(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】腸溶性ペレット及びその製造方法並びにそれを含む製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4439 20060101AFI20240821BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240821BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240821BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240821BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20240821BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240821BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240821BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20240821BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20240821BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240821BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240821BHJP
【FI】
A61K31/4439
A61K47/02
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/20
A61K9/24
A61P1/04
A61P43/00 111
A61P1/14
A61P7/02
A61P31/04
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2023519152
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 CN2021130394
(87)【国際公開番号】W WO2022116796
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202011391266.5
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523106414
【氏名又は名称】麗珠医薬集団股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】李普成
(72)【発明者】
【氏名】莫雅▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】張象娜
(72)【発明者】
【氏名】侯雪梅
(72)【発明者】
【氏名】崔艶南
(72)【発明者】
【氏名】胡斯文
(72)【発明者】
【氏名】成彩華
(72)【発明者】
【氏名】林偉珊
(72)【発明者】
【氏名】▲ツ▼増清
(72)【発明者】
【氏名】張裕容
(72)【発明者】
【氏名】▲シェン▼紅丹
(72)【発明者】
【氏名】焦慎超
(72)【発明者】
【氏名】馮楊
(72)【発明者】
【氏名】韓智慧
(72)【発明者】
【氏名】呉磊
(72)【発明者】
【氏名】張転霞
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-033659(JP,A)
【文献】特開平05-194225(JP,A)
【文献】特開平05-294831(JP,A)
【文献】特表2009-519943(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103405462(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103432149(CN,A)
【文献】特開2018-118936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアがイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と
、第1添加物
としての水不溶性アルカリ化合物とを含有する腸溶性ペレットにおいて、前記第1隔離層が水不溶性アルカリ化合物を含有し、前記第1添加物とイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の重量比が0.2~5:1であ
り、
前記腸溶性ペレットの組成は、重量部で、
1)ペレットコア:
ブランクペレットコア 5~15、及び
イラプラゾール(又は薬学的に許容されるその塩) 5~15と、水不溶性アルカリ化合物 5~15と、界面活性剤 0.2~0.6と、接着剤 8~24とを含む薬物担持層;
2)第1隔離層:
接着剤 5~36、及び
水不溶性アルカリ化合物 5~36;
3)第2隔離層:
接着剤 4~26、及び
粘着防止剤 7~44;
4)腸溶性層:
腸溶性コーティング材料 30~100(固形分)、
粘着防止剤 1~5、及び
可塑剤 9~30;
5)保護層:
接着剤 0.5~4、及び
粘着防止剤 0.5~5であり、
前記水不溶性アルカリ化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムから選ばれる1つまたは複数であり、
前記接着剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース及びポリエチレングリコールから選ばれる1つまたは複数であり、
前記粘着防止剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン及びシリカから選ばれる1つまたは複数であることを特徴とする腸溶性ペレット。
【請求項2】
内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアがイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含有する腸溶性ペレットにおいて、第1隔離層が水不溶性アルカリ化合物を含有し、且つ、第1添加物が水不溶性アルカリ化合物であり、第1隔離層の含有する水不溶性アルカリ化合物と第1添加物としての水不溶性アルカリ化合物は、同じでもよいし異なってもよ
く、
前記腸溶性ペレットの組成は、重量部で、
1)ペレットコア:
ブランクペレットコア 5~15、及び
イラプラゾール(又は薬学的に許容されるその塩) 5~15と、水不溶性アルカリ化合物 5~15と、界面活性剤 0.2~0.6と、接着剤 8~24とを含む薬物担持層;
2)第1隔離層:
接着剤 5~36、及び
水不溶性アルカリ化合物 5~36;
3)第2隔離層:
接着剤 4~26、及び
粘着防止剤 7~44;
4)腸溶性層:
腸溶性コーティング材料 30~100(固形分)、
粘着防止剤 1~5、及び
可塑剤 9~30;
5)保護層:
接着剤 0.5~4、及び
粘着防止剤 0.5~5であり、
前記水不溶性アルカリ化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムから選ばれる1つまたは複数であり、
前記接着剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース及びポリエチレングリコールから選ばれる1つまたは複数であり、
前記粘着防止剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン及びシリカから選ばれる1つまたは複数であることを特徴とする腸溶性ペレット。
【請求項3】
内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアがイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含有する腸溶性ペレットにおいて、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の粒径D90が100μm以下であり、且つ、第2隔離層がアルカリ物質を含まな
く、
前記腸溶性ペレットの組成は、重量部で、
1)ペレットコア:
ブランクペレットコア 5~15、及び
イラプラゾール(又は薬学的に許容されるその塩) 5~15と、水不溶性アルカリ化合物 5~15と、界面活性剤 0.2~0.6と、接着剤 8~24とを含む薬物担持層;
2)第1隔離層:
接着剤 5~36、及び
水不溶性アルカリ化合物 5~36;
3)第2隔離層:
接着剤 4~26、及び
粘着防止剤 7~44;
4)腸溶性層:
腸溶性コーティング材料 30~100(固形分)、
粘着防止剤 1~5、及び
可塑剤 9~30;
5)保護層:
接着剤 0.5~4、及び
粘着防止剤 0.5~5であり、
前記水不溶性アルカリ化合物は、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムから選ばれる1つまたは複数であり、
前記接着剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース及びポリエチレングリコールから選ばれる1つまたは複数であり、
前記粘着防止剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン及びシリカから選ばれる1つまたは複数であることを特徴とする腸溶性ペレット。
【請求項4】
前記ペレットコアと前記第1隔離層との間に他の層は存在せず、且つ/又は、第1隔離層と第2隔離層との間に他の層は存在せず、且つ/又は、第2隔離層と腸溶性層との間に他の層は存在しないことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の腸溶性ペレット。
【請求項5】
イラプラゾールの薬学的に許容される塩は、イラプラゾールナトリウム、イラプラゾールマグネシウム、イラプラゾール亜鉛、イラプラゾールカリウム、イラプラゾールリチウム、イラプラゾールカルシウムから選ばれてもよいことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の腸溶性ペレット。
【請求項6】
前記ペレットコアは、界面活性剤をさらに
含むことを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の腸溶性ペレット。
【請求項7】
前記界面活性剤がポリソルベート80又はドデシル硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項6に記載の腸溶性ペレット。
【請求項8】
前記第1隔離層中の水不溶性アルカリ化合物とイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の重量比は、0.2~5:1で
あることを特徴とする請求項1又は2に記載の腸溶性ペレット。
【請求項9】
前記第1隔離層中の水不溶性アルカリ化合物とイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の重量比は、0.3~3:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の腸溶性ペレット。
【請求項10】
前記
粘着防止剤と接着剤の量の重量比は、1~8:1.5~10、又は1~10:1~20、又は4~26:7~44の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の腸溶性ペレット。
【請求項11】
イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の粒径D90は、>0μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmの任意の2つの端点から構成される範囲から選ばれることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の腸溶性ペレット。
【請求項12】
イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含むペレットコアを調製するステップ1)と、
第1隔離層を被覆させ、次に第2隔離層を被覆させるステップ2)と、
腸溶性層を被覆させるステップ3)と
、
保護層を被覆させるステップ4)とを含む請求項1~11のいずれか1項に記載の腸溶性ペレットの製造方法。
【請求項13】
ステップ2)は、
水不溶性アルカリ化合物を含み且つ水溶性アルカリ化合物又はペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まない第1懸濁液を調製し、第1懸濁液をステップ1)より得たペレットコアに被覆させるステップと、アルカリ化合物を含まない第2懸濁液を調製し、第2懸濁液を第2隔離層として被覆させ、好ましくは、腸溶性層に密接する第2隔離層として被覆させるステップとを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の腸溶性ペレットと第2添加物と、任意にフィルムコーティングとを含む腸溶性ペレット錠、保護層を有する請求項1~11のいずれか1項に記載の腸溶性ペレットを含むカプセル、請求項1~11のいずれか1項に記載の腸溶性ペレットと懸濁用乾燥顆粒とを含む懸濁用乾燥配合剤の形態から選ばれる医薬組成物。
【請求項15】
胃腸疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造における請求項1~11のいずれか1項に記載の腸溶性ペレット又は請求項14に記載の医薬組成物の
使用であって、前記胃腸疾患は、胃の灼熱感、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス性潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍及び十二指腸潰瘍再発、NSAID関連胃潰瘍、成人活動性良性胃潰瘍、感染性腸炎、大腸炎、胃酸過多、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー・エリソン症候群、胃食道逆流症(GERD)、ピロリ菌関連疾患又はピロリ菌の根絶、びらん性食道炎の全段階、短腸症候群、胃潰瘍、非ステロイド性抗炎症薬による消化性潰瘍疾患、抗血小板凝集薬などによる胃腸出血及び関連の潰瘍、又は前記疾患の任意の組み合わせから選ばれる
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2020年12月2日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202011391266.5である先願の優先権を主張する。当該先願は、全体として援用により本願に組み込まれる。
[技術分野]
【0002】
本発明は、腸溶性ペレット、その製造方法及びそれを含む製剤に関し、特に、イラプラゾール腸溶性ペレット、その製造方法及びそれを含む製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
プロトンポンプ阻害剤(Proton Pump Inhibitors、PPI)は、ヒト胃粘膜細胞の分泌細管膜上のH+/K+-ATPase(プロトンポンプ又は酸ポンプとも呼ばれる)を選択的に阻害できる薬物である。当該H+/K+-ATPaseは胃酸分泌を阻害する最終経路であるため、それを阻害すると胃酸の分泌を明らかに低下できる。そのため、プロトンポンプ阻害剤は一般に、胃・十二指腸の潰瘍、胃食道逆流症、手術吻合部潰瘍及びゾリンジャー・エリソン症候群などの胃酸の作用によって誘発され又は引き起こされる消化管の疾患(即ち、酸関連疾患)の治療に用いられる。作用機序により、既知のPPIを不可逆PPI及び可逆PPI(Reversible PPI、RPPI)に分けることができる。そのうち、不可逆PPIは、主に、ベンズイミダゾール誘導体であり、壁細胞膜を速やかに通過して強酸性の分泌細管に蓄積し、次にプロトン化してスルフェンアミド系化合物に変換されることが可能であり、後者がH+/K+-ATPaseのαサブユニットのシステイン残基上のスルフヒドリル基と共有結合したジスルフィド結合を形成することで、H+/K+-ATPaseを不可逆的に不活性化させ、その酸分泌活性を阻害することができる(張▲セン▼,プロトンポンプ阻害剤-プラゾール系薬物特許技術概要,特許文献研究2018-医学と製薬,知識産権出版社,北京,2019.9:p554-567)。現在世界で販売されているそのような薬物として、オメプラゾール(Omeprazole)、ランソプラゾール(Lansoprazole)、パントプロゾール(Pantoprozole)、ラベプラゾール(Rabeprazole)、エソメプラゾール(Esomeprazole)、イラプラゾール(Ilaprazole)、デランソプラゾール(Delansoprazole)などがある。
【0004】
他のプラゾール系薬物と同様に、イラプラゾールは酸不安定化合物である。ただし、既存の他のプラゾール系薬物と比べて、イラプラゾールの方が安定性はより低い。酸不安定化合物とは、酸性媒体では不安定であるが、中性及びアルカリ媒体では比較的良好な安定性を有する物質である。それらの化合物の共通の特徴は、酸性媒体では、速やかに分解/変換されて、生物学的に有効な化合物になることである。酸不安定プロトンポンプ阻害剤は、酸性及び中性媒体で分解/変換に敏感であるため、経口投与する場合に、胃酸との接触がその安定性に影響を与えることを避ける必要がある。当該問題を解決する一般的な方法は、そのような薬物の経口投与製剤を腸溶性材料でコーティングして、腸溶性ペレット製剤を製造することである(例えば、CN1183047A、CN1146720A、US4786505、EP0519365を参照する)。それらの腸溶性ペレット製剤は、一般に、ペレットコアと、緩衝コーティング層と、外側の腸溶性コーティング層とを含む。ペレットコアに対して、当該ペレットコアの医薬組成物にアルカリ化剤(緩衝剤とも呼ばれる)を加えることでPPIの安定性を向上させるか、又はアルカリ化剤を含まないペレットコアにアルカリ層を付けて、PPIを酸の破壊から保護する(CN103705483Aを参照する)。また、腸溶性材料中の遊離カルボキシ基の当該種類の薬物の安定性に対する影響を避けるために、腸溶性コーティング層内には一定の厚さを有する緩衝コーティング層(即ち、隔離層)も必要である。
【0005】
当該隔離層について、先行技術として多くの技術的解決手段が開示されている。例えば、次のようなものである。
CN87103285A(前記US4786505のパテントファミリーの中国特許)では、酸不安定物質(例えば、置換ベンズイミダゾール類)を含有する経口医薬製剤が開示されている。当該胃腸疾病の治療用医薬製剤は、核部分と、1層以上の中間被覆層(即ち、分離層)と、腸溶皮膜とから構成されており、当該核部分は、酸不安定化合物とアルカリ反応化合物とを含むか、又は酸不安定化合物のアルカリ塩と任意にアルカリ反応化合物とを含み、中間被覆層は、水溶性ないし水で急速に分解する反応性不活性化合物、又は重合体で水溶性のフィルム形成化合物と、任意にpH緩衝性アルカリ化合物とからなる。さらに、最後の腸溶皮膜を施された投薬形は、長期貯蔵中その投薬形の良好な安定性を得るために適当な方法で処理されて、水分を極く低レベルに減らしている。そのうち、当該pH緩衝性アルカリ化合物は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム;アルミニウム/マグネシウム複合化合物、例えば、Al2O3・6MgO・CO2・12H2O(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)、MgO・Al2O3・2SiO2・nH2O(但し、nは2未満の非整数))又は類似化合物;あるいは他の製薬上受容されるpH緩衝剤、例えば、燐酸、クエン酸又は他の適当な弱無機あるいは有機酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩から選ばれてもよい。分離層用物質は、製薬上受容される水溶性の不活性化合物又はコーティングフィルムの適用に使用されるポリマー、例えば、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの中から選ばれる。通常の可塑剤、色素、二酸化チタン、タルク及び他の添加剤もまた分離層に含有させることができる。
【0006】
CN101036633Aは、オメプラゾール腸溶性ペレットカプセル及びその製造方法を開示している。当該カプセルの内容物は、オメプラゾール腸溶性ペレットであり、当該腸溶性ペレットは、ブランクペレットコアと、アルカリ成分含有活性薬物層と、隔離層と、腸溶性コーティング層とを含む。当該隔離層は、アルカリ性のオメプラゾール活性薬物層と酸性の腸溶性材料を隔離し、同時に隔離層に保護成分として酸化マグネシウム及び二酸化チタンを添加することにより、相乗効果で薬物の安定性を明らかに向上させている。
【0007】
CN102119927Aは、プロトンポンプ阻害剤としての腸溶性ペレット製剤及びその製造方法を開示している。当該プロトンポンプ阻害剤としての腸溶性ペレットは、ブランクペレットコアと、薬物担持層と、隔離層(I)及び(II)と、腸溶性層とから構成されており、薬物の安定性を向上させ、水不溶性アルカリを加えるための薬物担持効率の低下を緩和するために、当該薬物担持層及び隔離層(I)は同時に水溶性無機アルカリを含有し、且つ薬物担持層に使用されるアルカリとして、水酸化ナトリウム、及び水酸化ナトリウムと水溶液で緩衝を形成し且つpH 11~12(ただし、11を除く)のアルカリ環境を生成できる別の水溶性無機アルカリを含む。
【0008】
CN106176669Aは、パントプロゾールナトリウム腸溶性ペレット、その製造方法及び当該ペレットを含むカプセル並びにカプセルの製造方法を開示しており、当該パントプロゾールナトリウム腸溶性ペレットは、内側から外側にペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、当該ペレット層がパントプロゾールナトリウム及び複合アルカリ物質(リン酸のナトリウム塩の混合物)を含み、第1隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドンk30、ポリエチレングリコール600(PEG-600)、ステアリン酸マグネシウム、タルクを含み、第2隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール400(PEG-400)、炭酸水素ナトリウム、二酸化チタン、グリセロールトリアセタートを含み、当該腸溶性ペレットでは、第1隔離層と第2隔離層の質量比が最終的な薬効に顕著な影響を与える。
【0009】
CN1785186Aは、パントプロゾール又はその塩の腸溶性ペレットを開示しており、前記ペレットは、内側から外側に、ペレットコアと、サブコーティング層と、薬物層と、緩衝層と、隔離層と、腸溶性層とを含む。所望の効果を得るためには、そのコーティング層の数、各層の厚さ、中間層の接着剤及び安定剤の量などの要素について調整しなければならず、そのために当該文献では各層の重量増加を厳密に限定しており、さもなければ、当該発明の所望の効果を得られない。
【0010】
プラゾール系腸溶性ペレット及びその製剤を製造するための先行技術方法には次のような欠点があり、先行技術によるプラゾール系腸溶性ペレット及びその製剤は良好な安定性と耐酸性を併せ持つことができない(特に耐酸性は満たしにくい)。先行技術によって製造されるプラゾール系腸溶性ペレットの隔離層では、ペレットコア(即ち、薬物含有ペレット)に密接する隔離層が一般に、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質(例えば、タルク、シリカ、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウムなど)及び/又は水溶性アルカリ化合物を含有し、且つ、腸溶性層に密接する隔離層は一般に、アルカリ化合物を含有し、この2つがいずれも腸溶性ペレット及びその製剤の安定性及び/又は耐酸性を低下させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的の1つは、イラプラゾール腸溶性ペレットを提供することであり、当該腸溶性ペレットは、先行技術の欠点を克服しており、良好な安定性、良好な耐酸性を有すること、高められた溶出率及び/又は高められた薬物担持量(本明細書では、薬物負荷率と呼ばれることもある)並びに生物学的利用能を有することの1つ、2つ又は以上の特性を有してもよい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的は、本発明に係る腸溶性ペレットによって達成され、当該腸溶性ペレットは、内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアは、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含有する。
【0013】
本発明の第1態様によれば、本発明は、腸溶性ペレットを提供し、当該腸溶性ペレットは、内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアは、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含有し、前記腸溶性ペレットは、第1隔離層が水不溶性アルカリ化合物を含有し、前記第1添加物とイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の重量比が0.2~5:1であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2態様によれば、本発明は、腸溶性ペレットを提供し、当該腸溶性ペレットは、内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアは、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含有し、前記腸溶性ペレットは、第1隔離層が水不溶性アルカリ化合物を含有し、且つ、第1添加物が水不溶性アルカリ化合物であり、第1隔離層の含有する水不溶性アルカリ化合物と第1添加物としての水不溶性アルカリ化合物は、同じでもよいし異なってもよいことを特徴とする。
【0015】
本発明の第3態様によれば、本発明は、腸溶性ペレットを提供し、当該腸溶性ペレットは、内側から外側に、ペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層とをこの順に含み、ペレットコアは、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含有し、前記腸溶性ペレットは、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の粒径D90が100μm以下であり、且つ、第2隔離層がアルカリ物質を含まないことを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る腸溶性ペレットは、腸溶性層の外側にさらに保護層が設けられる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る腸溶性ペレットにおいて、ペレットコアと第1隔離層との間に他の層は存在しない。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る腸溶性ペレットにおいて、第2隔離層と腸溶性層との間に他の層は存在しない。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る腸溶性ペレットにおいて、第1隔離層と第2隔離層との間に他の層は存在しない。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る腸溶性ペレット中の第1添加物は、アルカリ化合物であり、好ましくは、水不溶性アルカリ化合物であり、より好ましくは、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムから選ばれる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、イラプラゾールの薬学的に許容される塩は、例えば、イラプラゾールナトリウム、イラプラゾールマグネシウム、イラプラゾール亜鉛、イラプラゾールカリウム、イラプラゾールリチウム又はイラプラゾールカルシウムなどであってもよい。当業者は、所望により、適切な塩を選択することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係る腸溶性ペレットのペレットコアは、界面活性剤をさらに含む。好ましくは、前記界面活性剤がポリソルベート80又はドデシル硫酸ナトリウムである。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、第1隔離層中の水不溶性アルカリ化合物とイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の重量比は、0.2~5:1であり、好ましくは、0.25~4:1であり、より好ましくは、0.3~3:1であり、特に好ましくは、0.5~2:1であり、最も好ましくは、0.8~1.2:1であり、例えば、1:1である。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、第2隔離層は、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含み、それと接着剤の量の重量比は、1~8:1.5~10、又は1~10:1~20、又は4~26:7~44の範囲内にある。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の粒径D90は、0μm(範囲を構成する時に当該点の値を含まない)、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmの任意の2つの端点の間の範囲から選ばれてもよい。
【0026】
本明細書の各態様及び各実施形態の1つ又は複数の特徴を任意に組み合わせて、新しい技術的解決手段を形成することができ、また、それらの組み合わせから得られた技術的解決手段も本発明の範囲に入るということは当業者に理解されるだろう。以下、本発明の技術的解決手段、用語及び原理についてさらに説明する。
【0027】
腸溶性ペレットのペレットコアについて:
本発明に係る腸溶性ペレットのペレットコア(薬物含有ペレットとも呼ばれる)は、完全に活性なペレットコア、又は薬物担持層に被覆されているブランクペレットコアであってもよい。本明細書では、用語「完全に活性なペレットコア」とは、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩及び第1添加物と、他の1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含むペレットコアを指し、そのうち有効成分としてのイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩が、単独で又は任意の他の成分と共に別の層を形成せず、他の成分(前記第1添加物及び他の1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤など)に分散されている。薬物担持層に被覆されているブランクペレットコアでは、薬物担持層がイラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物と、任意に賦形剤とを含む。
【0028】
ペレットコア中のイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩は、第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物の作用だけでは、十分な貯蔵安定性を実現できない場合に、ペレットコアにさらに加えた第1添加物でその貯蔵安定性の向上を実現できる。
【0029】
ペレットコア中の第1添加物は、先行技術で酸不安定化合物の安定性を向上させるために使用される従来の添加物であってもよい。好ましくは、第1添加物がアルカリ化合物であり、水不溶性アルカリ化合物及び水溶性アルカリ化合物を含む。本発明で好ましくは、水不溶性アルカリ化合物をペレットコア中の第1添加物として使用し、より好ましくは、ペレットコアに含まれる水不溶性アルカリ化合物と第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物を同じにすることで、隔離層のpH緩衝効果を一層向上させることができる。本発明に係る実施形態で、水不溶性アルカリ化合物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。好ましくは、アルカリ化合物とイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の重量比が0.2~5:1であり、好ましくは、0.25~4:1であり、より好ましくは、0.3~3:1であり、特に好ましくは、0.5~2:1であり、最も好ましくは、0.8~1.2:1であり、例えば、1:1である。
【0030】
本発明によれば、ペレットコアには界面活性剤がさらに含まれてもよい。本発明に係る実施例の結果が、界面活性剤は腸溶性ペレット及びその製剤中のイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の溶出率を高め、さらにそれらの生物学的利用能を効果的に改善することを証明している。本発明に係る実施例で、ペレットコアに含まれる界面活性剤は、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び両性イオン界面活性剤から選ばれてもよい。好ましくは、非イオン界面活性剤がポリエチレングリコール型、ポリオール型(例えば、ポリソルベート80)などから選ばれてもよく、陰イオン界面活性剤が高級脂肪酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩などから選ばれてもよく、例えば、ドデシル硫酸ナトリウムであり、両性イオン界面活性剤がリン脂質系から選ばれてもよい。
【0031】
本発明によれば、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の粒径は、腸溶性ペレットの溶出率及び/又は薬物担持量に影響を与える。本発明に係る好ましい実施形態で、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の粒径は、粒径D90が100μm以下であってもよく、この時に、腸溶性ペレットは良好な溶出率を有し、さらに、腸溶性ペレットから製造される腸溶性ペレット製剤の生物学的利用能を高めることができる。より好ましくは、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の粒径D90が、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μmの任意の2つの端点の間の範囲から選ばれてもよく、特に、D90が50μm以下であり、このようにして薬物担持量を高めることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記ブランクペレットコアは、先行技術で従来使用されているブランクペレットコアである。本発明に係る実施形態で、ブランクペレットコアは、微結晶性セルロースペレットコア、スクロースペレットコア、マンニトールペレットコアから選ばれてもよく、ただしそれらに限定されず、その粒径は、50~500μmであってもよく、好ましくは、100~400μmであり、より好ましくは、250~350μmであり、最も好ましくは、約300μmでる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記薬物担持層は、接着剤をさらに含んでもよい。接着剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、シロップ及びデンプンから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。本発明に係る実施形態で、接着剤は、ヒドロキシプロピルセルロース-SSL(例えば、Nissoから市販されているシリーズ)、ヒプロメロースE5、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルアルコール、メチルセルロース及びポリエチレングリコールから1つ又は複数選ばれてもよい。
【0034】
腸溶性ペレットの隔離層について:
腸溶性ペレットの隔離層の基本的な機能は、アルカリ環境にあるペレットコアと遊離カルボキシ基を含む腸溶性層を隔離して、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩がコーティングプロセス又は貯蔵中に分解又は変色することを防止することである。イラプラゾール腸溶性ペレット及びその製剤に対する研究で、本発明者らは次の事実を発見した。先行技術としての従来の製造方法で(例えば、ペレットコアに密接する隔離層を調製する時に)一般に使用されるペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質(例えば、タルク、シリカ、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウムなど)及び/又は水溶性アルカリ化合物、及び腸溶性層に密接する隔離層を調製する時に一般に使用されるアルカリ化合物を使用すると、腸溶性ペレット及びその製剤の安定性及び/又は耐酸性を低下させるため、特に安定性の比較的低い酸不安定化合物(例えば、イラプラゾール)の場合に、腸溶性ペレット及びその製剤は安定性及び耐酸性に関する要件を同時には満たさない。本明細書で用語「密接」とは、腸溶性ペレットのペレットコアとそのコーティング若しくは被覆層との間に、又は2つの層の間に別の層は存在しないことを指す。
【0035】
当該技術的問題を引き起こす原因の1つとして、本発明者らが試験の証明を経て次のように考えている(ただし、それに限定されない)。ペレットコアに密接する隔離層(本発明に係る第1隔離層に対応して)に含まれるペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質とペレットコアに含まれる酸不安定化合物の適合性は、酸不安定化合物の安定性の違いによって異なる。つまり、先行技術に基づいて製造される腸溶性ペレット及びその製剤において、ペレットコアに含まれる酸不安定化合物(例えば、イラプラゾール)の安定性が低い場合に、ペレットコアに密接する隔離層に含まれるペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質(例えば、タルク)と酸不安定化合物の適合性は低下する。したがって、ペレットコア及び/又は隔離層に含まれる安定剤としてのアルカリ化合物から保護されながらも、加速試験の結果で関連物質(即ち、不純物)が依然として明らかに増加することで、腸溶性ペレット製剤の安定性を低下させる。これは、先行技術に基づいて製造される腸溶性ペレット及びその製剤に適用できる酸不安定化合物の範囲をある程度限定している。つまり、先行技術に基づいて製造される腸溶性ペレット及びその製剤の配合又は構成は、安定性の比較的低いイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩に好適に適用できない。また、ペレットコアに密接する隔離層(本発明に係る第1隔離層に対応して)に水溶性アルカリ化合物が含まれる場合に、長期の高温高湿条件では、腸溶性ペレットの隔離層が遊離水を吸収して水溶性アルカリ化合物の溶解を引き起こすことで、腸溶性層に密接する隔離層のアルカリ度が上がってアルカリを示し、酸性媒体において腸溶性層に水が浸入する場合に、腸溶性層が早めに溶解して、腸溶性ペレット及びその製剤の耐酸性の低下を引き起こす。腸溶性層に密接する隔離層がアルカリ性を示すことが腸溶性層が早めに溶解することを引き起こすという原理は、腸溶性層に密接する隔離層(本発明に係る第2隔離層に対応して)にアルカリ化合物が含まれる場合にも適用される。
【0036】
したがって、本発明によれば、腸溶性ペレットは、不活性物質を含む隔離層を少なくとも2つ含み、即ち、少なくとも、ペレットコアに近くペレットコアに密接する第1隔離層と、第1隔離層よりペレットコアから離れており又は腸溶性層に密接する第2隔離層とを含み、そのうち、第1隔離層は、水不溶性アルカリ化合物を含み、水溶性アルカリ化合物又はペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まず、第2隔離層は、アルカリ化合物を含まない。腸溶性ペレットが3つ又は以上の隔離層を含む場合に、第1隔離層と第2隔離層との間に位置する他の隔離層は、本発明に係る第1隔離層又は第2隔離層の定義に適合する隔離層であってもよいし、先行技術で一般に使用される隔離層であってもよい。
【0037】
本発明によれば、水不溶性アルカリ化合物は、先行技術で酸不安定化合物の安定性を向上させるために一般に使用される水不溶性アルカリ化合物であってもよい。本発明に係る実施形態で、水不溶性アルカリ化合物は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウムから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。
【0038】
本発明によれば、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質は、薬学上一般的な1つ又は複数の潤滑剤、流動促進剤及び粘着防止剤(即ち、ブロッキング防止剤、以下同じ)から1つ又は複数選ばれてもよい。本発明に係る実施形態で、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質は、シリカ、ケイ酸カルシウム、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、ケイ酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、タルク、二酸化チタンなどから選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレットの一実施形態で、腸溶性ペレットの第1隔離層には、タルク、シリカ、二酸化チタン及びステアリン酸マグネシウムの1つ又は複数をペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質として含まない。
【0039】
本発明に係る好ましい実施形態で、第1隔離層は、主に、水不溶性アルカリ化合物と接着剤とから構成され、且つ、第2隔離層は、主に、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質と接着剤とから構成される。本発明によれば、第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物及び接着剤の量又は第2隔離層に含まれるペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質及び接着剤の量を調整することにより、腸溶性ペレット製剤の溶出率に影響を与え、さらに、その生物学的利用能に影響を与えることができる。例えば、本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレット錠の好ましい実施形態で、各成分の比率は、次のとおりであってもよい。イラプラゾールの量が5~15重量部である時に、第1隔離層は、5~36重量部の接着剤、5~36重量部の水不溶性アルカリ化合物を含み、第2隔離層は、4~26重量部の接着剤、7~44重量部のペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含む。
【0040】
前記接着剤は、先行技術の隔離層で一般に使用される接着剤である。本発明によれば、接着剤は、薬学的に許容される水溶性不活性化合物、又はコーティングフィルムとして使用するポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、シロップ及びデンプンから1つ又は複数選ばれてもよい。
【0041】
腸溶性ペレットの腸溶性層について:
先行技術による腸溶性ペレット製剤で一般に使用される腸溶性層は、本発明にも適用され、例えば、CN87103285A(US4786505のファミリーメンバーの中国特許)には腸溶性層に関して詳細な説明が記載されている。本発明者らがそれを参考とし、前記文献の腸溶性層に関連する内容及びその引用する全ての文献の関連の内容を本願に組み込む。
【0042】
本発明によれば、腸溶性層は、アクリル樹脂系、カルボキシメチルエチルセルロースなどセルロース系、オパドライなどの腸溶性コーティング材料からなる群から選ばれる1つ又は複数の物質と、任意に、可塑剤、粘着防止剤、潤滑剤からから選ばれる1つ又は複数の添加剤とを含んでもよい。本発明に係る実施形態で、腸溶性層は、アクリル樹脂系腸溶性コーティング材料、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、フタル酸エステルなど)、粘着防止剤(例えば、タルク、モノステアリン酸グリセロールなど)を含んでもよい。そのうち、アクリル樹脂系腸溶性コーティング材料は、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸共重合体の溶液又は分散液L30D55、(酢酸/コハク酸)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニル酢酸フタレート、シェラックから1つ又は複数選ばれる。本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレットの好ましい実施形態で、腸溶性層に含まれる腸溶性コーティング材料とイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の重量比は、2~20:1である。本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレットの好ましい実施形態で、可塑剤とイラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の重量比は、0.6~6:1であり、好ましくは、0.8~4:1であり、より好ましくは、1~2:1である。
【0043】
腸溶性ペレットの保護層について:
本発明によれば、腸溶性ペレットは、腸溶性層の外側にさらに保護層が設けられてもよく、好ましくは、保護層が腸溶性層に密接する。前記保護層は、製剤に仕上がるための静置中、又はその製剤の製造プロセス中、又は製剤に仕上がった後の静置中において様々な中間製品/製品に起こり得る粘着を防止することができる。また、保護層を設けるのは腸溶性ペレットの溶出率を効果的に高めて、それによって製造された腸溶性ペレット製剤の生物学的利用能を改善することもできる。
【0044】
本発明に係る実施形態で、保護層は、接着剤と粘着防止剤とを含んでもよい。接着剤は、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース及びポリエチレングリコールから1つ又は複数選ばれてもよい。粘着防止剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン及びシリカから1つ又は複数選ばれてもよい。
【0045】
本発明によれば、保護層中の粘着防止剤の量を増加させることにより腸溶性ペレットの耐酸性を向上させることができる。本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレットの好ましい実施形態で、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩が5~15重量部である時に、粘着防止剤の量は、0.5~5重量部である。
【0046】
本発明の第4態様によれば、本発明は、腸溶性ペレットの製造方法を提供し、前記方法は、少なくとも、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と第1添加物とを含むペレットコアを調製するステップ1)と、第1隔離層を被覆させ、次に第2隔離層を被覆させるステップ2)と、腸溶性層を被覆させるステップ3)とを含む。
【0047】
好ましくは、ステップ2)は、水不溶性アルカリ化合物を含み且つ水溶性アルカリ化合物又はペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まない第1懸濁液を調製し、第1懸濁液をステップ1)より得たペレットコアに被覆させるステップと、アルカリ化合物を含まない第2懸濁液を調製し、第2懸濁液を第2隔離層として被覆させ、好ましくは、腸溶性層に密接する第2隔離層として被覆させるステップとを含む。
好ましくは、ステップ1)において、前記第1添加物と前記第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物が共に作用して、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩の貯蔵安定性を実現する。
【0048】
好ましくは、腸溶性ペレットの製造方法は、保護層を被覆させるステップ4)をさらに含む。
【0049】
本発明に係る実施形態で、腸溶性ペレットの製造方法は、
1)例えば、流動床法でブランクペレットコアに薬物担持層を被覆させることによって、ペレットコアを調製するステップであって、薬物担持層は、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩と、第1添加物としてのアルカリ化合物と、接着剤とを含むステップ、
2)例えば、流動床法で内側から外側に、少なくとも、第1懸濁液、第2懸濁液をそれぞれステップ1)より得たペレットコアに被覆させるステップであって、第1懸濁液は、水不溶性アルカリ化合物を含み、水溶性アルカリ化合物又はペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まず、第1隔離層を形成させるステップと、第2懸濁液は、アルカリ化合物を含まず、第2隔離層を形成させるステップと、このようにして隔離ペレットを調製するステップ、
3)腸溶性コーティング材料と、可塑剤、粘着防止剤、潤滑剤及び乳化剤から選ばれる1つ又は複数で腸溶性層懸濁液を調製し、例えば、流動床法で、腸溶性層懸濁液をステップ2)より得た隔離ペレットに被覆させることにより、腸溶性ペレットを製造するステップの1つ又は複数を含んでもよい。
【0050】
好ましくは、前記腸溶性ペレットの製造方法は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールから選ばれる1つ又は複数の接着剤を精製水に加えて、保護層コーティング液を調製し、例えば、流動床法で、保護層コーティング液をステップ3)より得た腸溶性ペレットに被覆させて、保護層を有する腸溶性ペレットを製造するステップ4)をさらに含んでもよい。
【0051】
本発明によれば、任意に、前記本発明に係る腸溶性ペレットを使用してイラプラゾール腸溶性ペレット製剤を製造してもよく、腸溶性ペレット製剤の剤形は、錠剤、カプセル剤、懸濁用乾燥配合剤、丸剤であってもよい。
【0052】
本発明の第5態様によれば、本発明は、イラプラゾール腸溶性ペレット錠を提供し、当該腸溶性ペレット錠は、本発明に係る腸溶性ペレットと打錠添加物(腸溶性ペレットのペレットコア中の前記添加物と区別して第2添加物と呼ぶ)とを含む。
【0053】
任意に、当該腸溶性ペレット錠は、フィルムコーティングをさらに含む。
【0054】
本発明によれば、腸溶性ペレット錠を製造するための腸溶性ペレットは、保護層を含む腸溶性ペレット又は保護層を含まない腸溶性ペレットであってもよい。
【0055】
本発明によれば、打錠添加物は、本分野の先行技術で腸溶性ペレット錠の打錠時に使用される従来の打錠添加物であってもよい。本発明に係る実施形態で、打錠添加物は、充填剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤を含み、そのうち、充填剤及び/又は希釈剤は、デンプン、アルファ化デンプン、ラクトース、マンニトール及び微結晶性セルロースから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されず、崩壊剤は、クロスポビドン、クロスカルボキシメチルセルロースナトリウム及びクロスカルボキシメチルスターチナトリウムから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されず、潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びシリカから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。
【0056】
本発明によれば、フィルムコーティングは、本分野の先行技術で腸溶性ペレット錠のフィルムコーティング時に使用される従来のフィルムコーティングであってもよい。本発明に係る実施形態で、フィルムコーティングは、コーティング粉末を含み、コーティング粉末は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、タルク、レーキ及び胃溶型オパドライから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。
【0057】
本発明に係る腸溶性ペレットから腸溶性ペレット錠を製造する打錠方法、及び、任意にフィルムコーティングを被覆させる方法は、いずれも本分野の先行技術で腸溶性ペレット錠に対して打錠及びコーティングする従来の方法である。
【0058】
本発明の第6態様によれば、本発明は、イラプラゾール腸溶性ペレットカプセルを提供し、当該腸溶性ペレットカプセルは、本発明に係る保護層を有する前記腸溶性ペレットを含む。
【0059】
本発明によれば、カプセルは、本分野の先行技術で所定の用量規格での腸溶性ペレットへの充填時に使用される従来のカプセルであってもよい。例えば、カプセルは、カプセルシール材料を使用して封止させるカプセルシェルであってもよく、カプセルのカプセルシェル材料は、ゼラチン、デンプン、アルギン酸ナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されず、当該カプセルシール材料は、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、アクリル樹脂、β-シクロデキストリン、エチルセルロース、加工デンプン、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)及びカルボキシメチルセルロースナトリウムから1つ又は複数選ばれてもよく、ただしそれらに限定されない。
【0060】
本発明に係る腸溶性ペレットから腸溶性ペレット錠カプセルを製造する方法は、本分野の先行技術で腸溶性ペレットカプセルを製造する従来の方法であってもよい。
【0061】
本発明の第7態様によれば、本発明は、本発明に係る腸溶性ペレットと懸濁用乾燥顆粒とを含むイラプラゾールペレットの懸濁用乾燥配合剤を提供する。
【0062】
本発明に係る腸溶性ペレットから腸溶性ペレット懸濁用乾燥配合剤を製造する方法は、本分野の先行技術で腸溶性ペレット懸濁用乾燥配合剤を製造する従来の方法であってもよい。
【0063】
これまでに実施した動物実験研究で、本発明者らは、本発明に係る腸溶性ペレットを含む製剤が胃腸疾患の治療及び/又は予防に有益な効果を表していることを発見しており、前記胃腸疾患は、主に、胃の灼熱感、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス性潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍及び十二指腸潰瘍再発、NSAID関連胃潰瘍、成人活動性良性胃潰瘍、感染性腸炎、大腸炎、胃酸過多、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー・エリソン症候群、胃食道逆流症(GERD)、ピロリ菌関連疾患又はピロリ菌の根絶、びらん性食道炎の全段階、短腸症候群、又は前記疾患の任意の組み合わせを含む。
【0064】
したがって、本発明の第8態様によれば、本発明は、胃腸疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。当該方法は、治療及び/又は予防を必要とする患者に治療及び/又は予防上の有効量の本発明に係る腸溶性ペレット製剤を投与するステップを含む。本発明に係る実施形態で、本発明に係る腸溶性ペレット製剤は、本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレット錠、イラプラゾール腸溶性ペレットカプセル又はイラプラゾール腸溶性ペレット懸濁用乾燥配合剤である。当該方法で治療及び/又は予防できる胃腸疾患は、胃の灼熱感、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス性潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍及び十二指腸潰瘍再発、NSAID関連胃潰瘍、成人活動性良性胃潰瘍、感染性腸炎、大腸炎、胃酸過多、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー・エリソン症候群、胃食道逆流症(GERD)、ピロリ菌関連疾患又はピロリ菌の根絶、びらん性食道炎の全段階、短腸症候群、又は前記疾患の任意の組み合わせを含み、ただしそれらに限定されない。
【0065】
それに対応して、本発明の第9態様によれば、本発明は、胃腸疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造における本発明に係る腸溶性ペレット及びその製剤の用途を提供し、前記胃腸疾患は、胃の灼熱感、炎症性腸疾患、クローン病、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、消化性潰瘍、ストレス性潰瘍、出血性消化性潰瘍、十二指腸潰瘍及び十二指腸潰瘍再発、NSAID関連胃潰瘍、成人活動性良性胃潰瘍、感染性腸炎、大腸炎、胃酸過多、消化不良、胃不全麻痺、ゾリンジャー・エリソン症候群、胃食道逆流症(GERD)、ピロリ菌関連疾患又はピロリ菌の根絶、びらん性食道炎の全段階、短腸症候群、又は前記疾患の任意の組み合わせを含み、ただしそれらに限定されない。
【0066】
さらに、本発明の腸溶性ペレット及びその製剤を、胃腸疾患を治療及び/又は予防する薬物の製造に用いる場合に、前記胃腸疾患は、十二指腸潰瘍及び潰瘍再発、胃潰瘍、胃食道逆流症(GERD)、ピロリ菌関連疾患を含み、ただしそれらに限定されず、又は前記薬物は、ピロリ菌の根絶のために用いることができ、また、非ステロイド性抗炎症薬による消化性潰瘍疾患を予防し、抗血小板凝集薬(クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルを含み、ただしそれらに限定されない)などによる胃腸出血及び関連の潰瘍を予防することができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明において、本発明者らは、イラプラゾール腸溶性ペレット及びその製剤が良好な安定性と耐酸性(特に耐酸性)を同時に備えられないための影響因子を発見及び排除しており、また、本発明の技術的解決手段によって、次の有益な効果を得る。
1)イラプラゾールの腸溶性ペレットに少なくとも2つの隔離層(第1隔離層及び第2隔離層と任意に他の隔離層)を設け、且つそれらの隔離層(特に第1隔離層及び第2隔離層)の構成を限定することにより、本発明に係る腸溶性ペレット及びその製剤は、より良好な安定性及び耐酸性を同時に有することが可能になる。
【0068】
2)イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩の粒径を調整し、第1隔離層中の水不溶性アルカリ化合物と接着剤の重量比を調整し、又は当該第2隔離層中のペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質と接着剤の重量比を調整し、又はさらに保護層を被覆させることにより、本発明に係る腸溶性ペレット及びその製剤は、有効成分の溶出率が高められ、生物学的利用能の向上を実現できる。
【0069】
3)本発明に記載のイラプラゾール腸溶性ペレット及びその製剤は、人体で良好なインビボ制酸作用を有し、服用後1時間のうちに胃酸をpH 4以上に阻害して、臨床効果を発揮することができる。本発明に係る腸溶性ペレット錠は、素早く効果を発揮できるため、患者の苦痛をより早く解消する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、本発明に係るペレット錠と異なる隔離層処方を有する比較ペレット錠7及び8(図中、ペレット錠7、ペレット錠8と略称する)の加速安定性試験における累積溶出率である。
【
図2】
図2は、本発明に係るペレット錠と異なるペレット層を有する比較ペレット錠11及び16(図中、ペレット錠11、ペレット錠16と略称する)の加速安定性試験における累積溶出率である。
【
図3】
図3は、本発明に係るペレット錠と異なるイラプラゾールの粒径を有するペレットコア処方による比較ペレット錠3及び4(図中、ペレット錠3、ペレット錠4と略称する)の加速安定性試験における累積溶出率である。
【
図4】
図4は、本発明に係るペレット錠と保護層を有しない比較ペレット錠12(図中、ペレット錠12と略称する)の加速安定性試験における累積溶出率である。
【
図5】
図5は、本発明に係るペレット錠と、先行技術方法に基づいて製造した比較ペレット錠1及び比較ペレット錠2(図中、ペレット錠1、ペレット錠2と略称する)に関する人体の胃内pHのリアルタイムな検出の平均値の記録である。
【
図6】
図6は、本発明に係るペレット錠と、先行技術方法に基づいて製造した比較ペレット錠1及び比較ペレット錠2(図中、ペレット錠1、ペレット錠2と略称する)のビーグル犬におけるインビボ血中薬物濃度曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本セッションでは、主に、本発明に係るイラプラゾールの腸溶性ペレット錠剤及び懸濁用乾燥配合剤を好ましい例として、本発明に係る腸溶性ペレット製剤及びその製造方法を例示的に示す。
【0072】
当該イラプラゾール腸溶性ペレット錠は、ペレット(内側から外側にペレットコアと、第1隔離層と、第2隔離層と、腸溶性層と、保護層とをこの順に含む)と、打錠添加物と、フィルムコーティングとを含み、そのうち、ペレットコアは、ブランクペレットコアと薬物担持層とを含み、薬物担持層は、イラプラゾール及び/又はイラプラゾールの薬学的に許容される塩(その粒径D90は50μm以下であることが好ましい)と、アルカリ化合物と、界面活性剤と、接着剤とを含み、当該第1隔離層は、水不溶性アルカリ化合物と接着剤とを含み、水溶性アルカリ化合物又はペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まず、当該第2隔離層は、主に、接着剤とペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質(例えば、粘着防止剤として使用できるタルク、シリカ、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウムなど)とを含み、アルカリ化合物を含まない。
【0073】
好ましくは、当該ペレットコアに含まれるアルカリ化合物は、水不溶性アルカリ化合物であり、より好ましくは、当該ペレットコアに含まれる水不溶性アルカリ化合物と当該第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物が同じである。
【0074】
具体的には、当該イラプラゾール腸溶性ペレット錠の各成分と比率は、次に示されるとおりであってもよく、ただしそれに限定されない(単位は重量部)。
イラプラゾール腸溶性ペレット:
1)ペレットコア:
ブランクペレットコア 5~15、
以下のものを薬物担持層:
イラプラゾール(又は薬学的に許容されるその塩) 5~15、
アルカリ化合物 5~15、
界面活性剤 0.2~0.6、
接着剤 8~24、
2)第1隔離層:
接着剤 5~36、
水不溶性アルカリ化合物 5~36、
3)第2隔離層:
接着剤 4~26、
粘着防止剤 7~44、
4)腸溶性層:
腸溶性コーティング材料 30~100(固形分)、
粘着防止剤 1~5、
可塑剤 9~30、
5)保護層:
接着剤 0.5~4、
粘着防止剤 0.5~5、
打錠、
6)打錠添加物:
充填剤 100~600、
希釈剤 50~200、
崩壊剤 5~20、
潤滑剤 1~20、
7)フィルムコーティング:
コーティング粉末 10~40。
【0075】
当該腸溶性ペレット錠は、高い安定性及び耐酸性を同時に有するため、安定性の低いイラプラゾールに適し、また、当該イラプラゾール腸溶性ペレット錠は、良好な薬物担持量及び非常に高い溶出率/生物学的利用能も有する。
【0076】
以下、特定の実施例と図面を用いて本発明をさらに説明し、ただし本発明は以下に開示する特定の実施例に限定されるものではない。下記の実施例で用いる方法は、特段の説明がなければ従来の方法である。以下の実施例の試験データ結果からの結論は、当業者が本分野の常識に基づいて合理的に導き出せるものであり、以下の開示に記載されるものに限定されない。
【0077】
実施例1:腸溶性ペレットの製造
実施例1で、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩を例として、本発明に係る腸溶性ペレットA~G、及び、腸溶性ペレットの各構成層の異なる処方の腸溶性ペレット及びその製剤の特性に対する影響を比較するための比較ペレット3~18を製造した。本発明に係る腸溶性ペレットA~Gと比べて、比較ペレット3及び4は、薬物担持層に異なるイラプラゾールの粒径を有し、比較ペレット5~10、14、15は、異なる隔離層を有し、比較ペレット11、16、17は、処方の変化した薬物担持層を有し、ペレット12、13は、異なる保護層を有し、比較ペレット18は、イラプラゾール及び/又は薬学的に許容されるその塩と第1添加物の変化した比率を有する。
【0078】
(一)腸溶性ペレットの各構成層の調製処方:
1.1 薬物含有ペレット(W)の調製処方、方法、及びその薬物含有ペレットの薬物負荷率
本実施例で調製したのは、ブランクペレットコアと薬物担持層とを含む薬物含有ペレット(即ち、ペレットコア)であった。
【0079】
【表1】
調製プロセス:
150gのヒドロキシプロピルセルロース-SSL、4gのポリソルベート80を秤量し、3000gの精製水に溶解してヒドロキシプロピルセルロース接着剤溶液を得て、次に100gの水酸化マグネシウムを接着剤溶液に加えて、10000rpm高せん断分散で5分間分散させ、次に粒径D90が46.8μmのイラプラゾール原料100gを水酸化マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次にGLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表2】
W
1薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=95.6%
【0080】
【表3】
調製プロセス:
処方量として100gのヒドロキシプロピルセルロース-SSL、2gのドデシル硫酸ナトリウムを秤量して2000gの精製水に溶解し、150gの炭酸マグネシウムを加えて10000rpm高せん断で5分間分散させ、次に50gのイラプラゾールマグネシウムを炭酸マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾールマグネシウム懸濁液を微結晶性セルロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表4】
W
2薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=91.4%
【0081】
【表5】
調製プロセス:
処方量として240gのポリビニルピロリドンK30、6gのドデシル硫酸ナトリウムを秤量して4800gの精製水に溶解し、150gの炭酸カルシウムを加えて10000rpm高せん断分散で均一にし、次に150gのイラプラゾール亜鉛を炭酸カルシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール亜鉛懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表6】
W
3薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=92.4%
【0082】
【表7】
調製プロセス:
処方量として180gのポリビニルピロリドンK30、6gのポリソルベート80を秤量して3000gの精製水に溶解し、50gの酸化マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次に150gのイラプラゾールを酸化マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をマンニトールペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表8】
W
4薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=93.3%
【0083】
【表9】
調製プロセス:
処方量として80gのヒプロメロースE5、6gのポリソルベート80を秤量して1600gの精製水に溶解し、50gの水酸化マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次に150gのイラプラゾールを水酸化マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表10】
W
5薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=94.1%
【0084】
【表11】
調製プロセス:
処方量として100gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量し、3000gの精製水に溶解してヒドロキシプロピルセルロース接着剤溶液を得て、次に100gのイラプラゾール原料を接着剤溶液に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次にGLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表12】
W
6薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=93.4%
【0085】
【表13】
調製プロセス:
処方量として100gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量し、3000gの精製水に溶解してヒドロキシプロピルセルロース接着剤溶液を得て、次に100gのイラプラゾール原料、100gの水酸化マグネシウムを接着剤溶液に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次にGLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表14】
W
7薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=95.4%
【0086】
8)薬物含有ペレット処方W8
イラプラゾールの粒径D90が80μm以上且つ100μm以下であることを除いて、薬物含有ペレット処方W1と同じであった。
W8薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=87.2%
【0087】
9)薬物含有ペレット処方W9
イラプラゾールの粒径D90が100μmより大きいことを除いて、薬物含有ペレット処方W1と同じであった。
W9薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=79.3%
【0088】
【表15】
調製プロセス:
150gのヒドロキシプロピルセルロース-SSL、4gのポリソルベート80を秤量し、3000gの精製水に溶解してヒドロキシプロピルセルロース接着剤溶液を得て、次に粒径D90が46.8μmのイラプラゾール原料100gをポリソルベート80含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次にGLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表16】
W
10薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=97.6%
【0089】
【表17】
調製プロセス:
処方量として100gのヒドロキシプロピルセルロース-SSL、2gのドデシル硫酸ナトリウムを秤量して2000gの精製水に溶解し、200gの炭酸マグネシウムを加えて10000rpm高せん断で5分間分散させ、次に50gのイラプラゾールマグネシウムを炭酸マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾールマグネシウム懸濁液を微結晶性セルロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表18】
W
11薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=92.5%
【0090】
【表19】
調製プロセス:
処方量として100gのヒプロメロースE5、6gのポリソルベート80を秤量して2000gの精製水に溶解し、50gの水酸化マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次に200gのイラプラゾールを水酸化マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表20】
W
12薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=93.8%
【0091】
【表21】
調製プロセス:
処方量として100gのヒドロキシプロピルセルロース-SSL、2gのドデシル硫酸ナトリウムを秤量して2000gの精製水に溶解し、30gの炭酸マグネシウムを加えて10000rpm高せん断で5分間分散させ、次に180gのイラプラゾールを炭酸マグネシウム含有接着剤に分散させて、10000rpm高せん断分散で均一にし、GLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液を微結晶性セルロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表22】
W
13薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%=94.5%
【0092】
1.2 隔離層(G)の調製処方
【表23】
調製プロセス:
処方量として10gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して200gの精製水に溶解し、次に10gの炭酸マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。8gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して160gの精製水に溶解し、14gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表24】
【0093】
【表25】
調製プロセス:
処方量として23gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して460gの精製水に溶解し、次に23gの炭酸マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。17.2gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して344gの精製水に溶解し、28.8gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0094】
【表26】
調製プロセス:
処方量として88gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して1140gの精製水に溶解し、次に88gの炭酸マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。17.2gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して520gの精製水に溶解し、28.8gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0095】
【表27】
調製プロセス:
処方量として23gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して460gの精製水に溶解し、次に23gの炭酸マグネシウム、11.5gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。17.2gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して344gの精製水に溶解し、28.8gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0096】
【表28】
調製プロセス:
処方量として23gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して460gの精製水に溶解し、次に23gの炭酸ナトリウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。17.2gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して344gの精製水に溶解し、28.8gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0097】
【表29】
調製プロセス:
処方量として33gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して890gの精製水に溶解し、次に57gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にし、隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって隔離コーティング懸濁液を薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0098】
【表30】
調製プロセス:
処方量として23gのポビドンK30を秤量して460gの精製水に溶解し、次に23gの二酸化チタンを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。26gのポビドンK30を秤量して520gの精製水に溶解し、次に44gのシリカを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0099】
【表31】
調製プロセス:
処方量として23gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して720gの精製水に溶解し、次に23gの炭酸マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。52gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して1040gの精製水に溶解し、100gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0100】
【表32】
調製プロセス:
処方量として10gのヒドロキシプロピルセルロース-SSL、5gの炭酸ナトリウム、5gのタルクを秤量して200gの精製水に溶解することにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。8gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して160gの精製水に溶解し、14gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0101】
【表33】
調製プロセス:
処方量として15gのヒプロメロース-E5を秤量して300gの精製水に溶解し、次に15gの酸化マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。12gのヒプロメロース-E5を秤量して240gの精製水に溶解し、21gの二酸化チタンを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0102】
【表34】
調製プロセス:
処方量として20gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して400gの精製水に溶解し、次に20gの水酸化マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。8gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して160gの精製水に溶解し、14gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0103】
【表35】
調製プロセス:
処方量として23gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して460gの精製水に溶解し、次に23gの水酸化マグネシウムを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にすることにより、1層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。46gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを920gの精製水に溶解して、2層目の隔離コーティング懸濁液を調製した。GLATT GPCG-1流動床によって2層の隔離コーティング懸濁液を順に、薬物含有ペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記隔離層処方G1を参照する。
【0104】
1.3 腸溶性層(C)の調製処方
【表36】
調製プロセス:
処方量として20.1gのクエン酸トリエチルを秤量して447.6gの精製水に溶解し、3.4gのタルクを加えて、10000rpm高せん断分散で均一にし、次に223.8gのオイドラギットL30D-55と45分間撹拌して腸溶性層コーティング液を得て使用に備え、GLATT GPCG-1流動床によって腸溶性層コーティング液を隔離ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表37】
【0105】
1.4 保護層(B)の調製
【表38】
調製プロセス:
処方量として2.5gのヒプロメロースE5を秤量して50gの精製水に溶解し、次に1.2gのステアリン酸マグネシウムを加えて、5000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表39】
【0106】
【表40】
調製プロセス:
処方量として0.5gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して10gの精製水に溶解し、次に0.5gのステアリン酸マグネシウムを加え、3000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記保護層処方B1を参照する。
【0107】
【表41】
調製プロセス:
処方量として4gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して80gの精製水に溶解し、次に5gのステアリン酸マグネシウムを加え、5000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記保護層処方B1を参照する。
【0108】
【表42】
調製プロセス:
処方量として2.5gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して50gの精製水に溶解し、次に1.2gのタルクを加え、5000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記保護層処方B1を参照する。
【0109】
【表43】
調製プロセス:
処方量として2.5gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量して50gの精製水に溶解し、次に1.2gの二酸化チタンを加え、5000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記保護層処方B1を参照する。
【0110】
【表44】
調製プロセス:
処方量として2.5gのヒプロメロースE5を秤量して50gの精製水に溶解し、次に0.2gのステアリン酸マグネシウムを加え、5000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、前記保護層処方B1を参照する。
【0111】
(二)腸溶性ペレットの製造:
1)本発明に係る腸溶性ペレットの製造:
前記セッション(一)で列挙している腸溶性ペレットの各構成層の処方に基づいて、次の表1に示される本発明に係る腸溶性ペレットA~Gを製造した。
【表45】
ここで、W
x薬物含有ペレットの薬物負荷率=(薬物含有ペレットの実際の含有量)/(薬物含有ペレットの理論上の含有量)×100%
【0112】
2)比較ペレット3~16の製造:
前記セッション(一)で列挙している腸溶性ペレットの各構成層の処方に基づいて、次の表2-1及び表2-2に示される比較ペレット3~15を製造した。
【表46】
*:各データについて比較しやすいように、ここで、統一した粒径D90を有するイラプラゾールを使用している。本発明によれば、粒径D90がこれに限定されないことは当業者に自明である。
【表47】
*:各データについて比較しやすいように、ここで、統一した(又は特定の)粒径D90を有するイラプラゾールを使用している。本発明によれば、粒径D90がこれに限定されないことは当業者に自明である。
【0113】
実施例2:腸溶性ペレット錠の製造
実施例2では、実施例1で製造した本発明に係る腸溶性ペレットA~G、及び比較ペレット3~18から本発明に係る腸溶性ペレット錠A~G、及び比較ペレット錠3~18を製造した。また、先行技術の腸溶性ペレット錠の製造方法に基づいて、イラプラゾール(データを比較しやすいように、粒径D90は46.8μmに統一した)を活性医薬物質として、比較ペレット錠1(CN1134666A参照)及び比較ペレット錠2(CN102525990A参照)を製造した。
【0114】
2.1 本発明に係る腸溶性ペレット錠A~G、及び比較ペレット錠3~18の製造
次のとおりに打錠、コーティングするステップで、上記の表1及び表2-1、表2-2に示される腸溶性ペレットからそれぞれ腸溶性ペレット錠を製造した。
【表48】
錠剤製造プロセス:
イラプラゾール腸溶性外被ペレット及び微結晶性セルロースPH102、クロスポビドン-XL、フマル酸ステアリルナトリウムを前記処方量で3リットルのホッパーに入れて、10rpmで15分間混合した。次に、打錠機に入れて打錠し、錠剤の硬度は8~12kgであり、錠剤の重量換算で1錠あたり5mgのイラプラゾールを含む。
【0115】
【表49】
コーティングプロセス:
20gのオパドライコーティング液を秤量して、166.5gの精製水に溶解し、高効率ポット型コーティング装置を用いてイラプラゾールペレット錠をコーティングした。
【0116】
2.2 比較ペレット錠1の製造:
CN1134666Aの実施例16の腸溶性ペレット錠の製造方法及びプロセスに基づいて、実施例15の外被を採用し、イラプラゾールを活性医薬物質とし、薬物担持層に界面活性剤を添加して、比較ペレット錠1を製造した。方法として、具体的には、次のとおりである。
1)薬物含有ペレットの調製
【表50】
調製プロセス:
150gのヒプロメロースE5、3gのポリソルベート80を秤量し、精製水に溶解してヒプロメロース接着剤溶液を得て、次に粒径D90が50μm未満のイラプラゾール原料を接着剤に分散させて、10000rpmで5分間分散させ、次にGLATT GPCG-1流動床によってイラプラゾール懸濁液をスクロースペレットコアに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表51】
【0117】
2)隔離ペレットの調製
【表52】
調製プロセス:
103gのヒドロキシプロピルセルロース-SSLを秤量し、387.5gの精製水に溶解してヒドロキシプロピルセルロース接着剤溶液を得て、次に42.5gのタルク、2.75gのステアリン酸マグネシウムを接着剤溶液に加えて、10000rpm高せん断分散で5分間分散させ、次にGLATT GPCG-1流動床によって隔離層コーティング液をイラプラゾール薬物含有ペレットに吹き付けた。プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表53】
【0118】
3)腸溶性ペレットの調製
【表54】
調製プロセス:
1.8gのポリソルベート80、3.8gのクエン酸トリエチル、1.9gのモノステアリン酸グリセロールを秤量して50gの70℃精製水に溶解し、5000rpmで5分間高せん断して、静置して室温に戻し、次に127gのオイドラギットL30D-55と共に45分間撹拌して使用に備え、GLATT GPCG-1流動床によって腸溶性コーティング液を隔離ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表55】
【0119】
4)保護層ペレットの調製
【表56】
調製プロセス:
2.5gのヒドロキシプロピルセルロースE5を秤量して51.3gの精製水に溶解し、次に0.08gのステアリン酸マグネシウムを加え、5000rpm高せん断分散で均一にして、保護層コーティング液を得た。GLATT GPCG-1流動床によって保護層コーティング液を腸溶性ペレットに吹き付けた。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表57】
【0120】
【表58】
錠剤製造プロセス:
イラプラゾール腸溶性コーティングペレット及び微結晶性セルロース、クロスポビドン、フマル酸ステアリルナトリウムを前記処方量で3リットルのホッパーに入れて、10rpmで15分間混合した。次に、打錠機に入れて打錠し、錠剤の硬度は8~12kgであり、錠剤の重量換算で1錠あたり5mgのイラプラゾールを含む。
【0121】
【表59】
40gのオパドライコーティング液を秤量して、333gの精製水に溶解し、高効率ポット型コーティング装置を用いてイラプラゾールペレット錠をコーティングした。比較ペレット錠1を得た。
【0122】
2.3 比較ペレット錠2の製造:
CN102525990Aの腸溶性ペレット錠の製造方法に基づいて、イラプラゾールを活性医薬物質として、比較ペレット錠2を製造した。
【0123】
1)薬物含有ペレットコアの調製
【表60】
調製プロセス:
ブランクスクロースペレットコア(0.25~0.3mm)を、50メッシュ、60メッシュでそれぞれ篩分けし、50メッシュから60メッシュの間のペレットに薬物を負荷させた。薬物負荷溶液の調製方法は次のとおりである。前記処方量のヒドロキシプロピルメチルセルロース、酸化マグネシウムを80%(v/v)エタノール水溶液に溶解して、4%(m/v)の水酸化ナトリウム溶液で溶液のpHを約12に調整し、処方量のイラプラゾールを加えて、均一になるまで撹拌した。薬物負荷溶液の粘度は、13.22cpであった。
プロセスパラメータとして、具体的には、次のとおりである。
【表61】
310gの淡黄色のイラプラゾールペレットを得て、収率は90.3%であった。
【0124】
2)隔離ペレットの調製
【表62】
調製プロセス:
300gの薬物含有ペレットを使用し、隔離液はコーティングに備えpHを10.5以上に調整する必要があり、隔離層溶液の粘度は、15.24cpであった。操作パラメータは、下表に示されるとおりである。
【表63】
345gのペレットを得て、収率は94.5%であった。
【0125】
3)腸溶性ペレットの調製
【表64】
調製プロセス:
オイドラギットL30D-55に4%(m/v)水酸化ナトリウム水溶液を6.5mL加え、撹拌しながらポリエチレングリコール6000を加え、80メッシュの篩に通した。隔離ペレットに腸溶性コーティング被覆操作を行った。主なパラメータとして、物質温度は25~30℃であり、給気温度は28~35℃であり、噴射速度は10~30rpmであり、ファン周波数は30~40であった。214.1gのペレットを得て、収率は99.9%であった。
【0126】
4)ペレット錠の製造
【表65】
表中の処方量に基づいて混合、打錠し、錠剤の重量は314.9mgであった。比較ペレット錠2を得た。
【0127】
実施例3:腸溶性ペレットカプセルの製造
600gのイラプラゾール保護層コーティングペレットA(W1+G2+C1+B1)をカプセル充填剤によって3番のカプセルシェルに詰め、1粒のカプセルあたり5mgのイラプラゾールを含む。
【0128】
実施例4:腸溶性ペレット錠及びカプセルの特性試験
実施例4では、前記実施例で製造した腸溶性ペレット錠及びカプセルに対して含有量、溶出率、関連物質などについて試験を行い、本発明に係るペレット錠Aを基準として、比較ペレット錠3~16の各項目の検出結果を比較した。試験手順として、具体的には、次のとおりである。
1.含有量測定:
1)操作方法:(一般法として「中国薬典(薬局方)」2015年版四部通則0512を参照する)
方法として、具体的には、次のとおりである。
試料溶液の調製:関連物質の試料溶液を使用し、正確に5mLを量り、50mLメスフラスコに入れて、移動相で標線に希釈し、振り混ぜて、濾過し、二次濾液を取得して試料溶液とした。
【0129】
標準物質溶液の調製:適量のイラプラゾール標準物質を正確に量り、希釈剤を加えて溶解し、希釈して1mLあたり約20μgを含む溶液を得て、標準物質溶液とした。
【0130】
システム適合性溶液:不純物I(イラプラゾールスルホン、化学名:2-[[(4-メトキシ-3-メチル)-2-ピリジル]メチル]-スルホニル-5-(1H-ピロール-1-イル)-1H-ベンズイミダゾール)標準物質及び適量のイラプラゾール標準物質に、希釈剤を加えて溶解し、希釈して1mLあたり不純物I及びイラプラゾールを各20μg含む溶液を得た。
【0131】
クロマトグラフィー条件:オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とし、400mLのアセトニトリルをリン酸塩緩衝液(2.28gのリン酸水素二カリウムに水を加えて溶解し、1000mLに希釈して、リン酸でpHを7.5に調整した)で1000mLに希釈して移動相とし、流速は1.0mL/分であり、検出波長は237nmであり、カラム温度は25℃であった。
【0132】
システム適合性要件:システム適合性溶液クロマトグラムでは、理論段数がイラプラゾールピークで計算して2500以上であり、不純物Iピークとイラプラゾールピークの分離度が規定に適合しなければならない。
【0133】
測定方法:標準物質溶液、試料溶液をそれぞれ正確に20μL量り、液体クロマトグラフに注入して、クロマトグラムを記録した。
【0134】
2)計算方法:外部標準法によりピーク面積で10錠の平均含有量を計算した。
【0135】
3)標準規定:イラプラゾール(C19H18N4O2S)の含有量は、表示量の90.0~110.0%でなければならない。
【0136】
2.溶出率測定:
1)操作方法:溶出率及び放出度の測定方法に基づいて測定した(一般法として「中国薬典(薬局方)」2015年版四部通則0931第二法方法1を参照する)。方法として、具体的には、次のとおりである。
本品を使用し、0.1mol/L塩酸溶液(9.0mLの塩酸に水を加えて1000mLとした)300mLを溶出媒体とし、回転数は100rpmであり、方法の記載通りに操作し、120分後、すぐに各溶出カップに37±0.5℃に予熱した0.086mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液(30.8gのリン酸水素二ナトリウム及び7gのポリソルベート80に水を加えて1000mLとした)700mLを加え、均一に混合して、回転数は変わらず、引き続き方法の記載通りに操作し、45分間後、サンプルを採取した。
【0137】
試料溶液:適量の溶出液を濾過し、正確に5mLの二次濾液を量り、直ちに正確に0.15mol/L水酸化ナトリウム溶液を1mL加えて、振り混ぜ、濾過して、二次濾液を取得して試料溶液とした。
【0138】
標準物質溶液:イラプラゾール標準物質を正確に約10mg量り、20mLメスフラスコに入れて、適量のアセトニトリルを加えて溶解し、アセトニトリルで標線に希釈し、振り混ぜて、正確に1mLを量り100mLメスフラスコに入れて、リン酸塩緩衝液(pH 6.8)(0.086mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液700mL及び0.1mol/L塩酸溶液300mLを均一に混合すると完成した)で標線に希釈し、振り混ぜて、正確に5mLを量り、直ちに正確に0.05mol/L水酸化ナトリウム溶液を1mL加えて、振り混ぜ、濾過して、二次濾液を取得して標準物質溶液とした。
【0139】
含有量測定で記載した方法に従って測定し、1錠あたりの溶出量を計算した。
【0140】
3.関連物質試験:
1)操作方法:高速液体クロマトグラフィー(一般法として「中国薬典(薬局方)」2015年版四部通則0512を参照する)に従って測定した。方法として、具体的には、次のとおりである。
希釈剤:0.05mol/L水酸化ナトリウム-メタノール-水=50:20:30
試料溶液:本品を10錠使用し、250mLメスフラスコに入れて、0.05mol/L水酸化ナトリウム溶液を125mL加え、振盪機に入れて20分間振盪し(250rpm)、50mLのメタノールを加えて10分間超音波処理し、水で標線に希釈して、振り混ぜ、遠心分離して、上清液を取得した。
【0141】
対照溶液:正確に適量の試料溶液を量り、希釈剤で希釈して1mLあたり約1μgのイラプラゾールを含む溶液を得た。
【0142】
感度溶液:正確に1mLの対照溶液を量り、10mLメスフラスコに入れ、希釈剤で標線に希釈して、振り混ぜた。
【0143】
不純物Iの標準物質のストック溶液:約6mgの不純物Iを100mLメスフラスコに入れて、希釈剤で標線に希釈した。
【0144】
システム適合性溶液:約3mgのイラプラゾール標準物質を10mLメスフラスコに入れ、適量の希釈剤を加えて溶解し、正確に不純物Iの標準物質のストック溶液を1mL加えて、希釈液で標線に希釈し、振り混ぜた。
【0145】
クロマトグラフィー条件:オクタデシルシラン結合シリカゲルを充填剤とし(Gemini-NX C18 150×4.6mm,5μm、又は相当のクロマトグラフィーカラム)、0.01mol/Lリン酸水素二カリウム溶液(10%リン酸でpHを7.5に調整した)を移動相Aとし、アセトニトリルを移動相Bとして、下表のとおりに直線勾配溶離を行った。流速は1.0mL/分であり、検出波長は237nmであり、カラム温度は25℃であった。
【表66】
【0146】
システム適合性溶液の要件:システム適合性溶液クロマトグラムでは、不純物Iピークとイラプラゾールピークの分離度が2.0を超えなければならない。感度溶液クロマトグラムでは、イラプラゾールピークの高さの信号対雑音比が10を超えなければならない。
【0147】
測定方法:試料溶液、対照溶液を各20μL正確に量り、それぞれ液体クロマトグラフに注入して、クロマトグラムを記録した。
【0148】
4.1 本発明に係る腸溶性ペレット錠及びカプセルの安定性試験及び耐酸性試験
1)本実施例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A~G及び実施例3のカプセルに対して加速安定性試験を行い、方法として、具体的には、次のとおりである。
試験手順:腸溶性ペレット錠A~G及び実施例3のカプセルをそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり(粒)であり、瓶詰めしたペレット錠又はカプセルを40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、異なる処方の腸溶性ペレット錠又はカプセルについて関連物質を検出した。検出した腸溶性ペレット錠A~G及び実施例3のカプセルの安定性データは、次の表3-1に示されるとおりである。
【表67】
【0149】
表3-1から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレットから製造したペレット錠A~G及びカプセルは、良好な安定性を有し、その総不純物が1.5%を超えなかった。
【0150】
2)本実施例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A~G及び実施例3のカプセルに対して耐酸性試験を行い、方法として、具体的には、次のとおりである。
腸溶性ペレット錠A~G及びカプセルのサンプルを各6錠使用し、0.1mol/L塩酸溶液(9.0mLの塩酸に水を加えて1000mLとした)300mLを溶出媒体とし、回転数は100rpmであり、方法の記載通りに操作し、120分後に、溶出カップを取り出し、吸引濾過装置を用いて塩酸を濾別し、残ったペレットを50mLメスフラスコに集めて、0.05mol/L水酸化ナトリウム溶液を20mL加え、振盪機に入れて20分間振盪し(250rpm)、30mLのメタノールを加えて10分間超音波処理し、水で標線に希釈して、振り混ぜ、遠心分離して、上清液を取得した。ペレット中の残留薬物含有量を測定し、即ちサンプルの耐酸性であった。
【表68】
【0151】
表3-2から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレットから製造した腸溶性ペレット錠A~G及びカプセルは、良好な耐酸性を有し、耐酸性がいずれも90%以上であった。
【0152】
4.2 腸溶性ペレット錠の安定性及び耐酸性試験:
実施例4.2では、腸溶性ペレット錠を例として、腸溶性ペレット錠の成分及び比率のその安定性及び耐酸性に対する影響を比較した。
【0153】
4.2.1 腸溶性ペレットに含まれる隔離層の成分の影響:
1)本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠5、6、9、10、14の安定性の試験比較:
本実施例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠5、6、9、10、14に対して加速安定性試験を行った。本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠5は、アルカリ化合物を含まない不活性物質隔離層を1層だけ有しており、比較ペレット錠6、9、10、14は、いずれもペレットコアに密接する第1隔離層及び腸溶性層に密接する第2隔離層を有しており、ただし比較ペレット錠6では、第1隔離層が接着剤及び粘着防止剤を含み、アルカリ化合物を含まず、比較ペレット錠9では、当該第1隔離層が混合層であり(混合層というのは、接着剤を含む以外に、アルカリ化合物及びペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を同時に含む層を指す)、且つそれに含まれるアルカリ化合物は水不溶性アルカリ化合物であり、比較ペレット錠10では、当該第1隔離層が主に接着剤及び水溶性アルカリ化合物を含むアルカリ層であり、比較ペレット錠14では、当該第1隔離層が混合層であり、且つ水溶性アルカリ化合物をアルカリ化合物として含む。
【0154】
試験手順:本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠5、6、9、10、14をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めしたペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、異なる処方のペレット錠について関連物質を検出した。測定したペレット錠の安定性データは、表4-1に示されるとおりである。
【表69】
【0155】
表4-1から分かるように、安定性の低いイラプラゾールについては、その腸溶性ペレット錠が1層の隔離層だけを含む(即ち、比較ペレット錠5である)場合に、安定性要件(即ち、総不純物は1.5%を超えないこと)を満たすことができない。当該腸溶性ペレット錠が少なくとも第1隔離層及び第2隔離層を含む場合に、それらの隔離層の成分もその安定性に影響を与え、例えば、第1隔離層がアルカリ化合物及びペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含む混合層(即ち、比較ペレット錠9、14)である場合には、アルカリ化合物によって保護されていても、関連物質は依然として明らかに増加しており(総不純物の含有量はそれぞれ1.79%、1.68%であった)、安定性要件を満たすことができず、対照的に、第1隔離層はアルカリ化合物を含み、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まないアルカリ層(例えば、ペレット錠A、比較ペレット錠10)である場合には、当該腸溶性ペレット錠は良好な安定性を有し、また、安定性の低いイラプラゾールについては、その腸溶性ペレット錠がペレットコアだけにアルカリ化合物を含む(即ち、比較ペレット錠6である)場合には、安定性要件(即ち、総不純物は1.5%を超えないこと)を満たすことができない。
【0156】
2)本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠10、14、15の耐酸性の比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠10、14、15に対して耐酸性試験を行った。本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠15とそれの違いは、比較ペレット錠15の第2隔離層がペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まないことである。方法として、具体的には、次のとおりである。
本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠10、14、15をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めしたペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、続いて、0.1mol/L塩酸溶液(9.0mLの塩酸に水を加えて1000mLとした)300mLを溶出媒体とし、回転数は100rpmであり、方法の記載通りに操作し、120分後に、溶出カップを取り出し、吸引濾過装置を用いて塩酸を濾別し、残ったペレットを50mLメスフラスコに集めて、0.05mol/L水酸化ナトリウム溶液を20mL加え、振盪機に入れて20分間振盪し(250rpm)、30mLのメタノールを加えて10分間超音波処理し、水で標線に希釈して、振り混ぜ、遠心分離して、上清液を取得した。ペレット中の残留薬物含有量を測定し、即ちサンプルの耐酸性であった。測定したペレット錠の耐酸性データは、次の表4-2に示されるとおりである。
【表70】
【0157】
表4-2の結果から分かるように、加速条件では、安定性試験で安定性が比較的低かった比較ペレット錠(例えば、比較ペレット錠14)は耐酸性も比較的低く、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、異なるアルカリ化合物種(即ち、水溶性アルカリ化合物)を含む第1隔離層を有する比較ペレット錠10の耐酸性は次第に悪くなり(6か月の時、当該比較ペレット錠10に残留したイラプラゾールの含有量は85.6%であった)、満たすべき基準(6錠の平均耐酸性は90%以上)を下回っていた。つまり、アルカリ化合物を第1隔離層とすると当該腸溶性ペレット錠は良好な安定性を有するが、アルカリ化合物の種類は当該腸溶性ペレット錠の耐酸性に影響を与える。本発明によれば、水溶性アルカリ化合物を含む第1隔離層と比べて、水不溶性アルカリ化合物を含む隔離層を腸溶性ペレット錠の第1隔離層とすると、当該腸溶性ペレット錠の耐酸性を改善ないしは向上させることができる。また、表4-2からも分かるように、第2隔離層がペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まない比較ペレット錠15の耐酸性には影響がなかった。
【0158】
以上から分かるように、腸溶性ペレットに含まれる様々な隔離層成分について、少なくとも2つの隔離層を設け、且つ、ペレットコアに密接する第1隔離層について、当該第1隔離層が水不溶性アルカリ化合物を含み、水溶性アルカリ化合物又はペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含まない場合には、当該腸溶性ペレットから製造したイラプラゾール腸溶性ペレット錠は、優れた安定性及び耐酸性を同時に備える。
【0159】
4.2.2 本発明に係る腸溶性ペレットに含まれる隔離層の各成分の比率の影響:
1)本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠7、8の安定性の試験比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠7、8に対して加速安定性試験を行った。本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠7では、第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物の量が大きく、例えば、イラプラゾールの量が10部である時に、第1隔離層に含まれる水不溶性アルカリ化合物の量は36部より大きく、比較ペレット錠8では、第2隔離層に含まれる粘着防止剤(本発明に係るペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質に相当する)の量は大きく、例えば、イラプラゾールの量が10部である時に、第2隔離層中の粘着防止剤の量は44部より大きい。
【0160】
その方法として、具体的には、次のとおりである。
本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠7、8をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めしたペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、異なる処方の腸溶性ペレット錠についての関連物質を検出した。測定した腸溶性ペレット錠の安定性データは、次の表5-1に示されるとおりである。
【表71】
【0161】
表5-1の結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、異なる隔離層の成分比率を有する比較ペレット錠7(第1隔離層の比率は異なる)、及び8(第2隔離層の比率は異なる)は、安定性が依然として基準範囲内(総不純物は1.5%を超えない)にあった。つまり、隔離層の成分比率の変化は、当該腸溶性ペレット錠の安定性に影響を与えない。
【0162】
2)本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠7、8の耐酸性の比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠7、8に対して耐酸性を検出した。方法として、具体的には、4.2.1の耐酸性試験を参照する。
【0163】
その結果は、次の表5-2に示されるとおりである。
【表72】
【0164】
表5-2に示される結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、異なる隔離層の成分比率を有する比較ペレット錠7(第1隔離層の比率は異なる)、及び8(第2隔離層の比率は異なる)の耐酸性は、依然として基準範囲内(6錠の平均耐酸性は90%以上)にあった。つまり、隔離層の成分比率の変化は、当該腸溶性ペレット錠の耐酸性に影響を与えない。
【0165】
以上から分かるように、腸溶性ペレットの隔離層の各成分の比率の変化は、当該腸溶性ペレットから製造した腸溶性ペレット錠の安定性又は耐酸性に影響を与えない。
【0166】
4.2.3 本発明に係る腸溶性ペレット錠A、F、Gとペレット錠17、18の耐酸性の比較:
本実施例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A、F、G及びペレット錠17、18に対して耐酸性を検出した。方法として、具体的には、4.2.1の耐酸性試験を参照する。
【0167】
その結果は、次の表5-3に示されるとおりである。
【表73】
【0168】
表5-3に示される結果から分かるように、比較ペレット錠17の耐酸性が低下したのは、ペレット錠17は加速安定性条件で薬物が分解して、測定した耐酸性値が低下したためであった。ペレット錠18の耐酸性値も低下しており、これも加速の過程で、一部のイラプラゾールの分解が原因であった。本発明のペレットコアの配合を採用したペレット錠A、G、Hは、いずれも優れた耐酸性の値を得ていた。
【0169】
4.3 腸溶性ペレットに含まれるペレットコアの構成のその腸溶性ペレット錠の安定性に対する影響:
実施例4.3では、イラプラゾール腸溶性ペレット錠を例として、腸溶性ペレットに含まれるペレットコアの成分及びイラプラゾールの粒径のその安定性に対する影響について比較した。
【0170】
腸溶性ペレットに含まれるペレットコアの成分の影響:
本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠11、16、17の安定性の試験比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠11、16、17に対して加速安定性試験を行った。比較ペレット錠11のペレットコアは、アルカリ化合物又は界面活性剤を含まず、比較ペレット錠16のペレットコアは、界面活性剤を含まないが、アルカリ化合物を含有しており、比較ペレット錠17のペレットコアは、アルカリ化合物を含まないが、界面活性剤を含有している。
【0171】
試験手順:腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠11、16をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めした腸溶性ペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、異なる処方の腸溶性ペレット錠についての関連物質を検出した。測定した腸溶性ペレット錠の安定性データは、次の表6に示されるとおりである。
【表74】
【0172】
表6の結果から分かるように、イラプラゾール腸溶性ペレットのペレットコアがアルカリ化合物又は界面活性剤を含まない(即ち、比較ペレット錠11である)場合には、当該腸溶性ペレット錠は、安定性要件(総不純物は1.5%を超えないこと)を満たすことができず、イラプラゾール腸溶性ペレットのペレットコアがアルカリ化合物を含まない(即ち、比較ペレット錠17である)場合には、ペレット錠の製造を完了した時点で、関連物質は、既に1.5%を超えていて非常に高かった。対照的に、ペレットコアがアルカリ化合物だけを含み、界面活性剤を含まない比較ペレット錠16は、加速試験の安定性結果が良好であった。
【0173】
以上から分かるように、安定性の低いイラプラゾールについては、その腸溶性ペレット錠が第1隔離層だけに水不溶性アルカリ化合物を含む(即ち、比較ペレット錠11である)場合には、安定性要件(即ち、総不純物は1.5%を超えないこと)を満たすことができず、さらに、ペレットコアがアルカリ化合物を含まず、界面活性剤だけを含む場合に得たペレット錠も、安定性要件を満たさなかった。
【0174】
4.3.2 腸溶性ペレットに含まれるペレットコアのイラプラゾールの粒径の腸溶性ペレット錠の安定性に対する影響
本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠3、4の安定性の試験比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠3、4に対して加速安定性試験を行った。本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠3中の腸溶性ペレットのペレット層のイラプラゾールの粒径D90は80μm以上且つ100μm以下であり、比較ペレット錠4中の腸溶性ペレットのペレット層のイラプラゾールの粒径D90は100μmより大きい。その方法として、具体的には、次のとおりである。
試験手順:ペレット錠A及びペレット錠3、4をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めしたペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、異なる処方のペレット錠について関連物質を検出した。測定したペレット錠の安定性データは、次の表7に示されるとおりである。
【表75】
【0175】
表7の結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、異なるイラプラゾールの粒径D90を有するペレットコアを含む比較ペレット錠3(イラプラゾールの粒径D90は、80μm以上且つ100μm以下)及び比較ペレット錠4(イラプラゾールの粒径D90は、100μmより大きい)は、安定性が依然として基準範囲内(総不純物は1.5%を超えない)にあり、つまり、腸溶性ペレットペレット層に含まれるイラプラゾールの粒径D90の変化は、当該腸溶性ペレット錠の安定性に影響を与えない。
【0176】
以上から分かるように、腸溶性ペレットのペレットコアに含まれるイラプラゾールの粒径は、当該腸溶性ペレットから製造した腸溶性ペレット錠の安定性又は耐酸性に影響を与えない。
【0177】
4.4 腸溶性ペレット中の保護層の腸溶性ペレット錠の安定性及び耐酸性に対する影響
実施例4.4では、イラプラゾール腸溶性ペレット錠を例として、腸溶性ペレット中の保護層の設置及びその成分の量のその安定性又は耐酸性に対する影響について比較した。
【0178】
4.4.1 腸溶性ペレット中の保護層の設置の影響:
1)本発明に係るペレット錠Aと比較ペレット錠12の安定性の試験比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠12に対して加速安定性試験を行った。比較ペレット錠12として製造した腸溶性ペレットは、保護層を含まない。
【0179】
試験手順:ペレット錠A及びペレット錠12をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めしたペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、異なる処方のペレット錠について関連物質を検出した。測定したペレット錠の安定性データは、次の表8-1に示されるとおりである。
【表76】
【0180】
表8-1の結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、その腸溶性ペレットが保護層を含まない比較ペレット錠12は、安定性が依然として基準範囲内(総不純物は1.5%を超えない)にあった。つまり、腸溶性ペレットが保護層を含むかどうかは、当該腸溶性ペレット錠の安定性に影響を与えない。
【0181】
2)本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠12の耐酸性の比較:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠12に対して耐酸性を検出した。方法として、具体的には、4.2.1の耐酸性試験を参照する。
【0182】
その結果は、次の表8-2に示されるとおりである。
【表77】
【0183】
表8-2から分かるように、比較ペレット錠12は腸溶性層の外側に保護層がない場合にその耐酸性が基準範囲(即ち、6錠の平均耐酸性は90%以上)をやや下回っていた。しかし本発明者らは、試験中に、当該測定耐酸性データが低い原因として次のことを発見した。保護層のない腸溶性ペレットは互いに粘着しやすいため、処理中に一部の薬物が分解して、当該測定耐酸性データを低くした。したがって、ここで当業者にとっては、当該腸溶性ペレット製剤の製造に際して保護層の設置とは別の手法、例えば、製剤添加物と適時に混合するなどによって、腸溶性ペレット同士の粘着を防止することができれば、保護層を設けるかどうかは当該製剤の耐酸性に影響を与えないということは自明であろう。
【0184】
4.4.2 腸溶性ペレット中の保護層の成分の量の影響:
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠13に対して耐酸性の試験比較を行った。
本例では、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠13に対して加速安定性試験を行った。比較ペレット錠13として製造した腸溶性ペレットの保護層で粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)の含有量は低く、例えば、イラプラゾールの量が5~15部である時に、粘着防止剤の量は0.5部未満である。
【0185】
試験手順:ペレット錠A及びペレット錠13をそれぞれHDPE製ボトルに詰め、1ボトルあたり14錠であり、瓶詰めしたペレット錠を40℃/RH75%の加速安定性試験ボックスに静置して、1/3/6か月後にサンプルを採取し、ペレット錠の耐酸性を検出した。即ち、ペレット錠を0.1M 塩酸溶液に入れて、2時間後にペレットを集め、ペレットに残留したイラプラゾールの含有量を検出した。測定したペレット錠の耐酸性データは、次の表9に示されるとおりである。
【表78】
【0186】
表9の結果から分かるように、腸溶性ペレット錠13は、長期試験では加速6か月で耐酸性も低下する傾向があった(即ち、初期の96.9%から6か月後に91.6%に低下した)。本発明者らは、加速6か月の耐酸性試験で、比較ペレット錠13の一部の腸溶性ペレットが溶出カップの底部で粘着して、耐酸性の低下を引き起こしたことを発見した。これは、保護層で、ペレットの粘着を防止できる水不溶性の不活性物質(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタンなど)の量が低すぎると保護効果が悪くなり、腸溶性ペレット同士の粘着を効果的に防止できないため、耐酸性に影響があるということを示している。
【0187】
4.5 腸溶性ペレット錠の溶出率試験
4.5.1 本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠15の溶出率の比較:
本例では、前記セッション4.1に記載の方法に基づいて、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠15の溶出率を比較した。測定したペレット錠の溶出率データは、次の表10に示されるとおりである。
【表79】
【0188】
表10に示される溶出率結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠15はいずれも良好な溶出率を有する(溶出率は80%以上であった)。これは、第2隔離層が接着剤だけを含み、ペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質(例えば、粘着防止剤)を含まない場合に、当該腸溶性ペレット製剤の溶出率に影響を与えず、そのインビボ生物学的利用能にも影響を与えないだろうということを示している。
【0189】
4.5.2 本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠7、8の溶出率の比較:
本例では、前記セッション4.1に記載の方法に基づいて、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠7、8の溶出率を比較した。測定したペレット錠の溶出率データは、次の表11及び
図1に示されるとおりである。
【表80】
【0190】
図1及び表11に示される溶出率結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aは良好な溶出率を有する(溶出率は80%以上であった)。本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠7、8の溶出率が、満たすべき基準範囲(溶出率80%以上)外まで明らかに低下しており、これは、これらの腸溶性ペレット錠の放出が明らかに遅くなり、インビボでの効果発現時間を先送りにし、さらに、インビボ生物学的利用能に影響を与えるということを示している。
【0191】
上述のように、腸溶性ペレットの隔離層の各成分の比率の変化は、当該腸溶性ペレットから製造した腸溶性ペレット錠の安定性又は耐酸性に影響を与えない。しかし、当該腸溶性ペレットの隔離層の各成分の比率の変化は、対応するその腸溶性ペレット錠の溶出率に影響を与え、さらに、当該製剤のインビボ生物学的利用能に影響を与える。したがって、インビボ生物学的利用能を一層改善するために、本発明で好ましくは、腸溶性ペレットの隔離層の各成分の比率が次のとおりであってもよい。イラプラゾールの量が5~15部である時に、第1隔離層は、5~36部の接着剤、5~36部の水不溶性アルカリ化合物を含み、第2隔離層は、4~26部の接着剤、7~44部のペレットの粘着を防止できる水不溶性不活性物質を含む。
【0192】
4.5.3 本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠11、16の溶出率の比較:
本例では、前記セッション4.1に記載の方法に基づいて、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠11、16の溶出率を比較した。測定したペレット錠の溶出率データは、次の表12及び
図2に示されるとおりである。
【表81】
【0193】
図2及び表12に示される結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠11の溶出率が、基準範囲(溶出率80%以上)外まで明らかに低下した。比較ペレット錠16で、そのペレットコアが界面活性剤を含まず、その製剤の薬物溶出率は基準範囲内にあるが、腸溶性ペレット錠Aより低く、溶出率は85%より低かった。
【0194】
上述のように、腸溶性ペレット錠のペレットコアに含まれる界面活性剤はその安定性に影響を与えないが、当該製剤の溶出率に影響を与える。つまり、腸溶性ペレット錠のペレットコアに界面活性剤を添加すると、当該製剤の溶出率を効果的に高め、さらに、生物学的利用能を効果的に改善することができる。
【0195】
4.5.4 本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠3、4の溶出率の比較:
本例では、前記セッション4.1に記載の方法に基づいて、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠3、4の溶出率を比較した。測定したペレット錠の溶出率データは、次の表13及び
図3に示されるとおりである。
【表82】
【0196】
図3及び表13に示される溶出率結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、比較ペレット錠3、4の溶出率が明らかに低下しており、腸溶性ペレットのペレットコアのイラプラゾールの粒径D90が100μmより大きい(即ち、比較ペレット錠4である)時に、その溶出率が、基準範囲(即ち、溶出率80%以上)外まで低下していた。
【0197】
4.5.5 本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠12の溶出率の比較:
本例では、前記セッション4.1に記載の方法に基づいて、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比較ペレット錠12の溶出率を比較した。測定したペレット錠の溶出率データは、次の表14及び
図4に示されるとおりである。
【表83】
【0198】
図4及び表14に示される結果から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aと比べて、保護層を有しない比較ペレット錠12の溶出率が、基準値の当たり(溶出率80%以上)まで明らかに低下した。本発明者らは、試験中に、その溶出率が明らかに低下した原因として、保護層を有しない本発明に係る腸溶性ペレットは互いに粘着しやすいため、溶出媒体中のその放出速度に影響を与えるということを発見した。したがって、保護層を有する場合に、腸溶性ペレット錠Aは溶出媒体中で粘着せず、放出が多く、比較ペレット錠12は保護層を有さないため、ペレット錠が媒体中で粘着し、放出が低かった。したがって、ここで当業者にとっては、当該腸溶性ペレット製剤の製造に際して保護層の設置とは別の手法、例えば、製剤添加物と適時に混合するなどによって、腸溶性ペレット同士の粘着を防止することができれば、又は、第1隔離層と第2隔離層との間に他の隔離層を追加することによって腸溶性ペレット同士を粘着しにくくすることができれば、保護層を設けるかどうかは当該製剤の溶出率に影響を与えないということは自明であろう。
【0199】
4.6 腸溶性ペレットに含まれるペレットコアのイラプラゾールの粒径の腸溶性ペレット錠の薬物担持量に対する影響
実施例1の「1.1 薬物含有ペレット(W)の調製処方、方法、及びその薬物含有ペレットの薬物負荷率」セッションに示される薬物含有ペレットの薬物負荷率W(即ち、薬物担持量)を比較したところ、比較ペレット錠3、4に含まれるペレットコアW8、W9の薬物担持量W8、W9がそれぞれ87.2%、79.3%だったということが分った。対照的に、腸溶性ペレット錠のペレットコアに含まれるイラプラゾールの粒径D90が50μm以下である時に、そのペレットコア(例えば、W1~W5)の薬物担持量は90%より大きい。
【0200】
上述のように、腸溶性ペレットのペレットコアに含まれるイラプラゾールの粒径は、当該腸溶性ペレットから製造した腸溶性ペレット錠の安定性又は耐酸性に影響を与えず、当該腸溶性ペレットのペレットコアに含まれるイラプラゾールの粒径は、その腸溶性ペレット錠の溶出率に影響を与え、さらに、インビボ生物学的利用能に影響を与える。また、当該腸溶性ペレットのペレットコアに含まれるイラプラゾールの粒径の大きさは、当該腸溶性ペレットのペレットコアの薬物担持量に影響を与える。
【0201】
したがって、インビボ生物学的利用能を一層改善するために、好ましくは、本発明に係る腸溶性ペレットのペレット層中のイラプラゾールの粒径D90が100μm以下であってもよく、より好ましくは、本発明に係る腸溶性ペレットのペレット層中のイラプラゾールの粒径D90が50μm以下であってもよく、この時に、その腸溶性ペレット錠の薬物放出速度が比較的早く、即ち、30分以内に90%以上放出しているだけでなく、そのペレットコアは、比較的高い薬物担持量を有する(90%より大きい)。
【0202】
実施例5:本発明に係る腸溶性ペレット錠の制酸作用
研究目的:本発明の腸溶性ペレット錠A及び比較ペレット錠1、2に対して健常被験者への経口投与の初日の制酸作用を観察して比較する。
【0203】
実験手順:本研究は、無作為化されたオープンでクロスオーバーデザインの単一施設研究であり、18名の健常被験者を組み入れた。1サイクルの実験で、18名の被験者をランダムに3群に分け、1群当たり6名であり、それぞれ、ペレット錠A、比較ペレット錠1、比較ペレット錠2を服用した。1人につき空腹下1回服用し、胃内pHを24時間測定した。
【0204】
胃内pHの記録:胃内pHの記録で、デンマークMedtronic社のpH試験システムを用いた。鼻腔からカテーテルを胃に入れ、カテーテルの一部を記録装置Digitrapper MKIIIに接続させた。記録装置はマイクロプロセッサによって連続的に被験者の胃内pHを記録することができる。カテーテルは下部食道括約筋から8~10cmに配置し、カテーテルの表面の標線はその位置を示す。pHの各記録でプローブは同じ位置にあり、pHの各測定前に、pH 7.01とpH 1.07の緩衝液を使用して2点校正を行わなければならない。記録が終了するたびにDigitrapper MKIII内のデータがコンピュータにダウンロードされて分析に供する。
【0205】
実験結果:各群の被験者の胃内pHの記録値を処理し、分析して複数の患者の各時点の平均pHを得て曲線を作成し、
図5に示すとおりである。
【0206】
図5から分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aは、効果の発揮が早く、服用後1時間のうちに胃酸をpH 4以上に阻害して、臨床効果を発揮することができる。対照的に、比較ペレット錠1は、臨床効果を発揮するのは服用後約3時間であり、比較ペレット錠2は、臨床効果を発揮するのは服用後約2.5時間であった。本発明に係る腸溶性ペレット錠は、素早く効果を発揮できるため、患者の苦痛をより早く解消するということが分かった。
【0207】
また、本例では、前記実施例の方法に基づいて、比較ペレット錠1及び比較ペレット錠2の安定性及び耐酸性について試験し、結果は次の表15及び表16を参照する。
【表84】
【表85】
【0208】
表15及び表16から分かるように、先行技術に基づいて製造したイラプラゾール腸溶性ペレット錠(即ち、比較ペレット錠1及び比較ペレット錠2)は、加速安定試験中に、満たすべき基準(安定性基準は、総不純物が1.5%を超えないことである。耐酸性基準は、耐性90%以上である)を顕著に下回っていた安定性及び耐酸性を有している。
【0209】
実施例6:本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレット錠のビーグル犬による薬物動態実験
1)実験設計
実験動物:ビーグル犬。
【0210】
数量:計12匹、雌雄半々、3群(ペレット錠A、比較ペレット錠1、比較ペレット錠2)。
【0211】
投与方式及び回数:1回の強制経口投与であった(投与前30分間に0.024mL/kgの用量で0.25mg/mL ペンタガストリン(Pentagastrin)を筋肉内注射した)。
【0212】
採血点:投与前0時間と、投与後1、1.5、1.75、2、2.5、3、3.5、4、5、6、8時間の計12の採血点。
【0213】
投与用量:1錠投与。
【0214】
2)実験サイクル:1錠投与し、3サイクルと3交差とし、洗浄期間は7日であり、合計15日であった。
【0215】
ビーグル犬への投与計画は、次のとおりである。
【表86】
【0216】
3)サンプル分析:血漿中のイラプラゾール濃度を測定した(血漿サンプルの処理時に1mol/L NaOH溶液を加えて血漿をアルカリ化した)。分析方法:HPLC-MS/MS。
【0217】
【0218】
図6に示されるビーグル犬のインビボ薬物動態データから分かるように、本発明に係る腸溶性ペレット錠Aは、ビーグル犬でのインビボ生物学的利用能がより高く、胃酸の分泌阻害の発揮までの所要時間がより少なかった。対照的に、比較ペレット錠1及び比較ペレット錠2はビーグル犬でのインビボ累積血中薬物濃度が低いことから、比較ペレット錠1及び比較ペレット錠2は生物学的利用能が低いことが示されている。
【0219】
実施例7:プラゾール系薬物の安定性の比較:
異なるプラゾール系薬物原料のpH 6.8及び8.0の媒体における安定性を検討した。
0.5%w/wドデシル硫酸ナトリウムを含むpH 6.8のリン酸塩緩衝媒体及びpH 8.0の塩緩衝媒体を調製して、溶出カップに入れ、1カップあたり1000mLであり、イラプラゾール、オメプラゾールマグネシウム、エソメプラゾールマグネシウム、ラベプラゾールナトリウム、パントプロゾール、ランソプラゾールをそれぞれ各0.5mg秤量して、溶出カップに加え、パドル法で150rpm撹拌して、プラゾール原料が媒体に沈んで溶解することを確保し、15分、30分、45分、60分にそれぞれ5mLのサンプルを採取して20mLの水酸化ナトリウム安定媒体に加え、次に移動相で50mLに定容した。
【0220】
「中国薬典(薬局方)」2015年版二部のオメプラゾールマグネシウム、エソメプラゾールマグネシウム、ラベプラゾールナトリウム、パントプロゾールナトリウム、ランソプラゾールの測定方法に基づいて、媒体から採取したサンプルに対して含有量を測定することにより、各プラゾールのpH 6.8及び8.0媒体における安定性を決定した。測定結果は、次の表17及び表18に示されるとおりである。
【表87】
【表88】
【0221】
表17及び表18から分かるように、異なるプラゾール系薬物は、pH 6.8媒体ではいずれも安定性が悪く、中でもイラプラゾールの安定性が最も悪く、エソメプラゾールマグネシウムの安定性が最良であった。
【0222】
実施例8:イラプラゾールペレットの懸濁用乾燥配合剤の製造
実施例8では、本発明に係るイラプラゾール腸溶性ペレットを例として、イラプラゾールペレットの懸濁用乾燥配合剤を製造した。
【0223】
【表89】
製造方法:キサンタンガム、キトサン、CCNA及びアスパルテームを混合して均一になったら、乾式造粒機に加えて造粒した。プロセスパラメータは次のとおりである。ピンチローラーの間隔は0.2mmであり、送り速度は30rpmであり、ピンチローラーの回転数は5rpmであり、整粒回転数は10rpmであった。造粒完了後、篩分けして整粒して、粒径を0.5~0.7mmに限定した。懸濁用乾燥顆粒Vを得た。
【0224】
2)懸濁用乾燥配合剤E-Vの製造
60.5mgのイラプラゾール腸溶性ペレットE及び2.0gの前記懸濁用乾燥顆粒Vを混合し、瓶詰めして、規格5mgのイラプラゾール腸溶性懸濁用乾燥配合剤E-Vを得た。
【0225】
上述した実施例は本発明のいくつかの実施形態を示すものに過ぎず、具体的かつ詳細に説明しているが、本発明の請求範囲に対する限定とは理解されない。なお、当業者は、本発明の構想から逸脱しない限り、適宜変形と改善を行うことができ、これらも本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明特許の保護範囲は、後記の特許請求の範囲に準拠する。