(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】ガラス成形装置
(51)【国際特許分類】
C03B 23/03 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
C03B23/03
(21)【出願番号】P 2021530771
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 PL2019000064
(87)【国際公開番号】W WO2020032812
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2018-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】521056157
【氏名又は名称】ピルキントン オートモーティブ ポーランド エスピー ゼット オー オー
【氏名又は名称原語表記】PILKINGTON AUTOMOTIVE POLAND Sp. z o.o.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ウカシュ ミル
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096339(WO,A1)
【文献】特開2003-119041(JP,A)
【文献】特表2010-530351(JP,A)
【文献】特開昭63-045139(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093031(WO,A1)
【文献】特表2018-519231(JP,A)
【文献】特開平02-038331(JP,A)
【文献】特開平04-231330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/02-23/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低放射率反射コーティングを有するガラス板を成形する方法であって、
(i)炉入口にコーティング付きガラス板を位置決めするステップと、
(ii)前記炉を通して前記コーティング付きガラス板を搬送し、成形に適した温度まで前記ガラス板を加熱するステップと、
(iii)前記コーティング付きガラス板を支持するためのフレームへ前記ガラス板を移送するステップであり、前記フレームは、対象製品の形状であり、固定壁とリムを提供する第1、第2、及び第3可動壁とを有するステップと、
(iv)前記第1、第2、及び第3可動壁の少なくとも1つを移動させて、前記フレーム上の前記コーティング付きガラス板の位置を第1位置から第2位置へ調整するステップと、
(v)前記フレームと型との間で前記コーティング付きガラス板を成形するステップとを含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記ステップ(iv)中に、前記第1、第2、及び第3可動壁を移動させて、前記フレーム上の前記コーティング付きガラス板の位置を調整する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記フレームは成形リングである方法。
【請求項4】
コーティング付きガラス板を成形する装置であって、コーティング付きガラス板を搬送するローラコンベヤと、型と、対象製品の形状で前記コーティング付きガラス板を支持するリムを有するフレームであり、固定壁及び前記リムを提供する少なくとも1つの可動壁を有し、前記可動壁の少なくとも1つを移動させて、前記コーティング付きガラス板の位置を第1位置から第2位置へ調整するフレームとを備えた装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の装置において、少なくとも2つの可動壁を含む装置。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の装置において、少なくとも3つの可動壁を含む装置。
【請求項7】
請求項
4~
6のいずれか1項に記載の装置において、可動壁は水平方向に可動である装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の装置において、前記可動壁は揺動運動により可動である装置。
【請求項9】
請求項
4~
8のいずれか1項に記載の装置において、成形作業を監視するためのカメラをさらに備え、該カメラは、前記可動壁の少なくとも1つの移動を制御する制御システムと結合される装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板を成形する装置、特に低放射率反射(reflective low emissivity)コーティングでコーティングされたガラス板、及びコーティング付きガラス板を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車産業でガラス板のプレス曲げに使用する装置が数多く知られている。特許文献1は、炉の板加工ステーションにわたってガラス板を搬送する装置を開示している。この装置は、複数の板吊下げ部材(sheet hangers)を支持するよこ梁(longitudinal horizontal member)を含む搬送用枠を有する搬送装置を含む。よこ梁は、その中央部で搬送装置に固着され、他の部分では搬送装置に可動に接続される。
【0003】
特許文献2は、熱処理中に薄いガラス板(4.5ミリメートル以下)を特に掴むようになっている自動閉止式トングを支えるシステムであって、ガラス板の急激な始動及び急激な停止によりトング及びそれが支持するガラスが揺動させられるプレス曲げ中に関与するようなシステムを開示している。この発明は、ガラス板がプレス曲げ型の小さなトング受けノッチと整合できるようにトング揺動を制限することにより、プレス曲げ処理されたガラス板の所望形状への一致を改善する。
【0004】
特許文献3は、コンベヤを含む加熱ガラスシートのためのプレス曲げ加工ステーションを開示しており、コンベヤは、下側支持構造と水平ローラを有する中央コンベヤアセンブリとを含み、且つホイール44を有する横方向外側のホイールコンベヤアセンブリ及び/又は上向きに凹んだ形状の予成形された加熱ガラスシートの上方向に成形された部分を支持し搬送するための傾斜ローラを有する横方向外側に傾いたローラコンベヤアセンブリを含む。各コンベヤアセンブリは、下側支持部の駆動機構との着脱式の連結部を有し、各コンベヤアセンブリのローラ又はホイールを回転駆動する。アクチュエータが、相対的垂直運動を生じさせ、これによってコンベヤにより受けられた加熱予成形ガラスシートを上昇させて、下側プレスリングと上側プレス型との間でこれをプレス曲げ加工する。
【0005】
特許文献4は、成形のためガラスシートを位置決めするための方法及び装置を開示しており、これは、ガラスシートの回転方向の調整を提供して成形モールドの上で整列させるためにガラスシートの搬送速度より遅く移動される位置決め器を含む。成形モールドは、下向きの上部モールドに対して、成形のためプレス式に上に移動される。予備成形されたガラスシート及び平らなガラスシートの両方を、装置の異なる実施形態によって位置決めすることができる。
【0006】
窓の断熱を改善する一般的な方法は、ガラス板の透明度を維持しつつ放射熱の大部分を反射するコーティングでガラス板をコーティングすることを含む。このようなコーティングは既知であり、建築用の平板ガラスに適用される。自動車グレージングについては、赤外反射膜を担持した板を2つのガラス板間に積層することが知られている。
【0007】
自動車ガラス曲げ加工(例えば、自重又はプレス曲げ等の補助による)は、広く知られ広く適用されている。ガラス上の機能コーティング(低放射率コーティング等の熱伝達係数を制限するコーティングを含む)も、広く知られ広く適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,282,025号明細書
【文献】米国特許第4,104,047号明細書
【文献】米国特許出願公開第2011/0247367号明細書
【文献】特表2014-534154号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
機能コーティング、例えば低放射率コーティングは、加熱し難く、所望形状の達成を困難にする。低放射率コーティングを有するガラスの主な利点は、ガラス成形プロセスでは障害となる。当該技術分野で既知のように、ガラスの成形は、放射及び/又は対流及び/又は伝導によるガラスへの熱伝達を用いて実行される。
【0010】
ガラス板を炉内で成形に適した温度まで加熱することによりガラス板を成形し、加熱されたガラス板を成形リングと型との間で成形して所望形状を得ることが知られている。
【0011】
低放射率コーティングで被覆されたガラス板は、コーティング面が加熱され難いので炉内で加熱ムラが起こる。
【0012】
加熱炉に入る前にコンベヤ上の同じ場所に位置決めされたこのようなコーティング付きガラスは、それとは異なる形で炉を出る場合がある。コーティング付きガラス板に加熱ムラがある場合、コーティング付きガラス板が、(
図1a及び
図1bに示すように)その不均一な温度勾配により湾曲すると局所的にコンベヤローラから「離脱(break away)」することで、コンベヤ上でコーティング付きガラス板が回転し得る。プレス曲げ作業前のガラスに起こり得るオフセットにより、曲げ製品の幾何学的形状が不正確になる。成形で達する高温により、成形前の加熱されたコーティング付きガラス板の位置決めは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、この問題の解決手段を提供する。
【0014】
したがって、第1態様から、本発明は、コーティング付きガラス板を成形する装置であって、コーティング付きガラス板を搬送するローラコンベヤと、型と、対象製品の形状でコーティング付きガラス板を支持するリムを有するフレームであり、固定壁及び少なくとも1つの可動壁を有するフレームとを備えた装置を提供する。
【0015】
好ましくは、可動壁は水平方向に可動である。
【0016】
好ましくは、可動壁は揺動運動により可動である。
【0017】
好ましくは、フレームは2つの可動壁を有する。
【0018】
好ましくは、フレームは3つの可動壁を有する。
【0019】
好ましくは、フレームは可動壁を3つだけ有する。
【0020】
好ましくは、本装置は、成形作業を監視するためのカメラを備え、カメラは、可動壁の移動を制御する制御システムと結合される。
【0021】
別の態様から、本発明は、低放射率反射コーティングを有するガラス板を成形する方法であって、(i)炉入口にコーティング付きガラス板を位置決めするステップと、(ii)炉を通してコーティング付きガラス板を搬送し、成形に適した温度までガラス板を加熱するステップと、(iii)コーティング付きガラス板を支持するための第1曲げ工具へガラス板を移送するステップであり、第1曲げ工具は、固定壁と、第1、第2、及び第3可動壁とを有するステップと、(iv)第1、第2、及び第3可動壁の少なくとも1つを移動させて、成形リング上のコーティング付きガラス板の位置を調整するステップと、(v)第1曲げ工具と型との間でコーティング付きガラス板を成形するステップとを含む方法を提供する。
【0022】
好ましくは、ステップ(iv)中に、第1、第2、及び第3可動壁を移動させて、第1曲げ工具上のコーティング付きガラス板の位置を調整する。
【0023】
好ましくは、第1曲げ工具は成形リングである。
【0024】
好ましくは、本方法は、第1曲げ工具上のコーティング付きガラス板の位置を監視して出力を提供する監視ステップであり、出力を用いて、その又は後続のコーティング付きガラス板を第1位置から第2位置へ移動させる入力を提供する監視ステップを含む。
【0025】
次に、添付図面(一定の縮尺ではない)を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】コーティング付きガラス成形ラインの一部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明によるコーティング付きガラス板を曲げるためのプレス曲げステーションは、コーティング付きガラス板用のローラコンベヤと、型と、リムを有するフレームとを有し、フレームは、対象製品の形状であり、固定壁/支持体及び揺動運動で水平に移動し得る3つの可動壁からなることを特徴とする。好ましくは、プレス曲げステーションは、フレームの可動壁を移動させる制御システムと結合された、プレス動作を観察するためのカメラを含む。
【0028】
好ましい実施形態では、本方法は、3つの可動壁を含む4つの別個の壁からなるフレームの使用に基づき、フレームは、フレームの側部を移動させることにより曲げ加工前にコーティング付きガラス板の位置の調整を可能にする。コーティング付きガラス板が加熱炉内で回転又は移動する場合に、フレームはコーティング付きガラス板の位置を補正することができる。フレームは、それから、所望形状を提供するために型とフレームとの間で押圧されたコーティング付きガラス板の下側支持体として用いられる。
【0029】
図1は、前述のタイプのプレス曲げステーションの概略平面図を示す。ガラス曲げ加工用のプレスは、コーティング付きガラス板20を支持するフレーム1と、フレーム1上に支持されたコーティング付きガラス板を押圧する型(図示せず)とを備える。ローラ(そのうちの1つを図示し8で示す)を有するローラコンベヤが、矢印12で示すガラス進行方向にコーティング付きガラス板20を搬送する。
【0030】
フレーム1は、対象製品の形状であり、固定保持壁2と、各矢印3’、4’、及び5’の方向に水平運動可能である可動壁3、4、及び5とを有する。可動壁3、4、及び5は、フレーム1に可動面又はリムを提供する。カメラ6が、プレス作業の監視に用いられ、適当なケーブル9を介して制御システム7と通信する。制御システム7は、(適当なケーブル10を介して)フレーム1の可動壁3、4、及び5と通信し、それらの移動の制御を可能にする。
【0031】
コーティング付きガラス板20は、コンベヤローラとは反対側の主面に低放射率反射コーティングを有する。コーティング付きガラス板20は、加熱炉に入る前に正確に位置決めされる。加熱後に、コーティング付きガラス板はコンベヤローラ8上で回転し得る。回転したコーティング付きガラス板は、フレーム1に載置され、固定保持壁2によりガラス移動方向12の移動を防止される。可動壁3、4、及び5は、コーティング付きガラス板を支持できるのに十分なほど開かれる。続いて、所定のアルゴリズムを用いて可動壁を固定壁2に対して移動させることにより可動壁を正しい位置に移動させ、コーティング付きガラス板20の位置を補正する。コーティング付きガラス板が曲げ加工用の補正位置になると、上型(図示せず)を用いてコーティング付きガラス板が成形される。フレーム1上でコーティング付きガラス板が補正位置にあることで、コーティング付きガラス板の異常/不正確な成形が回避される。
【0032】
さらに、カメラ6は、プレス作用を監視するような向きにされ、フレーム1によるコーティング付きガラス板の位置決めの精度を確認することができる。オペレータは、カメラからの画像を観察して、フレームの可動壁によるコーティング付きガラス板の位置決めのオンザフライ調整を行うことができる。
【0033】
本発明は、コーティングガラス板の加熱後にコーティング付きガラス板を曲げ加工に望ましい位置に移動させることができるように、加熱炉内での加熱ステップ中のコーティング付きガラス板の移動の補正を可能にする、コーティング付きガラス板を成形する装置及び方法を提供する。