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特許7541613鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法及びニッケル含有物質の使用
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  • 特許-鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法及びニッケル含有物質の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法及びニッケル含有物質の使用
(51)【国際特許分類】
   C22B 5/02 20060101AFI20240821BHJP
   C22B 34/24 20060101ALI20240821BHJP
   C22B 34/12 20060101ALI20240821BHJP
   C22B 23/02 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
C22B5/02
C22B34/24
C22B34/12 102
C22B23/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023509545
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 CN2022090887
(87)【国際公開番号】W WO2022237607
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】202110498918.3
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521181781
【氏名又は名称】包頭稀土研究院
(73)【特許権者】
【識別番号】521181792
【氏名又は名称】瑞科稀土冶金及功能材料国家工程研究中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉玉宝
(72)【発明者】
【氏名】趙二雄
(72)【発明者】
【氏名】張先恒
(72)【発明者】
【氏名】楊鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】李園
(72)【発明者】
【氏名】陳国華
(72)【発明者】
【氏名】呂衛東
(72)【発明者】
【氏名】高日増
(72)【発明者】
【氏名】苗旭晨
(72)【発明者】
【氏名】于兵
(72)【発明者】
【氏名】侯復生
(72)【発明者】
【氏名】張全軍
(72)【発明者】
【氏名】黄海涛
(72)【発明者】
【氏名】閻奇操
(72)【発明者】
【氏名】張洋
(72)【発明者】
【氏名】康佳
(72)【発明者】
【氏名】董岳陽
(72)【発明者】
【氏名】劉冉
(72)【発明者】
【氏名】▲はお▼怡人
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103993162(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106987673(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105907990(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101157961(CN,A)
【文献】特表2020-525657(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113355521(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113215389(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 5/02
C22B 34/24
C22B 34/12
C22B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.1~0.8重量部および0.2~1重量部炭素を含有する原料を800~1500℃で反応させてそれぞれニッケル鉄合金およびニオブチタンリッチスラグを得るステップであって、
前記ニッケル含有物質は、ニッケルの酸化物またはニッケル鉱から選ばれた1種または複数種であり、鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄元素で計算され、ニッケル含有物質の使用量はニッケル元素で計算されるステップをみ、
前記炭素は蘭炭であることを特徴とする鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法。
【請求項2】
反応時間は20~50hであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.2~0.6重量部および炭素0.4~0.7重量部を含み、
鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は鉄元素で計算され、ニッケル含有物質の使用量は、ニッケル元素で計算されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記鉄含有ニオブチタン鉱は、Fe 5~70wt%、FeO 0.8~4wt%、P 0.1~1.5wt%、Nb 0.5~20wt%、及び、TiO 0.5~20wt%を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素は、灰分6~15wt%、揮発分10~22wt%および固定炭素60~80wt%を含有し、前記炭素の粒子度は、20mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニッケルの酸化物は、酸化ニッケルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応は反応装置に行われ、前記反応装置に前記原料が収容され、前記原料は、前記反応装置において上層原料、中間層原料および下層原料に分けられ、前記上層原料及び下層原料はいずれも炭素であり、前記中間層原料は、鉄含有ニオブチタン鉱とニッケル含有物質の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ニオブの収率は99wt%を超え、チタンの収率は99wt%以上であり、ニオブ濃縮は、1.5倍を超え、チタン濃縮は1.5倍を超えることを特徴とする請求項1~のいずれの1項に記載の方法。
【請求項9】
ニッケル含有物質の鉄含有ニオブチタン鉱からニオブチタンを濃縮するための使用であって、
前記鉄含有ニオブチタン鉱1重量部に対して前記ニッケル含有物質0.1~0.8重量部が用いられ、
前記ニッケル含有物質は、ニッケルの酸化物またはニッケル鉱から選ばれた1種また複種類である使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法及びニッケル含有物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブは、中国の重要な戦略的資源である。中国ではニオブ資源は豊富で、ブラジルに次ぐ世界第2位であるが、低品位で埋め込み粒径が細かいため、有価元素の統合的な利用が実現されていないという問題がある。現在、中国で使用されているニオブは、ほとんどが輸入に頼っている。中国のニオブ資源は、主に包頭の白雲鄂博、広西の泰美、栗木、江西の宜春と新疆のココトー海などに分布している。中でも、白雲鄂博は、ニオブ資源の貯蔵量が最大で中国のニオブ資源の貯蔵量の95%を占め、見込み貯蔵量が660万トン、工業用貯蔵量が157万トンである。
【0003】
ニオブ含有チタン鉱物において、鉄含有酸化物の含有量は、通常35~60wt%程度であり、酸化ニオブの含有量は、通常0.5~4wt%程度であり、二酸化チタンの含有量は、通常0.5~4wt%程度であり、リンの酸化物の含有量は、通常0.1~1.5wt%程度である。このようなニオブ含有チタン鉱物は、ニオブ品位が低く、リン含有量が高く、そのままニオブチタン鉄合金の溶製に使用されるとコストが高く、また、リンなどの不純物元素が合金中に入りやすく、合金品質が低くなってしまう。
【0004】
CN103993162Aには、高リンニオブ鉄精鉱から鉄とリンを除去する方法が開示されている。ニオブ鉄含有精鉱と蘭炭を炭化珪素反応槽に装入し、高温炉内に850~1050℃で40~60時間保持して鉄含有精鉱塊に固化還元し、炉とともに200~300℃に冷却し、還元生成物を取り出して整理し、還元済み塊状精鉱を得る。塊状精鉱と白灰を均一に混合した後電気炉に装入し、混合物のアルカリ度を0.5±0.1に制御し、融解温度1370~1500℃で2~30min保温し、鋳造、冷却してリン含有銑鉄及び低リン・低鉄のニオブスラグを得る。この方法は、ニオブの濃縮を達成するために、選択的な還元と溶融分解という2つの大きな工程を必要とし、工程が複雑になっている。
【0005】
CN102212637Aには、直接還元-直接合金化により低ニオブ品位の鉄鉱石粉末からニオブを回収して利用する方法が開示されている。高温炉内で低ニオブ品位鉄鉱粉からガスベース又は石炭ベース直接還元法で海綿鉄を得、電気炉に海綿鉄を入れ、溶解してスラグと金属を分離し、比較的不活性な金属がFe-P合金を形成し、ニオブ元素が酸化物としてスラグ中に濃縮され、ニオブリッチスラグを溶鋼表面に加え、その中のニオブ酸化物を還元剤で還元し、ニオブが溶鋼中に取り込まれる。この方法は、ニッケルスラグから鉄、リンを分離するために還元および溶解という2つの工程を必要とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一つの目的は、ワンステップで鉄含有ニオブチタン鉱における鉄、リン等の元素をニオブチタンと分離させることができる鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法を提供することにある。さらに、当該方法は、ニオブとチタンの収率を向上させることができ、かつニオブ、チタンの濃縮效果が良好である。さらに、当該方法は、脱鉄率と脱リン率を向上させることができる。本発明のもう一つの目的は、ニッケル含有物質の使用を提供することにある。
【0007】
前述した技術的な目的は、以下の構成で実現する。
一態様において、本発明は、
鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.1~0.8重量部、および、炭素0.2~1重量部を含む原料を800~1500℃で反応させて、それぞれニッケル-鉄合金およびニオブチタンリッチスラグを得るステップであって、
前記ニッケル含有物質は、ニッケルの酸化物またはニッケル鉱から選ばれた1種または複数種であり、鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄元素で計算され、ニッケル含有物質の使用量は、ニッケル元素で計算される前記ステップ
を含む鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法を提供する。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、反応時間は、20~50hである。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、前記原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.2~0.6重量部、および、炭素0.4~0.7重量部を含み、
鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄元素で計算され、ニッケル含有物質の使用量は、ニッケル元素で計算される。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、前記鉄含有ニオブチタン鉱は、Fe2O3 5~70wt%、FeO 0.8~4wt%、P2O5 0.1~1.5wt%、Nb2O5 0.5~20wt%、および、TiO2 0.5~20wt%を含む。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、前記炭素は蘭炭である。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、前記炭素は、灰分6~15wt%、揮発分10~22wt%、および、固定炭素60~85wt%を含み、前記炭素の粒子度は、20mm以下である。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、前記ニッケルの酸化物は、酸化ニッケルである。
本発明に係る方法によれば、前記反応は、反応装置で行われ、前記反応装置に前記原料が収容され、前記原料は、前記反応装置に上層原料、中間層原料、及び、下層原料に分けられ、前記上層原料と下層原料は、いずれも炭素であり、前記中間層原料は、鉄含有ニオブチタン鉱とニッケル含有物質の混合物である。
本発明に係る方法によれば、好ましくは、ニオブの収率は99wt%を超え、チタンの収率は99wt%以上であり、ニオブ濃縮は1.5倍を超え、チタン濃縮は、1.5倍を超える。
もう一の態様において、本発明は、鉄含有ニオブチタン鉱からニオブチタンを濃縮するニッケル含有物質の使用であって、前記ニッケル含有物質がニッケルの酸化物またはニッケル鉱から選ばれた1種または複数種である前記使用を提供する。
本発明は、反応温度およびニッケル含有物質の使用量を制御することにより、ニッケルを、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄とニッケル鉄合金を形成することを促進し、ワンステップでニッケル鉄合金およびニオブチタンリッチスラグを得、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄、リン等の元素をニオブチタンから分離することができる。本発明の好ましい構成によれば、各原料の使用量および還元温度を制御することにより、脱鉄率およびニオブチタンの濃縮效果を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の原料のフィリング態様の1種である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質及び炭素を特定の温度で選択的に還元することにより、鉄、リン等の酸化物を還元し、ニオブチタンなどの元素が酸化物の形で存在し、かつ、当該温度で鉄はニッケルと適当な比例で合金を形成することにより、鉄をニオブチタンリッチスラグからワンステップで分離することができる。従来技術では、通常、ニオブとチタンから鉄を分離するために多段階が必要であるが、本発明は、巧みな設計により、鉄をニオブチタンリッチスラグからワンステップで分離することができるようになった。以下、詳細に説明する。
【0010】
<鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブチタンの濃縮方法>
本発明に係る方法は、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素を含む原料を反応させてそれぞれニッケル鉄合金およびニオブチタンリッチスラグを得るステップを含む。いくつかの実施形態において、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素を含む。
【0011】
本発明に係る鉄含有ニオブチタン鉱は、Fe2O3を含んでもよい。Fe2O3の含有量は、5~70wt%であってもよく、好ましくは40~65wt%であり、より好ましくは50~60wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、FeOを含んでもよい。FeOの含有量は、0.8~4wt%であってもよく、好ましくは1~2wt%であり、より好ましくは1~1.3wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱はSiO2を含んでもよい。SiO2の含有量は、12~25wt%であってもよく、好ましくは14~18wt%であり、より好ましくは15~17wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、Nb2O5を含む。Nb2O5の含有量は、0.5~20wt%であってもよく、好ましくは2~4.5wt%であり、より好ましくは3~4wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、TiO2を含む。TiO2の含有量は、0.5~20wt%であってもよく、好ましくは3~5wt%であり、より好ましくは3.8~4.5wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、P2O5を含んでもよい。P2O5の含有量は、0.1~1.5wt%であってもよく、好ましくは0.5~1.2wt%であり、より好ましくは0.7~1wt%である。
【0012】
本発明に係るニッケル含有物質は、ニッケルの酸化物またはニッケル鉱から選ばれた1種又は複数種であってもよい。ニッケルの酸化物の例として酸化ニッケルまたは三酸化二ニッケルが挙げられるが、これらに限られない。ニッケル鉱の例として、ペントランド鉱、ガルニエライト鉱、針ニッケル鉱(millerite)、黄鉄ニッケル鉱(nickel purite)又は紅砒ニッケル鉱(red nickel ore)を含むがこれらに限られない。本発明の一つの実施形態によれば、ニッケル含有物質は、酸化ニッケルである。
【0013】
本発明に係る炭素は、蘭炭であってもよい。新規な炭素材料として、蘭炭は、中国神府石炭田の良品質なジュラ紀精製石炭ブロックを用いて焼成したものであってもよい。本発明において、炭素における灰分含有量は、6~15wt%であってもよく、好ましくは8~13wt%であり、より好ましくは10~12wt%である。炭素における揮発分の含有量は、10~22wt%であってもよく、好ましくは12~20wt%であり、より好ましくは14~17wt%である。炭素における固定炭素の含有量は60~85wt%であってもよく、好ましくは65~80wt%であり、より好ましくは70~75 wt%である。炭素の粒子度は、dで示され、d≦20mmであり、好ましくはd≦10mmであり、より好ましくは0.3mm≦d≦3mmである。これにより、鉄とリンの除去率の向上やニオブとチタンの濃縮効果の改善に有利である。
【0014】
本発明において、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素を含む原料を800~1500℃で反応させる。好ましくは、反応温度が900~1100℃である。より好ましくは、反応温度が960~1050℃である。本発明の一つの実施形態によれば、反応温度は1000~1050℃である。このような温度範囲は、鉄やリン等の元素の選択的な還元に有利し、かつ鉄がニッケルと合金を形成してワンステップで鉄含有ニオブチタン鉱における鉄元素を部分離することに有利し、かつニオブチタンを濃縮させることができる。このような温度範囲は、さらに鉄やリン等の元素の除去率、ニオブ、チタン元素の収集率の向上、ニオブ、チタンの濃縮効果の改善に有利である。
【0015】
本発明において、反応時間は20~50hであってもよく、好ましくは25~40hであり、より好ましくは25~30hである。これにより、鉄やリンなどの元素を十分に還元することができ、かつ、鉄がニッケルと合金を形成し、反応時間が短縮され、省エネルギー化が図れる。
【0016】
本発明の一つの実施形態によれば、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素を含む原料を反応装置に反応させる。反応装置は、密封された装置であってもよい。反応装置は、反応槽であってもよい。反応装置に充填された原料は、上層原料、中間層原料、および、下層原料に分けられ、上層原料と下層原料は、いずれも炭素であり、中間層原料は、鉄含有ニオブチタン鉱とニッケル含有物質の混合物である。これにより、反応の進捗や鉄、リン等の元素の除去率の向上に有利であり、かつニッケル鉄合金の形成に有利である。
【0017】
鉄含有ニオブチタン鉱を1重量部で計算すると、ニッケル含有物質の使用量は0.1~0.8重量部であり、好ましくは0.2~0.6重量部であり、より好ましくは0.4~0.6重量部である。そのうち、鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄元素で計算され、ニッケル含有物質の使用量は、ニッケル元素で計算される。ニッケル含有物質の使用量が低すぎると、ニッケル鉄合金の形成に不利であり、鉄をニオブチタンリッチスラグから分離することができず、ニッケル含有物質使用量が高すぎる場合も、ニッケル鉄合金の形成に不利であり、かつ不純物を導入するおそれがある。
【0018】
鉄含有ニオブチタン鉱を1重量部で計算すると、炭素の使用量は、0.2~1重量部であり、好ましくは0.4~0.7重量部であり、より好ましくは0.5~0.7重量部である。そのうち、鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄元素で計算される。これにより、鉄やリンなどの元素の除去率の向上、ニオブチタン等の元素の濃縮效果の改善に有利である。
【0019】
本発明の一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.1~0.8重量部、および、炭素0.2~1重量部を含む。本発明のもう一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.2~0.6重量部、および、炭素0.4~0.7重量部を含む。本発明のもう一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.4~0.6重量部、および、炭素0.5~0.7重量部を含む。本発明のもう一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.5~0.7重量部、および、炭素0.6~0.8重量部を含む。
【0020】
本発明に係る方法を採用することにより、脱鉄率は、95wt%を超え、好ましくは脱鉄率が96wt%以上であり、より好ましくは97wt%以上である。本発明に係る方法を採用することにより、脱リン率は、93wt%を超え、好ましくは脱リン率が95wt%を超える。本発明に係る方法を採用することにより、ニオブ収率は、99wt%を超え、好ましくはニオブ収率が99.5wt%以上である。本発明に係る方法を採用することにより、チタン収率が99wt%を超え、好ましくはチタン収率が99.5wt%以上である。本発明に係る方法を採用することにより、ニオブ濃縮は、1.5倍以上であり、好ましくはニオブ濃縮が1.8倍以上であり、より好ましくはニオブ濃縮が2.3倍以上である。本発明に係る方法を採用することにより、チタン濃縮は、1.5倍以上であり、好ましくはチタン濃縮が1.8倍以上であり、より好ましくはチタン濃縮が2.3倍以上である。
【0021】
<ニッケル含有物質の使用>
本発明は、鉄含有ニオブチタン鉱からニオブチタンを濃縮するニッケル含有物質の使用を提供する。本発明に係るニッケル含有物質は、ニッケルの酸化物またはニッケル鉱から選ばれた1種または複数種である。ニッケルの酸化物の例として、酸化ニッケルまたは三酸化二ニッケルを含むがこれらに限られない。ニッケル鉱の例として、ペントランド鉱、ガルニエライト鉱、針ニッケル鉱、黄鉄ニッケル鉱又は紅砒ニッケル鉱を含むがこれらに限られない。本発明の一つの実施形態によれば、ニッケル含有物質は酸化ニッケルである。具体的に、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素を含む原料を反応させてそれぞれニッケル鉄合金とニオブチタンリッチスラグを得る。原料として、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素のみからなってもよい。鉄含有ニオブチタン鉱1重量部で計算すると、ニッケル含有物質の使用量は、0.1~0.8重量部であり、好ましくは0.2~0.6重量部であり、より好ましくは0.4~0.6重量部である。そのうち、鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄元素で計算され、ニッケル含有物質の使用量は、ニッケル元素で計算される。ニッケル含有物質の使用量が低すぎると、ニッケル鉄合金の形成に不利であり、鉄をニオブチタンリッチスラグから分離できず、ニッケル含有物質使用量が高すぎると、ニッケル鉄合金の形成に不利であり、かつ不純物が導入されてしまう。鉄含有ニオブチタン鉱を1重量部で計算すると、炭素の使用量は、0.2~1重量部であり、好ましくは0.4~0.7重量部であり、より好ましくは0.5~0.7重量部である。そのうち、鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄元素で計算される。これにより、鉄やリンなどの元素の除去率の向上、ニオブ、チタン等の元素の濃縮効果の改善に有利である。
【0022】
本発明の一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.1~0.8重量部、および、炭素0.2~1重量部を含む。本発明のもう一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.2~0.6重量部、および、炭素0.4~0.7重量部を含む。本発明のもう一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.4~0.6重量部、および、炭素0.5~0.7重量部を含む。本発明のもう一つの実施形態によれば、原料は、鉄含有ニオブチタン鉱1重量部、ニッケル含有物質0.5~0.7重量部、および、炭素0.6~0.8重量部を含む。
【0023】
本発明に係る鉄含有ニオブチタン鉱は、Fe2O3を含んでもよい。Fe2O3の含有量は、5~70wt%であってもよく、好ましくは40~65wt%であり、より好ましくは50~60wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱はFeOを含んでもよい。FeOの含有量は、0.8~4wt%であってもよく、好ましくは1~2wt%であり、より好ましくは1~1.3wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、SiO2を含んでもよい。SiO2の含有量は、12~25wt%であってもよく、好ましくは14~18wt%であり、より好ましくは15~17wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱はNb2O5を含む。Nb2O5の含有量は、0.5~20wt%であってもよく、好ましくは2~4.5wt%であり、より好ましくは3~4wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、TiO2を含む。TiO2の含有量は、0.5~20wt%であってもよく、好ましくは3~5wt%であり、より好ましくは3.8~4.5wt%である。鉄含有ニオブチタン鉱は、P2O5を含んでもよい。P2O5の含有量は、0.1~1.5wt%であってもよく、好ましくは0.5~1.2wt%であり、より好ましくは0.7~1wt%である。
【0024】
本発明に係る炭素は、蘭炭であってもよい。新規な炭素材料として、蘭炭は、中国神府石炭田の良品質なジュラ紀精製石炭ブロックを用いて焼成したものであってもよい。本発明において、炭素における灰分の含有量は、6~15wt%であってもよく、好ましくは8~13wt%であり、より好ましくは10~12wt%である。炭素における揮発分の含有量は、10~22wt%であってもよく、好ましくは12~20wt%であり、より好ましくは14~17wt%である。炭素における固定炭素の含有量は、60~85wt%であってもよく、好ましくは65~80wt%であり、より好ましくは70~75 wt%である。炭素の粒子度は、dで示され、d≦20mmであり、好ましくはd≦10mmであり、より好ましくは0.3mm≦d≦3mmである。これにより、鉄およびリンの除去率の向上、ニオブおよびチタンの濃縮効果に有利である。
【0025】
本発明において、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質および炭素を含む原料を800~1500℃、好ましくは900~1100℃、より好ましくは960~1050℃で20~50h、好ましくは25~40h、より好ましくは25~30h反応させる。本発明の一つの実施形態によれば、反応温度は1000~1050℃である。このような温度範囲は、鉄、リン等の元素の選択的な還元に有利であり、かつ鉄がニッケルと合金を形成してワンステップで鉄含有ニオブチタン鉱から鉄元素を分離してニオブチタンを濃縮させる。このような温度範囲は、鉄、リン等の元素の除去率、ニオブ、チタン元素の収集率の向上、ニオブ、チタンの濃縮効果の改善に有利である。前記反応時間は、適当で鉄、リンなどの元素を十分に還元することができ、かつ、鉄とニッケルが合金を形成し、反応時間を短縮し、省エネルギー化が図れる。
【0026】
本発明の一つの実施形態によれば、鉄含有ニオブチタン鉱、ニッケル含有物質及び炭素を含む原料を反応装置に反応させる。反応装置は、密封された装置であってもよい。反応装置は、反応槽であってもよい。反応装置に充填された原料は、上層原料、中間層原料、および、下層原料に分けられ、上層原料と下層原料は、いずれも炭素であり、中間層原料は、鉄含有ニオブチタン鉱とニッケル含有物質の混合物である。これにより、反応の進捗や鉄、リン等の元素の除去率の向上、かつニッケル鉄合金の形成に有利である。
【0027】
本発明の脱鉄率は、95wt%を超え、好ましくは96wt%以上であり、より好ましくは97wt%以上である。本発明の脱リン率は、93wt%を超え、好ましくは95wt%を超える。本発明のニオブ収率は、99wt%を超え、好ましくは99.5wt%以上である。本発明のチタン収率は99wt%を超え、好ましくは99.5 wt%以上である。本発明のニオブ濃縮は、1.5倍以上であり、好ましくは1.8倍以上であり、より好ましくは2.3倍以上である。本発明のチタン濃縮は、1.5倍以上であり、好ましくは1.8倍以上であり、より好ましくは2.3倍以上である。
【0028】
以下、本発明の測定及び計算方法を紹介する。
脱リン率(ηP):下式で計算する。
式において、P%iron-ニッケル鉄合金におけるリン含有量、%;
A-ニッケル鉄合金重量、g;
P %mineral-鉄含有ニオブチタン鉱におけるリン含有量、%;
B-鉄含有ニオブチタン鉱原料重量,g;
P %Ni-ニッケル含有物質(原料)中リン含有量、%;
C-ニッケル含有物質(原料)重量,g。
脱鉄率(ηFe):下式で計算する。
式において、Fe %iron-ニッケル鉄合金における鉄含有量、%;
A-ニッケル鉄合金重量、g;
Fe %mineral-鉄含有ニオブチタン鉱における全鉄含有量、%;
B-鉄含有ニオブチタン鉱原料重量、g;
Fe %Ni-ニッケル含有物質(原料)における全鉄含有量、%;
C-ニッケル含有物質(原料)重量、g。
ニオブ収率(ηNb):下式で計算する。
式において、Nb %slag-ニオブチタンリッチスラグにおけるニオブ含有量、%;
A1-ニオブチタンリッチスラグ重量、g;
Nb %mineral-鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブ含有量、%;
B-鉄含有ニオブチタン鉱原料重量、g;
Nb%Ni-ニッケル含有物質(原料)におけるニオブ含有量、%;
C-ニッケル含有物質(原料)重量、g。
チタン収率(ηTi):下式で計算する。
式において、Ti %slag-ニオブチタンリッチスラグにおけるチタン含有量、%;
A1-ニオブチタンリッチスラグ重量、g;
Ti %mineral-鉄含有ニオブチタン鉱におけるチタン含有量、%;
B-鉄含有ニオブチタン鉱原料重量、g;
Ti %Ni-ニッケル含有物質(原料)におけるチタン含有量、%;
C-ニッケル含有物質(原料)重量、g。
ニオブ濃縮(FNb):下式で計算する。
式において、FNb-ニオブ濃縮倍数;
Nb %slag-ニオブチタンリッチスラグにおけるニオブ含有量、%;
Nb %mineral-鉄含有ニオブチタン鉱におけるニオブ含有量、%。
チタン濃縮(FTi):下式で計算する。
式において、FTi-チタン濃縮倍数;
Ti %slag-ニオブチタンリッチスラグにおけるチタン含有量、%;
Ti %mineral-鉄含有ニオブチタン鉱におけるチタン含有量、%。
【0029】
実施例1~3
鉄含有ニオブチタン鉱の主な組成成分を表1に示した。蘭炭における灰分含有量は11.8wt%であり、揮発分含有量は、15.72wt%であり、固定炭素含有量は71.32wt%であった。蘭炭の粒子度は0.3~3mmの間(0.3mm、3mmを含む)。鉄含有ニオブチタン鉱、酸化ニッケル及び蘭炭を図1に示したように反応装置1内に置き、反応装置1は、反応槽であった。そのうち、上層原料2と下層原料4は、いずれも蘭炭であり、中間層原料3は、鉄含有ニオブチタン鉱と酸化ニッケルの混合物であった。反応装置1を抵抗炉内に入れ、加熱して反応させた。
反応終了後、反応生成物を炉冷し、そして生成物を取り出して整理してそれぞれニッケル鉄合金とニオブチタンリッチスラグを得た。両者は、良好に分離された。
具体的なパラメータを表2に示した。得られたニッケル鉄合金及びニオブチタンリッチスラグを分析し、得られたデータを表2に示した。
注:鉄含有ニオブチタン鉱の使用量は、鉄含有ニオブチタン鉱における鉄元素で計算され、酸化ニッケルの使用量は、酸化ニッケルにおけるニッケル元素で計算された。
【0030】
比較例1
反応温度は750℃であり、その以外は、実施例1と同じであった。
反応終了後、反応生成物を炉冷し、そして生成物を取り出して整理し、ニッケル鉄合金、ニオブチタンリッチスラグは、得られず、スラグ鉄と分離できなかった。
【0031】
比較例2
酸化ニッケルの使用量(ニッケル元素で計算される量)は0.08重量部であり、反応温度は、950℃であり、その以外は、実施例1と同じであった。
反応終了後、反応生成物を炉冷し、そして生成物を取り出して整理し、少量のニッケル鉄合金が得られたが、ニオブチタンは、ほとんど濃縮されなかった。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、当業者が想到し得るあらゆる変形、改良、置換等が本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0032】
1-反応装置、2-上層原料、3-中間層原料、4-下層原料。
図1