(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】次亜塩素酸水の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 11/04 20060101AFI20240822BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20240822BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20240822BHJP
B01J 47/15 20170101ALI20240822BHJP
B01J 47/02 20170101ALI20240822BHJP
【FI】
C01B11/04
B01J39/05
C02F1/50 531M
C02F1/50 540B
C02F1/50 560D
C02F1/50 550L
B01J47/15
B01J47/02
(21)【出願番号】P 2021086349
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】520124958
【氏名又は名称】パークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】緒方 康夫
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117422(JP,A)
【文献】特開2011-068521(JP,A)
【文献】特開2019-202907(JP,A)
【文献】特開2020-040927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/05
B01J 47/02
B01J 47/15
C01B 11/04-11/06
C02F 1/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、
前記強酸性陽イオン交換樹脂へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、
前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を
1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法。
【請求項2】
次亜塩素酸水製造装置の樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、
前記次亜塩素酸水製造装置は、それぞれに前記強酸性陽イオン交換樹脂が充填され直列に接続された複数の樹脂充填用タンクを備え、流路の切り替えを行うことで各樹脂充填用タンクの間又は前記直列に接続された複数の樹脂充填用タンクのうち最後の樹脂充填用タンクの取り出し口から次亜塩素酸水を取り出し可能に構成したものであり、
前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を
前記次亜塩素酸塩の水溶液が通過する前記樹脂充填用タンクの数を違えて変化させ前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を前記所定の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法。
【請求項3】
次亜塩素酸塩の水溶液を
樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、
前記強酸性陽イオン交換樹脂へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、
前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量が、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部をイオン交換するのに不十分な量となるよう前記所定の供給量を
1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上に調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜塩素酸水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品工場や厨房、病院など、衛生面において特に注意を要する場所では、細菌やウイルス等による微生物汚染を消毒するために塩素系の消毒剤が広く用いられている。
【0003】
中でも次亜塩素酸水は、次亜塩素酸塩の水溶液と比較して殺菌・消毒の効果が高く、対象物に噴霧して清拭したり浸漬することで処理を容易に行うことができる。
【0004】
次亜塩素酸水の調製は、例えば、電解法や二液法により行うことができる。しかしながら電解法は、電解槽を備えた装置を必要とするためメンテナンス費用などが高価であり、また電極も使用に伴って劣化することから部品交換などのコストもかかる。
【0005】
また二液法は、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩酸などの酸液を混合することでpHを酸性側に調整する方法であり、安価ではあるものの塩素ガスの発生のおそれがあるため、作業安全上十分な注意が必要となる。
【0006】
この点、更なる別法として既に提案されている強酸性陽イオン交換樹脂を使用する方法によれば、比較的安全に低コストにて次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHを下げることができ、次亜塩素酸水の製造を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の二液法ほどではないものの、強酸性陽イオン交換樹脂を使用する方法によっても塩素ガスの発生が見られる場合がある。特に、製造の都度変化する製造現場の気温や水温など各種条件に由来して塩素ガスが発生する場合もあり、このような塩素の発生に対して対応可能な次亜塩素酸水の製造方法が求められていた。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止可能な次亜塩素酸水の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法では、(1)樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記強酸性陽イオン交換樹脂へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することとした。
【0012】
また、本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法では、(2)次亜塩素酸水製造装置の樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記次亜塩素酸水製造装置は、それぞれに前記強酸性陽イオン交換樹脂が充填され直列に接続された複数の樹脂充填用タンクを備え、流路の切り替えを行うことで各樹脂充填用タンクの間又は前記直列に接続された複数の樹脂充填用タンクのうち最後の樹脂充填用タンクの取り出し口から次亜塩素酸水を取り出し可能に構成したものであり、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を前記次亜塩素酸塩の水溶液が通過する前記樹脂充填用タンクの数を違えて変化させ前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を前記所定の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することとした。
【0013】
また、本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法では、(3)次亜塩素酸塩の水溶液を樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記強酸性陽イオン交換樹脂へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量が、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部をイオン交換するのに不十分な量となるよう前記所定の供給量を1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上に調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することとした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記強酸性陽イオン交換樹脂へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することとしたため、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止可能な次亜塩素酸水の製造方法を提供することができる。
【0015】
また、前記次亜塩素酸水の調整目標pHは3.2~6.9であることとすれば、次亜塩素酸イオン(ClO-)に比して分子状の次亜塩素酸(HClO)の含有割合が多い次亜塩素酸水を堅実に製造することができる。
【0016】
また、前記充填体へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、供給量は前記充填体を構成する1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上とすれば、塩素ガスの発生をより堅実に防止しながらも、効率的に次亜塩素酸水の製造を行うことができる。
【0017】
また、前記次亜塩素酸塩水溶液の調製用水は、純水又は脱イオン水であることをとすれば、次亜塩素酸塩を構成する金属イオン以外との間の余分なイオン交換を抑制することができ、過剰なpHの低下に由来する塩素ガスの発生を防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る次亜塩素酸水の製造方法によれば、次亜塩素酸水製造装置の樹脂ベッドを構成する強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記次亜塩素酸水製造装置は、それぞれに前記強酸性陽イオン交換樹脂が充填され直列に接続された複数の樹脂充填用タンクを備え、流路の切り替えを行うことで各樹脂充填用タンクの間又は前記直列に接続された複数の樹脂充填用タンクのうち最後の樹脂充填用タンクの取り出し口から次亜塩素酸水を取り出し可能に構成したものであり、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を前記次亜塩素酸塩の水溶液が通過する前記樹脂充填用タンクの数を違えて変化させ前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を前記所定の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することとしたり、また、前記強酸性陽イオン交換樹脂へ供給する次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸塩濃度は550~650ppmであり、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量が、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部をイオン交換するのに不十分な量となるよう前記所定の供給量を1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上に調節することとしたため、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止可能な次亜塩素酸水の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る次亜塩素酸水製造装置の構成を示した説明図である。
【
図2】変形例に係る次亜塩素酸水製造装置の構成を示した説明図である。
【
図3】イオン交換部の各タンク態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、次亜塩素酸塩水溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法に関するものであり、特に、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止可能な次亜塩素酸水の製造方法を提供するものである。
【0021】
次亜塩素酸塩水溶液は、水に次亜塩素酸塩を溶解させることで調製できる。また、調製に使用する次亜塩素酸塩は、市販の材料および当業者に周知の方法によって製造された材料を使用できる。その一例としては、例えば次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム等とすることができ、またこれら複数を併用することも可能である。
【0022】
また、次亜塩素酸塩水溶液の調製に利用する水は特に限定されるものではないが、純水や脱イオン水を使用するのが好ましい。
【0023】
次亜塩素酸塩水溶液の調製用水としては、次亜塩素酸塩に由来する金属イオン以外であり強酸性陽イオン交換樹脂との間でイオン交換可能な金属イオン(以下、夾雑イオンともいう。)を含まない水、例えば水の硬度に関与するようなカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを含まない水が好適である。特に、調製用水として純水や脱イオン水を使用することにより、夾雑イオンを含む水を調製用水として使用した場合に比して、イオン交換後のpHの低下に由来する塩素ガスの発生をより堅実に抑制することができる。
【0024】
次亜塩素酸塩水溶液の濃度は特に限定されるものではなく、任意の濃度の溶液を使用することができる。
【0025】
強酸性陽イオン交換樹脂は、次亜塩素酸塩を構成する金属イオンとイオン交換可能で水素イオンを遊離できるものであれば特に限定されるものではなく、代表的には交換基としてスルホン酸基を有するイオン交換樹脂を挙げることができる。
【0026】
イオン交換容量としては、例えば水の脱イオン目的で市販されているイオン交換樹脂であれば、通常は気にすることなくいずれでも採用することが可能であると思われるが、敢えて規定するならば、強酸性陽イオン交換樹脂ビーズは1.7~2.2eq/L-resin程度とすることができる。
【0027】
膨潤後のビーズ(粒)径は、その測定方法については厳密に限定されるものではないが、水に膨潤させた際の投影面積円相当径、例えば無作為に選択した粒を平面に撒き、顕微鏡などを用いて上方より観察した際に粒が占める平面的な面積と同面積の円の径が0.7~1.3mmの粒径のものであったり、同範囲の調和平均径を有するものを好適に使用することができる。なお、本明細書において特に断りのない限り、強酸性陽イオン交換樹脂体や強塩基性陰イオン交換樹脂体の粒の径や大きさに関する説明は、いずれも投影面積円相当径と解することができる。強酸性陽イオン交換樹脂ビーズと強塩基性陰イオン交換樹脂ビーズの径の大きさは、同じ大きさでも良いし、異ならせることもできる。
【0028】
そして、本実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法の特徴点としては、次亜塩素酸塩水溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させて次亜塩素酸水を生成するに際し、所定量の強酸性陽イオン交換樹脂を容器やカラムなどに充填して充填体を構築し、この充填体に供給する次亜塩素酸塩水溶液の単位時間あたりの量(以下、単に原料液供給量ともいう。)を調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整する点が挙げられる。
【0029】
このような構成とすれば、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止することができる。
【0030】
また、原料液供給量を調整しつつ生成する次亜塩素酸水溶液の目標pHは、例えばpH3.2~6.9、より好ましくはpH4.5~6.9の範囲内とすることができる。このようなpH値となるように原料液供給量を調整すれば、次亜塩素酸イオン(ClO-)に比して分子状の次亜塩素酸(HClO)の含有割合が多い次亜塩素酸水を堅実に製造することができる。
【0031】
またこの場合の原料液供給量は、次亜塩素酸塩水溶液に含まれる次亜塩素酸塩由来の金属イオンの全てがイオン交換されてしまう流量よりも多い流量であって、また、生成した次亜塩素酸水中の次亜塩素酸の量が効果に実質的に貢献する程度の割合で含まれる量となる流量、例えば次亜塩素酸イオン(ClO-)に比して分子状の次亜塩素酸(HClO)の含有割合が多くなる流量とするのが望ましい。
【0032】
また、本願発明において良好な結果が得られる一態様として、たとえば、次亜塩素酸塩水溶液の濃度を550~650ppmとし、充填体を構成する1Lの強酸性陽イオン交換樹脂あたり60L/h以上となる原料液供給量で次亜塩素酸水の製造を行うこととすれば、塩素ガスの発生をより堅実に防止しながらも、効率的に次亜塩素酸水の製造を行うことができる。
【0033】
ところで、上述してきた本実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法は、強酸性陽イオン交換樹脂と接触させる次亜塩素酸塩水溶液の単位時間あたりの供給量を調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整するものであるが、これは、イオン交換樹脂と次亜塩素酸塩水溶液との接触反応時間をコントロールすることでpHを調整するものと捉えることもできる。
【0034】
このような観点から、本願は、更なる別の態様として、強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を前記所定の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法を提供するものであるとも言える。
【0035】
また同様の観点から、本願は、更なる別の態様として、次亜塩素酸塩の水溶液を強酸性陽イオン交換樹脂に所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量が、前記次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部をイオン交換するのに不十分な量となるよう前記所定の供給量を調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することを特徴とする次亜塩素酸水の製造方法を提供するものであるとも言える。
【0036】
このように、イオン交換樹脂と次亜塩素酸塩水溶液との接触反応時間のコントロールにあたり、イオン交換樹脂の量を、流量との関係において次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部をイオン交換するのに不十分な量としてpHを調整を行うことによっても、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止することができる。
【0037】
また、次亜塩素酸塩は金属と接触することで自己分解が促進されると言われているが、本製造方法ではイオン交換法を採用しているため、金属イオンをほぼ全てイオン交換によって除去できる。したがって、次亜塩素酸水中に金属イオンが残存する他製法と比較して、次亜塩素酸水の製造後の劣化を抑制することが可能であると考えられる。
【0038】
以下、本実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法について、図面を参照しつつ実験結果を参照しながら説明する。
【0039】
図1は、本実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法を行うための次亜塩素酸水製造装置A1の構成を示した説明図である。
【0040】
次亜塩素酸水製造装置A1は、
図1中において長破線で示すように、次亜塩素酸塩水溶液調製部10と、次亜塩素酸水調製部11との2つの部位に大別される。
【0041】
次亜塩素酸塩水溶液調製部10は、次亜塩素酸水製造装置A1が製造する次亜塩素酸水の原料、すなわち次亜塩素酸塩水溶液の調製を主に担う部位であり、純水供給部12と原液供給部13と次亜塩素酸塩水溶液貯留部16とを備えている。
【0042】
純水供給部12は、次亜塩素酸塩水溶液の調製用水として使用する純水を供給するための部位である。純水供給部12は、例えば純水製造装置などから構成しても良いし、予め調製された純水を貯留しておくタンクとすることもできる。
【0043】
純水供給部12にて製造され、又は貯留されていた純水は、純水供給管12aを介して後述の合流部14に供給される。
【0044】
原液供給部13は、次亜塩素酸塩水溶液の調製用原液を供給するための部位である。原液供給部13は、予め調製された高濃度(少なくとも、希釈調製される次亜塩素酸塩水溶液の濃度よりも高い濃度)の次亜塩素酸塩溶液を貯留しておくタンクとしても良く、また、水に次亜塩素酸塩を溶解して調製用原液を調製する調合タンクの如き設備とすることもできる。なお、調製用原液を調合可能な設備とする場合、原液調製用の水もまた純水とするのが望ましい。
【0045】
原液供給部13にて調合され、又は貯留されていた調製用原液は、原液供給管13aを通じ合流部14に供給される。
【0046】
またこの原液供給管13aを通じた調製用原液の送液は、定量ポンプ15を介して行うこととしており、前述の純水供給管12aを流れる純水の量に対し、所望の次亜塩素酸塩水溶液の濃度とするのに必要な量の調製用原液を送液することで、次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に所望の濃度の次亜塩素酸塩水溶液が調製されるよう構成している。なお、このような定量ポンプ15の制御は、定量ポンプ15と電気的に接続された制御部20が行うこととしており、例えば、純水供給管12aに設けられた図示しない流量センサからの純水流量情報を受信し、流量に応じて所望する次亜塩素酸塩水溶液の濃度に必要な量の調製用原液を算出し、これに応じた回転数となるよう定量ポンプ15を制御して合流部14へ送液すべく構成することもできる。また、純水供給管12aを流れる純水の量が元々一定量であるならば、ここまで複雑でなくとも、所望する次亜塩素酸塩水溶液の濃度に必要な量の調製用原液が定量供給されるよう構成すれば良い。
【0047】
合流部14は、純水供給管12aより供給された純水と、原液供給管13aより供給された調製用原液とが合流する部位である。このように流路上にて純水と調製用原液とを合流させることとしているため、次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に到達する前に予備混合が行われることとなり、両者をバッチ調合する場合に比して均一に混合された次亜塩素酸塩水溶液を速やかに得ることができる。
【0048】
合流部14にて合流し、予備的に混合された純水と調製用原液は、その後混液供給管14aを介して次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に至る。
【0049】
次亜塩素酸塩水溶液貯留部16は、次に述べる次亜塩素酸水調製部11の構成部位でもあり、次亜塩素酸水の調製原料である次亜塩素酸塩水溶液を貯留する部位である。必要に応じてではあるが、先述の合流部14における予備的な混合に加えて更なる混合が必要である場合には、次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に攪拌機等を設けて貯留中の次亜塩素酸塩水溶液の均一化を図るようにすることもできる。
【0050】
次に、次亜塩素酸水調製部11について説明する。次亜塩素酸水調製部11は、次亜塩素酸塩水溶液調製部10にて調製された次亜塩素酸塩水溶液を原料として次亜塩素酸水の製造を担う部位であり、次亜塩素酸塩水溶液貯留部16とイオン交換部17と製品タンク18とを備えている。
【0051】
次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に貯留された次亜塩素酸塩水溶液は、水溶液供給管16aを通じてイオン交換部17へ供給される。
【0052】
ここで、水溶液供給管16aを通じて供給される次亜塩素酸塩水溶液は、水溶液供給管16aの中途に配設した水溶液供給ポンプ19によって送給されるのであるが、その送給量は、水溶液供給ポンプ19と電気的に接続された制御部20により制御可能に構成している。仮にここでは、制御部20の制御下において、水溶液供給ポンプ19は所定の最小流量Fmin~最大流量Fmaxまでの間で次亜塩素酸塩水溶液の単位時間あたりの供給量を変更し調節できるものとする。
【0053】
また、所定の流量にて次亜塩素酸塩水溶液が供給されるイオン交換部17は、樹脂充填用タンク21を配して構成しており、同樹脂充填用タンク21の内部には、次亜塩素酸塩水溶液と反応させるための強酸性陽イオン交換樹脂ビーズを集合させてなる樹脂ベッド21aが形成されている。
【0054】
供給された次亜塩素酸水溶液は、この樹脂ベッド21aの内部を浸透しつつ樹脂ビーズと接触することにより、次亜塩素酸塩由来の金属イオンと強酸性陽イオン交換樹脂の官能基との間でイオン交換の反応が行われ、pHの低下と共に分子状の次亜塩素酸が生成することになる。
【0055】
ここで、樹脂ベッド21aを構成する強酸性陽イオン交換樹脂の量は、最小流量Fminよりも多く最大流量Fmaxよりも少ない所定の流量F1で次亜塩素酸塩水溶液を供給した際に、次亜塩素酸塩水溶液中に含まれる略全部の次亜塩素酸塩由来の金属イオンをイオン交換反応により処理するために過不足のない量としている。
【0056】
従って、制御部20の制御により水溶液供給ポンプ19で供給する次亜塩素酸塩水溶液の供給量を所定の流量F1より多く最大流量Fmaxまでの間で調節すると、次亜塩素酸塩由来の金属イオンの一部はイオン交換反応に供されることがなく、反応が十分に終わらないまま樹脂ベッド21aを通り抜けることとなり、それゆえ強酸性陽イオン交換樹脂より遊離する水素イオンもまた減少する。また供給量がより増加すれば、素通りする次亜塩素酸塩水溶液の量も増えるため、この傾向はより顕著に現れることとなる。
【0057】
このように、次亜塩素酸塩の水溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、強酸性陽イオン交換樹脂と接触させる次亜塩素酸塩水溶液の単位時間あたりの供給量を調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することが可能となる。
【0058】
また、この方法は、強酸性陽イオン交換樹脂に次亜塩素酸塩の水溶液を所定の供給量にて供給しつつ接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を、次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を前記所定の供給量下にてイオン交換するのに不十分な量とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整するものといえる。
【0059】
また更に付言すれば、本実施形態において、制御部20と、制御部20の制御下で流量の調節を行う水溶液供給ポンプ19は、次亜塩素酸水製造装置A1におけるpH調整手段として機能するとも言える。
【0060】
イオン交換部17を通じて生成されたpH調製済みの次亜塩素酸水は、製品タンク18に収容され、必要に応じ小容量の容器などに分注した上で製品として出荷される。
【0061】
次に、次亜塩素酸水製造装置A1を用い、イオン交換部17への次亜塩素酸塩水溶液の供給量を調節しつつ次亜塩素酸水を調製した例について、試験結果を参照しながら説明する。
【0062】
(次亜塩素酸水製造試験1)
次亜塩素酸水製造装置A1を用い、まずは原料である次亜塩素酸塩水溶液の濃度を約300ppm程度とした場合の、供給量及び樹脂量の違いによるpHの変化や塩素ガスの発生について検討を行った。
【0063】
具体的には、前述の次亜塩素酸塩水溶液調製部10にて次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に約300ppm(303~307ppm)の次亜塩素酸塩水溶液を調製し、これを原料として7L、10L、13Lの強酸性陽イオン交換樹脂で形成した樹脂ベッド17aに所定の供給量にて供給することで、次亜塩素酸水を製造した。
【0064】
イオン交換部17は、樹脂充填用タンク21(Wave Cyber Co., Ltd.(上海)製樹脂充填用タンク744型)を備えており、同樹脂充填用タンク21内に粒状の強酸性陽イオン交換樹脂を収容し樹脂ベッド21aを形成して構築した。樹脂ベッド17aは、強酸性陽イオン交換樹脂をその内形状に従って収容することで行われ、本実施形態では、直径18.2cmで高さは7Lの場合33cm、10Lの場合45cm、13Lの場合57cmの略円柱状の樹脂ベッド17aとした。表1に、各実験の条件とその結果を示す。
【表1】
【0065】
表1に示す試験1-1~試験1-8の結果からわかるように、次亜塩素酸塩水溶液の濃度を300ppm程度とした際の次亜塩素酸水の濃度やイオン交換樹脂量、流速との関係について検討すると、樹脂量が7Lの場合は少なくとも供給量を72L/h以上とし、樹脂量が10Lの場合は少なくとも100L/h以上とし、樹脂量が13Lの場合は少なくとも82L/h以上とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHの値を3.0以上としつつ塩素ガスの発生を回避できることが示された。
【0066】
(次亜塩素酸水製造試験2)
次に、前述の(次亜塩素酸水製造試験1)と同様に次亜塩素酸水製造装置A1を用い、原料である次亜塩素酸塩水溶液の濃度を倍の約600ppm程度(584~682ppm)とした場合の、供給量及び樹脂量の違いによるpHの変化や塩素ガスの発生について検討を行った。表2に、各実験の条件とその結果を示す。
【表2】
【0067】
表2に示す試験2-1~試験2-16の結果からわかるように、次亜塩素酸塩水溶液の濃度を600ppm程度とした際の次亜塩素酸水の濃度やイオン交換樹脂量、流速との関係について検討すると、樹脂量が3Lの場合は供給量を25~65L/hの範囲において塩素ガスの発生が確認され、90L/hとした場合でもわずかに塩素ガスの発生が確認された。供給量を160L/hとした場合、塩素ガスの発生を回避できた。
【0068】
また、樹脂量を5Lとした場合、供給量が168L/hでは塩素ガスの発生が確認されたが、少なくとも供給量を250L/h以上とすることで塩素ガスの発生を回避できた。
【0069】
また、樹脂量が7Lの場合は少なくとも供給量を420L/h以上とし、樹脂量が10Lの場合は少なくとも600L/h以上とすることで、生成する次亜塩素酸水のpHの値を3.0以上としつつ塩素ガスの発生を回避できることが示された。
【0070】
また、本次亜塩素酸水製造試験2について本発明者らの経験を踏まえつつ総合的に勘案すると、原料である次亜塩素酸塩水溶液の濃度を約600ppm程度(584~682ppm)とした場合は、下記式(I)
供給目安量(L/h)=樹脂量(L)×60 (I)
にて算出される供給目安量以上の供給量で原料である次亜塩素酸塩水溶液をイオン交換部17に対して供給することで、生成する次亜塩素酸水のpHの値をより好ましい3.15以上としつつ塩素ガスの発生を回避できることが示された。ただし、所定の樹脂量に対して過剰な量の次亜塩素酸塩水溶液を供給すると、次亜塩素酸塩水溶液と強酸性陽イオン交換樹脂との間での反応効率が極端に低下し、次亜塩素酸塩水溶液の次亜塩素酸水化が妨げられる場合が考えられる。そこで、このような問題を解消するためには、上記式(I)にて算出される要求目安量以上であり、生成される次亜塩素酸水のpHが6.9を超えない程度の供給量とするのが望ましい。
【0071】
また併せて、生成される次亜塩素酸水のpHを調整するにあたり、樹脂充填用タンクの容量分だけは時間を要するものの概ね即時的に調整でき、しかも、例えば酸液でpHの調整を行うときのように少しの量で大きくpHが変動してしまうなど、過度にデリケートな作業が要求されることなく柔軟であり、pHの調節を容易に行えることが示された。
【0072】
(次亜塩素酸水製造装置の変形例)
次に、変形例に係る次亜塩素酸水製造装置A2について、
図2を参照しながら説明する。次亜塩素酸水製造装置A2は、次亜塩素酸塩水溶液調製部10の部分については前述の次亜塩素酸水製造装置A1と同様であり、また、次亜塩素酸水調製部11についても概ね同様の構成としているが、イオン交換部17の構成が異なっている。
【0073】
すなわち、前述の次亜塩素酸水製造装置A1では、一つの樹脂充填用タンク21にてイオン交換部17を構成していたが、次亜塩素酸水製造装置A2では複数(3つ)の樹脂充填用タンク31~33を備え、流路の切り替えを行うことで、通過する樹脂充填用タンクの数を違えて次亜塩素酸水の製造を行うことができるよう構成している。以下、次亜塩素酸水製造装置A2について説明するが、前述の通り次亜塩素酸塩水溶液調製部10は次亜塩素酸水製造装置A1と同様であるため説明を省略し、次亜塩素酸水調製部11をメインに説明する。
【0074】
次亜塩素酸水製造装置A2において次亜塩素酸水調製部11は、前述の次亜塩素酸水製造装置A1と同様に、次亜塩素酸塩水溶液貯留部16と、イオン交換部17と製品タンク18で構成している。
【0075】
次亜塩素酸塩水溶液貯留部16に貯留された次亜塩素酸塩水溶液は、水溶液供給管16aを通じてイオン交換部17へ供給される。
【0076】
ここで、水溶液供給管16aを通じて供給される次亜塩素酸塩水溶液は、水溶液供給管16aの中途に配設した水溶液供給ポンプ19によって送給されるのであるが、その送給量は、水溶液供給ポンプ19と電気的に接続された制御部20により制御可能に構成している。
【0077】
また、所定の流量にて次亜塩素酸塩水溶液が供給されるイオン交換部17は、樹脂充填用タンク31~33を直列に接続し、樹脂充填用タンク31と樹脂充填用タンク32との間、樹脂充填用タンク32と樹脂充填用タンク33との間、及び樹脂充填用タンク33の取り出し口の3箇所から適宜切り替えを行うことで製品タンク18に次亜塩素酸水を取り出すことができるように構成している。
【0078】
具体的に説明すると、樹脂充填用タンク31の吐出管31bに三方バルブ35の流入口を接続する一方、同三方バルブ35の2つの流出口には製品取出管40と次タンク供給管31cとを接続し、樹脂ベッド31aを通じて吐出管31bから吐出された液を次亜塩素酸水として製品取出管40へ流す「取出位置」、又は次の樹脂充填用タンク32へ供給すべく次タンク供給管31cへ流す「送り位置」との間で切替可能に構成している。
【0079】
吐出管31bより三方バルブ35を介して製品取出管40へ吐出させた液は、次亜塩素酸水として製品タンク18へ至り貯留される。一方、三方バルブ35を介して次タンク供給管31cへ吐出させた液は、樹脂充填用タンク32に供給される。
【0080】
樹脂充填用タンク32も樹脂充填用タンク31と同様、吐出管32bに三方バルブ36の流入口を接続する一方、同三方バルブ36の2つの流出孔には製品取出管40と次タンク供給管32cとを接続し、樹脂ベッド32aを通じて吐出管32bから吐出された液を次亜塩素酸水として製品取出管40へ流す「取出位置」、又は次の樹脂充填用タンク33へ供給すべく次タンク供給管32cへ流す「送り位置」との間で切替可能に構成している。
【0081】
吐出管32bより三方バルブ36を介して製品取出管40へ吐出させた液は、次亜塩素酸水として製品タンク18へ至り貯留される。一方、三方バルブ36を介して次タンク供給管32cへ吐出させた液は、樹脂充填用タンク33に供給される。
【0082】
樹脂充填用タンク33の吐出管33bには、バルブ37の流入口を接続し、流出孔には製品取出管40を接続している。そして、樹脂ベッド33aを通じて吐出管33bから吐出された液を次亜塩素酸水として製品取出管40へ流す「取出位置」、又は遮断する「遮断位置」との間で切り替え可能に構成している。
【0083】
そして、例えば
図2に示すように、三方バルブ35,36を送り位置、バルブ37を取出位置とした状態では、3つの樹脂ベッド31a,32a,33aを経た液が次亜塩素酸水として製品タンク18に貯留される。以下、この態様を三連タンク態様という。
【0084】
また、
図3(a)に示すように、三方バルブ35を送り位置、三方バルブ36を取出位置、バルブ37を遮断位置とした場合には、2つの樹脂ベッド31a,32aを経た液が次亜塩素酸水として製品タンク18の貯留される。以下、この態様を二連タンク態様という。
【0085】
同様に、
図3(b)に示すように、三方バルブ35を取出位置、三方バルブ36を逆流防止のために送り位置とし、バルブ37を遮断位置とすれば、1つの樹脂ベッド31aを経た液が次亜塩素酸水として製品タンク18に貯留されることとなる。以下、この態様を単タンク態様という。
【0086】
このように、次亜塩素酸水製造装置A2のイオン交換部17は、流路の切り替えを行うことで、通過する樹脂充填用タンクの数を違えて次亜塩素酸水の製造を行うことができるようにしている。
【0087】
またここのことは、次亜塩素酸塩水溶液とのイオン交換反応に関与する強酸性陽イオン交換樹脂の樹脂量を変化させることができることを意味している。
【0088】
従って、水溶液供給ポンプ19により水溶液供給管16aを介してイオン交換部17へ所定の流量F2の次亜塩素酸塩水溶液が供給されているものとし、各樹脂ベッド31a,32a,33aを構成する強酸性陽イオン交換樹脂の合計量は、所定の流量F2で次亜塩素酸塩水溶液を供給した際に次亜塩素酸塩水溶液中に含まれる略全部の次亜塩素酸塩由来の金属イオンをイオン交換反応により処理するために過不足のない量であるとした場合、三連タンク態様であれば次亜塩素酸塩水溶液中に含まれる略全部の次亜塩素酸塩由来の金属イオンがイオン交換反応により処理されることとなるが、これを二連タンク態様に変化させることで強酸性陽イオン交換樹脂の合計量が次亜塩素酸塩由来の金属イオンの略全部を所定の供給量F2下にてイオン交換するのに不十分な量となり、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することができる。
【0089】
また同様に、単タンク態様に変化させれば、強酸性陽イオン交換樹脂の合計量をさらに不十分な量とすることができ、三連タンク態様時や二連タンク態様時に生成される次亜塩素酸水と比較して高pHに生成する次亜塩素酸水のpHを調整することができる。
【0090】
上述してきたように、本実施形態に係る次亜塩素酸水の製造方法によれば、次亜塩素酸塩の水溶液を強酸性陽イオン交換樹脂と接触させて次亜塩素酸水を生成する次亜塩素酸水の製造方法において、前記強酸性陽イオン交換樹脂と接触させる前記次亜塩素酸塩水溶液の単位時間あたりの供給量を調節することで、生成する次亜塩素酸水のpHを調整することとしたため、生成される次亜塩素酸水のpHをさほどセンシティブではなく柔軟に、しかもできるだけ即時的に調整でき、より堅実に塩素ガスの発生を防止可能な次亜塩素酸水の製造方法を提供することができる。
【0091】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0092】
12 純水供給部
13 原液供給部
16 次亜塩素酸塩水溶液貯留部
17 イオン交換部
17a 樹脂ベッド
18 製品タンク
19 水溶液供給ポンプ
20 制御部
F1 流量
F2 流量
A1 次亜塩素酸水製造装置
A2 次亜塩素酸水製造装置