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特許7541545着色感光性樹脂組成物、およびそれを用いて製造されたカラー素子並びに表示装置
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  • 特許-着色感光性樹脂組成物、およびそれを用いて製造されたカラー素子並びに表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】着色感光性樹脂組成物、およびそれを用いて製造されたカラー素子並びに表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20240821BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240821BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240821BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
G03F7/027 502
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G02B5/20 101
G02F1/1335 505
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022076613
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2020534451の分割
【原出願日】2019-01-31
(65)【公開番号】P2022103263
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2018-0014221
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,フン-シク
(72)【発明者】
【氏名】パク,スル-キ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェ-ウル
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-050549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
G03F 7/004
G02B 5/20
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色感光性樹脂組成物の硬化塗膜であって、
前記着色感光性樹脂組成物は、前記着色感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、
(A)アルカリ可溶性樹脂30~60重量%と、(B)光重合性化合物10~40重量%と、(C)光重合開始剤2~20重量%と、(D)着色剤5~20重量%を含み、
前記着色感光性樹脂組成物の総重量に対して、(E)溶剤50~80重量%を含み、
前記(B)光重合性化合物がフッ素系化合物を含み、
前記(C)光重合開始剤は、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、およびチオキサントン系化合物からなる群から選択される1種以上を含み、
前記(D)着色剤は、青色着色剤および白色着色剤の少なくとも1つを含み、
前記(E)溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、および3-メトキシプロピオン酸メチルからなる群から選択される1種以上を含み、
前記青色着色剤が、C.I.ピグメントブルー15:6および60からなる群から選択される1種以上を含み、
前記白色着色剤が、C.I.ピグメントホワイト6を含み、
前記硬化塗膜表面の水に対する接触角が102°~148°であり、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が44°~68°であって、水に対する接触角:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角=1:0.42~0.47であり、
前記水に対する接触角及び前記プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角は、温度25℃及び湿度40%の条件で測定される、硬化塗膜。
【請求項2】
前記着色感光性樹脂組成物はフッ素系添加剤をさらに含む、請求項1に記載の硬化塗膜
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化塗膜を含むカラー素子。
【請求項4】
請求項3に記載のカラー素子を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色感光性樹脂組成物、それを用いて製造されたカラー素子および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー素子は、撮像素子、液晶表示装置(LCD)などの各種表示装置に広く用いられるものであって、その応用範囲が拡大されている。
【0003】
カラー素子は、染色法、印刷法、顔料分散法、電着法などにより製造されており、近年、表示材料基板の大型化に伴い、インクジェット法を利用した低コスト化プロセスが提案されている。
【0004】
例えば、従来のカラーフィルタの製造では、ブラックマトリックスを構成する隔壁をフォトリソグラフィにより形成し、隔壁により囲まれた開口部に、赤色、緑色、および青色のインクをインクジェット法により噴射、塗布することで画素を形成していた。これは、最近研究されている量子ドット(Quantum dot)表示素子の場合も同様である。
【0005】
有機EL表示素子の製造では、素子(pixel)を構成する隔壁をフォトリソグラフィにより形成した後、隔壁により囲まれた開口部に、正孔輸送材料、発光材料の溶液をインクジェット法により噴射、塗布することで、正孔輸送層、発光層などを有する画素が形成される。これは、最近研究されている量子ドット(Quantum dot)表示素子の場合も同様である。
【0006】
ディスプレイは、2つの方式に大別され得るが、液晶表示装置(LCD)のように、後面に光源が存在し、フィルタ乃至光変換層によって色を示す方式と、有機発光ダイオード(OLED)のように、電気を印加して光を発生させる方式に分けられる。しかし、量子ドット(Quantum dot)表示素子は、光エネルギーを用いた光変換層の役割も可能であり、電気エネルギーを印加して光を発生させることもできる特徴がある。
【0007】
上記の2つの方式は何れも、カラー素子を製作するに際し、隔壁を構成し、素子で発生する混色を抑えることが非常に重要である。上述の液晶表示装置(LCD)は、隔壁をブラックで形成して光を遮光する方式が用いられており、有機発光ダイオードは、金属を蒸着する方式により混色を抑える方法が主に用いられている。したがって、カラー素子の製造において混色を防止するための様々な方法が提案されている。
【0008】
また、コストの低減、生産性の向上のために、着色マトリックス形成材料には、少ない露光量でパターニングが可能な、高い感度が求められている。また、画素に用いられる材料の高級化により、画素の製造に用いられる材料の価格が急騰している。したがって、従来のスピンコーティングやスリットコーティングをしてパターニングを行うことよりは、所望の部分のみに材料を使用して、材料の使用を最大限抑える方法が関心を集めている。最も代表的な方法として、インクジェット法が挙げられる。インクジェット法は、所望の画素のみに材料を使用するため、不要に浪費される材料を抑えることができる。インクジェット法によりカラー素子を製造する場合、隔壁は、インクジェットの吐出液である水や有機溶剤などを弾く性質、いわゆる撥液性が要求される。
【0009】
一方、インクジェット法により画素に形成されるインク層は、高い膜厚均一性を有することが求められるため、隔壁の側面部乃至基材部は、吐出液に濡れる性質、いわゆる親液性を有することが要求される。
【0010】
韓国特許出願公開第10-2013-0132655号は、感光性樹脂組成物、それを用いた感光性エレメント、画像表示装置の隔壁の形成方法、および画像表示装置の製造方法を開示しているが、画素の実現において求められる要件が依然として満たされていない状況である。
【0011】
韓国特許登録第10-1420470号は、優れた遮光性および撥液性を有する隔壁を製造するにあたり、特定の化学構造の化合物とともに、水の接触角が90°以上、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)の接触角が20°以上であると限定している。しかし、上記の発明により製造された隔壁は、本発明の比較例3~7の範囲に該当するものであり、インクジェット特性に劣る結果を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、撥液性に優れるとともに、青色以外の光に対する遮光性に優れた隔壁を実現することができる着色感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、表面不良が発生しない画素を形成することができる着色感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0014】
さらに、本発明は、上述の着色感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラー素子および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、光硬化および現像を行った後に製造された塗膜表面の水に対する接触角が100°~160°であり、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が40°~70°であって、水に対する接触角:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角=1:0.4~0.6であることを特徴とする、着色感光性樹脂組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、上述の着色感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラー素子を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記カラー素子を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施態様に係る着色感光性樹脂組成物は、現像後における塗膜表面の水に対する接触角およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が、それぞれ特定の範囲を示すとともに、それぞれの接触角の関系が、特定の関系の範囲内の値を有する場合、撥液性に優れ、インクジェット青色以外の光に対する遮光性に優れた隔壁を実現することができる。したがって、本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、互いに隣合う画素間におけるインクの混色を防止することが可能である。
【0019】
また、本発明の着色感光性樹脂組成物は、表面不良が発生しない画素を形成することができる。
【0020】
また、上述の着色感光性樹脂組成物は、カラー素子および表示装置の製造に有用に用い
られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ピクセル形成測定結果を示す写真である。
図2】ピクセル形成測定結果を示す写真である。
図3】ピクセル形成測定結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、光硬化および現像を行った後に製造された塗膜表面の水に対する接触角が100°~160°であり、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が40°~70°であって、水に対する接触角:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角=1:0.4~0.6である、着色感光性樹脂組成物、前記組成物から製造されたカラー素子および表示装置に関する。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
<着色感光性樹脂組成物>
本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、露光量が40~160mJ/cmの条件で光硬化した後、現像して製造した塗膜表面の水(DIW、Deionized Water)に対する接触角が100°~160°であり、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が40°~70°であることが好ましい。
【0024】
本明細書において、接触角は、固体と液体が接触する点における液体の表面に対する接線と固体の表面とが成す角であり、液体を含む方の角度と定義した。
【0025】
前記条件で、水(DIW、Deionized Water)に対する接触角が100°未満である場合には、インクジェット法において隔壁に水分が吸着され、インクジェット法を進行することができないという問題が発生し得て、160°を超える場合には、疎水性が増加し、隔壁上でインクが転がるという問題が発生し得る。
【0026】
また、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が40°未満である場合には、隔壁の上部にインクが濡れて、インクジェット法による製造が困難であり、70°を超える場合には、高すぎる接触角により、インクジェットによるパターンの平坦度に悪影響を与えるという問題が生じ得る。
【0027】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、インクジェット法により均一なパターンに形成し、高い収率を得る点から、水に対する接触角:プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角=1:0.4~0.6であることが好ましい。
【0028】
上述の特性を有する本発明の着色感光性樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)着色剤、および(E)溶剤を含んでもよい。
【0029】
以下では、本発明の着色感光性樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
(A)バインダー樹脂
本発明の実施態様に係る着色感光性樹脂組成物は、基材に密着力を付与することで、塗膜の形成を可能とするバインダー樹脂を含み、前記バインダー樹脂として、アルカリ可溶性樹脂が使用できる。
【0030】
前記アルカリ可溶性樹脂は、通常、着色感光性樹脂組成物を用いて形成された着色感光
性樹脂層の非露光部をアルカリ可溶性とし、後述の着色剤に対する結合剤樹脂および分散媒質としても作用する。
【0031】
前記アルカリ可溶性樹脂は、カラーフィルタの製造のための現像ステップで用いられたアルカリ性現像液に溶解可能な重合体であれば特に制限されずに使用できるが、本発明では、エポキシ基を含むアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
前記アルカリ可溶性樹脂の例としては、エポキシ基を含むモノマー、および前記モノマーと共重合可能な他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0033】
前記エポキシ基を含むモノマーの具体的な例としては、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-9-イルアクリレート、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イルアクリレート、グリシジルメタクリレート、および4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0034】
前記エポキシ基を含むモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル類、不飽和カルボン酸グリシジルエステル類、カルボン酸ビニルエステル類、不飽和エーテル類、シアン化ビニル化合物、不飽和アミド類、不飽和イミド類、脂肪族共役ジエン類、およびポリシロキサンの重合体分子鎖の末端に、モノアクリロイル基またはモノメタクリロイル基を有するマクロモノマー類が挙げられ、これらのモノマーは、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は3,000~20,000g/molであり、好ましくは5,000~15,000g/molである。
【0036】
また、前記アルカリ可溶性樹脂の酸価は、固形分基準で50~200mgKOH/gであり、前記範囲内である場合に、アルカリ現像における現像性に優れるとともに、残渣の発生が抑えられ、パターンの密着性が向上することができる。
【0037】
バインダー樹脂として含まれる前記アルカリ可溶性樹脂は、着色感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して30~60重量%で含まれ、40~50重量%で含まれることが好ましい。前記アルカリ可溶性樹脂の含量が上記の範囲内である場合、パターンが容易に形成され、解像度および残膜率が向上して好ましい。
【0038】
本発明において、着色感光性樹脂組成物中の固形分とは、溶剤を除去した成分の合計を意味する。
【0039】
(B)光重合性化合物
前記(B)光重合性化合物は、光重合開始剤の作用により重合可能な化合物であり、フッ素系化合物を含んでもよい。前記フッ素系化合物は、光重合性化合物とともに光重合特性を有することを特徴とする。そのための具体的な例としては、2,2,3,3,3-Pentafluoropropyl acrylate(CAS Number 2993-85-3)乃至Pentafluorophenyl acrylate(CAS Number 71195-85-2)乃至2,2,3,3,3-Pentafluoropropyl acrylate(CAS Number 356-86-5)乃至2,2,3,3-Tetrafluoropropyl Methacrylate(CAS Number 45102-52-1)などの、アクリレート乃至メタクリレートとともに、フッ素がともに導入された構造を有する化合物を含む多官能化合物であることが好ましい。
【0040】
前記光重合性化合物は、本発明の着色感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して10~40重量%で含まれ、20~35重量%で含まれることが好ましい。前記光重合性化合物は、上記の範囲である場合に、画素部の強度や平坦性を良好にすることができる。
【0041】
(C)光重合開始剤
前記光重合開始剤(C)は、光重合性化合物を重合させることができるものであれば制限されずに使用可能であるが、好ましくは、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などを考慮し、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、およびチオキサントン系化合物からなる群から選択される1種以上の化合物であってもよい。
【0042】
前記アセトフェノン系化合物の具体的な例としては、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン、および2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0043】
前記ベンゾイン系化合物の具体的な例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
前記ベンゾフェノン系化合物の具体的な例としては、ベンゾフェノン、0-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0045】
前記トリアジン系化合物の具体的な例としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、および2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0046】
前記ビイミダゾール化合物の具体的な例としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、または4,4’,5,5’位のフェニル基が、カルボアルコキシ基により置換されているイミダゾール化合物などが挙げられる。
【0047】
より好ましくは、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2-ビス(2,6-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールなどが挙げられる。
【0048】
前記オキシム化合物の具体的な例としては、o-エトキシカルボニル-α-オキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられ、市販品としては、BASF社のOXE01、OXE02が挙げられる。
【0049】
前記チオキサントン系化合物の具体的な例としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0050】
前記光重合開始剤は、単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、前記光重合開始剤は、着色感光性樹脂組成物中の固形分の総重量に対して、2~20重量%、好ましくは5~15重量%で含まれる。
【0051】
上記の範囲内である場合、着色感光性樹脂組成物が高感度化され、前記着色感光性樹脂組成物を用いて形成した画素部の強度、および前記画素部の表面での平滑性が良好になることができる。
【0052】
また、本発明では、光重合開始剤に加えて、光重合開始助剤を用いてもよい。
前記光重合開始助剤は、光重合開始剤により重合が開始された光重合性化合物の重合を促進させるために用いられる化合物であり、光重合開始助剤としては、例えば、アミン系化合物またはアルコキシアントラセン系化合物などが挙げられる。
【0053】
前記アミン系化合物の具体的な例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称、ミヒラーズケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、および4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられ、中でも、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0054】
前記アルコキシアントラセン系化合物の具体的な例としては、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、および2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセンなどが挙げられる。
【0055】
また、光重合開始助剤として市販されているものが使用可能であり、市販されている光重合開始助剤としては、商品名「EAB-F」(保土谷化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0056】
前記光重合開始助剤を用いる場合、光重合開始剤1モルに対して、通常、0超過10モル以下、0.01~5モルで用いることが好ましい。前記0超過10モル以下の範囲で光重合開始助剤を用いる場合、着色感光性樹脂組成物の感度がさらに高くなり、着色感光性樹脂組成物を用いて形成されるカラーフィルタの生産性が向上することができる。
【0057】
(D)着色剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、着色剤として、青色着色剤および白色着色剤の少なくとも1つを含む。
【0058】
前記着色剤としては、顔料、染料、または天然色素のうち何れか1つまたは2つ以上を組み合わせて使用でき、中でも、耐熱性、発色性に優れる点から、有機顔料が好ましい。有機顔料および無機顔料としては、具体的に、カラーインデックス(The Society of Dyers and Colourists出版)でピグメント(pigment)に分類されている化合物が挙げられ、以下のようなカラーインデックス(C.I.)番号の顔料が挙げられるが、必ずこれらに限定されるものではない。
【0059】
カラーインデックス(C.I.)番号の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15(15:3、15:4、15:6など)、16、21、28、60、64、および76;
C.I.ピグメントホワイト4、5、6、6:1、および22;
C.I.ピグメントイエロー20、24、31、53、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、154、166、173、180、および185;
C.I.ピグメントオレンジ13、31、36、38、40、42、43、51、55、59、61、64、65、および71;
C.I.ピグメントレッド9、97、105、122、123、144、149、166、168、176、177、180、192、208、215、216、224、242、254、255、264、および279;
C.I.ピグメントバイオレット14、19、23、29、32、33、36、37、および38;
C.I.ピグメントグリーン7、10、15、25、36、47、および58;
C.I.ピグメントブラウン28;
C.I.ピグメントバイオレット23、32、および29;
C.I.ピグメントブラック1、31、32、および有機ブラック100CF(Basf社);などが挙げられる。
【0060】
前記顔料は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記例示されたC.I.ピグメント顔料の中でも、青色着色剤としてはC.I.ピグメントブルー15:6乃至60が好ましく、白色着色剤としてはC.I.ピグメントホワイト6が好ましい。
【0061】
本発明の着色感光性樹脂組成物に含まれる着色剤は、樹脂組成物中の固形分の総重量に対して5~20重量%で含まれ、好ましくは7~15重量%で含まれる。
【0062】
前記着色剤が上述の範囲で含まれると、光学密度に優れる効果を得ることができる。しかし、5重量%未満で含まれる場合には、光特性の点から好ましくなく、20重量%を超えて含まれる場合には、信頼性および弾性率において好ましくない。
【0063】
(E)溶剤
前記溶剤としては、着色感光性樹脂組成物に含まれている他の成分を効果的に溶解させるものであれば、通常の着色感光性樹脂組成物に用いられる溶剤が特に制限されずに使用可能であり、特に、エーテル類、アセテート類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、またはエステル類などが好ましい。
【0064】
前記エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、およびエチ
レングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、およびジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0065】
前記アセテート類としては、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、アミルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、メチル3-メトキシプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-1-ブチルアセテート、1,2-プロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレンカーボネート、およびプロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0066】
前記芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、およびメシチレンなどが挙げられる。
【0067】
前記ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0068】
前記アルコール類としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリン、および4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどが挙げられる。
【0069】
前記エステル類としては、例えば、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、およびγ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0070】
前記溶剤は、それぞれ単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
前記溶剤は、塗布性および乾燥性の点から、沸点が100℃~200℃の有機溶剤を用いることが好ましく、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3-エトキシプロピオン酸エチル、および3-メトキシプロピオン酸メチルなどが挙げられる。
【0071】
前記溶剤は、着色感光性樹脂組成物の総重量に対して50~80重量%、好ましくは65~75重量%で含まれる。前記溶剤が前記50~80重量%の範囲で含まれると、ロールコータ、スピンコータ、スリットアンドスピンコータ、スリットコータ(ダイコータとも言う)、およびインクジェットなどの塗布装置で塗布した際に、塗布性が良好になることができる。
【0072】
(F)添加剤
本発明の着色感光性樹脂組成物は、上記成分以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、当業者の必要に応じて他の添加剤を含む。
【0073】
前記添加剤は、例えば、他の高分子化合物、硬化剤、分散剤、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、および凝集防止剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0074】
前記他の高分子化合物の具体的な例としては、エポキシ樹脂およびマレイミド樹脂などの硬化性樹脂;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリフルオロアルキルアクリレート、ポリエステル、およびポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0075】
前記硬化剤は、深部硬化および機械的強度を高めるために用いられるものであり、具体的な例としては、エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物、およびオキセタン化合物などが挙げられる。
【0076】
前記硬化剤のうち、エポキシ化合物の具体的な例としては、ビスフェノールA系エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA系エポキシ樹脂、ビスフェノールF系エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、その他の芳香族系エポキシ樹脂、脂環族系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系樹脂、グリシジルアミン系樹脂、またはこのようなエポキシ樹脂の臭化誘導体、エポキシ樹脂およびその臭化誘導体以外の脂肪族、脂環族、または芳香族エポキシ化合物、ブタジエン(共)重合体エポキシ化物、イソプレン(共)重合体エポキシ化物、グリシジル(メタ)アクリレート(共)重合体、トリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0077】
前記硬化剤のうち、オキセタン化合物の具体的な例としては、カーボネートビスオキセタン、キシレンビスオキセタン、アジペートビスオキセタン、テレフタレートビスオキセタン、シクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタンなどが挙げられる。
【0078】
前記硬化剤は、硬化剤とともに、エポキシ化合物のエポキシ基、オキセタン化合物のオキセタン骨格を開環重合するようにすることができる硬化補助化合物を併用してもよい。前記硬化補助化合物としては、例えば、多価カルボン酸類、多価カルボン酸無水物類、酸発生剤などが挙げられる。前記多価カルボン酸無水物類としては、エポキシ樹脂硬化剤として市販されているものを用いてもよい。前記エポキシ樹脂硬化剤の具体的な例としては、市販品として、商品名アデカハードナーEH-700(アデカ工業(株)製)、商品名リカシッドHH(新日本理化(株)製)、商品名MH-700(新日本理化(株)製)などが挙げられる。上記で例示した硬化剤は、単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
前記界面活性剤は、感光性樹脂組成物の被膜形成性をより向上させるために用いることができ、シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤などが好ましく使用可能である。
【0080】
前記シリコーン系界面活性剤としては、例えば、市販品として、東レ・ダウコーニングシリコーン社のDC3PA、DC7PA、SH11PA、SH21PA、およびSH-8400など、GE東芝シリコーン社のTSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4446、TSF-4460、およびTSF-4452などが挙げられる。前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、市販品として、メガファックF-470、F-471、F-475、F-482、F-489、およびF-554(大日本インキ化学工業社)、BM-1000、BM-1100(BM Chemie社)、フロラードFC-135/FC-170C/FC-430(住友スリーエム(株))などが挙げられる。前記例示された界面活性剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用い
てもよい。
【0081】
前記密着促進剤は、基板とのコーティング性および密着性を増進させるために用いられる添加剤であって、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される反応性置換基を含むシランカップリング剤を含んでもよい。シランカップリング剤の具体的な例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、r-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0082】
前記酸化防止剤の具体的な例としては、2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)および2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどが挙げられる。
【0083】
前記紫外線吸収剤の具体的な例としては、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、およびアルコキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0084】
前記凝集防止剤の具体的な例としては、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記添加剤は、前記着色感光性樹脂組成物の全100重量%に対して、0.1~10重量%で含まれてもよい。前記添加剤が前記着色感光性樹脂組成物に対して上記の範囲内で含まれる場合、前記着色感光性樹脂組成物から製造されるカラーフィルタの性能が低下することなく、且つ添加剤のそれぞれの目的性能を付与可能である利点がある。
【0085】
また、本発明は、上述の着色感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラー素子またはカラーフィルタ、およびそれを含む表示装置を提供する。
【0086】
本発明のカラー素子は、上記の着色感光性樹脂組成物を用いて、公知のカラー素子の製造方法により製造されたものであれば、特に限定されない。
【0087】
本発明のカラーフィルタは、基板と、前記基板の上部に形成されたカラー層と、を含んでなる。
【0088】
基板は、ガラス板、シリコーンウエハおよびポリエーテルスルホン(polyethersulfone、PES)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)などのプラスチック基材の板などであってもよいが、その種類が特に制限されるものではない。
【0089】
カラー層は、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤、および溶剤と、必要に応じて、添加剤を含んでなる着色感光性樹脂組成物を含み、前記着色感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、所定のパターンに形成した後、露光および現像することで形成された層であってもよい。
【0090】
以下、本発明に係るカラーフィルタのパターンの形成方法についてより詳細に説明する。
【0091】
カラーフィルタのパターンの形成方法は、基板に着色感光性樹脂組成物を塗布するステップと、溶媒を乾燥するプリベークステップと、得られた被膜上にフォトマスクを当て、活性光線を照射して露光部を硬化させるステップと、アルカリ水溶液を用いて非露光部を
溶解する現像工程を行うステップと、乾燥およびポストベークを行うステップと、を含んでなる。
【0092】
前記基板としては、ガラス基板やポリマー板が用いられる。ガラス基板としては、特に、ソーダ石灰ガラス、バリウムまたはストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、または石英などが好ましく使用できる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフィド、またはポリスルホンなどが挙げられる。
【0093】
この際、塗布は、所望の厚さが得られるように、ロールコータ、スピンコータ、スリットアンドスピンコータ、スリットコータ(ダイコータとも言う)、インクジェットなどの塗布装置を用いた湿式コーティング方法により行われてもよい。
【0094】
プリベークは、オーブン、ホットプレートなどにより加熱することで行われる。この際、プリベークにおける加熱温度および加熱時間は、用いる溶剤に応じて適宜選択され、例えば、80℃~150℃の温度で1~30分間行われる。
【0095】
また、プリベーク後に行われる露光は、露光機により行われ、フォトマスクを介して露光することにより、パターンに対応した部分のみを感光させる。この際、照射する光としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、および電子線などが可能である。
【0096】
露光後のアルカリ現像は、非露光部分の除去されていない部分の着色感光性樹脂組成物を除去する目的で行われ、この現像によって所望のパターンが形成される。
【0097】
このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液などを用いてもよい。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩を1~3重量%含有するアルカリ水溶液を用いて、10℃~50℃、好ましくは20℃~40℃の温度で、現像機または超音波洗浄機などを用いて行う。
【0098】
ポストベークは、パターニングされた膜と基板との密着性を高めるために行われ、80℃~230℃、10~120分の条件で熱処理することにより行われる。ポストベークは、プリベークと同様に、オーブン、ホットプレートなどを用いて行う。
【0099】
上記のステップを経て、着色感光性樹脂組成物中の着色剤の色に該当する画素または隔壁が得られ、また、かかるパターン形成ステップを行うことで、インクジェット法を行うためのパターンを製造することができる。このように製造された隔壁に、カラーインクをインクジェット法により形成するか、または自発光インクをインクジェット法により形成することで、素子の構造を完成することができる。その構成および製造方法は、本発明の技術分野において当業者に知られていることと類似である。
【0100】
表示装置は、本発明の着色感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁を備えたことを除き、本発明の技術分野において通常の技術者に知られた構成を含む。
【0101】
本発明の着色感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁は、撥液性に優れるとともに、青色以外の光に対する遮光性に優れた隔壁を含む。これにより、互いに隣合う画素間におけるインクの混色を防止することが可能であり、表面不良が発生しない画素を形成することにより、表示装置の信頼度を向上させることができる。
【実施例
【0102】
以下、本発明を実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。しかし、下記実施例
は本発明を例示するためのものであり、本発明は下記実施例により限定されず、多様に修正および変更可能である。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の技術的思想によって決定される。
【0103】
実施例および比較例
<基板の製造>
(A)バインダー樹脂、(B)光重合性化合物、(C)光重合開始剤、(D)青色着色剤および白色着色剤の少なくとも1つを含む着色剤、および(E)溶剤を含む本発明の組成物である、東友ファインケム社のSY-O1410またはSY-O1533溶液を、コーティング機器(Opticoat MS-A150、ミカサ社製)を用いて着色感光性樹脂組成物毎に一定な厚さとすることができるrpmでコーティングした後、90℃のホットプレート(hot-plate)にて、1分~10分間プリベークを行い、塗膜を形成した。その後、前記塗膜にパターンを形成するためのマスクを介在した後、露光機(HB-50110AA、ウシオ社製)にて、表1および表2に記載の量(mJ/cm)で紫外線(UV)を照射しつつ、パターン露光を行った。前記露光後、アルカリ性水溶液で80秒間現像することで不要な部分を溶解させて除去してから、超純水(DIW)で水洗して洗浄した。形成された部分は、コンベクションオーブン(convection oven)で、220℃の温度で30分間熱硬化を行うことにより、実施例1~6および比較例1~7の試験片を製作した。前記実施例1~実施例6、比較例1~比較例7の詳細な製造条件および膜厚は、下記の表1および表2に示した。上記で用いられたSY-O1410溶液は、C.I.ピグメントブルー15:6が固形分基準で13%含有されており、SY-O1533溶液は、C.I.ピグメントホワイト6顔料が固形分基準で10%、およびC.I.ピグメントブルー15:6顔料が固形分基準で5%含有されている。
【0104】
接触角の測定
前記実施例1~6および比較例1~7で製造された塗膜の接触角は、KRUSS社のDSA100製品を用いてそれぞれの溶剤の接触角を測定し、25℃の温度、40%の湿度雰囲気で測定した。それぞれの接触角は、溶剤の接触角を60s間、毎秒測定し、それぞれの接触角の平均値を表1および表2に記載した。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
ピクセル形成評価試験
下記のように製造された量子ドットインク、レッドインク、透明インクのそれぞれ異なるインクを用い、インクジェット方式により、前記実施例1~6および比較例1~7の着色感光性樹脂組成物を用いてパターン基板を製造し、ピクセルの形成を測定および評価した。その結果は下記表3に示した。
【0108】
合成例1)量子ドットインクの製造
量子ドットは、一般に、光を注入、もしくは電子を注入する際に、特定の波長の光で放出するナノサイズの粒子である。本実験に使用した量子ドット粒子は、Nanoco社製のグリーン粒子とレッド粒子を1:2の割合で投入し、ブルー光源を投入した時に、完璧に吸収されていないブルー光源と、グリーンおよびレッド光が同時に見られるように設計された。3口フラスコ(3-Neck flask)に、グリーン量子ドット粒子230mgおよびレッド量子ドット粒子460mgを入れ、BYK社のDISPERBYK-111分散剤を、固形分で計算して粒子に対して30%投入した。
【0109】
日本昭和高分子社のSPCY-1L樹脂8.3gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールジアセテート(PGDA)を8/2の割合に調節した溶媒を10g追加し、量子ドットインクを製造した。
【0110】
合成例2)レッドインクの製造
トーヨー社のRed254顔料が含まれているミルベースSC-R324製品を4.5g、日本昭和高分子社のSPCY-1L樹脂6.8g、および溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールジアセテート(PGDA)を7/3の割合で用いて12g追加し、レッドインクを製造した。
【0111】
合成例3)透明インク
DPHA(DIPENTAERYTHRITOL PENTA/HEXA ACRYLATE、日本化薬社)を3.5g、日本昭和高分子社のSPCY-1L樹脂8.3g、および溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールジアセテート(PGDA)を7/3割合で用いて12g追加し、透
明インクを製造した。
【0112】
ピクセル形成評価
前記実施例1~6および比較例1~7で製造された基板に、合成例1)~合成例3)で製造された量子ドットインク、レッドインク、透明インクのそれぞれ異なるインクを用いてインクジェット方式によりカラー層を形成してカラーピクセルを製造し、ピクセルの形成を測定および評価した。ピクセル評価基準は下記のとおりであり、その結果を下記表3に示した。
【0113】
<ピクセル形成評価基準>
◎:図1のように、ピクセルがよく形成される場合に判断
○:基板にインクが90%以上満たされるレベルに判断
△:図2のように、インクが満たされる特性が低いが、ピクセルの形成は可能である場合に判断
X:図3のように、ピクセルの形成が足りない場合に判断
【0114】
【表3】
【0115】
前記表3から確認されるように、実施例1~6は、量子ドットインク、レッドインク、透明インクの、それぞれ異なるインクを用いてインクジェット方式によりカラーピクセルを製造した際に、ピクセルの形成が何れも優れた結果を示した。これに対し、比較例1~7は、ピクセルの形成が不良であることを確認することができる。
【0116】
具体的に、比較例3および7から分かるように、DIW接触角の範囲である100°~160°およびPGMEA接触角の範囲である40°~70°を成しても、DIW接触角:PGMEA接触角=1:0.4~0.6を満たさない場合には、ピクセルの形成が容易ではなかった。また、比較例4~6から分かるように、DIW接触角に対するPGMEA接触角の割合が1:0.4~0.6の値を示しても、DIW接触角の範囲である100°~160°およびPGMEA接触角の範囲である40°~70°を満たさない場合には、ピクセルの形成が容易ではなかった。このような結果から、水(DIW)に対する接触角、PGMEAに対する接触角、および水(DIW)に対する接触角とPGMEAに対する接触角との割合が相互連関性を有し、特定の条件を満たす場合に、ピクセルが容易に形成されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の着色感光性樹脂組成物は、現像後における塗膜表面の水に対する接触角およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角が、それぞれ特定の範囲を示すとともに、それぞれの接触角の関系が、特定の関系内の値を有する場合に、撥液性に優れ、インクジェット青色以外の光に対する遮光性に優れた隔壁を実現することができる。したがって、本発明に係る着色感光性樹脂組成物は、互いに隣合う画素間におけるインクの混色を防止することが可能である。また、本発明の着色感光性樹脂
組成物は、表面不良が発生しない画素を形成することができる。さらに、上述の着色感光性樹脂組成物は、カラー素子および表示装置の製造に有用に用いられることができる。
図1
図2
図3