(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-20
(45)【発行日】2024-08-28
(54)【発明の名称】使い捨てオムツ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20240821BHJP
【FI】
A61F5/44 D
(21)【出願番号】P 2024080008
(22)【出願日】2024-05-16
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521279642
【氏名又は名称】馬塲 健輔
(74)【代理人】
【識別番号】110004406
【氏名又は名称】弁理士法人桜フロンティア
(72)【発明者】
【氏名】馬塲 仁
(72)【発明者】
【氏名】馬塲 健輔
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-199789(JP,A)
【文献】特開2023-4427(JP,A)
【文献】特開2011-206390(JP,A)
【文献】特開2019-146646(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0193130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F5/44-5/458
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装内側シートおよび外装外側シートを含む多層構成を有するオムツ本体部と、
着用者の臀裂部に当接可能であり、且つ排泄便を受けるための受容開口部を有する、臀裂対向部と、
着用者身体から隔てて排泄便を収容するための収容部であって、前記外装内側シートおよび前記外装外側シートの間に位置し、且つ、前記受容開口部と連通している収容部と、
エア注入によって前記収容部内で膨張可能なバルーン壁を含む膨張展開部を備え、膨張したバルーン壁が前記収容部内に排泄便の収容空間を形成する、収容補助部と、を備える使い捨てオムツ。
【請求項2】
前記収容補助部は、前記エア注入のためのエア注入口を有するチューブを備える、請求項1に記載の使い捨てオムツ。
【請求項3】
前記臀裂対向部はチューブ挿通孔を有し、
前記チューブは、前記チューブ挿通孔を通って前記エア注入口が前記オムツ本体部の内方側に臨む、請求項2に記載の使い捨てオムツ。
【請求項4】
前記チューブは、前記外装外側シートを貫通して前記エア注入口が前記オムツ本体部の外側に臨む、請求項2に記載の使い捨てオムツ。
【請求項5】
前記収容補助部は、前記エア注入口を閉塞可能なキャップを有する、請求項2から4のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
【請求項6】
前記臀裂対向部は、肛門まわりに密接するためのクッション材を前記受容開口部まわりに有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
【請求項7】
前記臀裂対向部は、肛門まわりに貼着するための粘着部を前記受容開口部まわりに有する、請求項1から4のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
【請求項8】
互いに別体の第1複合ユニットおよび第2複合ユニットを備え、
前記第1複合ユニットは、
シート開口部を有する外装内側シートおよび外装外側シートを含む多層構成を有するオムツ本体部と、
前記外装内側シートおよび前記外装外側シートの間に位置し、且つ、前記シート開口部を介してオムツ本体部外と連通している、収容部とを備え、
前記第2複合ユニットは、
排泄便を受けるための受容開口部を有する臀裂対向部と、
エア注入によって膨張可能なバルーン壁を含む膨張展開部を備え、前記収容部内での前記バルーン壁の膨張によって前記収容部内に排泄便の収容空間を形成可能な、収容補助部とを備え、
前記第1複合ユニットおよび前記第2複合ユニットにおいて、前記シート開口部を介して前記膨張展開部が前記収容部内に挿入され、且つ前記臀裂対向部の前記受容開口部と前記収容部とが連通する、前記第1および第2複合ユニットの合体により、請求項1に記載の使い捨てオムツを組立て可能である、使い捨てオムツ組立てキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てタイプのオムツに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨てのオムツは、例えば介護用オムツとして、多用されている。使い捨てオムツは、パンツタイプやいわゆるテープタイプなどのタイプに応じた形態を有するオムツ本体部、および、排泄物を吸収する役割を担う吸収ユニットを、備える。吸収ユニットは、水分吸収容量の大きな例えば高分子吸水材を内部に有し、使い捨てオムツの着用者からの排泄尿の多くは、この吸収ユニットによって吸収されることとなる。このような使い捨てオムツに関する技術については、例えば下記の特許文献1~3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-130575号公報
【文献】特開2023-171083号公報
【文献】特開2023-184138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、使い捨てオムツの着用者から排泄される便は、オムツの着用者身体側内部で受けられて、その全部または大部分が着用者身体とオムツとの間に留め置かれる。この留め置かれた排泄便により、着用者身体は汚れてしまう。また、排泄後におけるオムツの取替え作業時には、その作業者(オムツ替え作業者)の手など身体が、オムツ内に留め置かれた排泄便によって汚れてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、以上のような事情のもとで考え出されたものであって、その目的は、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに適した使い捨てオムツを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面によると、使い捨てオムツが提供される。この使い捨てオムツは、オムツ本体部と、臀裂対向部と、収容部と、収容補助部とを備える。オムツ本体部は、外装内側シートおよび外装外側シートを含む多層構成を有する。外装内側シートは、外装外側シートよりも、オムツの内方側(着用者身体側)に位置する。臀裂対向部は、着用者の臀裂部に当接可能であり、且つ、排泄便を受けるための受容開口部を有する。収容部は、着用者身体から隔てて排泄便を収容するためのものであり、外装内側シートおよび外装外側シートの間に位置し、且つ、臀裂対向部の受容開口部と連通している。収容補助部は、エア注入によって収容部内で膨張可能なバルーン壁を含む膨張展開部を備える。膨張したバルーン壁が、収容部内に排泄便の収容空間を形成する。
【0007】
このような構成の使い捨てオムツにおいては、例えば当該オムツが着用される前に、収容補助部のバルーン壁が収容部内で膨張される。これにより、収容部内に排泄便の収容空間が形成される。本オムツは、その着用者の肛門に臀裂対向部の受容開口部が対向する位置および姿勢で臀裂対向部が着用者の臀裂部に当接するように、使用者に着用される。そして、着用者から排泄される便は、着用者の臀裂部に当接する臀裂対向部の受容開口部に受容され、収容部へと導かれる。
【0008】
本発明の使い捨てオムツは、上記のように、オムツ本体部の外装内側シートと外装外側シートとの間に、排泄便を収容するための収容部を備える。このような構成は、着用者からの排泄便を着用者身体から隔てた状態で留め置くのに適し、従って、着用者の身体が排泄便で汚れることを抑制するのに適する。そして、本オムツについて、収容部内に排泄便が収容された状態でオムツ替え作業が行われる場合、作業者の手など身体は、汚れにくい。
【0009】
また、本発明の使い捨てオムツは、上記のように、排泄便受容口である受容開口部を有して着用者臀裂部に当接可能な臀裂対向部を備える。このような構成は、着用者からの排泄便を適切に受けて収容部に導くのに役立ち、従って、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに役立つ。
【0010】
加えて、本発明の使い捨てオムツは、上記のように、所定の収容補助部を備える。収容補助部は、バルーン壁を含む膨張展開部を備える。バルーン壁は、エア注入によって膨張および起立して収容部内に所定の空間を形成する。バルーン壁は、収容部内において、クッション性(エアクッション性)を有しつつ空間を確保できる。このようなバルーン壁を本オムツが具備することは、収容部内に排泄便の収容空間を確保・維持するのに適し、従って、収容部に既に収容された排泄便が受容開口部から着用者身体側に漏出(逆流)することを抑制するのに適する。排泄便の逆流の抑制は、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに役立つ。また、バルーン壁がエア注入によって膨張すること、および、膨張したバルーン壁がクッション性を有することは、バルーン壁内のエア圧を利用して臀裂対向部を着用者臀裂部に向けて付勢する(弾力性を伴って押し付ける)のに適し、従って、着用者臀裂部に対する臀裂対向部の良好な当接状態を実現するのに適する。このことは、着用者からの排泄便を臀裂対向部の受容開口部が適切に受け容れて収容部に導くのに役立つ。バルーン壁がクッション性を有することは、本オムツにおいて、着用者への異物感を低減して良好な装着感を実現するのにも役立つ。
【0011】
以上のように、本発明の使い捨てオムツでは、その着用時において、臀裂対向部と、収容部と、収容補助部とが、汚れ抑制に向けて協働する。したがって、本発明の使い捨てオムツは、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに適する。また、このような汚れ抑制は、オムツ替え作業者等が感染症に罹患することを防止するのに役立ち、ひいては、感染症の蔓延防止に役立つ。
【0012】
収容補助部は、好ましくは、上述のエア注入のためのエア注入口を有するチューブを備える。このような構成によると、チューブのエア注入口から膨張展開部ないしそのバルーン壁の内部にエアを注入できる。したがって、当該構成は、バルーン壁を適切に膨張させるのに適する。
【0013】
収容補助部は、好ましくは、チューブのエア注入口を閉塞可能なキャップを有する。このような構成においては、チューブを介してバルーン壁にエア注入した後、キャップによってチューブのエア注入口を閉塞できる。したがって、当該構成は、バルーン壁の膨張状態を長時間にわたって維持するのに適する。
【0014】
好ましい一の形態において、臀裂対向部はチューブ挿通孔を有し、チューブは、チューブ挿通孔を通ってエア注入口がオムツ本体部の内方側に臨む。このような構成は、オムツ本体部内方側にエア注入口が臨むエア注入用チューブについて、本オムツの設計上、臀裂対向部の受容開口部の開口面積を確保しつつ効率よく配置するのに適する(即ち、チューブについて、排泄便受容開口部を通るように配置する必要がない)。
【0015】
好ましい他の形態において、チューブは、オムツ本体部の外装外側シートを貫通してエア注入口がオムツ本体部の外側に臨む。このような構成においては、オムツ本体部の外側から、バルーン壁に対するチューブを介したエア注入が可能である。
【0016】
バルーン壁は、好ましくは、内部が互いに連通している複数のバルーン部を有する。このようなバルーン壁は、各バルーン部の形状・配置についての適宜の設計により、膨張後のバルーン壁の全体形状について自由度高く設計するのに適する。複数のバルーン部は、好ましくは、次のような第1~第3バルーン部を含む。第1および第2バルーン部は、バルーン壁の膨張後において、第1方向に互いに離隔し、且つ、当該第1方向と交差する第2方向および第3方向に延びる(第2・第3方向は、それぞれが第1方向と交差する)。第3バルーン部は、バルーン壁の膨張後において、第1および第2バルーン部の間で第1方向と第3方向とに延びて第1および第2バルーン部の間を連結する。
【0017】
膨張後のバルーン壁は、好ましくは、対向する一対の遊端部を有する囲み形状を有する。このようなバルーン壁は、オムツ着用時の収容部内において、バルーン壁自体の耐荷重性を確保しつつ、大きな収容実効容積を確保するうえで好ましい。収容部内において、着用者からの排泄便が、囲み形状を有するバルーン壁によって囲まれた部分空間に一旦収容された場合、当該排泄便は、バルーン壁(囲み形状)における二つの遊端部の間を通って部分空間外に移動しうる。そのため、収容部における部分空間外の空間も、収容空間の一部として実効的に機能できる。バルーン壁の囲み形状は、例えば、コの字形状、U字形状または馬蹄形状である。
【0018】
臀裂対向部は、好ましくは、肛門まわりに貼着するための粘着部を受容開口部まわりに有する。このような構成は、着用者臀裂部に対する臀裂対向部の良好な当接状態を実現するのに役立ち、従って、着用者からの排泄便を臀裂対向部の受容開口部によって適切に受容して収容部に導くのに役立つ。
【0019】
臀裂対向部は、好ましくは、肛門まわりに密接するためのクッション材を受容開口部まわりに有する。このような構成は、着用者臀裂部に対する臀裂対向部の良好な当接状態を実現するのに役立ち、従って、着用者からの排泄便を臀裂対向部の受容開口部によって適切に受容して収容部に導くのに役立つ。また、臀裂対向部が上記クッション材を有することは、本オムツにおいて、着用者への異物感を低減して良好な装着感を実現するのにも役立つ。臀裂対向部が上記のクッション材と粘着部とを共に有する場合、臀裂対向部は、クッション材における着用者身体側の表面の一部または全体に粘着部を有するのが好ましい。
【0020】
好ましくは、オムツ本体部は、上述の外装内側シートおよび外装外側シートとともにトップシートを更に含む多層構成を有し、当該多層構成において、両外装シートよりもトップシートはオムツの内方側すなわち着用者身体側に位置する。そして、本オムツは、排泄尿など排泄物を吸収する機能を担う吸収ユニットをトップシートと外装内側シートの間に更に備えるのが好ましい。
【0021】
本発明の第2の側面によると、上述の使い捨てオムツの組立てキットが提供される。この使い捨てオムツ組立てキットは、互いに別体の第1複合ユニットおよび第2複合ユニットを備える。
【0022】
第1複合ユニットは、オムツ本体部と、収容部とを備える。オムツ本体部は、外装内側シートと外装外側シートとを含む多層構成を有する。外装内側シートは、シート開口部を有する。収容部は、外装内側シートおよび外装外側シートの間に位置し、且つ、外装内側シートのシート開口部を介してオムツ本体部外と連通している。
【0023】
第2複合ユニットは、臀裂対向部と、収容補助部とを備える。臀裂対向部は、排泄便を受けるための受容開口部を有する。収容補助部は、エア注入によって膨張可能なバルーン壁を含む膨張展開部を備え、第1複合ユニットにおける収容部内でのバルーン壁の膨張によって収容部内に排泄便の収容空間を形成可能である。
【0024】
本発明の第2の側面に係る使い捨てオムツ組立てキットは、第1複合ユニットと第2複合ユニットとの合体により、本発明の第1の側面に係る上述の使い捨てオムツを組立て可能である。第1・第2複合ユニットの合体では、第2複合ユニットの収容補助部の膨張展開部が、第1複合ユニットのオムツ本体部におけるシート開口部を介して収容部内に挿入される。これとともに、第2複合ユニットの臀裂対向部の受容開口部と第1複合ユニットの収容部とが連通される。使い捨てオムツ組立てキットは、このような第1・第2複合ユニットの合体により、使い捨てオムツを組立て可能である。
【0025】
以上の構成を具備する使い捨てオムツ組立てキットは、第1の側面に係る上述の使い捨てオムツを簡易に作製するのに適し、従って、当該使い捨てオムツの製造コストを低減するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る使い捨てオムツの斜視図である。
【
図2】
図1に示す使い捨てオムツの展開平面図である。
【
図3】
図1に示す使い捨てオムツの一部省略展開平面図である。
【
図5】
図1に示す使い捨てオムツの断面構成模式図である。
【
図6】
図1に示す使い捨てオムツの要部拡大断面図である。
【
図7】膨張展開した後の膨張展開部の平面図である。
【
図8】エア注入用チューブの配置に関する変形例を表す。
【
図11】
図10におけるa-a断面の断面図(a)、b-b断面の断面図(b)、およびc-c断面の断面図(c)を表す。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る使い捨てオムツの斜視図である。
【
図14】
図12に示す使い捨てオムツの一部省略展開平面図である。
【
図15】
図12に示す使い捨てオムツの断面構成模式図である。
【
図16】
図12に示す使い捨てオムツの要部拡大断面図である。
【
図17】臀裂対向部と収容補助部とが一体化された複合ユニット(第2複合ユニット)の斜視図である。
【
図18】
図17に示す複合ユニットについて、バルーン壁の膨張後の一断面図である。
【
図19】
図17に示す複合ユニットについて、バルーン壁の膨張後の裏面図である。
【
図20】第2実施形態における膨張展開部作製過程の一例での、膨張展開部の展開図である。
【
図21】
図17に示す複合ユニットについて、オムツ本体部に組み付けられる前の状態の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1から
図6は、本発明に係る使い捨てオムツの第1実施形態であるオムツX1を表す。
図1は、オムツX1の斜視図である。
図2は、オムツX1の展開平面図であり、
図3は、オムツX1の一部省略展開平面図である。
図4は、
図2のIV-IV断面の模式図である。
図5は、オムツX1の断面構成模式図である。
図6は、オムツX1の要部拡大断面図である。
【0028】
オムツX1は、例えば
図5に示すように、オムツ本体部10と、吸収ユニット20と、当接パッド30(臀裂対向部)と、収容部40と、収容補助部50とを備え、本実施形態では、
図1に示すようにパンツタイプとして構成されている。オムツX1の使用にあたっては、当接パッド30が着用者の臀裂部に当接するように、オムツX1は使用者に着用される。
【0029】
オムツ本体部10は、本実施形態では、ウエスト開口部10aと脚開口部10b,10bとを伴うパンツ型の形状を有する。このオムツ本体部10は、展開状態において
図2および
図3に示す平面視形状を有する多層シート体であって、
図4から
図6に表れているように、トップシート11と、外装内側シート12と、外装外側シート13とをこの順で含む多層構成を有する。オムツ本体部10においては、トップシート11と外装内側シート12との間の所定箇所が接合され、且つ、外装内側シート12と外装外側シート13との間の所定箇所が接合されている。接合の手法としては、例えば、ホットメルト型接着剤による接着、熱溶着(即ちヒートシール)、および縫製が挙げられる(後記の各接合の手法についても同様である)。このような多層シート体における
図2に示す端部E1,E1どうしの接合、および、
図2に示す端部E2,E2どうしの接合により、ウエスト開口部10aおよび脚開口部10b,10bが形成される。すなわち、端部E1,E1どうしの接合、および、端部E2,E2どうしの接合を経て、オムツ本体部10ないしオムツX1が立体化されている。
【0030】
トップシート11は、オムツ本体部10において、外装内側シート12よりも着用者側に位置して着用者側最表層をなし、且つ、液透過性を有する。また、トップシート11は、当接パッド30の配設箇所にて開口する開口部11a(
図3に示す)を有する。トップシート11における開口部11aまわりは、例えば
図5および
図6に模式的に示すように、外装内側シート12における後述の開口部12aまわりと接合されている(但し、
図5および
図6では、図の簡潔化の観点から、シート11,12を一体的なシート体として示す)。
【0031】
このようなトップシート11の素材としては、例えば、不織布、織布、メッシュシート、および、液透過孔の形成されたプラスチックフィルムが、挙げられる。トップシート用素材の不織布や織布をなすための繊維の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、セルロース、レーヨン、およびコットンが挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリブチレンテレフタレートが挙げられる。また、トップシート用素材の不織布や織布をなすための繊維は、好ましくは、親水性繊維、または、界面活性剤での表面処理によって表面の親水化が図られた疎水性繊維である。
【0032】
オムツ本体部10における外装内側シート12および外装外側シート13は、排泄物における液分がオムツX1の内側から外側に透過するのを防止するための液不透過性を有し、且つ、それらの外縁端部どうしが本実施形態では全周にわたって接合されている。外装内側シート12は、例えば
図5および
図6に示すように、当接パッド30の配設箇所にて開口する開口部12a(シート開口部)を有する。外装内側シート12における開口部12aまわりは、上述のように、トップシート11の開口部11aまわりと接合されている。
【0033】
各外装シート(外装内側シート12,外装外側シート13)の素材としては、例えば、不織布、プラスチックフィルム、および、不織布とプラスチックフィルムとのラミネート材が、挙げられる。外装シート用素材の不織布をなすための繊維の構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、およびナイロンが挙げられる。外装シート用素材の不織布をなすための繊維は、好ましくは疎水性繊維である。このような外装内側シート12および外装外側シート13は、防水処理が施されていてもよい。
【0034】
吸収ユニット20は、オムツX1において排泄物中の排泄尿など液分を吸収する機能を担うものであり、
図4に示すように、オムツ本体部10におけるトップシート11と外装内側シート12との間に位置する。また、吸収ユニット20は、トップシート11および/または外装内側シート12に対して接合されてもよい。
【0035】
このような吸収ユニット20は、例えば、水分吸収容量の大きなシート状の高分子吸水材と、この高分子吸水材を被覆して保持するための液透過性シートとを有する。高分子吸水材の構成材料としては、例えば、ポリアクリル酸系樹脂、ポリアスパラギン酸系樹脂、およびセルロース系樹脂が挙げられる。液透過性シートとしては、例えば綿状パルプが挙げられる。また、吸収ユニット20ないしその表面の液透過性シートと上述のトップシート11との間には、吸収ユニット20に向けての液分移動速度を高める目的で例えば、吸水紙が配置されてもよい。
【0036】
当接パッド30は、着用者の臀裂部に当接可能な臀裂対向部である。当接パッド30は、本実施形態では、
図6に示すように、ベース部31と、クッション材32とを含む積層構成を有する。また、当接パッド30は、本実施形態では、
図2に示すように、開口部30aと、チューブ挿通孔30bとを有する。開口部30aは、当接パッド30をその厚さ方向に貫通する。開口部30aは、着用者からの排泄便を受けるための受容開口部である。チューブ挿通孔30bは、当接パッド30をその厚さ方向に貫通する。チューブ貫通孔30bは、本実施形態では、開口部30aとは隣り合って繋がっている。チューブ挿通孔30bには、収容補助部50が備える後述のチューブ52(
図6に示す)が配置されている。
【0037】
ベース部31は、
図6に示すように、クッション材32を支持する。ベース部31は、第1面31Aと、これとは反対側の第2面31Bとを有し、第1面31A側でクッション材32を支持する。ベース部31は、開口部31aを有する環状の基材である。また、ベース部31は、本実施形態では、開口部31aと隣り合って繋がる孔部(第1孔部)も有する。第1孔部は、チューブ貫通孔30bの一部をなす。
【0038】
ベース部31の構成材料としては、プラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、およびポリプロピレンフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムは、可撓性を有するのが好ましい。ベース部31の厚さは、ベース部31の強度を確保するうえでは例えば0.1mm以上であり、ベース部31の可撓性を確保するうえでは例えば2mm以下である。
【0039】
クッション材32は、着用者の肛門まわりに密接するための部位である。クッション材32は、
図6に示すように、肛門まわりに当接することとなる当接面32Aを、ベース部31とは反対側に有する。クッション材32は、開口部32aを有する環状の柔軟部材である。クッション材32の開口部32aと、上述のベース部31の開口部31aとが、当接パッド30の開口部30aを形成する。当接パッド30において、クッション材32は、開口部30aまわりに配置されている。すなわち、当接パッド30は、開口部30aまわりにクッション材32を有する。
【0040】
クッション材32は、本実施形態では、開口部32aと隣り合って繋がる孔部(第2孔部)も有する。クッション材32の第2孔部と、上述のベース部31の第1孔部とが、当接パッド30のチューブ挿通孔30bを形成する。
【0041】
また、クッション材32は、本実施形態では山型形状を有する(即ち、本実施形態の当接パッド30は山型形状を有する)。具体的には、本実施形態のクッション材32は、頂辺部32pと、一対の傾斜面部32q,32qとを有する。一対の傾斜面部32q,32qは、好ましくは、頂辺部32pを対称軸とする対称的な形状を有する。
【0042】
図2に示す平面視形状において、クッション材32の外形は、例えば略円形である。クッション材32の外形サイズ(方向によって寸法が異なる場合には最大寸法)は、例えば5~12cmであり、開口部32aの外形サイズ(方向によって寸法が異なる場合には最大寸法)は、例えば3~8cmである。クッション材32の厚さ(肉厚)は、例えば1~15mmの範囲にある。一対の傾斜面部32q,32qがなす角度α(
図6に示す)は、例えば60°~150°である。
【0043】
このようなクッション材32は、柔軟性を有する材料からなる。クッション材32用の柔軟性材料としては、例えば、ゴム系素材、スポンジ材、これら以外の樹脂材料が挙げられる。ゴム系素材としては、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、およびエチレンプロピレンゴムが挙げられる。スポンジ材としては、例えば、セルローススポンジ、ポリウレタンスポンジ、およびメラミンスポンジが挙げられる。上記樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、および軟質塩化ビニルが挙げられる。
【0044】
本実施形態では、当接パッド30は、上述のベース部31およびクッション材32に加えて、粘着部33(
図2に示す)を備える。
【0045】
粘着部33は、着用者の臀裂における肛門まわりに貼着するための要素である。粘着部33は、クッション材32の当接面32A(即ち、クッション材32における着用者身体側の表面)の一部または全体に、配置されている(一部に配置されている場合を例示的に図示する)。すなわち、当接パッド30は、当接面32A上において、開口部30aまわりに粘着部33を有する。当接パッド30がこのような粘着部33を有するという構成は、着用者臀裂部に対する当接パッド30(臀裂対向部)の良好な当接状態を実現するのに役立ち、着用者からの排泄便を当接パッド30の開口部30aによって受容するのに好ましく、従って、収容部40(
図5および
図6に示す)に導くのに好ましい。このような粘着部33は、好ましくは、オムツX1が使用者に着用される前まで剥離ライナーによって被覆されている。その剥離ライナーは、使用者によるオムツX1の着用より前に、粘着部33から剥がされる。
【0046】
粘着部33の材料としては、例えば、粘着剤および粘着性ウレタンゲルが挙げられる。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびハイドロコロイドが挙げられる。粘着性ウレタンゲルとしては、例えば、エクシール社製の超軟質ウレタン樹脂素材が挙げられる。同素材は、ポリオールブレンドとイソシアネート(それぞれが適度に濃度調整されている)の例えば1対1での混合を経て、形成することができる。
【0047】
収容部40は、着用者身体から隔てて排泄便を収容するための部位である。収容部40は、
図5および
図6に示すように、オムツ本体部10における外装内側シート12と外装外側シート13との間に位置し、且つ、当接パッド30の開口部30aと連通している。
【0048】
収容補助部50は、
図5および
図6に示すように、膨張展開部51と、チューブ52と、キャップ53とを備える。チューブ52およびキャップ53は、
図6に示されている。
【0049】
膨張展開部51は、エア注入によって収容部40内で膨張展開可能な部位である。
図7は、膨張展開した後の膨張展開部51の平面図である。膨張展開部51は、天蓋部51Aと、バルーン壁51Bとを含む。
図5に表れている膨張展開部51の断面は、
図7におけるV-V断面に相当する。
図6に表れている膨張展開部51の断面は、
図7におけるVI-VI断面に相当する。
【0050】
天蓋部51Aは、
図5から
図7に示すように、開口部51aを有する。開口部51aは、当接パッド30の開口部30aと連通している。開口部51aは、当接パッド30における開口部30aおよびチューブ挿通孔30bに対向する範囲に広く開口している。本実施形態では、少なくとも、天蓋部51Aにおける開口部51aまわりの部分(開口へり部)が、外装内側シート12に接合されている。接合の手法としては、上述のように、例えば、ホットメルト型接着剤による接着、熱溶着および縫製が挙げられる。
【0051】
バルーン壁51Bは、その内部へのエア注入によって膨張可能な部位であり、天蓋部51Aの周端の一部に沿って当該周端部と繋がる。膨張したバルーン壁51Bは、
図5および
図6に示すように、収容部40内に排泄便の収容空間Sを形成する。
【0052】
本実施形態において、バルーン壁51Bは、
図7に示すように、対向する一対の遊端部F,Fを有する囲み形状を有する。具体的には、本実施形態のバルーン壁51Bは、一方の遊端部Fから他方の遊端部Fにかけて連続し、且つ、当該遊端部F,F間を除いて所定空間を包囲する形状を有する。そのような囲み形状としては、例えば、U字形状、馬蹄形状、およびコの字形状が挙げられる(バルーン壁51BがU字形状を有する場合を例示的に図示する)。一対の遊端部F,Fは、
図5に示す収容補助部50ないし膨張展開部51では、図中下端側に位置する。また、バルーン壁51Bと、天蓋部51Aの周端の一部とが繋がっていることは、膨張後のバルーン壁51Bの囲み形状を保持するのに役立つ(天蓋部51Aは、バルーン壁51Bの遊端部F,Fが離れすぎるのを阻止する)。
【0053】
チューブ52は、
図6に示すように、エア注入口52aおよびエア吹出口52bを有する。エア注入口52aはチューブ52の一端部に位置し、エア吹出口52bはチューブ52の他端部に位置する。また、チューブ52は、当接パッド30のチューブ挿通孔30b(
図2および
図6に示す)を通り、エア注入口52aがオムツ本体部10の内方側に臨む。エア注入口52aは、膨張展開部51ないしそのバルーン壁51Bに対するエア注入のための開口部である。エア吹出口52bは、エア出口としての開口部であり、膨張展開部51におけるバルーン壁51B内で開口している。チューブ52の構成材料としては、例えば、ゴム系素材、および、ゴム系素材以外の樹脂材料が挙げられる。ゴム系素材としては、例えば、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、およびエチレンプロピレンゴムが挙げられる。ゴム系素材以外の樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニルおよびポリプロピレンが挙げられる。
【0054】
キャップ53は、本実施形態では、
図6に示すように、本体部53Aと連結部53Bとを有する。本体部53Aは凸部53aを有する。凸部53aは、エア注入口52a内に嵌まり込むことが可能である。すなわち、凸部53aは、エア注入口52aに対して嵌合可能である。また、エア注入口52aに対する嵌合状態にある凸部53aは、エア注入口52aから外れることが可能である。連結部53Bは、本体部53Aとチューブ52とを繋ぐ。キャップ53の構成材料としては、例えば、樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリ塩化ビニルおよびポリプロピレンが挙げられる。キャップ53と上述のチューブ52とは、好ましくは、同一材料から形成されており、より好ましくは、同一材料から一体成形されている。以上のようなキャップ53ないしその本体部53Aは、チューブ52のエア注入口52aに対して着脱可能である。具体的には、次のとおりである。
【0055】
本体部53Aの凸部53aがエア注入口52a内に嵌まり込むことにより、キャップ53はエア注入口52aを閉塞する(エア注入口52aの閉状態)。すなわち、キャップ53は、エア注入口52aを閉塞可能である。閉状態にあるエア注入口52aから本体部53Aの凸部53aが外れることにより、エア注入口52aは開状態となる。
【0056】
本実施形態の収容補助部50は、例えば次のような過程を経て作製できる。まず、所定の同一平面視形状の2枚のプラスチックフィルム(第1フィルム,第2フィルム)を、位置合わせしつつ重ね合わせて、フィルム積層体を用意する。次に、当該フィルム積層体の所定箇所において第1・第2フィルム間をヒートシールして接合する(
図6および後記の
図8、
図9および
図11において断面が示されるバルーン壁51Bから短く延び出る部分は、フィルム間の接合部分である)。この時、チューブ52の一端部(エア吹出口52b)がバルーン壁51B内に位置するように、第1・第2フィルム間に当該チューブ端部を挟んでフィルム積層体に対してチューブ52を組み付ける。例えば以上のような過程を経ることにより、収容補助部50を作製できる。
【0057】
オムツX1は、好ましくは、所定の態様で折り畳まれた状態で使用者に提供される。収容補助部50は、オムツX1の使用者提供前に、オムツ本体部10内に組み付けられている(そのため、第2実施形態に関して後述する、使用者による複合ユニットU1,U2の組付け作業のような作業は、必要ない)。折り畳まれたオムツX1においては、膨張展開部51は、まだ膨張展開していない状態にある(即ち、膨張展開部51のバルーン壁51Bは、収容部40内で膨張していない状態にある)。
【0058】
以上のようなオムツX1は、例えばオムツX1が着用される前に、収容補助部50のバルーン壁51Bが収容部40内で膨張される。これにより、
図5および
図6に示すように、収容部40内に排泄便の収容空間Sが形成される。オムツX1は、その着用者の肛門に当接パッド30の開口部30aが対向する位置および姿勢で当接パッド30が着用者の臀裂部に当接するように、使用者に着用される。そして、着用者から排泄される便は、着用者の臀裂部に当接する当接パッド30の開口部30aに受容され、収容部40へと導かれる。
【0059】
オムツX1は、上述のように、オムツ本体部10の外装内側シート12と外装外側シート13との間に、排泄便を収容するための収容部40を備える。このような構成は、着用者からの排泄便を着用者身体から隔てた状態で留め置くのに適し、従って、着用者の身体が排泄便で汚れることを抑制するのに適する。そして、オムツX1について、収容部40内に排泄便が収容された状態でオムツ替え作業が行われる場合、作業者の手など身体は、汚れにくい。
【0060】
また、本発明のオムツX1は、上述のように、排泄便受容口である開口部30aを有して着用者臀裂部に当接可能な当接パッド30(臀裂対向部)を備える。このような構成は、着用者からの排泄便を適切に受けて収容部40に導くのに役立ち、従って、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに役立つ。
【0061】
加えて、オムツX1は、上述のように収容補助部50を備える。収容補助部50は、バルーン壁51Bを含む膨張展開部51を備える。バルーン壁51Bは、エア注入によって膨張および起立して収容部40内に所定の空間を形成する。バルーン壁51Bは、収容部40内において、クッション性を有しつつ空間を確保できる。このようなバルーン壁51BをオムツX1が具備することは、収容部40内に排泄便の収容空間Sを確保・維持するのに適し、従って、収容部40に既に収容された排泄便が開口部30aから着用者身体側に漏出(逆流)することを抑制するのに適する。排泄便の逆流の抑制は、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに役立つ。また、バルーン壁51Bがエア注入によって膨張すること、および、膨張したバルーン壁51Bがクッション性を有することは、バルーン壁51B内のエア圧を利用して当接パッド30を着用者臀裂部に向けて付勢するのに適し、従って、着用者臀裂部に対する当接パッド30の良好な当接状態を実現するのに適する。このことは、着用者からの排泄便を当接パッド30の開口部30aが適切に受け容れて収容部40に導くのに役立つ。バルーン壁51Bがクッション性を有することは、オムツX1において、着用者への異物感を低減して良好な装着感を実現するのにも役立つ。
【0062】
以上のように、オムツX1では、その着用時において、当接パッド30と、収容部40と、収容補助部50とが、汚れ抑制に向けて協働する。したがって、オムツX1は、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに適する。また、このような汚れ抑制は、オムツ替え作業者等が感染症に罹患することを防止するのに役立ち、ひいては、感染症の蔓延防止に役立つ。
【0063】
収容補助部50は、上述のように、エア注入口52aを有するチューブ52を備える。このような構成によると、チューブ52のエア注入口52aから膨張展開部51ないしそのバルーン壁51Bの内部にエアを注入できる。したがって、当該構成は、バルーン壁51Bを適切に膨張させるのに適する。
【0064】
収容補助部50は、上述のように、チューブ52のエア注入口52aを閉塞可能なキャップ53を有する。このような構成においては、チューブ52を介してバルーン壁51Bにエア注入した後、キャップ53によってチューブ52のエア注入口52aを閉塞できる。したがって、当該構成は、バルーン壁51Bの膨張状態を長時間にわたって維持するのに適する。また、チューブ52としては、バルーン壁51B内にエア注入されたエアの逆流を防止する弁(逆流防止弁)を備えるものを採用してもよい。その場合、収容補助部50はキャップ53を備えなくてもよい。
【0065】
オムツX1においては、上述のように、当接パッド30がチューブ挿通孔52bを有し、チューブ52は、チューブ挿通孔52bを通ってエア注入口52aがオムツ本体部10の内方側に臨む(第1のチューブ配置構成)。このような構成は、オムツ本体部10内方側にエア注入口52aが臨むエア注入用のチューブ52について、オムツX1の設計上、当接パッド30の開口部30aの開口面積を確保しつつ効率よく配置するのに適する(即ち、チューブ52については、排泄便受容開口部としての開口部30aを通るように配置する必要がない)。
【0066】
チューブ52の配置に関しては、上述の第1のチューブ配置構成に代えて、
図8(a)に示すような構成(第2のチューブ配置構成)を採用してもよい。第2のチューブ配置構成では、チューブ52は、オムツ本体部10のトップシート11および外装内側シート12を貫通して、エア注入口52aがオムツ本体部10の内方側に臨む。この場合、当接パッド30にチューブ挿通孔30bを設ける必要はない。
【0067】
チューブ52の配置に関しては、第1のチューブ配置構成に代えて、
図8(b)に示すような構成(第3のチューブ配置構成)を採用してもよい。第3のチューブ配置構成では、チューブ52は、オムツ本体部10の外装外側シート13を貫通して、エア注入口52aがオムツ本体部10の外側に臨む(この場合、当接パッド30にチューブ挿通孔30bを設ける必要はない)。この変形例では、膨張展開部51は、天蓋部51Aにて外装内側シート12に接合されているのに加えて、バルーン壁51Bにて外装外側シート13に接合されていてもよい。以上のような第3のチューブ配置構成においては、オムツ本体部10の外側から、膨張展開部51ないしそのバルーン壁51Bに対するチューブ52を介したエア注入が可能である。そのため、使用者は、膨張展開部51のバルーン壁51Bに対するエア注入の作業をしやすい。
【0068】
収容補助部50は、
図9に示すように設けられてもよい。
図9に示す収容補助部50は、その膨張展開部51の天蓋部51Aが外装外側シート13に接合された態様で、設けられている(膨張展開部51は、外装内側シート12に接合されていない)。天蓋部51Aの少なくとも一部が、外装外側シート13の内側表面に接合されている。この変形例では、膨張したバルーン壁51Bが外装外側シート12に接する程度に、膨張展開部51のバルーン壁51Bは大きいのが好ましい。このような収容補助部50ないし膨張展開部51は、天蓋部51Aに開口部51aを有する必要はない。
【0069】
また、
図9に示す収容補助部50では、チューブ52は、オムツ本体部10の外装外側シート13を貫通して、エア注入口52aがオムツ本体部10の外側に臨む。このような構成においては、オムツ本体部10の外側から、膨張展開部51ないしそのバルーン壁51Bに対するチューブ52を介したエア注入が可能である。そのため、使用者は、膨張展開部51のバルーン壁51Bに対するエア注入の作業をしやすい。
【0070】
膨張後のバルーン壁51Bは、上述のように、対向する一対の遊端部F,F(
図7に示す)を有する囲み形状を有する。このようなバルーン壁51Bは、オムツ着用時の収容部40内において、バルーン壁51B自体の耐荷重性を確保しつつ、大きな収容実効容積を確保するうえで好ましい。収容部40内において、着用者からの排泄便が、囲み形状を有するバルーン壁51Bによって囲まれた部分空間に一旦収容された場合、当該排泄便は、バルーン壁51B(囲み形状)における二つの遊端部F,Fの間を通って部分空間外に移動しうる。そのため、収容部40における部分空間外の空間も、収容空間Sの一部として実効的に機能できる。
【0071】
膨張展開部51は、他の形状を有してもよい。
図10および
図11は、膨張展開部51の一変形例を表す。
図10は、膨張展開部51の変形例の平面図であり、
図11(a)は、
図10におけるa-a断面の断面図であり、
図11(b)は、
図10におけるb-b断面の断面図であり、
図11(c)は、
図10におけるc-c断面の断面図である。
【0072】
図10に示す膨張展開部51は、
図11(a)~
図11(c)に示すように、バルーン壁51Bにおいて遊端部Fに近い箇所ほど横断面形状が小さくなる形状を有する。このような構成は、天蓋部51Aにおいて遊端部F,Fから離れた位置にある開口部51aの近傍にてバルーン壁51Bを適切に膨張・起立させるうえで好ましい。
【0073】
当接パッド30は、上述のように、肛門まわりに密接するためのクッション材32を開口部30aまわりに有する。このような構成は、着用者臀裂部に対する当接パッド30の良好な当接状態を実現するのに役立ち、従って、着用者からの排泄便を当接パッド30の開口部30aによって適切に受容して収容部40に導くのに役立つ。また、当接パッド30がクッション材32を有することは、オムツX1において、着用者への異物感を低減して良好な装着感を実現するのにも役立つ。
【0074】
当接パッド30ないしそのクッション材32は、上述のような山型形状とは異なる形状を有してもよい。例えば、当接パッド30ないしそのクッション材32は、着用者身体側の少なくとも露出面側が全体として平坦な形状(但し柔軟素材よりなる)を有してもよい。
【0075】
オムツX1は、上記の各変形例の適宜の組み合わせを含む構成を具備してもよい。
【0076】
図12から
図16は、本発明に係る使い捨てオムツの第2実施形態であるオムツX2を表す。
図12は、オムツX2の斜視図である。
図13は、オムツX2の展開平面図であり、
図14は、オムツX2の一部省略展開平面図である。
図15は、オムツX2の断面構成模式図である。また、
図16は、オムツX2の要部拡大断面図である。
【0077】
オムツX2は、例えば
図15に示すように、オムツ本体部10と、吸収ユニット20と、当接パッド30(臀裂対向部)と、収容部40と、収容補助部50とを備える使い捨てオムツであり、本実施形態では、
図12に示すようにパンツタイプとして構成されている。オムツX2の使用にあたっては、当接パッド30が着用者の臀裂部に当接するように、オムツX2は使用者に着用される。
【0078】
オムツ本体部10は、本実施形態では、ウエスト開口部10aと脚開口部10b,10bとを伴うパンツ型の形状を有する。このオムツ本体部10は、展開状態において
図2および
図14に示す平面視形状を有する多層シート体であって、
図15から
図16に表れているように、トップシート11と、外装内側シート12と、外装外側シート13とをこの順で含む多層構成を有する。オムツ本体部10においては、トップシート11と外装内側シート12との間の所定箇所が接合され、且つ、外装内側シート12と外装外側シート13との間の所定箇所が接合されている。このような多層シート体における
図13に示す端部E1,E1どうしの接合、および、
図13に示す端部E2,E2どうしの接合により、ウエスト開口部10aおよび脚開口部10b,10bが形成される。すなわち、端部E1,E1どうしの接合、および、端部E2,E2どうしの接合を経て、オムツ本体部10ないしオムツX2が立体化されている。
【0079】
トップシート11は、オムツ本体部10において、外装内側シート12よりも着用者側に位置して着用者側最表層をなし、且つ、液透過性を有する。また、トップシート11は、当接パッド30の配設箇所にて開口する開口部11a(
図14に示す)を有する。トップシート11における開口部11aまわりは、例えば
図15および
図16に模式的に示すように、外装内側シート12における後述の開口部12aまわりと接合されている(但し、
図15および
図16では、図の簡潔化の観点から、シート11,12を一体的なシート体として示す)。トップシート11の素材については、オムツX1におけるトップシート11に関して上述したのと同様である。
【0080】
オムツ本体部10における外装内側シート12および外装外側シート13は、排泄物における液分がオムツX2の内側から外側に透過するのを防止するための液不透過性を有し、且つ、それらの外縁端部どうしが本実施形態では全周にわたって接合されている。外装内側シート12は、例えば
図15および
図16に示すように、当接パッド30の配設箇所にて開口する開口部12a(シート開口部)を有する。外装内側シート12における開口部12aまわりは、上述のように、トップシート11の開口部11aまわりと接合されている。各外装シート(外装内側シート12,外装外側シート13)の素材については、オムツX1における外装シートに関して上述したのと同様である。
【0081】
吸収ユニット20は、オムツX2において排泄物中の排泄尿など液分を吸収する機能を担うものであり、オムツ本体部10におけるトップシート11と外装内側シート12との間に位置する。吸収ユニット20は、トップシート11および/または外装内側シート12に対して接合されてもよい。吸収ユニット20は、例えば、水分吸収容量の大きなシート状の高分子吸水材と、この高分子吸水材を被覆して保持するための液透過性シートとを有する。また、吸収ユニット20ないしその表面の液透過性シートと上述のトップシート11との間には、吸収ユニット20に向けての液分移動速度を高める目的で例えば、吸水紙が配置されてもよい。これらについては、具体的には、オムツX1における吸収ユニット20に関して
図4を参照して上述したのと同様である。
【0082】
当接パッド30は、着用者の臀裂部に当接可能な臀裂対向部である。当接パッド30は、本実施形態では、
図16に示すように、ベース部31と、クッション材32とを含む積層構成を有する。また、
図13に示すように、当接パッド30は、開口部30aと、チューブ挿通孔30bとを有する。開口部30aは、当接パッド30をその厚さ方向に貫通する。開口部30aは、着用者からの排泄便を受けるための受容開口部である。チューブ挿通孔30bは、当接パッド30をその厚さ方向に貫通する。チューブ貫通孔30bは、本実施形態では、開口部30aとは隣り合って繋がっている。チューブ挿通孔30bには、収容補助部50が備える後述のチューブ52が配置されている。
図16では、図の簡潔化の観点から、チューブ貫通孔30bおよびチューブ52の図示を省略する。
【0083】
ベース部31は、
図16に示すように、クッション材32を支持する。ベース部31は、第1面31Aと、これとは反対側の第2面31Bとを有し、第1面31A側でクッション材32を支持する。ベース部31は、開口部31aを有する環状の基材である。ベース部31は、開口部31aまわりに開口へり部M1を有する。また、ベース部31は、チューブ貫通孔30bの一部をなす孔部(第1孔部,
図16では図示略)も有する。ベース部31の構成材料および厚さについては、オムツX1におけるベース部31に関して上述したのと同様である。
【0084】
クッション材32は、着用者の肛門まわりに密接するための部位である。クッション材32は、肛門まわりに当接することとなる当接面32Aを、ベース部31とは反対側に有する。クッション材32は、開口部32aを有する環状の柔軟部材である。クッション材32の開口部32aと、上述のベース部31の開口部31aとが、当接パッド30の開口部30aを形成する。当接パッド30において、クッション材32は、開口部30aまわりに配置されている。すなわち、当接パッド30は、開口部30aまわりにクッション材32を有する。
【0085】
クッション材32は、孔部(第2孔部)も有する。クッション材32の第2孔部と、上述のベース部31の第1孔部とが、当接パッド30のチューブ挿通孔30bを形成する。
【0086】
また、クッション材32は、本実施形態では山型形状を有する(即ち、本実施形態の当接パッド30は山型形状を有する)。具体的には、本実施形態のクッション材32は、頂辺部32pと、一対の傾斜面部32q,32qとを有する。一対の傾斜面部32q,32qは、好ましくは、頂辺部32pを対称軸とする対称的な形状を有する。
【0087】
クッション材32の外形、寸法および構成材料については、オムツX1におけるクッション材32に関して上述したのと同様である。
【0088】
本実施形態では、当接パッド30は、上述のベース部31およびクッション材32に加えて、粘着部33(
図13に示す)および粘着部34(
図21に示す)を備える。
【0089】
粘着部33は、着用者の臀裂における肛門まわりに貼着するための要素である。粘着部33は、クッション材32の当接面32A(即ち、クッション材32における着用者身体側の表面)の一部または全体に、配置されている(一部に配置されている場合を例示的に図示する)。すなわち、当接パッド30は、当接面32A上において、開口部30aまわりに粘着部33を有する。当接パッド30がこのような粘着部33を有するという構成は、着用者からの排泄便を、当接パッド30の開口部30aによって受容するのに好ましく、従って、収容部40(
図15および
図16に示す)に導くのに好ましい。このような粘着部33は、好ましくは、オムツX2が使用者に着用される前まで剥離ライナーによって被覆されている。粘着部33の材料については、オムツX1における粘着部33に関して上述したのと同様である。
【0090】
粘着部34は、ベース部31の第2面31B上の一部または全体に、配置されている。すなわち、当接パッド30は、第2面31B上において、開口部30aまわりに粘着部34を有する。本実施形態において、当接パッド30は、このような粘着部34を介して、トップシート11の開口部11aまわりに対して接合されている。粘着部34の材料としては、例えば、粘着部33の材料として上記した粘着剤が挙げられる。
【0091】
収容部40は、着用者身体から隔てて排泄便を収容するための部位である。収容部40は、
図15および
図16に示すように、オムツ本体部10における外装内側シート12と外装外側シート13との間に位置し、且つ、当接パッド30の開口部30aと連通している。本実施形態では、このような収容部40と上述のオムツ本体部10とが、複合ユニットU1(第1複合ユニット)を構成する。
【0092】
収容補助部50は、
図17から
図19に示すように、膨張展開部51と、チューブ52と、キャップ53とを備える。本実施形態では、収容補助部50と上述の当接パッド30とが、一体化された複合ユニットU2(第2複合ユニット)を構成する。
【0093】
膨張展開部51は、エア注入によって収容部40内で膨張展開可能な部位である(
図18および
図19では、膨張展開部51が膨張した後の状態を示す)。膨張展開部51は、天蓋部51Aと、バルーン壁51Bとを含む。
【0094】
天蓋部51Aは、
図18および
図19に示すように、開口部51aを有する。開口部51aは、当接パッド30の開口部30aと連通している。天蓋部51Aは、開口部51aまわりに開口へり部M2を有する(
図19では、開口へり部M2についてクロスハッチングを付して示す)。開口へり部M2は、上述のベース部31における開口部31aまわりの開口へり部M1と接合されている。
【0095】
バルーン壁51Bは、その内部へのエア注入によって膨張して起立可能な部位であり、天蓋部51Aの周端の一部と繋がる。膨張・起立したバルーン壁51Bは、
図15および
図16に示すように、収容部40内に排泄便の収容空間Sを形成する。
【0096】
図17から
図19に示すように、本実施形態では、バルーン壁51Bは、複数のバルーン部Bと、複数の連結部C(点線ハッチングで示す)とを備える。各バルーン部Bは、袋様の形態を有し、内部へのエア注入によって膨張可能である。複数のバルーン部Bは、内部が互いに連通している。各連結部Cは、所定のバルーン部Bと天蓋部51Aとの間を連結するか、或いは、所定のバルーン部B間を連結している。すなわち、バルーン壁51Bにおいては、複数のバルーン部Bが、その内部連通状態が確保されつつ、複数の連結部Cによって区画されている。本実施形態のバルーン壁51Bについて、より具体的には次のとおりである。
【0097】
本実施形態のバルーン壁51Bにおいて、複数のバルーン部Bは、バルーン部B1(第1バルーン部)と、バルーン部B2(第2バルーン部)と、バルーン部B3(第3バルーン部)とを含む。バルーン部B1,B2は、膨張後のバルーン壁51Bにおいて、第1方向D1に互いに離隔し、且つ、第2方向D2および第3方向D3に延びる。第2方向D2および第3方向D3は、それぞれ、第1方向D1と交差する。第2方向D2は、好ましくは第1方向D1と直交する。第3方向D3は、好ましくは、第1方向D1および/または第2方向D2と直交する。バルーン部B3は、膨張後のバルーン壁51Bにおいて、バルーン部B1,B2間で第1方向D1と第3方向D3とに延びてバルーン部B1,B2間を連結する。そして、連結部C1はバルーン部B1と天蓋部51Aとの間を連結し、連結部C2はバルーン部B2と天蓋部51Aとの間を連結し、連結部C3はバルーン部B3と天蓋部51Aとの間を連結し、連結部C4はバルーン部B1,B3間を連結し、連結部C5はバルーン部B2,B3間を連結している。
【0098】
本実施形態において、バルーン壁51Bは、対向する一対の遊端部F,F(
図17に示す)を有する囲み形状を有する。具体的には、本実施形態のバルーン壁51Bは、一方の遊端部Fから他方の遊端部Fにかけて連続し、且つ、当該遊端部F,F間を除いて所定空間を包囲する形状を有する。そのような囲み形状としては、例えば、コの字形状、U字形状、および馬蹄形状が挙げられる(バルーン壁51Bがコの字形状を有する場合を例示的に図示する)。
【0099】
膨張展開部51は、例えば次のようにして作製できる。まず、所定の同一平面視形状の2枚のプラスチックフィルム(第1フィルム,第2フィルム)を、位置合わせしつつ重ね合わせて、フィルム積層体を用意する。次に、当該フィルム積層体の所定箇所において第1・第2フィルム間をヒートシールして接合する(第1ヒートシール)。この時、一つのバルーン部B内にチューブ52の端部(後述のエア吹出口52b)が位置するように、第1・第2フィルム間に当該チューブ端部を挟んでフィルム積層体に対してチューブ52を組み付ける。次に、当該フィルム積層体における所定部分どうしをヒートシールして繋げる(第2ヒートシール)。
図20は、第1ヒートシール後のフィルム積層体の一例としてのフィルム積層体W(同一平面視形状の2枚のプラスチックフィルムが重ね合わせられている)の平面図である(但し、チューブ52は省略する)。
図20では、フィルム積層体Wにおける第1ヒートシール箇所について、点線ハッチングを付して表す。第1ヒートシールの工程を経たフィルム積層体Wには、互いに連通しているバルーン部B1~B3が既に形成されている。フィルム積層体Wにおける端部E3,E3どうしをヒートシールして繋げ、且つ端部E4,E4どうしをヒートシールして繋げることにより(第2ヒートシール)、膨張展開部51を形成できる。
【0100】
チューブ52は、
図18に示すように、エア注入口52aおよびエア吹出口52bを有する。エア注入口52aはチューブ52の一端部に位置し、エア吹出口52bはチューブ52の他端部に位置する。また、チューブ52は、当接パッド30のチューブ挿通孔30b(
図17に示す)を通り、エア注入口52aがオムツ本体部10の内方側に臨む。エア注入口52aは、膨張展開部51ないしそのバルーン壁51Bに対するエア注入のための開口部である。エア吹出口52bは、エア出口としての開口部であり、膨張展開部51における一つのバルーン部B内で開口している(
図18では、エア吹出口52bがバルーン部B1内で開口している構成を例示的に図示する)。チューブ52の構成材料については、オムツX1におけるチューブ52に関して上述したのと同様である。
【0101】
キャップ53は、本実施形態では、
図18に示すように、本体部53Aと連結部53Bとを有する。本体部53Aは凸部53aを有する。凸部53aは、エア注入口52a内に嵌まり込むことが可能である。すなわち、凸部53aは、エア注入口52aに対して嵌合可能である。また、エア注入口52aに対する嵌合状態にある凸部53aは、エア注入口52aから外れることが可能である。連結部53Bは、本体部53Aとチューブ52とを繋ぐ。キャップ53の構成材料については、オムツX1におけるキャップ53に関して上述したのと同様である。以上のようなキャップ53ないしその本体部53Aは、チューブ52のエア注入口52aに対して着脱可能である(具体的には、オムツX1におけるキャップ53および本体部53Aに関して上述したのと同様である)。
【0102】
オムツX2は、例えば、上述の複合ユニットU1(オムツ本体部10,収容部40)と上述の複合ユニットU2(当接パッド30,膨張展開部51)とを互いに組み付けることによって形成できる(組付け作業)。すなわち、複合ユニットU1,U2は、オムツX2の組立てキット(使い捨てオムツ組立てキット)を構成する。このような使い捨てオムツ組立てキットは、本発明の一実施形態に相当する。
【0103】
本発明の一実施形態としての使い捨てオムツ組立てキットは、互いに別体の複合ユニットU1,U2を備える。
【0104】
複合ユニットU1は、上述のオムツ本体部10(例えば
図14に示す)と、上述の収容部40(例えば
図15に示す)とを備える。複合ユニットU1において、収容部40(外装内側シート12と外装外側シート13との間に位置する)は、外装内側シート12の開口部12aと、本実施形態ではトップシート11の開口部11aとを介して、オムツ本体部10外と連通している。
【0105】
複合ユニットU2は、上述の当接パッド30と、上述の収容補助部50とを備える。
図21は、複合ユニットU2について、複合ユニットU1ないしそのオムツ本体部10に組み付けられる前の状態の一例を表す。
図21に示す複合ユニットU2において、膨張展開部51は、未だ膨張されておらず且つ折り畳まれた状態にある。膨張展開部51における天蓋部51Aの上述の開口部51aまわりの開口へり部M2は、当接パッド30のベース部31における開口部31aまわりの上述の開口へり部M1と接合されている(図の簡潔化の観点から図示略)。膨張展開部51における開口部51aまわり以外の大部分は、当接パッド30におけるクッション材32に対してその当接面32A側(ベース部31に対してはその第1面31A側)に配置されている。
【0106】
複合ユニットU1,U2からオムツX2を形成するには、まず、
図21に示す複合ユニットU2におけるベース部31の第2面31B側を、粘着部34を介して、複合ユニットU1におけるトップシート11の開口部11a(
図14に示す)まわりに接合する(好ましくは、この接合工程の前まで粘着部34は剥離ライナーによって覆われており、接合工程のために剥離ライナーは粘着部34から剥がされる)。これにより、当接パッド30の開口部30aと収容部40とを連通させる。次に、膨張展開部51を、オムツ本体部10における開口部11a,12aを介して収容部40内に挿入する。複合ユニットU1,U2の以上のような合体により、オムツX2を組立てることができる。
【0107】
このようなオムツ組立てキットは、オムツX2を簡易に作製するのに適し、従って、オムツX2の製造コストを低減するのに適する。複合ユニットU1,U2については、使い捨てオムツ組立てキットの形態で使用者に販売してもよいし(この場合、使用者による複合ユニットU1,U2の組付け作業を経てオムツX2が形成される)、オムツX2の製造ラインで組み付けてもよい。
【0108】
オムツX2は、好ましくは、所定の態様で折り畳まれた状態で使用者に提供される。折り畳まれたオムツX2においては、膨張展開部51は、まだ膨張展開していない状態にある(即ち、膨張展開部51のバルーン壁51Bは、収容部40内で膨張していない状態にある)。
【0109】
以上のようなオムツX2においては、例えばオムツX2が着用される前に、収容補助部50のバルーン壁51Bが収容部40内で膨張される。これにより、
図15および
図16に示すように、収容部40内に排泄便の収容空間Sが形成される。オムツX2は、その着用者の肛門に当接パッド30の開口部30aが対向する位置および姿勢で当接パッド30が着用者の臀裂部に当接するように、使用者に着用される。そして、着用者から排泄される便は、着用者の臀裂部に当接する当接パッド30の開口部30aに受容され、収容部40へと導かれる。
【0110】
オムツX2は、上述のように、オムツ本体部10の外装内側シート12と外装外側シート13との間に、排泄便を収容するための収容部40を備える。このような構成は、着用者からの排泄便を着用者身体から隔てた状態で留め置くのに適し、従って、着用者の身体が排泄便で汚れることを抑制するのに適する。そして、オムツX2について、収容部40内に排泄便が収容された状態でオムツ替え作業が行われる場合、作業者の手など身体は、汚れにくい。
【0111】
また、本発明のオムツX2は、上述のように、排泄便受容口である開口部30aを有して着用者臀裂部に当接可能な当接パッド30(臀裂対向部)を備える。このような構成は、着用者からの排泄便を適切に受けて収容部40に導くのに役立ち、従って、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに役立つ。
【0112】
加えて、オムツX2は、上述のように収容補助部50を備える。収容補助部50は、バルーン壁51Bを含む膨張展開部51を備える。バルーン壁51Bは、エア注入によって膨張・起立して収容部40内に所定の空間を形成する。バルーン壁51Bは、収容部40内において、クッション性を有しつつ空間を確保できる。このようなバルーン壁51BをオムツX2が具備することは、収容部40内に排泄便の収容空間Sを確保・維持するのに適し、従って、収容部40に既に収容された排泄便が開口部30aから着用者身体側に漏出(逆流)することを抑制するのに適する。排泄便の逆流の抑制は、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに役立つ。また、バルーン壁51Bがエア注入によって膨張・起立すること、および、膨張・起立したバルーン壁51Bがクッション性を有することは、バルーン壁51B内のエア圧を利用して当接パッド30を着用者臀裂部に向けて付勢するのに適し、従って、着用者臀裂部に対する当接パッド30の良好な当接状態を実現するのに適する。このことは、着用者からの排泄便を当接パッド30の開口部30aが適切に受け容れて収容部40に導くのに役立つ。バルーン壁51Bがクッション性を有することは、オムツX2において、着用者への異物感を低減して良好な装着感を実現するのにも役立つ。
【0113】
以上のように、オムツX2では、その着用時において、当接パッド30と、収容部40と、収容補助部50とが、汚れ抑制に向けて協働する。したがって、オムツX2は、着用者やオムツ替え作業者が排泄便で汚れることを抑制するのに適する。また、このような汚れ抑制は、オムツ替え作業者等が感染症に罹患することを防止するのに役立ち、ひいては、感染症の蔓延防止に役立つ。
【0114】
収容補助部50は、上述のように、エア注入口52aを有するチューブ52を備える。このような構成によると、チューブ52のエア注入口52aから膨張展開部51ないしそのバルーン壁51Bの内部にエアを注入できる。したがって、当該構成は、バルーン壁51Bを適切に膨張・起立させるのに適する。また、チューブ52としては、バルーン壁51B内にエア注入されたエアの逆流を防止する弁(逆流防止弁)を備えるものを採用してもよい。その場合、収容補助部50はキャップ53を備えなくてもよい。
【0115】
収容補助部50は、上述のように、チューブ52のエア注入口52aを閉塞可能なキャップ53を有する。このような構成においては、チューブ52を介してバルーン壁51Bにエア注入した後、キャップ53によってチューブ52のエア注入口52aを閉塞できる。したがって、当該構成は、バルーン壁51Bの膨張・起立状態を長時間にわたって維持するのに適する。
【0116】
オムツX2においては、上述のように、当接パッド30がチューブ挿通孔52bを有し、チューブ52は、チューブ挿通孔52bを通ってエア注入口52aがオムツ本体部10の内方側に臨む。このような構成は、オムツX2の設計上、当接パッド30の開口部30aの開口面積を確保しつつ、バルーン壁エア注入用のチューブ52を効率よく配置するのに適する(即ち、チューブ52については、開口部30aを通るように配置する必要がない)。
【0117】
バルーン壁51Bは、上述のように、内部が互いに連通している複数のバルーン部Bを備える。このようなバルーン壁51Bは、各バルーン部B(バルーン部B1,B2,B3)の形状・配置についての適宜の設計により、膨張後のバルーン壁51Bの全体形状について自由度高く設計するのに適する。
【0118】
膨張後のバルーン壁51Bは、上述のように、対向する一対の遊端部F,F(
図17に示す)を有する囲み形状を有する。このようなバルーン壁51Bは、オムツ着用時の収容部40内において、バルーン壁51B自体の耐荷重性を確保しつつ、大きな収容実効容積を確保するうえで好ましい。収容部40内において、着用者からの排泄便が、囲み形状を有するバルーン壁51Bによって囲まれた部分空間に一旦収容された場合、当該排泄便は、バルーン壁51B(囲み形状)における二つの遊端部F,Fの間を通って部分空間外に移動しうる。そのため、収容部40における部分空間外の空間も、収容空間Sの一部として実効的に機能できる。
【0119】
膨張展開部51のバルーン壁51Bは、他の形状を有してもよい。
図22は、複合ユニットU2の一変形例を表す。
図22に示す複合ユニットU2において、バルーン壁51Bは、互いに離れた二つのバルーン壁Ba,Bbを有する(バルーン壁Ba,Bbの内部は互いに連通している)。
【0120】
当接パッド30は、上述のように、肛門まわりに密接するためのクッション材32を開口部30aまわりに有する。このような構成は、着用者臀裂部に対する当接パッド30の良好な当接状態を実現するのに役立ち、従って、着用者からの排泄便を当接パッド30の開口部30aによって適切に受容して収容部40に導くのに役立つ。また、当接パッド30がクッション材32を有することは、オムツX2において、着用者への異物感を低減して良好な装着感を実現するのにも役立つ。
【0121】
当接パッド30において、チューブ貫通孔30bは、開口部30aと繋がってなくてもよい。チューブ貫通孔30bは、
図23に示すように、開口部30aから離れていてもよい。
図23に示すチューブ貫通孔30bは、当接面32Aにおいて、開口部30aから離れた位置で開口している。チューブ52は、そのようなチューブ貫通孔30bに配置されてもよい。
【0122】
当接パッド30において、チューブ貫通孔30bは、
図24に示すように、当接パッド30ないしそのクッション材32の側面において、開口してもよい。チューブ52は、そのようなチューブ貫通孔30bに配置されてもよい。
【0123】
当接パッド30ないしそのクッション材32は、上述のような山型形状とは異なる形状を有してもよい。例えば、当接パッド30ないしそのクッション材32は、
図25に示すように、着用者身体側の少なくとも露出面側が全体として平坦な形状(但し柔軟素材よりなる)を有してもよい。
【0124】
オムツX2は、上記の各変形例の適宜の組み合わせを含む構成を具備してもよい。
【0125】
以上のまとめとして、本発明の構成およびそのバリエーションを以下に付記として列挙する。
【0126】
〔付記1〕
外装内側シートおよび外装外側シートを含む多層構成を有するオムツ本体部と、
着用者の臀裂部に当接可能であり、且つ排泄便を受けるための受容開口部を有する、臀裂対向部と、
着用者身体から隔てて排泄便を収容するための収容部であって、前記外装内側シートおよび前記外装外側シートの間に位置し、且つ、前記受容開口部と連通している収容部と、
エア注入によって前記収容部内で膨張可能なバルーン壁を含む膨張展開部を備え、膨張したバルーン壁が前記収容部内に排泄便の収容空間を形成する、収容補助部と、を備える使い捨てオムツ。
〔付記2〕
前記収容補助部は、前記エア注入のためのエア注入口を有するチューブを備える、付記1に記載の使い捨てオムツ。
〔付記3〕
前記臀裂対向部はチューブ挿通孔を有し、
前記チューブは、前記チューブ挿通孔を通って前記エア注入口が前記オムツ本体部の内方側に臨む、付記2に記載の使い捨てオムツ。
〔付記4〕
前記チューブは、前記外装外側シートを貫通して前記エア注入口が前記オムツ本体部の外側に臨む、付記2に記載の使い捨てオムツ。
〔付記5〕
前記収容補助部は、前記エア注入口を閉塞可能なキャップを有する、付記2から4のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
〔付記6〕
前記バルーン壁は、内部が互いに連通している複数のバルーン部を有する、付記1から5のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
〔付記7〕
前記複数のバルーン部は、第1バルーン部、第2バルーン部および第3バルーン部を含み、
前記第1および第2バルーン部は、第1方向に互いに離隔し、且つ、当該第1方向と交差する第2方向および第3方向に延び、
前記第3バルーン部は、前記第1および第2バルーン部の間で前記第1方向と前記第3方向とに延びて前記第1および第2バルーン部の間を連結している、付記6に記載の使い捨てオムツ。
〔付記8〕
前記バルーン壁は、対向する一対の遊端部を有する囲み形状を有する、付記1から7のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
〔付記9〕
前記囲み形状は、U字形状、コの字形状または馬蹄形状である、付記8に記載の使い捨てオムツ。
〔付記10〕
前記臀裂対向部は、肛門まわりに密接するためのクッション材を前記受容開口部まわりに有する、付記1から9のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
〔付記11〕
前記臀裂対向部は、前記クッション材における着用者身体側の表面に、肛門まわりに貼着するための粘着部を有する、付記10に記載の使い捨てオムツ。
〔付記12〕
前記臀裂対向部は、肛門まわりに貼着するための粘着部を前記受容開口部まわりに有する、付記1から10のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
〔付記13〕
前記オムツ本体部は、前記外装内側シートよりも着用者側に位置するトップシートを更に含む多層構成を有し、
前記トップシートと前記外装内側シートとの間に位置する吸収ユニットを更に備える、付記1から12のいずれか一つに記載の使い捨てオムツ。
〔付記14〕
互いに別体の第1複合ユニットおよび第2複合ユニットを備え、
前記第1複合ユニットは、
シート開口部を有する外装内側シートおよび外装外側シートを含む多層構成を有するオムツ本体部と、
前記外装内側シートおよび前記外装外側シートの間に位置し、且つ、前記シート開口部を介してオムツ本体部外と連通している、収容部とを備え、
前記第2複合ユニットは、
排泄便を受けるための受容開口部を有する臀裂対向部と、
エア注入によって膨張可能なバルーン壁を含む膨張展開部を備え、前記収容部内での前記バルーン壁の膨張によって前記収容部内に排泄便の収容空間を形成可能な、収容補助部とを備え、
前記第1複合ユニットおよび前記第2複合ユニットにおいて、前記シート開口部を介して前記膨張展開部が前記収容部内に挿入され、且つ前記臀裂対向部の前記受容開口部と前記収容部とが連通する、前記第1および第2複合ユニットの合体により、付記1から13のいずれか一つに記載の使い捨てオムツを組立て可能である、使い捨てオムツ組立てキット。
【符号の説明】
【0127】
X1,X2 オムツ(使い捨てオムツ)
U1 複合ユニット(第1複合ユニット)
U2 複合ユニット(第2複合ユニット)
D1 第1方向
D2 第2方向
D3 第3方向
10 オムツ本体部
11 トップシート
12 外装内側シート
12a 開口部(シート開口部)
13 外装外側シート
20 吸収ユニット
30 当接パッド(臀裂対向部)
30a 開口部(受容開口部)
30b チューブ挿通孔
31 ベース部
32 クッション材
33,34 粘着部
40 収容部
50 収容補助部
51 膨張展開部
51A 天蓋部
51B バルーン壁
52 チューブ
52a エア注入口
53 キャップ
S 収容空間
【要約】
【課題】着用者身体が排泄便で汚れることを抑制するのに適した使い捨てオムツを提供する。
【解決手段】本発明の使い捨てオムツX1は、オムツ本体部10と、当接パッド30(臀裂対向部)と、収容部40と、収容補助部50とを備える。オムツ本体部10は、外装内側シート12および外装外側シート13を含む多層構成を有する。当接パッド30は、着用者の臀裂部に当接可能であり、且つ、排泄便を受けるための開口部30a(受容開口部)を有する。収容部40は、外装内側シート12および外装外側シート13の間に位置し且つ開口部30aと連通し、着用者身体から隔てて排泄便を収容する。収容補助部50は、エア注入によって収容部40内で膨張可能なバルーン壁51Bを含む膨張展開部51を備え、膨張したバルーン壁51Bが収容部40内に排泄便の収容空間Sを形成する。
【選択図】
図5