IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 八藤後 志保の特許一覧

特許7541556切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。
<>
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図1
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図2
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図3
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図4
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図5
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図6
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図7
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図8
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図9
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図10
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図11
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図12
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図13
  • 特許-切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/00 20180101AFI20240821BHJP
   A41H 43/00 20060101ALI20240821BHJP
   A41H 25/00 20060101ALI20240821BHJP
   D06Q 1/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A41D1/00 101A
A41H43/00 D
A41H25/00 Z
D06Q1/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022141753
(22)【出願日】2022-08-19
(65)【公開番号】P2024028069
(43)【公開日】2024-03-01
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】522354137
【氏名又は名称】八藤後 志保
(72)【発明者】
【氏名】八藤後 志保
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3104757(JP,U)
【文献】実開昭54-079808(JP,U)
【文献】実開昭52-141409(JP,U)
【文献】実開昭63-019524(JP,U)
【文献】特開平06-287848(JP,A)
【文献】特開2011-068130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D1/00
A41H43/00
A41H25/00
D06Q1/00
D04D7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の形の切り抜き模様地が、着物地に取り付けられている着物であって、
前記着物地は、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所にアタリが染色またはプリントされており、
前記切り抜き模様地は、前記染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地のアタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、
前記切り抜き模様地を、前記アタリに合せて前記着物地に取り付けることで、
前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記切り抜き模様地が取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられていることを特徴とする着物。
【請求項2】
任意の形の切り抜き模様地が、着物地に取り付けられている着物であって、
前記着物地における、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄には、該絵柄の外形と同一または相似するようにしてアタリ兼用絵柄が染色またはプリントされており、
前記切り抜き模様地は、前記染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地における前記アタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、
前記切り抜き模様地を、前記アタリ兼用絵柄に合せて前記着物地に取り付けることで、
前記切り抜き模様地は、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記着物地の前記取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられていることを特徴とする着物。
【請求項3】
前記着物地の前記取り付け想定個所の絵柄の一部としてアタリが染色またはプリントされており、
前記切り抜き模様地は、前記染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地における前記アタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、
前記切り抜き模様地を、前記アタリに合せて前記着物地に取り付けることで、
前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記切り抜き模様地が前記着物地の前記取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられていることを特徴とする前記請求項2記載の着物。
【請求項4】
前記切り抜き模様地は、前記着物地が刺繍枠に伸展して取り付けられた状態における、前記アタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、
前記切り抜き模様地を、前記アタリに合せて前記着物地に取り付けることで、
前記着物地の前記アタリが、前記刺繍枠に対する取り付けによって伸展や変形していても、前記切り抜き模様地が前記アタリから逸脱せずに取り付けられていることを特徴とする前記請求項1と請求項3に記載の着物。
【請求項5】
前記切り抜き模様地は、前記着物地が刺繍枠に伸展して取り付けられた状態における、前記アタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、
前記切り抜き模様地を、前記アタリ兼用絵柄に合せて前記着物地に取り付けることで、
前記着物地の前記アタリ兼用絵柄が、前記刺繍枠に対する取り付けによって伸展や変形していても、前記切り抜き模様地が前記アタリ兼用絵柄から逸脱せずに取り付けられていることを特徴とする前記請求項2に記載の着物。
【請求項6】
前記着物地は、着物の各構成部位を形成する裁断線に従って裁断されており、
前記各構成部位は、外側に縫い代が形成されているとともに、該縫い代の内側に仮想する縫製線を基準に縫製して着物に仕立てられるものであり、
前記切り抜き模様地の取り付け想定個所が、前記着物地における前記構成部位の隣接個所である場合、
前記アタリは、隣接する前記構成部位の縫製状態において、隣接する前記構成部位で連続するように形成されているとともに、前記仮想する縫製線から前記縫い代に延長するようにして前記着物地に染色またはプリントされており、
前記切り抜き模様地は、染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地の構成部位が隣接する個所の前記アタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、
前記切り抜き模様地における、前記構成部位の隣接する前記アタリに対する取り付けにおいて、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、
隣り合う前記切り抜き模様地の形の連続性が確保されて前記着物地に取り付けられていることを特徴とする前記請求項1と、請求項3に記載の着物。
【請求項7】
前記アタリは、前記切り抜き模様地の取り付け位置を示す線や破線、または、取り付け範囲を示す印、または、ベタ塗りされた絵柄、または濃淡を変えた絵柄のようにして、前記着物地に染色またはプリントされていることを特徴とする前記請求項1と、請求項3に記載の着物。
【請求項8】
前記切り抜き模様地は、前記着物地に縫着または、接着によって前記着物地に取り付けられていることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の着物。
【請求項9】
前記切り抜き模様地は、前記着物地に縫着によって取り付けられており、
該縫着巾の増減によって縫着模様が形成されるようにして、前記着物地に取り付けられていることを特徴とする前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の着物。
【請求項10】
前記切り抜き模様地は、起毛地としたことを特徴とする前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の着物。
【請求項11】
任意の形の切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法が、
前記着物地における、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所または前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄に、アタリまたはアタリ兼用絵柄を染色またはプリントする工程と、
染色またはプリント後の前記着物地を色止めの処理をする工程と、
前記処理工程後における前記着物地の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄を、読み取り装置で読み取る工程と、
前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄の読み撮りデータを、前記切り抜き模様地の切り抜き形成データに変換する工程と、
前記切り抜き形成データに基づいて、前記切り抜き模様地を切り抜き装置で切り抜き形成する工程と、
前記切り抜き形成された前記切り抜き模様地を、前記着物地における取り付け想定個所または取り付けを想定する絵柄に取り付ける工程と、
よりなり、前記切り抜き模様地の前記着物地に対する取り付けにおいて、前記着物地が前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄を染色またはプリントする工程において収縮や変形していても、前記切り抜き模様地が取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄と逸脱せずに取り付けされるようにしたことを特徴とする、切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。
【請求項12】
任意の形の切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法が、
前記着物地における、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所または前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄に、アタリまたはアタリ兼用絵柄を染色またはプリントする工程と、
染色またはプリント後の前記着物地を色止めの処理をする工程と、
前記処理後の着物地を刺繍枠に取り付ける工程と、
前記刺繍枠に取り付けられた前記着物地の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄を、読み取り装置で読み取る工程と、
前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄の読み撮りデータを、前記切り抜き模様地の切り抜き形成データに変換する工程と、
前記切り抜き形成データに基づいて、前記切り抜き模様地を切り抜き装置で切り抜き形成する工程と、
前記切り抜き形成された前記切り抜き模様地を、前記刺繍枠に取り付けられている前記着物地における前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄に合わせて仮止めする工程と、
前記着物地に仮止めされている前記切り抜き模様地を、前記着物地の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄に合わせて縫着する工程と、
よりなり、前記切り抜き模様地が前記刺繍枠に対する取り付けによって伸展していても、前記切り抜き模様地が取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄と逸脱せずに取り付けされるようにしたことを特徴とする、切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、任意の形で切り抜かれた切り抜き模様地が取り付けられている着物と、この切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着物は、絹糸またはポリエステル等の化学繊維の着物地に、染色(手描や型染めなど)またはプリント(インクジェットプリントや転写など)によって柄付けする工程と、この着物地を着物の各構成部位を構成する裁断線に従って裁断する工程と、裁断された着物地の各構成部位を縫製する仕立て工程とを経て出来上がる。
一方、着物地もしくは着物地とは別な他の生地または、合成シートや皮革などを任意の形に切り抜いて、この切り抜き模様地を着物地に取り付けるような新たな美的表現を付加することで着物の価値を高めることができる。
また、前記切り抜き模様地を、着物地の絵柄と意匠的に整合性があるようにすることで、尚一層の美的効果が発揮される。
而して、前記切り抜き模様地の着物地への取り付けにおいて、切り抜き模様地の取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられること、また、切り抜き模様地の取り付け想定個所に絵柄が形成されている場合は、絵柄と逸脱せずに取り付けられること、また、着物地が刺繍枠に取り付けられた状態で切り抜き模様地が縫着される場合においても、絵柄から逸脱せずに取り付けられることで、切り抜き模様地の取り付けによる付加価値および美的効果が始めて発揮される。
また、着物地は各構成部位ごとに裁断されて、これらを繋ぎ合せて縫製して着物に仕立てられるが、当該構成部位が隣接する個所に切り抜き模様地が取り付けられる場合、切り抜き模様地の模様の連続性が確保されるようにして取り付けられることで、同様に美的効果が発揮される。
この発明は上記に鑑みてなされたもので、上記の従来問題点を解決することを目的としている。
前述に関連する文献としては、以下の特許文献1と、特許文献2と、特許文献3とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-287848号
【文献】特開2011-68130号
【文献】特許第3734873号
前記[特許文献1]は、前述の観点でなされたもので、カラー複写機により所望の図案を生地に転写して切離し、この転写図案生地を着物の所定位置に重合状態で縫着した、飾り着物の製造方法を示している。
また、[特許文献2]は、裏面に粘着材を備えた基材であって、織物シール、織物シート、シールまたは接着性のシート及びその製造方法を示している。
また、[特許文献3]は、着物などの模様地および模様地のプリント方法であり、模様地が隣接する個所を縫製したときに、各単位模様が一致するように、各単位模様が、模様地の端辺から内側に所定の巾で模様が互いに対称に形成するようにして、隣接する模様地を縫製したときに、各単位模様が一致するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決する課題】
【0004】
前記[特許文献1]の転写図案生地は、紙等に描画した図案をコピーして作成され、この転写図案生地を着物に縫着して着物の価値を高めるようにしている。
一方、着物の美的表現手段として別素材の切り抜き模様地を取り付けるにあたり、コンピュータ画像処理システムによって、ディスプレイ画面上に絵柄の画像データを作成し、次いでこの画像データを切り抜き形成データに変換し、コンピュータに接続しているNCカッター装置等で、前記切り抜き形成データに基づいて切り抜き模様地を作成する手法が一般的である。
然しながら、着物地は、図柄や模様が染色またはプリントされた後に、色止めや発色のための蒸し工程と、染料やインク以外の不純物や汚れを除去する洗い工程、そして乾燥の工程を経て製品化されるので、当該処理工程で全体的に収縮し、また、この収縮率は縦糸方向と横糸方向の着物地の向きや材質によって異なる。
一方、前記切り抜き模様地は、着物地に対する取り付け位置を事前に想定して形成されるものであり、この取り付け位置が着物地の無地の個所で想定されている時は、着物地の各構成部位(下記に詳述)において、切り抜き模様地の取り付け位置を目検討で決めるようにしていると、着物の各構成部位における収縮の影響で、着物に仕立てた後に、想定した取り付け位置からズレて想定した美的効果が逆に損なわれたり、商品の統一性が損なわれたりすることが多い。
【0005】
また、着物地の各構成部位が刺繍枠に取り付けられた状態で、切り抜き模様地が縫着される場合は、着物地が伸展されて刺繍枠に取り付けられることと、着物地の縦糸方向と横糸方向の伸び率が異なって着物地の模様や絵柄が変形するので、前記のズレは一層顕著に現れる。
【0006】
また、[特許2]のように、切り抜き模様地がシールやシートであって、この裏面に粘着材が設けられていて着物地に貼着して取り付けられる場合、着物地が伸縮していると取り付け想定個所に的確に取り付けられない。
また、シールの材質や厚みが着物地と同質のものであると、着物地に取り付けられても際立った対比効果が少ない。
従って、切り抜き模様地は材質の厚みや肌合い、または光反射などが着物地と相違して対比効果が顕著な材質とすることが望ましい。
【0007】
また、[特許3]の着物生地は、着物の各構成部位ごとに裁断されて、これを繋ぎ合せて縫製して着物に仕立てられるが、一方、この各構成部位の隣接する個所の模様に切り抜き模様地が取り付けられる場合、着物地が前記処理工程よる収縮によって隣接する模様がズレたり変形することで、切り抜き模様地の外形が連続しないので、想定していた美的効果が逆に大きく損なわれることになる。
また、着物地の各構成部位が隣接する個所に切り抜き模様地を縫着するにあたり、隣接する個所で裁断されていると、裁断部からほつれが生じる恐れがあり、その一方、裁断部をかがり縫いや刺繍等で縫着すると、切り抜き模様地の形の連続性が損なわれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明の切抜き模様地が取り付けられている着物、および切抜き模様地を着物地に取り付けする方法は、任意の形の切り抜き模様地が、着物地に取り付けられている着物であって、前記着物地は、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所にアタリが染色またはプリントされており、前記切り抜き模様地は、前記染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地のアタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、前記切り抜き模様地を、前記アタリに合せて前記着物地に取り付けることで、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記切り抜き模様地が取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられるようにした。
【0009】
任意の形の切り抜き模様地が、着物地に取り付けられている着物であって、前記着物地における、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄には、該絵柄の外形と同一または相似するようにしてアタリ兼用絵柄が染色またはプリントされており、前記切り抜き模様地は、前記染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地における前記アタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、前記切り抜き模様地を、前記アタリ兼用絵柄に合せて前記着物地に取り付けることで、前記切り抜き模様地は、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記着物地の前記取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられるようにした。
【0010】
また、前記着物地の前記取り付け想定個所の絵柄の一部としてアタリが染色またはプリントされており、前記切り抜き模様地は、前記染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地における前記アタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、前記切り抜き模様地を、前記アタリに合せて前記着物地に取り付けることで、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記切り抜き模様地が前記着物地の前記取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けられているようにした。
【0011】
また、前記切り抜き模様地は、前記着物地が刺繍枠に伸展して取り付けられた状態における、前記アタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、前記切り抜き模様地を、前記アタリに合せて前記着物地に取り付けることで、前記着物地の前記アタリが、前記刺繍枠に対する取り付けによって伸展や変形していても、前記切り抜き模様地が前記アタリから逸脱せずに取り付けられるようにした。
また、前記切り抜き模様地は、前記着物地が刺繍枠に伸展して取り付けられた状態における、前記アタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、前記切り抜き模様地を、前記アタリ兼用絵柄に合せて前記着物地に取り付けることで、前記着物地の前記アタリ兼用絵柄が、前記刺繍枠に対する取り付けによって伸展や変形していても、前記切り抜き模様地が前記アタリ兼用絵柄から逸脱せずに取り付けられているようにした。
【0012】
また、前記着物地は、着物の各構成部位を形成する裁断線に従って裁断されており、前記各構成部位は、外側に縫い代が形成されているとともに、該縫い代の内側に仮想する縫製線を基準に縫製して着物に仕立てられるものであり、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所が、前記着物地における前記構成部位の隣接個所である場合、前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄は、隣接する前記構成部位の縫製状態において、隣接する前記構成部位で連続するように形成されているとともに、前記仮想する縫製線から前記縫い代に延長するようにして前記着物地に染色またはプリントされており、前記切り抜き模様地は、染色またはプリント後の色止めの処理工程を終えた前記着物地の構成部位が隣接する個所の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されており、前記切り抜き模様地における、前記構成部位の隣接する前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄に対する取り付けにおいて、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、隣り合う前記切り抜き模様地の形の連続性が確保されて前記着物地に取り付けられているようにした。
【0013】
また、前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄は、前記切り抜き模様地の取り付け位置を示す線や破線、または、取り付け範囲を示す印、または、ベタ塗りされた絵柄、または濃淡を変えた絵柄のようにして、前記着物地に染色またはプリントされているようにした。
また、前記切り抜き模様地は、前記着物地に縫着または、接着によって前記着物地に取り付けられているようにした。
また、前記切り抜き模様地は、前記着物地に縫着によって取り付けられており、該縫着巾の増減によって縫着模様が形成されるようにして、前記着物地に取り付けられているようにした。
また、前記切り抜き模様地は、起毛地とした。
【0014】
また、任意の形の切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法が、前記着物地における、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所または前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄に、アタリまたはアタリ兼用絵柄を染色またはプリントする工程と染色またはプリント後の前記着物地を色止めの処理をする工程と前記処理工程後における前記着物地の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄を、コンピュータに接続した読み取り装置で読み取る工程と前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄の読み撮りデータを、前記切り抜き模様地の切り抜き形成データに変換する工程と前記切り抜き形成データに基づいて、前記切り抜き模様地をコンピュータに接続した切り抜き装置で切り抜き形成する工程と前記切り抜き形成された前記切り抜き模様地を、前記着物地における取り付け想定個所または取り付けを想定する絵柄に取り付ける工程とよりなり、前記切り抜き模様地の前記着物地に対する取り付けにおいて、前記着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、前記切り抜き模様地が取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄とズレたり逸脱せずに取り付けされるようにした。
【0015】
また、任意の形の切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法が、前記着物地における、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所または前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄に、アタリまたはアタリ兼用絵柄を染色またはプリントする工程と染色またはプリント後の前記着物地を色止め等の処理をする工程と前記処理後の着物地を刺繍枠に取り付ける工程と前記刺繍枠に取り付けられた前記着物地の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄を、コンピュータに接続した読み取り装置で読み取る工程と前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄の読み撮りデータを、前記切り抜き模様地の切り抜き形成データに変換する工程と前記切り抜き形成データに基づいて、前記切り抜き模様地をコンピュータに接続した切り抜き装置で切り抜き形成する工程と前記切り抜き形成された前記切り抜き模様地を、前記刺繍枠に取り付けられている前記着物地における前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄に合わせて仮止めする工程と前記着物地に仮止めされている前記切り抜き模様地を、前記着物地の前記アタリまたは前記アタリ兼用絵柄に合わせて縫着する工程と、よりなり、前記切り抜き模様地の前記着物地に対する取り付けにおける、前記刺繍枠への取り付けによって前記切り抜き模様地が取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄とズレたり逸脱せずに取り付けされるようにした。
【発明の効果】
【0016】
この発明の切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法は、
前記切り抜き模様地が、着物地における染色またはプリント後の色止め等の処理工程を終えた前記着物地のアタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されているので、着物が前記処理工程において収縮や変形していても、切り抜き模様地が、着物地の取り付け想定個所からズレたり逸脱せずに取り付けられる。
【0017】
また、前記切り抜き模様地の取り付け想定個所の絵柄と、略同一または相似するようにしてアタリ兼用絵柄が染色またはプリントされているので、他の絵柄と識別でき、特に絵柄が小紋柄の場合は他の絵柄と混同せずに切り抜き模様地が着物地に取り付けることができる。
また、切り抜き模様地が、色止め等の処理工程後の着物地におけるアタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されているので、着物地が前記処理工程において収縮や変形していても、着物地の取り付け想定個所の絵柄からズレたり逸脱せずに取り付けられる。
また、切り抜き模様地は、他の絵柄と同じ大きさで形成されているので、特に小紋柄の場合に他の絵柄と調和状態で着物地に取り付けられる。
【0018】
また、前記着物地の絵柄の一部としてアタリが染色またはプリントされている場合、前記切り抜き模様地は、前記着物地の前記アタリの読み撮り画像に基づいて切り抜き形成されているので、前記着物地が染色またはプリント加工において収縮変形していても、切り抜き模様地が、取り付け想定個所の絵柄からズレたり逸脱せずに取り付けられる。
【0019】
また、前記着物地が刺繍枠に伸展して取り付けられた状態で切り抜き模様地が縫着される場合、着物地が刺繍枠に取り付けられた状態のアタリまたはアタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて、切り抜き模様地が切り抜き形成されているので、着物地が刺繍枠に対する取り付けによって伸展変形していても、着物地における取り付け想定個所または、取り付け想定個所の絵柄からズレたり逸脱せずに取り付けられる。
【0020】
また、前記着物地における、切り抜き模様地の取り付け想定個所が、着物地の構成部位の隣接個所である場合、アタリまたはアタリ兼用絵柄が、隣接する構成部位の縫製状態において、隣接する構成部位で連続するとともに、仮想する縫製線から縫い代に延長するようにして着物地に染色またはプリントされており、また、切り抜き模様地は、隣接するアタリまたはアタリ兼用絵柄の読み撮り画像に基づいて、切り抜き形成されるので、隣り合う切り抜き模様地は、形の連続性が確保されて着物地に取り付けられる。
また、切り抜き模様地は、構成部位の隣接個所でほつれが生じることがない。
また、アタリまたはアタリ兼用絵柄は、切り抜き模様地の取り付け位置を示す線や破線、または、取り付け範囲を示す印、または、ベタ塗りされた絵柄、または濃淡を変えた絵柄のようにして、着物地に染色またはプリントしたので、切り抜き模様地が着物地の取り付け想定個所からズレたり逸脱しない。
また、切り抜き模様地は、前記着物地に縫着または、接着によって前記着物地に取り付けられているようにしたので、切り抜き模様地の材質によって取り付け手段を選択することで、切り抜き模様地を着物地に確実に取り付けできる。
【0021】
また、切り抜き模様地を着物地に縫着する場合、縫着巾を増減することで、多様な縫着模様を形成することができ、切り抜き模様地の取り付けにおいて着物の価値を高めることができる。
また、切り抜き模様地を起毛地としたので、肌合いや厚み、または、光反射などが着物地と相違しこの比較効果によって、切り抜き模様地の取り付けにおいて着物の価値が高められる。
【0022】
また、任意の形の切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法が、着物地の色止め等の処理工程後のアタリまたはアタリ兼用絵柄を読み取り、この読み撮りデータを切り抜き模様地の切り抜き形成データに変換し、この切り抜き形成データに基づいて切り抜き模様地を形成して、この切り抜き模様地を着物地着物地の取り付け想定個所または取り付けを想定する絵柄に取り付ける工程よりなるので、着物地が処理工程において収縮や変形していても、切り抜き模様地が取り付け想定個所および、取り付け想定個所の絵柄とズレたり逸脱せずに取り付けされる。
【0023】
また、任意の形の切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法が、着物地の色止め等の処理工程後のアタリまたはアタリ兼用絵柄を読み取り、この読み撮りデータを切り抜き模様地の切り抜き形成データに変換し、この切り抜き形成データに基づいて切り抜き模様地を形成して、この切り抜き模様地を、刺繍枠に取り付けられている着物地のアタリまたはアタリ兼用絵柄に合わせて仮止めして、個の切り抜き模様地の取り付け想定個所または取り付けを想定する絵柄に縫着する工程よりなるので、着物地が処理工程において収縮や変形していても、切り抜き模様地が、取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄とズレたり逸脱せず、また着物地が刺繍枠に対する取り付けによって伸展していても、取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄とズレたり逸脱せずに縫着される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】切り抜き模様地が取り付けられている着物の正面図。
図2】切り抜き模様地が取り付けられている着物の背面図。
図3】(a)反物としての着物地を示す。(b)着物地の各構成部位のうち、右身頃を示す。
図4】(a)アタリが面状に形成されている着物地を示す。(b)アタリが線状に形成されている着物地を示す。(c)アタリが破線状に形成されている着物地を示す。(b)アタリが印状に形成されている着物地を示す。(e)アタリ兼用絵柄が形成されている着物地を示す。
図5】(a)切り抜き模様地を示す。(b)アタリより縮小されている切り抜き模様地を示す。(c)着物地における、隣接する右の構成部位に縫着される切り抜き模様地を示す。(d)着物地における、隣接する左の構成部位に縫着される切り抜き模様地を示す。(e)アタリ兼用絵柄に取り付けられる切り抜き抜き模様地を示す。
図6】(a)着物地に縫着されている切り抜き模様地を示す。(b)着物地の各構成部位のうち、隣接する構成部位に縫着されている切り抜き模様地を示す。(c)着物地に接着によって取り付けられている切り抜き模様地を示す。(d)着物地の各構成部位のうち、隣接する構成部位に接着によって取り付けられている切り抜き模様地を示す。(e)上記(a)の着物地が刺繍枠に取り付けられた状態を示す斜視図。
図7】(a)切り抜き模様地が、接着シートを介在して着物地に取り付けられる状態を示す分解図。(b)切り抜き模様地が、着物地に接着して取り付けられる状態を示す分解図。
図8】切り抜き模様地が、刺繍で着物地に縫着されている状態を示す。
図9】(a)図6(a)のA-A線に沿う断面図。(b)図6(c)のC-C線に沿う断面図。
図10】(a)着物地における、隣接する左の構成部位に取り付けられている切り抜き模様地を示す。(b)着物地における、隣接する右の構成部位に取り付けられている切り抜き模様地を示す。
図11】(a)着物地における、隣接する左右の構成部位が縫製された時の、切り抜き起き模様地の取り付け状態を示す。(b)上記(a)の着物地が刺繍枠に取り付けられた状態を示す斜視図。
図12】(a)図11のB-B線に沿う断面図。(b)図11の切り抜き模様地が、接着によって着物地に取り付けられている状態を示す断面図。
図13】切り抜き模様地を、着物地に取り付ける工程のフローチャート。
図14】切り抜き模様地を、着物地に取り付ける工程のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明は、切り抜き模様地が取り付けられている着物、および切り抜き模様地を着物地に取り付けする方法に関し、以下、図1図14を参照してこの発明を説明する。
【0026】
着物1は、絹糸またはポリエステル糸などの、天然繊維または化学繊維よりなる着物地2で構成されており、この着物地2には絵柄3が染色またはプリントで形成されている。
図1は、着物1の正面の一例を示し、この着物地2には絵柄3が長尺方向に間隔的に連続して形成されている。
前記絵柄3は小紋柄を例示し、一方、図2は、着物1の背面の一例を示し、この絵柄3は非連続の絵羽柄を例示している。
また、この発明の着物1は、全体意匠の要部に切り抜き模様地4が取り付けられている。
【0027】
着物1は、図3(a)で示したように長尺な反物5よりなり、この反物5は、着物1の各構成部位6が印や線で区画されており、この各構成部位6は、右身頃6a、左身頃6b、右袖6c、左袖6d、右おくみ6e、左おくみ6f、本衿6g、掛け衿6hとで構成され、また、各構成部位6には絵柄3が形成されており、裁断線7に従って裁断される。
図3(b)は、各構成部位6のうちの左身頃6bの詳細を示し、この左身頃6bは、外側に縫い代8が形成されており、図1および図2のように、各構成部位6を所定の配置にした状態で、縫い代8の内側に仮想する縫製線9を規準として縫製して着物1に仕立てられる。
また、仮想する縫製線9は、左身頃6bの四隅の印(フ)を規準として着物地2に筋付けなどで形成されており、また、仮想線10は着物1の肩山11を示している。
また、(b)では各構成部位6の隣接個所に絵柄3が形成されているが、この実施例では隣接する構成部位6の縫製状態において、絵柄3が連続するように、仮想する縫製線9から裁断線7にまで延長して形成されている。
着物地2の絵柄3のうち切り抜き模様地4の取り付け想定個所の絵柄3には、アタリ兼用絵柄13が染色またはがプリントされている。
また、前記実施例のように構成部位6の隣接個所に形成されるアタリ兼用絵柄13は、前記絵柄3と同様に、隣接する構成部位6の縫製状態において、アタリ絵柄13が連続するように、仮想する縫製線9から裁断線7にまで延長して形成されている。
前記アタリ兼用絵柄3は、前述のように特に絵柄3のうち切り抜き模様地4の取り付け想定個所の絵柄3について、絵柄3の外形や内形と略同一にして絵柄3と兼用して形成されるものであり、着物地の2における切り抜き模様地4の他の取り付け想定個所が無地であったり、図2のように絵羽柄3aの場合は、切り抜き抜き模様地4の外形や内形と略同一のアタリ12が形成される。
【0028】
図4は、アタリ12またはアタリ兼用絵柄の一例を示し、(b)、(c)は切り抜き模様地4の取り付け位置を示す線や破線、(d)は取り付け範囲を示す印、(a)はベタ塗りされた絵柄3、または濃淡を変えた絵柄3または、外径や内形が絵柄3と相似するようにして、前記着物地2に染色またはプリントされている。
絵柄3およびアタリ12、アタリ兼用絵柄13は、コンピュータ画像処理システムによって、ディスプレイ画面上で描画し、この絵柄3またはアタリ12、アタリ兼用絵柄13を、図1または図2の着物1の各構成部位6の外形線の画像に基づいて配置し、次いで、各構成部位6に分解した後に、図3のように反物5に配置して染色またはプリント画像データを作成する。
前記画像データによって、捺染の型や転写紙を作成して着物地2に染色、または、インクジェットプリンターで着物地2にプリントし、次いで、各構成部位6に裁断した着物地2を縫着して着物1が仕立てられる。
【0029】
また、着物地2に切り抜き模様地4が取り付けられた着物1を提供するにあたり、切り抜き模様地4は、図1および図2で示したように、着物1が仕立てられた時に最も美的効果が発揮できる個所に、経済合理性も考慮して取り付けられる。
また、着物地2における切り抜き模様地4の取り付け個所は、事前に想定されるものであり、この取り付け想定個所に前記アタリ12またはアタリ兼用絵柄13が形成されているので、着物地2における、切り抜き模様地4の取り付け想定個所が無地であっても、切り抜き模様地4が取り付け想定個所から逸脱せずに取り付けることができる。
また、着物地2が、一定のパターンで連続する小紋柄であって、前記切り抜き模様地4がいずれかの絵柄3に取り付けされる場合、アタリ兼用絵柄13を形成することで切り抜き模様地4の取り付け位置が他の絵柄3と識別できる。
【0030】
前記切り抜き模様地4は、着物地2と同じ、または、異なる素材であり、天然繊維、合成繊維、合成シール、合成皮革、天然皮革等が利用でき、または、着物地2との対比効果を考慮して立体的な起毛地4aでもあり、ベルヘット、フェルト、フロッキング加工生地および、シート状のシール4b、または金属箔である。
また、前記切り抜き模様地4は、着物地2のアタリ12、または、アタリ兼用絵柄13に合わせて取り付けられるので、コンピュータによる切り抜き形成データの作成は、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13の画像の外形もしくは内径を、切り抜き形成データに変換して、この切り抜き形成データを、コンピュータに接続しているNCカッター装置等で着物地2を切り抜き形成して製作できる。
【0031】
而して、前述のように着物地2は、染色またはプリント加工後の、蒸し工程や洗い工程及び乾燥等の処理工程で収縮し、例えば反物の平均長さ11.4mに対して3cm~5cm程度、巾36cmに対して2~3cm程度収縮し(素材や処理加減で増減がある)また、乾燥後に引張って補正されるにしても相対的に収縮するので、アタリ12もしくはアタリ兼用絵柄13は収縮及び変形する。
従って、切り抜き模様地4が、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13の画像データに基づいて切り抜き形成されていると、前述の着物地2のアタリ12またはアタリ兼用絵柄13に取り付けられる時に、図6の(a)に2点鎖線で示したように、アタリ12またはアタリ兼用絵柄14が縮小しているので切り抜き模様地4が偏った位置に取り付けられたり、また、図6(c)に示したようにアタリ12またはアタリ兼用絵柄13が変形していると、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13が切り抜き模様地4の外形からはみ出したりする。
前記のように、切り抜き模様地4が取り付け想定個所の絵柄3に取り付けられる時に、他の絵柄3より大きいために他の絵柄3と違和感が生じ、一方、切り抜き模様地4の取り付け位置が偏っていても他の絵柄3とのバランスが損なわれる。
また、図4(e)で示したように絵柄3が、花柄等の複雑形状の時は、アタリ兼用絵柄13は絵柄3の外形線と内部を区画した内径線とで形成され、切り抜き模様地4は前記区画された範囲に合わせて取り付けられる、
前記図4(e)のように、前記切り抜き模様地4が複数の組み合わせであると、アタリ兼用絵柄13とのズレや逸脱が一層顕在化する。
【0032】
また、図3(b)のように着物地2の各構成部位6が隣接する個所にアタリ12、または、アタリ兼用絵柄13が形成されている場合、隣接するアタリ12またはアタリ兼用絵柄13を相対した時に連続するように形成したとしても、着物地2の収縮が素材や処理の程度で異なり、さらに反物5の端部や中央部でも異なるので、隣接する縫製線7を相対して縫製されると、隣接するアタリ3またはアタリ兼用絵柄13相互にズレが生じる。
【0033】
また、図6(e)、図11(b)に示すように、着物地2を刺繍枠15、16に取り付けて、切り抜き模様地4をコンピュータミシン等で縫製および刺繍する場合、着物地2自体が引っ張られて取り付けられるので、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13が伸展および変形する。
上述のように切り抜き模様地4が、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13とズレたり逸脱して着物地2に取り付けられていると、切り抜き模様地4を取り付けることで、着物1の美的効果および価値を高めるという本来の目的が達成されない。
【0034】
この発明は、前記切り抜き模様地4が、着物地2の取り付け想定個所または取り付け想定個所の絵柄3とズレたり逸脱しないように取り付けられるようにしたものであり、着物地2が染色またはプリント後の色止めなどの処理工程を終えた状態で、当該アタリ12またはアタリ兼用図柄13を読み取り、この読み取りデータを切り抜き形成データに変換して、この切り抜き形成データによって切り抜き模様地4を形成するようにした。
また、前記処理工程を終えた後の着物地2に、切り抜き模様地4を縫着する場合は、着物地2が刺繍枠15、16に取り付けられた状態で、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13を読み取って、この読み取りデータを切り抜き形成データに変換して、この切り抜き形成データによって切り抜き模様地4を形成するようにした。
前記読み取り手段は、固定スキャナもしくはハンドスキャナもしくはコピー機などのスキャニングやコピー手段、またはスマホやカメラによる撮影手段であり、これらの読み取り手段をコンピュータに接続して、ディスプレイの画面上で前記読み取りデータを切り抜き形成データに変換して、コンピュータに接続したNCカッター装置等の切抜き形成装置で、切り抜き模様4を形成する。
【0035】
図5は、色止め等の前記処理工程後の着物地2の読み取りデータに基づいて切り抜き形成された切り抜き模様地4を示し、(a)はアタリ12またはアタリ絵柄13の外形と一致するようにした例、(b)は切り抜き模様地4をアタリ12またはアタリ兼用絵柄13より小さくして、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13の内側を目途にして切り抜き模様地4が取り付け易くした例を示し、(c)、(b)は各構成部位6の隣接個所に取り付けられる切り抜き模様地4を示し、この切り抜き模様地4は、前記アタリ12またはアタリ兼用絵柄13と同様に、仮想する縫製線9から外側に延長して形成され、また(e)はアタリ12またはアタリ兼用絵柄13の外形線と内形線で区画された個所に取り付けられる切り抜き模様地4を示している。
【0036】
図6は着物地2に取り付けられている切り抜き模様地4を示し、図6(a)および図9(a)は、糸17で縫着されている例を示し、図6(b)は着物地2の構成部位が隣接する個所に縫着されている例を示し、図6(c)および図9(b)は、切り抜き模様地4がシール4bであって接着されている例を示し、図6(d)は、切り抜き模様地4がシール4bであって、着物地2の構成部位が隣接する個所に接着されている例を示している。
図7(a)は、着物地2に切り抜き模り様地4を縫着する場合に、切り抜き模様地4を仮止めして縫製するために、接着シール18を介在してアイロンなどで加圧および加熱して仮止めする例を示し、(b)は切り抜き模様地4が起毛地4aまたはシール4bであって、起毛地4aの場合は裏側に少量の糊等の接着剤を付けて仮止めする例を示し、切り抜き模様地4がシール4bの場合は裏側接着層が形成されていて、剥離紙を剥いで接着する例を示している。
【0037】
図8は着物地2に切り抜き模様地4が刺繍で縫着されている例を示し、設定したプログラムでコンピュータミシン等によって刺繍の縫い巾を増減することで、切り抜き模様地4に刺繍模様を付加して取り付けることができる。
【0038】
図10図11図12は、着物地2の各構成部位が隣接する個所に切り抜き模様地4が縫着されている例を示し、図10(a)、(b)は、切り抜き模様地4がアタリ12またはアタリ兼用絵柄13と同様にして、仮想する縫製線9から外側に延長している状態で縫着されているので、図(11)、(a)および図12(a)のように着物地2が仕立てられた時に、隣接個所で切断されずに縫製されるので隣接個所が毛羽立ったりほつれることがなく、また、隣接個所の起毛地4aは起毛を押し潰して縫製できるので、切り抜き模様地4と着物地2との接合個所に隙間が生じることはない。
図12(b)は、切り抜き模様地4がシール4bの場合を示し、前記同様にシール4bが隣接個所で剥がれたり立ち上がったりすることがない。
【0039】
前記切り抜き模様地4を着物地2に取り付けする方法を図13および図14に示している。
図13は、STEP1、着物地における、前記切り抜き模様地4の取り付け想定個所または前記切り抜き模様地4の取り付け想定個所の絵柄3に、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13を染色またはプリントする工程。
STEP2、染色またはプリント後の着物地2を色止め等の処理をする工程。
STEP3、処理工程後における着物地2のアタリ12またはアタリ兼用絵柄13を、コンピュータに接続した読み取り装置で読み取る工程。
STEP4、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13の読み撮りデータを、切り抜き模様地4の切り抜き形成データに変換する工程。
STEP5、切り抜き模様地4を、切り抜き形成データに基づいてコンピュータに接続した切り抜き装置で切り抜き加工する工程。
STEP6、切り抜きされた切抜き模様地4を、着物地2における取り付け想定個所または取り付け想定絵柄に取り付けする工程。
以上の方法によって着物地2に切り抜き模様地4を、取り付け想定個所または取り付け想定個所の絵柄3とズレたり逸脱せずに取り付けることができる。
【0040】
図14は、STEP1、着物地2における、切り抜き模様地4の取り付け想定個所または切り抜き模様地4の取り付け想定個所の絵柄3に、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13を染色またはプリントする工程。
STEP2、染色またはプリント後の着物地2を色止め等の処理をする工程。
STEP3、処理工程後における着物地2のアタリ12またはアタリ兼用絵柄13の形成個所を、刺繍枠15、16に伸展して取り付ける工程。
STEP4、刺繍枠15、16に取り付けられている着物地2のアタリ12またはアタリ兼用絵柄13を、コンピュータに接続した読み取り装置で読み取る工程。
STEP5、アタリ12またはアタリ兼用絵柄13の読み撮りデータを、切り抜き模様地4を切り抜き形成データに変換する工程。
STEP6、切り抜き形成データに基づいてコンピュータに接続した切り抜き装置で、切り抜き模様地4を切り抜き形成する工程。
STEP7、切り抜き形成された切り抜き模様地4を、刺繍枠15、16に取り付けられている着物地2におけるアタリ12またはアタリ兼用絵柄13に合わせて仮止めする工程。
STEP8、着物地2に仮止めされている切抜き模様地4を、着物地2に縫着する工程。
以上の方法によって、切り抜き模様地4を、着物地2における、取り付け想定個所および取り付け想定個所の絵柄3とズレたり逸脱せずに取付けることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・・着物
2・・・着物地
3・・・絵柄
4・・・切り抜き模様地
4a・・・起毛地
4b・・・シール
5・・・反物
6・・・構成部位
7・・・裁断線
8・・・縫い代
9・・・縫製線
12・・・アタリ
13・・・アタリ兼用絵柄
15、16・・・刺繍枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14