(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】改善された競合的リガンド結合アッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240821BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 U
G01N33/543 511A
G01N33/543 541A
(21)【出願番号】P 2021564504
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020032476
(87)【国際公開番号】W WO2020231992
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-12
(32)【優先日】2019-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ、 マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】サムナー、 ジアネ オリベイラ
(72)【発明者】
【氏名】カラユスフ、 エリフ カブログル
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536587(JP,A)
【文献】特表2015-502547(JP,A)
【文献】国際公開第2018/049424(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/022001(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0074073(US,A1)
【文献】James A. Lofgren,Detection of neutralizing anti-therapeutic protein antibodies in serum or plasma samples containing high levels of the therapeutic protein,Journal of Immunological Methods,2006年,308,pp.101-108,doi:10.1016/j.jim.2005.10.007
【文献】Weifeng Xu,Development and validation of a functional cell-based neutralizing antibody assay for ipilimumab,Bioanalysis,2018年,10(16),pp.1273-1287
【文献】Pauline A. van Schouwenburg,A novel method for the detection of antibodies to adalimumab in the presence of drug reveals “hidden” immunogenicity in rheumatoid arthritis patients,Journal of Immunological Methods,2010年,362,pp.82-88,doi:10.1016/j.jim.2010.09.005
【文献】Aaron Patton,An acid dissociation bridging ELISA for detection of antibodies directed against therapeutic proteins in the presence of antigen,Journal of Immunological Methods,2005年,304,pp189-195,doi:10.1016/j.jim.2005.06.014
【文献】Yuhong Xiang,Approaches to Resolve False Reporting in Neutralizing Antibody Assays Caused by Reagent Leaching from Affinity Capture Elution Solid Phase,The AAPS Journal,2019年,21:4,pp.1-13,DOI: 10.1208/s12248-018-0274-x
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48~33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の
タンパク質薬物に対する抗薬物抗体を検出するための方法であって、
前記試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、酸性化試料を生成することと、
前記酸性化試料を、前記薬物の標的を含むpH緩衝液と組み合わせて、標的:薬物複合体を生成し、ここで、前記薬物の前記標的は選別可能な標識で標識されていることと、
前記選別可能な標識を使用して前記試料から前記標的:薬物複合体を除去して、枯渇試料を生成することと、
前記枯渇試料を、抗標的遮断試薬またはその抗原結合断片およびビオチン化薬物とインキュベートして、アッセイ試料を生成することと、
前記アッセイ試料を、アビジンコーティングされた固体支持体上でインキュベートすることと
、
前記薬物の標識された標的を前記固体支持体に添加することと
、
前記固体支持体に結合した前記ビオチン化薬物に結合した標識された標的からの検出可能なシグナルを測定し、ここで、対照試料と比較した前記固体支持体からのシグナルの量の減少が、前記試料中の抗薬物抗体の存在を示すことと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記抗薬物抗体が、前記薬物に特異的に結合する中和抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬物が、抗体もしくはその抗原結合断片または融合タンパク質である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)
2断片、単一特異性F(ab’)
2断片、二重特異性F(ab’)
2、三重特異性F(ab’)
2、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸性条件が、約2.0~約4.0のpHを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記酸性条件が、1~3のpHを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記選別可能な標識が、磁気標識を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記磁気標識が、常磁性標識または超常磁性標識である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記磁気標識が、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超常磁性球状ポリマー粒子である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗標的遮断試薬
またはその抗原結合断片が、前記タンパク質薬物の前記標的に特異的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法の薬物耐容性が、非枯渇試料と比較して枯渇試料中で少なくとも10倍大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記タンパク質薬物の投与の少なくとも29日後に対象から採取した薬物含有試料中の
中和抗体(NAb)を肯定的に同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記試料が、前記インキュベーションまたは洗浄ステップ中に撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標識された標的が、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、希土類遷移金属、金金属粒子、銀金属粒子、またはそれらの組み合わせで標識されている、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記標識が、ルテニウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
リードタンパク質薬物を同定するための方法であって、
1つ以上の薬物候補が投与された対象から得られた試料上で、請求項
1に記載の方法を実施することと、
前記固体支持体に結合した前記ビオチン化薬物に結合した前記標識された標的からの前記検出可能なシグナルにそれぞれ応じた、抗薬物抗体(ADA)陽性と薬物濃度とに基いて、より高い割合の、対照試料と比較した前記固体支持体からの前記検出可能なシグナルを生成し、これによってより少ないADAの存在を示すタンパク質薬物候補を選択することと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記アッセイ試料とのインキュベーション後に、前記固体支持体を洗浄することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記固体支持体を洗浄して、未結合の標識された標的を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月13日出願の米国仮特許出願第62/846,872号および2019年6月11日出願の米国仮特許出願第62/859,914号の利益および優先権を主張するものであり、これらの両方は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0002】
本発明の態様は、概して、薬物相互作用を検出するためのアッセイ、具体的には、試料中の抗薬物抗体を検出するためのアッセイを対象とする。
【背景技術】
【0003】
患者への生物学的治療薬の投与は、患者において望ましくない免疫原性応答を誘導する可能性があり、これは、抗薬物抗体(ADA)の発生につながり得る((Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,289(1):1-16(2004))。中和抗体(NAb)は、薬物のその標的への結合を阻害し、薬物を生物学的に不活性にするADAのサブセットである。定義により、NAbは、薬物の効果を中和し、臨床活性を低減する可能性がある。加えて、薬物が内因性タンパク質の生物学的模倣物である場合、NAbは、薬物の内因性類似体と交差反応する可能性があり、これは、薬物安全性にとって重大な結果をもたらし得る(Finco,D.,et al.,J Pharm Biomed Anal,54(2):351-358(2011)、Hu,J.,et al.,J Immunol Methods,419:1-8(2015))。
【0004】
免疫原性応答の検出は、典型的には架橋免疫測定法を使用して、試料が最初にADAの存在について試験される段階的アプローチを伴う(Mire-Sluis,A.R.,et al.,J Immunol Methods,289(1):1-16(2004))。ADA応答のさらなる特徴付けは、ADAの相対量を決定するための力価アッセイ、および抗体応答が中和性であるかどうかを決定するためのアッセイを含み得る(Wu,B.,et al.,AAPS Journal,18(6):1335-1350(2016)、Shankar,G,et al.,J Pharm Biomed Anal 48(5):1267-1281(2008)、Gupta,S.,et al.,J Pharm Biomed Anal,55(5):878-888(2011))。
【0005】
NAbアッセイは、通常、試料中の薬物の存在に対して非常に感度が高い(Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,462:34-41(2018)、Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,416:94-104(2015)、Xiang,Y.,et al.,AAPS Journal,21(1):4(2019)、Sloan,J.H.,et al.,Bioanalysis,8(20):2157-2168(2016))。NAbアッセイにおける薬物に対する耐容性(tolerance)は、概して、免疫原性応答を初期に検出するADAアッセイよりも低く、多くの場合、患者における薬物のトラフ濃度よりも低い。したがって、いくつかの中和抗体応答は、試料中の薬物からの干渉のためにNAbアッセイでは検出されない場合がある。
【0006】
ADAアッセイにおける薬物耐容性(DT:drug tolerance)を改善するためのいくつかのアプローチが報告されており、改善された薬物の検出を可能にする薬物:ADA複合体の解離のための酸処理、または方法における標識された薬物が遊離薬物:ADA複合体に取って代わることを可能にする長時間試料インキュベーションを含む(Sloan,J.H.,et al.,Bioanalysis,8(20):2157-2168(2016)、Patton,A.,et al.,J.Immunol Methods,304(1-2):189-195(2005)、Butterfield,A.M.,Bioanalysis,2(12),1961-1969(2010))。
【0007】
ADAアッセイのDTを改善するいくつかの固相抽出または沈殿方法も報告されている。大まかには、これらの方法は、2つのグループに分けられ得る:試料からADAを抽出する方法、および試料から薬物を枯渇させる方法(Zoghbi,J.,et al.,J Immunol Methods,426:62-69(2015)、Smith,H.W.,et al.,Regul Toxicol Pharmacol,49(3):230-237(2007)、Niu,H.,J Immunol Methods,446,30-36(2017)、Muram,T.M.,et al.,J Invest Dermatol,136(7):1513-1515(2016)、Chen,Y.Q.,J Immunol Methods,431:45-51(2016)、Bourdage,J.S.,et al.,J Immunol Methods,327(1-2):10-17(2007))。同様のアプローチはまた、NAbアッセイのDTを改善するためにも適用されている(Xu,W.et al.,J Immunol Methods,462:34-41(2018)、Xu,W.,et al.,J Immunol Methods,416:94-104(2015)、Xiang,Y.,et al.,AAPS J,21(1):4,(2018)、Xiang,Y.,et al.,AAPS J,21(3):46(2019))。ある場合においては、親和性捕捉溶出方法を使用して、ADAを単離および検出し、遊離標的との競合阻害を使用して、NAbを同定した(Sloan,J.H.,et al.,Bioanalysis,8(20):2157-2168(2016))。
【0008】
競合的リガンド結合(CLB)アッセイは、高度に再現性があり、比較的実施しやすい。これらは、感度、アッセイ変動性、およびマトリックス干渉に関して、細胞ベースのアッセイと少なくとも同等であり、場合によってはそれより優れている(Finco,D.,et al.,J Pharm Biomed Anal,54(2):351-358(2011)。
【0009】
したがって、既存のアッセイと比較して薬剤耐容性が改善されたアッセイを提供することが、本発明の目的である。
【0010】
タンパク質薬物キャリーオーバーの問題を回避または排除する改善されたアッセイを提供することが、本発明の別の目的である。
【発明の概要】
【0011】
試料中の中和抗体(NAb)を含む抗薬物抗体(ADA)の検出、および任意選択で定量化のための改善されたアッセイが提供される。アッセイ試薬の慎重な選択が、既存のアッセイにおけるキャリーオーバーの問題を軽減、低減、または排除することが発見された。2つの薬物プログラムのために、CLB NAbアッセイを行った。これらの方法は、感度およびDTに関して最適化され、酸解離ステップを含んだ。いくつかの実施形態において、アッセイは、薬物のトラフレベルよりも実質的に低いDTレベルを有した。開示されるアッセイには、薬物捕捉アッセイフォーマットおよび薬物標的捕捉アッセイフォーマットが含まれ、これらの各々は、既存のアッセイよりも特定の利点を有する。いくつかの実施形態において、標的捕捉アッセイは、標識された標的の添加前に遊離薬物が洗い流されるように設計され、それによって偽陽性を生じさせるキャリーオーバーの問題を排除する。他の実施形態において、アッセイは、標的コーティングされたプレートに添加する前に薬物:抗薬物複合体を洗い流すように設計されている。標的干渉は、試料インキュベーションステップにおいて、競合的標的遮断試薬で潜在的に排除され得るか、または最小限に抑えられ得る。例示的な標的捕捉アッセイフォーマットでは、弱酸アプローチを使用して遊離標的干渉を最小限に抑える。
【0012】
一実施形態は、試料中の薬物に対する抗薬物抗体、例えば、NAbを検出するための薬物捕捉方法を提供する。薬物は、小分子またはタンパク質薬物であり得る。代表的なタンパク質薬物としては、抗体、融合タンパク質、および治療用タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。一方法は、試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、酸性化試料を生成するステップを含む。ある特定の実施形態において、試料は、投与前、投与後、または薬物による治療中に、対象、例えば、ヒト対象から得られる。酸性化試料は、2.0~4.0のpHを有し得る。いくつかの実施形態において、酸処理は、NAb:薬物複合体および薬物:標的複合体が挙げられるがこれらに限定されない複合体の解離を促進する。薬物の標的が酸性化試料に添加され、酸性化試料のpHは、添加された標的が試料中の薬物に結合できるように中性pH、例えば約7.0に上昇される。一実施形態において、添加された標的は、酸性化試料に添加されたときにトリス緩衝液などのpH緩衝液中にある。いくつかの実施形態において、標的は、標識された標的を含有する試料中に形成される複合体の物理的除去を補助する選別可能(selectable)な標識で標識される。代表的な選別可能な標識としては、質量タグ、磁気ビーズ、タンパク質タグ、および金属粒子が挙げられるが、これらに限定されず、以下により詳細に考察される。標識された標的を含有する試料中に形成された複合体は、試料から物理的に除去されて、枯渇試料を生成する。標識された標的を含有する複合体としては、標的:薬物複合体が挙げられる。標的:薬物複合体を除去すると、枯渇試料中の薬物の濃度が低減する。標的が磁気ビーズで標識される場合、磁気を使用して標的:薬物複合体を物理的に除去し、枯渇試料を生成する。枯渇試料は、抗標的遮断試薬および標識された薬物、例えば、ビオチン化薬物とインキュベートされて、アッセイ試料を生成する。例示的な抗標的遮断剤としては、抗体またはその抗原結合断片、受容体分子、および可溶性受容体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗標的遮断試薬は、標的に特異的に結合し、かつ標的が薬物に結合することを防止または阻害する抗体である。次いで、アッセイ試料は、アビジンコーティングまたはストレプトアビジンコーティングされた固体支持体上でインキュベートされる。いくつかの実施形態において、固体支持体は、アッセイ試料とのインキュベーション後に洗浄されて、未結合試薬を除去する。方法は、薬物の標識された標的を固体支持体に添加することをさらに含む。標的は、典型的には、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、希土類遷移金属、金金属粒子、銀金属粒子、またはそれらの組み合わせなどの検出可能な標識で標識される。一実施形態において、標識は、ルテニウムである。固体支持体は、任意選択で洗浄されて、未結合の標識された標的を除去する。固体支持体に結合したビオチン化薬物に結合した標識された標的からの検出可能なシグナルが検出され、任意選択で定量化される。対照試料と比較した固体支持体からのシグナルの量の減少は、試料中の抗薬物抗体の存在を示す。いくつかの実施形態において、抗薬物抗体は、タンパク質薬物に特異的に結合し、標的が薬物と結合することを阻害または遮断する中和抗体を含む。
【0013】
いくつかの実施形態において、薬物は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単一特異性F(ab’)2断片、二重特異性F(ab’)2、三重特異性F(ab’)2、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである。
【0014】
いくつかの実施形態において、磁気標識は、常磁性標識または超常磁性標識である。磁気標識は、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超常磁性球状ポリマー粒子であり得る。いくつかの実施形態において、アガロース/セファロースビーズおよび重力または遠心分離機が分離に使用される。
【0015】
薬物捕捉アッセイのいくつかの実施形態において、薬物耐容性は、非枯渇試料と比較して、枯渇試料中で少なくとも3~20倍または10倍大きい。他の薬物捕捉実施形態において、アッセイは、薬物の投与の少なくとも29日後に対象から採取した試料中のNAbを肯定的に(positively)同定する。別の実施形態において、アッセイは、薬物の投与の85日後に採取した試料中のNAbを肯定的に同定する。
【0016】
本明細書に開示される方法は、未結合試薬の除去を補助するために試料プレート、アッセイプレート、または試料が撹拌、例えば、回転されるインキュベーションまたは洗浄ステップを任意選択で含むことが理解されるであろう。
【0017】
さらに別の実施形態は、試料中の薬物に対する抗薬物抗体を検出するための標的捕捉方法を提供する。方法は、試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、酸性化試料を生成するステップを含む。酸処理は、薬物:NAb複合体および薬物:標的複合体が解離することを誘導または促進する。いくつかの実施形態において、酸性化試料は、約2.0~4.0のpHを有する。次いで、酸性化試料は、タンパク質薬物に特異的な標識された抗薬物抗体を含有するpH緩衝液と組み合わされて、抗体:タンパク質薬物複合体を生成する。このステップにおいて、試料のpHは、遊離標的干渉を最小限に抑えるために約4.0~5.5である。いくつかの実施形態において、標識された抗薬物抗体は、試料からの標識された抗薬物抗体を含有する複合体の物理的分離を補助する選別可能な標識で標識される。標識された抗薬物抗体は、非遮断抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合断片であり得る。標的捕捉方法は、選別可能な標識を使用して試料から非遮断抗体:薬物複合体を除去して、枯渇試料を生成するステップを含む。典型的には、選別可能な標識は、磁石または磁気を用いて非遮断抗イディオタイプ抗体:薬物複合体を除去するために使用される磁気標識である。他の実施形態において、選別可能な標識は、質量タグであり得るか、またはアガロースビーズおよび重力もしくは遠心分離を使用して、試料から非遮断抗体:薬物複合体を分離することができる。標的捕捉方法は、枯渇試料を標識された薬物と約pH7.0でインキュベートして、アッセイ試料を生成するステップを含む。標識された薬物は、試料中に存在するNAbに結合する。いくつかの実施形態において、標識された薬物のいくつかは、結合しないままである。標識された薬物は、典型的には、検出可能な標識で標識される。標的捕捉方法における検出可能な標識は、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、希土類遷移金属、金粒子、銀粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。標的捕捉方法は、標的コーティングされた固体支持体上でアッセイ試料をインキュベートするステップを含み、標識された薬物は、標的コーティングされた固体支持体に特異的に結合する。標的捕捉方法は任意選択で、アッセイ試料とのインキュベーション後に固体支持体を洗浄して、未結合の標識された薬物を除去することを含む。標的捕捉方法はまた、標的コーティングされた固体支持体に結合した標識された薬物からの検出可能なシグナルを測定するステップを含み、対照試料と比較したシグナルの量の減少は、試料中の抗薬物抗体の存在を示す。
【0018】
標的捕捉方法のいくつかの実施形態において、抗薬物抗体は、タンパク質薬物に特異的に結合する中和抗体を含む。タンパク質薬物は、抗体もしくはその抗原結合断片または融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単一特異性F(ab’)2断片、二重特異性F(ab’)2、三重特異性F(ab’)2、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである。
【0019】
薬物捕捉方法と同様に、標的捕捉方法における選別可能な標識は、磁気標識であり得る。磁気標識は、常磁性標識または超常磁性標識であり得る。いくつかの実施形態において、磁気標識は、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超常磁性球状ポリマー粒子である。いくつかの実施形態において、選別可能な標識は、質量タグであり得るか、またはアガロース/セファロースビーズおよび重力もしくは遠心分離を使用して、試料から薬物複合体を分離することができる。
【0020】
標的捕捉方法のいくつかの実施形態において、薬物は、ルテニウムで検出可能に標識される。
【0021】
標的捕捉アッセイのいくつかの実施形態は、非枯渇試料と比較して、枯渇試料中で少なくとも10倍大きい薬物耐容性を有する。標的捕捉方法のさらに他の実施形態において、方法は、タンパク質薬物の投与の少なくとも29日後または少なくとも85日後に、対象から採取した試料中のNAbを肯定的に同定する。
【0022】
別の実施形態は、リード(lead)タンパク質薬物を同定するための方法を提供し、本方法は、1人以上の対象に1つ以上のタンパク質薬物候補を投与するステップと、1人以上の対象から得られた1つ以上の試料上で本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つを実施するステップと、薬物の有効性を低減するADAをほとんどまたは全く生成しないタンパク質薬物候補を選択するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1Aは、陽性および陰性アッセイを示す薬物捕捉競合的リガンドアッセイの例示的な実施形態の図である。
図1Bは、陽性および陰性アッセイを示す標的捕捉競合的リガンドアッセイの例示的な実施形態の図である。
【
図2】
図2Aは、対照(ビーズなし)およびストレプトアビジンコーティングされたビーズ(SA-Beads)に結合したビオチン薬物(Bio-drug)を用いてNAb濃縮(enrichment)を試みた薬物捕捉フォーマットにおける、薬物AについてのNAbアッセイのアッセイシグナル(カウント)の棒グラフである。
図2Bは、対照(ビーズなし)および標的結合ビーズを用いて薬物除去を試みた薬物捕捉フォーマットにおける、薬物AについてのNAbアッセイのアッセイシグナル(カウント)の棒グラフである。
図2Cは、対照、抗イディオタイプ抗体結合ビーズ、および標的結合ビーズを用いて薬物除去を試みた標的捕捉フォーマットにおける、薬物BについてのNAbアッセイのアッセイシグナル(カウント)の棒グラフである。
【
図3】
図3Aは、(3つの各群について左から右へ)対照(塗りつぶされていない棒)、抗標的mAbを有する標的ビーズ(左斜線の入った棒)、および抗標的mAbを有しない標的結合ビーズ(右斜線の入った棒)を用いて薬物除去を試みた薬物捕捉フォーマットにおける、薬物AについてのNAbアッセイのアッセイシグナル(カウント)を示す棒グラフである。
図3Bは、(3つの各群について左から右へ)対照(塗りつぶされていない棒)、非遮断抗イディオタイプ抗体結合ビーズ(左斜線の入った棒)、および標的結合ビーズ(右斜線の入った棒)を用いて薬物除去を試みた標的捕捉フォーマットにおける、薬物BについてのNAbアッセイのアッセイシグナル(カウント)を示す棒グラフである。
図3Cは、遮断抗体(上のトレース;塗りつぶされていない丸)および非遮断mAb(下のトレース;斜線の入った丸)(ng/mL)を用いた標的捕捉フォーマットにおける、薬物BについてのNAbアッセイの阻害率の折れ線グラフである。
【
図4】
図4Aは、NAb陰性試料中の薬物干渉を示す、対照(上のトレース;塗りつぶされていない丸)および薬物枯渇(下のトレース;斜線の入った丸)試料を用いた標的捕捉フォーマットにおける、薬物BについてのNAbアッセイの阻害率対薬物(μg/mL)の折れ線グラフである。
図4Bは、NAb陽性試料についての薬物耐容性を示す、対照(上昇傾斜を伴うトレース;塗りつぶされていない丸)および薬物枯渇試料(下降傾斜を伴うトレース;斜線の入った丸)を用いた標的捕捉フォーマットにおける、薬物BについてのNAbアッセイの阻害率対薬物(μg/mL)の折れ線グラフである。
図4Cは、NAb陽性試料についての薬物耐容性を示す、対照(下のトレース;塗りつぶされていない丸)および薬物枯渇(上のトレース;斜線の入った丸)試料を用いた薬物捕捉フォーマットにおける、薬物AについてのNAbアッセイの阻害率対薬物(μg/mL)の折れ線グラフである。
図4Dは、対照(上のトレース;塗りつぶされてない丸)および薬物枯渇後(下のトレース;斜線の入った丸)についての、指示された濃度の薬物Aをスパイクした試料中の薬物を検出するための免疫測定法における、発光量(RLU)対薬物A(mg/mL)の折れ線グラフである。
【
図5】
図5Aは、対照のADA陽性試料についての阻害率対薬物(ng/mL)の散布図である。
図5Bは、薬物枯渇後のADA陽性試料についての阻害率対薬物(ng/mL)の散布図である。
【
図6A】
図6Aは、
図5Aのすべての試料についての対照(丸)および薬物枯渇(三角)の阻害率対時点(日数)の散布図である。
図6Bは、薬物枯渇後にNAb陰性である対照(丸)および薬物枯渇(三角)の阻害率対時点(日数)の散布図である。
図6Cは、薬物枯渇後にNAb陽性である対照(丸)および薬物枯渇(三角)の阻害率対時点(日数)の散布図である。
【
図7】
図7Aは例示的な薬物捕捉アッセイの概略図である。
図7Bは例示的な標的捕捉アッセイの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
I.定義
請求された発明を説明する文脈における(特に、特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、「the」という用語、および同様の指示対象の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。
【0025】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個々に指す簡単な方法として機能することを単に意図しており、各個別の値は、あたかも本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0026】
「約」という用語の使用は、約+/-10%の範囲内の記載された値よりも上または下のいずれかの値を説明することを意図しており、他の実施形態において、値は、約+/-5%の範囲内の記載された値よりも上または下のいずれかの値の範囲内であり得、他の実施形態において、値は、約+/-2%の範囲内の記載された値よりも上または下のいずれかの値の範囲内であり得、他の実施形態において、値は、約+/-1%の範囲内の記載された値よりも上または下のいずれかの値の範囲内であり得る。前述の範囲は、文脈によって明確にされることが意図され、さらなる制限は暗示されない。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる実施例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、本発明の理解をより容易にすることを単に意図しており、特に別段の請求がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言語も、任意の請求されていない要素を本発明の実施に不可欠であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0027】
「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。タンパク質は、ポリペプチドおよびペプチドを含み、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、アルキル化、ヒドロキシル化、およびADPリボース化などの修飾も含み得る。タンパク質は、タンパク質ベースの薬物を含む科学的または商業的に関心のあるものであり得、タンパク質は、とりわけ、酵素、リガンド、受容体、抗体、およびキメラまたは融合タンパク質を含む。タンパク質は、周知の細胞培養方法を使用して様々なタイプの組換え細胞によって生成され、一般に、それがエピソームとして存在し得るか、または細胞のゲノムに組み込まれ得る遺伝子操作技術(例えば、キメラタンパク質をコードする配列、またはコドン最適化配列、イントロンなしの配列など)によって細胞に導入される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、「可変領域」抗原認識部位を有する免疫グロブリン分子を示すことが意図される。「可変領域」という用語は、免疫グロブリンのそのようなドメインを、抗体によって広く共有されているドメイン(抗体Fcドメインなど)と区別することが意図される。可変領域は、残基が抗原結合に関与する「超可変領域」を含む。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち、典型的には、軽鎖可変ドメイン内の約残基24~34(L1)、50~56(L2)、および89~97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の約残基27~35(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))、ならびに/または「超可変ループ」からの残基(すなわち、軽鎖可変ドメイン内の残基26~32(L1)、50~52(L2)、および91~96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3);Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917)を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。抗体という用語は、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、ラクダ化抗体(例えば、Muyldermans et al.,2001,Trends Biochem.Sci.26:230、Nuttall et al.,2000,Cur.Pharm.Biotech.1:253、Reichmann and Muyldermans,1999,J.Immunol.Meth.231:25、国際公開第WO94/04678号および同第WO 94/25591号、米国特許第6,005,079号を参照されたい)、一本鎖Fv(scFv)(例えば、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、イントラボディ、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗Idおよび抗体に対する抗抗Id抗体を含む)を含む。特に、そのような抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合断片」という用語は、抗体の相補性決定領域(「CDR」)、および任意選択で、抗体の「可変領域」抗原認識部位を含むフレームワーク残基を含有し、かつ抗原に免疫特異的に結合する能力を示す抗体の1つ以上の部分を指す。そのような断片には、Fab’、F(ab’)2、Fv、一本鎖(ScFv)、およびそれらの変異体、自然発生のバリアント、ならびに抗体の「可変領域」抗原認識部位および異種タンパク質(例えば、毒素、異なる抗原に対する抗原認識部位、酵素、受容体、または受容体リガンドなど)を含む融合タンパク質が含まれる。
【0030】
「抗薬物抗体」という用語は、「ADA」とも称され、薬物の活性に干渉する抗体を指す。
【0031】
「中和抗体」または「NAb」という用語は、薬物のその標的への結合を阻害し、それによって薬物を部分的または完全に生物学的に不活性にする抗薬物抗体のサブセットを指す。中和抗薬物抗体(NAb)は、生物学的治療薬の有効性および安全性の両方にとって重大な結果をもたらす。
【0032】
「個体」、「対象」、および「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ヒト、マウスおよびラットなどのげっ歯類、ならびに他の実験動物が挙げられるが、これらに限定されない哺乳動物を指す。
【0033】
II.改善された競合的リガンド結合アッセイ
試料中の抗薬物抗体(ADA)の検出、および任意選択で定量化のための改善されたアッセイが提供される。開示されるアッセイには、薬物捕捉アッセイフォーマットおよび薬物標的捕捉アッセイフォーマットが含まれる。生物学的治療薬の患者への投与に応答して生成されるADAの同定は、生物学的治療薬の製造および販売に関連する規制要件を満たし、かつ対象におけるADAの生成に起因して生じ得る潜在的な投与問題を同定するために重要である。
【0034】
いくつかの実施形態において、試料中のADAを検出および/または定量化するための方法は、試料から遊離薬物を除去することに基づく。薬物捕捉フォーマットの一実施形態において、遊離薬物は、標識された標的の添加前に洗い流されるため、偽陽性を生じさせない。薬物捕捉フォーマットの一実施形態において、標的干渉は、試料インキュベーションステップにおいて競合的標的遮断試薬で最小限に抑えられる。標的捕捉アッセイフォーマットでは、弱酸アプローチを使用して遊離標的干渉を最小限に抑えた。
【0035】
いくつかの実施形態において、薬物は、抗体もしくはその抗原結合断片、または融合タンパク質である。
【0036】
開示されたアッセイは、後続のアッセイ手順に干渉を引き起こし得る固相抽出/精製ステップからのキャリーオーバーの問題を克服する。これは、これらの方法で使用される標識された薬物が低濃度であるため、競合的リガンド結合(CLB)NAbアッセイにとって特定の課題である(Hu,J.,et al.,J Immunol Methods.419:1-8(2015)、Wu,B.W.,et al.,Competitive Ligand-Binding Assays for the Detection of Neutralizing Antibodies.In:Detection and Quantification of Antibodies to Biopharmaceuticals:Practical and Applied Considerations,Michael G.Tovey(Eds).John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,USA.(2011))。薬物枯渇手順で薬物特異的タンパク質を使用することによって、開示されたアッセイ方法におけるキャリーオーバーの問題を軽減した。いくつかの実施形態において、薬物特異的タンパク質を、それらが後続のNAbアッセイに干渉しないことに基づいて選択した。一実施形態は、NAbアッセイにおける抗標的遮断試薬の添加とともに、ビーズと結合した標的を使用する。別の実施形態は、非遮断抗薬物抗体結合ビーズを使用する。薬物耐容性(DT)は、薬物枯渇ステップを含んだ後の両方のCLB NAbアッセイにおいて少なくとも10倍を超えて改善された。
【0037】
実施例に記載されるモノクローナル抗体陽性対照によるDTの改善を実証することに加えて、500ng/mLを超える治療レベルを有するADA陽性薬物A臨床試験試料もまた、薬物枯渇ステップのある場合およびない場合で試験した。薬物枯渇ステップで試験した場合、これらの試料は、NAb陽性の顕著な増加を示し、DTが不十分なアッセイが、NAb発生率を過小報告する可能性があることを示す。したがって、開示されたアッセイ方法はまた、従来のアッセイによるNAb発生率の過少報告の問題を解決するのに役立つ。
【0038】
A.タンパク質薬物
いくつかの実施形態において、薬物は、タンパク質薬物である。開示されたアッセイに好適なタンパク質薬物としては、抗体およびその抗原結合断片(抗体タンパク質薬物とも称される)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体タンパク質薬物は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体、またはその抗原結合断片であり得る。代表的な抗体断片としては、Fab断片、F(ab’)2断片、単一特異性F(ab’)2断片、二重特異性F(ab’)2、三重特異性F(ab’)2、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
いくつかの実施形態において、タンパク質薬物生成物(対象となるタンパク質)は、抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、抗原結合抗体断片、一本鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディ、またはテトラボディ、Fab断片またはF(ab’)2断片、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、またはIgG4抗体である。一実施形態において、抗体は、IgG1抗体である。一実施形態において、抗体は、IgG2抗体である。一実施形態において、抗体は、IgG4抗体である。一実施形態において、抗体は、キメラIgG2/IgG4抗体である。一実施形態において、抗体は、キメラIgG2/IgG1抗体である。一実施形態において、抗体は、キメラIgG2/IgG1/IgG4抗体である。
【0040】
いくつかの実施形態において、抗体は、抗プログラム細胞死1抗体(例えば、米国特許第9,987,500号に記載される抗PD1抗体)、抗プログラム細胞死リガンド-1(例えば、米国特許第9,938,345号に記載される抗PD-L1抗体)、抗Dll4抗体、抗アンギオポエチン-2抗体(例えば、米国特許第9,402,898号に記載される抗ANG2抗体)、抗アンギオポエチン様3抗体(例えば、米国特許第9,018,356号に記載される抗AngPtl3抗体)、抗血小板由来成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,265,827号に記載される抗PDGFR抗体)、抗Erb3抗体、抗プロラクチン受容体抗体(例えば、米国特許第9,302,015号に記載される抗PRLR抗体)、抗補体5抗体(例えば、米国特許第9,795,121号に記載される抗C5抗体)、抗TNF抗体、抗表皮成長因子受容体抗体(例えば、米国特許第9,132,192号に記載される抗EGFR抗体または米国特許第9,475,875号に記載される抗EGFRvIII抗体)、抗プロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン-9抗体(例えば、米国特許第8,062,640号または米国特許第9,540,449号に記載される抗PCSK9抗体)、抗成長分化因子-8抗体(例えば、米国特許第8,871,209号または同第9,260,515号に記載される、抗ミオスタチン抗体としても既知の抗GDF8抗体、)、抗グルカゴン受容体(例えば、米国特許第9,657,099号に記載される抗CGR抗体、抗IL1R抗体、インターロイキン4受容体抗体(例えば、米国特許出願公開第US2014/0271681(A1)号(現在は放棄されている)または米国特許第8,735,095号もしくは同第8,945,559号に記載される抗IL4R抗体)、抗インターロイキン6受容体抗体(例えば、米国特許第7,582,298号、同第8,043,617号、または同第9,173,880号に記載される抗IL6R抗体)、抗IL1抗体、抗IL2抗体、抗IL3抗体、抗IL4抗体、抗IL5抗体、抗IL6抗体、抗IL7抗体、抗インターロイキン33(例えば、米国特許第9,453,072号または同第9,637,535号に記載される抗IL33抗体)、抗呼吸器合胞体ウイルス抗体(例えば、米国特許第9,447,173号に記載される抗RSV抗体)、抗分化抗原群3(例えば、米国特許第9,657,102および出願公開第US2015/0266966(A1)号、ならびに米国出願第62/222,605号に記載される抗CD3抗体)、抗分化抗原群20(例えば、米国特許第9,657,102号および出願公開第US2015/0266966(A1)号、ならびに米国特許第7,879,984号に記載される抗CD20抗体)、抗CD19抗体、抗CD28抗体、抗分化抗原群48(例えば、米国特許第9,228,014号に記載される抗CD48抗体)、抗Fel d1抗体(例えば、米国特許第9,079,948号に記載される)、抗中東呼吸器症候群ウイルス(例えば、米国特許第9,718,872号に記載される抗MERS抗体)、抗エボラウイルス抗体(例えば、米国特許第9,771,414号に記載される)、抗ジカウイルス抗体、抗リンパ球活性化遺伝子3抗体(例えば、抗LAG3抗体または抗CD223抗体)、抗神経成長因子抗体(例えば、米国特許出願公開第US2016/0017029号(現在は放棄されている)、ならびに米国特許第8,309,088号および同第9,353,176号に記載される抗NGF抗体)、ならびに抗アクチビンA抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、抗CD3x抗CD20二重特異性抗体(米国特許第9,657,102号および出願公開第US2015/0266966(A1)号に記載される)、抗CD3×抗ムチン16二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗Muc16二重特異性抗体)、および抗CD3×抗前立腺特異的膜抗原二重特異性抗体(例えば、抗CD3×抗PSMA二重特異性抗体)からなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、対象となるタンパク質は、アブシキシマブ、アダリムマブ、アダリムマブ-atto、ado-トラスツズマブ、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、セルトリズマブペゴル、セミプリマブ、セツキシマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エミシズマブ-kxwh、エムタンシンアリロクマブ、エビナクマブ、エボロクマブ、ファシヌマブ、ゴリムマブ、グセルクマブ、イブリツモマブチウキセタン、イダルシズマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-abda、インフリキシマブ-dyyb、イピリムマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、ネシツムマブ、ネスバクマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レスリズマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、サリルマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、トレボグルマブ、ウステキヌマブ、およびベドリズマブからなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態において、対象となるタンパク質は、Fc部分および別のドメインを含有する組換えタンパク質(例えば、Fc融合タンパク質)である。いくつかの実施形態において、Fc融合タンパク質は、Fc部分に結合した受容体の1つ以上の細胞外ドメインを含有する受容体Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、Fc部分は、IgGのCH2およびCH3ドメインが後に続くヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、受容体Fc融合タンパク質は、単一のリガンドまたは複数のリガンドのいずれかに結合する2つ以上の異なる受容体鎖を含有する。例えば、Fc融合タンパク質は、TRAPタンパク質、例えば、IL-1トラップ(例えば、hIgG1のFcに融合したIl-1R1細胞外領域に融合したIL-1RAcPリガンド結合領域を含むリロナセプト;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,927,004号を参照されたい)、またはVEGFトラップ(例えば、hIgG1のFcに融合したVEGF受容体Flk1のIgドメイン3に融合したVEGF受容体Flt1のIgドメイン2を含むアフリベルセプトもしくはziv-アフリベルセプ;米国特許第7,087,411号および同第7,279,159号を参照されたい)である。他の実施形態において、Fc融合タンパク質は、Fc部分に結合した抗体の可変重鎖断片および可変軽鎖断片などの1つ以上の抗原結合ドメインのうちの1つ以上を含有する、ScFv-Fc融合タンパク質である。
【0043】
B.薬物捕捉アッセイ
図7Aは、代表的な薬物捕捉アッセイを示す。アッセイ100は、薬物の投与の前もしくは後、または薬物による処置中に試料が対象から得られるステップ101から開始する。この実施例では、薬物は、抗体である。ステップ101は、標的に結合した薬物、遊離中和抗体、およびタンパク質薬物抗体に結合した中和抗体を含有する試料を示す。ステップ102において、試料は、タンパク質薬物から中和抗体を分離するために、および任意選択でタンパク質薬物から標的を分離するために酸性化される。
【0044】
試料は、約5.0未満、典型的には、約2.0~約4.0のpHに酸性化される。一実施形態において、試料は、酸、例えば酢酸で酸性化される。次いで、酸性化後、試料は、中性pH、典型的には約7.0でインキュベートされ、標的は、ステップ103に示されるように選別可能な標識に結合する。ステップ103のpHは、標識された標的が薬物に結合することを可能にするpHに調整され得る。いくつかの実施形態において、pHは、NAbが薬物に結合しないが、標識された標的が薬物に結合することができるように選択される。
【0045】
一実施形態において、選別可能な標識は、磁気標識、質量タグ、またはアガロース/セファロースビーズである。磁気標識は、常磁性標識または超常磁性標識であり得る。いくつかの実施形態において、磁気標識は、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超常磁性球状ポリマー粒子である。
【0046】
方法は、試料を磁石または磁場に曝露し、標識された標的:タンパク質薬物複合体を含まない上清を単離することによって、標識された標的:タンパク質薬物複合体を物理的に除去して、枯渇試料を生成することを含む。枯渇試料は、104に示され、中和抗体、任意選択で遊離標的、および任意選択で選別可能な標識に結合した遊離標的を含有する。ステップ105において、ビオチン化薬物および抗標的遮断試薬、例えば、遊離標的および選別可能なマーカーで標識された標的に結合する抗体が試料に添加されて、アッセイ試料を形成する。次いで、ステップ106において、アッセイ試料を、アビジンコーティングまたはストレプトアビジンコーティングされた固体支持体、例えば、アビジンコーティングされたマイクロタイタープレート上でインキュベートする。プレートは、任意選択で洗浄されて、アビジンコーティングされたプレートに結合しない複合体を除去する。
【0047】
次いで、標識された標的が固体支持体に添加される。標的は、典型的には、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、希土類遷移金属、金金属粒子、銀金属粒子、またはそれらの組み合わせを含む、検出可能な標識で標識される。例示的なフルオロフォアとしては、Alexa Fluor色素、Atto標識、CF色素、Fluorescein Fluorophore、Fluorescent Red、Fluorescent Orange、ローダミンおよび誘導体、ならびにフィコビリタンパク質が含まれる。一実施形態において、標的は、ルテニウムで標識される。次いで、マイクロタイタープレートからのシグナルが検出および任意選択で定量化される。ステップ107は、強力なシグナルがNAbの非存在下で検出されることを示す。ステップ108は、NAbの存在下での低減されたシグナルを示す。
【0048】
方法のインキュベーションステップの後に、未結合試薬を除去するための1つ以上の洗浄ステップが続くことができることが理解されるであろう。
【0049】
一実施形態は、試料中の薬物に対する抗薬物抗体を検出するための薬物捕捉方法を提供し、本方法は、試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、酸性化試料を生成するステップと、次いで、酸性化試料を、薬物の標的を含有するpH緩衝液と組み合わせるステップとを含む。薬物の標的は、薬物に結合して、標的:薬物複合体を生成する。一実施形態において、薬物は、抗体もしくはその抗原結合断片、または融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、薬物の標的は、選別可能な標識、例えば、磁気ビーズで標識される。この実施形態において、方法は、磁気を使用して標的:薬物複合体を除去して、枯渇試料を生成することを含む。枯渇試料は、抗標的遮断抗体またはその抗原結合断片および標識された薬物とインキュベートされて、アッセイ試料を生成する。抗標的遮断試薬は、典型的には、標的に特異的に結合し、かつ標的がタンパク質薬物に結合することを防止または阻害する抗体である。薬物は、標識された薬物が固体支持体に結合することを可能にする材料で標識される。例示的な標識は、ビオチンである。次いで、アッセイ試料は、アビジンコーティングされた固体支持体上でインキュベートされる。いくつかの実施形態において、固体支持体は、アッセイ試料とのインキュベーション後に洗浄されて、未結合試薬を除去する。方法は、タンパク質薬物の標識された標的を固体支持体に添加するステップをさらに含む。標的は、典型的には、検出可能な標識、例えば、ルテニウムで標識される。固体支持体は、任意選択で洗浄されて、未結合の標識された標的を除去する。固体支持体に結合したビオチン化薬物に結合した標識された標的からの検出可能なシグナルが検出され、任意選択で定量化される。対照試料と比較した固体支持体からのシグナルの量の減少は、試料中の抗薬物抗体の存在を示す。いくつかの実施形態において、抗薬物抗体は、タンパク質薬物に特異的に結合する中和抗体を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、タンパク質薬物は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単一特異性F(ab’)2断片、二重特異性F(ab’)2、三重特異性F(ab’)2、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである。
【0051】
C.標的捕捉アッセイ
別の実施形態は、標的捕捉アッセイを提供する。
図7Bは、例示的な標的捕捉アッセイを示す。アッセイ200は、薬物の投与の前もしくは後、または薬物による処置中に試料が対象から得られるステップ201から開始する。この実施例では、薬物は、抗体である。ステップ201は、標的に結合した薬物、遊離中和抗体、薬物に結合した中和抗体、および任意選択で遊離標的を含有する試料を示す。この実施形態において、試料は、タンパク質薬物から中和抗体を分離するために、およびタンパク質薬物から標的を分離するために酸性化され、それによってステップ202に示される酸性化試料を生成する。
【0052】
酸性化された試料は、標的との薬物の解離およびNAbとの薬物の解離を促進するようなpHに酸性化される。一実施形態において、pHは、約5.0未満、典型的には、約2.0~4.0、さらに典型的には、約3.0~3.5に低減される。いくつかの実施形態において、試料は、酸、例えば、酢酸で酸性化される。次いで、酸性化後、試料は、pHを、選別可能な標識と結合した非遮断抗薬物抗体が試料中の薬物に結合することを可能にするpHに上昇させるために有効量の緩衝液、例えば、トリス緩衝液を用いて、ステップ203に示される選別可能な標識に結合した非遮断抗薬物抗体とインキュベートされる。一実施形態において、pHは、約4.0~約5.5、または4.5~5.0に上昇する。選別可能な標識に結合した非遮断抗薬物抗体は、これらの条件下で薬物に結合し、標的は、これらの条件下で薬物に非常に不十分に結合する。
【0053】
一実施形態において、選別可能な標識は、磁気標識である。磁気標識は、常磁性標識または超常磁性標識であり得る。いくつかの実施形態において、磁気標識は、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超常磁性球状ポリマー粒子である。選別可能な標識は、質量タグであり得るか、またはアガロース/セファロースビーズおよび重力もしくは遠心分離を使用して、試料から選別可能な標識を含有する複合体を分離することができる。
【0054】
標的捕捉方法のこの実施形態は、選別可能なマーカーを使用して、試料から標識された薬物:抗薬物抗体複合体を物理的に除去するステップを含む。一実施形態において、選別可能なマーカーは、磁気標識であり、薬物:抗薬物抗体複合体は、試料を磁石または磁場に曝露し、タンパク質薬物:抗タンパク質薬物抗体複合体を含まない上清を単離することによって物理的に除去されて、ステップ204に示される中和抗体を含有する枯渇試料を生成する。
【0055】
ステップ205において、標識された薬物は、pH中性条件下で試料に添加されて、アッセイ試料を生成する。いくつかの実施形態において、枯渇試料のpHは、塩基または緩衝液、例えば、塩基性トリス緩衝液の添加によって約pH7.0に上昇される。緩衝液および標識された薬物は、同時にまたは連続して添加され得る。標識された薬物は、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、放射性同位体、希土類遷移金属、金金属粒子、銀金属粒子、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない検出可能な標識で標識され得る。例示的なフルオロフォアとしては、Alexa Fluor色素、Atto標識、CF色素、Fluorescein Fluorophore、Fluorescent Red、Fluorescent Orange、ローダミンおよび誘導体、ならびにフィコビリタンパク質が含まれる。一実施形態において、標識は、ルテニウムである。
【0056】
約7.0のpHを有するアッセイ試料が、標的コーティングされた固体支持体上でインキュベートされる。一実施形態において、固体支持体は、アビジンまたはストレプトアビジンでコーティングされる。ビオチン化標的は、アビジンまたはストレプトアビジンコーティングされたプレートに結合する。アッセイ試料は、固体支持体上でインキュベートされて、プレートへの試料の結合を可能にする。プレートは、任意選択で洗浄されて未結合試薬を除去し、残りのシグナルが検出および任意選択で定量化される。ステップ206は、固体支持体に結合した標的に結合し、強力なシグナルを発生させる標識された薬物を示す。ステップ207は、標識された薬物が固体支持体に結合して、低減されたシグナルをもたらすことを防止するNAbによって結合した、標識された薬物を示す。低減されたシグナルは、未処理試料中のNAbの存在と相関する。
【0057】
さらに別の実施形態は、試料中の薬物に結合した抗薬物抗体を検出するための標的捕捉方法を提供し、本方法は、試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、例えばpH2.0~4.0の酸性化試料を生成するステップを含む。次いで、酸性化試料は、タンパク質薬物に特異的な標識された抗薬物抗体を含有するpH緩衝液と組み合わせて、抗体:タンパク質薬物複合体を生成し、pHを約4.0~5.5、典型的には4.5~5.0に上昇させる。いくつかの実施形態において、非遮断抗イディオタイプmAbは、選別可能な標識で標識される。標識された抗薬物抗体は、非遮断抗イディオタイプ抗体またはその抗原結合断片であり得る。標的捕捉方法は、選別可能な標識を使用して、試料から抗体:タンパク質薬物複合体を物理的に除去して、枯渇試料を生成することを含む。典型的には、選別可能な標識は、薬物:抗薬物抗体複合体を磁石で除去するために使用される磁気標識である。標的捕捉方法は、枯渇試料を標識された薬物と約7.0のpHでインキュベートして、アッセイ試料を生成することを含む。標識された薬物は、典型的には、検出可能な標識で標識される。標的捕捉方法における検出可能な標識は、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、希土類遷移金属、放射性同位体、金粒子、銀粒子、またはそれらの組み合わせであり得る。標的捕捉方法は、標的コーティングされた固体支持体上でアッセイ試料をインキュベートすることを含み、標識された薬物は、標的コーティングされた固体支持体に特異的に結合する。標的捕捉方法は任意選択で、アッセイ試料とのインキュベーション後に固体支持体を洗浄して、未結合の標識された試薬を除去することを含む。標的捕捉方法はまた、標的コーティングされた固体支持体に結合した標識された薬物からの検出可能なシグナルを測定するステップを含み、対照試料と比較したシグナルの量の減少は、試料中の抗薬物抗体の存在を示す。
【0058】
標的捕捉方法のいくつかの実施形態において、抗薬物抗体は、タンパク質薬物に特異的に結合する中和抗体を含む。薬物は、抗体もしくはその抗原結合断片または融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、単一特異性F(ab’)2断片、二重特異性F(ab’)2、三重特異性F(ab’)2、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである。
【0059】
標的捕捉方法のいくつかの実施形態において、タンパク質薬物は、ルテニウムで標識される。
【0060】
標的捕捉アッセイのいくつかの実施形態は、非枯渇試料と比較して、枯渇試料中で少なくとも10倍大きい薬物耐容性を有する。標的捕捉方法のさらに他の実施形態において、方法は、タンパク質薬物の投与の少なくとも29日後に対象から採取した試料中のNAbを肯定的に同定する。
【実施例】
【0061】
実施例1:競合的リガンド結合NAbアッセイ:フォーマットおよび薬物耐容性
材料および方法
材料および試薬
別段の定めがない限り、すべての溶液をアッセイ緩衝液(1X PBS中1% BSA)中で調製した。Read Buffer T(4X)は、Meso Scale Discovery(MSD、Gaithersburg,Maryland)製であった。氷酢酸(17.4M)は、Thermo Fisher Scientific(Waltham,MA)製であった。ヒトおよびサル血清は、BioIVT(Westbury,NY)製であった。完全ヒトモノクローナル抗体薬物、完全ヒト競合的抗標的A抗体、組換えヒト標的、モノクローナル中和抗薬物抗体(陽性対照として使用される)、および抗ヒトモノクローナル抗体は、Regeneron(Tarrytown,NY)によって生成された。EZ-link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Fisher Scientific)およびルテニウムNHSエステル(MSD)を用いた抗体および標的の標識化を、製造業者の指示に従って行った。DyNAbeads(商標)Antibody Coupling Kitは、Thermo Fisher Scientific製であった。薬物特異的タンパク質試薬を磁気DyNAbeads(登録商標)に、製造業者の指示(30μgタンパク質/1mgビーズ)に従って結合した。Multi-array(登録商標)High Bind Avidin 96 Wellプレートは、MSD製であった。Trizma塩基(1.5M)は、Sigma(St Louis,MO)製であった。洗浄液は、KPL Inc.製であった。
【0062】
機器
マイクロプレートウォッシャー(ELx405)は、BioTek Instruments(Winooski,VT)製であり、マイクロプレートシェーカーは、VWR(Radnor,PA)製であった。QuickPlex SQ 120リーダーは、MSD製であり、SoftMax(登録商標)Proアプリケーションは、Molecular Devices(Sunnyvale,CA)製であった。
【0063】
磁気ビーズ薬物枯渇手順
試料を300mMの酢酸中で1:5に希釈し、室温(RT)で60分間インキュベートした。30mgの薬物特異的タンパク質結合DyNAbeads(登録商標)を、500mMのトリス溶液(試料/QCの1プレートに十分、約0.6mgのビーズ/試料)中に再懸濁した。次いで、酸性化された試料を、タンパク質結合DyNAbeads(登録商標)を含有する1% BSA、500mMのトリス溶液中で1:2(1:20の合計最終希釈)に希釈した(1時間、700rpm)。試料を磁石に当て、ビーズをチューブ/ウェル壁上に収集させ、上清を別個のチューブ/プレートに移した。
【0064】
競合的リガンド結合NAbアッセイ手順
プールされたヒト血清を陰性対照(NC)として使用した。マイクロタイタープレートを洗浄し、5% BSAで室温において1時間遮断した。REGN-A薬物のアッセイを薬物捕捉フォーマットで構成し、REGN-B薬物のアッセイを標的捕捉フォーマットで構成した(
図1)(Wu,B.W.,et al.,GG,Shankar G:Competitive Ligand-Binding Assays for the Detection of Neutralizing Antibodies.In:Detection and Quantification of Antibodies to Biopharmaceuticals:Practical and Applied Considerations,M.G.Tovey(Ed).John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,USA.(2011))。両方の構成において、標識された薬物(ビオチンまたはルテニウム)を、アビジンコーティングされたアッセイプレートに添加する前に、溶液中の血清試料(薬物枯渇のある場合またはない場合)とインキュベートする。薬物捕捉フォーマットでは、ルテニウム標識された標的を後続のステップで添加し、標的捕捉フォーマットでは、ビオチン化された標的を最初に、ストレプトアビジンコーティングされたマイクロプレートに予め結合する。
【0065】
薬物捕捉フォーマット:
試料およびQC(薬物枯渇のある場合またはない場合)を、50μg/mLの抗標的遮断抗体を含有する10ng/mLのBio-REGN-Aアッセイ緩衝液と、室温で振盪しながら(400rpm)90分間インキュベートした。次いで、アッセイプレートを洗浄し、酸性化/中和された試料およびQCを添加した(50μL、2時間室温)。ルテニウム標識された組換え標的を、アッセイ緩衝液中2μg/mLでアッセイプレートに、振盪しながら(50μL、400rpm)室温で1時間添加した。
【0066】
標的捕捉フォーマット:
ビオチン化された組換え標的を、アッセイ緩衝液中2μg/mLでアッセイプレートに、振盪しながら(50μL、400rpm)室温で1時間添加し、洗浄した。試料およびQC(薬物枯渇のある場合またはない場合)を、アッセイ緩衝液中20ng/mLでルテニウム標識された薬物と、振盪しながら(50μL、400rpm)室温で2時間インキュベートした。次いで、溶液をアッセイプレートに添加した(50μL、400rpm)。
【0067】
両方のフォーマットにおいて、最終インキュベーション後、プレートを洗浄し、150μLの2X Read Bufferを0~10分間インキュベーションし、QuickPlex SQ 120で読み取った。カウント値をSoftMax(登録商標)Proソフトウェアにインポートし、陰性対照シグナルに基づいてプレート固有のカットポイントを計算した。
【0068】
薬剤耐容性の計算およびカットポイントの決定
4PL回帰モデルを使用して、SoftMax Proで薬物耐容性(DT)および薬物干渉値を計算した。NAbアッセイで試験した疾患個体からの薬物未投与の血清試料からのデータの統計分析によって、カットポイントを決定した。分析に使用した統計的方法は、業界の慣行に基づいた(Shankar,G.,et al.,J Pharm Biomed Anal,48(5):1267-1281(2008)、Gupta,S.,et al.,J Immunol Methods,321(1-2):1-18(2007))。
【0069】
薬剤A濃度ELISA
サル血清試料を、示された濃度の薬物Aでスパイクし、次いで、薬物枯渇手順、または対照として、標的結合ビーズを添加しない同じ処理ステップに供した。次いで、得られた血清試料上清を酸性化し(300mMの酢酸)、中和した後、抗ヒトIg、カッパ軽鎖特異的mAbでコーティングしたマイクロプレートに添加した。薬物Aレベルを、ビオチン化抗ヒトFc特異的mAbおよびNeutrAvidin-HRPによって発生したアッセイシグナルで検出した。
【0070】
結果
2つの異なるmAb薬物のCLB NAbアッセイを行い、様々な異なるパラメータについて最適化し、フォーマット、感度、およびDTを含んだ。薬物Aについては、薬物捕捉アッセイを行い、薬物Bについては、標的捕捉方法を行った(
図1A~1B)。遊離薬物がNAbの非存在下で偽陽性応答を生じさせず抗標的結合タンパク質の添加によって標的干渉が最小限に抑えられ得るため、薬物捕捉CLB NAbアッセイフォーマットが概して好ましい。しかしながら、薬物Bについてのルテニウム標識された組換え標的は、ビオチン-薬物の非存在下であってもプレートに付着したため、標的捕捉フォーマットが選択された。両方のフォーマットにおいて、NAbの非存在下で、標識された薬物は、標識された標的に結合し、アッセイにおいてシグナルを発生させる。NAbの存在下では、標識された薬物への標識された標的の結合が阻害され、アッセイシグナルの低減をもたらす。したがって、アッセイシグナルは、試料中のNAbの量に反比例する(Wu,B.W.,et al.,Competitive Ligand-Binding Assays for the Detection of Neutralizing Antibodies.In:Detection and Quantification of Antibodies to Biopharmaceuticals:Practical and Applied Considerations,Michael G.Tovey(Eds).John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,USA.(2011))。
【0071】
両方のNAbアッセイフォーマットにおいて、試料中の遊離薬物の存在は、NAbへの結合に関して標識された薬物と競合し得、標的捕捉フォーマットでは、NAbの非存在下で偽陽性応答も生じさせる。これらの理由から、DTは、最適化を必要とした重要な変数であった。両方の薬物プログラムのアッセイは、DTを改善するための酸解離ステップを組み込んだ。しかしながら、各方法のDTは依然として、患者におけるトラフ薬物濃度よりもかなり低かった(図示せず)。一実施形態において、各方法のDTは、トラフ薬物濃度よりも最大20倍低かった。その結果として、固相抽出/精製方法を評価して、アッセイDTをさらに改善した。
【0072】
薬物A臨床試験の試料を、ADA陽性および薬物濃度のみに基づいて選択し、試料採取時点は考慮しなかった。試料採取時点によって分類した試料において、NAb陽性は、本質的に経時的であり、NAb陽性試料の72%は、初回投与の85日目以降に生じた。対照的に、NAb陰性試料の85%は、初回投与の30日後未満の時点で観察された。薬物枯渇ステップを追加しなければ、薬物を含有する試料においてこの観察は不可能であろう。これは、生物学的製剤および置換因子に対するADA応答が治療の過程中に成熟し、NAb応答が正常血清中に見出されるよりも高い割合のIgG4を有し、IgG4応答がより後の時点で生じるという研究結果と一致する(Van Schouwenburg,P.A.,et al.,J Clinical Immunol,32(5):1000-1006(2012)、Montalvao,S.A.,et al.,Official J World Federation Hemophilia,21(5):686-692(2015)、Hofbauer,C.J.,et al.,Blood,125(7):1180-1188(2015)、Barger,T.E.,et al.,European Renal Assoc,27(2):688-693(2012))。
【0073】
実施例II:ビーズ結合タンパク質のNAbアッセイステップへのキャリーオーバー
材料および方法
実施例Iを参照されたい。
【0074】
結果
初期実験は、ストレプトアビジンビーズに結合したビオチン-薬物を使用して、試料からADA(およびNAb)を抽出した。しかしながら、CLB NAbアッセイでは、最大感度を達成するために低い標識された薬物濃度が必要である(Hu,J.et al.,J Immunol Methods,419:1-8(2015)、Wu,B.W.,et al.,Competitive Ligand-Binding Assays for the Detection of Neutralizing Antibodies.In:Detection and Quantification of Antibodies to Biopharmaceuticals:Practical and Applied Considerations,Michael G.Tovey(Eds).John Wiley&Sons,Inc.,Hoboken,NJ,USA.(2011))。したがって、濃縮ステップからアッセイステップに移されたビオチン-薬物が干渉し得る。
図2Aのデータは、NAb濃縮ステップで使用されるビオチン化薬物がNAbアッセイステップにキャリーオーバーされ、アッセイシグナルの約5倍の増加をもたらすことを実証する。実際、NAbアッセイにおいてビオチン-薬物が添加されていなくても、濃縮ステップからのビオチン-薬物のキャリーオーバーは、実質的なアッセイシグナルを発生させるのに十分であった(図示せず)。
【0075】
試料からのNAb除去の代替法として、薬物除去アプローチも試験した。しかしながら、ビオチン-薬物NAb濃縮アプローチの場合と同様に、薬物を捕捉するために使用したタンパク質からのキャリーオーバーもまた、NAbアッセイステップに干渉する可能性がある。
図2Bおよび2Cのデータは、標的または遮断抗イディオタイプ抗体のいずれかを使用して薬物を捕捉する場合に、これらのタンパク質がキャリーオーバーし、後続のNAbアッセイにおいてシグナルを抑制したことを実証する。
【0076】
実施例III:薬物捕捉タンパク質からの干渉の最小限化
材料および方法
実施例Iを参照されたい。
【0077】
結果
結合タンパク質の量を低減するか、または洗浄ステップを増加させる試みは、これらのタンパク質がNAbアッセイに移された後に、それらからの干渉を十分に最小限に抑えることができなかった。キャリーオーバーからの干渉を軽減するために、NAbアッセイの各々について異なるアプローチを行った。
【0078】
標的を薬剤除去ステップにおける捕捉試薬として使用した場合、タンパク質はキャリーオーバーし、NAbアッセイシグナルを阻害した(
図2B、2C、および3A)。しかしながら、薬物捕捉アッセイフォーマットにおいて、抗標的抗体の添加が、タンパク質キャリーオーバーから生じる問題を解決した。抗標的mAbの存在下で、標的結合ビーズを用いた薬物除去ステップに供した陽性対照試料および陰性対照試料は、薬物除去ステップなしの対照試料とほぼ同一のアッセイシグナルを発生させた(
図3A)。
【0079】
標的捕捉NAbアッセイフォーマットにおいて、抗標的試薬の添加は、それが捕捉試薬に結合してアッセイシグナルを阻害するため、不可能であった。標的遮断抗イディオタイプ抗体は、アッセイに干渉することが示されたが(
図2C)、非遮断抗薬物mAbが使用され得る可能性があった。したがって、非遮断抗イディオタイプ抗体(
図3C)をビーズに結合して、薬物を捕捉した。このアッセイフォーマットにおいて、薬物除去ステップに供した陽性対照試料および陰性対照試料は、薬物除去ステップなしの対照試料と同様のアッセイシグナルを有した(
図3B)。
【0080】
実施例IV:磁気ビーズを用いた薬物枯渇
材料および方法
実施例Iを参照されたい。
【0081】
結果
ビーズステップからキャリーオーバーしたタンパク質による干渉の低減は、特定の薬物除去試薬を選択するための重要な基準であった。ビーズに結合したタンパク質を用いた薬物除去の効率を試験するために、NAb陰性試料中の薬物干渉およびNAb陽性試料中のDTの2つのセットの実験を実施した。薬物Bの標的捕捉アッセイにおける薬物干渉を試験するために、薬物をNAb陰性試料にスパイクし、薬物枯渇ステップのある場合およびない場合のアッセイで試験した。抗イディオタイプmAb結合ビーズを用いた薬物除去ステップの追加は、対照と比較して、偽陽性応答を生じさせるために必要な薬物の濃度をほぼ50倍上昇させた(2μg/mL~93μg/mL、
図4A)。
【0082】
DTを試験するために、マウスモノクローナル陽性対照抗体(250ng/mL)を含有する試料を、上昇する濃度の薬物でスパイクし、薬物枯渇ステップのある場合およびない場合の両方のアッセイで試験した。薬物Bの標的捕捉アッセイフォーマットにおいて、抗イディオタイプmAb結合ビーズを使用した薬物除去ステップの追加は、対照と比較してDTの10倍の上昇をもたらした(153ng/mL~1.55μg/mL、
図4B)。薬物Aの薬物捕捉フォーマットでは、標的結合ビーズを使用した薬物除去ステップを追加して、対照と比較してDTが20倍上昇した(0.5μg/mL~9.7μg/mL、
図4C)。これらの実験は、両方のアッセイにおいて、薬物枯渇ステップを組み込むことによって、DTが実質的に改善されたことを実証した。
【0083】
薬物枯渇ステップによっておよそどのくらいの薬物が除去されたかを決定するために、サル血清試料を薬物Aでスパイクし、薬物枯渇手順に供した。次いで、捕捉および検出試薬として抗ヒトmAbを用いたサンドイッチ免疫測定法において、試料を分析した。対照として、複製の薬物Aスパイクされた試料を、標的結合ビーズを添加せずに同じ酸性化および中和処理ステップに供した。
図4Dに示されるように。薬物A枯渇試料は、対照試料と比較して非常に乏しいアッセイシグナルを有した。除去した治療薬の量を定量化するために、枯渇試料中の薬物A濃度を、対照試料から生成された回帰曲線から補間した。この分析は、約99%の薬物が枯渇ステップによって除去されたことを実証した(例えば、試料中でスパイクされた12.5μg/mLの薬物、枯渇後に測定された120ng/mL)。薬物B枯渇手順でも同様の枯渇レベルが得られた(図示せず)。
【0084】
実施例V:薬物枯渇のある場合またはない場合のADA陽性臨床試料のNAb分析
材料および方法
データは、薬物枯渇前処理ステップが、陽性対照として使用されるマウスモノクローナル抗薬物抗体に基づいてDTを改善したことを実証する。ヒト抗薬物抗体でこの研究結果を確認するために、薬物A(複数回投与)を用いた臨床試験からの25個の試料を選択して、薬物枯渇ステップのある場合およびない場合の薬物捕捉NAbアッセイで試験した
【0085】
結果
すべての試料は、ADA陽性であり、すべては、500~15000ng/mLの検出可能な薬物レベルを有した。これらすべての試料中の治療濃度は、薬物枯渇ステップなしの方法のDTよりも高かった。薬物Aに対するADA応答は、全体的にかなり低く(図示せず)、検出可能な薬物を有した唯一のADA陽性試料は、低い力価応答(最小希釈または1希釈高い)を有した。
【0086】
薬物枯渇ステップなしで試験した25個の試料のうち、阻害率がカットポイントより大きくNAb陽性であったのは2つのみであった(
図5A)。対照的に、ビーズ前抽出ステップの後、12個の試料がNAb陽性であった(
図5B)。ADA陰性ベースライン試料のセレクションは、ビーズ薬物除去ステップのある場合またはない場合で、阻害率の非常にわずかな変化しか有しなかった(図示せず)。薬物枯渇ステップがある場合またはない場合で試料を分析したときの阻害率の平均変化は、NAb陽性試料については+24%であった(
図5B)。対照的に、薬物枯渇ステップのある場合またはない場合で試験したときに、NAb陰性であった試料についての阻害率に実質的な変化はなかった(-2.7%、
図5B)。これは、薬物の除去が、あるサブセットの試料についてのみのNAb結果に影響を及ぼしたことを明確に示した。重要なことに、薬物枯渇ステップを含むことで、試料中の薬物濃度が本試験におけるトラフ薬物レベルよりも高い10μg/mLに至った場合にでもNAbが検出された。
【0087】
25個のADA陽性試料のうち、NAb陽性試料は、主により後の時点で生じる(
図6A~6C)。13個のNAb陰性試料のうち、11個(85%)は、試験した2つの最も早い時点である初回投与後15および29日目に同定された。対照的に、NAb陽性試料のいずれも、試験した最も早い時点である15日目には同定されず、11個のNAb陽性試料のうちの3個のみが、試験した次の時点である29日目に同定された。11個のNAb陽性応答のうち8つ(72%)は、85日目より後の時点で生じた。
【0088】
本開示は以下の実施形態を含む。
実施形態1
試料中の薬物に対する抗薬物抗体を検出するための方法であって、
前記試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、酸性化試料を生成することと、
前記酸性化試料を、前記薬物の標的を含むpH緩衝液と組み合わせて、標的:薬物複合体を生成し、ここで、前記薬物の前記標的は選別可能な標識で標識されていることと、
前記選別可能な標識を使用して前記試料から前記標的:薬物複合体を除去して、枯渇試料を生成することと、
前記枯渇試料を、抗標的遮断試薬またはその抗原結合断片およびビオチン化薬物とインキュベートして、アッセイ試料を生成することと、
前記アッセイ試料を、アビジンコーティングされた固体支持体上でインキュベートすることと、
任意で、前記アッセイ試料とのインキュベーション後に、前記固体支持体を洗浄することと、
前記薬物の標識された標的を前記固体支持体に添加することと、
任意で、前記固体支持体を洗浄して、未結合の標識された標的を除去することと、
前記固体支持体に結合した前記ビオチン化薬物に結合した標識された標的からの検出可能なシグナルを測定し、ここで、対照試料と比較した前記固体支持体からのシグナルの量の減少が、前記試料中の抗薬物抗体の存在を示すことと、
を含む、方法。
実施形態2
前記抗薬物抗体が、前記薬物に特異的に結合する中和抗体を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記薬物が、抗体もしくはその抗原結合断片または融合タンパク質である、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4
前記抗体が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)
2
断片、単一特異性F(ab’)
2
断片、二重特異性F(ab’)
2
、三重特異性F(ab’)
2
、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである、実施形態3に記載の方法。
実施形態5
前記酸性条件が、約2.0~約4.0のpHを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態6
前記酸性条件が、1~3のpHを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態7
前記選別可能な標識が、磁気標識を含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態8
前記磁気標識が、常磁性標識または超常磁性標識である、実施形態7に記載の方法。
実施形態9
前記磁気標識が、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超常磁性球状ポリマー粒子である、実施形態7または8に記載の方法。
実施形態10
前記抗標的遮断試薬その抗原結合断片が、前記タンパク質薬物の前記標的に特異的に結合する、実施形態1に記載の方法。
実施形態11
前記方法の薬物耐容性が、非枯渇試料と比較して枯渇試料中で少なくとも10倍大きい、実施形態1に記載の方法。
実施形態12
前記方法が、前記タンパク質薬物の投与の少なくとも29日後に対象から採取した薬物含有試料中のNAbを肯定的に同定する、実施形態1に記載の方法。
実施形態13
前記試料が、前記インキュベーションまたは洗浄ステップ中に撹拌される、実施形態1に記載の方法。
実施形態14
前記標識された標的が、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、量子ドット、希土類遷移金属、金金属粒子、銀金属粒子、またはそれらの組み合わせで標識されている、実施形態1に記載の方法。
実施形態15
前記標識が、ルテニウムを含む、実施形態14に記載の方法。
実施形態16
試料中の薬物に対する抗薬物抗体を検出するための方法であって、
前記試料を酸性条件下で一定期間インキュベートして、タンパク質複合体の解離を促進し、それによって酸性化試料を生成することと、
前記酸性化試料を、前記薬物に特異的な標識された非遮断抗イディオタイプ抗体を含むpH緩衝液と組み合わせて、非遮断抗イディオタイプ抗体:薬物複合体を生成し、ここで、前記標識された非遮断抗イディオタイプ抗体が選別可能な標識で標識されており、pHが4.0~5.5に上昇することと、
前記選別可能な標識を使用して前記試料から前記非遮断抗イディオタイプ抗体:薬物複合体を除去して、枯渇試料を生成することと、
前記枯渇試料を、標識されたタンパク質薬物と約7.0のpHでインキュベートして、アッセイ試料を生成することと、
標的コーティングされた固体支持体上で前記アッセイ試料をインキュベートし、ここで、前記標識された薬物が、前記標的に特異的に結合することと、
任意で、前記アッセイ試料とのインキュベーション後に前記固体支持体を洗浄して、未結合の標識された薬物を除去することと、
前記標的コーティングされた固体支持体に結合した標識された薬物からの検出可能なシグナルを測定し、ここで、対照試料と比較したシグナルの量の減少が、前記試料中の抗薬物抗体の存在を示すことと、
を含む、方法。
実施形態17
前記抗薬物抗体が、前記薬物に特異的に結合する中和抗体を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態18
前記薬物が、抗体もしくはその抗原結合断片または融合タンパク質である、実施形態16または17に記載の方法。
実施形態19
前記抗体が、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、Fab断片、F(ab’)
2
断片、単一特異性F(ab’)
2
断片、二重特異性F(ab’)
2
、三重特異性F(ab’)
2
、一価抗体、scFv断片、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、三重特異性ダイアボディ、scFv-Fc、ミニボディ、IgNAR、v-NAR、hcIgG、またはvhHである、実施形態18に記載の方法。
実施形態20
前記酸性条件が、遊離標的干渉を最小限に抑えるために4.5~5.0のpHを含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態21
前記酸性条件が、2.0~4.0のpHを含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態22
前記選別可能な標識が、磁気標識を含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態23
前記磁気標識が、常磁性標識または超常磁性標識である、実施形態22に記載の方法。
実施形態24
前記磁気標識が、金属粒子、金属マイクロ粒子、金属ナノ粒子、金属ビーズ、磁性ポリマー、均一ポリスチレン球状ビーズ、または超磁性球状ポリマー粒子である、実施形態22または23に記載の方法。
実施形態25
前記標識された薬物が、フルオロフォア、化学発光プローブ、電気化学発光プローブ、放射性同位体、量子ドット、希土類遷移金属、金粒子、銀粒子、またはそれらの組み合わせで標識されている、実施形態16に記載の方法。
実施形態26
前記標識が、ルテニウムを含む、実施形態16に記載の方法。
実施形態27
前記方法の薬物耐容性が、非枯渇試料と比較して枯渇試料中で少なくとも10倍大きい、実施形態16に記載の方法。
実施形態28
前記方法が、前記タンパク質薬物の投与の少なくとも29日後に対象から採取した試料中のNAbを肯定的に同定する、実施形態16に記載の方法。
実施形態29
前記試料が、前記インキュベーションまたは洗浄ステップ中に撹拌される、実施形態16に記載の方法。
実施形態30
リードタンパク質薬物を同定するための方法であって、
1つ以上の薬物候補を対象に投与することと、
前記対象から得られた試料上で、実施形態1または実施形態16のいずれか一項に記載の方法を実施することと、
ADAをほとんどまたは全く生成しないタンパク質薬物候補を選択することと、
を含む、方法。
上記の明細書において、本発明がその特定の実施形態に関連して説明されており、多くの詳細が例示の目的のために提示されてきたが、本発明が、追加の実施形態を受け入れる余地があること、および本明細書に記載される詳細の一部が、本発明の基本原則から逸脱することなくかなり変動し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0089】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本発明は、その趣旨または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよく、したがって、本発明の範囲を示すものとして、上記の明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照するべきである。