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特許7541579デンプンフィルム形成用組成物およびそれを使用したカプセルシェルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】デンプンフィルム形成用組成物およびそれを使用したカプセルシェルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240821BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240821BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240821BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K9/48
A23L5/00 B
A23L29/219
A23L5/00 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022533233
(86)(22)【出願日】2021-12-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021142077
(87)【国際公開番号】W WO2022143667
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】202011619863.9
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522072334
【氏名又は名称】仙楽健康科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】李緒発
(72)【発明者】
【氏名】陳瓊
(72)【発明者】
【氏名】楊旭騰
(72)【発明者】
【氏名】陳潔偉
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-281687(JP,A)
【文献】特開2009-040716(JP,A)
【文献】特表2002-517568(JP,A)
【文献】特開2016-199737(JP,A)
【文献】特開2007-153889(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0151243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A、第1のゲル化剤および
B、デンプン
を含む、デンプンフィルム形成用組成物であって、
前記の第1のゲル化剤は単一ゲル化温度を有するジェランガムであり、その総アシル含有量は14%-34%であり、前記の単一ゲル化温度を有するジェランガムとデンプンとの重量比は0.02~0.16であり、ジェランガムの総アシルにおいて、グリセロイル含有量が12%-26%であり、およびアセチル含有量が2%-8%である、デンプンフィルム形成用組成物。
【請求項2】
デンプンの含有量が15wt%-50wt%である、請求項1に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項3】
ジェランガムの含有量が1wt%-8wt%であり、好ましくは、ジェランガム含有量が2wt%-7wt%である、請求項1に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項4】
前記のデンプンが天然デンプンであり、前記の天然デンプンが、小麦デンプン、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびタピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項1~のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項5】
前記のデンプンがデンプン誘導体であり、前記のデンプン誘導体が、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、スターチオクテニルコハク酸ナトリウム、アセチル化ジスターチホスフェート、およびデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項1~のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項6】
該デンプンフィルム形成用組成物が可塑剤をさらに含み、前記の可塑剤の含有量が10wt%-35wt%であり、好ましくは、前記の可塑剤が、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは複数である、請求項1に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項7】
該デンプンフィルム形成用組成物が第2のゲル化剤をさらに含み、好ましくは、前記の第2のゲル化剤が、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、およびプルランからなる群から選択される1つまたは複数であり;好ましくは、前記の第2のゲル化剤含有量が0.2wt%-3.5wt%であり、好ましくは、前記のペクチンが、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、およびアミド化ペクチンからなる群から選択される1つまたは複数であり;好ましくは、低メトキシペクチンがDE<50%のエステル化度を有し、アミド化ペクチンがDA 5%-25%のアミド化度を有する、請求項1に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項8】
35wt%-60wt%の水をさらに含む、請求項1に記載のデンプンフィルム形成用組成物。
【請求項9】
1)A)まず、第1のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;
2)カプセル化すること;および
3)乾燥させること
を含む、請求項に記載のデンプンフィルム形成用組成物を使用したカプセルシェルの製造方法。
【請求項10】
前記のA)が、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み;前記のA)が、第1のゲル化剤、第2のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである、請求項に記載のカプセルシェルの製造方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物を含む、カプセルシェル。
【請求項12】
該カプセルシェルの含水量が8-25%である、請求項11に記載のカプセルシェル。
【請求項13】
医薬品、食品または化粧品における、請求項1~のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用組成物分野に関し、具体的に、デンプンフィルム形成用組成物、それを使用したカプセルシェルの製造方法、および製造されたカプセルシェルに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトカプセルは、医薬品、食品、化粧品などの分野で広く使用されている。ゼラチンは、優れた皮膜形成性および機械的強度を備えているため、ソフトカプセルの伝統的な材料として広く使用されている。しかしながら、ゼラチンは、その自体の特性のため、使用中の品質に関して多くの欠点を示す。例えば、ゼラチン分子は、自己酸化されるか、またはアルデヒド基などの官能基と架橋反応を起こすことで、ゼラチンソフトカプセルの表面に強靱で弾性のある水不溶性フィルムを形成し、薬物の放出を遮断し、ソフトカプセルの崩壊不良になる。さらに、宗教や菜食主義者に加えて、世界中で狂牛病や口蹄疫などの事件が相次いでいるため、ゼラチンの代替品とその製造に関する研究が試みられている。
【0003】
例えば、中国特許第CN100528950C号では、a.高アシルジェランガム、b.低アシルジェランガム、c.デンプン、およびd.可塑剤を含む異なるアシルジェランガムとデンプンとの混合物が提案されている。このような混合物で製造されたフィルムは、高い弾性率および優れた強度と伸びを有し、また、作成されたソフトカプセルは、良好な密封性を有する。複合ゲル化剤としての高アシルジェランガムおよび低アシルジェランガムは、皮膜の強度および靭性をある程度改善することができるが、作成されたソフトカプセルは透明性が低く、しかもシームの密封が強固ではなく、油漏れしやすい。日本特許第JP2007153851A号では、水、デンプン、および天然ジェランガムを混合することによって得られる非動物由来のソフトカプセルのフィルムの組成物が提案されている。欧州特許第EP2815745A1号では、高アシルジェランガム、少なくとも1種のデンプンおよび少なくとも1種の可塑剤を含むソフトカプセルおよびその製造方法が提案されている。高アシルジェランガムからなるゲルは、軟らかくて弾力性のある質感があり、デンプンと組み合わせると、皮膜の靭性が悪くなり、カプセルに成形され場合、シームが薄く、低い破壊力で油漏れしやすくなる。中国特許第CN108659137A号では、2つのゲル化温度が低く、形成されたゲルが優れたゲル特性とテクスチャーを持ち、食品の分野でより広く使用できる、2つのゲル化温度を有する新しいジェランガム製品を提案した。
【0004】
以上のことから、先行技術で報告されている主要なカプセル材料としてジェランガムを用いたソフトカプセルの製造において、皮膜用液の粘度が高く、高温で保存するとゲル化しやすく、形成された皮膜の強度が低く、靭性が低く、カプセルに成形され場合、シームが薄く、油が漏れやすいなどの多くの欠点があるため、ソフトカプセルの工業生産が不可能である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、特定のアシル含有量のジェランガムおよびデンプンを含むデンプンフィルム形成用組成物を提供することである。デンプンフィルム形成用の研究において、本発明者らは、高アシルジェランガム(天然ジェランガム)と低アシルジェランガムとの間の特定のアシル含有量のジェランガムが20~75℃の範囲の単一ゲル化温度を有することで、この特定のアシル含有量のジェランガムを含むデンプンフィルム形成用組成物によって形成されたゲルは、優れたゲル特性およびテクスチャーを有し、このようなゲルをソフトカプセルの調製に用いる場合、皮膜の強度、靭性、形成接着特性の点で従来技術より明らかに優れており、ソフトカプセルの工業生産の要件を完全に満たし、ソフトカプセル技術の代替として使用できることを見出した。さらに、本発明者らは、特定の範囲のジェランガムとデンプンとの比を有するデンプン組成物が、皮膜の強度、靭性、および形成接着特性の総合的な効果の点から、上記の範囲外のデンプン組成物よりも優れていることを見出した。
【0006】
一局面では、本発明は、
A、第1のゲル化剤;
B、デンプン
を含む、デンプンフィルム形成用組成物であって、
前記の第1のゲル化剤は、単一ゲル化温度を有するジェランガムであり、その総アシル含有量が14-34%であり、前記の単一ゲル化温度を有するジェランガムとデンプンとの重量比が0.02~0.5である。
【0007】
一実施形態では、ジェランガムの総アシルにおいて、グリセロイル含有量は12-26%であり、および/またはアセチル含有量は2-8%である。
【0008】
一実施形態では、デンプンの含有量は15wt%-50wt%である。
【0009】
一実施形態では、ジェランガムの含有量は1wt%-8wt%であり、好ましくは、ジェランガム含有量は2wt%-7wt%である。
【0010】
一実施形態では、前記のデンプンは天然デンプンであり、前記の天然デンプンは、小麦デンプン、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびタピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0011】
一実施形態では、前記のデンプンはデンプン誘導体であり、前記のデンプン誘導体は、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、スターチオクテニルコハク酸ナトリウム、アセチル化ジスターチホスフェート、およびデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0012】
一実施形態では、デンプンフィルム形成用組成物は、可塑剤をさらに含み、前記の可塑剤の含有量は10wt%~35wt%であり、好ましくは、前記の可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは複数である。
【0013】
一実施形態では、このデンプンフィルム形成用組成物は、第2のゲル化剤をさらに含む。好ましくは、第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、およびプルランからなる群から選択される1つまたは複数である。好ましくは、前記の第2のゲル化剤の含有量は0.2wt%-3.5wt%であり、好ましくは、前記のペクチンは、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、およびアミド化ペクチンからなる群から選択される1つまたは複数であり;好ましくは、低メトキシペクチンは、DE<50%のエステル化度を有し、アミド化ペクチンは、DA5%-25%のアミド化度を有する。
【0014】
一実施形態では、デンプンフィルム形成用組成物は、35wt%-60wt%の水を含む。
【0015】
別の局面では、本発明は、1)A)まず、第1のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;2)カプセル化すること;および3)乾燥させることを含む、本発明のデンプンフィルム形成用組成物を使用したカプセルシェルの製造方法を提供する。カプセル化は、ソフトカプセル製造ラインを採用し、皮膜用液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、皮膜用液をドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を封入し、圧着して成形し、さらに、タンブルによって仕上げする。乾燥は次のように行うことができる。成形またはタンブルで仕上げしたカプセルを、皮膜の水分が8-25%になるまで乾燥させる。
【0016】
一実施形態では、前記のA)は、第2のゲル化剤を添加することをさらに含み;前記のA)は、第1のゲル化剤、第2のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌することである。
【0017】
別の局面では、本発明は、本発明のデンプンフィルム形成用組成物を含むカプセルシェルを提供する。
【0018】
一実施形態では、このカプセルシェルの含水量は8-25%である。
【0019】
別の局面では、本発明は、医薬品、食品または化粧品における本発明のデンプンフィルム形成用組成物の使用を提供する。
【0020】
本発明は、以下の実施形態をさらに含む。
実施形態1. 1wt%-8wt%第1のゲル化剤;
0.2wt%-3.5wt%第2のゲル化剤;
15wt%-50wt%デンプン;
10wt%~35wt%可塑剤;および
100wt%まで補充する水
を含む、デンプンフィルム形成用組成物であって、
ここで、第1のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、およびプルランからなる群から選択される1つまたは複数であり;
第2のゲル化剤はペクチンである。
【0021】
実施形態2. 前記のペクチンが、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、およびアミド化ペクチンからなる群から選択される1つまたは複数である、実施形態1のデンプンフィルム形成用組成物。
【0022】
実施形態3. 低メトキシペクチンがDE<50%のエステル化度を有し、またはアミド化ペクチンが5-25%のアミド化度DAを有する、上記の実施形態のデンプンフィルム形成用組成物。
【0023】
実施形態4. 前記のジェランガムが高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、または総アシル含有量14-34%のジェランガムであり、好ましくは、前記のジェランガムが、総アシル含有量14-34%のジェランガムであり、好ましくは、ジェランガムの総アシルにおいて、グリセロイル含有量が12-26%であり、および/またはアセチル含有量が2-8%である、上記の実施形態のデンプンフィルム形成用組成物。
【0024】
実施形態5. 前記のデンプンが天然デンプンであり、前記の天然デンプンが、小麦デンプン、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびタピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは複数である、上記の実施形態のデンプンフィルム形成用組成物。
【0025】
実施形態6. 前記のデンプンがデンプン誘導体であり、前記のデンプン誘導体が、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、スターチオクテニルコハク酸ナトリウム、アセチル化ジスターチホスフェート、およびデキストリンからなる群から選択される1つまたは複数である、上記の実施形態のデンプンフィルム形成用組成物。
【0026】
実施形態7. 前記の可塑剤がグリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは複数である、上記の実施形態のデンプンフィルム形成用組成物。
【0027】
実施形態8. 実施形態1~7のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物を使用したカプセルシェルの製造方法であって、
1)A)第1のゲル化剤、第2のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;
2)カプセル化すること;および
3)乾燥させること
を含む、カプセルシェルの製造方法。
【0028】
実施形態9. 実施形態1~8のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物を含む、カプセルシェル。
【0029】
実施形態10. このカプセルシェルの含水量が8~25%である、実施形態9のカプセルシェル。
【0030】
実施形態11. 医薬品、食品または化粧品における、実施形態1~8のいずれか1項に記載のデンプンフィルム形成用組成物の使用。
【0031】
本発明のデンプンフィルム形成用組成物の利点としては、良好なフィルム形成強度および靭性を有し、ソフトカプセルに使用される場合、成形接着性、密封性に優れたソフトカプセルが得られ、しかも動物由来成分を含まず、世界中のあらゆる民族に適し、全世界に広げることが可能であることが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下の内容は、本発明をさらに説明するために提供される。
本明細書で使用される場合、「%」または「wt%」は、特に明記されていない限り、重量パーセントを指す。
【0033】
本発明は、デンプンフィルム形成用組成物を提供し、このデンプンフィルム形成用組成物が第1のゲル化剤およびデンプンを含み、この第1のゲル化剤がジェランガムである。ジェランガムは、総アシル含有量に応じて、低アシルジェランガム、高アシルジェランガム、および部分的に脱アシル化されたジェランガムに分類することができる。本発明において、ジェランガムの総アシル含有量は14-34%であってもよく、例えば14%、16%、17%、19%、27%、28%、30%、31%、32%または34%であってもよい。ジェランガムの総アシル含有量は、グリセロイルとアセチルの含有量の合計として算出することができる。グリセロイル含有量は12-26%であってもよく、例えば13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%または25%であってもよい。アセチル含有量は2-8%であってもよく、例えば3%、4%、5%、6%または7%であってもよい。
【0034】
デンプンフィルム形成用組成物中のジェランガム含有量は1wt%~8wt%であってもよく、例えば2wt%、3wt%、4wt%、5wt%、6wt%、7wt%または8wt%であってもよい。好ましくは、ジェランガム含有量は2wt%-7wt%であってもよい。
【0035】
デンプンフィルム形成用組成物中のデンプン含有量は15wt%-50wt%であってもよく、例えば20wt%、25wt%または35wt%、45wt%であってもよい。
【0036】
デンプンは、天然デンプン、或いは物理的、化学的、酵素的処理などによって天然デンプンから製造されたデンプン誘導体または組み合わせであってもよい。天然デンプンは、小麦デンプン、モチトウモロコシデンプン、エンドウ豆デンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプンからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。デンプン誘導体は、酸処理デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、酢酸デンプン、酸化ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート、リン酸化デンプン、スターチオクテニルコハク酸ナトリウム、アセチル化ジスターチホスフェート、デキストリンからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。例えば、上記の様々な種類のデンプンの含有量は、それぞれ独立して7wt-50wt%であり、例えば8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、21wt%、22wt%、23wt%、24wt%、25wt%または30wt%である。ジェランガムとデンプンとの重量比は、0.02~0.5,例えば0.04、0.06、0.09、0.11、0.12、0.16、0.17、0.20、0.23、0.24または0.50であってもよい。
【0037】
デンプンフィルム形成用組成物は、可塑剤および第2のゲル化剤からなる群から選択される1つまたは複数をさらに含んでもよい。可塑剤は、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、フルクトース、およびトレハロースからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。第2のゲル化剤は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、アミド化ペクチン、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、およびプルランからなる群から選択される1つまたは複数であってもよい。可塑剤の含有量は10wt%-35wt%であってもよく、例えば15wt%、17wt%、18wt%、20wt%、25wt%または30wt%であってもよい。
【0038】
本発明のデンプンフィルム形成用組成物は、水をさらに含み、例えば35wt%-60wt%の水を含み、例えば36wt%、39wt%、42wt%、43wt%、46wt%、47wt%、48wt%、49wt%または56wt%を含む。水は、組成物の総量を100重量%に補足するために使用することができる。
【0039】
本発明のデンプンフィルム形成用組成物を使用してソフトカプセルを製造することができる。ソフトカプセルの製造には、1)A)まず、第1のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;2)カプセル化すること;および3)乾燥させることを含む。
【0040】
ソフトカプセルの製造には、1)A)まず、第1のゲル化剤、第2のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;2)カプセル化すること;および3)乾燥させることを含む。本発明の上記のデンプンフィルム形成用組成物は、成形接着性、密封性に優れたソフトカプセルを製造し、医薬品、食品または化粧品に使用することができる。
【0041】
本発明は、ペクチンを含むデンプンフィルム形成用組成物を提供する。好ましくは、ペクチンは、低メトキシペクチン、高メトキシペクチン、およびアミド化ペクチンからなる群から選択される1つまたは複数である。ペクチンの含有量は、0.2wt%-3.5wt%であってもよく、例えば0.50wt%、1.25wt%、1.5wt%、2.50wt%または3.5wt%であってもよい。この場合、該デンプンフィルム形成用組成物は、カラギーナン、寒天、アルギン酸ナトリウム、ジェランガム、こんにゃくグルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、およびプルランからなる群から選択される1つまたは複数をさらに含んでもよい。この態様の一実施形態では、該デンプンフィルム形成用組成物は、ジェランガムをさらに含んでもよい。例えば、ジェランガムは、高アシルジェランガム、低アシルジェランガム、または総アシル含有量14-34%のジェランガムであり、好ましくは、前記のジェランガムが、総アシル含有量14-34%のジェランガムであり、好ましくは、ジェランガムの総アシルにおいて、グリセロイル含有量が12-26%であり、および/またはアセチル含有量が2-8%である。ジェランガムの含有量およびアシル含有量は、上記で定義された通りである。
【0042】
ペクチンを含むデンプンフィルム形成用組成物は、デンプンをさらに含んでもよく、且つその種類および含有量は上記で定義された通りである。一実施形態では、デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン及びヒドロキシプロピルジスターチホスフェートであってもよく、例えば、それぞれ独立して7wt-25wt%であってもよく、例えば8wt%、9wt%、10wt%、11wt%、12wt%、13wt%、14wt%、15wt%、16wt%、17wt%、18wt%、19wt%、20wt%、21wt%、22wt%、23wt%、または24wt%であってもよい。
【0043】
ペクチンを含むデンプンフィルム形成用組成物は、可塑剤をさらに含んでもよい。可塑剤の種類および含有量は、上記で定義された通りである。ペクチンを含むデンプンフィルム形成用組成物は、水をさらに含んでもよい。水の含有量は、上記で定義された通りである。本発明は、ペクチンを含まないデンプンフィルム形成用組成物が胃で崩壊し、腸に送達できないことを実証している。これに対して、本発明のペクチンを含むデンプンフィルム形成用組成物は、中国薬局方の崩壊時間試験法における腸溶性カプセルの関連規制に適合している。これは予想外である。
【0044】
以下、本発明の理解を容易にするために、例示的な実施例を提供する。これらの実施例は単なる例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって決定されるべきである。
【0045】
実施例
評価方法
本発明の効果をさらに説明するために、以下のソフトカプセルの性能指標を採用して評価、説明を行う。
【0046】
1)皮膜の強度および靭性の指標:テクスチャーアナライザーを使用し、球形プローブ、パンクモードを選択した。試験速度は1.0mm/sであり、皮膜が破裂した時の力の値(g)および対応する距離(mm)を記録した。皮膜が破裂した時の力は皮膜の強度を表し、この力は大きいほど、皮膜の強度は高くなる。皮膜が破裂した時にプローブが移動した距離は、皮膜の靭性を表し、この距離は長いほど、皮膜の靭性は高くなる。
【0047】
2)成形シーム接着特性の指標:本発明の実施例のサンプルを採取した。シーム以外の位置からカプセルをカットし、内容物を押し出した。次に、シームに対して垂直になるようにカプセルの中央から2つのシームがあるリングを切り取った。2つのシームをスライドガラスに垂直して、リングをスライドガラス上に載置した。顕微鏡で2つのシームおよびシェルの厚さを測定し、シェルの厚さに対する最も薄いシームの厚さの比率P(%)を算出した。
【0048】
表1 ソフトカプセルの皮膜の強度、靭性および成形接着性の指標の評価基準
【表1】
【0049】
皮膜強度指標、靭性指標および成形接着性指標によって総合評価を行い、満点5点で、各点(X)は以下を示す。
0点:ソフトカプセルを形成できない。
0<X≦1点:ソフトカプセルの成形は非常に悪く、油漏れしやい。
1<X≦2点:ソフトカプセルの成形は悪く、油漏れしやい。
2<X≦3点:ソフトカプセルの成形は良好である。
3<X≦4点:ソフトカプセルの成形は優れている。
4<X≦5点:ソフトカプセルの成形は非常に優れている。
【0050】
材料
本発明は、以下の材料を使用して説明するが、これらに限定されるものではなく、詳細は以下のとおりである。
ジェランガム(総アシル含有量14.4%、グリセロイル12.1%、アセチル2.3%)(市販)
ジェランガム(総アシル含有量16.5%、グリセロイル12.8%、アセチル3.7%)(市販)
ジェランガム(総アシル含有量19.0%、グリセロイル15.1%、アセチル3.9%)(市販)
ジェランガム(総アシル含有量27.5%、グリセロイル19.8%、アセチル7.7%)(市販)
ジェランガム(総アシル含有量28.0%、グリセロイル23.4%、アセチル4.6%)(市販)
ジェランガム(総アシル含有量30.6%、グリセロイル25.1%、アセチル5.5%)(市販)
ジェランガム(総アシル含有量33.2%、グリセロイル25.5%、アセチル含有量7.7%)(市販)
高アシルジェランガム(総アシル含有量37.3%、グリセロイル20.4%、アセチル16.9%)(市販)
低アシルジェランガム(総アシル含有量11.2%、グリセロイル8.1%、アセチル3.1%)(市販)
酸化デンプン(市販)
ヒドロキシプロピルデンプン(市販)
酸化ヒドロキシプロピルデンプン(市販)
ヒドロキシプロピルジスターチホスフェート(市販)
酸化デンプン(市販)
酢酸デンプン(市販)
アセチル化酸化デンプン(市販)
アセチル化ジスターチホスフェート(市販)
グリセロール(市販)
寒天(市販)
ローカストビーンガム(市販)
グアーガム(市販)
アミド化ペクチン(アミド化度(DA:5-25%)、市販)
低メトキシペクチン(エステル化度(DE:<50%)、市販)
こんにゃくグルコマンナン(市販)
【0051】
ソフトカプセルの製造方法
この方法は、以下の工程を含む。
1)溶解:A)まず、第1のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら適量の水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;第2のゲル化剤を含む場合、まず、第1のゲル化剤、第2のゲル化剤および可塑剤を予備混合して均一に分散させ、撹拌しながら水に加え、60~98℃で加熱しながら、第1のゲル化剤および第2のゲル化剤が溶解するまで撹拌し;B)デンプンを加え、60~98℃でさらに加熱しながら、デンプンが溶解するまで撹拌し;C)気泡を除去して皮膜用液を得ること;
2)カプセル化:ソフトカプセル製造ラインを採用し、皮膜用液をカプセル充填機のスプレッダーボックスに移送し、皮膜用液をドラムの表面で冷却させ、皮膜を形成し、充填物を封入し、圧着して成形し、さらに、タンブルによって仕上げすること;
3)乾燥させること;成形またはタンブルで仕上げしたカプセルを、皮膜の水分が8-25%になるまで乾燥させる。
【0052】
実施例1-7、対照例1-3
如表2に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表2に示す。
【0053】
表2 実施例1-7、対照例1-3
【表2】
【0054】
表2から、実施例1~7において特定のアシル含有量のジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用したことにより、形成された皮膜は、強度、靭性および成形接着性が良好であったが分かる。対照例1~2において、本発明のフィルム形成用組成物と同じ成分含有量を採用し、アシル含有量の高いジェランガムとデンプンとを組み合わせた場合、形成された皮膜は、強度が低く、一定の靭性を有するが、成形接着性が通常のレベルであり、また、アシル含有量の少ないジェランガムとデンプンとを組み合わせた場合、形成された皮膜は、強度が良く、靭性が低く、成形できないことがある。対照例3では、異なるアシル含有量の2つのジェランガムの複合ゲルを使用し、複合ゲルにおけるグリセロイルおよびアセチル含有量は本発明の特定のアシル含有量の範囲に近いが、成形接着性が劣った。これは、本発明の特定のアシル含有量のジェランガムとデンプンとの組み合わせを使用することによって製造されたソフトカプセルが従来技術よりも優れていることを示している。
【0055】
実施例8-18
表3に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表3に示す。
【0056】
表3 実施例8-18
【表3】
【0057】
実施例8~18において、ジェランガムの使用量の増加に伴い、形成された皮膜は、強度が向上し、靭性が近くなったが、成形接着性が低下した。ジェランガムとデンプンとの比が特定の範囲であるデンプン組成物が、この範囲以外のデンプン組成物よりも総合的な効果の点で優れたことは予想外である。
【0058】
実施例19-25
表4に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表4に示す。
【0059】
表4 実施例19-25
【表4】
【0060】
実施例19~25は、特定のアシル含有量のジェランガムと様々な種類のデンプンとの組み合わせを用いたソフトカプセルの製造を示し、その技術的効果は従来技術よりも著しく優れた。
【0061】
実施例26-31
表5に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、測定および採点を行った。結果を表5に示す。
【0062】
表5 実施例26-31
【表5】
【0063】
実施例26~31において、特定のアシル含有量のジェランガムおよびデンプンを、低アシルジェランガム、寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、コンジャクグルコマンナンとそれぞれ組み合わせて使用することによりソフトカプセルを製造したことは、従来の技術よりも技術的効果が著しく優れた。
【0064】
実施例32-37
表6に記載されている成分および含有量に従ってソフトカプセルを製造し、中国薬局方の崩壊時間試験法における腸溶性カプセルの関連規制に従って、崩壊時間試験を実施した。結果を表6に示す。
【表6】
【0065】
「中国薬局方」の崩壊時間試験法における腸溶性カプセルの関連規制に従って、実施例22、実施例26、および実施例32~37のサンプルの崩壊時間を測定した結果、塩酸溶液(9→1000)での検出(バッフルなし)では、実施例22および実施例26のサンプルは、60分以内に完全に崩壊したが、塩酸溶液(9→1000)での検出(バッフルなし)では、実施例32-37のサンプルは、120分で崩壊しなく、なお、リン酸塩緩衝液(PH6.8)で検出し、各チューブに1つのバッフルを追加した場合、60分以内に完全に崩壊した。これは、「中国薬局方」の崩壊時間試験法における腸溶性カプセルの崩壊時間要件を満たしている。したがって、本発明において、特定のアシル含有量のジェランガムおよびデンプンを、ペクチン(例えば、低メトキシペクチンまたはアミド化ペクチン)と組み合わせて、ソフトカプセルを製造した結果、腸溶性ソフトカプセルの崩壊時間に関する規制を満たすことができる。
【0066】
本発明において、特定のアシル含有量のジェランガムおよびデンプンを含む組成物を使用することによって製造されたソフトカプセルは、良好なフィルム形成強度および靭性を有し、また、これらの両方が、一定の範囲内でジェランガムの割合の増加とともに増加するが、成形接着性が、ジェランガムの割合の増加とともに低下する。さらに、特定のアシル含有量のジェランガムおよびデンプンを含む本発明の組成物を使用することによって製造されたソフトカプセルは、皮膜の強度、靭性および成形接着性の点で従来技術のものよりも著しく優れ、ソフトカプセルの工業生産を完全に満たし、ソフトカプセル技術の代替として使用することができる。
【0067】
上記の実施例は本発明の好ましい実施形態であるが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の精神および原理から逸脱することなく行われたその他のいかなる変更、修正、置換、組み合わせ、簡略化、本願と同等であるとみなされるべきであり、それらのすべては本発明の特許請求の範囲に含まれる。