、ZFP-dCasタンパク質は、DNA配列に特異的に結合するのに、PAM認識に依存しない。一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、dCasタンパク質に融合したTALEを含む。一部の実施形態において、TALE-dCas融合タンパク質は、PAMの特異性を変更するための突然変異を含む。一部の実施形態において、TALE-dCasタンパク質は、DNA配列に特異的に結合するのに、PAM認識に依存しない。上記実施形態のいずれかにおいて、操作されたFokIまたはそのホモログにDNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALEまたはガイドRNAおよびCasシステム)を連結するのに使用されるリンカーは、当業界において公知の方法を使用して同定される。例えば、Paschon, et al. (2019) Nat Commun. 10:1133を参照されたい。
【0036】
一部の実施形態において、DNA編集複合体は、二本鎖DNAにおける特異的なDNA塩基を編集する。一部の実施形態において、編集は、細胞内のDNA分子中になされる。一部の実施形態において、DNAは、細胞中の染色体にある。一部の実施形態において、編集は、C:G塩基対からT:A塩基対への変更をもたらす。一部の実施形態において、編集は、C:G塩基対からG:C塩基対への変更をもたらす。一部の実施形態において、編集は、A:T塩基対からG:C塩基対への変更をもたらす。一部の実施形態において、編集は、エクソン中で行われる。一部の実施形態において、編集は、停止コドン(例えばTAA、TAG、TGA)の導入をもたらす。一部の実施形態において、塩基の編集は、標的化された遺伝子の遺伝子発現のノックアウトをもたらす。一部の実施形態において、編集は、スプライシング配列(例えば、U2スプライス配列であって、5’コンセンサス配列は、G T A/G A/C/T G T/G/A/C A/G/T/C(T/C/G/A)(配列番号73)であり、3’コンセンサス配列は、(T/C)10T/C/A/G C/T A G(配列番号74)である、スプライス配列;およびU12スプライス配列であって、5’コンセンサス配列は、G/A T A T C T T/Cであり、3’コンセンサス配列は、(T/G/A/G)T/A/C/G(T/C/A/G)C/T A G/Cである、スプライス配列、Turunen, et al. (2013) Wiley Interdiscip Rev RNA. 4(1):61-76を参照)をコードする配列中で行われる。一部の実施形態において、新しいスプライシング配列が作り出される。一部の実施形態において、スプライシング配列は、それがスプライシング配列として機能しなくなるように変更される。一部の実施形態において、スプライシング配列の変更は、エクソンスキッピングを引き起こす。一部の実施形態において、配列は、まれなコドンが作り出されるように変更される。一部の実施形態において、塩基を編集することは、疾患に関連する遺伝子が修正されるように、DNA配列における点突然変異の修正をもたらす。疾患の処置および/または防止のための塩基編集の非限定的な例としては、V617Fバージョンが発現されなくなるようなJAK2の編集(それによって制御不能な血液細胞生産を引き起こすこの遺伝子の活性化を低減させる);他のがん遺伝子、例えばBCR/ABLをノックアウトまたは抑制するための塩基編集;A1ATの塩基編集などが挙げられる。処置され得る例示的な疾患としては、鎌状赤血球症、血友病、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、テイ-サックス病、色盲、ファブリー病、フリードライヒ運動失調症、前立腺がんなどが挙げられる。
【0037】
一部の実施形態において、本明細書で開示される塩基編集複合体は、RNA分子に作用する。一部の実施形態において、塩基エディターは、RNA特異的なデアミナーゼ、例えばADAR2(2型RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ)を利用する(Cox, et al. (2017) Science 358(6366):1019-1027を参照)。
【0038】
組成物のいずれか(塩基編集組成物および/またはこれらの組成物をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド)を含む細胞、ならびに、本明細書で開示される方法および組成物によって改変された、これらの細胞に由来する細胞も本明細書で開示される。一部の実施形態において、細胞は、細菌細胞または真核細胞である。一部の実施形態において、細胞は、塩基エディター複合体および塩基エディター複合体によって誘導されたDNAまたはRNA改変を含む。改変された細胞、および改変された細胞由来のあらゆる細胞は、本開示の塩基エディター複合体を一時的に含むが、必ずしもそれを超えて含んでいなくてもよく、ただしこのような塩基エディター複合体によって媒介されたゲノム改変は維持される。
【0039】
さらに別の態様において、目的の領域における細胞クロマチンの標的化された編集のための方法;感染を処置する方法;および/または疾患を処置する方法が本明細書で開示される。これらの方法は、インビトロ、エクスビボもしくはインビボで、またはそれらの組合せで実施されてもよい。本方法は、細胞中の予め決定された目的の領域で、本明細書に記載される塩基編集複合体(例えば融合ポリペプチドおよび適宜1つまたは複数の融合ポリペプチドが本明細書で開示される操作されたニッカーゼを含むあらゆる関連する核酸)を発現させることによって、細胞クロマチンを編集することを含む。特定の実施形態において、オンターゲット部位の標的化された編集は、細胞の、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%で見出される。
【0040】
本明細書で開示される塩基編集複合体は、目的の領域における細胞クロマチンの標的化された編集のための方法において使用することができる。細胞としては、培養細胞、細胞株、生物中の細胞、細胞および/またはその後代が処置後に生物に戻されることになる場合における、処置のために生物から除去された細胞、および生物から取り出され、本発明の融合分子を使用して改変され、次いで処置方法(細胞療法)において生物に戻される細胞が挙げられる。細胞クロマチンにおける目的の領域は、例えば、ゲノム配列またはそれらの部分であってもよい。
【0041】
融合分子は、例えば、融合分子をポリペプチドとして細胞にデリバリーすることによって細胞中で発現させてもよいし、または融合分子をコードするポリヌクレオチドを細胞にデリバリーすることによって細胞中で発現させてもよく、その場合、ポリヌクレオチドは、DNAの場合、転写され、翻訳されて、融合分子が生成する。さらに、ポリヌクレオチドが融合分子をコードするmRNAである場合、細胞にmRNAがデリバリーされた後、mRNAが翻訳されて、融合分子が生成する。
【0042】
本発明の他の態様において、塩基編集特異性を増加させるための方法および組成物が提供される。一部の実施形態において、オフターゲット編集活性を減少させることによって全体的なオンターゲット編集特異性を増加させるための方法が提供される。一部の実施形態において、塩基編集に関連するインデル形成を減少させるための方法が提供される。一部の実施形態において、操作された塩基編集複合体の操作されたニッカーゼ成分(ニッカーゼパートナー、例えば、触媒的に不活性なZFNパートナー、およびZFNニッカーゼを形成する触媒的に活性なZFNパートナー)は、細胞と接触させるために使用され、この場合、複合体の各ニッカーゼパートナーは、1:1以外の他のパートナーに対する比率で示される。一部の実施形態において、2つのパートナーの比率は、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:8、1:9、1:10もしくは1:20の比率、またはそれらの間のあらゆる値で示される。他の実施形態において、2つのパートナーの比率は、1:30より大きい。一部の態様において、各パートナーは、mRNAとして細胞にデリバリーされるか、またはウイルスまたは非ウイルスベクター中でデリバリーされ、その場合、様々な量の各パートナーをコードするmRNAまたはベクターがデリバリーされる。さらなる実施形態において、ヌクレアーゼ複合体の各パートナーは、単一のウイルスまたは非ウイルスベクターに含まれていてもよいが、一方のパートナーが、他方より高い、またはより低い値で発現されるように計画的に発現され、最終的に、1:1以外の切断ハーフドメインの比率で細胞にデリバリーされる。一部の実施形態において、各切断ハーフドメインは、異なるプロモーターを使用して、異なる発現効率で発現される。一部の実施形態において、2つの切断ドメインは、ウイルスまたは非ウイルスベクターを使用して細胞にデリバリーされ、その場合、両方とも同じオープンリーディングフレームから発現されるが、2つのパートナーの比率が、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:8、1:9、1:10もしくは1:20の比率、またはそれらの間のあらゆる値になるように、3’パートナーがより低い割合で発現される結果をもたらす配列(例えば自己切断2A配列またはIRES)で、2つのパートナーをコードする遺伝子が分離される。他の実施形態において、2つのパートナーは、1:1と異なるように選択された比率で配置される。
【0043】
別の態様において、本明細書に記載される1つまたは複数の塩基エディターを使用して生産された細胞の集団が本明細書に記載される。特定の実施形態において、細胞の5%~20%(またはそれらの間のあらゆる値)より多く、好ましくは20%より多く、さらにより好ましくは50%より多く、より一層好ましくは80%から100%の間が、標的化された塩基への改変を含む(例えば、塩基が編集された細胞である)。よりさらなる実施形態において、編集された細胞は、オフターゲット編集(ゲノム中のどこかでの意図されない編集)および/またはバイスタンダー(意図される標的塩基のどちらかの側におけるごく近位における、例えば1~20(またはそれらの間のあらゆる値の)ヌクレオチドにおける編集事象、例えば、Cas9のプロトスペーサー領域内での編集事象)の突然変異をほとんどまたは全く示さない。本明細書に記載される塩基が編集された細胞の単離された集団は、対象におけるエクスビボでの疾患の処置のために使用でき、および/またはエクスビボでの処置として使用する前に、エクスビボでさらに操作されてもよい(例えば、本明細書に記載される塩基編集のさらなるラウンドを介して)。加えて、塩基編集は、インビボで疾患関連の突然変異を修正した後に対象において疾患または状態が処置されるように、インビボで実行してもよい。
【0044】
一部の実施形態において、ニッカーゼパートナーは、追加の活性ドメインに融合されている。一部の実施形態において、追加のドメインとしては、1つまたは複数のデアミナーゼから選択される1つまたは複数の例示的なドメイン(例えばA特異的またはC特異的)、UGIドメイン、ヘリカーゼ、およびGAMドメインが挙げられる。別の態様において、本明細書に記載される塩基編集複合体、または本明細書に記載される1つもしくは複数の塩基編集複合体タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド;補助的な試薬;ならびに適宜説明書および好適な容器を含むキットが本明細書に記載される。
【0045】
当業者であれば、これらのおよび他の態様は、総じて開示を考慮すれば容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A~1Dは、例示的なDNA編集システムおよび複合体を描写する概略図である。図1Aは、DNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALE、sgRNA)を含む1つの触媒的に不活性な(「X」によって示される)融合分子、およびDNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALE、sgRNA)も含む1つの触媒的に活性なニッカーゼ融合分子(はさみによって示される)を含むシステムを示す。触媒的に活性な、および不活性な融合分子は、DNA結合ドメインがそれらそれぞれの標的部位に結合すると二量体化し、結合の後、標的DNAを編集する(例えば、塩基を編集する)。また図1Aは、2つのUGIドメインを含む複合体も示す。図1Bは、塩基を編集するための、さらなる例示的なCas9およびCas9非含有システムを示す。上のパネルは、いずれかのアデノシンまたはシトシンデアミナーゼドメインの成分の二量体化を介して機能する塩基エディターを示す。図1Bの下のパネルは、本明細書に記載されるABEおよびCBE塩基エディターの様々な実施形態を示す。図1Cは、ZFPアンカーに連結されていてもよい、Cas9 DNA不安定化分子(例えば、sgRNAに作動可能に連結したdCas9を含むRNAプログラム可能システム);ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質;およびZFNニッカーゼを含む、本明細書に記載される塩基エディターの別の実施形態を示す。特定の実施形態において、ZFNニッカーゼは存在せず、DNA不安定化分子は、いずれかのRNAプログラム可能分子を含む。この概略図は、Cas9ニッカーゼの、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質とは逆側におけるZFNニッカーゼを示すが、ZFNニッカーゼおよびZFP-デアミナーゼはどちらも、Cas9ニッカーゼに対して3’または5’であり得ることは明らかであろう。図1Dは、さらなるCas9非含有(非Cas9とも称される)塩基編集システムを示す。三角形は、ニッキングが起こる場所を示し、「PNA」は、ペプチド核酸を指し、「LNA」は、ロックド核酸を指し、「BNA」は、架橋された核酸を指す。これらの塩基エディターにおけるヌクレオチド(例えば、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)および/または架橋された核酸(BNA))は、標的部位に塩基エディターのための一本鎖DNA基質を提供することができる。
【0047】
図2は、例示的なアデニン塩基エディターによって標的化されたDNAを示す概略図である。この図面は、上にアライメントされた野生型mRNAプロトスペーサーおよびPAMを有するA1AT Z突然変異に近いDNA配列を示す(配列番号78)。プロトスペーサーの右に、数種の異なるZFPのDNA標的が示される。示した通り、PAM配列を必要とするABEの場合、塩基編集のための標的(塩基編集ウィンドウとも称される)は、典型的にはPAM配列から13~16ヌクレオチドであり、3、4、5、6、7個またはそれより多くのヌクレオチドのサイズであってもよい(図では、4ヌクレオチドの塩基編集ウィンドウが示される)(配列番号77)。
【0048】
図3Aおよび3Bは、例示的なZFP塩基エディターを描写する概略図である。図3Aは、例示的なZFPアデニン塩基エディターを示す。上のパネルは、示された成分を有する例示的なエディターを示す。中央のパネルは、2つの大腸菌tRNA特異的アデノシンデアミナーゼ(tadA)を使用する例示的なABEを示し、一方は、野生型配列であり、他方は、進化した配列である(Gaudelli, et al. (2017) Nature 551(7681):464-471))。TadAドメインは、示されるリンカーを使用して、互いに、さらにSPCas9配列に結合されている(配列番号2)。使用されるSpCas9は、公知の緩いPAM要件を有するVRVRFRR変異体である(Nishimasu, et al. (2018) Science 361 :1259-1262を参照)。次いでCas9配列は、ZFP DNA結合ドメインに連結され、使用されるリンカー(配列番号3)は、2つのNLS配列および3つのHAタグを含んでいてもよい。Cas9VRはまた、Cas9NGとも称される。図3Bは、本明細書に記載される例示的なCas9およびCas9非含有塩基エディターを示す。以下の略語が使用される:「TadA」は、野生型アデニンデアミナーゼドメインを指し;TadA*は、進化した(操作された)アデニンデアミナーゼドメインを指し;「7.8」「7.9」「7.10」および「MAX」は、Gaudelli, et al. (2017) Nature 551(7681):464-471) and Koblan, et al. (2018) Nat Biotechnol. 36(9):843-846に記載される進化した(操作された)アデニンデアミナーゼドメインを指し;「SpCas9[PAMs:NGG]」は、Jinek, et al. (2012) Science 337(6096):816-21に記載される化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来のCas9を指し;「SpXCas9-3.7[PAMs:NGN,GAA&GAT]」は、Hu, et al. (2018) Nature 556(7699):57-63に記載される広範なPAM適合性を有するSpCas9変異体を指し;「SpCas9-NG[PAMs:NGN;NANインビトロ]」は、Nishimasu, et al. (2018) Science 361(6408):1259-1262に記載される緩いPAM要件を有するSpCas9変異体を指し;「ScCas9[PAMs: TGT,...]」は、Chatterjee, et al. (2018) Sci Adv 4(10):eaau0766. doi: 10.1126/sciadv.aau0766に記載される最小のPAMの特異性を有するSpCas9オーソログを指し;「CAS9なし」は、このドメインが存在しないこと(Cas9非含有塩基エディター)を意味する;「5F ZFP」は、5本のフィンガーを有するZFPを指し;「6F ZFP」は、6本のフィンガーを有するZFPを指し;「>6F ZFP」は、6本より多くのフィンガーを有するZFPを指し;「ZFP RQ」および「(...)」は、Miller, et al. (2019) Nature Biotechnology 37(8):945-952に記載される改変されたZFPを指す。
【0049】
図4は、アデニン塩基エディターによって標的化するために分析される編集ウィンドウ(配列番号4)内にあるアデニン塩基を描写する概略図である。
【0050】
図5A~5Fは、例示的なシチジン塩基エディターコンストラクトを描写する概略図である。図5Aおよび5Bは、ZFP DNA結合ドメインに連結され、さらに、CヌクレオチドをUに脱アミノ化することが可能なAPOBEC1(図5A)またはAID(図5B)シチジン酵素のいずれかをコードする配列に連結された、2つのUGIタンパク質をコードする配列を含む塩基エディターコンストラクトを示す。図5Cおよび5Dは、図5Aおよび5BのコンストラクトのUGIドメインが欠如した2つのシチジン塩基エディターコンストラクトを描写する。図5Eおよび5Fは、FokIニッカーゼをコードする配列を利用する2つのコンストラクトを描写する。これらのコンストラクトは、シチジン塩基エディターをコードする配列がZFP DNA結合ドメインに連結され、次いでこれが触媒的に不活性なFokIヌクレアーゼドメインに連結されている対として使用することができる。第2のコンストラクト(図5F)は、触媒的に活性なFokIヌクレアーゼドメインをコードする配列に連結された、ZFP DNA結合ドメインに連結された2つのUGIドメインをコードする配列を含む。この対は、活性な塩基エディターが作製されるようにどのような形で構築されてもよく、活性な、および不活性なFokIドメインは、2つのパートナーコンストラクトのどちらにあってもよく、UGI配列およびシチジン塩基エディター配列は、どちらのパートナーにあってもよい。
【0051】
図6Aおよび6Bは、2つの例示的なアデニン塩基エディターを描写する。図6Aは、2つのTadAドメイン、すなわち1つの野生型ものおよび1つの進化したものをコードし、ZFP DNA結合ドメインに連結された配列を含むコンストラクトを示す。図6Bで示されるように、一部のバリエーションにおいて、このコンストラクトは、触媒的に不活性なFokIドメインをさらに含む。
【0052】
図7A~7Cは、JAK2 V617F標的の塩基編集を例示する。図7Aは、左側に、野生型DNA二本鎖配列(配列番号30)を示し、その上にコードされたバリン(V)を示す。中央の配列は、突然変異したDNA二本鎖配列(配列番号31)を示し、その上に突然変異フェニルアラニン(F)を示す。右に2つの可能性のある塩基編集の結果(配列番号32および33)を示し、編集されたヌクレオチドを太字で示し、その上にセリン(S)またはプロリン(P)のいずれかへの変更を示す。図7Bは、JAK2 V617F突然変異を取り囲むDNA配列(配列番号34)を示し、2つの最も近いPAM部位を示す。図7Bは、タンパク質配列を配列番号79として開示する。図7Cは、V617F突然変異を有さないK562細胞における示された塩基エディターを用いた例示的な結果を示す。塩基編集ウィンドウ内の他のA:T対を使用して、試験された塩基エディターの活性を評価した。ABEmax-Cas9NGは、ABEmaxに融合したCas9NGニッカーゼを示す。ABEmax-Cas9を7つの異なるZFP(ZFP2、ZFP4、ZFP6およびZFP7が示される)で固定した。図7Cは、左側の3つの異なるPAM部位(AAT、TAA、AAA;図7Bを参照)に関する結果を示す。ここで、ABEmax発現コンストラクトの両方、ならびに対応するsgRNAは、プラスミドDNA(各600ng)として供給された。ZFPを固定したABEmax-Cas9NGコンストラクトは、全ての3つのPAM部位で増加した効率を示す(AATおよびAAA PAM部位の場合、およそ2倍;TAA PAM部位の場合、およそ12倍)。AATおよびTAA PAM部位のための塩基エディターはまた、より高い用量(800ngのプラスミドDNA)でも試験したところ、類似の結果を示す。ZFP6は、AAT PAM部位に対しておよそ2.5倍高い活性をもたらし、ZFP2は、TAA PAM部位に対しておよそ17倍高い活性をもたらす。
【0053】
図8A~8Gは、ヌクレオチド(例えば、図1Dで示されるように、標的部位に塩基エディターのための一本鎖DNA基質を提供するのに使用される、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)および/または架橋された核酸(BNA))を含む例示的な塩基エディターを示す概略図である。図8Aは、塩基エディターのヌクレオチドを含有する一本鎖基質と接触する前(左側)およびその後(右側)における編集しようとする標的化された塩基(「X」)を描写する。図8Bは、本明細書に記載される塩基エディターでの使用のための例示的なPNA(PNA#1)を描写し、PNAは、構造:N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-Cを有する。図8Cは、本明細書に記載される例示的なPNA(PNA#2)または塩基エディターにおける使用を描写し、PNAは、構造:N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-Cを有する。図8Dは、塩基エディターが2つのPNAを含む例示的な実施形態を描写し、互いに逆方向で、PNA#3は、構造N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-Cを有し、PNA#4は、構造N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-Cを有する。図8Eは、PNAが構造N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C(PNA#5)を含む例示的な実施形態を描写する。図8B~8Eにおいて、Oは、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示し、Cは、シトシンを示す。PNA配列のNおよび/またはC末端におけるLys残基は適宜であり、シトシンが、プソイドイソシトシンで置換されていてもよい。図8Fおよび8Gは、LNAを含む塩基エディターの例示的な実施形態を描写する。図8Fは、例示的なLNA(LNA#1)(配列番号80)を示す。例示的なLNA#1配列は、LNA#1a:5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-3’(配列番号1);LNA#1b:5’-N*n*NnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnn*N*n-3’(配列番号69);およびLNA#1c:5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-Chol-TEG-3’(配列番号70)を含む。図8Gは、塩基エディターが互いに逆方向に示される2つのLNAを含む例示的な実施形態を示す(LNA#2:5’-NnNnNnNnNntctctNnNnNnNnNn-3’(配列番号71)およびLNA#3:5’-NnNnNnNnNntctctNnNnNnNnNn-3’(配列番号72))。図8Fおよび8Gにおいて、LNAヌクレオチドは、大文字で示され;DNAヌクレオチドは、小文字で示され;「*」は、ホスホロチオエート結合を示し;「Chol-TEG」は、細胞への取り込みの増加のための3’コレステロール-TEGを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
人工ヌクレアーゼ、例えば操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RNAガイドヌクレアーゼとも称される操作されたcrRNA/tracr RNA(「単一ガイドRNA」)を有するCRISPR/Casシステム、および/またはアルゴノートシステムをベースとしたヌクレアーゼのような転写活性化因子は、医学、生物工学および農業の分野に革命をもたらすものである。これらの分子ツールは、生物において、これまで不可能であったレベルまでゲノムを遺伝子操作(例えば編集)することを可能にするものである。人工ヌクレアーゼは、切断の後、細胞が、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)、またはカット部位に隣接する領域との相同性を有する基質DNAの存在下における相同組換え修復(HDR)を介した基質DNAの挿入のいずれかによって破断を「修正」させるように、DNAを切断することが可能である。これらのプロセスはどちらも、DNAにおける二本鎖破断(DSB)から始まる。
【0055】
遺伝学的改変のために二本鎖のカットを使用しない、塩基を編集するための組成物(システム)および方法が本明細書に記載される。塩基を編集することは、編集された塩基の修復を回避するためのDNA修復機構の操作と共に、DNA鎖中の、DNA塩基の部位特異的な改変に関与する特異的な塩基の同一性を変更することに本質的に頼る。これは、一般的に、一本鎖DNAが存在する領域が生じるようにDNA二重らせんを開くためのシステムを使用することによって達成される。次に、塩基それ自体は、塩基を改変する酵素、例えばデアミナーゼによって、ヌクレオシド構造を変更するような作用を受ける。例えば、活性化誘導デアミナーゼ(AID)およびアポリポタンパク質B mRNA編集酵素触媒ポリペプチド様ファミリータンパク質(APOBEC)は、抗体の多様化およびレトロウイルスに対する自然免疫にとって重要なシチジンデアミナーゼである。これらの酵素は、DNAにおいてシチジン(C)をウラシル(U)に変換する。ウラシル修復の前にDNA複製が起こる場合、複製機構は、ウラシルをチミン(T)として処理することになり、これは、C:GからT:A塩基対への変換をもたらし(Yang, et al. (2016) Nat Commun doi 10.1038/ncomms13330)、したがってこのシステムは、CからTへの点突然変異を生成するのに使用することができる。
【0056】
いずれの本明細書に記載される塩基エディターも、これらに限定されないが、遺伝子ノックアウト(例えば、正規のコドンの代わりに停止コドンを生産するための塩基の変更;スプライスアクセプター部位における塩基の変更);遺伝子発現を活性化または抑制するための遺伝子の制御(プロモーター)領域における突然変異の導入;および/または点突然変異を元に戻すことによる疾患の原因となる突然変異の修正などのあらゆる使用のための、標的化された塩基編集に使用することができる。塩基エディターおよび/または塩基エディターによって作製された標的化された変更を含む細胞および細胞株(ただし塩基エディターそれ自体をすでに含んでいない)も提供される。
【0057】
本発明の塩基エディターは、現在使用される塩基エディターと比較して予想外に優れた編集効率および/または特異性を提供する。
【0058】
概説
本方法の実施、ならびに、本明細書で開示される組成物の調製および使用は、別段の指定がない限り、当業界の技術範囲内の、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算機化学、細胞培養、組換えDNAおよび関連分野における従来の技術を採用する。これらの技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 and Third edition, 2001; Ausubel et al., CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987および定期的な改訂版; METHODS IN ENZYMOLOGYのシリーズ, Academic Press, San Diego; Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION, Third edition, Academic Press, San Diego, 1998; METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol. 304, "Chromatin" (P.M. Wassarman and A. P. Wolffe, eds.), Academic Press, San Diego, 1999;ならびにMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 119, "Chromatin Protocols" (P.B. Becker, ed.) Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
【0059】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、同義的に使用され、一本鎖または二本鎖の形態のいずれかの、直鎖状または環状のコンフォメーションでの、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関する限定として解釈されないものとする。この用語は、天然ヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに、塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)において改変されたヌクレオチドを包含し得る。一般的に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対合特異性を有し、すなわち、Aのアナログは、Tと塩基対合すると予想される。
【0060】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、同義的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログまたは改変された誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0061】
「結合」は、巨大分子間の(例えば、タンパク質と核酸との間の)配列特異的な、非共有結合の相互作用を指す。全体としての相互作用が配列特異的である限り、結合相互作用の全ての成分が、配列特異的である(例えば、DNA主鎖中のリン酸残基と接触する)必要はない。このような相互作用は、一般的に、10-6-1またはそれ未満の解離定数(K)を特徴とする。「親和性」は、結合の強度を指し、結合親和性の増加は、より低いKと相関する。「非特異的な結合」は、目的のあらゆる分子(例えば操作されたヌクレアーゼ)とオンターゲット配列に依存しない巨大分子(例えばDNA)との間で起こる非共有結合の相互作用を指す。
【0062】
「結合タンパク質」は、別の分子と非共有結合によって結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合することができる。タンパク質結合タンパク質の場合、それは、それ自体に結合することができ(それによりホモ二量体、ホモ三量体などを形成する)、および/または異なる1つまたは複数のタンパク質の1つまたは複数の分子に結合することができる。結合タンパク質は、1つより多くのタイプの結合活性を有していてもよい。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合およびタンパク質結合活性を有する。RNAガイドヌクレアーゼシステムの場合において、RNAガイドは、ヌクレアーゼ成分(Cas9またはCfp1)にとって異種であり、その両方が操作されていてもよい。
【0063】
「DNA結合分子」は、DNAに結合することができる分子である。このようなDNA結合分子は、ポリペプチド、タンパク質のドメイン、より大きいタンパク質またはポリヌクレオチド内のドメインであり得る。一部の実施形態において、ポリヌクレオチドは、DNAであり、一方で他の実施形態において、ポリヌクレオチドは、RNAである。一部の実施形態において、DNA結合分子は、ヌクレアーゼのタンパク質ドメイン(例えばFokIドメイン)であり、一方で他の実施形態において、DNA結合分子は、RNAガイドヌクレアーゼのガイドRNA成分(例えばCas9またはCpf1)である。DNA結合分子は、配列特異的な方式で、例えば、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して、またはジンクフィンガータンパク質(ZFP)またはTALEのRVDの1つまたは複数のZFP認識ヘリックス領域との相互作用を介してDNAと結合する、タンパク質、またはより大きいタンパク質内のドメインを含んでいてもよい。DNA結合分子としてはまた、CRISPR/Casシステムの単一ガイドRNA(sgRNA)および/またはTtagoシステムのDNA結合ドメインも挙げられる。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語はしばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略記される。
【0064】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、亜鉛イオンの配位を介してその構造が安定化されている結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つまたは複数のジンクフィンガーを介して、配列特異的な方式でDNAと結合するタンパク質またはより大きいタンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語はしばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと略記される。
【0065】
「TALE DNA結合ドメイン」または「TALE」は、1つまたは複数のTALE反復ドメイン/単位を含むポリペプチドである。反復ドメインは、その同種の標的DNA配列へのTALEの結合に関与する。単一の「反復単位」(「反復」とも称される)は、典型的には33~35アミノ酸の長さであり、天然に存在するTALEタンパク質内の他のTALE反復配列と少なくとも部分的な配列相同性を示す。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0066】
DNA結合ドメインは、例えば、天然に存在するジンクフィンガータンパク質の認識ヘリックス領域の操作(1つまたは複数のアミノ酸を変更すること)を介して、またはDNA結合に関与するアミノ酸(「反復可変二残基」またはRVD領域)の操作によって、予め決定されたヌクレオチド配列に結合するように「操作」されていてもよい。それゆえに、操作されたジンクフィンガータンパク質またはTALEタンパク質は、天然に存在しないタンパク質である。ジンクフィンガータンパク質およびTALEを操作するための方法の非限定的な例は、設計および選択である。設計されたタンパク質は、その設計/組成物が主として合理的な基準に起因する天然に存在しないタンパク質である。設計のための合理的な基準としては、置換規則の適用、および既存のZFPまたはTALE設計および結合データのデータベースに保存されている情報における情報を処理するためのコンピューター化されたアルゴリズムが挙げられる。例えば、米国特許第8,586,526号;6,140,081号;6,453,242号;および6,534,261号を参照されたい;また国際特許公開WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536;およびWO03/016496も参照されたい。
【0067】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質、TALEタンパク質またはCRISPR/Casシステムは、天然に見出されないものであり、その生産は、主として実験的なプロセス、例えばファージディスプレイ、相互作用トラップ、合理的設計またはハイブリッド選択に起因する。例えば、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;および6,200,759号;ならびに国際特許公開WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197;およびWO02/099084を参照されたい。
【0068】
「TtAgo」は、遺伝子サイレンシングに関与すると考えられる原核生物アルゴノートタンパク質である。TtAgoは、細菌サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)由来である。例えば、Swarts, et al. (2014) Nature 507(7491):258-261; Swarts, et al. (2012) PLoS One 7(4):e35888; G. Sheng, et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 111, 652)を参照されたい。「TtAgoシステム」は全て、例えばTtAgo酵素による切断のためのガイドDNAなどの必要な成分である。
【0069】
「切断」は、DNA分子の共有結合の主鎖の破断を指す。切断は、これらに限定されないが、リン酸ジエステル結合の酵素による、または化学的な加水分解などの様々な方法によって開始することができる。一本鎖切断および二本鎖切断のどちらも可能であり、二本鎖切断は、2つの別個の一本鎖切断事象の結果として起こり得る。DNA切断は、平滑末端または互い違いの末端のいずれかの生産をもたらし得る。特定の実施形態において、融合ポリペプチドは、標的化された二本鎖DNA切断のために使用される。
【0070】
「切断ハーフドメイン」は、第2のポリペプチド(同一であるか、または異なるかのいずれか)と共に切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語「第1および第2の切断ハーフドメイン」、「+および-の切断ハーフドメイン」および「右および左の切断ハーフドメイン」は、同義的に使用され、二量体化する切断ハーフドメインの対を指す。用語「切断ドメイン」は、用語「切断ハーフドメイン」と同義的に使用される。用語「FokI切断ドメイン」は、配列番号5で示されるFokI配列、ならびに、あらゆるFokIホモログを含む。
【0071】
「操作された切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作された切断ハーフドメイン)と必須のヘテロ二量体を形成するように改変された切断ハーフドメインである。
【0072】
用語「編集」は、本明細書で使用される場合、ヌクレオチド塩基が、同じ配置における最初の(例えば、野生型)塩基と比較して改変されるプロセスを指す。必然的に、塩基編集(例えば、標的化された点突然変異)は、編集されたDNAから転写されたあらゆるmRNAにおいて変更を再現することになる。アデニンおよびシチジンデアミナーゼは、それらそれぞれのヌクレオチド標的からアミノ基を除去し、それらをそれぞれイノシンおよびウリジンに変換する。DNA修復または複製の間、ポリメラーゼ酵素によって、イノシンはグアニンとして認識され、ウリジンはチミンとして認識され、結果として、編集された二本鎖DNAにおいて、A:T塩基対のG:C塩基対への、またはC:G塩基対のT:A塩基対への変換が生じる。「塩基編集ウィンドウ」は、本明細書に記載される塩基エディターによる編集に供されるあらゆる塩基を指し、これは、編集システムのいずれの成分からあらゆる距離にあってもよく、典型的には塩基編集システムの少なくとも1つの成分が標的DNAに結合した後に接近可能な領域内である。PAM配列(例えば、Cas9含有エディター)を必要とする塩基エディターは、典型的に、PAM配列から13~16個またはそれより多くのヌクレオチドであり得る、3、4、5、6、7個またはそれより多くのヌクレオチドの塩基編集ウィンドウを有する。本明細書に記載される塩基エディターは、これらに限定されないが、遺伝子ノックアウト(例えば、正規のコドンの代わりに停止コドンを生産するための塩基の変更;スプライスアクセプター部位における塩基の変更);遺伝子発現を活性化または抑制するための遺伝子の制御(プロモーター)領域における突然変異の導入;および/または点突然変異を元に戻すことによる疾患の原因となる突然変異の修正などのあらゆる使用のための、標的化された塩基編集に使用することができる。塩基エディターおよび/または塩基エディターによって作製された標的化された変更を含む細胞株(ただし塩基エディターそれ自体をすでに含んでいない)。
【0073】
用語「配列」は、あらゆる長さのヌクレオチド配列を指し、これは、DNAまたはRNAであってもよいし、直鎖状、環状または分岐状であってもよいし、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。用語「導入遺伝子」は、ゲノムに挿入されるヌクレオチド配列を指す。導入遺伝子は、例えば、2から100,000,000ヌクレオチドの間の長さのあらゆる長さ、(またはそれらの間またはそれを超える範囲のあらゆる整数値)、好ましくは約100から100,000の間のヌクレオチドの長さ(またはそれらの間のあらゆる整数)、より好ましくは約2000から20,000ヌクレオチドの長さ(またはそれらの間のあらゆる値)、より一層好ましくは約5から15kbの間(またはそれらの間のあらゆる値)を有していてもよい。
【0074】
「染色体」は、細胞のゲノムの全部または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムはしばしば、その核型によって特徴付けられ、核型とは、細胞のゲノムを含む全ての染色体のコレクションである。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含んでいてもよい。
【0075】
「エピソーム」は、細胞の染色体核型の一部ではない、複製する核酸、核タンパク質複合体、または核酸を含む他の構造である。エピソームの例としては、プラスミド、ミニサークルおよび特定のウイルスゲノムが挙げられる。本明細書に記載される肝臓特異的なコンストラクトは、エピソームによって維持されてもよいし、または代替として、細胞に安定して統合されていてもよい。
【0076】
「外因性」分子は、細胞中に通常存在しないが、1つまたは複数の遺伝学的な、生化学的な、または他の方法によって細胞に導入され得る分子である。「細胞中に通常存在すること」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して決定される。したがって、例えば、筋肉の胚発生中にのみ存在する分子は、成体の筋肉細胞に関して外因性分子である。同様に、ヒートショックにより誘導された分子は、ヒートショックを受けていない細胞に関して外因性分子である。外因性分子は、例えば、正常に機能しない内因性分子の機能性バージョン、または正常に機能する内因性分子の正常に機能しないバージョンを含み得る。
【0077】
外因性分子は、数ある中でも、コンビナトリアルケミストリープロセスによって生成したものなどの小分子であってもよいし、またはタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖類、上記の分子のあらゆる改変された誘導体、もしくは上記の分子の1つまたは複数を含むあらゆる複合体などの巨大分子であってもよい。核酸としては、DNAおよびRNAが挙げられ、これらは、一本鎖または二本鎖であってもよいし、直鎖状、分岐状または環状であってもよいし、あらゆる長さを有していてもよい。核酸としては、二重鎖を形成することが可能なもの、ならびに、三重鎖を形成する核酸が挙げられる。例えば、米国特許第5,176,996号および5,422,251号を参照されたい。タンパク質としては、これらに限定されないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン再構成因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、リガーゼ、デユビキチナーゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが挙げられる。
【0078】
外因性分子は、内因性分子と同じタイプの分子であってもよく、例えば、外因性タンパク質または核酸である。例えば、外因性核酸は、細胞に導入された、感染性のウイルスゲノム、プラスミドもしくはエピソーム、または通常細胞中に存在しない染色体を含んでいてもよい。細胞への外因性分子の導入のための方法は当業者公知であり、その例としては、これらに限定されないが、脂質媒介移行(すなわち、中性およびカチオン脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子衝撃、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介移行およびウイルスベクター媒介移行が挙げられる。外因性分子はまた、内因性分子と同じタイプであるが、細胞の由来となる種と異なる種由来の分子であってもよい。例えば、ヒト核酸配列は、初めにマウスまたはハムスターから誘導された細胞株に導入されてもよい。外因性分子の植物細胞への導入のための方法は当業者公知であり、その例としては、これらに限定されないが、プロトプラスト形質転換、炭化ケイ素(例えば、WHISKERS(商標))、アグロバクテリウム媒介形質転換、脂質媒介移行(すなわち、中性およびカチオン脂質を含むリポソーム)、エレクトロポレーション、直接注射、細胞融合、粒子衝撃(例えば、「ジーンガン」を使用するもの)、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介移行およびウイルスベクター媒介移行が挙げられる。
【0079】
それに対して、「内因性」分子は、特定の環境条件下で、特定の発生段階で、特定の細胞中に通常存在する分子である。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体または他のオルガネラのゲノム、または天然に存在するエピソームの核酸を含み得る。追加の内因性分子としては、タンパク質、例えば、転写因子および酵素を挙げることができる。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「外因性核酸の生成物」は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド生成物の両方、例えば、転写生成物(RNAなどのポリヌクレオチド)および翻訳生成物(ポリペプチド)を含む。
【0081】
「融合」分子は、2つまたはそれより多くのサブユニット分子が、好ましくは共有結合で連結されている分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子であってもよいし、または異なる化学的タイプの分子であってもよい。融合分子の例としては、これらに限定されないが、融合タンパク質(例えば、タンパク質DNA結合ドメインと切断ドメインとの融合体)、切断ドメインと作動的に会合したポリヌクレオチドDNA結合ドメイン(例えば、sgRNA)と、融合核酸(例えば、融合タンパク質をコードする核酸)との融合体が挙げられる。
【0082】
細胞中での融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質のデリバリーに起因していてもよいし、または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドのデリバリーによってもよく、この場合、ポリヌクレオチドが転写され、転写物が翻訳されて、融合タンパク質が生成する。また、トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチドライゲーションが、細胞中におけるタンパク質の発現に関与していてもよい。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチドデリバリーのための方法は、本開示の他所で提示される。
【0083】
「スプリット酵素」は、2つまたはそれより多くの不活性なポリペプチド鎖に分割され、次いで機能できる酵素に再アセンブルした酵素である。スプリット酵素の活性タンパク質へのアセンブリーはしばしば、近接していることによって促進され、そこで各不活性ポリペプチド鎖が、不活性な鎖を物理的に一緒にすることが可能な他の分子に融合することにより、それらがアセンブル可能になり、フラグメント化のエントロピー消費を克服する。融合した分子は、相互作用がスプリット酵素を構成するポリペプチドのアセンブリーを引き起こすように、互いに相互作用する他のタンパク質、または互いに相互作用するか、もしくは共通のリガンドと相互作用するかのいずれかのあらゆるタイプの分子であり得る。例えばShekhawat and Ghosh (2011) Curr Opin Chem Biol 15(6):789-797を参照されたい。
【0084】
本開示の目的のための「遺伝子」は、遺伝子生成物をコードするDNA領域(下記を参照)、ならびに、遺伝子生成物の生産を調節する全てのDNA領域を含み、このような調節配列は、コード配列および/または転写される配列に隣接していてもよいし、そうでなくてもよい。したがって、遺伝子は、これらに限定されないが、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス結合部位および遺伝子座調節領域を含む。
【0085】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含有される情報の遺伝子生成物への変換を指す。遺伝子生成物は、遺伝子(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造的なRNAまたは他のあらゆるタイプのRNA)の直接の転写生成物、またはmRNAの翻訳によって生産されたタンパク質であり得る。遺伝子生成物としてはまた、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集などのプロセスによって改変されたRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化によって改変されたタンパク質も挙げられる。
【0086】
遺伝子発現の「モジュレーション」は、遺伝子の活性における変更を指す。発現のモジュレーションとしては、これらに限定されないが、遺伝子活性化および遺伝子抑制を挙げることができる。ゲノム編集(例えば、切断、変更、不活性化、ランダム突然変異)は、発現をモジュレートするのに使用することができる。遺伝子不活性化は、本明細書に記載されるZFP、TALEまたはCRISPR/Casシステムを含まない細胞と比較した、遺伝子発現におけるあらゆる低減を指す。したがって、遺伝子不活性化は、部分的であってもよいし、または完全であってもよい。
【0087】
「目的の領域」は、外因性分子と結合することが望ましい、細胞クロマチンのあらゆる領域、例えば、遺伝子、または遺伝子内の、もしくはそれに隣接する非コード配列などである。結合は、標的化されたDNAの切断および/または標的化された組換えの目的のためであり得る。目的の領域は、例えば、染色体、エピソーム、オルガネラのゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染性のウイルスゲノム中に存在していてもよい。目的の領域は、遺伝子のコード領域内、転写された非コード領域内、例えば、リーダー配列、トレーラー配列もしくはイントロンなどの中、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかにおける転写されなかった領域内であってもよい。目的の領域は、単一のヌクレオチド対ほどの小さい領域であってもよいし、または長さが最大2,000ヌクレオチドの対、またはあらゆる整数値のヌクレオチド対であってもよい。
【0088】
「真核」細胞としては、これらに限定されないが、真菌細胞(例えば酵母)、植物細胞、動物細胞、哺乳類細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)、例えば幹細胞(多能性および複能性)などが挙げられる。
【0089】
用語「作動的な連結」および「作動的に連結した」(または「作動可能に連結した」)は、2つまたはそれより多くの成分(例えば配列エレメント)の並置に対して同義的に使用され、この場合、これらの成分が、両方の成分が正常に機能し、成分の少なくとも1つが、他の成分の少なくとも1つにおいて発揮する機能を媒介することが可能になるように整列されている。例証として、転写調節配列、例えばプロモーターは、転写調節配列が、1つまたは複数の転写調節因子の存在または非存在に応答してコード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列に作動的に連結している。転写調節配列は、一般的に、コード配列とシスで作動的に連結しているが、必ずしもそれと直接隣接していなくてもよい。例えば、エンハンサーは、それらが連続していないとしても、コード配列に作動的に連結した転写調節配列である。
【0090】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能性フラグメント」は、その配列が全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一ではないが、全長のタンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持するタンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能性フラグメントは、対応する天然分子より多い、より少ない、またはそれと同じ数の残基を有していてもよく、および/または1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有していてもよい。核酸またはタンパク質の機能を決定するための方法(例えば、コードする機能、別の核酸にハイブリダイズする能力、酵素活性のアッセイ)は、当業界において周知である。
【0091】
ポリヌクレオチド「ベクター」または「コンストラクト」は、遺伝子配列を標的細胞に移行させることが可能である。典型的には、「ベクターコンストラクト」、「発現ベクター」、「発現コンストラクト」、「発現カセット」、および「遺伝子移入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指示することが可能であり、遺伝子配列を標的細胞に移行させることができるあらゆる核酸コンストラクトを意味する。したがって、この用語は、クローニング、および発現媒体、ならびに組み込み型ベクターを含む。
【0092】
用語「対象」および「患者」は、同義的に使用され、ヒト患者および非ヒト霊長類などの哺乳動物、ならびに、ウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウス、および他の動物などの実験動物を指す。したがって、用語「対象」または「患者」は、本明細書で使用される場合、本発明の発現カセットを投与することができるあらゆる哺乳類患者または対象を意味する。本発明の対象は、障害を有する対象を含む。
【0093】
本明細書で使用される用語「処置すること」および「処置」は、症状の重症度および/または頻度における低減、症状および/または根本的な原因の排除、症状および/またはそれらの根本的な原因の出現の防止、ならびにダメージの改善もしくは回復を指す。がん、単一遺伝子疾患および移植片対宿主病は、本明細書に記載される組成物および方法を使用して処置され得る状態の非限定的な例である。
【0094】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主としてDNA、ならびにヒストンおよび非ヒストンである染色体タンパク質などのタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの大部分が、ヌクレオソームの形態で存在し、それにおいて、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4のそれぞれを2つずつ含む八量体と会合するおよそ150塩基対のDNAを含み、リンカーDNA(生物に応じて様々な長さを有する)が、ヌクレオソームコアの間で伸長する。ヒストンH1の分子は、一般的に、リンカーDNAと会合する。本開示の目的のために、用語「クロマチン」は、原核性および真核性の両方の全てのタイプの細胞核タンパク質を包含することを意味する。細胞クロマチンは、染色体クロマチンとエピソームクロマチンの両方を含む。
【0095】
「接近可能な領域」は、核酸中に存在する標的部位が標的部位を認識する外因性分子と結合することができる細胞クロマチン中の部位である。いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、接近可能な領域は、ヌクレオソーム構造にパッケージングされない領域であると考えられる。接近可能な領域の別個の構造は、化学的および酵素的なプローブ、例えば、ヌクレアーゼに対するその感受性によって検出できることが多い。
【0096】
「標的部位」または「標的配列」は、結合にとって十分な条件が存在するという条件で結合分子が結合すると予想される核酸の部分を定義する核酸配列である。例えば、配列5’-GAATTC-3’は、EcoRI制限エンドヌクレアーゼのための標的部位である。「意図した」または「オンターゲット」配列は、結合する分子が結合することを意図される配列であり、「意図されない」または「オフターゲット」配列は、意図した標的ではない、結合する分子が結合するあらゆる配列を含む。
【0097】
用語「DNA不安定化分子」および「DNA巻き戻し分子」は、同義的に使用され、塩基エディターによって標的化された塩基の接近しやすさを増加させること(例えば、露出させることによって)に役立つあらゆる分子(例えば、タンパク質、ヌクレオチド、小分子など)を指す。この用語は、これらに限定されないが、ニッカーゼ、オリゴヌクレオチド(LNA、PNA、BNAなど)、RNAプログラム可能システム(例えば、sgRNAに作動可能に連結したCasタンパク質)、および他のタンパク質(例えば、表A)を含む。
【0098】
塩基エディター
本明細書に記載される塩基編集組成物(システム)は、二本鎖破断を誘発させずに個々のDNA塩基対の同一性を直接変更することができる。したがって、塩基エディターは、標的細胞に対するDNA修復経路の選好に依存しない。さらに、標的DNA中に二本鎖破断が生じないため、遊離のDNA末端がなく、したがって転移が起こらない。
【0099】
本明細書に記載される塩基エディターは、C:G対をT:A対に変更するシトシン塩基エディター(CBE)であってもよいし、またはA:T対をG:C対に変更するアデニン塩基エディター(ABE)であってもよい。これらの塩基エディターは、例えば、正規のコドンを停止コドンに変えることによって(例えば、シトシン塩基エディターを使用して)、および/またはシトシンまたはアデニン塩基エディターのいずれかを使用してスプライスアクセプター部位を突然変異させることによって、不活性化(遺伝子ノックアウト)に使用することができる。加えて、本明細書に記載される塩基エディターは、遺伝子の発現を活性化または抑制するために、遺伝子の制御(例えば、プロモーター領域)を変更することに使用することができる。さらに、塩基編集は、突然変異、特に疾患の原因となる突然変異を修正するのに使用することができる。
【0100】
第1のAPOBEC-dCas9塩基エディターの開発に続いて、ウラシルDNAグリコシラーゼ(UGI)が付加されたBE2と呼ばれる第2の塩基エディターを開発した。塩基除去修復は、G:Uミスマッチに対する細胞の一次応答であり、ウラシルN-グリコシラーゼ(UNG)によるウラシルの切り出しによって開始される。UNGによって切り出したものから編集されたG:U中間体を保護する目的で、83アミノ酸のウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)を、触媒的に死んでいるCas9(dCas9)のC末端に直接付加したところ、効率の増加がもたらされた(Komor, et al. (2017) Science Advances 3(8):eaao4774)。塩基エディターの初期バージョンにおいて、典型的には、DNA複製機構を使用して、編集された塩基と逆側のヌクレオチド塩基の最終的な変換が行われるように、死んでいるCas9が使用された。加えて、Casニッカーゼは、編集された塩基を含む鎖の逆側の鎖にニックを作り出すために使用されてきた。ニックが作り出されることにより、ニック下流の領域が切り出され、テンプレートとして編集された鎖を使用して置き換えられるように、DNA修復機構が引き付けられる。シチジン塩基エディターBE3は、ニッカーゼであるCas、Cas9 D10Aを使用したところ、これも効率を増加させた(Kim, et al. (2017) Nat Biotechnol 35(4):371-376)。さらに別の変異体において、BE4システムは、より一層大きい効率のために、複合体のNおよびC末端の両方に2つのUGIドメインを使用している。別のシチジンデアミナーゼシステムは、ニッカーゼCas9と組み合わせて、活性化によって誘導されたシチジンデアミナーゼ(AID)に頼る(「標的-AID」)。
【0101】
塩基エディターがDNAと相互作用する場合、Casベースのエディターは、相互作用するのにPAM配列を必要とし、次いで、活性のためのウィンドウ(塩基編集ウィンドウ)は、典型的には、PAM配列の5’末端から13~16塩基である(図2も参照)。上述した異なる編集システムの活性ウィンドウは、様々である。標的-AIDシステムは、PAM配列から遠く離れた塩基を編集し、一方でBE4システムは、PAMにより近い塩基を編集する。塩基エディターはまた、Cpf1 CRISPRシステムに基づいて構築されてきた(Eid, et al.、同書中)。加えて、塩基エディターのBE4の立体配置は、化膿性連鎖球菌と黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来CRISPRシステム(それぞれBE4およびSaBE4)の両方を使用して開発された。それゆえに、Cas9塩基編集システムは、標的部位から適切に間隔を開けたPAM配列の利用可能性(距離は、ベースのエディターの効率および/または特異性に顕著に影響を与える可能性があるため)、および/または塩基編集ウィンドウからのPAM配列の距離(図2Aで示されるように、標的塩基(例えば、A)とNGG PAMの5’末端との間の13~16塩基)によって限定される。
【0102】
したがって、本発明より前、Cas9塩基エディターは、ゲノム規模でのオフターゲット作用、ならびにバイスタンダー作用(標的化された塩基付近での意図されない編集)を誘発することが公知であった。例えば、Zuo, et al. (2019) Science 364(6437):289-292; Jin, et al. (2019) Science 364(6437):292-295; Gruenewald, et al. (2019) Nature 569(7756):433-437を参照されたい。
【0103】
追加の塩基エディターの立体配置は、バクテリオファージMu由来のGAMタンパク質の使用を含んでいる。一部の場合において、一部のタイプの塩基編集の結果として、インデル(挿入および欠失)が観察されている。一部の塩基エディターは、Uと逆側の鎖にニックを入れるため、UNGによるグリコシド結合の切断、それに続くAPリアーゼによる得られたアプリンまたはアピリミジン部位のプロセシングは、二本鎖DNA破断(DSB)をもたらす可能性があり、その結果としてインデル形成が生じる可能性がある。バクテリオファージMuのGamタンパク質は、DSBの末端に結合し、それを分解から保護することから、DSBの遊離末端との結合にGamを使用することは、塩基編集のプロセス中におけるインデル形成を低減することができる(Komor, et al. (2016) Nature 533:420-424; Komor, et al. (2017) Science Advances 3(8))。シチジンデアミナーゼエディターに加えて、アデニン塩基をイノシンに変換する合成アデノシンデアミナーゼ(アデニン塩基エディター:「ABE」、Gaudelli, et al. (2017) Nature 551(7681):464-471を参照)を用いて塩基エディターが開発されている。イノシンは、シチジンと塩基対合して、その後グアニンに修正されてもよく、それによって、AがGに、またはA:TがG:Cに変換される。
【0104】
上述したように、本明細書に記載される塩基エディターは、DNAの一本鎖領域内の標的化された塩基を露出させるためにDNAヘリックスを「開く」分子をさらに含んでいてもよい。これを達成できる一般的に公知の分子としては、これらに限定されないが、DNAヘリカーゼ、ヘリックスを不安定化する分子、および細菌DnaAタンパク質、一本鎖DNA結合タンパク質、三重鎖を形成するオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0105】
特定の実施形態において、塩基エディターは、編集のためにDNAヘリックスを巻き戻して(開いて)標的化された塩基を露出させることにおいて補助となるタンパク質ドメインを含む。表Aに好適なタンパク質の非限定的な例を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0106】
特定の実施形態において、塩基エディター(例えば、Cas非含有塩基エディター)は、1つまたは複数のDNAオリゴヌクレオチド、1つまたは複数のRNAオリゴヌクレオチドおよび/または1つまたは複数の合成オリゴヌクレオチド、例えば1つまたは複数のペプチド核酸(PNA)、1つまたは複数のロックド核酸(LNA)および/または1つまたは複数の架橋された核酸(BNA)などを含む。例えば、図1Dを参照されたい。例えば、PNAに関しては、Nielsen, et al. (1991) Science 254:1497-1500 and Bahal, et al. (2014) Curr Gene Ther. 14(5):331-342;LNAに関しては、Moreno, et al. (2013) Nucleic Acid Res. 41(5):3257-3273およびGeny, et al. (2016) Nucleic Acid Res. 44(5):2007-2019;およびBNAに関しては、Rahman, et al. (2007) Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids 26(10-12):1625-1628を参照されたい。
【0107】
特定の実施形態において、本発明のCas9非含有塩基エディターは、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質およびZFNニッカーゼを含み、さらに、1つまたは複数のDNA不安定化因子を含んでいてもよい。特定の実施形態において、DNA不安定化因子は、タンパク質(例えば、表Aで示されるような)またはオリゴヌクレオチド(例えば、LNA、PNAまたはBNA)である。他の実施形態において、Cas9非含有塩基エディターは、あらゆるCas9の等価体、例えばCas12a(全長または短縮化されたCas12タンパク質を含む)を含む、DNAを不安定化する(巻き戻す)特性を有する非Cas9 CRISPRタンパク質を含む。他の実施形態において、Cas9非含有塩基エディターは、CRISPRシステム由来のいかなるエレメントも含まない。1つまたは複数の非Cas9 DNA不安定化(巻き戻し)因子(例えば、表Aのタンパク質、LNA、PNA、BNAなど)は、塩基エディターのあらゆる成分に作動可能に連結されていてもよく、例えば、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質のいずれかの成分および/またはZFNニッカーゼの成分のいずれかに作動可能に連結されていてもよい。
【0108】
特定の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のヌクレオチド配列、例えば1つまたは複数のDNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)および/または架橋された核酸(BNA)を含み、これらは、標的部位に塩基エディターのための一本鎖DNA基質を提供するのに使用することができる。これは、例えば二重鎖侵入、三重鎖侵入またはテールクランプによって促進することができる(Quijano, et al. (2017) Yale J. Biol and Med. 90:583-598; Pellestor and Paulasova (2004) European J. Human Genetics 12:694-700; Schleifman, et al. (2011) Chem & Bio. 18:1189-1198。塩基エディターの1つまたは複数のヌクレオチド配列の構造は、標的配列の組成に応じて、DNAおよび/またはRNAおよび/またはLNAおよび/またはLNAおよび/またはBNA塩基の長さ、数および配置;ホスホロチオエート結合;これらのオリゴヌクレオチドの他の一般的な修飾において様々であると予想される。
【0109】
特定の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のPNA、例えば結合の強化、溶解性の増加およびデリバリーの改善のためのミニPEG置換およびガンマ位を含有するガンマPNAを含む(Bahal, et al. (2014) Current Gene Ther. 14(5):331-342)。特定の実施形態において、PNAは、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示す1つまたは複数のO、および/または1つまたは複数のシトシン(C)もしくはプソイドイソシトシン残基を含む。1つまたは複数のリシン(Lys)残基は、PNA中に含まれていてもよく、例えば、PNA配列のNおよび/またはC末端に含まれていてもよい。特定の実施形態において、1、2、3、4、5個またはそれより多くのLys残基が、PNAの一方または両方の末端に含まれる。特定の実施形態において、2つまたはそれより多くのPNAが、塩基エディター中で、例えば互いに同じまたは逆の方向で使用される。特定の実施形態において、1つまたは複数のPNAは、構造:N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;N-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNN-OOO-NNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-C;および/またはN-Lys-Lys-Lys-NNNNNNNNNNNNNNN-Lys-Lys-Lys-Cを有し、式中、Oは、8-アミノ-2,6-ジオキサオクタン酸リンカーを示し、Cは、シトシンを示す。PNA配列のNおよび/またはC末端におけるLys残基は適宜であり、シトシンが、プソイドイソシトシンで置換されていてもよい。特定の実施形態において、1つまたは複数のPNAは、図8Bから8Eで示されるような1つまたは複数のPNAを含む。
【0110】
他の実施形態において、塩基エディターは、1つまたは複数のLNAを含む。LNAは、性能の改善のために、スタッキングリンカーおよび2’-グリシルアミノ-LNAを含んでいてもよい(Geny, et al. (2016) Nucleic Acids Res. 44(5):2007-2019。特定の実施形態において、LNAは、1つまたは複数のホスホロチオエート結合を含み、これらは1つまたは複数のLNA残基および/またはDNA残基の間に含まれていてもよい。他の実施形態において、LNAは、1つまたは複数のコレステロール-TEGを含み、これは、細胞への取り込みを増加させることができる。特定の実施形態において、1つまたは複数のLNAは、以下の構造:5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-3’(配列番号1);5’-N*n*NnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnn*N*n-3’(配列番号69);および/または5’-NnNnNnNnNnNnNnNtctctnNnNnNnNnNnNnNnNnnNnnNnnNnnNn-Chol-TEG-3’(配列番号70)を有し、式中、LNAヌクレオチドは、大文字で示され;DNAヌクレオチドは、小文字で示され;「*」は、ホスホロチオエート結合を示し;「Chol-TEG」は、細胞への取り込みの増加のための3’コレステロール-TEGを示す(例えば、Bijsterbosch, et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28:2717-2725; Bijsterbosch, et al. (2002) J. Pharmacol. Exp. Ther. 302:619-626; Manoharan (2002) Antisense Nucleic Acid Drug Dev 12:103-28; M. Manoharan (2004) Curr Opin Chem Biol. 8:570-9を参照)。特定の実施形態において、塩基エディターは、図8Fまたは図8Gで示されるように、1つまたは複数のLNAを含む。
【0111】
1つまたは複数のDNA不安定化因子は、塩基エディター(例えば、ABEおよび/またはCBE)および/またはニッカーゼから独立して提供されてもよいし、および/またはそれと共に提供されてもよい。特定の実施形態において、DNA不安定化因子は、あらゆる方向で(例えば、Nおよび/またはC末端に)、ZFPおよび/またはZFNニッカーゼに融合されている。DNA不安定化因子は、塩基エディター標的部位の1kbのウィンドウ以内で結合していてもよい。
【0112】
特定の実施形態において、塩基エディター(例えば、Cas9アデニンまたはシトシン塩基エディター)、および塩基エディター付近の標的部位(RANGE)に特異的に結合する1つまたは複数の追加のDNA結合ドメイン(例えば、ZFP、TALE、追加のsgRNA)を含む塩基編集システムが本明細書に記載される。特定の実施形態において、Cas9を含有する塩基編集システムは、Cas9ニッカーゼと、Cas9ニッカーゼを固定すること、および/または塩基エディターの1つまたは複数の成分を他の成分に対して位置決定することにより特異性および/または塩基編集効率を増加させるのに役立つ1つまたは複数のDNA結合分子(例えば、ZFP)とを含む。1つまたは複数のDNA結合分子(例えば、ZFPアンカー)は、典型的に、塩基エディター(例えば、Cas9またはCas9非含有塩基エディター)および/または標的化された塩基の1~50(またはそれらの間のあらゆる値の)ヌクレオチド以内の標的部位に結合する。DNA結合分子は、塩基エディターおよび/または標的化された塩基の5’および/または3’に結合することができる。特定の実施形態において、本明細書に記載されるCas9塩基エディターは、さらに2つのZFPドメイン、例えば、デアミナーゼドメインまたはその成分に作動可能に連結したZFPドメイン、およびZFPアンカードメインを含む。例えば、図1Bを参照されたい。特定の実施形態において、少なくとも1つのDNA結合ドメインは、塩基エディターの標的部位の5’に結合しており、塩基エディターが結合する鎖と同一の鎖で結合してもよいし、または異なる鎖で結合してもよい。例えば、1つまたは複数の追加のZFPアンカーが使用されており、システムの塩基エディターの標的部位の5’に、塩基エディターが結合する鎖と同じ鎖において、特異的に結合する例示的な実施形態について、図1B、右下の概略図;図3;および図7Aを参照されたい。1つまたは複数のZFPアンカーの包含は、塩基エディターの効率および/または特異性を増加させることができ、例えば、一部のケースにおいて、ZFPアンカーを含まない塩基エディターと比較して、2倍から5倍(またはそれらの間のあらゆる値)、10倍から100倍(またはそれらの間のあらゆる値)、または100倍より多く増加させることができる。
【0113】
他の実施形態において、(1)Cas9ニッカーゼ(例えば、アデノシンデアミナーゼの触媒的に不活性な単量体を含む);(2)Cas9ニッカーゼに対して標的部位の5’または3’に特異的に結合するアンカーDNA結合ドメイン(例えば、ZFP);および(3)アデノシンデアミナーゼの触媒的に不活性な単量体、およびCas9ニッカーゼに対する標的部位の5’または3’に結合するDNA結合ドメイン(例えば、ZFP)を含む、非Cas9ニッカーゼ(例えば、ZFP-ニッカーゼ)を含む塩基編集システムが本明細書に記載される。Aデアミナーゼの二量体化のとき、Cas9ニッカーゼおよび非Cas9ニッカーゼ(例えば、ZFNニッカーゼ)の単量体が二量体化して、機能性デアミナーゼを形成する。アンカーDNA結合ドメインおよび非Cas9ニッカーゼは、標的の同一もしくは異なる鎖で、および/またはCas9ニッカーゼの同じ(5’または3’)側もしくは異なる(一方は5’およびもう一方は3’)側で結合していてもよい。特定の実施形態において、アンカーDNA結合ドメインおよび非Cas9ニッカーゼは、Cas9ニッカーゼの逆側における逆の鎖に結合する。例えば、図1B、上の概略図を参照されたい。
【0114】
他の実施形態において、(1)Cas9ニッカーゼ;(2)Cas9ニッカーゼに対する標的部位の5’または3’に特異的に結合する適宜のアンカーDNA結合ドメイン(例えば、ZFP);および(3)AまたはCデアミナーゼを含む非Cas9ニッカーゼ(例えば、ZFP-ニッカーゼ)を含む塩基編集システムが本明細書に記載される。アンカーDNA結合ドメインおよび非Cas9ニッカーゼは、標的の同一または異なる鎖で、および/またはCas9ニッカーゼの同じ(5’または3’)側もしくは異なる(一方は5’およびもう一方は3’)側で結合していてもよい。特定の実施形態において、アンカーDNA結合ドメインおよび非Cas9ニッカーゼ塩基エディターは、Cas9ニッカーゼの逆側における逆の鎖に結合する。例えば、図1B、下の中央の概略図を参照されたい。
【0115】
他の実施形態において、(1)sgRNAに作動可能に連結したCas9タンパク質(例えば、dCas9);(2)Cas9ニッカーゼに対する標的部位の5’または3’に特異的に結合する適宜のアンカーDNA結合ドメイン(例えば、ZFPアンカー);(3)AまたはCデアミナーゼに作動可能に連結したZFPを含む融合タンパク質であって、Cas9タンパク質に対して3’または5’である、融合タンパク質;および(4)Cas9タンパク質および/またはZFPの3’または5’と結合するZFNニッカーゼを含む塩基編集システムが本明細書に記載される。アンカーDNA結合ドメインおよび非Cas9タンパク質は、標的の同一または異なる鎖で、および/またはCas9タンパク質の同じ(5’または3’)側または異なる(一方は5’およびもう一方は3’)側で結合していてもよい。特定の実施形態において、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質のZFPおよび適宜のアンカーZFPは、逆の鎖に結合する。例えば、図1Cを参照されたい。さらなる実施形態において、塩基エディターは、ZFNニッカーゼを含まない。
【0116】
本明細書に記載されるCas9塩基エディターは、sgRNAを含む塩基エディターに利用可能なPAM配列を拡大すること(緩めること)などの、効率的で標的化された塩基編集のために使用できるPAM配列に関して、驚くべき、かつ予想外の利点を提供する。
【0117】
Cas9塩基エディターを含まない(例えば、Cas9ニッカーゼまたはCas9タンパク質を欠如した)塩基エディター(ABEまたはCBE)も本明細書に記載される。例えば、図1A図1Dを参照されたい。
【0118】
特定の実施形態において、塩基エディターは、(1)非Cas9ニッカーゼ、例えば、対のヌクレアーゼドメインの1つが触媒的に不活性であるZFNの対(ヌクレアーゼドメインに作動可能に連結したZFP)を含むZFNニッカーゼ(例えば、米国特許第8,703,489号;9,200,266号;9,631,186号;および10,113,207号を参照);および(2)AまたはCデアミナーゼに作動可能に連結したZFPを含むZFP塩基エディターを含む。例えば、図1B、左下の概略図を参照されたい。
【0119】
他の実施形態において、塩基エディターは、あらゆるRNAプログラム可能分子を含むDNA不安定化分子を含む。特定の実施形態において、DNA不安定化分子は、Cas9タンパク質(例えば、dCas9)およびsgRNAを含むRNAプログラム可能分子を含む。他の実施形態において、RNAプログラム可能分子は、Cas9タンパク質(例えば、Cpf1(Cas12aとしても公知)、C2c1、C2c2(Cas13aとしても公知)、C2c3、Cas1、Cas2、Cas4、CasXおよびCasY);ならびにアデノシンまたはシトシンデアミナーゼではない。塩基エディターは、少なくとも1つのZFP DNA結合ドメイン(例えば、アデノシンまたはシトシンデアミナーゼに作動可能に連結したZFP DNA結合ドメイン;DNA不安定化分子のどちらかの側のZFPアンカー;および/またはZFNニッカーゼのあらゆる組合せ)をさらに含んでいてもよい。
【0120】
他の実施形態において、Cas9非含有塩基エディターは、ZFNニッカーゼ、およびABEまたはCBE(例えばZFPに作動可能に連結した)、および標的塩基を接近可能にする(例えば、DNAを巻き戻す)1つまたは複数のDNA不安定化分子を含む。例えば、図1Dを参照されたい。DNAを不安定化する(巻き戻す)分子の非限定的な例としては、表Aで示されるタンパク質ドメイン、ならびに図8で示されるLNAおよび/またはPNAなどの核酸が挙げられる。ZFNニッカーゼは、触媒的に活性な、および/もしくは触媒的に不活性なFokIドメインにおける1つもしくは複数の突然変異、ならびに/またはZFP主鎖への1つもしくは複数の突然変異を含み得る。例えば、米国特許公開第2018/0087072号を参照されたい。特定の実施形態において、本明細書に記載される塩基エディターは、Cas9非含有であってもよいが、非Cas9 CRISPRタンパク質を含み得る。
【0121】
Cas9非含有(例えば、ZFP)塩基エディターのいずれかは、例えば、DNAのさらなる巻き戻しが、標的の接近しやすさを増加させることによって塩基エディターの機能を増大させる場合、1つまたは複数の追加のDNA不安定化因子(例えば、DNAヘリカーゼ、ヘリックスを不安定化する分子、および細菌DnaAタンパク質、一本鎖DNA結合タンパク質、オリゴヌクレオチドなど)をさらに含んでいてもよい(または補充していてもよい)。1つまたは複数のDNA不安定化因子は、ニッカーゼおよび/またはAもしくはCデアミナーゼを含有する分子と会合していてもよい。特定の実施形態において、DNA不安定化因子(例えば、DNAオリゴ)は、図1Dに描写されるように、ZFNニッカーゼと会合している。
【0122】
他の実施形態において、(1)少なくとも1つのDNA不安定化分子(例えば、非Cas9タンパク質);(2)DNA不安定化分子に対する標的部位の5’または3’に特異的に結合する適宜のDNA結合ドメイン(例えば、ZFNアンカー);および(3)AまたはCデアミナーゼに作動可能に連結したZFPを含む融合タンパク質であって、DNA不安定化分子に対して3’または5’にある、融合タンパク質を含む塩基編集システムが本明細書に記載される。
【0123】
Cas9非含有塩基エディターは、これらに限定されないが、(i)本発明者らが99%またはそれより高い切断効率で(オフターゲット作用無しで)ZFNを構築することができるような、Cas9に依存しないオフターゲット作用;(ii)ZFPはヒトゲノム中の本質的にあらゆる配列を標的化できるため、PAMの制限が排除されること;(iii)現行のCas9塩基エディターで一般的に見られるバイスタンダー突然変異(例えば、標的ウィンドウ内の)が低減および/または排除されること;および/または(iv)コンストラクトサイズを低減させたことにより、AAVデリバリー(インビボでの機能性であることが公知の)が容易になることなどの、Cas9塩基エディターを超える数々の驚くべき予想外の利点を提供する。
【0124】
したがって、cas9非含有塩基エディターは、これらに限定されないが、標的特異性;多角性;バイスタンダー突然変異の制御または排除;およびデリバリーの容易さなどの、従来のCas9塩基エディターを超える顕著な利点を提供する。標的特異性に関して、オフターゲット作用をほとんどまたは全く起こさずに、編集において99%効率的なCas9非含有ZFP塩基エディターを設計することができ、それに対してCas9塩基エディターは、より高い割合のオフターゲット作用を示す。同様に、非Cas9 ZFP塩基エディターは、Cas9塩基エディターで見られるようなバイスタンダー突然変異を制御(低減)するかまたは排除する。さらに、非Cas9 ZFP塩基エディターのための標的部位の選択は、PAM要件によって限定されるのに対し、Cas9非含有ZFP塩基エディターは、本質的にあらゆる標的配列を標的化することができる。加えて、非Cas9塩基エディターのコンストラクトサイズの低減により、それらはAAVベクターを使用してデリバリーでき、それによって治療的な(インビボでの)使用を大きく発展させることができる。
【0125】
特定の実施形態において、本明細書に記載される塩基エディター(塩基編集システム)は、(1)塩基編集ウィンドウ内の、および/または(2)塩基編集ウィンドウと介在するPAM配列の5’末端との間の塩基内の変更しようとする単一の塩基(標的塩基)を含む。図2も参照されたい。DNA編集ウィンドウを開くことにより、塩基エディターによって起こり得る改変のために、他の非標的塩基(アデニンおよび/またはシトシン)が開いたままになる。これは、標的は、PAM配列の5’末端から13~16ヌクレオチド離れていてもよいが、介在するヌクレオチド、および/または塩基編集ウィンドウ中に存在する標的化された塩基(例えば、アデニンまたはシトシン)も変更される可能性があることを意味する。このような非標的突然変異は、「バイスタンダー」突然変異とも称され、塩基編集プロセスにおいて望ましくない場合がある。いくつかの状況において、バイスタンダー突然変異は、編集ウィンドウ中に標的化され得る塩基(アデニン塩基エディターの場合、アデニン、またはシチジン塩基エディターの場合、シチジン)を含まないPAM配列を選択することによって回避することができる。PAM配列の選択の代替として、および/またはそれに加えて、本発明は、ZFNニッカーゼ機能性ドメインと対合したZFPアンカーを含む本明細書に記載される塩基エディターを使用することによってバイスタンダー突然変異を低減または排除することで、PAM要件を排除し、使用者がエディターをあらゆる最適な場所に配置することを可能にする。
【0126】
一部の実施形態において、様々な融合タンパク質を含む複合体(システム)が本明細書で開示される。一部の実施形態において、Casタンパク質は、融合タンパク質のDNAへの結合特異性を増加させるために、代替のDNA結合ドメインに融合していてもよい(Bolukbashi, et al. (2015) Nat Methods 12(12):1150-1156を参照)。例えば、ZFP、TtAgoおよびTALE DNA結合ドメインが、dCasに融合していてもよい。一部の実施形態において、dCasは、PAMの特異性を変更するため(Gao, et al. (2017) Nature Biotechnology 35:789-792; Virginijus Siksnys (2016) Mol Cell 61:793を参照)、またはPAM認識の要件を変更するための突然変異を含む。一部の実施形態において、塩基エディターは、Casヌクレアーゼを欠如している。
【0127】
このアプローチのための可能性がある標的は多くある。処置され得る例示的な疾患に関与する遺伝子の編集による、疾患の処置および/または防止のための塩基編集の非限定的な例としては、鎌状赤血球症、血友病、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、テイ-サックス病、色盲、ファブリー病、フリードライヒ運動失調症、前立腺がんなどが挙げられる。
【0128】
したがって、本明細書に記載される塩基編集システムは、あらゆる疾患関連遺伝子の発現を変更するのに使用することができる。特定の実施形態において、遺伝子は、がんに関連するものであり、例えば、JAK2 V617F突然変異である。この突然変異は、骨髄増殖性新生物の拡張において重要な役割を果たす。JAK2は、膜結合受容体により、転写因子のSTATファミリーのリン酸化を介してサイトカインおよび増殖因子シグナルに変換される。V617F突然変異は、構成的チロシンリン酸化活性を引き起こし、サイトカイン過敏症(James, et al. (2005) Nature 434:1144-1148)およびサイトカインの非存在下で細胞の増殖を駆動する能力(Zhao, et al. (2005) J. Biol Chem 280 (24):22788-22792)を促進する。一部のJAK2 V617F障害(例えば原発性骨髄線維症)の場合、唯一の治療法は造血細胞移植であるが、現在のアプローチは、疾患の再発や移植片対宿主病を伴うことが多い(Byrne, et al. (2018) Ther Avd Hematol 9(9) :251-259)。突然変異を除去するための対象の造血幹細胞/前駆細胞(HSC/PC)の編集は、これらの疾患の処置を成功させる可能性がある。
【0129】
特定の実施形態において、塩基は、アルファ-1抗トリプシン(SERPINA遺伝子座内の)を標的化する。A1ATタンパク質における常染色体劣性欠損を引き起こす遺伝子座における突然変異は、肝臓疾患と肺疾患の両方に関連する。PiZ突然変異は、北欧系の人において最も一般的な欠損対立遺伝子の1つであり、A1ATタンパク質の生産はわずか約10~20%である。この突然変異は、アミノ酸342位におけるグルタミンのリシンでの置換を生じるエクソン5における単一の突然変異によって引き起こされ、DNA中の1096位におけるGは、突然変異した遺伝子配列中ではAである(Fregonese and Stolk (2008) Orphanet J Rare Dis 3:16に総論されている)。
【0130】
DNA結合分子/ドメイン
あらゆる目的の遺伝子または遺伝子座における標的部位に特異的に結合する1つまたは複数のDNA結合分子/ドメインを含む組成物が本明細書に記載される。あらゆるDNA結合分子/ドメイン、これらに限定されないが、ジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALE DNA結合ドメイン、CRISPR/CasヌクレアーゼのDNAと結合する部分(ガイドまたはsgRNA)、および/またはメガヌクレアーゼ由来のDNA結合ドメインなどが、本明細書で開示される組成物および方法において使用することができる。
【0131】
特定の実施形態において、本明細書に記載される塩基エディターは、ジンクフィンガータンパク質であるDNA結合ドメインを含む。好ましくは、ジンクフィンガータンパク質は、選択された標的部位に結合するように操作されているという点で、天然に存在しない。例えば、全て参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、Beerli, et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Pabo, et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340; Isalan, et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660; Segal, et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637; Choo, et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416;米国特許第6,453,242号;6,534,261号;6,599,692号;6,503,717号;6,689,558号;7,030,215号;6,794,136号;7,067,317号;7,262,054号;7,070,934号;7,361,635号;および7,253,273号;ならびに米国特許公報第2005/0064474号;2007/0218528号;および2005/0267061号を参照されたい。特定の実施形態において、DNA結合ドメインは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許公開第2012/0060230号に開示されたジンクフィンガータンパク質を含む。
【0132】
操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有していてもよい。操作方法としては、これらに限定されないが、合理的設計および様々な種類の選択が挙げられる。合理的設計は、例えば、三つ組み(または四つ組み)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、それにおいて、各三つ組みまたは四つ組みヌクレオチド配列は、特定の三つ組みまたは四つ組み配列と結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列に関連する。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,453,242号および6,534,261号を参照されたい。
【0133】
例示的な選択方法は、ファージディスプレイおよび2ハイブリッドシステムなどが挙げられ、これらは、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;および6,242,568号;ならびに国際特許公開WO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;およびWO01/88197およびGB2,338,237に開示されている。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに関する結合特異性の強化は、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0134】
加えて、これらの、および他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/または複数のフィンガーを有するジンクフィンガータンパク質は、あらゆる好適なリンカー配列、例えば5個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有するリンカーなどを使用して一緒に連結されていてもよい。6個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有する例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間に、好適なリンカーのあらゆる組合せを含んでいてもよい。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに関する結合特異性の強化は、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0135】
標的部位の選択;融合タンパク質の設計および構築のためのZFPおよび方法(およびそれをコードするポリヌクレオチド)は当業者公知であり、米国特許第6,140,081号;5,789,538号;6,453,242号;6,534,261号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;および6,200,759号;ならびに国際特許公開WO95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197;WO02/099084;WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536;およびWO03/016496で詳細に説明されている。
【0136】
加えて、これらの、および他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/または複数のフィンガーを有するジンクフィンガータンパク質は、あらゆる好適なリンカー配列、例えば5個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有するリンカーなどを使用して一緒に連結されていてもよい。6個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有する例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間に、好適なリンカーのあらゆる組合せを含んでいてもよい。
【0137】
通常、ZFPは、少なくとも3本のフィンガーを含む。ZFPのうち特定のものは、4本、5本、6本またはそれより多くのフィンガーを含む。3本のフィンガーを含むZFPは、典型的には、9または10ヌクレオチドを含む標的部位を認識し;4本のフィンガーを含むZFPは、典型的には、12から14ヌクレオチドを含む標的部位を認識し;一方で6本のフィンガーを有するZFPは、18から21ヌクレオチドを含む標的部位を認識することができる。ZFPはまた、1つまたは複数の調節ドメインを含む融合タンパク質であってもよく、このようなドメインは、転写活性化または抑制ドメインであってもよい。
【0138】
一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼ由来であってもよい。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼの認識配列、例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort, et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388; Dujon, et al. (1989) Gene 82:115-118; Perler, et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127; Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228; Gimble, et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163-180; Argast, et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびNew England Biolabsのカタログも参照されたい。加えて、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼのDNA結合特異性は、非天然の標的部位と結合するように操作されていてもよい。例えば、Chevalier, et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905; Epinat, et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952-2962; Ashworth, et al. (2006) Nature 441:656-659; Paeques, et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許公開第2007/0117128号を参照されたい。
【0139】
特定の実施形態において、本明細書に記載される突然変異切断ドメインと共に使用されるジンクフィンガータンパク質は、主鎖領域(例えば、-1から6に番号付けされる7アミノ酸の認識ヘリックス領域の外側の領域)に、例えば-14位、-9位および/または-5位の1つまたは複数において、1つまたは複数の突然変異(置換、欠失、および/または挿入)を含む。1つまたは複数のこれらの位置における野生型残基は、欠失していてもよいし、いずれかのアミノ酸残基で置き換えられていてもよいし、および/または1つまたは複数の追加の残基を含んでいてもよい。一部の実施形態において、-5位におけるArg(R)は、Tyr(Y)、Asp(N)、Glu(E)、Leu(L)、Gln(Q)、またはAla(A)に変更されている。他の実施形態において、(-9)位におけるArg(R)は、Ser(S)、Asp(N)、またはGlu(E)で置き換えられている。さらなる実施形態において、(-14)位におけるArg(R)は、Ser(S)またはGln(Q)で置き換えられている。他の実施形態において、融合ポリペプチドは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインにおける突然変異を含んでいてもよく、この場合、(-5)、(-9)および/または(-14)位におけるアミノ酸が、上記で列挙したアミノ酸のいずれかにあらゆる組合せで変更されている。
【0140】
他の実施形態において、DNA結合ドメインは、植物病原体のキサントモナス属由来のもの(Boch, et al. (2009) Science 326:1509-1512およびMoscou and Bogdanove (2009) Science 326:1501を参照)およびラルストニア属由来のもの(Heuer, et al. (2007) Applied and Environmental Microbiology 73(13):4379-4384を参照);米国特許公報第2011/0301073号および2011/0145940号に類似した、転写活性化因子様(TAL)エフェクター(TALE)由来の操作されたドメインを含む。キサントモナス属の植物病原菌は、重要な穀物植物において多くの疾患を引き起こすことがわかっている。キサントモナス属の病原性は、植物細胞に25種より多くの異なるエフェクタータンパク質を注入する保存されたIII型分泌(T3S)系に依存する。これらの注入されたタンパク質の中でも特に、植物転写活性化因子を模擬し、植物トランスクリプトームを操作する転写活性化因子様エフェクター(TALE)が挙げられる(Kay, et al. (2007) Science 318:648-651を参照)。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含有する。最もよく特徴付けられたTALEの1つは、キサントモナス・カンペストリスpv.ベシカトリア(Xanthomonas campestgris pv. Vesicatoria)由来のAvrBs3である(Bonas, et al. (1989) Mol Gen Genet 218 :127-136および国際特許公開WO2010/079430号を参照)。TALEは、タンデム反復の集中したドメインを含有し、各反復は、およそ34アミノ酸を含有し、これらは、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって主要である。加えて、それらは、核局在化配列および酸性転写活性化ドメインを含有する(総論に関して、Schornack S., et al. (2006) J Plant Physiol 163(3): 256-272を参照)。加えて、植物病原細菌であるラルストニア・ソラナセラム(Ralstonia solanacearum)において、brg11およびhpx17と名付けられた2つの遺伝子は、R.ソラナセラムbiovar1株GMI1000およびbiovar4株RS1000において、キサントモナス属のAvrBs3ファミリーに相同であることが見出されている(Heuer, et al. (2007) Appl and Envir Micro 73(13):4379-4384を参照)。これらの遺伝子は、ヌクレオチド配列において互いに98.9%同一であるが、hpx17の反復ドメインにおける1,575塩基対の欠失の点で異なる。しかしながら、両方の遺伝子生成物は、キサントモナス属のAvrBs3ファミリータンパク質と40%未満の配列同一性を有する。
【0141】
これらのTALエフェクターの特異性は、タンデム反復に見出される配列に依存する。繰り返された配列は、およそ102塩基対を含み、反復は、典型的には、互いに91~100%相同である(Bonas, et al., ibid)。反復の多型は、通常、12位および13位に配置され、12位および13位における高度可変二残基(反復可変二残基またはRVD領域)の同一性と、TAL-エフェクターの標的配列における連続するヌクレオチドの同一性との間に1対1の対応があると考えられる(Moscou and Bogdanove (2009) Science 326:1501 and Boch, et al. (2009) Science 326:1509-1512を参照)。実験的には、これらのTAL-エフェクターのDNA認識のための天然のコードは、12位および13位におけるHD配列(反復可変二残基またはRVD)がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、INGがTに結合すると決定されている。これらのDNA結合反復は、新しい配列と相互作用し、植物細胞中で非内因性レポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工転写因子が生じるように、新しい組合せおよび多数の反復と共にタンパク質にアセンブルされている(Boch, et al., ibid)。操作されたTALタンパク質は、不規則なRVDを有するTALENを含むTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合体(TALEN)が生じるように、FokI切断ハーフドメインに連結されている。例えば、米国特許第8,586,526号を参照されたい。
【0142】
一部の実施形態において、TALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。他の実施形態において、TALE-ヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体化を必要としない。(Boissel et al. (2013) Nucl Acid Res: 1-13, doi: 10.1093/nar/gkt1224を参照)。
【0143】
よりさらなる実施形態において、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALENを含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結させる単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対してどこに配置されているかに応じて、TALE領域によって局所化されたニッカーゼとして作用する場合があるか、または二本鎖破断を作り出すことができるかのいずれかである(Beurdeley, et al. (2013) Nat Comm: 1-8 DOI:10.1038/ncomms2782を参照)。加えて、ヌクレアーゼドメインはまた、DNAに結合する機能も示し得る。いずれのTALENも、1つまたは複数のメガTALEと共に、追加のTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN))と組み合わせて使用することができる。
【0144】
加えて、これらの、および他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメインおよび/もしくは複数のフィンガーを有するジンクフィンガータンパク質またはTALEは、あらゆる好適なリンカー配列、例えば5個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有するリンカーなどを使用して一緒に連結されていてもよい。長さが6個またはそれより多くのアミノ酸の例示的なリンカー配列については、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号も参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間に、好適なリンカーのあらゆる組合せを含んでいてもよい。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインに関する結合特異性の強化は、例えば、米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0145】
特定の実施形態において、塩基エディターは、DNAに結合する単一ガイドRNA(sgRNA)DNA結合分子を含む、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムの一部であるDNA結合ドメインを含む。例えば、米国特許第8,697,359号ならびに米国特許公報第2015/0056705号および2015/0159172号を参照されたい。システムのRNA成分をコードするCRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat;クラスター化された等間隔にスペーサーが入った短鎖反復回文配列)遺伝子座、およびタンパク質をコードするcas(CRISPR-associated;CRISPR関連)遺伝子座(Jansen, et al. (2002) Mol. Microbiol. 43:1565-1575; Makarova, et al. (2002) Nucleic Acids Res. 30:482-496; Makarova, et al. (2006) Biol. Direct 1:7; Haft, et al. (2005) PLoS Comput. Biol. 1:e60)が、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムの遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子、ならびに、CRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラミングすることが可能な非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
【0146】
一部の実施形態において、DNA結合ドメインは、TtAgoシステムの一部である(Swarts, et al. (2014) Nature 507(7491):258-261; Swarts, et al. (2012) PLoS One 7(4):e35888; Sheng, et al., ibidを参照)。真核生物において、遺伝子サイレンシングは、アルゴノート(Ago)ファミリーのタンパク質によって媒介される。このパラダイムにおいて、Agoは、小さい(19~31ntの)RNAに結合する。このタンパク質-RNAサイレンシング複合体は、小さいRNAと標的とのワトソン-クリック塩基対合を介して標的RNAを認識し、ヌクレオチド鎖切断によって標的RNAを切断する(Vogel (2014) Science 344:972-973)。対照的に、原核生物Agoタンパク質は、小さい一本鎖DNAフラグメントに結合し、外来(しばしばウイルス)DNAを検出して、それを除去するように機能する可能性がある(Yuan, et al. (2005) Mol. Cell 19:405; Olovnikov, et al. (2013) Mol. Cell 51, 594; Swarts, et al. (2014) Nature 507(7491):258-261; Swarts, et al. (2012) PLoS One 7(4):e35888)。例示的な原核生物Agoタンパク質としては、アクウィフェクス・アエオリカス(Aquifex aeolicus)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、およびサーマス・サーモフィルス由来のものが挙げられる。
【0147】
最もよく特徴付けられた原核生物Agoタンパク質の1つは、T.サーモフィルス由来のもの(TtAgo;Swarts, et al. (2014) Nature 507(7491):258-261; Swarts, et al. (2012) PLoS One 7(4):e35888)である。TtAgoは、15ntまたは13~25ntの一本鎖DNAフラグメントのいずれかと5’リン酸基で会合する。このTtAgoと結合した「ガイドDNA」は、タンパク質-DNA複合体を、DNAの第3者の分子におけるワトソン-クリック相補的DNA配列と結合するように方向付けるのに役立つ。これらのガイドDNAにおける配列情報による標的DNAの同定が可能になったら、TtAgo-ガイドDNA複合体は、標的DNAを切断する。このようなメカニズムはまた、その標的DNAに結合したままで、TtAgo-ガイドDNA複合体の構造によって支持される(G.Sheng, et al., ibid)。ロドバクター・スフェロイデス由来のAgo(RsAgo)は、類似の特性を有する(Olovnikov, et al., ibid)。
【0148】
任意のDNA配列の外因性ガイドDNAは、TtAgoタンパク質にローディングすることができる(Swarts, et al. (2014) Nature 507(7491):258-261; Swarts, et al. (2012) PLoS One 7(4):e35888)。TtAgo切断の特異性はガイドDNAによって方向付けられるため、外因性の研究者によって特定されたガイドDNAと共に形成されたTtAgo-DNA複合体は、それゆえに、TtAgo標的DNA切断を、相補的な研究者によって特定された標的DNAに方向付けると予想される。このようにして、DNA中に標的化された二本鎖破断を作り出すことができる。TtAgo-ガイドDNAシステム(または他の生物由来のオーソロガスなAgo-ガイドDNAシステム)の使用は、細胞内のゲノムDNAの標的化された切断を可能にする。このような切断は、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。哺乳類ゲノムDNAの切断の場合、哺乳類細胞における発現のためにコドンが最適化されたTtAgoのバージョンを使用することが好ましいと予想される。さらに、細胞を、インビトロで形成されたTtAgo-DNA複合体で処理することが好ましい場合があり、この場合、TtAgoタンパク質は、細胞透過性ペプチドに融合されている。さらに、37℃で改善された活性を有するように変異誘発を介して変更されたTtAgoタンパク質のバージョンを使用することが好ましい場合がある。Ago-RNA媒介DNA切断は、DNA破断の活用に関する分野において標準的な技術を使用して、遺伝子ノックアウト、標的化された遺伝子付加、遺伝子修正、標的化された遺伝子欠失を含む様々な結果に影響を与えるために使用することができる。
【0149】
したがって、どのようなDNA結合分子/ドメインを使用してもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載される塩基エディターは、sgRNA DNA結合ドメイン(例えば、Cas9ニッカーゼの一部として)を含み、1つまたは複数のZFP DNA結合ドメイン(「ZFPアンカー」と称される)を含んでいてもよい、Cas9塩基エディターであり、ZFPは、塩基の編集効率および/または特異性を増加させることができる。図1Bおよび図3に、ZFPアンカーを含むCas9塩基エディターの非限定的な例を示す。
【0150】
融合分子
本明細書に記載されるDNA編集複合体は、本明細書に記載されるDNA結合ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE、CRISPR/Cas成分、例えば単一ガイドRNA)および異種(機能性)ドメイン(またはその機能性フラグメント)を含む1つまたは複数の融合分子を含んでいてもよく、これらも提供される。
【0151】
共通のドメインとしては、例えば、転写因子ドメイン(活性化因子、リプレッサー、共活性化因子、コリプレッサー)、サイレンサー、腫瘍遺伝子(例えば、myc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリーメンバーなど);DNA修復酵素ならびにその関連因子および調節剤;ヘリカーゼ、二本鎖DNA結合タンパク質、DNA再編成酵素ならびにその関連因子および調節剤;クロマチン関連タンパク質およびその調節剤(例えばキナーゼ、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ);ならびにDNA改変酵素(例えば、メチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、デアミナーゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにその関連因子および調節剤が挙げられる。DNA結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインの融合に関する詳細について、米国特許公報第2005/0064474号;2006/0188987号;および2007/0218528号が、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0152】
融合分子は、当業者に周知であるクローニングおよび生化学的なコンジュゲーションの方法によって構築される。融合分子は、DNA結合ドメインおよび機能性ドメイン(例えば、ヘリカーゼおよび/またはデアミナーゼおよび/またはGUIおよび/またはGAM)を含む。融合分子はまた、核局在化シグナル(例えば、SV40中型T抗原由来のものなど)およびエピトープタグ(例えば、FLAGおよびヘマグルチニンなど)を含んでいてもよい。融合タンパク質(およびそれをコードする核酸)は、融合体の成分の中でも翻訳リーディングフレームが保存されるように設計される。
【0153】
一方において機能性ドメイン(またはその機能性フラグメント)のポリペプチド成分と、他方において非タンパク質DNA結合ドメイン(例えば、抗生物質、インターカレーター、副溝結合剤、核酸)との融合体は、当業者公知の生化学的なコンジュゲーション方法によって構築される。例えば、Pierce Chemical Company(Rockford、IL)のカタログを参照されたい。副溝結合剤とポリペプチドとの融合体を作製するための方法および組成物が記載されている。Mapp, et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3930-3935。さらに、CRISPR/Casシステムの単一ガイドRNAは、機能性ドメインと会合して、活性な転写調節因子およびヌクレアーゼを形成する。
【0154】
特定の実施形態において、DNA結合ドメインのための標的部位は、細胞クロマチンの接近可能な領域中に存在する。接近可能な領域は、例えば、米国特許第7,217,509号および7,923,542号に記載されるようにして決定することができる。細胞クロマチンの接近可能な領域に標的部位が存在しない場合、米国特許第7,785,792号および8,071,370号に記載されるように、1つまたは複数の接近可能な領域を生成することができる。追加の実施形態において、融合分子のDNA結合ドメインは、その標的部位が接近可能な領域中にあるかまたはそうではないかに関係なく、細胞クロマチンに結合することが可能である。例えば、このようなDNA結合ドメインは、リンカーDNAおよび/またはヌクレオソームDNAに結合することが可能である。このタイプの「パイオニア」DNA結合ドメインの例は、特定のステロイド受容体および肝細胞核内因子3(HNF3)に見出される(Cordingley, et al. (1987) Cell 48:261-270; Pina, et al. (1990) Cell 60:719-731; およびCirillo, et al. (1998) EMBO J. 17:244-254)。
【0155】
融合分子は、当業者公知のように、医薬的に許容される担体と共に製剤化することができる。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985;ならびに米国特許第6,453,242号および6,534,261号を参照されたい。
【0156】
融合分子の機能性成分/ドメインは、融合分子がそのDNA結合ドメインを介して標的配列に結合したら、遺伝子の配列に影響を与えることが可能な様々な成分のいずれかから選択することができる。したがって、機能性成分としては、これらに限定されないが、様々なデアミナーゼ、UGI、GAM、ヘリカーゼなどが挙げられる。特定の実施形態において、機能性ドメインは、1つまたは複数のシチジンデアミナーゼ(例えば、アポリポタンパク質B mRNA編集複合体1(APOBEC1)ドメインおよび/または活性化誘導デアミナーゼ(AID))を含む。他の実施形態において、機能性ドメインは、1つまたは複数のアデニンデアミナーゼ(例えば、突然変異したTadA(tRNAアデニンデアミナーゼ(Gaudelli, et al. (2017) Nature 551:464-471を参照))を含む。よりさらなる実施形態において、機能性ドメインは、少なくとも1つのウラシルDNAグリコシラーゼ阻害剤(例えばUGI)ドメインを含む。一部の実施形態において、塩基編集複合体は、デアミナーゼ、ニッカーゼ、UGIおよび/またはGAMタンパク質を含む。機能性ドメインは、DNA結合ドメイン(および/または触媒的に活性な融合分子中に含まれる場合、ニッカーゼ)に対して、これらに限定されないが、N末端に(複数の機能性ドメインが存在する場合、あらゆる順番で)、C末端に(複数の機能性ドメインが存在する場合、あらゆる順番で)などのあらゆる方式で配置されていてもよい。
【0157】
一部の実施形態において、DNA編集(塩基編集)複合体は、二本鎖DNAヘリックスを開くこと、またはそれを不安定化することにおいて補助する分子をさらに含む。一部の実施形態において、このような分子は、酵素を含む。一部の実施形態において、酵素は、ヘリカーゼ(例えば、RecQヘリカーゼ(WRN、BLM、RecQL4およびRecQ5(Mo, et al. (2018) Cancer Lett. 413:1-10を参照)、DNA2(Jia, et al. (2017) DNA Repair (Amst). 59:9-19)および他のあらゆる真核生物ヘリカーゼ、例えば、FANCJ、XPD、XPB、RTEL1、およびPIF1など(Brosh (2013) Nat Rev Canc 13(8):542-558)。一部の実施形態において、酵素は、細菌および/またはウイルスヘリカーゼである。例示的なウイルスヘリカーゼとしては、ミオウイルス科のウイルスによってコードされたもの(例えばgp41、Dda、UvsW、遺伝子α、およびBan);ポドウイルス科のウイルスによってコードされたもの(例えば4B);シホウイルス科、バキュロウイルス科、ヘルペスウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科およびポックスウイルス科によってコードされたもの(例えば、G40P、p143、UL5、UL9、TAG、E1、NPH-I、NPH-II、A18R、およびVETF)、または当業界において公知の他のあらゆるウイルスヘリカーゼ(例えばFrick and Lam (2006) Curr Pharm Des 12(11):1315-1338を参照)が挙げられる。一部の実施形態において、ヘリカーゼ酵素は、細菌酵素である。例示的な細菌ヘリカーゼとしては、緑膿菌SF4 DnaB様ヘリカーゼ、または細菌における大腸菌およびH.ピロリなどの細菌RecBCD複合体の一部であるRecBおよびRecDヘリカーゼ(Shadrick, et al. (2013) J. Biomol Screen 18(7):761-781)が挙げられる。一部の実施形態において、分子は、CRISPR/Cas複合体を含む。一部の実施形態において、CRISPR/Cas複合体は、ガイドRNAを含む。一部の実施形態において、複合体は、ヌクレアーゼドメインの1つに触媒的に欠陥のあるCas酵素を含む。一部の実施形態において、Cas酵素は、そのPAM認識において欠陥がある(Anders, et al. (2014) Nature 513(7519):569-573)。一部の実施形態において、分子は、ヘリックスを不安定化する特性を有する。例示的なヘリックスを不安定化する分子としては、単純疱疹ウイルスI型由来のICP8(Boehmer and Lehman (1993) J Virol 67(2):711-715)、Purアルファ(Darbinian, et al. (2001) J Cell Biochem 80(4):589-95)、およびウシ胸腺DNAヘリックス不安定化タンパク質(Kohwi-Shigematsu, et al. (1978) Proc Natl Acad Sci USA 75(10):4689-93)が挙げられる。一部の実施形態において、分子は、核酸である。一部の実施形態において、核酸は、標的化された編集部分に近い領域に対して相同性を有するDNAである。一部の実施形態において、核酸は、標的化された編集部分に近い領域に対する相同性を有するRNAである。一部の実施形態において、RNAは、改変されている。一部の実施形態において、融合分子は、融合分子の1つまたは複数のドメインの間にアミノ酸リンカー配列を含む。
【0158】
本明細書に記載されるDNA編集複合体は、1、2、3、4個またはそれより多くの本明細書に記載される融合分子を含んでいてもよい。特定の実施形態において、DNA編集複合体は、2個の融合分子を含み、触媒的に活性なニッカーゼである(触媒的に活性な)第1の融合分子は、DNA結合ドメインおよびニッカーゼドメインを含み、第2の触媒的に不活性な融合分子は、DNA結合ドメインおよび1つまたは複数の機能性ドメイン(シチジンデアミナーゼ、アデニンデアミナーゼ、および/またはUGIなど)を含む。典型的には、融合分子は、2つの融合分子が二量体化してDNA編集を実行するように、2つのDNA結合ドメインが標的部位に結合するという点で、「パートナー」である。他の実施形態において、DNA編集複合体は、3個またはそれより多くの融合分子を含み、触媒的に活性なニッカーゼである第1の融合分子は、DNA結合ドメインおよびニッカーゼドメインを含み;第2の触媒的に不活性な融合分子は、DNA結合ドメインを含み(例えば、パートナーであり、第1の融合分子と二量体化する);第3の融合分子は、本明細書に記載されるDNA結合ドメインおよび1つまたは複数の機能性ドメインを含む。
【0159】
ニッカーゼドメイン
特定の実施形態において、融合タンパク質は、DNA結合ドメインおよび切断(ヌクレアーゼ)ドメイン、好ましくはニッカーゼドメインを含む。したがって、遺伝子編集は、ヌクレアーゼ、例えば操作されたニッカーゼを使用して達成することができる。操作されたヌクレアーゼ技術は、天然に存在するDNA結合タンパク質を操作することに基づく。例えば、適合させたDNA結合特異性を有するホーミングエンドヌクレアーゼの操作が記載されている。Chames, et al. (2005) Nucleic Acids Res 33(20):e178; Arnould, et al. (2006) J. Mol. Biol. 355:443-458。加えて、ZFPの操作も記載されている。例えば、米国特許第6,534,261号;6,607,882号;6,824,978号;6,979,539号;6,933,113号;7,163,824号;および7,013,219号を参照されたい。
【0160】
加えて、ZFNおよびTALEN、すなわち、その操作された(ZFPまたはTALE)DNA結合ドメインを介して、その意図した核酸標的を認識して、ヌクレアーゼ活性を介してDNA結合部位付近でDNAのカットをもたらすことができる機能性実体を作り出すように、ZFPおよび/またはTALEは、ヌクレアーゼドメインに融合されている。例えば、Kim, et al. (1996) Proc Nat'l Acad Sci USA 93(3):1156-1160を参照されたい。ごく最近、このようなヌクレアーゼは、様々な生物におけるゲノム改変に使用されてきた。例えば、米国特許第9,255,250号;9,200,266号;9,045,763号;9,005,973号;8,956,828号;8,945,868号;8,703,489号;8,586,526号;6,534,261号;6,599,692号;6,503,717号;6,689,558号;7,067,317号;7,262,054号;7,888,121号;7,972,854号;7,914,796号;7,951,925号;8,110,379号;8,409,861号;米国特許公報第2003/0232410号;2005/0208489号;2005/0026157号;2005/0064474号;2006/0063231号;2008/0159996号;2010/00218264号;2012/0017290号;2011/0265198号;2013/0137104号;2013/0122591号;2013/0177983号;2013/0177960号;および2015/0056705号を参照されたい。
【0161】
したがって、本明細書に記載される方法および組成物は、広く適用することができ、あらゆる目的のヌクレアーゼを含んでいてもよい。ヌクレアーゼの非限定的な例としては、メガヌクレアーゼ、TALENおよびジンクフィンガーヌクレアーゼが挙げられる。ヌクレアーゼは、異種DNA結合および切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;異種切断ドメインを有するメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン)を含んでいてもよいし、または代替として、天然に存在するヌクレアーゼのDNA結合ドメインは、選択された標的部位に結合するように変更されていてもよい(例えば、同種の結合部位と異なる部位に結合するように操作されたメガヌクレアーゼ)。
【0162】
本明細書に記載されるヌクレアーゼのいずれかにおいて、ヌクレアーゼは、操作されたTALE DNA結合ドメイン、およびTALENとも称されるヌクレアーゼドメイン(例えば、エンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼドメイン)を含んでいてもよい。使用者が選んだ標的配列とのロバストな部位特異的な相互作用のためのこれらのTALENタンパク質を操作するための方法および組成物が公開されている(米国特許第8,586,526号を参照)。一部の実施形態において、TALENは、エンドヌクレアーゼ(例えば、FokI)切断ドメインまたは切断ハーフドメインを含む。他の実施形態において、TALE-ヌクレアーゼは、メガTALである。これらのメガTALヌクレアーゼは、TALE DNA結合ドメインおよびメガヌクレアーゼ切断ドメインを含む融合タンパク質である。メガヌクレアーゼ切断ドメインは、単量体として活性であり、活性のために二量体化を必要としない。(Boissel, et al. (2013) Nucl Acid Res 1-13, doi:10.1093/nar/gkt1224を参照)。加えて、ヌクレアーゼドメインはまた、DNAに結合する機能も示し得る。
【0163】
よりさらなる実施形態において、ヌクレアーゼは、コンパクトなTALEN(cTALEN)を含む。これらは、TALE DNA結合ドメインをTevIヌクレアーゼドメインに連結させる単鎖融合タンパク質である。融合タンパク質は、TALE DNA結合ドメインがTevIヌクレアーゼドメインに対してどこに配置されているかに応じて、TALE領域によって局所化されたニッカーゼとして作用する場合があるか、または二本鎖破断を作り出すことができるかのいずれかである(Beurdeley, et al. (2013) Nat Comm:1-8 DOI:10.1038/ncomms2782を参照)。いずれのTALENも、1つまたは複数のメガTALまたは他のDNA切断酵素と共に、追加のTALEN(例えば、1つまたは複数のTALEN(cTALENまたはFokI-TALEN))と組み合わせて使用することができる。
【0164】
特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)またはその切断活性を示す部分を含む。天然に存在するメガヌクレアーゼは、15~40塩基対の切断部位を認識し、一般的に4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー(配列番号75として開示される「LAGLIDADG」)、GIY-YIGファミリー、His-CystボックスファミリーおよびHNHファミリーにグループ分けされる。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIが挙げられる。それらの認識配列は公知である。米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort, et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388; Dujon, et al. (1989) Gene 82:115-118; Perler, et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22:1125-1127; Jasin (1996) Trends Genet. 12:224-228; Gimble, et al. (1996) J. Mol. Biol. 263:163-180; Argast, et al. (1998) J. Mol. Biol. 280:345-353およびNew England Biolabsのカタログも参照されたい。
【0165】
天然に存在するメガヌクレアーゼ由来の、主としてLAGLIDADGファミリー(配列番号75として開示される「LAGLIDADG」)由来のDNA結合ドメインは、植物、酵母、ショウジョウバエ、哺乳類細胞およびマウスにおける部位特異的なゲノム改変を促進するのに使用されてきたが、このアプローチは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存する相同遺伝子(Monet, et al. (1999) Biochem. Biophysics. Res. Common 255:88-93)または認識配列が導入された予備操作されたゲノム(Route, et al. (1994) Mol. Cell. Biol. 14:8096-106; Chilton, et al. (2003) Plant Physiology 133:956-65; Puchta, et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5055-60; Rong, et al. (2002) Genes Dev. 16:1568-81; Gouble, et al. (2006) J. Gene Med. 8(5):616-622)のいずれかの改変に限定されてきた。したがって、医学的または生物工学的に重要な部位で新規の結合特異性を示すようにメガヌクレアーゼを操作する試みがなされてきた(Porteus, et al. (2005) Nat. Biotechnol. 23:967-73; Sussman, et al. (2004) J. Mol. Biol. 342:31-41; Epinat, et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952-62; Chevalier, et al. (2002) Molec. Cell 10:895-905; Epinat, et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:2952-2962; Ashworth, et al. (2006) Nature 441:656-659; Paques, et al. (2007) Current Gene Therapy 7:49-66;米国特許公報第2007/0117128号;2006/0206949号;2006/0153826号;2006/0078552号;および2004/0002092号)。加えて、メガヌクレアーゼ由来の、天然に存在する、または操作されたDNA結合ドメインは、異種ヌクレアーゼ(例えば、FokI)由来の切断ドメインと作動可能に連結していてもよく、および/またはメガヌクレアーゼ由来の切断ドメインは、異種DNA結合ドメイン(例えば、ZFPまたはTALE)と作動可能に連結していてもよい。
【0166】
他の実施形態において、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALE DNA結合ドメイン-ヌクレアーゼ融合体(TALEN)である。ZFNおよびTALENは、選択された遺伝子中の標的部位に結合するように操作されたDNA結合ドメイン(ジンクフィンガータンパク質またはTALE DNA結合ドメイン)、および切断ドメインまたは切断ハーフドメイン(例えば、本明細書に記載される制限および/またはメガヌクレアーゼ由来の)を含む。
【0167】
上記で詳述したように、ジンクフィンガー結合ドメインおよびTALE DNA結合ドメインは、選択された配列に結合するように操作されていてもよい。例えば、Beerli, et al. (2002) Nature Biotechnol. 20:135-141; Pabo, et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70:313-340; Isalan, et al. (2001) Nature Biotechnol. 19:656-660; Segal, et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12:632-637; Choo, et al. (2000) Curr. Opin. Struct. Biol. 10:411-416を参照されたい。操作されたジンクフィンガー結合ドメインまたはTALEタンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較して、新規の結合特異性を有していてもよい。操作方法としては、これらに限定されないが、合理的設計および様々な種類の選択が挙げられる。合理的設計は、例えば、三つ組み(または四つ組み)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーまたはTALEアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、それにおいて、各三つ組みまたは四つ組みヌクレオチド配列は、特定の三つ組みまたは四つ組み配列と結合するジンクフィンガーまたはTALE反復単位の1つまたは複数のアミノ酸配列に関連する。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる米国特許第6,453,242号および6,534,261号を参照されたい。
【0168】
標的部位の選択;ならびに融合タンパク質の設計および構築のための方法(およびそれをコードするポリヌクレオチド)は当業者公知であり、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,888,121号および8,409,861号で詳細に説明されている。
【0169】
加えて、これらの、および他の参考文献に開示されるように、ジンクフィンガードメイン、TALEおよび/または複数のフィンガーを有するジンクフィンガータンパク質は、あらゆる好適なリンカー配列、例えば5個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有するリンカーなどを使用して一緒に連結されていてもよい。6個またはそれより多くのアミノ酸の長さを有する例示的なリンカー配列については、例えば、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号を参照されたい。本明細書に記載されるタンパク質は、タンパク質の個々のジンクフィンガーの間に、好適なリンカーのあらゆる組合せを含んでいてもよい。米国特許第8,772,453号も参照されたい。
【0170】
したがって、ヌクレアーゼ、例えばZFN、TALENおよび/またはメガヌクレアーゼは、あらゆるDNA結合ドメインおよびあらゆるヌクレアーゼ(切断)ドメイン(切断ドメイン、切断ハーフドメイン)を含んでいてもよい。上述したように、切断ドメインは、DNA結合ドメイン、例えばジンクフィンガーまたはTAL-エフェクターDNA結合ドメインにとって異種であってもよいし、ヌクレアーゼまたはメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン由来の切断ドメインであってもよいし、異なるヌクレアーゼ由来の切断ドメインであってもよい。異種切断ドメインは、あらゆるエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインの由来となり得る例示的なエンドヌクレアーゼとしては、これらに限定されないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられる。例えば、2002~2003年のカタログ、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfort, et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25:3379-3388を参照されたい。DNAを切断する追加の酵素が公知である(例えば、S1ヌクレアーゼ;マングビーンヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn, et al. (eds.) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993も参照)。これらの酵素(またはそれらの機能性フラグメント)の1つまたは複数は、切断ドメインおよび切断ハーフドメインの供給源として使用することができる。
【0171】
同様に、切断ハーフドメインは、切断活性のために二量体化を必要とする上記のようなあらゆるヌクレアーゼまたはそれらの部分由来であってもよい。一般的に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、2つの融合タンパク質が切断のために必要である。代替として、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質を使用してもよい。2つの切断ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはそれらの機能性フラグメント)由来であってもよいし、または各切断ハーフドメインが、異なるエンドヌクレアーゼ(またはそれらの機能性フラグメント)由来であってもよい。加えて、好ましくは、2つの融合タンパク質がそれらそれぞれの標的部位に結合することで、切断ハーフドメインが、例えば二量体化することによって機能性切断ドメインを形成することが可能になる空間的な方向に切断ハーフドメインが互いに置かれるように、2つの融合タンパク質のための標的部位が互いに配置される。したがって、特定の実施形態において、標的部位の付近のエッジは、5~10ヌクレオチド、または15~18ヌクレオチドで分離されている。しかしながら、あらゆる整数値のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位の間に介在していてもよい(例えば、2から50ヌクレオチド対またはそれより多く)。一般的に、切断の部位は、標的部位間にある。
【0172】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種に存在しており、DNAに配列特異的に結合し(認識部位で)、結合部位で、またはその付近でDNAを切断することが可能である。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から離れた部位でDNAを切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素であるFokIは、一方の鎖において、その認識部位から9ヌクレオチドの位置で、他方の鎖において、その認識部位から13ヌクレオチドの位置でDNAの二本鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;5,436,150号;および5,487,994号;ならびにLi, et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4275-4279; Li, et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2764-2768; Kim, et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:883-887; Kim, et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269:31,978-31,982を参照されたい。したがって、一実施形態において、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)、および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインを含み、これらは、操作されていてもよいし、または操作されていなくてもよい。
【0173】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能な例示的なIIS型制限酵素は、FokIである。この特定の酵素は、二量体として活性である。Bitinaite, et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10,570-10,575。したがって、本開示の目的のために、開示された融合タンパク質で使用されるFokI酵素の部分は、切断ハーフドメインとみなされる。したがって、ジンクフィンガー-FokI融合体を使用する、標的化された二本鎖切断および/または標的化された細胞配列の置き換えのために、それぞれFokI切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質を、触媒的に活性な切断ドメイン再編成するために使用することができる。代替として、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断ハーフドメインを含有する単一のポリペプチド分子も使用することができる。本開示の他所に、ジンクフィンガー-FokI融合体を使用する標的化された切断および標的化された配列変更のためのパラメーターが提供される。
【0174】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持する、または多量体化(例えば、二量体化)して機能性切断ドメインを形成する能力を保持するタンパク質のあらゆる部分であり得る。
【0175】
例示的なIIS型制限酵素は、その全体が本明細書に組み入れられる国際特許公開WO07/014275号に記載されている。追加の制限酵素はまた、分離可能な結合および切断ドメインも含有し、これらは本開示により企図される。例えば、Roberts, et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31:418-420を参照されたい。
【0176】
特定の実施形態において、切断ドメインは、FokI切断ドメインである。全長FokI配列を以下に示す。切断ドメインは、イタリックと下線で示され(全長タンパク質の384位から579位)、ホロタンパク質配列は後述される(配列番号5):
【化1】
【0177】
FokI由来の切断ハーフドメインは、配列番号5で示されるアミノ酸残基の1つまたは複数における突然変異を含んでいてもよい。突然変異としては、置換(野生型アミノ酸残基の異なる残基での置換)、挿入(1つまたは複数のアミノ酸残基の挿入)および/または欠失(1つまたは複数のアミノ酸残基の欠失)が挙げられる。特定の実施形態において、残基414~426、443~450、467~488、501~502、および/または521~531の1つまたは複数(配列番号5に対して番号付けされる)は、Miller, et al. (2007) Nat Biotechnol 25:778-784に記載されるその標的部位に結合したZFNの分子モデルでは、これらの残基はDNA主鎖の近くに位置するため、突然変異している。特定の実施形態において、416位、422位、447位、448位、および/または525位における1つまたは複数の残基が突然変異している。特定の実施形態において、突然変異は、あらゆる異なる残基での、例えばアラニン(A)残基、システイン(C)残基、アスパラギン酸(D)残基、グルタミン酸(E)残基、ヒスチジン(H)残基、フェニルアラニン(F)残基、グリシン(G)残基、アスパラギン(N)残基、セリン(S)残基またはスレオニン(T)残基での、野生型残基の置換を含む。他の実施形態において、416位、418位、422位、446位、448位、476位、479位、480位、481位、および/または525位の1つまたは複数における野生型残基が、他のあらゆる残基で置き換えられており、例えば、これらに限定されないが、R416D、R416E、S418E、S418D、R422H、S446D、K448A、N476D、I479Q、I479T、G480D、Q481A、Q481E、K525S、K525A、N527D、R416E+R422H、R416D+R422H、R416E+K448A、R416D+R422H、K448A+I479Q、K448A+Q481A、K448A+K525Aなどが挙げられる。
【0178】
特定の実施形態において、切断ドメインは、例えば、これらの全ての開示が参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる米国特許第7,914,796号;8,034,598号;および8,623,618号;ならびに米国特許公開第2011/0201055号に記載されるように、ホモ二量体化を最小化するかまたは防止する1つまたは複数の操作された切断ハーフドメイン(二量体化ドメイン突然変異体とも称される)を含む。FokIの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位におけるアミノ酸残基(配列番号5に対して番号付けされる)は全て、FokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を及ぼすための標的である。突然変異としては、FokIに相同な天然の制限酵素に見出される残基への突然変異を挙げることができる。好ましい実施形態において、416位、422位、447位、448位および/または525位における突然変異(配列番号5に対して番号付けされる)は、正電荷を有するアミノ酸の、電荷を有さない、または負電荷を有するアミノ酸での置き換えを含む。別の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、全ての配列番号5に対して番号付けされた、1つまたは複数のアミノ酸残基416、422、447、448、または525における突然変異に加えて、アミノ酸残基499、496および486における突然変異を含む。
【0179】
あらゆるニッカーゼドメインが、本明細書に記載されるDNA編集複合体において使用することができる。ニッカーゼは、触媒ドメインに突然変異を含むことにより、ヌクレアーゼが完全な二本鎖破断を作製できないようにするが、その代わりに二本鎖DNAの部分的な切断である「ニッキング」を引き起こす。標的にニックを入れるのに2つまたはそれより多くの切断ドメインが必要な実施形態において、典型的には、切断ドメイン(例えば、切断ハーフドメイン)の少なくとも1つは、その触媒ドメインに1つまたは複数の(one more)突然変異を含み、それによりヌクレアーゼは不活性になる(例えば、触媒的に不活性なハーフドメイン)。ニッカーゼを生産するための触媒的に不活性な切断ドメインとしては、これらに限定されないが、突然変異したFokIおよび/またはdCasタンパク質が挙げられる。例えば、米国特許第9,522,936号;9,631,186号;9,200,266号;および8,703,489号、ならびにGuillinger, et al. (2014) Nature Biotech. 32(6):577-582; Cho, et al. (2014) Genome Res. 24(1):132-141を参照されたい。これらの触媒的に不活性な切断ドメインは、触媒的に活性なドメインと組み合わせて、一本鎖のカットを作製するためのニッカーゼとして作用し得る。追加のニッカーゼも当業界において公知であり、例えば、McCaffery, et al. (2016) Nucleic Acids Res. 44(2):e11. doi:10.1093/nar/gkv878. Epub 2015 Oct 19である。
【0180】
特定の実施形態において、ニッカーゼは、触媒的に不活性なFokI切断ドメインを含むヌクレアーゼニッカーゼ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)ニッカーゼまたはTAL-エフェクタードメイン(TALEN)ニッカーゼを含む。FokIの触媒ドメインにおいて突然変異され得るアミノ酸の非限定的な例としては、アミノ酸残基450、467および/または469(野生型に対して決定した場合)が挙げられる。特定の実施形態において、1つまたは複数の点突然変異は、切断ハーフドメインの触媒活性が不活性化されるように、必須のヘテロ二量体の1つのメンバーの触媒ドメイン中になされる。例えば、450位が、DからNに突然変異されていてもよいし、467位が、DからAに突然変異されていてもよいし、469位が、KからAに突然変異されていてもよい。他のアミノ酸が、これらのまたは他の配置で置換されていてもよい。例えば、米国特許第9,522,936号;9,631,186号;8,703,489号および9,200,266号ならびにGuillinger, et al. (2014) Nature Biotech. 32(6):577-582; Cho, et al. (2014) Genome Res. 24(1):132-141を参照されたい。触媒的に不活性な切断ドメインは、触媒的に活性なドメインと組み合わせて、ニッカーゼとして作用して、一本鎖のカット作製することができる。追加のニッカーゼも当業界において公知であり、例えば、McCaffery, et al. (2016) Nucleic Acids Res. 44(2):e11. doi:10.1093/nar/gkv878. Epub 2015 Oct 19である。あらゆるヌクレアーゼ(例えば、ZFNまたはTALENまたはCRISPR/Casヌクレアーゼ)は、二本鎖のカット作製するヌクレアーゼ中の切断ドメインの代わりに、一本鎖のカットを作製する切断ドメインを使用することによってニッカーゼになることができる。
【0181】
FokIドメインはまた、1つまたは複数の追加の突然変異を含んでいてもよい。特定の実施形態において、本明細書に記載される組成物は、例えば、米国特許第7,914,796号;8,034,598号;8,961,281号;および8,623,618号;米国特許公報第2008/0131962号および2012/0040398号に記載されるように、必須のヘテロ二量体を形成するFokIの操作された切断ハーフドメインを含む。したがって、好ましい一実施形態において、本発明は、操作された切断ハーフドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の突然変異(配列番号5に対して番号付けされる)に加えて、486位における野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置き換えられ、499位における野生型Ile(I)残基がLeu(L)残基で置き換えられ、496位における野生型Asn(N)残基がAsp(D)またはGlu(E)残基で置き換えられている(「ELD」または「ELE」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。別の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、野生型FokI切断ハーフドメイン由来であり、アミノ酸残基416、422、447、448、または525における1つまたは複数の突然変異に加えて、野生型FokI(配列番号5)に対して番号付けされた、アミノ酸残基490、538および537における突然変異を含む。好ましい実施形態において、本発明は、操作された切断ハーフドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の突然変異に加えて、490位における野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、538位における野生型Ile(I)残基がLys(K)残基で置き換えられ、537位における野生型His(H)残基がLys(K)残基またはArg(R)残基で置き換えられている(「KKK」または「KKR」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する(参照により本明細書に組み入れられるU.S.8,962,281を参照)。例えば、これらの開示があらゆる目的のために参照によりその全体が開示に組み入れられる米国特許第7,914,796号;8,034,598号;および8,623,618号を参照されたい。他の実施形態において、操作された切断ハーフドメインは、「Sharkey」および/または「Sharkey突然変異」を含む(Guo, et al. (2010) J. Mol. Biol. 400(1):96-107を参照)。
【0182】
他の実施形態において、本明細書に記載されるニッカーゼは、操作された切断ハーフドメインを含み、これは、野生型FokI切断ハーフドメイン由来であり、アミノ酸残基416、422、447、448、または525における1つまたは複数の突然変異に加えて、野生型FokIまたはFokIホモログに対して番号付けされた、アミノ酸残基490、および538における突然変異を含む。好ましい実施形態において、本発明は、操作された切断ハーフドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の突然変異に加えて、490位における野生型Glu(E)残基がLys(K)残基で置き換えられ、538位における野生型Ile(I)残基がLys(K)残基で置き換えられている(「KK」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。他の好ましい実施形態において、本記載は、操作された切断ハーフドメインが、416位、422位、447位、448位、または525位における1つまたは複数の突然変異に加えて、486位における野生型Gln(Q)残基がGlu(E)残基で置き換えられ、499位における野生型Ile(I)残基がLeu(L)残基で置き換えられている(「EL」)ポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する(参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8,034,598号を参照)。
【0183】
一部の態様において、本記載は、操作された切断ハーフドメインが、FokI触媒ドメイン中の、387位、393位、394位、398位、400位、402位、416位、422位、427位、434位、439位、441位、447位、448位、469位、487位、495位、497位、506位、516位、525位、529位、534位、559位、569位、570位、571位の1つまたは複数における野生型アミノ酸残基が突然変異されているポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。一部の実施形態において、1つまたは複数の突然変異は、野生型アミノ酸を、正電荷を有する残基から中性残基または負電荷を有する残基に変更する。これらの実施形態のいずれかにおいて、記載された突然変異体はまた、1つまたは複数の追加の突然変異を含むFokIドメインに作製されていてもよい。好ましい実施形態において、これらの追加の突然変異は、二量体化ドメイン中、例えば418位、432位、441位、481位、483位、486位、487位、490位、496位、499位、523位、527位、537位、538位および/または559位にある。突然変異の非限定的な例としては、あらゆる切断ドメイン(例えば、FokIまたはFokIのホモログ)の、393位、394位、398位、416位、421位、422位、442位、444位、472位、473位、478位、480位、525位または530位における、野生型残基のあらゆるアミノ酸残基での突然変異(例えば、置換)(例えば、K393X、K394X、R398X、R416S、D421X、R422X、K444X、S472X、G473X、S472、P478X、G480X、K525X、およびA530X、ここで第1の残基は、野生型を現し、Xは、野生型残基と置換されるあらゆるアミノ酸を指す)が挙げられる。一部の実施形態において、Xは、E、D、H、A、K、S、T、DまたはNである。他の例示的な突然変異としては、S418E、S418D、S446D、K448A、I479Q、I479T、Q481A、Q481N、Q481E、A530Eおよび/またはA530Kが挙げられ、ここでアミノ酸残基は、全長FokI野生型切断ドメインおよびそのホモログに対して番号付けされている。特定の実施形態において、組合せとしては、416と422、416位における突然変異とK448A、K448AとI479Q、K448AとQ481A、および/またはK448Aと525位における突然変異を挙げることができる。一実施形態において、416位における野生型残基は、Glu(E)残基で置き換えられていてもよく(R416E)、422位における野生型残基は、His(H)残基で置き換えられ(R422H)、525位における野生型残基は、Ala(A)残基で置き換えられる。本明細書に記載される切断ドメインはさらに、これらに限定されないが、432位、441位、483位、486位、487位、490位、496位、499位、527位、537位、538位および/または559位などにおける追加の突然変異、例えば、二量体化ドメインの突然変異体(例えば、ELD、KKR)および/またはニッカーゼの突然変異体(触媒ドメインへの突然変異)を含んでいてもよい。本明細書に記載される突然変異を有する切断ハーフドメインは、当業界で公知のようなヘテロ二量体を形成する。
【0184】
ヌクレアーゼは、インビボで、いわゆる「スプリット酵素」技術を使用して、核酸標的部位でアセンブルが可能である(例えば米国特許公開第2009/0068164号を参照)。このようなスプリット酵素の成分は、別々の発現コンストラクトで発現されてもよいし、または1つのオープンリーディングフレーム中で連結されていてもよく、その場合、個々の成分は、例えば、自己切断2AペプチドまたはIRES配列によって分離されている。成分は、個々のジンクフィンガー結合ドメイン、またはメガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであり得る。
【0185】
ヌクレアーゼ(例えば、ZFNおよび/またはTALEN)は、使用前に、米国特許第8,563,314号に記載されるように、例えば酵母ベースの染色体システムにおいて、活性に関してスクリーニングすることができる。
【0186】
ZFNまたはTALENニッカーゼに加えて、またはその代わりに、DNA編集複合体は、CRISPR/Casニッカーゼを含んでいてもよい。CRISPR/Casニッカーゼの非限定的な例は、米国特許第9,840,713号;9,770,489号;9,567,604号;8,932,814号;8,889,356号;8,697,359号;8,771,945号;8,795,965号;8,865,406号;8,871,445号;8,889,356号;8,895,308号;8.906,616号;8,932,814号;8,945,839号;8,945,839号;8,999,641号;10,000,772号などに記載されている。
【0187】
システムのRNA成分をコードするCRISPR(クラスター化された等間隔にスペーサーが入った短鎖反復回文配列)遺伝子座、およびタンパク質をコードするCas(CRISPR関連)遺伝子座(Jansen, et al. (2002) Mol. Microbiol. 43:1565-1575; Makarova, et al. (2002) Nucleic Acids Res. 30: 482-496; Makarova, et al. (2006) Biol. Direct 1:7; Haft, et al. (2005) PLoS Comput. Biol. 1:e60)が、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムの遺伝子配列を構成する。微生物宿主におけるCRISPR遺伝子座は、CRISPR関連(Cas)遺伝子、ならびに、CRISPR媒介核酸切断の特異性をプログラミングすることが可能な非コードRNAエレメントの組合せを含有する。
【0188】
II型CRISPRは、最もよく特徴付けられたシステムの1つであり、4つの逐次工程で標的化されたDNA二本鎖破断を実行する。第1に、2つの非コードRNAである、pre-crRNAアレイおよびtracrRNAを、CRISPR遺伝子座から転写させる。第2に、tracrRNAをpre-crRNAの反復領域にハイブリダイズさせ、pre-crRNAの、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへのプロセシングを媒介させる。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体により、crRNA上のスペーサーと、標的認識のための追加の要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のプロトスペーサーとの間でのワトソン-クリック塩基対合を介して、Cas9を標的DNAに方向付ける。最後に、Cas9が標的DNAの切断を媒介して、プロトスペーサー内に二本鎖破断を作り出す。CRISPR/Casシステムの活性は、3つの工程、すなわち(i)「適合」と呼ばれるプロセスにおける将来的な攻撃を防ぐための、CRISPRアレイへの外来(alien)DNA配列の挿入、(ii)関連タンパク質の発現、ならびにアレイの発現およびプロセシング、それに続いて(iii)外来(alien)核酸を用いたRNA媒介干渉を含む。したがって、細菌細胞において、いわゆる「Cas」タンパク質のうちいくつかは、CRISPR/Casシステムの天然の機能に関与しており、外来(alien)DNAなどの挿入などの機能において役割を果たす。
【0189】
最初に、Casは、ガイドRNAのリボース-リン酸主鎖と広範囲に接触して、最初のDNA照合に必要な10ntのRNAシード配列を事前に配列する。事前に配列したシード配列に加えて、5’-NGG-3’PAM認識に関与し、ガイドが欠失したアポ構造において無秩序である、Casタンパク質のPAMと相互作用する部位R1333およびR1335が、標的DNAとの接触が生じる前に事前に配置されていることから、sgRNAのローディングが、CasがDNA認識能を有する構造を形成することを可能にすることを示す。一旦CasがそのガイドRNAと結合したら、複合体は、すぐに相補的標的DNA部位をサーチできる状態になる。標的のサーチおよび認識は、20ntのスペーサー配列と標的DNA中のプロトスペーサーとの間の相補的塩基対合と、それに加えて、標的部位に隣接する保存されたPAM配列の存在の両方を必要とする。PAM配列は、自己および非自己配列間の識別に重要である。単一分子実験により、Casは、可能性があるガイドRNA相補性に関して隣接DNAを照合する前に、適したPAM配列のためのプロービングによって標的DNAのサーチプロセスを開始させることが実証されている。標的認識は、3次元での衝突を介して起こり、それにおいてCasは、適切なPAM配列を含有しないDNAから急速に解離し、滞留時間は、適したPAMが存在する場合、ガイドRNAと隣接するDNAとの間の相補性に依存する。一旦Casが、適切なPAMを有する標的部位を見出したら、それが、PAMと隣接する核形成部位における局所的なDNA融解と、それに続くRNA鎖侵入のきっかけとなり、RNA-DNAハイブリッドおよびPAM近位端からPAM遠位端への置き換えられたDNA鎖(R-ループと呼ばれる)を形成する。PAM二重鎖は、アルファヘリカル認識(REC)ローブ、保存されたHNHを含有するヌクレアーゼ(NUC)ローブ、およびスプリットRuvCヌクレアーゼドメインの間の正電荷を有する溝中に置かれ、PAMを含有する非標的鎖は、主としてC末端ドメイン(CTD)に存在する。PAM配列における第1の塩基は、Nとして表され、そのカウンターパートと塩基対合したままであるが、Casと相互作用しない。保存されたPAMのGGジヌクレオチドは、CTDのβ-ヘアピンに配置された2つのアルギニン残基(R1333およびR1335)との塩基特異的な水素結合相互作用によって、主溝中で直接読み出される。GGジヌクレオチドとの塩基特異的な接触に加えて、CasのCTDは、PAMを含有する非標的DNA鎖のデオキシリボース-リン酸主鎖との多数の水素結合相互作用を生じる。しかしながら、CasとPAMに相補的な標的-鎖ヌクレオチドとの間の直接の接触は観察されていない(Jiang and Doudna (2017) Annual Review of Biophysics 46:505-529)。一部の実施形態において、本発明の方法および組成物において開示されたCasは、PAM非依存性である。一部の実施形態において、上記で開示された通りのR1333およびR1335の配置は、PAM認識を変更するための突然変異を含む(Anders, et al. (2014) Nature 513(7519):569-573)。
【0190】
一部の実施形態において、CRISPR-Cpf1システムが使用される。CRISPR-Cpf1システムは、フランキセラ属種で同定され、ヒト細胞においてロバストなDNA干渉を媒介するクラス2のCRISPR-Casシステムである。機能的に保存されているにもかかわらず、Cpf1およびCas9は、それらのガイドRNAおよび基質特異性を含む多くの側面で異なる(Fagerlund, et al. (2015) Genom Bio 16 :251を参照)。Cas9とCpf1タンパク質との主要な差は、Cpf1がtracrRNAを利用せず、したがってcrRNAのみを必要とすることである。FnCpf1 crRNAは、42~44ヌクレオチドの長さ(19ヌクレオチドの反復および23~25ヌクレオチドのスペーサー)であり、単一のステム-ループを含有しており、これが二次構造を保持する配列の変更を許容する。加えて、Cpf1 crRNAは、Cas9が必要とする約100ヌクレオチドの操作されたsgRNAより顕著に短く、FnCpflのためのPAM要件は、置き換えられた鎖における5’-TTN-3’および5’-CTA-3’である。Cas9とCpf1はどちらも標的DNA中に二本鎖破断を作製するが、Cas9は、そのRuvC様およびHNH様ドメインを使用して、ガイドRNAのシード配列内に平滑末端化されたカットを作製し、それに対してCpf1は、RuvC様ドメインを使用して、シードの外側に互い違いのカットを生産する。Cpf1は重要なシード領域から離れて互い違いのカットを作製するため、NHEJは、標的部位を崩壊させないと予想され、それゆえにCpf1は、所望のHDR組換え事象が起こるまで同じ部位のカットを確実に継続することができる。したがって、本明細書に記載される方法および組成物において、用語「Cas」は、Cas9およびCfp1タンパク質の両方を含むことが理解される。したがって、本明細書で使用されるように、「CRISPR/Casシステム」は、CRISPR/Casおよび/またはCRISPR/Cfp1システムの両方を指し、両方ともヌクレアーゼ、ニッカーゼおよび/または転写因子システムを含む。
【0191】
一部の実施形態において、他のCasタンパク質を使用してもよい。一部の例示的なCasタンパク質としては、Cas9、Cpf1(Cas12aとしても公知)、C2c1、C2c2(Cas13aとしても公知)、C2c3、Cas1、Cas2、Cas4、CasXおよびCasYが挙げられ;さらに、操作された、および天然の、それらの変異体(Burstein, et al. (2017) Nature 542:237-241)、例えばHF1/spCas9(Kleinstiver, et al. (2016) Nature 529:490-495; Cebrian-Serrano and Davies (2017) Mamm Genome 28(7):247-261);スプリットCas9システム(Zetsche, et al. (2015) Nat Biotechnol 33(2):139-142)、インテイン-エクステインシステムベースのトランススプライスCas9(Troung, et al. (2015) Nucl Acid Res 43(13):6450-8);ミニ-SaCas9(Ma, et al. (2018) ACS Synth Biol 7(4):978-985)が挙げられる。したがって、本明細書に記載される方法および組成物において、用語「Cas」は、天然のものと操作されたものの両方の、全てのCas変異型タンパク質を含む。したがって、本明細書で使用されるように、「CRISPR/Casシステム」は、両方のヌクレアーゼ、ニッカーゼおよび/または転写因子システムを含む、あらゆるCRISPR/Casシステムを指す。
【0192】
特定の実施形態において、Casタンパク質は、天然に存在するCasタンパク質の「機能性誘導体」であり得る。天然配列のポリペプチドの「機能性誘導体」は、天然配列のポリペプチドに共通する定性的な生物学的特性を有する化合物である。「機能性誘導体」としては、これらに限定されないが、天然配列のフラグメント、ならびに対応する天然配列のポリペプチドに共通する生物学的活性をそれらが有するという条件で、天然配列のポリペプチドの誘導体およびそのフラグメントが挙げられる。本明細書において企図される生物学的活性は、DNA基質をフラグメントに加水分解する機能性誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体、共有結合の改変体、およびそれらの融合体の両方、例えば派生的なCasタンパク質を包含する。Casポリペプチドの好適な誘導体またはそのフラグメントとしては、これらに限定されないが、Casタンパク質の突然変異体、融合体、共有結合の改変体またはそれらのフラグメントが挙げられる。Casタンパク質は、Casタンパク質またはそのフラグメント、ならびにCasタンパク質の誘導体またはそのフラグメントを含み、これらは、細胞から得てもよいし、もしくは化学的に合成してもよいし、またはこれらの2つの手順の組合せによって得てもよい。細胞は、Casタンパク質を天然に生産する細胞であってもよいし、またはCasタンパク質を天然に生産し、より高い発現レベルで内因性Casタンパク質を生産するように、または外因的に導入された、内因性Casと同一または異なるCasをコードする核酸からCasタンパク質を生産するように遺伝子操作されている細胞であってもよい。一部の場合において、細胞は、Casタンパク質を天然に生産せず、Casタンパク質を生産するように遺伝子操作されている。一部の実施形態において、Casタンパク質は、AAVベクターを介したデリバリーのために、小さいCas9オーソログである(Ran, et al. (2015) Nature 510:186)。
【0193】
デリバリー
本明細書に記載されるDNA編集複合体(またはその成分分子)は、あらゆる好適な手段によって、例えばタンパク質および/またはmRNA成分の注射などによって標的細胞にデリバリーすることができる。デリバリーは、あらゆる好適な手段を介した、単離された細胞へのデリバリーであってもよいし(これを順に、エクスビボでの細胞療法のために生きている対象に投与できる)、または生きている対象へのデリバリーであってもよい。細胞および対象への遺伝子編集分子のデリバリーは当業界において公知である。
【0194】
好適な細胞としては、これらに限定されないが、真核および原核の細胞および/または細胞株が挙げられる。このような細胞から生成した、このような細胞または細胞株の非限定的な例としては、T細胞、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、およびperC6細胞、ならびに、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera fugiperda)(Sf)などの昆虫細胞、またはサッカロマイセス属、ピチア属およびシゾサッカロマイセス属などの真菌細胞が挙げられる。特定の実施形態において、細胞株は、CHO-K1、MDCKまたはHEK293細胞株である。また好適な細胞としては、幹細胞、例えば、一例として、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPS細胞)、造血幹細胞、神経幹細胞および間葉幹細胞も挙げられる。
【0195】
本明細書に記載されるタンパク質をデリバリーする方法は、例えば、米国特許第6,453,242号;6,503,717号;6,534,261号;6,599,692号;6,607,882号;6,689,558号;6,824,978号;6,933,113号;6,979,539号;7,013,219号;および7,163,824号に記載されており、これらの全ての開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0196】
本明細書に記載されるDNA編集複合体はまた、成分(例えば、融合分子)の1つまたは複数をコードする配列を含有するベクターを使用してデリバリーすることもできる。加えて、追加の核酸(例えば、ドナー)も、これらのベクターを介してデリバリーすることができる。これらに限定されないが、プラスミドベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターおよびアデノ随伴ウイルスベクターなどのあらゆるベクター系を使用することができる。参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,534,261号;6,607,882号;6,824,978号;6,933,113号;6,979,539号;7,013,219号;および7,163,824号も参照されたい。さらに、これらのベクターのいずれもが、1つまたは複数のDNA結合タンパク質をコードする配列および/または必要に応じて追加の核酸を含んでいてもよいことが明らかであろう。したがって、本明細書に記載される1つまたは複数のDNA結合タンパク質、さらに、必要に応じて追加のDNAが細胞に導入される場合、それらは、同じベクターで、または異なるベクターで運搬することができる。複数のベクターが使用される場合、各ベクターは、1つまたは複数のDNA結合タンパク質をコードする配列および要求に応じて追加の核酸を含んでいてもよい。従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入方法を使用して、細胞(例えば、哺乳類細胞)および標的組織に操作されたDNA結合タンパク質をコードする核酸を導入し、要求に応じて追加のヌクレオチド配列を共に導入することができる。このような方法はまた、インビトロで核酸(例えば、DNA結合タンパク質および/またはドナーをコードする)を細胞に投与するにも使用できる。特定の実施形態において、核酸は、インビボまたはエクスビボでの遺伝子治療での使用のために投与される。非ウイルスベクターデリバリー系としては、DNAプラスミド、裸の核酸、およびリポソームまたはポロキサマーなどの運搬手段と複合体化した核酸が挙げられる。ウイルスベクターデリバリー系としては、細胞へのデリバリー後、エピソームまたは統合されたゲノムのいずれかを有するDNAおよびRNAウイルスが挙げられる。遺伝子治療手順の総論に関して、Anderson (1992) Science 256:808-813; Nabel & Felgner (1993) TIBTECH 11:211-217; Mitani & Caskey (1993) TIBTECH 11:162-166; Dillon (1993) TIBTECH 11:167-175; Miller (1992) Nature 357:455-460; Van Brunt (1988) Biotechnology 6(10):1149-1154; Vigne (1995) Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36; Kremer & Perricaudet (1995) British Medical Bulletin 51(1):31-44; Haddada, et al, in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Boehm (eds.) (1995);およびYu, et al. (1994) Gene Therapy 1:13-26を参照されたい。
【0197】
核酸の非ウイルスデリバリーの方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、mRNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤によって強化される取り込みが挙げられる。例えば、Sonitron 2000システム(Rich-Mar)を使用するソノポレーションも、核酸のデリバリーに使用することができる。好ましい実施形態において、1つまたは複数の核酸がmRNAとしてデリバリーされる。翻訳効率および/またはmRNA安定性を増加させるために、キャップされたmRNAの使用も好ましい。特に好ましくは、ARCA(アンチリバースキャップアナログ(anti-reverse cap analog))キャップまたはその変異体である。参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,074,596号および8,153,773号を参照されたい。
【0198】
追加の例示的な核酸デリバリー系としては、Amaxa Biosystems(Cologne、Germany)、Maxcyte,Inc.(Rockville、Maryland)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston、MA)およびCopernicus Therapeutics Incによって提供されるものが挙げられる(例えば米国特許第6,008,336号を参照)。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号;4,946,787号;および4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は、商業的に販売されている(例えば、Transfectam(商標)、Lipofectin(商標)、およびLipofectamine(商標)RNAiMAX)。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに好適なカチオン性および中性脂肪としては、Felgner、国際特許公開WO91/17424およびWO91/16024に記載のものが挙げられる。デリバリーは、細胞へのデリバリー(エクスビボでの投与)または標的組織へのデリバリー(インビボでの投与)であり得る。
【0199】
脂質:核酸複合体の調製、例えば、標的化されたリポソーム、例えばイムノリピド(immunolipid)複合体などは当業者に周知である(例えば、Crystal (1995) Science 270:404-410; Blaese, et al. (1995) Cancer Gene Ther. 2:291-297; Behr, et al. (1994) Bioconjugate Chem. 5:382-389; Remy, et al. (1994) Bioconjugate Chem. 5:647-654; Gao, et al. (1995) Gene Therapy 2:710-722; Ahmad, et al. (1992) Cancer Res. 52:4817-4820;米国特許第4,186,183号;4,217,344号;4,235,871号;4,261,975号;4,485,054号;4,501,728号;4,774,085号;4,837,028号;および4,946,787を参照)。
【0200】
追加のデリバリーの方法としては、EnGeneICデリバリー媒体(EnGeneIC delivery vehicle;EDV)へのデリバリーしようとする核酸のパッケージングの使用が挙げられる。これらのEDVは、抗体の一方のアームが標的組織への特異性を有し、他方のアームがEDVへの特異性を有する二重特異性抗体を使用して、標的組織に特異的にデリバリーされる。抗体がEDVを標的細胞表面に運び、次いでEDVはエンドサイトーシスによって細胞に運ばれる。一旦細胞中に入ったら、内容物が放出される(MacDiarmid, et al. (2009) Nature Biotechnology 27(7):643を参照)。
【0201】
操作されたDNA結合タンパク質、および/またはドナー(例えばCARまたはACTR)をコードする核酸をデリバリーするためのRNAまたはDNAウイルスベースのシステムの使用は、要求に応じて、体内でウイルスを特異的な細胞に標的化し、ウイルスペイロードを核にトラフィッキングするために、高度に進化したプロセスを利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与してもよいし(インビボで)、またはそれらは、インビトロで細胞を処置するのに使用してもよく、改変された細胞が患者に投与される(エクスビボで)。核酸をデリバリーするための従来のウイルスベースのシステムとしては、これらに限定されないが、遺伝子移入のための、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴、ワクシニアおよび単純疱疹ウイルスベクターが挙げられる。宿主ゲノム中の統合は、レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子移入方法を用いて可能であり、しばしばその結果として挿入された導入遺伝子の長期発現が起こる。加えて、高い形質導入効率が、多くの様々な細胞型および標的組織において観察されている。
【0202】
レトロウイルスの親和性は、外来エンベロープタンパク質を取り込むこと、標的細胞の可能な標的集団を拡張することによって変更することができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入するかまたは感染することができるレトロウイルスベクターであり、典型的には、高いウイルス力価を生じる。レトロウイルスの遺伝子移入システムの選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大6~10kbの外来配列のパッケージング能力を有するシス作用性ロングターミナルリピートで構成される。最小限のシス作用性LTRが、ベクターの複製およびパッケージングに十分であり、次いでこれが、治療遺伝子を標的細胞に統合して、永続的な導入遺伝子発現を提供するのに使用される。広く使用されるレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびそれらの組合せをベースとするものが挙げられる(例えば、Buchscher, et al. (1992) J. Virol. 66:2731-2739; Johann, et al. (1992) J. Virol. 66:1635-1640; Sommerfelt, et al. (1990) Virol. 176:58-59; Wilson, et al. (1989) J. Virol. 63:2374-2378; Miller, et al. (1991) J. Virol. 65:2220-2224;国際特許公開WO94/26877号を参照)。
【0203】
一過性発現が好ましい適用において、アデノウイルスベースのシステムを使用することができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型において非常に高い形質導入効率が可能であり、細胞分裂を必要としない。このようなベクターを用いて、高い力価および高いレベルの発現が達成されてきた。このベクターは、比較的単純なシステムで大量に生産することができる。またアデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターは、例えば、インビトロでの核酸およびペプチドの生産において、さらに、インビボおよびエクスビボでの遺伝子治療手順のために、細胞を標的核酸で形質導入するのにも使用される(例えば、West, et al. (1987) Virology 160:38-47;米国特許第4,797,368号;国際特許公開WO93/24641号;Kotin (1994) Human Gene Therapy 5:793-801; Muzyczka (1994) J. Clin. Invest. 94:1351を参照。組換えAAVベクターの構築は、米国特許第5,173,414号;Tratschin, et al. (1985) Mol. Cell. Biol. 5:3251-3260; Tratschin, et al. (1984) Mol. Cell. Biol. 4:2072-2081; Hermonat & Muzyczka (1984) PNAS USA 81:6466-6470; and Samulski, et al. (1989) J. Virol. 63:03822-3828などの多数の出版物に記載されている。
【0204】
現在、少なくとも6つのウイルスベクターアプローチが、臨床治験における遺伝子移入のために利用可能であり、これらは、形質導入物質を生成するために、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子によって欠陥のあるベクターを補完することを含むアプローチを利用する。
【0205】
pLASNおよびMFG-Sは、臨床治験において使用されてきたレトロウイルスベクターの例である(Dunbar, et al. (1995) Blood 85:3048-305; Kohn, et al. (1995) Nat. Med. 1:1017-102; Malech, et al. (1997) PNAS USA 94(22):12133-12138)。PA317/pLASNが遺伝子治験において使用される第1の治療ベクターであった。(Blaese, et al. (1995) Science 270:475-480)。MFG-Sをパッケージングしたベクターで50%またはそれより大きい形質導入効率が観察された。(Ellem, et al. (1997) Immunol Immunother. 44(1):10-20; Dranoff, et al. (1997) Hum. Gene Ther. 1:111-2。)
【0206】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、欠陥のある非病原性パルボウイルス2型アデノ随伴ウイルスをベースとした有望な代替遺伝子デリバリー系である。全てのベクターは、導入遺伝子発現カセットに隣接するAAV145bp逆方向末端反復のみを保持するプラスミド由来である。形質導入される細胞のゲノムへの統合による効率的な遺伝子移入および安定な導入遺伝子デリバリーが、このベクター系の主要な特徴である。(Wagner, et al. (1998) Lancet 351(9117):1702-3, Kearns, et al. (1996) Gene Ther. 9:748-55)。他のAAV血清型、例えばAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV8、AAV8.2、AAV9およびAAVrh10など、ならびにシュードタイプ化したAAV、例えばAAV2/8、AAV2/5およびAAV2/6も、本発明に従って使用することができる。複製欠陥性組換えアデノウイルスベクター(Ad)を高い力価で生産でき、これは、多数の異なる細胞型に容易に感染できる。ほとんどのアデノウイルスベクターは、導入遺伝子がAd E1a、E1b、および/またはE3遺伝子を置き換えるように操作されており、その後、複製欠損型ベクターは、欠失した遺伝子機能をトランスで供給するヒト293細胞中で増殖することができる。Adベクターは、例えば非分裂性の分化細胞、例えば肝臓、腎臓および筋肉に見出されるものなどの、インビボにおいて複数のタイプの組織に形質導入することができる。従来のAdベクターは、大きい運搬容量を有する。臨床治験におけるAdベクターの使用の例は、筋肉内注射を用いた抗腫瘍免疫化のためのポリヌクレオチド療法を含む(Sterman et al. (1998) Hum. Gene Ther. 7:1083-1089)。臨床治験における遺伝子移入のためのアデノウイルスベクターの使用のさらなる例としては、Rosenecker, et al. (1996) Infection 24(1):5-10; Sterman, et al. (1998) Hum. Gene Ther. 9(7):1083-1089; Welsh, et al. (1995) Hum. Gene Ther. 2:205-218; Alvarez, et al. (1997) Hum. Gene Ther. 5:597-613; Topf, et al. (1998) Gene Ther. 5:507-513; Sterman, et al. (1998) Hum. Gene Ther. 7:1083-1089が挙げられる。
【0207】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染することが可能なウイルス粒子を形成するのに使用される。このような細胞としては、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞が挙げられる。遺伝子治療に使用されるウイルスベクターは、通常、ウイルス粒子に核酸ベクターをパッケージングするプロデューサー細胞株によって生成される。ベクターは、典型的には、パッケージングとそれに続く宿主への統合(適切な場合)に必要な最小のウイルス配列を含有し、他のウイルス配列は、発現させようとするタンパク質をコードする発現カセットで置き換えられる。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、典型的には、パッケージングおよび宿主ゲノムへの統合に必要なAAVゲノム由来の逆方向末端反復(ITR)配列のみを所有する。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわちrepおよびcapをコードするがITR配列が欠失したヘルパープラスミドを含有する細胞株中にパッケージングされる。細胞株はまた、ヘルパーとしてアデノウイルスでも感染される。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如により顕著な量でパッケージングされない。アデノウイルスでのコンタミネーションは、例えば、アデノウイルスがAAVより高い感受性を有する熱処理によって、低減することができる。
【0208】
多くの遺伝子治療適用において、遺伝子治療用ベクターが、特定の組織タイプに対して高度な特異性でデリバリーされることが望ましい。したがって、ウイルスの外面上のウイルス外殻タンパク質との融合タンパク質としてリガンドを発現することによって、所与の細胞型に対する特異性を有するように、ウイルスベクターを改変してもよい。リガンドは、目的の細胞型に存在することがわかっている受容体に対して親和性を有するように選択される。例えば、Han, et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9747-9751は、モロニーマウス白血病ウイルスを、gp70に融合したヒトヘレグリンを発現するように改変してもよく、組換えウイルスが、ヒト上皮増殖因子受容体を発現する特定のヒト乳がん細胞に感染することを報告した。この原理は、標的細胞が、受容体を発現し、ウイルスが、細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する他のウイルス標的細胞対にも拡張することができる。例えば、繊維状ファージは、実質的に全ての選択される細胞受容体に対する特異的な結合親和性を有する抗体フラグメント(例えば、FABまたはFv)を提示するように操作されていてもよい。上記の説明は主としてウイルスベクターに適用されるが、同じ原理が非ウイルスベクターに適用することができる。このようなベクターは、特異的な標的細胞による取り込みを選好する特異的な取り込み配列を含有するように操作されていてもよい。
【0209】
CRISPR/Casシステムのためのデリバリー方法は、上述した方法を含んでいてもよい。例えば、動物モデルにおいて、インビトロで転写された、mRNAまたは組換えCasタンパク質をコードするCasは、ガラス針を使用してゲノム編集される動物の一細胞期の胎芽に直接注射することができる。インビトロにおいて細胞中でCasおよびガイドRNAを発現させるために、典型的には、それらをコードするプラスミドは、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを介して、細胞にトランスフェクトされる。また組換えCasタンパク質は、インビトロにおいて転写されたガイドRNAと複合体化されていてもよく、その場合、Cas-ガイドRNAリボ核タンパク質は、目的の細胞によって取り込まれる(Kim, et al. (2014) Genome Res 24(6):1012)。治療目的のために、CasおよびガイドRNAは、ウイルスおよび非ウイルス技術の組合せによってデリバリーすることができる。例えば、CasをコードするmRNAは、ナノ粒子デリバリーを介してデリバリーしてもよく、一方でガイドRNAおよびあらゆる所望の導入遺伝子または修復テンプレートは、AAVを介してデリバリーされる(Yin, et al. (2016) Nat Biotechnol 34(3):328)。
【0210】
遺伝子治療用ベクターは、インビボで、個々の患者(対象)への投与によって、典型的には、後述するように、全身投与(例えば、静脈内、腹膜内、筋肉内、真皮下、または頭蓋内への注入)または局所適用によってデリバリーすることができる。代替として、ベクターは、エクスビボで、個々の患者から外植された細胞(例えば、リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)または万能ドナーの造血幹細胞などの細胞にデリバリーすることができ、それに続いて、細胞は、通常、ベクターを取り込んだ細胞の選択の後、患者に再び埋め込まれる。
【0211】
診断、調査、移植のための、または遺伝子治療(例えば、トランスフェクトされた細胞の宿主生物への再注入を介した)のための、エクスビボでの細胞トランスフェクションは当業者に周知である。好ましい実施形態において、細胞を対象生物から単離し、DNA結合タンパク質の核酸(遺伝子またはcDNA)でトランスフェクトし、再び対象生物(例えば、患者)に注入し戻す。エクスビボでのトランスフェクションに好適な様々な細胞型は当業者に周知である(例えば、Freshney, et al., Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994))およびそこで引用されたどのように患者から細胞を単離し培養するかの議論に関する文献を参照)。
【0212】
一実施形態において、細胞のトランスフェクションおよび遺伝子治療のためのエクスビボの手順において、幹細胞が使用される。幹細胞を使用する利点は、幹細胞は、インビトロで他の細胞型に分化させることができること、または幹細胞は、哺乳動物(例えば細胞のドナー)に導入できることであり、その場合、幹細胞は骨髄中に植え付けられる。インビトロで、GM-CSF、IFN-γおよびTNF-αのようなサイトカインを使用してCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞型に分化させるための方法は、公知である(Inaba, et al. (1992) J. Exp. Med. 176:1693-1702を参照)。
【0213】
幹細胞は、公知の方法を使用して形質導入および分化のために単離される。例えば、幹細胞は、不要な細胞、例えばCD4+およびCD8+(T細胞)、CD45+(汎B細胞)、GR-1(顆粒球)、およびIad(分化した抗原提示細胞)と結合する抗体で骨髄細胞をパニングすることによって、骨髄細胞から単離される(Inaba, et al. (1992) J. Exp. Med. 176:1693-1702を参照)。
【0214】
一部の実施形態において、改変された幹細胞も使用することができる。例えば、アポトーシスに対して耐性にされた神経幹細胞は、治療用組成物として使用することができ、この場合、幹細胞も本発明のZFP TFを含有する。アポトーシスに対する耐性は、例えば、幹細胞においてBAXまたはBAK特異的なZFNを使用してBAXおよび/またはBAKをノックアウトすることによって生じさせてもよいし(米国特許第8,597,912号を参照)、またはここでも例えばカスパーゼ-6特異的なZFNを使用してカスパーゼにおいて崩壊されているものによって生じさせてもよい。
【0215】
治療用DNA結合タンパク質(またはこれらのタンパク質をコードする核酸)を含有するベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、リポソームなど)はまた、インビボにおける細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。代替として、裸のDNAを投与することができる。投与は、これらに限定されないが、注射、注入、局所適用およびエレクトロポレーションなどの、血液または組織細胞との最終的な接触部位に分子を導入するために通常使用される経路のいずれかによってなされる。このような核酸の好適な投与方法が利用可能であり、当業者に周知であり、特定の組成物を投与するのに1つより多くの経路を使用できるが、特定の経路が、別の経路より迅速でより有効な反応を提供できることが多い。
【0216】
造血幹細胞へのDNA導入のための方法は、例えば米国特許第5,928,638号に開示されている。造血幹細胞、例えばCD34+細胞への導入遺伝子の導入に有用なベクターとしては、35型アデノウイルスが挙げられる。
【0217】
免疫細胞(例えば、T細胞)への導入遺伝子の導入に好適なベクターとしては、非組み込み型レンチウイルスベクターが挙げられる。例えば、Ory, et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:11382-11388; Dull, et al. (1998) J. Virol. 72:8463-8471; Zuffery, et al. (1998) J. Virol. 72:9873-9880; Follenzi, et al. (2000) Nature Genetics 25:217-222を参照されたい。
【0218】
医薬的に許容される担体は、投与される特定の組成物によっても、組成物を投与するのに使用される特定の方法によっても、部分的に決定される。したがって、後述するように、利用可能な医薬組成物の様々な好適な製剤がある(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989を参照)。
【0219】
上述したように、開示された方法および組成物は、これらに限定されないが、原核細胞、真菌細胞、古細菌細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞、脊椎動物細胞、哺乳類細胞、ならびにあらゆるタイプのT細胞および幹細胞を含むヒト細胞などのあらゆるタイプの細胞で使用することができる。タンパク質発現のための好適な細胞株は当業者公知であり、その例としては、これらに限定されないが、COS、CHO(例えば、CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NS0、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例えば、HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、perC6、スポドプテラ・フルギペルダ(Sf)などの昆虫細胞、ならびにサッカロマイセス属、ピチア属およびシゾサッカロマイセス属などの真菌細胞が挙げられる。これらの細胞株の子孫、変異体および誘導体も使用することができる。
【0220】
適用
疾患の処置および防止における操作されたDNA塩基エディター複合体の使用は、医学における著しい発展を提供する。本明細書に記載される方法および組成物は、所望の標的部位が確実に一次的な編集場所になるように、これらの新規のツールの特異性を増加させるのに役立つ。
【0221】
本明細書に記載される組成物および方法によって処置および/または防止され得る例示的な遺伝病としては、これらに限定されないが、軟骨形成不全、色覚異常、酸性マルターゼ欠損症、アデノシンデアミナーゼ欠損症(OMIM番号102700)、副腎白質ジストロトフィー、アイカルディ症候群、アルファ-1抗トリプシン欠損症、アルファ-サラセミア、アンドロゲン不感受性症候群、アペール症候群、不整脈原性右室、異形成、血管拡張性失調症(ataxia telangictasia)、バース症候群、ベータ-サラセミア、青色ゴムまり様母斑症候群、カナバン病、慢性肉芽腫性疾患(CGD)、猫鳴き症候群、嚢胞性線維症、ダーカム病、外胚葉異形成、ファンコーニ貧血、進行性骨化性線維形成異常(fibrodysplasia ossificans progressive)、脆弱X症候群、ガラクトース血症(galactosemis)、ゴーシェ病、全身性ガングリオシド沈着症(generalized gangliosidoses)(例えば、GM1)、ヘモクロマトーシス、ベータ-グロビンの第6コドンにおけるヘモグロビンC突然変異(HbC)、血友病、ハンチントン病、ハーラー症候群、低ホスファターゼ症、クラインフェルター(Klinefleter)症候群、クラッベ病、ランガー-ギーディオン症候群、白血球接着不全症(LAD、OMIM番号116920)、白質ジストロフィー、QT延長症候群、マルファン症候群、メビウス症候群、ムコ多糖沈着症(MPS)、爪膝蓋骨症候群、腎性尿崩症(nephrogenic diabetes insipdius)、神経線維腫症、ニーマン-ピック病、骨形成不全症、フェニルケトン尿症(PKU)、ポルフィリン症、プラダー-ウィリー症候群、早老症、プロテウス症候群、網膜芽細胞腫、レット症候群、ルビンシュタイン-テイビ症候群、サンフイリッポ症候群、重症複合免疫不全(SCID)、シュワックマン症候群、鎌状赤血球症(鎌状赤血球貧血)、スミス-マゲニス症候群、スティックラー症候群、テイ-サックス病、血小板減少橈骨欠損(TAR)症候群、トリーチャー-コリンズ症候群、トリソミー、結節性硬化症、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、フォンヒッペルーリンダウ病、ワーデンブルグ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウィスコット-アルドリッチ症候群、X連鎖リンパ増殖症候群(XLP、OMIM番号308240)が挙げられる。
【0222】
標的化されたDNA塩基編集によって処置することができる追加の例示的な疾患としては、後天性免疫不全症、リソソーム蓄積症(例えば、ゴーシェ病、GM1、ファブリー病およびテイ-サックス病)、ムコ多糖沈着症(mucopolysaccahidosis)(例えばハンター病、ハーラー病)、異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、HbC、α-サラセミア、β-サラセミア)および血友病が挙げられる。
【0223】
このような方法はまた遺伝病を処置するための宿主における感染(ウイルスまたは細菌)の処置(例えば、ウイルスまたは細菌受容体の発現をブロックすること、それによって宿主生物における感染および/または蔓延を防止することによって)も可能にする。
【0224】
標的化された塩基編集はまた、宿主におけるウイルス感染を処置するのにも使用することができる。加えて、ウイルスのための受容体をコードする遺伝子の標的化された切断は、このような受容体の発現をブロックするのに使用でき、それによって宿主生物におけるウイルス感染および/またはウイルス蔓延を防止する。ウイルス受容体(例えば、HIVのためのCCR5およびCXCR4受容体)をコードする遺伝子の標的化変異誘発は、受容体をウイルスに結合できなくするのに使用でき、それによって新しい感染を防止し、既存の感染の蔓延をブロックする。米国特許公開第2008/015996号を参照されたい。標的化され得るウイルスまたはウイルス受容体の非限定的な例としては、単純疱疹ウイルス(HSV)、例えばHSV-1およびHSV-2、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)およびサイトメガロウイルス(CMV)、HHV6およびHHV7が挙げられる。ウイルスの肝炎ファミリーとしては、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)が挙げられる。他のウイルスまたはその受容体が標的化されてもよく、このようなものとしては、これらに限定されないが、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルスなど);カリチウイルス科;トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(Rhabodoviridae)(例えば、狂犬病ウイルスなど);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えば、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸系発疹ウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えば、A型、B型およびC型インフルエンザウイルスなど);ブニヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科;レンチウイルス科(例えば、HTLV-I;HTLV-II;HIV-1(HTLV-III、LAV、ARV、hTLRなどとしても公知)HIV-II);サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、インフルエンザウイルスおよびダニ媒介性脳炎ウイルスなどが挙げられる。これらのおよび他のウイルスの説明に関して、例えばVirology, 3rd Edition (W. K. Joklik ed. 1988); Fundamental Virology, 2nd Edition (B. N. Fields and D. M. Knipe, eds. 1991)を参照されたい。HIVのための受容体としては、例えば、CCR-5およびCXCR-4が挙げられる。上述したように、本明細書に記載される組成物および方法は、遺伝子改変、遺伝子修正、および遺伝子崩壊に使用することができる。
【0225】
本明細書に記載される組成物および方法は、これらに限定されないが、体細胞突然変異の修正;ドミナントネガティブ対立遺伝子の崩壊;病原体の細胞への侵入または増殖性感染に必要な遺伝子の崩壊;組織工学の強化、例えば、機能性組織の分化または形成が促進されるように遺伝子の活性を編集することによる、組織工学の強化;および/または機能性組織の分化または形成が促進されるように、遺伝子活性を崩壊させること;例えば、幹細胞が具体的な系統経路に分化するのを促進するために分化をブロックする遺伝子を編集することによって、分化をブロックまたは誘発することをもたらす編集などの、幹細胞ベースの療法にも適用することができる。この手順のための細胞型としては、これらに限定されないが、T細胞、B細胞、造血幹細胞、および胚性幹細胞が挙げられる。加えて、誘導多能性幹細胞(iPSC)を使用することができ、これはまた、患者自身の体細胞からも生成されると予想される。それゆえに、これらの幹細胞またはそれらの誘導体(分化した細胞型または組織)は、その起源または組織適合性に関係なくあらゆる人に植え付けることができる可能性がある。
【0226】
組成物および方法はまた、体細胞療法のためにも使用でき、それによってその生物学的な特性を強化するように改変された細胞のストックの生産が可能になる。このような細胞は、細胞のドナー源や受容者に対するその組織適合性とは関係なく、様々な患者に注入することができる。
【0227】
治療的な適用に加えて、本明細書に記載されるDNA編集複合体は、作物の操作、細胞株の操作および疾患モデルの構築に使用することができる。必須のヘテロ二量体切断ハーフドメインは、ヌクレアーゼ特性を改善するための直接的な手段を提供する。
【0228】
記載される操作されたDNA編集複合体は、一度での複数の標的における同時の切断を必要とする遺伝子改変プロトコールにおいても使用することができる。2つの標的における編集は、2つのDNA編集複合体の細胞発現を必要とすると予想され、好ましくは、各複合体中に、他の複合体中の切断ドメインと相互作用しない(二量体化しない)切断ドメインを含むニッカーゼを使用して達成される。
【実施例
【0229】
実施例1
ZFPの調製
特異的な標的部位に標的化されたZFPは、本質的に、Urnov, et al. (2005) Nature 435(7042):646-651, Perez, et al. (2008) Nature Biotechnology 26(7): 808-816、ならびに国際特許公開WO2016/183298およびWO2017/106528に記載された通りに設計され、プラスミドベクターに取り込まれる。米国特許第8,586,526号および9,873,894号に記載されるように、特異的な部位へのTALEおよびsgRNAも開発されている。
【0230】
塩基編集のための1つの例示的な標的は、アルファ-1抗トリプシン(A1AT)をコードするSERPINA遺伝子座である。A1ATタンパク質における常染色体劣性欠損を引き起こす遺伝子座における突然変異は、肝臓疾患と肺疾患の両方に関連する。PiZ突然変異は、北欧系の人において最も一般的な欠損対立遺伝子の1つであり、A1ATタンパク質の生産はわずか約10~20%である。この突然変異は、アミノ酸342位におけるグルタミンのリシンでの置換を生じるエクソン5における単一の突然変異によって引き起こされ、DNA中の1096位におけるGは、突然変異した遺伝子配列中ではAである(Fregonese and Stolk (2008) Orphanet J Rare Dis 3:16に総論されている)。
【0231】
別の例示的な標的は、JAK2 V617F突然変異である。別の突然変異を形成するためのV617Fの編集は、より低いJAK2の活性化をもたらす可能性がある。例えば、V617L、V617PおよびV617S突然変異は、V617Fより低い活性化であることが示されている(Dusa, et al. (2008) J Biol Chem 283(19) :12941-12948)。
【0232】
したがって、A1ATにおける突然変異の付近の領域を標的化するいくつかのジンクフィンガータンパク質(ZFP)を作製した(図2を参照)。以下の表1A(A1AT)および表1B(JAK2)に、ZFPの設計を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【0233】
いくつかの異なる組合せを含む塩基エディターは、標準的なプロトコールを使用して構築される。異なる組合せは、1つまたは複数のデアミナーゼ、ヘリカーゼ、選択されたDNA結合ドメイン(ZFP、TALE、sgRNA)、dCas、ニッカーゼ(ZFN、TALEN、CRISPR/Cas)複合体、UGI、GAMなどを含むエディターを含む。組合せは、逐次的に融合した選択されたドメインを含む複合体を含むか、または組合せは、別々の融合タンパク質として供給される。ドメイン間に、あらゆるリンカーが使用される。
【0234】
組合せは、細胞へのトランスフェクションのため、またはインビトロでのmRNAの生産において使用するための発現コンストラクトにアセンブルされる。次いでこれらのmRNAは、当業界において公知の方法(例えば、エレクトロポレーション)で細胞に導入することができる。標的突然変異を含まない細胞は、対照として使用される。
【0235】
実施例2
アデニン塩基エディター
分子のC末端側において突然変異したA1AT PiZ突然変異を標的化したZFP DNA結合ドメインに連結された緩いPAM要件を有するCas9変異体(SpCas9VRVRFRR_D10A;Nishimasu, et al. (2018) Science 361 :1259-1262またはxCas9、Hu, et al. (2018) Nature 556 :57-63を参照されたい)を使用してアデニン塩基エディターを構築した。隣接するDNA領域に結合するように設計された一連のZFP DNA結合ドメイン(実施例1を参照)を塩基エディターに取り込んだ(図2および7を参照)。3HAペプチドおよび2つのヌクレアーゼ局在化配列(NLS)を含むリンカーを使用して、ZFPをCas9に結合させた。リンカーの配列は、GTGGPKKKRKVYPYDVPDYAGYPYDVPDYAGSYPYDVPDYAGSAAPAAKKKKLDFESE(配列番号3)であった(Bolukbasi, et al. (2015) Nat Methods 12(12):1150-1156を参照)。次いでCas9を、N末端側で2つの大腸菌TadAアデニンデアミナーゼ(「ecTadA」;Kim, et al. (2006) Biochemistry 45:6407-6416)に連結させた。コンストラクト中において、TadAタンパク質の一方は野生型タンパク質であるが、他方は進化したバージョンであった(Gaudelli, et al. (2017) Nature 551 :464)。セリン-グリシンリッチなリンカーは、Cas9とTadAサブユニットとの間に2回使用され、配列:SGGSSGGSSGSETPGTSESATPESSGGSSGGS(配列番号2)を含んでいた。図3Aに、アデニン塩基エディター(ABE)の概略図を示す。一部の場合において、他のタイプのアデニンデアミナーゼが使用される。例えば、一部のコンストラクトにおいて、ABE7.10デアミナーゼまたはABEmaxアデニンデアミナーゼ(Koblan, et al. (2018) Nat Biotechnol. 36(9) :843-846)が使用される。
【0236】
JAK2 V617F突然変異を標的化するために、突然変異部位付近のJAK2遺伝子を標的化するCas9NGアデニン塩基エディターが、突然変異部位の上流に配置されたTAAまたはAATまたはAAA PAM部位を使用して作製される(図7A~7Cを参照)。ZFP DNA結合ドメインは、上述したように塩基エディターに融合され、HSC/PCを編集するのに使用される。表1Bに、ZFP配列を示す。フィンガー間に、および/またはZFPと塩基エディターとの間に、あらゆるリンカーを使用することができる。
【0237】
結果は、標的遺伝子座における成功した編集を示す。図7Aは、アミノ酸配列中のセリン(S)またはプロリン(P)への変更を起こすための塩基編集を示す。これらの変異体はどちらも、フェニルアラニン突然変異体(F)より低い活性化であることが示される(Dusa, et al. (2008) J Biol Chem 283(19) :12941-8を参照)。
【0238】
細胞(例えば、K562細胞)は、塩基エディターを含む発現ベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクター)でトランスフェクトされるか、または細胞は、上述したような塩基エディターをコードするmRNAを使用してエレクトロポレーションされる。トランスフェクトされた細胞を回収し、ゲノムDNAを単離する。目的のオンターゲットおよびオフターゲットゲノム領域を、当業界において標準的な方法に従って、PCR増幅により増幅する。配列を、塩基編集に関して、さらにインデルの存在に関して評価する。
【0239】
アデニン塩基エディター(ABE)を、K562細胞において、上述したようにA1AT遺伝子座で試験した。ここで細胞200,000個当たり800ngの、塩基エディターをコードするプラスミドDNAが使用された。またZを含まないK562細胞においても実験を実行し、活性を測定する代わりとして、疾患の原因となる突然変異の近位におけるAヌクレオチドを使用した。Amaxaデバイスを使用した(製造元のプロトコールに従って)トランスフェクションの72時間後、細胞を回収し、Miseq分析(Illumina)に供して、起こる可能性があったあらゆる編集を分析した。図4は、複合体の編集ウィンドウ内の標的化可能なA塩基を例示し、この場合、これらの配置におけるGの存在は、A塩基編集が起こったことを示すと予想される。
【0240】
変異型ZFPドメインを含む各コンストラクトの3つの異なるクローンを試験した。以下の表2に結果を示す(用語「Cas9VRVRFRR」、「Cas9VR」および「Cas9NG」は同義的に使用されることに留意されたい):
【表4-1】
【表4-2】
【0241】
「sgRNA_only」と標識された行は、ガイドRNAのみを含むものであり、「ABE_Cas9VR_D10A」は、ZFP DNA結合ドメインが欠失した複合体である。データからわかるように、配置A5におけるアデニンの標的化された編集は、ZFPドメインが欠失した編集複合体と比較して、ZFP DNA結合ドメインの一部の存在下で増加した。ZFPを含まない天然ABE-Cas9融合コンストラクトは、約0.5%の塩基編集を起こしたが、ABE-Cas9-ZFP融合コンストラクトは、このデータセットにおいて、少なくとも7倍高い塩基編集効率を示した。
【0242】
これらの実験では、ABEmaxまたはABE7.10アデニンデアミナーゼに連結されたxCasまたはCas9NGタンパク質を使用して研究がなされた。使用されたガイドRNAは、TGT PAMまたはAGT PAMのいずれかであった。結果は、ZFP DNA結合ドメイン(ZFPアンカー)が欠失した塩基エディターと比較して、5から10倍の、またはそれより高い塩基編集効率を示した。
【0243】
ABE7.9およびABE7.8の使用を含むアデニンデアミナーゼの代替のバージョンを使用して、さらに実験を行ったところ、同等の結果を示した。
【0244】
JAK2 V617F突然変異体の塩基編集のために、実験条件は、V617F突然変異を含まないK562細胞において実行された実験を含む上述した条件と同じであったが、活性を測定する代わりとして、疾患の原因となる突然変異の近位におけるAヌクレオチドを使用した。図7Bに、標的化されたPAM配列を示す。ABEmaxに連結されたxCasまたはCas9NGタンパク質の様々な組合せを使用して研究を行った(例えば、図3Bを参照)。
【0245】
結果は、ZFPアンカーの存在が、編集を改善し、AATおよびTAA PAM配列で活性を示すことなど、PAM要件を緩めたことを示した。留意すべきことに、TAA PAM配列を有する塩基エディターは、ZFPドメイン無しで、この部位において不活性である。例えば、図7Cで示される例示的な結果を参照されたい。
【0246】
追加の疾患関連の点突然変異に関する追加の実験が実行され、ZFPアンカードメインの存在下で、より高い塩基編集特異性および/または活性が達成される。さらに、編集しようとする標的化された塩基に応じて、これらに限定されないが、NAN(例えば、TAA)、AAT、NGG(TGG)、NGT(例えば、TGTまたはAGT)などのあらゆるPAM配列を使用することができる。
【0247】
実施例3
シチジン塩基エディター
CヌクレオチドをUに変換するためのシチジン塩基エディターは、アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒性ポリペプチド様(APOBEC)タンパク質を使用して構築される(Yang, et al. (2017) J Genet Genomics 44(9):423-437)。特に、シチジン塩基エディターは、シチジンデアミナーゼ、例えばアポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒性ポリペプチド1またはAPOBEC-1を使用して作製される。AICDAおよびAIDとしても公知の、AICDA遺伝子によってコードされた活性化によって誘導されたシチジンデアミナーゼも、本明細書に記載されるシチジンデアミナーゼ塩基エディター中に含まれていてもよい。
【0248】
U:Gヘテロ二重鎖DNAに対する細胞の修復応答が、DNAからのUの除去を触媒し、U:G対のC:G対への逆突然変異を用いた塩基除去修復を開始させるウラシルDNAグリコシラーゼ(UDG)の活性をもたらし、塩基編集の効率を減少させると考えられる。したがって、シチジン塩基エディターは、内因性UDG活性をブロックするためのエディターに融合したウラシルグリコシラーゼ阻害剤(UGI)を有していてもよい(Komor, et al. (2016) Nature 533(7603):420-424)。シチジン塩基エディターは、APOBEC1に連結されたZFP DNA結合ドメインまたはB細胞特異的活性化によって誘導されたシチジンデアミナーゼ(AID)酵素を使用して構築される(Kescu and Adli (2016) Nat Methods 13(12):983)。シチジン塩基エディターは、DNA結合ドメイン、例えばZFPに結合されている。
【0249】
一部の実施形態において、エディターは、UGI二量体をさらに含む(図5A~5Fを参照)。UGI二量体は、リンカー、例えばL0(LRGS、配列番号76)またはN7a(SGTPHEVGVYTL、配列番号28、米国特許公開第2017/0218349号を参照)を使用して、ZFP DNA結合ドメインに結合されている。AIDまたはAPOBEC1は、リンカー、例えばL0またはSGGGLGST(配列番号29、Yang, et al. (2016) Nat Commun DOI:10.1038/ncomms13330)などの配列を介して、ZFPに結合されている。
【0250】
シチジン塩基エディターはまた、UGIドメイン無しでも構築される。一部のエディターは、対として使用されるように構築され、この場合、1つのパートナーは、触媒的に不活性なFokIニッカーゼドメインに連結されたZFPに連結されたシチジンエディターを含む。第2のパートナーは、2つのFokハーフドメインが対合し、ニックを作り出すように作用できるように、活性なFokドメインを含む。シチジンエディタードメインは、UGI二量体アセンブリーのように、どちらかの半分にあってもよい。
【0251】
実施例4
追加の塩基エディター
追加のABEおよび/またはCBEが構築され、試験される。
【0252】
特に、(1)ZFPアンカーに作動可能に連結していてもよいCas9ニッカーゼ;および(2)ABEドメイン(例えば、進化したABEドメイン)に作動可能に連結したZFPを含むアデニン塩基エディターを使用して実験を実行した。例えば、図1B、下の中央のパネルを参照されたい。
【0253】
結果から、これらの塩基エディターは、疾患関連の突然変異の標的化された編集において有効であったことが示された。
【0254】
加えて、(1)ZFPアンカーに作動可能に連結していてもよい単一ガイドRNAに作動可能に連結したdCas9タンパク質;(2)ABEドメイン(例えば、進化したABEドメイン)に作動可能に連結したZFP;および(3)ZFNニッカーゼを含むABE塩基エディターを用いて、実験を実行する。例えば、図1Cを参照されたい。
【0255】
結果から、ZFNニッカーゼを含む塩基エディターは、dCas9塩基エディターと比較して塩基編集効率を増加させたことが示される。
【0256】
実施例5
Cas9非含有塩基エディター
Cas9非含有塩基エディターも構築され、評価される。コンストラクトは、上述したように使用される2つのTadAドメインを有する塩基エディターを含み、一方は、野生型であってもよく、もう一方は、進化したものであってもよく、これらは、ZFP DNA結合ドメインに連結されていてもよい。このアセンブリーは、単独で使用されるか、または次いで触媒的に不活性なFokIニッカーゼドメインに連結されていてもよい。活性なFokIドメインを含む別のベクターと組み合わせて使用される場合、アデニン塩基エディターは、塩基編集の修正を防ぐためにニッキング活性を有する。図1Dに、作製された他の非Cas塩基エディターを示す。
【0257】
DNAを不安定化する、または巻き戻す因子を含む非Cas塩基エディターも構築され、上記のように試験される。DNA不安定化因子は、ZFPおよび/またはZFNニッカーゼのNまたはC末端に融合されるか(図1Dを参照)、またはZFPおよび/またはニッカーゼから独立して導入される。
【0258】
特に、図1Dに示される塩基エディターを生成する。これらの塩基エディターは、ZFP-デアミナーゼ融合タンパク質およびZFNニッカーゼを含む。加えて、これらのエディターは、その3’末端または5’末端によってZFNニッカーゼのZFPに連結されていてもよい、DNA不安定化因子を含む。
【0259】
特に、1つまたは複数のCRISPRタンパク質(例えば、非Cas9タンパク質))有りまたは無しで、表Aで示される1つまたは複数のタンパク質DNA不安定化因子(例えば、ヘリカーゼ;DSB修復中のD-ループ形成に関与する因子(例えばRad51、Rad52、RPA1、RPA2、RPA3など);および/またはヘリックス不安定化タンパク質(例えばICP8、Purアルファまたはウシ胸腺DNAヘリックス不安定化タンパク質)を含む塩基エディターが構築される。
【0260】
DNA不安定化タンパク質の代替として、またはそれに加えて、1つまたは複数のペプチド核酸(PNA);ロックド核酸(LNA)および/または架橋された核酸(BNA)を含む塩基エディターが構築される。特に、1つまたは複数のヌクレオチドを含む塩基エディターが構築され、試験される。本明細書に記載されるPNAおよび/またはLNAを含む塩基エディターが構築される(図1Dおよび図8も参照)。
【0261】
Cas9非含有塩基エディターがそれらの標的部位を編集する結果を示す。
【0262】
本明細書で述べられた全ての特許、特許出願および公報は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0263】
理解の明確化の目的で例証および例として開示をいくらか詳細に提供したが、本開示の本質または範囲から逸脱することなく、様々な変更および改変が実施できることは当業者には明らかであろう。したがって、前述の説明および例は、限定として解釈されるべきではない。
図1A
図1B-1】
図1B-2】
図1B-3】
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
【配列表】
0007541508000001.app