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特許7541580非一定の戻りチャネルベーンピッチを有する戻りチャネル、及びその戻りチャネルを含む遠心ターボ機械
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  • 特許-非一定の戻りチャネルベーンピッチを有する戻りチャネル、及びその戻りチャネルを含む遠心ターボ機械 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】非一定の戻りチャネルベーンピッチを有する戻りチャネル、及びその戻りチャネルを含む遠心ターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/46 20060101AFI20240821BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20240821BHJP
   F04D 17/12 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
F04D29/46 D
F04D29/54 C
F04D17/12
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022538871
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-02
(86)【国際出願番号】 EP2021025012
(87)【国際公開番号】W WO2021148239
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】102020000001294
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】トニ、ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ミケラッシ、ヴィットリオ
(72)【発明者】
【氏名】グリエルモ、アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ガッタ、ジュセッペ
(72)【発明者】
【氏名】パニッツァ、アンドレア
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0280060(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0347584(US,A1)
【文献】特開2007-315333(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110107539(CN,A)
【文献】特開平10-141290(JP,A)
【文献】特開昭59-165897(JP,A)
【文献】特開2016-153639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの隣接するインペラと各前記インペラの出口に流体接続されたディフューザとを有する遠心ターボ機械(1)のための、前記隣接するインペラのうちの上流側のインペラの出口に流体接続されたディフューザと前記隣接するインペラのうちの下流側のインペラの入口の間に配置されるように構成された戻りチャネル(15)であって、
戻りチャネル軸(A-A)の周りに配置された複数の戻りチャネルベーン(15.1)を備え、
各前記戻りチャネルベーン(15.1)は、前記戻りチャネル軸(A-A)から第1の距離にある前縁(15.3)と、前記戻りチャネル軸から第2の距離にある後縁(15.5)とを備え、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも小さく、
隣接して配置された前記戻りチャネルベーン(15.1)の各対の間には、それぞれ流路が画定され、
隣接して配置された前記戻りチャネルベーン(15.1)の各対において、前記戻りチャネルベーン(15.1)の間のピッチ(S1、S2)に対する前記戻りチャネルベーン(15.1)の一方の翼弦の値は、一定のソリディティ値を中心とする範囲内に維持され、
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)は、前記戻りチャネル軸(A-A)を中心に複数のセクタを形成するように配置され、各前記セクタは、少なくとも2つの戻りチャネルベーン(15.1)を含み、
個々の前記セクタにおいて、前記戻りチャネルベーン(15.1)のピッチが一定であり、
前記複数のセクタのうち少なくとも1対の隣接するセクタが、前記戻りチャネルベーン(15.1)が第1のピッチで配置されたセクタと、前記戻りチャネルベーン(15.1)が前記第1のピッチと異なる第2のピッチで配置されたセクタと、を有する、
戻りチャネル(15)。
【請求項2】
前記複数のセクタにおいて、前記戻りチャネルベーン(15.1)が前記第1のピッチで配置された前記セクタと前記戻りチャネルベーン(15.1)が前記第2のピッチで配置された前記セクタが前記戻りチャネル軸(A-A)の周りに交互に配置される、請求項1に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項3】
少なくとも2つの隣接するインペラと各前記インペラの出口に流体接続されたディフューザとを有する遠心ターボ機械(1)のための、前記隣接するインペラのうちの上流側のインペラの出口に流体接続されたディフューザと前記隣接するインペラのうちの下流側のインペラの入口の間に配置されるように構成された戻りチャネル(15)であって、
戻りチャネル軸(A-A)の周りに配置された複数の戻りチャネルベーン(15.1)を備え、
各前記戻りチャネルベーン(15.1)は、前記戻りチャネル軸(A-A)から第1の距離にある前縁(15.3)と、前記戻りチャネル軸から第2の距離にある後縁(15.5)とを備え、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも小さく、
隣接して配置された前記戻りチャネルベーン(15.1)の各対の間には、それぞれ流路が画定され、
隣接して配置された前記戻りチャネルベーン(15.1)の各対において、前記戻りチャネルベーン(15.1)の間のピッチ(S1、S2)に対する前記戻りチャネルベーン(15.1)の一方の翼弦の値は、一定のソリディティ値を中心とする範囲内に維持され、
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)は、隣接して配置された前記戻りチャネルベーン(15.1)の間のピッチが、所定の範囲内でランダムに変化するように配置されている、戻りチャネル(15)。
【請求項4】
前記隣接して配置された前記戻りチャネルベーン(15.1)の間のピッチは、前記戻りチャネル軸(A-A)を中心に17度以上23度以下の範囲内に設定されている、請求項3に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項5】
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)のうちの少なくとも2つは、互いに長さが異なる翼弦を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項6】
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)のうちの少なくとも2つは、接線方向及び/又は流れ方向に互いに異なるプロファイルを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項7】
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)のうちの少なくとも2つは、半径方向位置が互いに異なる前記前縁(15.3)を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項8】
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)のうちの少なくとも2つは、半径方向位置が互いに異なる前記後縁(15.5)を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項9】
前記複数の戻りチャネルベーン(15.1)のうちの少なくとも2つは、互いに異なる勾配を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項10】
各々の前記戻りチャネルの高さは、接線方向及び/又は流れ方向において変動する、請求項1から9のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項11】
前記一定のソリディティ値を中心とする前記範囲は、前記一定のソリディティ値の±20%に等しい、請求項1から10のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)。
【請求項12】
静止部分(3)と、
回転軸(A-A)を中心として回転するように配置された少なくとも第1のインペラ(7)及び第2のインペラ(7)と、
前記第1のインペラ(7)を取り囲む第1のディフューザ(11)及び前記第2のインペラ(7)を取り囲む第2のディフューザ(11)であって、前記第1のディフューザ及び前記第2のディフューザは、それぞれの前記インペラ(7)からの流体の速度を圧力に変換するように適合されている、第1のディフューザ(11)及び第2のディフューザ(11)と、
前記第1のディフューザ(11)と前記第2のインペラ(7)との間に配置された、請求項1から11のいずれか1項に記載の戻りチャネル(15)と、
を備える、遠心ターボ機械(1)。
【請求項13】
前記ディフューザ(11)は、ベーン(11.1)を有し、前記ディフューザ(11)の前記ベーン(11.1)は、一定のピッチ又は非一定のピッチに従って配置されている、請求項12に記載の遠心ターボ機械(1)。
【請求項14】
前記遠心ターボ機械は、遠心圧縮機である、請求項12又は13に記載の遠心ターボ機械(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラジアル型ターボ機械に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、1つ以上の新規なブレード付き戻りチャネル、すなわちベーン付き戻りチャネルを含む遠心圧縮機及び/又は遠心ポンプなどの、遠心ターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、ガスを昇圧するために様々な用途で使用される。遠心圧縮機は、ケーシングなどの静止部分と、ケーシング内で回転するように構成された1つ以上のインペラとを含む。インペラに送達された機械的エネルギーは、回転するインペラにより、運動エネルギーの形態でガスに伝達される。インペラにより加速されたガスは、各インペラを円周方向に取り囲むディフューザを通って流れ、ディフューザは、ガス流を収集し、その速度を低下させて、運動エネルギーをガス圧力に変換する。圧縮機が複数のインペラを備える場合、上流インペラのディフューザと下流インペラの入口との間に戻りチャネルが配置されて、ガスを上流インペラから下流インペラに向かって輸送する。
【0003】
ディフューザ及び戻りチャネルを通るガス流をより良好に導くために、そして圧力回復を改善するために、ベーン付きディフューザ及びベーン付き戻りチャネルが開発されてきた。ブレード付き又はベーン付き戻りチャネルは、圧縮機効率を改善する一方で、圧力パルスを生成し、圧力パルスは、戻りチャネルの下流に配置されたインペラのブレードにおいて振動を励振(excite)する。インペラの振動は、高サイクル疲労(high cycle fatigue、HCF)に起因してインペラの故障を引き起こす場合がある。これは、ベーン付き戻りチャネルにより、その下流に配置されたインペラにおいて励振される振動の周波数が、インペラの臨界周波数に近い又はそれと一致し、その結果、共振現象が発生し得る場合に特に問題となる。現在、この問題を限定するために、戻りチャネルにより下流インペラにおいて誘起される振動の周波数が、インペラの共振周波数と一致しないように、戻りチャネルベーンの数が選択される。
【0004】
圧縮機のインペラにおける振動をより効率的に低減させることを目的とする改善された戻りチャネル設計が、当該技術分野で歓迎されるであろう。
【発明の概要】
【0005】
一態様によれば、本明細書では、遠心ターボ機械、具体的には遠心圧縮機のための新規なブレード付き又はベーン付き戻りチャネルが開示される。戻りチャネルは、戻りチャネル軸の周りに配置された複数の戻りチャネルベーンを備える。各戻りチャネルベーンは、前縁及び後縁を備える。隣接して配置された、すなわち連続した戻りチャネルベーンの各対の間には、それぞれ流路が画定されている。戻りチャネルベーンは、戻りチャネル軸の周りに非一定のピッチで配置されている。
【0006】
更なる態様によれば、本明細書では、遠心ターボ機械、具体的には遠心圧縮機が開示され、これは、ケーシングなどの静止部分と、静止部分内、すなわちケーシング内で回転するように構成された少なくとも2つのインペラとを含む。ディフューザは、各インペラの下流に配置されている。更に、上記で概説したような新規なベーン付き戻りチャネルが、第1のインペラと第2のインペラとの間に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の開示の実施形態とそれに付随する利点の多くは、添付図面に関連して考えながら以下の発明を実施するための形態を参照することによって、理解が深まるにつれてすぐにより完全に分かるようになるであろう。
図1】圧縮機の一部分の概略断面図を示す。
図2】一実施形態における、回転軸に直交する平面で見た戻りチャネルの概略断面図を示す。
図3】戻りチャネルの一部分の斜視図を示す。
図4】別の実施形態における、回転軸に直交する平面で見た戻りチャネルの概略断面図を示す。
図5】背景技術による一実施形態と、図2の実施形態とにおける、インペラ振動の高調波成分分析を示す比較図を示す。
図6図2図4の実施形態における、インペラ振動の高調波成分分析を示す比較図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
遠心ターボ機械において、具体的には遠心圧縮機において、インペラブレードの振動を低減させるために、ターボ機械の、1つの、いくつかの、又は全ての戻りチャネルのブレード又はベーンが、非一定のピッチに従って配置されている。すなわち、戻りチャネル流路を画定する戻りチャネルベーンの少なくとも一対の間の間隔は、別の戻りチャネル流路を画定する少なくとも別の一対の戻りチャネルベーン間の間隔とは異なる。以下で詳細に説明するように、非一定のピッチは、インペラブレード振動の振幅の低減に関して有益な影響をもたらす。
【0009】
ここで図1を参照すると、遠心圧縮機1の一部が示されている。図1の断面図は、遠心圧縮機の2つのステージに限定されている。圧縮機ステージの数、したがって、インペラの数は、圧縮機設計及び圧縮機要件に従って、圧縮機によって異なり得る。本開示による戻りチャネルの新規な特徴は、圧縮機に設けられる戻りチャネルのうちの1つ、いくつか、又は好ましくは全てにおいて具体化することができる。
【0010】
圧縮機は、ケーシング3などの静止部分3を備え、連続する圧縮機ステージを分離するダイヤフラム5が配置されている。各圧縮機ステージは、ケーシング3内で回転するように支持されたインペラ7を備える。インペラ7は、回転シャフト9に焼嵌めされ得る。図示していない他の実施形態では、インペラ7は、遠心圧縮機の当業者に知られている設計に従う、積み重ねたインペラとすることができ、本明細書では開示されていない。インペラ7及びシャフト9は累積的に、ケーシング3内で回転軸A-Aの周りを回転するように配置された圧縮機ロータを形成する。インペラ7はインペラハブ7.1を有し、そこから複数のインペラブレード7.3が突出している。各インペラブレード7.3は、前縁7.5及び後縁7.7を有する。前縁7.5は、インペラ入口に沿って配置され、後縁7.7は、インペラ出口に沿って配置されている。図1に示す実施形態では、インペラ7は、シュラウド7.9を更に備える。他の実施形態では、インペラ7は、シュラウド無しインペラとすることができ、その場合、シュラウド7.9は省略される。
【0011】
各インペラ出口の周りに、ディフューザ11が配置されている。各ディフューザ11は、インペラ7の出口を取り囲み、インペラと同軸である。すなわち、ディフューザ11の中心軸は、インペラ7の回転軸A-Aと一致する。
【0012】
図1の実施形態では、ディフューザ11は、いわゆるベーン付きディフューザ又はブレード付きディフューザである。各ベーン付きディフューザには、ディフューザ軸A-Aの周りに配置された複数のディフューザベーン11.1が設けられている。ディフューザベーン11.1の目的は、流入するガス流を、より半径方向にリダイレクトすること、すなわち、ディフューザ11に入るガス流の速度の接線成分を低減させ、圧力回復及び全体的なステージ効率を増加させることである。各ディフューザベーン11.1は、前縁11.3及び後縁11.5を含む。
【0013】
他の実施形態では、ディフューザ11は、ベーン無しディフューザとすることができる。すなわち、ディフューザベーン11.1を省略することができる。
【0014】
各ディフューザ11の下流には、最も下流のインペラ(図示せず)の後のディフューザを除いて、戻りベンド13が設けられる。戻りベンド13は、ディフューザ11を出るガス流の方向に、半径方向外向きから半径方向内向きへの180度のターンを形成する。戻りベンド13に続いて、戻りチャネル15が設けられて、戻りベンド13からのガス流を内向きに次のインペラ7に導く。戻りチャネルの機能は、ガス流を、その下流の各インペラ7に最小限の損失で均一に送達することである。各戻りチャネル15には、複数の戻りチャネルベーン又はブレード15.1が設けられている。隣接して配置された戻りチャネルベーン15.1の各対が、それらの間にガス流路を形成する。戻りチャネルベーン15.1の形状及び分配は、以下で更に詳細に説明される。上述したように、最も下流のディフューザには戻りベンド13が設けられていないが、図示していないスクロールに流体的に結合され、これが最後の圧縮機ステージからガス流を収集する。スクロールは、次に、圧縮機出口(図示せず)に流体的に結合されている。
【0015】
図1図2、及び図3を続けて参照すると、一実施形態における、戻りチャネル15及び関連する戻りチャネルベーン15.1のうちの1つの断面図及び斜視図が示される。同様の構成が、圧縮機1の全ての戻りチャネル15のために、又はそれらのいくつかのために提供され得る。
【0016】
戻りチャネルベーン15.1は、回転軸A-Aと一致する戻りチャネル軸の周りに円周方向に配置されている。各戻りチャネルベーン15.1は、前縁15.3及び後縁15.5を含む。前縁15.3は、軸A-Aから第1の距離に配置され、後縁15.5は、軸A-Aから第2の距離に配置され、第2の距離は、第1の距離よりも小さい。
【0017】
いくつかの実施形態では、戻りチャネルブレード15.1は、凹状の圧力側と凸状の吸引側とを有する湾曲した形状を有することができ、これらは両方とも、図2に示すように前縁から後縁に延びている。他の単純な形状を提供することができ、その場合、各ベーンの吸引側及び圧力側は、ベーンの翼形中心線に対して実質的に対称である。
【0018】
図2の実施形態では、戻りチャネルブレード15.1は全て同じ形状を有する。更に、戻りチャネルブレード15.1は全て、戻りチャネル15の中心軸A-Aから同じ距離に配置され、その結果、戻りチャネルベーン15.1の前縁15.3及び後縁15.5は全て、それぞれ外周上及び内周上に配置される。しかしながら、これは必須ではなく、代替的な実施形態が可能である。例えば、戻りチャネルベーン15.1は、可変翼弦(chord)を有してもよい。翼弦は、ベーンの前縁と後縁との間の距離である。更に、後縁及び/又は前縁は、戻りチャネル15の中心軸A-Aから可変の半径方向距離に配置することができる。すなわち、中心軸A-Aから2つの異なる距離に配置されたそれぞれの後縁15.5を有する少なくとも2つの戻りチャネルベーン15.1が存在することができ、かつ/又は少なくとも2つの戻りチャネルベーン15.1が、中心軸A-Aから2つの異なる距離に配置されたそれぞれの前縁15.3を有することができる。
【0019】
加えて、戻りチャネル15は、接線方向並びに流れ方向の両方において、可変プロファイル及び/又は可変高さを有し得る。更に、戻りチャネルベーン15.1はまた、可変勾配を有し得る。
【0020】
図2に示すように、間隔S、すなわち、それらの間にそれぞれの流路を形成する2つの隣接する又は連続する戻りチャネルベーン15.1間のピッチは非一定である。ピッチ又は間隔の変化は、様々な基準に従うことができる。図2の実施形態は、4つの90°セクタを形成するように配置された18個のベーンを提供する。前述のセクタのうちの2つは、互いに18°で配置された5つのベーンを含むのに対し、他の2つのセクタは、22.5°で配置された4つのベーンを含む。隣接する戻りチャネルベーン15.1の各対の間の角度が、図2の各流路について示されている。したがって、この実施形態では、戻りチャネルベーン15.1の分配は規則的である。すなわち、分配ピッチは、戻りチャネル15の360°の全範囲にわたって後続のセクタにおいて繰り返される。
【0021】
他の実施形態では、例えば図4に示すように、分配は完全にランダムであり得る。ここで、18個の戻りチャネルベーン15は、それぞれの流路を画定する連続する、すなわち隣接する戻りチャネルベーン15.1間の角度が、例えば最小値17°から最大値23°まで、ランダムに変化するように配置されている。可変角度間隔は、隣接する戻りチャネルベーン15.1の対の間の可変ピッチに対応する。
【0022】
戻りチャネルベーン15.1の不均一な、すなわち非一定の分配がインペラブレード7.3の振動に及ぼす効果は、3つの異なる状況における励振源を表すそれぞれの高調波成分を示す図5及び図6の2つの図から理解できる。両方の図面において、円周方向の次数が横軸にプロットされ、振幅が垂直軸にプロットされている。
【0023】
より具体的には、図5では、従来技術の遠心圧縮機における高調波成分を、図2による戻りチャネルベーン15.1の分布パターン、すなわち、それぞれ18°及び22.5°である2つの異なるピッチの規則的な繰り返しの分配パターンを含む圧縮機における高調波成分と比較して示す。高調波成分は、非一定のピッチにより実質的に増加し、励振振幅は低減される。
【0024】
図4の実施形態は、図6から理解できるように、図2の実施形態を上回る更なる改善を表す。図6に示す図は、図2の実施形態における高調波成分を、戻りチャネルベーン15.1が完全にランダムに配置された図4の実施形態における高調波成分と比較して示す。高調波成分は更に増加し、最大励振振幅は、図2の実施形態と比較して更に低減されている。
【0025】
更なる改善として、ターボ機械の効率を更に改善するために、戻りチャネルベーン15.1のピッチと翼弦とを互いに関連させてもよい。より詳細には、2つの隣接する戻りチャネルベーン15.1間に画定される関連する流路のソリディティが実質的に一定のままとなるように、ピッチ及び翼弦を選択することができる。ソリディティは、ベーン翼弦(すなわち、ベーンの後縁と前縁との間の距離)と、2つの連続するベーン間のピッチとの比率である。この場合、「実質的に一定」の定義は、一定の事前に設定されたソリディティ値を中心とする±20%の範囲内にあるソリディティとして理解され得る。本明細書で開示される実施形態によれば、「実質的に一定」は、事前に設定された一定のソリディティ値を中心とする±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内、より好ましくは±2%の範囲内に維持されるソリディティとして理解され得る。
【0026】
翼弦とピッチとの間の相関関係は、戻りチャネルベーン15.1間の増加したピッチにより引き起こされるソリディティの低下が、少なくとも部分的に翼弦長の増加により相殺されるようなものである。
【0027】
より具体的には、戻りチャネルベーン15.1の翼弦Bは、連続する戻りチャネルベーン15.1間の経路を形成する戻りチャネルベーン15.1のうちの1つの翼弦Bの増加が、経路のソリディティを、以下のようにリバランスするように、連続する又は隣接する戻りチャネルベーン15.1の間のピッチ、すなわち間隔Sと相関している。
【数1】
式中、Biは、i番目の経路Piを定義する2つの戻りチャネルベーン15.1のうちの1つの翼弦である。より具体的には、Biは、その吸引側がi番目の経路Piに面する戻りチャネルベーンの翼弦である。戻りチャネル流路のソリディティは、この場合は、その吸引側が流路に面している戻りチャネルベーン15.1の翼弦と、その間に流路が画定される2つの戻りチャネルベーン15.1間のピッチとの比率として定義される。
【0028】
i番目の流路Piの各々の第1の戻りチャネルベーン15.1の翼弦Bを、経路を形成する2つの戻りチャネルベーン間のピッチ又は間隔Siに依存させることにより、ピッチの変化により誘起されるソリディティの変化の影響は、翼弦の変化によりバランスされる。
【0029】
したがって、増加したピッチにより引き起こされ得るソリディティの低下を、関連する戻りチャネルベーン11.1の翼弦の増加でバランスさせることにより、圧縮機の動作に悪影響を及ぼすことなく、インペラ振動の低減に関する、ピッチ変化の有益な効果が実現される。
【0030】
好ましい実施形態では、戻りチャネルベーン翼弦Biの各々と、i番目の流路Piの各々のピッチ又は間隔Siとの間の関係は、流路のソリディティσPiが一定のままとなるようなものである。
【0031】
しかしながら、厳密に一定のソリディティ値は必須ではない。圧縮機の強化された操作性に関して有益な効果は、ソリディティが事前に設定された値を中心として実質的に一定に維持される場合にも実現できる。本明細書で開示される実施形態によれば、「実質的に一定」は、事前に設定された一定のソリディティ値を中心とする±10%の範囲内、好ましくは±5%の範囲内、より好ましくは±2%の範囲内に維持されるソリディティとして理解され得る。
【0032】
振動低減の改善のために、ディフューザベーン11.1もまた、可変ピッチに従って、すなわち非一定の又は不均一なピッチに従って配置することができる。
【0033】
上述した実施形態は、具体的には遠心圧縮機を指す。しかしながら、本開示による新規の戻りチャネルは、図1に示すものと同様の構造を有する遠心ポンプにおいても、利点と共に使用することができる。
【0034】
例示的な実施形態は、上記で開示され、添付の図面に示されている。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されているものに、様々な変更、省略、及び追加を行ってもよいことが、当業者には理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6