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特許7541612運転支援装置、運転支援システム、運転支援方法および運転支援プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援システム、運転支援方法および運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20240821BHJP
   C25B 1/46 20060101ALI20240821BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240821BHJP
   C25B 15/031 20210101ALI20240821BHJP
   C25B 15/029 20210101ALI20240821BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20240821BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20240821BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20240821BHJP
【FI】
C25B15/00 302Z
C25B1/46
C25B9/00 E
C25B15/031
C25B15/029
C25B9/19
C25B9/65
C25B9/77
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023505511
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2022009510
(87)【国際公開番号】W WO2022191082
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2021036110
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 岳昭
(72)【発明者】
【氏名】穴見 泰崇
(72)【発明者】
【氏名】杉本 学
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-19408(JP,A)
【文献】国際公開第01/61074(WO,A1)
【文献】特開2013-61819(JP,A)
【文献】特開2018-181881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 15/00
C25B 1/46
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の電解槽により、予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する生産量取得部と、
前記1または複数の電解槽が有するイオン交換膜が更新された場合における前記生産物の最大生産量であって、前記1または複数の電解槽により前記期間に生産される前記生産物の最大生産量を算出する生産量算出部と、
前記最大生産量が前記目標生産量以上となる前記期間を特定する期間特定部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記1または複数の電解槽の稼働に係るコストを算出するコスト算出部をさらに備え、
前記期間特定部は、前記最大生産量が前記目標生産量以上となる期間のうち、前記コストが最小となるタイミングをさらに特定する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記複数の電解槽は、それぞれ前記イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有し、
前記陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され前記陰極室からはアルカリ金属の水酸化物の水溶液が導出され、
前記複数の電解槽のそれぞれに供給する電流であって、前記複数の電解槽により前記期間に生産される前記生産物の生産量が最大となるか、前記複数の電解槽により前記期間に消費される電力量が最小となるか、前記陽極室に導入されたアルカリ金属の塩化物であって前記陰極室から導出される前記アルカリ金属の水酸化物の水溶液に含まれるアルカリ金属の塩化物の質量が最小となるか、または、前記陽極室から導出される塩素に含まれる酸素の質量が最小となる電流を算出する電流算出部と、
前記電流算出部により算出された電流を、前記複数の電解槽のそれぞれに供給する電流供給部と、
をさらに備える、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記複数の電解槽のそれぞれが、前記生産物を生産する電力量を取得する電力量取得部をさらに備え、
前記電流算出部は、前記電力量が予め定められた電力量未満である場合に、前記生産物の生産量が最大となるか、または、前記アルカリ金属の塩化物の質量または前記酸素の質量が最小となる電流を算出する、請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記複数の電解槽のうち、前記電力量が最大である電解槽を特定する電解槽特定部をさらに備える、請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記電力量取得部は、前記複数の電解槽における合計の前記電力量を取得し、
前記電解槽特定部は、前記期間における合計の前記電力量が最小である場合において、前記電力量が最大である電解槽を特定する、
請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記複数の電解槽のうち、前記電解槽の電流効率が最も低い電解槽を特定する電解槽特定部をさらに備える、請求項3または4に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記電流算出部は、前記アルカリ金属の塩化物の質量または前記酸素の質量が予め定められた濃度未満である場合に、前記生産物の生産量が最大となるか、または、前記電力量が最小となる電流を算出する、請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記電流算出部は、前記複数の電解槽による、前記期間における前記生産物の総生産量が最大となる、前記複数の電解槽のそれぞれへの電流を算出する、請求項3または8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
電解槽特定部をさらに備え、
前記生産量取得部は、前記複数の電解槽のそれぞれにより前記期間に生産される前記生産物の生産量をさらに取得し、
前記生産量算出部は、前記複数の電解槽のそれぞれにより前記期間に生産される前記生産物の生産量をさらに算出し、
前記電解槽特定部は、前記生産量取得部により取得された前記生産物の生産量と、前記生産量算出部により算出された前記生産物の生産量とに基づいて、前記複数の電解槽のうち前記イオン交換膜を更新する電解槽を特定する、
請求項3、8および9のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記電解槽特定部は、前記複数の電解槽のうち、前記生産量取得部により取得された前記生産物の生産量が最小である電解槽を特定する、請求項10に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記陽極室からはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導出され、
前記陽極室に導入される前記アルカリ金属の塩化物の水溶液のpHおよび前記陽極室から導出される前記アルカリ金属の塩化物の水溶液のpHを取得するpH取得部をさらに備え、
前記電解槽特定部は、前記pH取得部により取得された前記アルカリ金属の塩化物の水溶液のpHに基づいて、前記複数の電解槽のうち前記イオン交換膜を更新する電解槽を特定する、
請求項5から7、10および11のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項13】
前記複数の電解槽のそれぞれにおける前記イオン交換膜の劣化速度を取得する劣化速度取得部をさらに備え、
前記電解槽特定部は、前記イオン交換膜の劣化速度に基づいて、前記複数の電解槽のうち前記イオン交換膜を更新する電解槽を特定する、
請求項5から7および10から12のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項14】
前記複数の電解槽のそれぞれにおける前記イオン交換膜のうち、一のイオン交換膜の劣化速度が予め定められた劣化速度以上である場合、前記電解槽特定部は、前記一のイオン交換膜を有する前記電解槽を特定する、請求項13に記載の運転支援装置。
【請求項15】
前記生産量算出部は、前記電解槽特定部により特定された前記一のイオン交換膜が更新された場合における、前記生産物の最大生産量をさらに算出し、
前記期間特定部は、前記最大生産量が前記目標生産量以上となる期間をさらに特定する、
請求項14に記載の運転支援装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の運転支援装置と、前記1または複数の電解槽とを備える運転支援システム。
【請求項17】
生産量取得部が、1または複数の電解槽により予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する生産量取得ステップと、
生産量算出部が、前記1または複数の電解槽が有するイオン交換膜が更新された場合における前記生産物の最大生産量であって、前記1または複数の電解槽により前記期間に生産される前記生産物の最大生産量を算出する最大生産量算出ステップと、
期間特定部が、前記予め定められた期間のうち、前記最大生産量が前記目標生産量以上となる期間を特定する期間特定ステップと、
を備える運転支援方法。
【請求項18】
コンピュータに、
1または複数の電解槽により、予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する生産量取得機能と、
前記1または複数の電解槽が有するイオン交換膜が更新された場合における前記生産物の最大生産量であって、前記1または複数の電解槽により前記期間に生産される前記生産物の最大生産量を算出する生産量算出機能と、
前記最大生産量が前記目標生産量以上となる前記期間を特定する期間特定機能と、
を実行させるための運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援システム、運転支援方法および運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「本実施形態のイオン交換膜の更新方法は、陽極側ガスケットと陰極側ガスケットとの間に前記イオン交換膜を挟む工程を有し、・・・」と記載されている(段落0052)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2019-19408号公報
【解決しようとする課題】
【0003】
イオン交換膜等を備えた電解装置においては、イオン交換膜等の性能が劣化すると電解装置により生産される生産物の生産効率が低下しやすい。このため、性能が劣化したイオン交換膜は交換されることが望ましい。一方で、イオン交換膜を交換する場合、電解装置の稼働を停止させる場合がある。電解装置の稼働を停止させた場合、停止させた期間において生産物は生産されなくなるので、生産物の生産量は、電解装置の稼働を停止させない場合と比較して小さくなる。このため、イオン交換膜の交換は、電解装置に稼働に係るコストが最小となるタイミングで実施されることが好ましい。
【0004】
電解装置により生産される生産物の生産計画においては、生産物の生産量は、時期に依存する場合がある。このため、イオン交換膜の交換は、生産物の生産計画を満たし得る時期に実施されることが好ましい。したがって、電解装置の運転を支援する運転支援装置は、電解装置の稼働に伴う総コストをできるだけ低下させつつ、生産物の生産計画を満たし得る、イオン交換膜の交換時期を特定可能であることが望ましい。
【一般的開示】
【0005】
本発明の第1の態様においては、運転支援装置を提供する。運転支援装置は、1または複数の電解槽により、予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する生産量取得部と、1または複数の電解槽が有するイオン交換膜が更新された場合における生産物の最大生産量であって、1または複数の電解槽により期間に生産される生産物の最大生産量を算出する生産量算出部と、最大生産量が目標生産量以上となる期間を特定する期間特定部と、を備える。
【0006】
運転支援装置は、1または複数の電解槽の稼働に係るコストを算出するコスト算出部をさらに備えてよい。期間特定部は、最大生産量が目標生産量以上となる期間のうち、コストが最小となるタイミングをさらに特定してよい。
【0007】
複数の電解槽は、それぞれイオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有してよい。陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され陰極室からはアルカリ金属の水酸化物の水溶液が導出されてよい。運転支援装置は、複数の電解槽のそれぞれに供給する電流であって、複数の電解槽により期間に生産される生産物の生産量が最大となるか、複数の電解槽により期間に消費される電力量が最小となるか、陽極室に導入されたアルカリ金属の塩化物であって陰極室から導出されるアルカリ金属の水酸化物の水溶液に含まれるアルカリ金属の塩化物の質量が最小となるか、または、陽極室から導出される塩素に含まれる酸素の質量が最小となる電流を算出する電流算出部と、電流算出部により算出された電流を、複数の電解槽のそれぞれに供給する電流供給部と、をさらに備えてよい。
【0008】
運転支援装置は、電力量取得部をさらに備えてよい。電力量取得部は、複数の電解槽のそれぞれが生産物を生産する電力量を取得してよい。電流算出部は、電力量が予め定められた電力量未満である場合に、生産物の生産量が最大となるか、または、アルカリ金属の塩化物の質量または酸素の質量が最小となる電流を算出してよい。
【0009】
運転支援装置は、複数の電解槽のうち、電力量が最大である電解槽を特定する電解槽特定部をさらに備えてよい。
【0010】
電力量取得部は、複数の電解槽における合計の電力量を取得してよい。電解槽特定部は、予め定められた期間における合計の電力量が最小である場合において、電力量が最大である電解槽を特定してよい。
【0011】
運転支援装置は、複数の電解槽のうち、電解槽の電流効率が最も低い電解槽を特定する電解槽特定部をさらに備えてよい。
【0012】
電流算出部は、アルカリ金属の塩化物の質量または酸素の質量が予め定められた濃度未満である場合に、生産物の生産量が最大となるか、または、電力量が最小となる電流を算出してよい。
【0013】
電流算出部は、複数の電解槽による、予め定められた期間における生産物の総生産量が最大となる、複数の電解槽のそれぞれへの電流を算出してよい。
【0014】
運転支援装置は、電解槽特定部をさらに備えてよい。生産量取得部は、複数の電解槽のそれぞれにより期間に生産される生産物の生産量をさらに取得してよい。生産量算出部は、複数の電解槽のそれぞれにより期間に生産される生産物の生産量をさらに算出してよい。電解槽特定部は、生産量取得部により取得された生産物の生産量と、生産量算出部により算出された生産物の生産量とに基づいて、複数の電解槽のうちイオン交換膜を更新する電解槽を特定してよい。
【0015】
電解槽特定部は、複数の電解槽のうち、生産量取得部により取得された生産物の生産量が最小である電解槽を特定してよい。
【0016】
陽極室からは、アルカリ金属の塩化物の水溶液が導出されてよい。運転支援装置は、陽極室に導入されるアルカリ金属の塩化物の水溶液のpHおよび陽極室から導出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液のpHを取得するpH取得部をさらに備えてよい。電解槽特定部は、pH取得部により取得されたアルカリ金属の塩化物の水溶液のpHに基づいて、複数の電解槽のうちイオン交換膜を更新する電解槽を特定してよい。
【0017】
運転支援装置は、複数の電解槽のそれぞれにおけるイオン交換膜の劣化速度を取得する劣化速度取得部をさらに備えてよい。電解槽特定部は、イオン交換膜の劣化速度に基づいて、複数の電解槽のうちイオン交換膜を更新する電解槽を特定してよい。
【0018】
複数の電解槽のそれぞれにおけるイオン交換膜のうち、一のイオン交換膜の劣化速度が予め定められた劣化速度以上である場合、電解槽特定部は、一のイオン交換膜を有する電解槽を特定してよい。
【0019】
生産量算出部は、電解槽特定部により特定された一のイオン交換膜が更新された場合における、生産物の最大生産量をさらに算出してよい。期間特定部は、最大生産量が目標生産量以上となる期間をさらに特定してよい。
【0020】
アルカリ金属の塩化物は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムであってよい。アルカリ金属の塩化物が塩化ナトリウムである場合、アルカリ金属の水酸化物は、水酸化ナトリウムであってよい。アルカリ金属の塩化物が塩化カリウムである場合、アルカリ金属の水酸化物は、水酸化カリウムであってよい。
【0021】
本発明の第2の態様においては、運転支援システムを提供する。運転支援システムは、運転支援装置と、1または複数の電解槽とを備える。
【0022】
本発明の第3の態様においては、運転支援方法を提供する。運転支援方法は、生産量取得部が、1または複数の電解槽により予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する生産量取得ステップと、生産量算出部が、1または複数の電解槽が有するイオン交換膜が更新された場合における生産物の最大生産量であって、1または複数の電解槽により期間に生産される生産物の最大生産量を算出する最大生産量算出ステップと、期間特定部が、予め定められた期間のうち、最大生産量が目標生産量以上となる期間を特定する期間特定ステップと、を備える。
【0023】
本発明の第4の態様においては、運転支援プログラムを提供する。運転支援プログラムは、コンピュータに、1または複数の電解槽により、予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する生産量取得機能と、1または複数の電解槽が有するイオン交換膜が更新された場合における生産物の最大生産量であって、1または複数の電解槽により期間に生産される生産物の最大生産量を算出する生産量算出機能と、最大生産量が目標生産量以上となる期間を特定する期間特定機能と、を実行させる。
【0024】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一つの実施形態に係る電解装置200の一例を示す図である。
図2図1に示される電解装置200をX軸方向から見た図である。
図3図2における1つの電解セル91の詳細の一例を示す図である。
図4図3に示される電解セル91におけるイオン交換膜84の近傍を拡大した図である。
図5】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の一例を示す図である。
図6】時間tと生産量Paとの関係の一例および時間tとコストCとの関係の一例を示す図である。
図7】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。
図8】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。
図9】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。
図10】表示部62における表示態様の一例を示す図である。
図11】第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の一例を示す図である。
図12】運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbの一例を示す図である。
図13】第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。
図14】第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。
図15】第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。
図16】運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbの場合における、時間tと電力量Pwとの関係の一例を示す図である。
図17】第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。
図18】第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。
図19】運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbの場合における、時間tと生産物Pの品質との関係の一例を示す図である。
図20】最適運転条件Cdbの導出方法の一例を示す模式図である。
図21】時間tとセル電圧CVとの関係の一例を示す図である。
図22】時間tと電流効率CEとの関係の一例を示す図である。
図23】最適運転条件Cdb導出方法の一例を示すフローチャートである。
図24】運転条件Cdaの場合および最適運転条件Cdbの場合における、イオン交換膜84(図3参照)の更新時期の一例を示す図である。
図25図23に示される最適運転条件Cdb導出方法を繰り返し実行する場合のフローの一例を示す図である。
図26】本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
図27】本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
図28】本発明の一つの実施形態に係る運転支援システム300の一例を示す図である。
図29】本発明の実施形態に係る運転支援装置100が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る電解装置200の一例を示す図である。本例の電解装置200は、複数の電解槽90(電解槽90-1~電解槽90-M。Mは2以上の整数)を備える。電解槽90は、電解液を電気分解する槽である。本例の電解装置200は、導入管92、導入管93、導出管94および導出管95を備える。導入管92および導入管93は、複数の電解槽90のそれぞれに接続される。導出管94および導出管95は、複数の電解槽90のそれぞれに接続される。
【0028】
複数の電解槽90のそれぞれには、液体70が導入される。液体70は、導入管92を通過した後、複数の電解槽90のそれぞれに導入されてよい。液体70は、アルカリ金属の塩化物の水溶液である。アルカリ金属は、元素周期表第1族に属する元素である。液体70は、NaCl(塩化ナトリウム)水溶液またはKCl(塩化カリウム)水溶液であってよい。複数の電解槽90のそれぞれには、液体72が導入される。液体72は、導入管93を通過した後、複数の電解槽90のそれぞれに導入されてよい。液体72は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液である。液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、液体72はNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である。液体70がKCl(塩化カリウム)水溶液である場合、液体72はKOH(水酸化カリウム)水溶液である。
【0029】
複数の電解槽90のそれぞれからは、液体76および気体78(後述)が導出される。液体76および気体78(後述)は、導出管95を通過した後、電解装置200の外部に導出されてよい。液体76は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液である。液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、液体76はNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である。液体70がKCl(塩化カリウム)水溶液である場合、液体76はKOH(水酸化カリウム)水溶液である。本例において、気体78(後述)はH(水素)である。
【0030】
複数の電解槽90のそれぞれからは、液体74および気体77(後述)が導出される。液体74および気体77(後述)は、導出管94を通過した後、電解装置200の外部に導出されてよい。液体74は、アルカリ金属の塩化物の水溶液である。液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、液体74はNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である。液体70がKCl(塩化カリウム)水溶液である場合、液体74はKCl(塩化カリウム)水溶液である。本例において、気体77(後述)はCl(塩素)である。
【0031】
本例において、複数の電解槽90は、予め定められた方向に配列されている。本明細書において、複数の電解槽90の予め定められた配列方向をX軸方向とする。本明細書において、X軸方向に直交し且つ導入管92から導出管94へ向かう方向をZ軸とする。本明細書において、X軸に直交し且つZ軸方向に直交する方向をY軸とする。Z軸方向は鉛直方向に平行であってよく、XY面は水平面であってよい。
【0032】
図2は、図1に示される電解装置200をX軸方向から見た図である。図2においては、電解槽90-Mを例に説明する。1つの電解槽90は、複数の電解セル91(電解セル91-1~電解セル91-N。Nは2以上の整数)を備えてよい。Nは、例えば50である。本例においては、電解槽90-1~電解槽90-Mのそれぞれが、複数の電解セル91を備えている。
【0033】
導入管92および導入管93は、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに接続される。電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれには、液体70が導入される。液体70は、導入管92を通過した後、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに導入されてよい。電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれには、液体72が導入される。液体72は、導入管93を通過した後、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに導入されてよい。
【0034】
導出管94および導出管95は、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに接続される。電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれからは、液体76および気体78(後述)が導出される。液体76および気体78(後述)は、導出管95を通過した後、電解装置200の外部に導出されてよい。電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれからは、液体74および気体77(後述)が導出される。液体74および気体77(後述)は、導出管94を通過した後、電解装置200の外部に導出されてよい。
【0035】
図3は、図2における1つの電解セル91の詳細の一例を示す図である。本例の電解セル91は、陽極80、陰極82およびイオン交換膜84を有する。電解セル91は、イオン交換膜84により仕切られた陽極室79および陰極室98を有する。陽極室79には、陽極80が配置される。陰極室98には、陰極82が配置される。陽極室79には、導入管92および導出管94が接続されている。陰極室98には、導入管93および導出管95が接続されている。
【0036】
イオン交換膜84は、イオン交換膜84に配置されたイオンとは同符号のイオンの通過を阻止し、且つ、異符号のイオンのみを通過させる、膜状の物質である。本例においては、イオン交換膜84は、イオン交換膜84に配置された陰イオン(後述する陰イオン基86)と同符号のイオン(即ち陰イオン)の通過を阻止し、且つ、異符号のイオン(即ち陽イオン)のみを通過させる陽イオン交換膜である。液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液であり、液体72がアルカリ金属の水酸化物の水溶液である場合、イオン交換膜84は、Na(ナトリウムイオン)を通過させ、且つ、OH(水酸化物イオン)およびCl(塩化物イオン)の通過を阻止する膜である。
【0037】
陽極80および陰極82は、それぞれ予め定められた正の電位および負の電位に維持されてよい。陽極室79に導入された液体70、および、陰極室98に導入された液体72は、陽極80と陰極82との間の電位差により、電気分解される。陽極80においては、次の化学反応が起こる。
[化学式1]
2Cl→Cl+2e
【0038】
液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、NaCl(塩化ナトリウム)は、Na(ナトリウムイオン)とCl(塩化物イオン)とに電離している。陽極80においては、化学式1に示される化学反応により塩素ガス(Cl)が生成される。Na(ナトリウムイオン)は、陰極82からの引力により、陽極室79からイオン交換膜84を経由した後、陰極室98に移動する。
【0039】
陽極室79においては、液体73が滞留していてよい。液体73は、アルカリ金属の塩化物の水溶液である。本例において、液体73はNaCl(塩化ナトリウム)水溶液であるとする。液体73のNa(ナトリウムイオン)濃度およびCl(塩化物イオン)濃度は、液体70のNa(ナトリウムイオン)濃度およびCl(塩化物イオン)濃度よりも小さくてよい。
【0040】
陰極82においては、次の化学反応が起こる。
[化学式2]
2HO+2e→H+2OH
【0041】
陰極室98には、液体75が滞留していてよい。液体75は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液である。本例においては、液体75はNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である。本例においては、陰極82においては、化学式2に示される化学反応により、水素ガス(H)と水酸化物イオン(OH)が生成される。本例においては、陰極室98には、化学式2に示される化学反応より生成した水酸化物イオン(OH)と、陽極室79から移動したNa(ナトリウムイオン)とが溶解した液体75が滞留している。
【0042】
図4は、図3に示される電解セル91におけるイオン交換膜84の近傍を拡大した図である。本例のイオン交換膜84には、陰イオン基86が固定されている。陰イオンは、陰イオン基86により反発されるので、イオン交換膜84を通過しにくい。本例において、当該陰イオンは、Cl(塩化物イオン)である。陽イオン71は、陰イオン基86により反発されないので、イオン交換膜84を通過できる。本例において、陽イオン71は、Na(ナトリウムイオン)である。
【0043】
図5は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の一例を示す図である。運転支援装置100は、電解装置200(図1参照)の運転を支援する。運転支援装置100は、生産量取得部10、生産量算出部20、期間特定部30および制御部40を備える。期間特定部30については、後述する。運転支援装置100は、入力部60、表示部62およびコスト算出部50を備えてよい。また、制御部40は、表示部62を制御する表示制御部を含んでよい。
【0044】
運転支援装置100は、一例としてCPU、メモリおよびインターフェース等を備えるコンピュータである。制御部40は、当該CPUであってよい。
【0045】
生産量取得部10は、1または複数の電解槽90(図1参照)により、予め定められた期間に生産される生産物の目標生産量を取得する。当該生産物を、生産物Pとする。本例においては、生産物PはNaOH(水酸化ナトリウム)およびCl(塩素)の少なくとも一方である。予め定められた期間とは、当該生産物の生産計画に基づく期間であってよい。当該予め定められた期間を、期間Tとする。生産物Pの目標生産量とは、期間Tにおける生産物Pの下限の生産量であってよい。生産物Pの生産量および目標生産量を、それぞれ生産量Paおよび目標生産量Pgとする。
【0046】
それぞれの電解槽90における生産量Paは、下記式1にて算出され得る。
【数1】
Aは定数である。生産物PがNaCl(塩化ナトリウム)である場合、Aは例えば1.492である。生産物PがKCl(塩化カリウム)である場合、Aは例えば2.093である。
【0047】
式(1)において、Ieは一つの電解槽90における電流であり、CEは一つの電解槽90における電流効率(後述)であり、nは電解槽90における電解セル91の数である。図1の例においては、n=Mである。電流Ieは、電解装置200を制御する統合生産制御システムDCS(Distributed Control System)から取得され得る。電流効率CEは、電流Ie、電解槽90における電解セル91の数n、生成される塩素ガス中の酸素濃度、および、陽極室79に供給されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体70)の酸度、陽極室79から排出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体74)の酸度、ClO(次亜塩素酸イオン)の生成量、および、ClO (塩素酸イオン)の生成量から算出され得る。
【0048】
電流効率CEは、陽極室79に供給される液体70の酸度と、陽極室79から排出される液体74の酸度との酸度差による損失(CEHCl)、O(酸素)発生による電流効率CEの損失(CEO2)、ClO(次亜塩素酸イオン)生成による電流効率CEの損失(CEClO)およびClO (塩素酸イオン)生成による電流効率CEの損失(CEClO3)を、100%から差し引くことにより算出され得る。
【数2】
式(2-2)において、Fはファラデー定数(=26.8A・hr/mol)である。
【0049】
式(2-2)において、AC(mol/hr)は、陽極室79に供給されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体70)の酸度と、陽極室79から排出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体74)との酸度差である。
【0050】
陽極室79に供給されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体70)の酸度をDh1とし、陽極室79から排出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体74)の酸度をDh2とする。陽極室79に供給されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体70)の流量をV(L/hr)とし、陽極室79から排出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体74)の流量をV''(L/hr)とする。式(2-3)におけるACは、以下の式(3)にて表される。
【数3】
【0051】
塩素(Cl2)(図3における気体77)に含まれるO(酸素)の濃度をDoとすると、式(2-1)におけるO(酸素)発生による電流効率CEの損失(CEO2)は、以下の式(4)にて表される。
【数4】
【0052】
陽極室79に供給されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体70)のClO(次亜塩素酸イオン)のモル濃度をDm1とし、陽極室79から排出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体74)のClO(次亜塩素酸イオン)のモル濃度をDm2とすると、式(2-1)におけるClO(次亜塩素酸イオン)生成による電流効率CEの損失(CEClO)は、以下の式(5)にて表される。
【数5】
【0053】
陽極室79に供給されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体70)のClO (塩素酸イオン)のモル濃度をDm1'とし、陽極室79から排出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液(図3における液体74)のClO (塩素酸イオン)のモル濃度をDm2'とすると、式(2-1)におけるClO (塩素酸イオン)生成による電流効率CEの損失(CEClO3)は、以下の式(6)にて表される。
【数6】
【0054】
目標生産量Pgは、入力部60により入力されてよい。運転支援装置100のユーザは、目標生産量Pgを入力部60により入力してよい。入力部60は、例えばキーボード、マウス等である。
【0055】
生産量算出部20は、イオン交換膜84(図3および図4参照)が更新された場合における生産物Pの最大生産量(後述する更新後最大生産量(生産量Pm2))を算出する。当該最大生産量は、電解槽90により期間Tに生産される生産物Pの最大生産量である。当該最大生産量を、最大生産量Pmとする。なお、生産量算出部20は、電解槽90(図1および図2参照)の部材であって、イオン交換膜84以外の部材が更新された場合における生産物Pの最大生産量を算出してもよい。
【0056】
イオン交換膜84が更新された場合とは、例えば、イオン交換膜84の性能が劣化した場合において、性能が劣化した当該イオン交換膜84が、新しいイオン交換膜84に更新された場合である。性能が劣化したイオン交換膜84を新しいイオン交換膜84に更新するとは、性能が劣化したイオン交換膜84が電解槽90を新しいイオン交換膜84に交換することを指してよい。
【0057】
上述したとおり、イオン交換膜84は陰イオン基86により陰イオンを反発する。イオン交換膜84の性能とは、イオン交換膜84が陰イオン基86により陰イオンを反発する能力を指す。イオン交換膜84の性能が劣化した場合とは、陰イオン基86に陽イオンの不純物が付着することにより、陰イオン基86に陽イオンの不純物が付着していない場合よりも、イオン交換膜84が陰イオン基86を反発する能力が劣化している場合を指す。イオン交換膜84の性能は、電解槽90(図1および図2参照)の稼働時間に伴い、劣化しやすい。
【0058】
最大生産量とは、電解装置200が理論上、生産物Pを生産可能な生産量Paを指す。本例においては、最大生産量は、複数の電解槽90のそれぞれにおける最大電流と電流効率とから算出される。当該最大電流および当該電流効率は、電解装置200が稼働されている場合において測定された電流の最大値および電流効率であってよい。例えば、最大電流は16.2kAである。ここで、電流効率とは、生産物Pの理論上の生産量Paに対する実際の生産量の割合を指す。
【0059】
算出された最大生産量Pmは、表示部62に表示されてよい。表示部62は、例えばディスプレイ、モニタ等である。
【0060】
コスト算出部50は、1または複数の電解槽90の稼働に係るコストを算出する。当該コストを、コストCとする。コストCは、電解装置200(図1および図2参照)の稼働のための電気コスト、および、イオン交換膜84の性能が劣化し切る前に当該イオン交換膜84が交換された場合におけるイオン交換膜84の未償還コストを含む。
【0061】
電解装置200の稼働のための電気コストは、それぞれの電解槽90における消費電力量に、単位消費電力量当たりの電気コストを積算することにより算出され得る。当該消費電力量は、電解槽90のセル電圧CV(後述)と、電解槽90に流れる電流と、稼働時間との積により算出され得る。電気コストが一日当たりの電気コストである場合、当該稼働時間は24時間であってよい。電解装置200の稼働のための電気コストは、複数の電解槽90の、合計の電気コストであってよい。
【0062】
コストCはさらに、電解装置200の保守(メンテナンス)コスト、機会損失コスト、および、イオン交換膜84が更新される場合における新しいイオン交換膜84の仕入れコストの少なくとも1つを含んでよい。イオン交換膜84が更新される場合、電解装置200が稼働不可能な期間が発生し得る。機会損失コストとは、電解装置200が稼働不可能な期間が発生した場合において、電解装置200が稼働され続けていれば得られていたはずの、生産物Pの利益を指す。
【0063】
図6は、時間tと生産量Paとの関係の一例および時間tとコストCとの関係の一例を示す図である。図6において、目標生産量が太い実線で、総コストが二点鎖線で、更新前最大生産量が一点鎖線で、更新後最大生産量が粗い破線で、それぞれ示されている。更新前最大生産量とは、イオン交換膜84が更新されない場合における、電解槽90による生産物Pの最大生産量Pmである。当該更新前最大生産量を、生産量Pm1とする。更新後最大生産量とは、イオン交換膜84が更新された場合における、電解槽90による生産物Pの最大生産量Pmである。当該更新後最大生産量を、生産量Pm2とする。
【0064】
イオン交換膜84が更新される場合、電解装置200の稼働が一旦停止され得る。このため、イオン交換膜84の更新に伴い、電解槽90が稼働できない時間が発生し得る。このため、生産量Pm2は生産量Pm1よりも小さくなりやすい。生産量Pm2は、生産量Pm1から、電解槽90が稼働できていれば生産できていた生産量を控除した生産量Paに等しい。なお、上述したとおり、イオン交換膜84の性能は、電解槽90(図1および図2参照)の稼働時間に伴い劣化しやすいので、生産量Pm1および生産量Pm2は、時間tの経過に伴い低下しやすい。
【0065】
時刻ゼロから時刻t1までの期間Tを、期間T1とする。時刻t1から時刻t2までの期間Tを、期間T2とする。時刻t2から時刻t3までの期間Tを、期間T3とする。時刻t3から時刻t4までの期間Tを、期間T4とする。本例においては、上述した複数の期間Tは、期間T1~期間T4を含む。期間T1は例えば1か月であり、期間T2~期間T4は例えば2か月である。
【0066】
期間T1における目標生産量Pgを、目標生産量Pg1とする。期間T2および期間T4における目標生産量Pgを、目標生産量Pg2とする。期間T3における目標生産量Pgを、目標生産量Pg3とする。本例において、目標生産量Pg2は目標生産量Pg1よりも大きく、目標生産量Pg3は目標生産量Pg1よりも小さい。
【0067】
期間特定部30(図5参照)は、イオン交換膜84が更新された場合における生産物Pの最大生産量Pm(生産量Pm2)が目標生産量Pg以上となる期間Tを特定する。本例においては、期間特定部30は、期間T1および期間T3の少なくとも一方を特定する。本例において、生産量Pm1は、期間T1~期間T4において目標生産量Pgよりも大きい。しかしながら、本例において、生産量Pm2は期間T2および期間T4において目標生産量Pgよりも小さい。このため、本例においては、イオン交換膜84が更新された場合、期間T2および期間T4において電解装置200(図1および図2参照)は目標生産量Pgの生産物Pを生産できない。図6において、期間T2および期間T4がハッチングで示されている。本例において、イオン交換膜84が更新された場合、期間T1および期間T3においては、電解装置200(図1および図2参照)は目標生産量Pgの生産物Pを生産できる。
【0068】
運転支援装置100においては、期間特定部30(図5参照)が、生産量Pm2が目標生産量Pg以上となる期間を特定する。このため、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84を更新可能な期間Tを知ることができる。なお、期間Tは、表示部62に表示されてよい。
【0069】
運転支援装置100がコンピュータである場合、当該コンピュータには、当該コンピュータを運転支援装置100として機能させるための運転支援プログラムがインストールされていてよい。当該コンピュータには、1または複数の電解槽90により、予め定められた期間Tに生産される生産物Pの目標生産量Pgを取得する生産量取得機能と、イオン交換膜84が更新された場合における生産物Pの最大生産量Pmであって、1または複数の電解槽90により期間Tに生産される生産物Pの最大生産量Pmを算出する生産量算出機能と、最大生産量Pmが目標生産量Pg以上となる期間Tを特定する期間特定機能と、を実行させるための運転支援プログラムがインストールされていてよい。運転支援装置100がコンピュータである場合、当該コンピュータには後述する運転支援方法を実行させるため運転支援プログラムがインストールされていてもよい。
【0070】
イオン交換膜84の性能は時間の経過に伴い劣化しやすいので、電解装置200(図1および図2参照)の稼働のための電気コストは、時間の経過に伴い増加しやすい。しかしながら、イオン交換膜84の性能が劣化し切る前に当該イオン交換膜84が交換された場合、イオン交換膜84の未償還コストが発生する。イオン交換膜84の性能が劣化し切る前において、当該未償還コストは時間の経過に伴い減少しやすい。このため、コストCは、時間の経過に伴い、ある時刻において極小になりやすい。本例において、コストCが極小となる時刻を時刻taとする。図6において、時刻taにおけるコストCの位置が黒い丸印で示されている。
【0071】
期間特定部30(図5参照)は、イオン交換膜84が更新された場合における生産物Pの最大生産量Pm(生産量Pm2)が目標生産量Pg以上となる期間Tのうち、コストCが最小となるタイミングを特定してよい。本例においては、時刻taは、生産量Pm2が目標生産量Pg未満となる期間T2に含まれるので、期間特定部30は、期間T1および期間T3のうち、コストCが最小となるタイミングを特定する。当該タイミングの時刻を、時刻t2とする。これにより、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84を更新可能な期間T、且つ、当該期間TにおいてコストCが最小となる時刻t2を知ることができる。図6において、時刻t2におけるコストCの位置が白い丸印で示されている。
【0072】
図7は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。本例の運転支援装置100は、電力量取得部51および電解槽特定部52をさらに備える点で、図5に示される運転支援装置100と異なる。
【0073】
電力量取得部51は、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれが、生産物Pを生産する電力量を取得する。当該電力量を、電力量Pwとする。電力量取得部51は、複数の電解槽90のそれぞれが、同じ量の生産物Pを生産する電力量Pwを取得してよい。生産物Pを生産する電力量Pwとは、生産物Pを単位量、生産するのに必要な電力量Pw(いわゆる電力原単位)であってよい。
【0074】
電解槽特定部52は、複数の電解槽90(図1参照)のうち、電力量Pwが最大である電解槽90を特定する。当該電力量Pwは、電力量取得部51により取得された電力量Pwである。電解槽特定部52は、1つの電解槽90を特定してよく、K個(1<K<M、Mは図1参照)の電解槽90を特定してもよい。
【0075】
イオン交換膜84が劣化するほど、当該イオン交換膜84を有する電解槽90が消費する電力量Pwは、大きくなりやすい。電力量Pwが最大である電解槽90とは、イオン交換膜84の劣化によりイオン交換膜84の劣化前よりも多くの電力を消費している電解槽90のうち、最も多くの電力を消費している電解槽90を指してよい。電解槽特定部52が、電力量Pwが最大である電解槽90を特定することにより、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84を更新することが好ましい電解槽90を知ることができる。
【0076】
電力量取得部51は、複数の電解槽90(図1参照)における合計の電力量Pwを取得してよい。電解槽特定部52は、期間Tにおける当該合計の電力量Pwが最小である場合において、複数の電解槽90のうち電力量Pwが一または複数の電解槽90を特定してよい。
【0077】
電解槽特定部52は、複数の電解槽90(図1参照)のうち、電流効率の最も低い電解槽90を特定してもよい。本例において、電流効率とは、生産物Pの理論上の生産量Paに対する実際の生産量Paの割合を指す。陽極室79(図3参照)にNaCl(塩化ナトリウム)水溶液が供給され、陰極室98(図3参照)にNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液が供給される場合、理論上の生産量Paは、電解槽90に流れる最大電流と電流効率とに基づいて算出される。
【0078】
電解槽特定部52は、複数の電解槽90(図1参照)により期間Tに生産される生産物Pの生産量Paが最大となるか、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pwが最小となるか、陰極室98から導出されるアルカリ金属の水酸化物の水溶液(図3における液体76)に含まれる、アルカリ金属の塩化物の質量が最小となるか、または、陽極室から導出される気体77(図3参照、本例においてはCl(塩素))に含まれるO(酸素)の質量が最小となる場合において、複数の電解槽90のうち、電流効率の最も低い電解槽90を特定してもよい。運転支援装置100は、複数の電解槽特定部52を備えてもよい。
【0079】
生産量取得部10は、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれにより期間Tに生産される生産物Pの生産量Paを取得してよい。生産量算出部20は、複数の電解槽90のそれぞれにより期間Tに生産される生産物Pの生産量Paを算出してよい。本例において、当該期間Tは期間T1~期間T4(図6参照)の少なくとも1つである。生産量算出部20により算出された生産量Paとは、電解装置200が期間Tにおいて理論上、生産可能な生産量Paを指してよい。
【0080】
電解槽特定部52は、生産量取得部10により取得された生産物Pの生産量Paと、生産量算出部20により算出された生産物Pの生産量Paとに基づいて、複数の電解槽90のうちイオン交換膜84を更新する電解槽90を特定してよい。電解槽特定部52は、当該取得された生産量Paと当該算出された生産量Paとの比に基づいて、当該更新する電解槽90を特定してもよい。イオン交換膜84が劣化している場合、当該比は1未満である。イオン交換膜84を更新する電解槽90とは、イオン交換膜84の性能が劣化することにより、イオン交換膜84を更新した方が好ましい電解槽90を指してよい。
【0081】
電解槽特定部52は、複数の電解槽90(図1参照)のうち、生産量取得部10により取得された生産物Pの生産量Paが最小である電解槽90を特定してもよい。図1に示される電解槽90-1~電解槽90-Mにおいて、それぞれの電解槽90が期間Tにおいて理論上、生産可能な生産量Paは、同じであってよく、異なっていてもよい。電解槽特定部52は、当該生産量Paが同じか異なるかにかかわらず、生産量Paが最小である電解槽90を特定してよい。
【0082】
図8は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。本例の運転支援装置100は、劣化速度取得部53をさらに備える点で、図7に示される運転支援装置100と異なる。劣化速度取得部53は、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれにおけるイオン交換膜84の劣化速度を取得する。当該劣化速度を、劣化速度Vdとする。
【0083】
上述したとおり、イオン交換膜84の性能は、電解槽90(図1および図2参照)の稼働時間に伴い劣化しやすい。イオン交換膜84の劣化速度Vdは、イオン交換膜84により異なる場合がある。イオン交換膜84の劣化速度Vdが異なる場合には、イオン交換膜84の予め定められた性能の範囲内において劣化速度Vdが個体差により異なる場合と、イオン交換膜84が予め定められた性能の範囲外であることにより当該性能の範囲内のイオン交換膜84よりも劣化速度Vdが大きい場合とがある。イオン交換膜84の予め定められた性能とは、イオン交換膜84の仕様上の性能であってよい。イオン交換膜84の性能が予め定められた性能の範囲外であるとは、例えば、イオン交換膜84が不良である場合、および、電解槽90が稼働している間にイオン交換膜84に穴が開いた場合、等である。
【0084】
イオン交換膜84の劣化速度Vdが異なる場合には、さらに、イオン交換膜84の種類が異なることにより劣化速度Vdが異なる場合がある。イオン交換膜84の種類とは、陰イオン基86の種類であってよい。複数の電解槽90(図1参照)の種類は、同じであってよく、相互に異なっていてもよい。電解槽90の種類とは、陽極80および陰極82の少なくとも一方の種類であってよい。複数の電解槽90の種類が相互に異なる場合、それぞれの電解槽90に最適なイオン交換膜84の種類は、異なる場合がある。
【0085】
電解槽特定部52は、劣化速度取得部53により取得されたイオン交換膜84の劣化速度Vdに基づいて、複数の電解槽90(図1参照)のうちイオン交換膜84を更新する電解槽90を特定してよい。電解槽特定部52は、イオン交換膜84の劣化速度Vdに基づいて、予め定められた性能の範囲内にある複数のイオン交換膜84のうち、劣化速度Vdが最も速いイオン交換膜84を有する電解槽90を特定してよい。電解槽特定部52により特定された電解槽90(図1参照)のイオン交換膜84は、更新されてよい。
【0086】
イオン交換膜84の性能が、上述した予め定められた性能の範囲内である場合における、イオン交換膜84の予め定められた劣化速度Vdを、劣化速度Vdaとする。複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれにおけるイオン交換膜84のうち、一のイオン交換膜84の劣化速度Vdが劣化速度Vda以上である場合、電解槽特定部52は、当該一のイオン交換膜84を有する電解槽90(図1参照)を特定してよい。劣化速度Vdが劣化速度Vda以上である場合とは、例えばイオン交換膜84が不良である場合、電解槽90が稼働している間にイオン交換膜84に穴が開いた場合、等である。当該一のイオン交換膜84は、上述した予め定められた性能の範囲外のイオン交換膜84であってよい。電解槽特定部52により特定された電解槽90における当該一のイオン交換膜84は、更新されてよい。
【0087】
イオン交換膜84が更新された場合、図6に示される時間tと生産量Pm1との関係、時間tと生産量Pm2との関係および時間tとコストCとの関係は、更新される。生産量算出部20は、電解槽特定部52により特定された、劣化速度Vdが劣化速度Vda以上である一のイオン交換膜84が更新された場合における、生産物Pの最大生産量Pmをさらに算出してよい。当該一のイオン交換膜84が更新された場合において、期間特定部30は、最大生産量Pmが目標生産量Pd以上となる期間Tをさらに特定してよく、生産物Pの最大生産量Pm(生産量Pm2)が目標生産量Pg以上となる期間TのうちコストCが最小となるタイミングを、さらに特定してよい。
【0088】
図9は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。本例の運転支援装置100は、pH取得部54、電流算出部55および電流供給部56をさらに備える点で、図8に示される運転支援装置100と異なる。pH取得部54は、陽極室79(図3参照)に導入されるNaCl(塩化ナトリウム)水溶液のpHおよび陽極室79から導出されるNaCl(塩化ナトリウム)水溶液のpHを取得するか、または、陽極室79に導入されるKCl(塩化カリウム)水溶液のpHおよび陽極室79から導出されるKCl(塩化カリウム)水溶液のpHを取得する。電流算出部55および電流供給部56については、後述する。以降の説明においては、陽極室79にはNaCl(塩化ナトリウム)水溶液が導入され、陰極室98からはNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液が導出されるとし、陽極室79にKCl(塩化カリウム)水溶液が導入され、陰極室98からKOH(水酸化カリウム)水溶液が導出される場合の説明を省略する。
【0089】
電解槽特定部52は、pH取得部54により取得されたNaCl(塩化ナトリウム)水溶液のpHに基づいて、複数の電解槽90(図1参照)のうちイオン交換膜84を更新する電解槽90を特定してよい。当該NaCl(塩化ナトリウム)水溶液は、陽極室79に導入されるNaCl(塩化ナトリウム)水溶液(図3における液体70)であってよい。当該NaOH(水酸化ナトリウム)水溶液は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液(図3における液体76)であってよい。
【0090】
イオン交換膜84が劣化していない場合、陰極室98のOH(水酸化物イオン)はイオン交換膜84を通過しにくい。しかしながら、イオン交換膜84が劣化している場合、陰極室98のOH(水酸化物イオン)は、イオン交換膜84を通過して陽極室79に移動する場合がある。このため、電解槽特定部52は、NaCl(塩化ナトリウム)水溶液のpHに基づいて、劣化したイオン交換膜84を有する電解槽90を特定できる。
【0091】
図10は、表示部62における表示態様の一例を示す図である。本例において、表示部62には第1選択部66、指定部64および第2選択部67が表示されている。本例において、運転支援装置100のユーザは、第1選択部66および指定部64において電解装置200(図1参照)を稼働させるための第1条件Cd1を入力部60(図9参照)により入力してよい。本例において、運転支援装置100のユーザは、第2選択部67において電解装置200を稼働させるための第2条件Cd2を入力部60により入力する。
【0092】
本例において、第1選択部66は3つの選択肢63(選択肢63-1~選択肢63-3)を含み、第2選択部67は5つの選択肢65(選択肢65-1~選択肢65-5)を含む。本例において、表示部62には3つの指定部64(指定部64-1~指定部64-3)が表示されている。
【0093】
第2条件Cd2は、電解装置200(図1参照)により生産物Pを生産する場合において、運転支援装置100のユーザが達成したい条件(即ち目的条件)である。電流算出部55(図9参照)は、複数の電解槽90(図1参照)により期間Tに生産される生産物Pの生産量Paが最大となるか、期間Tに消費される電力量Pwが最小となるか、陽極室79に導入されたNaCl(塩化ナトリウム)であって陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となるか、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が最小となる電流を算出する。
【0094】
陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液におけるNaOH(水酸化ナトリウム)、および、陽極室79から導出されるCl(塩素)は、電解槽90の生産物P(即ち目的生産物)である。このため、当該NaOH(水酸化ナトリウム)に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、および、当該Cl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量は、小さいほど好ましい。
【0095】
電流算出部55は、選択肢65-1~選択肢65-5のいずれかの選択肢65が選択されたことを契機として、生産量Paが最大となるか、電力量Pwが最小となるか、NaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となるか、または、O(酸素)の質量が最小となる電流を算出してよい。電流算出部55(図9参照)は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液のNaCl(塩化ナトリウム)濃度が最小となるか、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)のO(酸素)濃度が最小となる電流を算出してもよい。
【0096】
第1条件Cd1は、電解装置200(図1参照)により生産物Pを生産する場合において、第2条件Cd2を満たしつつ保証される条件である。第1条件Cd1は、運転支援装置100のユーザが、第2条件Cd2を満たしつつ保証したい条件(即ち制約条件)であってよい。
【0097】
図11は、第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の一例を示す図である。本例においては、第1条件Cd1は選択されていないが、NaOH(水酸化ナトリウム)の生産量Paとして、予め定められた生産量Pa1が指定されているとする。本例においては、第2条件Cd2として選択肢65-3が選択されている。
【0098】
電流算出部55は、生産物Pの生産量Paが予め定められた生産量以上である場合に、電力量Pwが最小となる電流を算出してよい。本例においては、電流算出部55は、NaOH(水酸化ナトリウム)の生産量Paが生産量Pa1以上である場合に、電力量Pwが最小となる電流を算出する。生産量Pa1は、例えば400トン/日である。
【0099】
図12は、運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbの一例を示す図である。最適運転条件Cdbとは、複数の電解槽90のそれぞれに供給される電流が、電解装置200が第1条件Cd1を満たしつつ第2条件Cd2を満たすように最適化された条件である。運転条件Cdaとは、最適運転条件Cdbされる前の運転条件であってよい。本例においては、電解装置200は6つの電解槽90(電解槽90-1~電解槽90-6)を備えるとする。本例において、運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbは、表示部62に表示されてよい。
【0100】
表示部62には、複数の電解槽90のそれぞれに各電流が供給される場合における、複数の電解槽90のそれぞれのセル電圧CVおよび電流効率CE、複数の電解槽90のそれぞれにおける生産量Paおよび電力量Pwが、合わせて表示されてよい。なお、上述したとおり、本例において電流効率CEとは、生産物Pの理論上の生産量Paに対する実際の生産量Paの割合を指す。
【0101】
複数の電解槽90(図1参照)が消費する総電力量を、総電力量Pwsとする。電流算出部55は、総電力量Pwsが最小となる、それぞれの電解槽90への電流を算出してよい。上述したとおり、複数の電解槽90のそれぞれが有するイオン交換膜84の性能は、相互に異なる場合がある。このため、複数の電解槽90のそれぞれに供給される電流の大きさが異なる場合、当該電流の大きさが同じである場合よりも、総電力量Pwsが小さくなる場合がある。
【0102】
電流算出部55は、複数の電解槽90へ供給される総電流の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、総電力量Pwsが最小となるように算出してよい。図12に示される運転条件Cdaは、総電流(本例においては大きさ73.9kA)が6つの電解槽90に等しく配分される場合の一例であり、運転条件Cdbは、総電流(本例においては大きさ73.9kA)が、総電力量Pwsが最小となるように配分される場合の一例である。本例において、1つの電解槽90における電解セル91(図2参照)の数Nは、160である。
【0103】
電流供給部56(図9参照)は、電流算出部55により算出された電流を、複数の電解槽90のそれぞれに供給する。電流供給部56は、電流算出部55により算出された、複数の電解槽90のそれぞれに配分される大きさの電流を、複数の電解槽90のそれぞれに供給してよい。これにより、運転支援装置100は、NaOH(水酸化ナトリウム)の生産量Paが生産量Pa1以上であることを保証しつつ、電力量Pwが最小となるように電解装置200の運転を支援できる。
【0104】
NaOH(水酸化ナトリウム)の生産量Paとして、予め定められた生産量Pa1が指定され、第2条件Cd2として選択肢65-1(即ちNaOH(水酸化ナトリウム)の生産量)が選択された場合、電流算出部55は、生産物Pの生産量Paが予め定められた生産量以上であり、且つ、当該生産量Paが最大となる電流を算出してよい。
【0105】
図13は、第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。本例においては、第2条件Cd2として選択肢65-4が選択されている。本例は、係る点で図11に示される例と異なる。本例においても、NaOH(水酸化ナトリウム)の生産量Paとして、予め定められた生産量Pa1が指定されているとする。第2条件Cd2として、選択肢65-5が選択されてもよい。
【0106】
電流算出部55は、生産物Pの生産量Paが予め定められた生産量Pa1以上である場合に、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となるか、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が最小となる電流を算出してよい。電流算出部55は、複数の電解槽90へ供給される総電流の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、NaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となるか、または、O(酸素)の質量が最小となるように算出してよい。
【0107】
図14は、第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。本例においては、第1条件Cd1として選択肢63-1が選択され、指定部64-1に予め定められた電力量Pw1が入力されている。本例においては、第2条件Cd2として選択肢65-1が選択されている。第2条件Cd2として、選択肢65-2が選択されてもよい。
【0108】
電流算出部55は、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pwが予め定められた電力量未満である場合に、生産物Pの生産量Paが最大となる電流を算出してよい。本例においては、電流算出部55は、期間Tに消費される電力量Pwが電力量Pw1未満である場合に、生産量Paが最大となる電流を算出する。電力量Pw1は、例えば800000kWh/日である。
【0109】
複数の電解槽90(図1参照)による期間Tにおける総生産量を、総生産量Pasとする。電流算出部55は、総生産量Pasが最大となる、それぞれの電解槽90への電流を算出してよい。電流算出部55は、図12の場合と同様に、複数の電解槽90へ供給される総電流の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、総生産量Pasが最大となるように算出してよい。
【0110】
電流供給部56は、電流算出部55により算出された、複数の電解槽90のそれぞれに配分される大きさの電流を、複数の電解槽90のそれぞれに供給してよい。これにより、運転支援装置100は、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pwが電力量Pw1未満であることを保証しつつ、生産量Paが最大となるように電解装置200の運転を支援できる。
【0111】
第1条件Cd1として選択肢63-1(即ち電力量Pw)が選択され、第2条件Cd2として選択肢65-3(即ち電力量Pw)が選択された場合、電流算出部55は、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pwが予め定められた電力量Pw1未満であり、且つ、当該電力量Pwが最小となる電流を算出してよい。
【0112】
図15は、第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。本例においては、第2条件Cd2として選択肢65-4が選択されている。本例は、係る点で図14に示される例と異なる。第2条件Cd2として、選択肢65-5が選択されてもよい。
【0113】
電流算出部55は、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pwが予め定められた電力量Pw1未満である場合に、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となるか、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が最小となる電流を算出してよい。電流算出部55は、図12の場合と同様に、複数の電解槽90へ供給される総電力量の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、NaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となるか、または、O(酸素)の質量が最小となるように算出してよい。
【0114】
図16は、運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbの場合における、時間tと電力量Pwとの関係の一例を示す図である。図16は、時刻t0に生産物Pの生産が開始された場合における、時間tと電力量Pwとの関係の一例である。時刻tL0~時刻tL2は、それぞれ一時刻であってよく、一定期間(例えば一週間等)であってもよい。
【0115】
電力量Pwの閾値を、閾値電力Pthとする。閾値電力Pthは、例えば電力会社から要求される電力の最大値である。上述したとおり、イオン交換膜84(図3参照)の性能は、電解槽90(図1および図2参照)の稼働時間に伴い、劣化しやすい。このため、電力量Pwは、時間tの経過に伴い増加しやすい。本例においては、時刻tL1までは電力量Pwが閾値電力Pth未満であったが、時刻tL2において電力量Pwが閾値電力Pth以上になったとする。
【0116】
図14および図15の少なくとも一方の場合における第1条件Cd1が選択された場合、電流算出部55は、複数の電解槽90へ供給される総電力量の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、電力量Pwが閾値電力Pth未満となるように算出してよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、時刻tL2においてイオン交換膜84を交換しなくとも、電解装置200の稼働を継続することを選択できる。
【0117】
図14に示される例においては、電流算出部55は、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、電力量Pwが閾値電力Pth未満となるように算出した後、生産物Pの生産量Paが最大となる電流を、さらに算出してよい。これにより、運転支援装置100は、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pwが閾値電力Pth未満であることを保証しつつ、生産量Paが最大となるように電解装置200の運転を支援できる。
【0118】
図17は、第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。本例においては、第1条件Cd1として選択肢63-2が選択され、指定部64-2に予め定められた質量M1が入力されている。第1条件Cd1として選択肢63-3が選択され、指定部64-3に予め定められた質量M1が入力されてもよい。本例においては、第2条件Cd2として選択肢65-1が選択されている。第2条件Cd2として、選択肢65-2が選択されてもよい。
【0119】
電流算出部55は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が予め定められた質量未満である場合に、生産物Pの生産量Paが最大となる電流を算出してよい。本例においては、電流算出部55は、NaCl(塩化ナトリウム)の質量が質量M1未満である場合に、生産量Paが最大となる電流を算出する。質量M1は、例えば40g/Lである。
【0120】
電流算出部55は、複数の電解槽90の全ての陰極室98から導出されるNaCl(塩化ナトリウム)の質量が質量M1未満である場合に、生産物Pの総生産量Pasが最大となる、それぞれの電解槽90への電流を算出してよい。電流算出部55は、図12の場合と同様に、複数の電解槽90へ供給される総電流の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、総生産量Pasが最大となるように算出してよい。
【0121】
電流供給部56は、電流算出部55により算出された、複数の電解槽90のそれぞれに配分される大きさの電流を、複数の電解槽90のそれぞれに供給してよい。これにより、運転支援装置100は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が、予め定められた質量M1未満であることを保証しつつ、生産量Paが最大となるように電解装置200の運転を支援できる。
【0122】
第1条件Cd1として選択肢63-2(即ちNaCl(塩化ナトリウム)の質量)が選択され、第2条件Cd2として選択肢65-4(即ちNaCl(塩化ナトリウム)の質量)が選択された場合、電流算出部55は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量が予め定められた質量M1未満であり、且つ、当該NaCl(塩化ナトリウム)の質量が最小となる電流を算出してよい。
【0123】
図18は、第1条件Cd1および第2条件Cd2が選択された場合における、表示部62の表示態様の他の一例を示す図である。本例においては、第2条件Cd2として選択肢65-3が選択されている。本例は、係る点で図17に示される例と異なる。
【0124】
電流算出部55は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が予め定められた質量未満である場合に、複数の電解槽90により期間Tに消費される電力量Pw(総電力量Pws)が最小となる電流を算出してよい。電流算出部55は、図12の場合と同様に、複数の電解槽90へ供給される総電流の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、総電力量Pwsが最小となるように算出してよい。
【0125】
図19は、運転条件Cdaおよび最適運転条件Cdbの場合における、時間tと生産物Pの品質との関係の一例を示す図である。本例において、生産物Pの品質とは、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量である。図19は、時刻t0に生産物Pの生産が開始された場合における、時間tと生産物Pの品質との関係の一例である。
【0126】
上述したとおり、イオン交換膜84(図3参照)の性能は、電解槽90(図1および図2参照)の稼働時間に伴い、劣化しやすい。このため、生産物Pの品質は、時間tの経過に伴い、劣化しやすい。生産物Pの品質の閾値を、閾値Qthとする。本例において、閾値Qthは、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量の最大値、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量の最大値である。図19において、生産物Pの品質が閾値Qthよりも大きいほど品質が悪いとし、閾値Qthよりも小さいほど品質が良いとする。
【0127】
運転条件Cdaの場合において、生産物Pの品質が閾値Qthに達する時刻を、時刻tL1'とする。時刻t0から時刻tL1'までの時間を、時間TL1とする。最適運転条件Cdbの場合において、生産物Pの品質が閾値Qthに達する時刻を、時刻tL2'とする。時刻t0から時刻tL2'までの時間を、時間TL2とする。
【0128】
図17および図18の少なくとも一方の場合における第1条件Cd1が選択された場合、電流算出部55は、複数の電解槽90へ供給される総電流の大きさを維持しつつ、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が、閾値Qth未満となるように算出してよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、時刻tL1'においてイオン交換膜84を交換しなくとも、時刻tL2'まで電解装置200の稼働を継続することができる。
【0129】
図17に示される例においては、電流算出部55は、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさを、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が、閾値Qth未満となるように算出した後、生産物Pの生産量Paが最大となる電流を、さらに算出してよい。これにより、運転支援装置100は、陰極室98から導出されるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液に含まれるNaCl(塩化ナトリウム)の質量、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が、閾値Qth未満であることを保証しつつ、生産量Paが最大となるように電解装置200の運転を支援できる。
【0130】
図11図13図15図17および図18は、第1条件C1が1つ選択され、第2条件C2が1つ選択された場合の例である。第1条件C1は複数選択されてもよく、第2条件C2は複数選択されてもよい。
【0131】
図20は、最適運転条件Cdbの導出方法の一例を示す模式図である。運転条件推論モデル21は、第1条件Cd1(図11等参照)、第2条件Cd2(図11等参照)および測定値Meが入力された場合、第1条件Cd1、第2条件Cd2および測定値Meに対する最適運転条件Cdbを出力する。ここで、測定値Meは、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれに供給される電流の測定値、複数の電解槽90のそれぞれに供給される電圧の測定値、複数の電解槽90のそれぞれの温度、複数の電解槽90のそれぞれの陰極室98におけるNaCl(塩化ナトリウム)の濃度または質量、複数の電解槽90のそれぞれの陽極室79におけるO(酸素)の濃度または質量、複数の電解槽90のそれぞれの陰極室98におけるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液のpH、および、複数の電解槽90のそれぞれの陽極室79におけるNaCl(塩化ナトリウム)水溶液のpHの少なくとも1つを含んでよい。
【0132】
運転条件推論モデル21は、第1条件Cd1(図11等参照)と、第2条件Cd2(図11等参照)と、測定値Meと、最適運転条件Cdbとを機械学習することにより、生成されてよい。運転条件推論モデル21は、回帰式であってもよい。
【0133】
図21は、時間tとセル電圧CVとの関係の一例を示す図である。図22は、時間tと電流効率CEとの関係の一例を示す図である。図21および図22において、現在の時刻を時刻tpとする。上述したとおり、イオン交換膜84(図3参照)の性能は、電解槽90(図1および図2参照)の稼働時間に伴い、劣化しやすい。このため、過去から現在時刻tpにかけて、セル電圧CVは増加しやすく、電流効率CEは減少しやすい。
【0134】
時刻tp以降の時間tとセル電圧CVとの関係および時間tと電流効率CEとの関係は、運転条件推論モデル21に基づいて、算出されてよい。図21および図22において、当該算出された時間tとセル電圧CVとの関係および時間tと電流効率CEとの関係が、破線にて示されている。
【0135】
図23は、最適運転条件Cdb導出方法の一例を示すフローチャートである。ステップS100は、測定値Me取得ステップである。ステップS100において、運転支援装置100が測定値Meを取得してよい。測定値Meは、上述したとおり、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれに供給される電流の測定値、複数の電解槽90のそれぞれに供給される電圧の測定値、複数の電解槽90のそれぞれの温度、複数の電解槽90のそれぞれの陰極室98におけるNaCl(塩化ナトリウム)の濃度または質量、複数の電解槽90のそれぞれの陽極室79におけるO(酸素)の濃度または質量、複数の電解槽90のそれぞれの陰極室98におけるNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液のpH、および、複数の電解槽90のそれぞれの陽極室79におけるNaCl(塩化ナトリウム)水溶液のpHの少なくとも1つを含んでよい。
【0136】
ステップS102は、予測値算出ステップである。ステップS102において、運転支援装置100は、運転条件推論モデル21に基づいて予測値Mpを算出してよい。予測値Mpは、例えば図21および図22における破線部に含まれる値である。
【0137】
ステップS104は、運転条件Cda導出ステップである。ステップS104において、運転支援装置100は、第1条件Cd1を満たす運転条件を、運転条件推論モデル21に基づいて導出してよい。
【0138】
ステップS106は、最適運転条件Cdb導出ステップである。ステップS106において、運転支援装置100は、第2条件Cd2をさらに満たす運転条件を、運転条件推論モデル21に基づいて導出してよい。
【0139】
ステップS108は、判断ステップである。ステップS108において、運転支援装置100は、ステップS106において導出された最適運転条件Cdbが所望の運転条件(例えば第1条件Cd1および第2条件Cd2)を満たすかを判断する。当該所望の運転条件を満たすと判断された場合、運転支援装置100は、最適運転条件Cdbの導出を終了する。当該所望の運転条件を満たさないと判断された場合、運転支援装置100はステップS104に戻り、運転条件Cdaを再度導出する。
【0140】
図24は、運転条件Cdaの場合および最適運転条件Cdbの場合における、イオン交換膜84(図3参照)の更新時期の一例を示す図である。運転条件Cdaの場合とは、運転条件推論モデル21により最適運転条件Cdbが導出される前の運転条件でってよい。運転条件Cdaの場合、イオン交換膜84の最適更新時期は、早い順に電解槽90-1~電解槽90-6であるとする。最適運転条件Cdbの場合、複数の電解槽90のそれぞれに配分される電流の大きさが、運転条件Cdaの場合と比較して変化し得る。このため、最適運転条件Cdbの場合、イオン交換膜84の最適更新時期は、運転条件Cdaの場合と比較して変化し得る。本例においては、電解槽90-2~電解槽90-5の更新の順番が、運転条件Cdaの場合と比較して変化している。
【0141】
図25は、図23に示される最適運転条件Cdb導出方法を繰り返し実行する場合のフローの一例を示す図である。最適運転条件Cdb導出方法は、時間Tiの間隔で繰り返し実行されてよい。時間Tiは、例えば1か月である。本例においては、ステップS200~ステップS204において、それぞれ1回目~3回目の最適運転条件Cdb導出方法が実行される。
【0142】
ステップS202において導出された最適運転条件Cdbは、ステップS200における最適運転条件Cdbと比較して、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれに配分される電流が異なっていてよい。本例において、ステップS204は、図6に示される時刻t2のタイミング(イオン交換膜84の更新が可能、且つ、コストCが最小となるタイミング)であるとする。ステップS204において、最適運転条件Cdbは、イオン交換膜84が更新された後に導出されてよい。ステップS210においては、最適運転条件Cdbが導出されてもなお、最適運転条件Cdbが所望の運転条件を満たさないとする。ステップS210においては、最適運転条件Cdbは、陰極82および陽極80が更新された後に導出されてよい。
【0143】
図26は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法は、電解装置200(図1参照)の運転を支援する運転支援方法である。
【0144】
生産量取得ステップS300は、生産量取得部10(図5参照)が、1または複数の電解槽90(図1参照)により、予め定められた期間Tに生産される生産物Pの目標生産量Pg(図6参照)を取得するステップである。生産量算出ステップS302は、生産量算出部20が、1または複数の電解槽90により予め定められた期間Tに生産される生産物Pの最大生産量Pm(図6における生産量Pm2)を算出するステップである。最大生産量Pmは、イオン交換膜84(図3参照)が更新された場合における生産物Pの最大生産量である。
【0145】
なお、生産量算出ステップS302は、生産量取得ステップS300の後に実施されてよく、前に実施されてもよい。生産量算出ステップS302は、生産量取得ステップS300と同時に実施されてもよい。
【0146】
期間特定ステップS318は、期間特定部30(図5参照)が、最大生産量Pmが目標生産量Pg以上となる期間を特定するステップである。運転支援方法においては、期間特定ステップS318において、期間特定部30が、最大生産量Pmが目標生産量Pg以上となる期間を特定する。このため、運転支援方法のユーザは、イオン交換膜84を更新可能な期間Tを知ることができる。
【0147】
図27は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。本例の運転支援方法は、ステップS304~ステップS316をさらに備える点で、図26に示される運転支援方法と異なる。
【0148】
コスト算出ステップS304は、コスト算出部50(図5参照)が、1または複数の電解槽90(図1参照)の稼働に係るコストを算出するステップである。劣化速度取得ステップS306は、劣化速度取得部53(図9参照)が、複数の電解槽90のそれぞれにおけるイオン交換膜84(図3参照)の劣化速度を取得するステップである。pH取得ステップS308は、pH取得部54(図9参照)が、陽極室79に導入されるアルカリ金属の塩化物の水溶液のpHおよび陽極室79から導出されるアルカリ金属の塩化物の水溶液のpHを取得するステップである。
【0149】
電流算出ステップS310は、電流算出部55(図9参照)が、複数の電解槽90(図1参照)により期間Tに生産される生産物Pの総生産量Pasが最大となるか、複数の電解槽90により期間Tに消費される総電力量Pwsが最小となるか、陽極室79に導入されたアルカリ金属の塩化物であって陰極室98から導出されるアルカリ金属の水酸化物の水溶液に含まれるアルカリ金属の塩化物の質量が最小となるか、または、陽極室79から導出されるCl(塩素)に含まれるO(酸素)の質量が最小となる 電流を算出するステップである。電流供給ステップS312は、電流供給部56(図9参照)が、電流算出ステップS310において算出された電流を、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれに供給するステップである。
【0150】
電力量取得ステップS314は、電力量取得部51(図9参照)が、複数の電解槽90(図1参照)のそれぞれが、生産物Pを生産する電力量Pwを取得するステップである。電解槽特定ステップS316は、電解槽特定部52(図9参照)が、複数の電解槽90のうち、電力量Pwが最大である電解槽90を特定するステップである。
【0151】
期間特定ステップS318において、期間特定部30は、期間Tのうち、コスト算出ステップS304において算出されたコストCが最小となるタイミング(図6における時刻t2)を特定してよい。これにより、運転支援方法のユーザは、イオン交換膜84(図3参照)を更新可能な期間T、且つ、当該期間TにおいてコストCが最小となる時刻t2を知ることができる。
【0152】
電解槽特定ステップS316において、電解槽特定部52(図9参照)は、複数の電解槽90のうち電力量Pwが最大である電解槽90を特定する。これにより、運転支援方法のユーザは、イオン交換膜84(図3参照)を更新することが好ましい電解槽90(図1参照)を知ることができる。上述したとおり、期間特定ステップS318において、運転支援方法のユーザは、イオン交換膜84を更新可能な期間Tを知ることができる。これにより、運転支援方法のユーザは、当該期間Tにイオン交換膜84を更新できる。
【0153】
図28は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援システム300の一例を示す図である。運転支援システム300は、運転支援装置100と、1または複数の電解槽90(本例においては電解槽90-1~電解槽90-M)を備える。図28において、運転支援装置100の範囲が粗い破線部で、運転支援システム300の範囲が細か破線部で、それぞれ示されている。
【0154】
本発明の様々な実施形態は、 フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよい。本発明の様々な実施形態において、ブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。
【0155】
特定の段階が、専用回路、プログラマブル回路またはプロセッサによって実行されてよい。特定のセクションが、専用回路、プログラマブル回路またはプロセッサによって実装されてよい。当該プログラマブル回路および当該プロセッサは、コンピュータ可読命令と共に供給されてよい。当該コンピュータ可読命令は、コンピュータ可読媒体上に格納されてよい。
【0156】
専用回路は、デジタルハードウェア回路およびアナログハードウェア回路の少なくとも一方を含んでよい。専用回路は、集積回路(IC)およびディスクリート回路の少なくとも一方を含んでもよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NORまたは他の論理操作のハードウェア回路を含んでよい。プログラマブル回路は、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでもよい。
【0157】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。コンピュータ可読媒体が当該有形なデバイスを含むことにより、当該デバイスに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。
【0158】
コンピュータ可読媒体は、例えば電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等であってよい。コンピュータ可読媒体は、より具体的には、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等であってよい。
【0159】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、ソースコードおよびオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。当該ソースコードおよび当該オブジェクトコードは、オブジェクト指向プログラミング言語および従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されてよい。オブジェクト指向プログラミング言語は、例えばSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等であってよい。手続型プログラミング言語は、例えば「C」プログラミング言語であってよい。
【0160】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路は、図11図13に示されるフローチャート、または、図4に示されるブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサは、例えばコンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等であってよい。
【0161】
図29は、本発明の実施形態に係る運転支援装置100が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る運転支援装置100に関連付けられる操作または運転支援装置100の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、またはコンピュータ2200に、本発明の運転支援方法に係る各段階(図23図25図27参照)を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載されたフローチャート(図23図25図27)およびブロック図(図5図7図9)におけるブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0162】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216およびディスプレイデバイス2218を含む。CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216およびディスプレイデバイス2218は、ホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200は、通信インターフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226およびICカードドライブ等の入出力ユニットをさらに含む。通信インターフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226およびICカードドライブ等は、入出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータは、ROM2230およびキーボード2242等のレガシの入出力ユニットをさらに含む。ROM2230およびキーボード2242等は、入出力チップ2240を介して入出力コントローラ2220に接続されている。
【0163】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作することにより、各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはRAM2214の中に、CPU2212によって生成されたイメージデータを取得することにより、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0164】
通信インターフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、読み取ったプログラムまたはデータを、RAM2214を介してハードディスクドライブ2224に提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取るか、または、プログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0165】
ROM2230は、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、または、コンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ2240は、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ2220に接続してよい。
【0166】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い、情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0167】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0168】
CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにしてよい。CPU2212は、RAM2214上のデータに対し、様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は、次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0169】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理されてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示に記載された、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索または置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は、結果をRAM2214に対しライトバックしてよい。
【0170】
CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、第2の属性値を読み取ることにより、予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0171】
上述したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能である。プログラムは、当該記録媒体によりコンピュータ2200に提供されてよい。
【0172】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0173】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0174】
10・・・生産量取得部、20・・・生産量算出部、21・・・運転条件推論モデル、30・・・期間特定部、40・・・制御部、50・・・コスト算出部、51・・・電力量取得部、52・・・電解槽特定部、53・・・劣化速度取得部、54・・・pH取得部、55・・・電流算出部、56・・・電流供給部、60・・・入力部、62・・・表示部、63・・・選択肢、64・・・指定部、65・・・選択肢、66・・・第1選択部、67・・・第2選択部、70・・・液体、71・・・陽イオン、72・・・液体、73・・・液体、74・・・液体、75・・・液体、76・・・液体、77・・・気体、78・・・気体、79・・・陽極室、80・・・陽極、82・・・陰極、84・・・イオン交換膜、86・・・陰イオン基、90・・・電解槽、91・・・電解セル、92・・・導入管、93・・・導入管、94・・・導出管、95・・・導出管、98・・・陰極室、100・・・運転支援装置、200・・・電解装置、2200・・・コンピュータ、2201・・・DVD-ROM、2210・・・ホストコントローラ、2212・・・CPU、2214・・・RAM、2216・・・グラフィックコントローラ、2218・・・ディスプレイデバイス、2220・・・入出力コントローラ、2222・・・通信インターフェース、2224・・・ハードディスクドライブ、2226・・・DVD-ROMドライブ、2230・・・ROM、2240・・・入出力チップ、2242・・・キーボード
図1
図2
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