(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】殺生物配合物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/08 20060101AFI20240821BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20240821BHJP
A01N 43/50 20060101ALI20240821BHJP
A01N 43/64 20060101ALI20240821BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20240821BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240821BHJP
A61L 11/00 20060101ALI20240821BHJP
A61L 101/12 20060101ALN20240821BHJP
【FI】
A01N25/08
A01N37/02
A01N43/50 R
A01N43/64 105
A01P1/00
A01P3/00
A61L11/00
A61L101:12
(21)【出願番号】P 2021530203
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 GB2019053348
(87)【国際公開番号】W WO2020109786
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-15
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521196497
【氏名又は名称】フォー・スピルズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FOR SPILLS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リリー,デイビッド
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-259413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/048947(WO,A1)
【文献】特開平8-53301(JP,A)
【文献】特開2001-72519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/08
A01N 37/02
A01N 43/50
A01N 43/64
A01P 1/00
A01P 3/00
A61L 11/00
A61L 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥性膨張パーライトおよび乾燥性殺生物剤
が別々の粒子状材料として含まれる散在型混合物を含む乾燥性殺生物性吸収性組成物。
【請求項2】
前記殺生物剤は酸化性殺生物剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記殺生物剤はハロゲン化殺生物剤である、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ハロゲン化殺生物剤は、アルカリ金属ハロシアヌル酸塩を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アルカリ金属ハロシアヌル酸塩は、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムまたはその水和物を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記殺生物剤は、ブロモクロロジメチルヒダントインを含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記殺生物剤は、過炭酸ナトリウムとテトラアセチルエチレンジアミンとの混合物を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
床またはその他の表面から、こぼれた体液を取り除いて清浄にすることにおける、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項9】
ごみ箱用殺菌剤としての、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項10】
家畜を飼育するまたは閉じ込めるまたは飼育しているまたは閉じ込めている場所のための清浄化組成物および/または消毒剤としての、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項11】
地面殺菌剤または土壌殺菌剤としての、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
こぼれた体液を取り除いて清浄にする方法であって、以下の工程:
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物のある量を前記こぼれた体液に適用する工程と、
配合物をその位置に、ある期間にわたって放置しておく工程と、
残留物を除去して廃棄する工程とを含む、方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物のある量が入った容器。
【請求項14】
乾燥性殺生物剤を乾燥性膨張パーライトと混合する工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄化および消毒に関する。具体的には、本発明は、殺生物効果を有し、こぼれた体液を取り除いて清浄にするために特に有用な乾燥性吸収性配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
体液がこぼれることは、生活するうえで不可避である。こうした事象は多くの場合、こぼれたものに関連する危険な成分が好ましくなくかつ危険であるような、病院、介護ホーム、農業空間、工業空間、および家庭空間などの環境において生じる。したがって、体液がこぼれた時にこぼれた場所でこれを取り除いて清浄にし、その際に、こぼれたものを無害にできるような手段が一般的に必要とされていることが明らかである。
【0003】
こぼれた体液の中和または滅菌は、工業環境、家庭環境、農業環境、病院、介護ホーム、一般医診療所、医院、獣医診療所、仕事場ならびにその他施設における環境(事務所など)、学校、大学、ケータリングおよび娯楽のための建物および敷地、食堂、地方自治体の施設、ならびにその他のスポーツ施設およびレクリエーション施設、水泳プール、小売業の建物および敷地、刑務所、警察署、ならびに独房などのほぼすべての環境において危険物質を除去する必要のある場合に用いられる多様な中和または滅菌の分野における一例である。
【0004】
こぼれた体液、またはその他の危険物質のこぼれに対して必要に応じて対処するためのひとつの方法として、液体消毒剤の使用が知られている。こぼれた体液を取り除いて清浄にするために使用される化学物質はいずれも、保管する必要がある。液体清浄化剤の保管はそれ自体が危険であり得ることに加え、安全性に対する配慮がさらに必要とされる。また、液体清浄化剤は、多くのこぼれ、特にこぼれた固体または半固体を除去する際には、効果的な補助とはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、概して、こぼれたもの(たとえばこぼれた体液など)の清浄化および消毒に関する。こぼれた体液は、血液、尿、吐瀉物、および糞便などの多くの形態をとり得る。これらは、人間由来であってもよいし、動物由来であってもよい。由来が何であっても、こうしたこぼれは、適切な手法で処理する必要がある、というのは、感染または疾患を伝搬するリスクがあるためである。より一般的には、本出願は、危険なまたは潜在的に危険な性質を有する任意のこぼれの清浄化および消毒に関する。また、こぼれは、単純に、危険な材料が、これが望まれない場所、またはこれが危険となる場所に存在することをも指し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様から、本発明は、乾燥性吸収性ケイ酸塩無機材料および乾燥性殺生物剤の散在型混合物を含む乾燥性殺生物性吸収性組成物を提供する。
【0007】
ケイ酸塩無機材料は、膨張したものであってよい。膨張無機材料は、加熱によって得ることができ、これにより、当該材料中のたとえば水などの成分の蒸発が引き起こされ得る。これによって、高密度の固体ではなく、低密度の粒子状材料を得ることができる。
【0008】
代替的には、または追加的には、ケイ酸塩無機材料は、剥離したものであってよい。剥離は、大きな材料をより小さな成分にするもうひとつの方法であり、粒子、ストランド、繊維、薄片、またはシート状小片を得ることができる。この方法は、シート構造を含有していて各シート中の結合がシート同士の結合よりも強いような無機物に対して広く使用される。
【0009】
吸収性ケイ酸塩無機材料は、パーライトまたはバーミキュライトであってよい。これらの材料は天然の無機物である、またはこれに由来する。パーライトおよびバーミキュライトはいずれも豊富に存在し、かつ低コストである。
【0010】
殺生物剤との組み合わせでの有効性が本出願人らによって見出されたケイ酸塩無機材料の一種として、膨張パーライトがある。膨張パーライトは、未加工のパーライトから、捕捉されている水を加熱により除去して低密度の粒子状材料とすることによって調製される。
【0011】
本発明に係る別の種類のケイ酸塩無機材料は剥離または膨張バーミキュライトであり、これらもまた、対応する天然の無機材料を熱処理することによって調製できる。典型的には、いくつかの機構を組み合わせることによってバーミキュライトを分解して小さな断片とし、バーミキュライト無機物の層状構造に起因して層を容易に剥離できるだけでなく、捕捉されている水を熱処理によって除去して材料をさらに分解できる。
【0012】
組成物の成分の密度は、具体的な必要性に応じて調整できる。膨張パーライトは、屋内環境を含む多くの環境に適した成分である。一般的に、膨張(または剥離)バーミキュライトよりも密度が低い。膨張バーミキュライトまたは剥離バーミキュライトは、成分が重い方が有利とされる場合、たとえば屋外で、特には風が強いような環境において好適であり得る。パーライトとバーミキュライトとの混合物(たとえば、膨張パーライトと剥離バーミキュライトとの混合物)を使用できる。
【0013】
ケイ酸塩無機材料は、多孔質であってよい。
好適には、本発明に係る組成物は、水が存在しないという意味において乾燥している。さらに、当該組成物は、典型的には液体を全く含まない。本発明に係る組成物は、水またはその他の液体が存在しなくても有効である。乾燥性ケイ酸塩無機物と乾燥性殺生物剤とを混合し、これら2種の成分が、物質を吸収して殺生物活性を発揮するような有効な様式にて、一緒に作用する。当該混合物は、これら2種の成分が互いに結合していたり、一方の成分が他方の成分に固定されていたり他方の成分を被覆していたり、一方の成分が他方の成分で処理されていたりするのではなく、当該2種の成分が別々の粒子状材料であるものであってよい。当該組成物は、これら2種の成分のみを含むものであってよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る組成物の乾燥した性質により、液体配合物にはないいくつかの利点が得られる。これらの利点のうちのいくつかは、取り扱い性に関連する。乾燥配合物は保管が容易である。保管中に乾燥配合物が万一倒れた場合、こぼれるのを阻止できるが、液体ではこれができない。乾燥配合物は適用が容易であり、清掃も容易であり得る。本発明に係る乾燥配合物は、広がる傾向を有し得る液体殺菌剤と比較して、使用の際にそれほど危険ではない。このような乾燥配合物は、使用後の廃棄が容易である。同時に、これを使用すると、使用後、床またはその他の表面に存在する細菌、ウイルス、および/またはその他の有害生物が著しく低減される。さらに、乾燥材料を使用するということは、当該吸収剤の外部こぼれ吸収能力に悪影響を及ぼしかねない液体成分が存在して本来の吸収能力を低下させてしまうという事象が起こり得ないために、ケイ酸塩無機材料がその吸収力を最大限に発揮できるということを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を適用できる分野のひとつは、こぼれた体液を取り除いて清浄にすることである。以下に例示されるとおり、本発明に係る組成物は、こぼれた体液を吸収しかつこぼれたものがついている場所を清浄化して表面を消毒することにおいて特に有効である。
【0016】
本発明に係る組成物は、殺生物性である。殺生物剤(典型的には化学物質)は、化学的または生物学的な手段によって、任意の有害生物に対して、破壊、抑止、無害化、作用防止、または制御効果を発揮する活性を有する。殺生物剤はよく知られており、一般的には規制の対象である。
【0017】
本発明に係る殺生物性組成物は、対象である無生物に対して使用して有害微生物を破壊できるまたはその活性を阻害できるという点で、消毒剤として作用し得る。注目するべきは、本発明に係る組成物は人間またはその他の動物に対する使用を意図するものではないということである。
【0018】
本発明に係る組成物または配合物は少なくとも1種の殺生物剤を含み、任意に、1種を超える殺生物剤を含み得る。
【0019】
危険な生物学的こぼれ中に存在し得る有害生物は、以下を含む:
・たとえばマウスのパルボウイルス、ポリオウイルス、およびアデノウイルスなどの、有害なウイルス、
・たとえばクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、MRSA、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、枯草菌(Bacillus subtilis)、および大腸菌(Escherichia coli)を含む、細菌、
・カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)、およびアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)を含む、酵母および真菌。
【0020】
以下の実施例においてみられるとおり、本発明に係る生成物は、有効な殺生物活性を有し、こぼれた体液中の有害微生物を死滅させ、こぼれたものを吸収し、数分で床を乾燥状態にする。経済性に優れ、高効率で、軽量である。
【0021】
本発明に係る殺生物剤は、任意に、酸化性殺生物剤であり得る。酸化性殺生物剤の作用様式として、好ましくないまたは有害な細菌、真菌、およびウイルスのほとんどに対する効力のスペクトルが一般的に非常に広い。酸化性殺生物剤は一般的には入手が容易であり、その多くが安価である。
【0022】
酸化性殺生物剤は、当技術分野において周知されている殺生物剤のひとつのクラスであり、たとえば、その作用がペルオキソ基(peroxy)または活性酸素の作用に基づくものであるような殺生物剤を含み得る。漂白剤を含む。殺生物剤は、過酢酸[テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)とその他の成分(たとえば過炭酸塩)との反応によりin situで生じ得る]を含む過酸、ビス(ペルオキシ一硫酸)ビス(硫酸)五カリウム、およびモノペルオキシフタル酸マグネシウム六水和物(MMPP)を含み得る。
【0023】
本発明に係る酸化性殺生物剤の別のサブカテゴリは、たとえば、水中で遊離の有効塩素または有効臭素を放出することにより活性化し得る化合物などの、ハロゲン放出剤である。遊離の有効塩素は、他の種類がある中でも特に、たとえば有効な消毒剤である次亜塩素酸(HOCl)の形態であり得る。同じように、遊離の有効臭素は、次亜臭素酸(hydrobromous acid)(HOBr)の形態であり得る。ハロゲン放出性殺生物剤は、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、またはその水和物(たとえば二水和物)、トリクロロイソシアヌル酸(「シムクロセン」)、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(多くの場合は、ブロモクロロジメチルヒダントインまたはBCDMHと称される)、臭化ナトリウムとたとえばナトリウムまたはカルシウムのハイポコライト(hypochorite)との組み合わせ(活性臭素を放出)、およびナトリウムまたはカルシウム次亜塩素酸塩との組み合わせ(活性塩素を放出)を含む。クロラミン-Bおよびクロラミン-Tなどのクロラミン放出剤は、酸化性殺生物剤のさらなるサブカテゴリを構成する。亜塩素酸ナトリウムおよびテトラクロロデカオキシドの複合体は、酸化されて二酸化塩素を放出する化学物質の例である。また、二水酸化カルシウム(および関連する材料、水酸化カルシウム、生石灰(caustic lime)、消石灰(hydrated lime)、消石灰(slaked lime))、酸化カルシウム(および関連する材料、石灰、生石灰(burnt lime)、生石灰(quick lime))、酸化カルシウムマグネシウム(ドロマイト石灰)、および四水酸化カルシウムマグネシウム(および関連する材料、水酸化カルシウムマグネシウムおよび含水ドロマイト石灰(hydrated dolomitic lime))などの石灰も、酸化性殺生物剤のカテゴリに属する。
【0024】
上述される殺生物剤に共通する特徴は、乾燥形態にあったものが、水を含む環境に置かれる(こぼれた体液と接触した場合のように)と活性化されるという能力である。たとえば水の非存在下において、たとえばジクロロイソシアヌル酸ナトリウムまたはBCDMHなどの化合物は安定であり、事実上「不活性」であるが、水が存在すると次亜塩素酸および次亜臭素酸を含む活性種が発生する。同じように、その他の化合物(たとえばクロラミン化合物)の殺生物活性も、水の存在下で誘発される。
【0025】
ハロゲン化殺生物剤は、本発明において使用される殺生物剤の重要な群である。これらと吸収性ケイ酸塩無機材料とを組み合わせると有効な配合物となり、これは、有効な吸収剤であるだけでなく即効性の物質でもあり、広い殺生物活性スペクトルを有する、言い換えると、多くの異なる微生物に対して活性を有する。
【0026】
ハロゲン化殺生物剤は、アルカリ金属ハロシアヌル酸塩であってよい。このような殺生物剤は、一般的に、その他の材料と容易かつ好都合に組み合わせて乾燥配合物を形成できる安定な固体物質である。
【0027】
アルカリ金属ハロシアヌル酸塩のひとつとして、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムが考えられる。乾燥状態において、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは極めてゆっくりとした速度で塩素を放出するため、乾燥固体配合物の一部として容器に保管するのに好適な材料である。固体のジクロロイソシアヌル酸ナトリウムからの塩素の放出速度は、通常の保管条件下では事実上ゼロである。
【0028】
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムは、水(たとえば、こぼれた液体の一部としての水)と接触すると塩素(たとえば次亜塩素酸の形態で)を放出する。
【0029】
その他の可能な酸化性殺生物剤は、ブロモクロロジメチルヒダントイン(BCDMH)、および組み合わせると殺生物活性物質である過酢酸を生成する過炭酸ナトリウムとテトラアセチルエチレンジアミンとの混合物(TAED)を含む。
【0030】
先行技術は、水泳プールの水の処理などの多様なコンテクストにおけるこれらの殺生物剤のうちのいくつかの使用を開示している。一方、本発明は、概念的に異なる使用、および関連する組成物に関する。
【0031】
また、殺生物剤は、非酸化性殺生物剤であってもよい。非酸化性殺生物剤の例は、オルトフェニルフェノール(ビフェニル-2-オール)およびクロロフェン(chlorophene、clorophene)などのブロノポールおよびフェノールという化学物質を含む。
【0032】
乾燥配合物は、ケイ酸塩無機材料と殺生物剤との混合物を含み得て、殺生物剤の量(重量)は、任意に、0.1~99.9重量%(すなわち、殺生物剤が0.1重量部でありケイ酸塩無機物が99.9重量部であるような組成から、殺生物剤が99.9重量部でありケイ酸塩無機物が0.1重量部であるような組成の範囲)、または10~90重量%、または20~80重量%、または30~70重量%、または40~60重量%、または10~50重量%、または20~40重量%、または40~80重量%、または50~80重量%、または60~70重量%、または少なくとも1重量%、または少なくとも20重量%、または少なくとも40重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも70重量%、または80重量%未満、または60重量%未満、または50重量%未満、または40重量%未満、または30重量%未満、または20重量%未満であってよい。
【0033】
任意に、特定の粒子径のケイ酸塩無機材料(たとえば、パーライト)が使用され得る。粒子径は300~1,700ミクロンの範囲であってよい。平均粒子径は300~1,700ミクロンの範囲であってよい。ケイ酸塩無機材料の少なくとも50重量%、または少なくとも75重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%が、300~1,700ミクロンの範囲のケイ酸塩無機材料粒子から構成されていてよい。
【0034】
任意に、当該範囲は、300~1,700ミクロンの代わりに、たとえば、300ミクロンを超える、または500~1,700ミクロン、または500ミクロンを超える、または500~1,500ミクロン、または700~1,500ミクロンであってもよい。
【0035】
広義では、当該配合物の吸収性ケイ酸塩無機物は、液体を吸収し、こぼれた体液が半液体状になったものを吸収または保持して、その結果、当該液体および半液体を除去かつ取り除いて清浄にするように働き、殺生物剤は消毒剤として働く。本発明によれば消毒効果または殺菌効果を得ることができ、これは、個々の成分を組み合わせた場合に期待できる当該効果よりも優れたものであり得る。
【0036】
さらなる一態様から、本発明はまた、こぼれた体液を取り除いて清浄にするおよび/または消毒することにおける、上述される配合物の使用をも提供する。こぼれた体液を取り除いて清浄にすることにおける当該配合物の使用は、当該配合物を唯一の清浄化剤として使用するものであり得る。当該乾燥配合物のある量を、こぼれた体液に対して適用してよく、ある期間(接触時間と称され、たとえば15分以下、または10分以下、または5分以下、または1分以下)にわたって放置してよく、その間に、こぼれた体液が消毒または殺菌される。次いで、残った残留物を、たとえば医療廃棄物と一緒に捨てるなどといった適切な手法で、かつ、一般的にはその国、地域、または場所の医療廃棄物に関する規制または勧告に従って、除去および廃棄できる。
【0037】
本発明のさらなる態様は、ごみ箱用殺菌剤としての、家畜環境殺菌剤としての、または地面殺菌剤もしくは土壌殺菌剤としての、本発明に係る配合物の使用である。
【0038】
ごみ箱用殺菌剤として、当該配合物を、半液体状の食物または動物の排泄物の入ったごみ箱に入れることができる。廃棄物が吸収されたら、残留物をかき取って廃棄してよい。
【0039】
家畜を飼育もしくは閉じ込める場所のための殺菌剤として、または地面殺菌剤もしくは土壌殺菌剤として使用する場合、疾患を引き起こす生物が広がるのを防止または阻害するために、動物を入れる房または囲いの床に当該配合物を広げてよい。続いて残留物を除去することにより、床を乾燥かつ清浄状態にすることができる。
【0040】
本発明に係る乾燥配合物のある量を、閉じた容器に入れることができる。当該容器は、たとえば密閉小袋などの小袋、または密閉ボトルであってよい。このような容器に乾燥配合物に入れると、混入および湿度から当該配合物を保護できるという利点がある。さらに、当該配合物が必要となった場合の、複数の異なる成分の使用分量を保証することもできる。また、材料を混合したものが大量かつ未使用のままでおかれると配合物の固体成分が沈殿および分離するという問題が生じ得るが、この問題も回避できる。この利点は重要である、というのは、滅菌効果は乾燥成分同士の相対的割合に依存することがわかっているためである。言い換えると、ケイ酸塩無機材料と殺生物性材料との特定量および特定比率での使用が保証され得る。
【0041】
さらなる一態様から、本発明は、乾燥性殺生物剤を乾燥性吸収性ケイ酸塩無機物と混合する工程を含む、上述される配合物の調製方法を提供する。当該配合物は、こぼれた体液の清浄化において有効であり、長い保管期間にわたり、粒状形態において物理的および化学的に安定である。
【0042】
任意に、乾燥性殺生物剤と混合するよりも前に、たとえば第4級アンモニウム化合物または第4級アンモニウム化合物の混合物(たとえば、塩化ベンザルコニウム)などのさらなる材料を、乾燥性吸収性ケイ酸塩無機物に組み込んでもよい。当該さらなる材料は、たとえば水溶液などの溶液として適用してよく、次いで、これが乾燥すると、水またはその他の溶媒が除去されて、当該さらなる材料が、乾燥性殺生物剤の添加よりも前に乾燥性吸収性ケイ酸塩無機物中に吸収される。当該さらなる材料の組み込みは、たとえば微粒化サイクロンブレンダなどのサイクロンブレンダを使用して行ない得る。たとえば、このようなブレンダのシリンダに当該さらなる材料(たとえば、第4級アンモニウム化合物)を注入してよく、次いで、これを無機粒子中に吸収させる。理論に拘束されるものではないが、このようなブレンダは、吸収性ケイ酸塩無機材料(たとえば、パーライトまたはバーミキュライト)の粒子の内部への当該さらなる材料(たとえば、第4級アンモニウム化合物)の組み込みを容易にするという理由から有利であると考えられる。このようなさらなる材料の組み込みは任意であり、必須の特徴ではないが、一方、乾燥性吸収性ケイ酸塩無機材料と乾燥性殺生物剤とを組み合わせることは本発明の重要な特徴である。
【実施例】
【0043】
以下に、実施した実験のうちのいくつかについて概要を示して、本発明をさらに、非限定的かつ詳細に説明する。
【0044】
第1の一連の試験
第1の試験において、生物(細菌またはカビ)の懸濁液25mlを、こぼれた体液を模した3.0g/lのウシアルブミン25mlに添加した。これを2分放置した。このフラスコに、選択した殺生物剤(ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム;TAEDとして知られるテトラアセチルエチレンジアミン+過炭酸ナトリウム;またはBDCMHとして知られる1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン)を添加して、約5秒間穏やかに振とうした。フラスコをさらに1分の接触時間にわたって放置した後、試験混合物を1mlだけ取り出して中和した。真菌細胞の生存細菌の残存濃度(コロニー形成単位、またはcfu)を測定するために、これを中和剤中に希釈し、すべての希釈物を適切な媒体を使用して播種した。
【0045】
この一連の試験の結果が下記表1中に示される。この表中、Vc=生存数;N=細菌試験懸濁液中におけるcfu/mlの数値;Q=加重平均数のコントロールの商(quotient);Nv=細菌検証懸濁液中におけるcfu/mlの数値;A=実験条件検証におけるcfu/mlの数値;B=中和剤毒性検証におけるcfu/mlの数値;C=希釈-中和検証におけるcfu/mlの数値;Na=接触時間後の試験混合物におけるcfu/mlの数値;R=生存率の低下(Log10)。さらに、細菌プレートの計数における上限は330cfuであるため、これを超える数は「>330」と入力されている。真菌プレートの計数における上限は165cfuであり、これを超える数は「>165」と入力されている。
【0046】
表1:
【0047】
【0048】
上記表1は、細菌株である黄色ブドウ球菌および緑膿菌ならびにカビ株であるアスペルギルス・ブラジリエンシスについての、これらの試験の結果を示す。殺生物剤の殺生物効果が、初期のcfuの数値N(細菌試験懸濁液(N)と明記される列を参照)と比較した際の、接触時間後の1mlあたりのコロニー形成単位(cfu)の数値Na(各試験生物について、表中の下から2段目を参照)で示される。効果が高いほどNaの値は低い。また、これは、生存率の低下の対数スケール(Rで表される)でも表され得る(各試験生物について、表中の最下段を参照)。表1中のデータは、細菌生物に対する殺生物剤の効果がパーライトの存在によって有意に増大していることを明らかに示す。
【0049】
たとえば、黄色ブドウ球菌および緑膿菌という細菌株2種について、表中の生存率低下の数値(対数スケールで表されるR)は、TAED+過炭酸ナトリウム単独が事実上は効果を有さなかったことを示す(黄色ブドウ球菌についてR=-0.08、緑膿菌についてR=-0.06)。パーライトの添加は、当該効果に対して劇的な効果を有する(黄色ブドウ球菌についてR=5.40、緑膿菌についてR=4.74)。BDCMH単独の効果はTAED+過炭酸塩よりも良好であるが(黄色ブドウ球菌についてR=1.92、緑膿菌についてR=1.00)、これも、パーライトの添加によって劇的に改善している(黄色ブドウ球菌についてR=5.83、緑膿菌についてR=4.55)。
【0050】
また、パーライトの添加によって、カビ株であるアスペルギルス・ブラジリエンシスに対するジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(sodium dichlorisocyanurate)の滅菌効果が明らかに改善される(パーライトなしでR=2.84、パーライトありでR=4.34)。
【0051】
第2の一連の試験
第2の試験において、乾燥配合物の抗菌作用を試験した。第4級アンモニウム化合物が完全に吸収されてパーライトが乾燥されるように、少量の第4級アンモニウム化合物(この場合は具体的には塩化ベンザルコニウム)(パーライト100グラムに対して50%溶液を0.36ml)を膨張パーライトに添加した。次いで、この乾燥パーライトを乾燥ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムと混合して乾燥性殺生物配合物を得ることによって、乾燥配合物を調製した。乾燥性殺生物配合物を、この手法で、以下の3とおりの異なる割合組成にて調製する:処理済パーライト99%(w/w)に対してジクロロイソシアヌル酸ナトリウム1%(w/w)を含むレベル1、処理済パーライト90%(w/w)に対してジクロロイソシアヌル酸ナトリウム10%(w/w)を含むレベル2、および、処理済パーライト20%(w/w)に対してジクロロイソシアヌル酸ナトリウム20%(w/w)を含むレベル3。
【0052】
当該配合物の必須成分は、固体のケイ酸塩無機材料(ここでは膨張パーライト)および固体の殺生物剤(ここではジクロロイソシアヌル酸ナトリウム)である。先行する工程における、たとえば第4級アンモニウム化合物などのさらなる材料のパーライトへの添加は、任意の特徴であり、本発明はこの特徴があってもなくても有効である。
【0053】
上述される乾燥配合物の殺生物効果を、様々な表面(すなわち、木、セラミック、ビニール)に対して試験し、各表面は、試験前に標準手順に従って清浄化および消毒しておいた。
【0054】
以下に詳述される様々な試験生物の培養物を調製した。当該生物と、ウシアルブミン(3.0g/l)およびヒツジ赤血球(3.0ml/L)の混合物の懸濁液とを混合した混合物5mlを、ピペットで取ることによって、上記培養物の各々を表面に与えた。ウシアルブミン(3.0g/l)およびヒツジ赤血球の混合物は、こぼれた体液を模したものである。ウイルスを伴う試験では、当該混合物に培地/血清溶液も含めた。この手法で、試験表面を調製した。試験は、3とおりの異なる接触時間(1分、5分、および10分)について行なった。これらの接触時間の各々について、各試験表面を同じように調製した。
【0055】
試験は、以下の生物の各々を培養して調製したものについて行なった。
・黄色ブドウ球菌(細菌株)
・緑膿菌(細菌株)
・カンジダ・アルビカンス(酵母株)
・アスペルギルス・ブラジリエンシス(分生子)
・枯草菌ATCC6633(細菌芽胞株)
・アデノウイルス5
・ポリオウイルス1
・マウスのパルボウイルス
乾燥パーライト配合物の滅菌効果を試験するために、あらかじめ秤量した量のパーライト配合物を各試験表面に与え、次いで、接触時間にわたって、そのまま放置した。接触時間の終わりに、表面をこすって残留物を除去した。次いで、表面上で依然として生存している生物を、希釈剤およびふき取りによって回収した。次いで、標準的なアッセイ手順を用いて、生存している生物の濃度を求めた。
【0056】
第2の一連の試験の結果
対数スケールを使用して結果を示す。たとえば、消毒によって細菌数が108個から102個に減少した場合は対数減少値は6であり、消毒によって真菌胞子数が5×107個から8×103個に減少した場合は対数減少値は3.79である。
【0057】
第2の一連の試験の結果が下記表において示される。各表は、上記株を3とおりの濃度(レベル1=ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 1.0%W/W、レベル2=ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 10.0%W/W、レベル3=ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム 20.0%W/W)で用い、接触時間を1分、5分、および10分とし、20℃で、3種の代表的な表面を用いた際の、表面試験の結果を表す。結果は、平均対数減少および標準偏差(s.d.)で表される(N=2)。
【0058】
当該一連の試験における試験結果のうち、最初の2組は抗菌活性に関する。
黄色ブドウ球菌、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
【0059】
【0060】
上述される結果から、黄色ブドウ球菌の濃度がレベル3の場合に、試験したすべての表面で、接触時間5分および10分の両方について、対数減少が4log以上であったことが示される。このことは、細菌に対する明らかに有効な活性を示す。これより低い濃度レベル(レベル2、ビニール表面、接触時間10分)およびこれより短い接触時間(レベル3、セラミック表面、接触時間1分)での実験では、この性能に近づいている。これらの結果は、当該配合物が黄色ブドウ球菌の細菌数を有効に減少させることを示す。
【0061】
緑膿菌、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
【0062】
【0063】
レベル3の濃度は、試験した3つの表面すべてで、接触時間1分で、緑膿菌の活性に対して対数減少が4以上である。レベル2の濃度は、セラミックで、試験した3とおりすべての接触時間にて、この滅菌性能に匹敵し、すべての表面で、接触時間10分にて、当該細菌の上記性能に近づいているまたはこれを超える。これらの結果は、当該配合物が緑膿菌の細菌数を有効に減少させることを示す。
【0064】
試験結果の次の2組は殺真菌活性に関する。
カンジダ・アルビカンス、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩
【0065】
【0066】
アスペルギルス・ブラジリエンシス(分生子)、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩
【0067】
【0068】
消毒剤生成物は、C.アルビカンス(酵母、栄養細胞)に対し、ビニール表面で、濃度10.0%W/Wおよび20.0%W/Wにて、5分で20℃において、対数減少で3を超える滅菌活性を示した。これは、この酵母についての有効な結果である。A.ブラジリエンシス(糸状菌、分生子)について、この表5中に示されるデータは、試験した表面に対していくらか活性があることを示す。また、注目すべきは、真菌に対する消毒作用を規定する標準的な接触時間は15分であり、さらなる実験により、接触時間15分で、殺酵母消毒剤としての有利な挙動が示されている。
【0069】
次に、内生胞子についての結果が示される。
枯草菌(内生胞子)、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩
【0070】
【0071】
上述される結果から、枯草菌について、試験した3つのすべての表面で、試験した3とおりすべての濃度について、接触時間1分にて、2log以上の対数減少を十分に超える殺胞子活性が示される。これは、胞子株に対する活性についての非常に有効な結果である。
【0072】
最後の3組の結果はウイルスについてのものである。3種の試験ウイルス(アデノウイルス-5、ポリオウイルス-1、およびマウスのパルボウイルス)は、殺生物剤に対する高い耐薬品性が確立されている標準的な裸のウイルス株である。これらの標準的なウイルスに対する効力は、周知されるあらゆるヒトウイルスおよび動物ウイルスに対する活性を表す。これらの最後の3つの試験についての結果が一緒に検討される。
【0073】
アデノウイルス-5、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩
【0074】
【0075】
ポリオウイルス-1、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩
【0076】
【0077】
マウスのパルボウイルス、パーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩
【0078】
【0079】
全般的に、これらのデータは、20.0%W/Wパーライト+ジクロロイソシアヌル酸塩に基づく生成物について、1分~5分の接触で、アデノウイルスおよびマウスのパルボウイルスを4log以上減少させることに相当する抗ウイルス活性、ならびにポリオウイルスを3log以上減少させることに相当する抗ウイルス活性が達成されたことを示す。これは、当該個々の生物の各々についての高い殺ウイルス活性に相当する。
【0080】
アデノウイルス-5に対して、消毒性生成物は、ジクロロイソシアヌル酸塩1.0%W/W、10.0%W/W、および20.0%W/W(レベル1、2、および3)で、1分で、木表面およびビニール表面において、非常に高い殺ウイルス活性(対数減少が6を超える)を示した。また、この配合物は、試験した3とおりすべての濃度で、アデノウイルス-5に対して、1分で、セラミック表面にて、非常に有効な作用(対数減少が5を超える)を示した。
【0081】
ポリオウイルス-1は、対数減少の許容基準が3log以上という高い耐薬品性を有するウイルスである。ビニール表面では、このウイルスは、1.0%で1分にて対数減少が4.0を超え、10.0%W/Wおよび20.0%W/Wで1分より後に対数減少が5.00であった(4.95~5.87の範囲)。木表面では、活性は比較的低かったが依然として殺ウイルス性であり、10.0%W/Wにて10分で、および20.0%W/Wにて5分で、4.0を超える対数減少を達成した。セラミック表面では、20.0%W/Wで10分後に4.0を超える対数減少を達成した。
【0082】
10%W/W、レベル2で、配合物は、木、セラミック、およびビニールという3種の表面すべてにおいて、5分でそれぞれの対数減少活性を示し、10分後には完全な死滅を示した。レベル3の配合物は、同じ比率での完全な死滅を、すべての表面で、5分で達成した。よって、この配合物は、マウスのパルボウイルスに対し、試験した表面で、10分では10.0%W/Wで、5分では20.0%W/Wで、十分に有効であった。1分での効力は、10.0%W/W配合物および20.0%W/W配合物の両方について、対数減少の範囲は3~4であった。