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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-21
(45)【発行日】2024-08-29
(54)【発明の名称】薬液注入コントローラ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20240822BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240822BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/142
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021534087
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2020028583
(87)【国際公開番号】W WO2021015281
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019134453
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】阪本 慎吾
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-512167(JP,A)
【文献】特開2008-289720(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098685(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/142
A61M 5/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、
前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、
該メインラインに接続された末端コネクタを保持するコネクタ保持部が設けられており、
該コネクタ保持部による該末端コネクタの保持が該閉止機構を作動させる操作スイッチの操作に伴って解除可能とされる薬液注入コントローラ。
【請求項2】
前記操作スイッチとは別体とされた保持部材に前記コネクタ保持部が設けられており、該コネクタ保持部による前記末端コネクタの保持が該操作スイッチの操作に伴う該保持部材の操作によって解除可能とされる請求項1に記載の薬液注入コントローラ。
【請求項3】
薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、
前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、
該閉止機構を作動させる操作スイッチの操作を阻止する作動阻止機構が設けられており、該作動阻止機構の解除によって該操作スイッチの操作による該閉止機構の作動が可能とされており、且つ、
該操作スイッチとは別体とされた作動阻止部材が該操作スイッチに取り付けられることで該作動阻止機構が構成されている薬液注入コントローラ。
【請求項4】
薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、
前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、
プライミング関連の情報表示機能を有する表示部が設けられていると共に、該閉止機構を作動させる操作スイッチの操作に伴って該表示部の情報表示機能を阻害する表示阻害機構を有する薬液注入コントローラ。
【請求項5】
前記操作スイッチとは別体とされて該操作スイッチに取り付けられた表示部材に前記表示部が設けられており、該操作スイッチの操作に伴って該表示部材が該操作スイッチから取り外されることで該表示部が除去可能とされる請求項に記載の薬液注入コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の持続投与を行う薬液投与装置において自己操作による薬液の急速注入を実行可能とする薬液注入コントローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、持続的な薬液投与を行う薬液投与装置が知られており、例えば鎮痛剤や麻酔剤などを少量ずつ持続的に体内へ投与する際に用いられている。また、薬液投与装置は、例えば、国際公開第2017/098685号(特許文献1)に記載されているように、自己操作によって薬液の急速投与を実行可能とする薬液注入コントローラを備える場合がある。薬液注入コントローラは、薬液を貯留するサブリザーバーを備えており、例えば、患者が押圧操作部材を押し込むなどの自己操作をすることにより、薬液注入コントローラのサブリザーバーに貯留された薬液が患者の体内へ急速投与される。
【0003】
ところで、薬液投与装置は、血管等へ気泡が入るのを防ぐために、使用前に薬液の投与ライン全体をプライミング液で満たすプライミングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/098685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬液投与装置は、少量の薬液を持続的に投与する装置であることから、プライミング液が薬液の投与ラインの全体を満たすまでに時間がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、例えば、薬液の投与ラインにおいて流量を制限する部分に対して、より流量の大きいプライミング用の流路を並列的に設けることにより、プライミングに必要な時間を低減することが考えられる。
【0007】
ところが、プライミング用流路を閉止する閉止機構を設ける場合、プライミング用流路の閉止機構を作動させる順序やタイミングが重要になる。即ち、例えば、プライミング用流路を閉止せずに薬液投与装置の末端コネクタを患者側の留置針などに接続してしまうと、プライミング用流路を通じて過剰な薬液が患者の体内に投与されてしまうおそれがある。例えば、プライミング前に閉止機構を作動させてしまい、プライミング時にプライミング用流路を使用できなってしまうおそれもある。
【0008】
本発明の解決課題は、プライミング用流路の閉止機構を作動させる操作スイッチが、適切なタイミングで正しく操作されない事態を低減することができる、新規な構造の薬液注入コントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0010】
第1の態様は、薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、該メインラインに接続された末端コネクタを保持するコネクタ保持部が設けられており、該コネクタ保持部による該末端コネクタの保持が該閉止機構を作動させる操作スイッチの操作に伴って解除可能とされるものである。
【0011】
本態様の薬液注入コントローラによれば、コネクタ保持部による末端コネクタの保持が、操作スイッチの操作に伴って解除可能となることから、操作スイッチを操作する前に末端コネクタが患者側の流路である留置針などに接続されるのを防ぐことができる。それ故、プライミング用流路が閉止される前に誤って患者側への薬液投与が開始されることがなく、プライミング用流路を通じた薬液の過剰投与が回避される。
【0012】
第2の態様は、第1の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記操作スイッチとは別体とされた保持部材に前記コネクタ保持部が設けられており、該コネクタ保持部による前記末端コネクタの保持が該操作スイッチの操作に伴う該保持部材の操作によって解除可能とされるものである。
【0013】
本態様の薬液注入コントローラによれば、例えば、保持部材を操作スイッチから取り外したり、保持部材を軟質な材質として変形させたりすることによって、コネクタ保持部による末端コネクタの保持を解除可能とすることができる。
【0014】
第3の態様は、薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、該閉止機構を作動させる操作スイッチの操作を阻止する作動阻止機構が設けられており、該作動阻止機構の解除によって該操作スイッチの操作による該閉止機構の作動が可能とされるものである。
【0015】
本態様の薬液注入コントローラによれば、操作スイッチの操作によるプライミング用流路の遮断が、作動阻止機構によって阻止されている。これにより、例えば、プライミングの開始前に操作スイッチを誤って操作することによって、プライミング用流路が閉止されてしまうのを防ぐことができる。プライミングの完了後に作動阻止機構を解除すれば、閉止機構によるプライミング用流路の閉止が可能となる。
【0016】
第4の態様は、第3の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記操作スイッチとは別体とされた作動阻止部材が該操作スイッチに取り付けられることで前記作動阻止機構が構成されているものである。
【0017】
本態様の薬液注入コントローラによれば、プライミング完了前の操作スイッチの誤操作を回避できると共に、プライミング完了後に操作スイッチを操作し忘れることも防止できる。
【0018】
第5の態様は、薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、プライミング関連の情報表示機能を有する表示部が設けられていると共に、該閉止機構を作動させる操作スイッチの操作に伴って該表示部の情報表示機能を阻害する表示阻害機構を有するものである。
【0019】
本態様の薬液注入コントローラによれば、例えば、「プライミング完了前に操作しないこと」とか、「プライミング完了後に忘れずに操作すること」といった文字の他、図、色、順序を表す数字などによる注意喚起や操作方法等のプライミングに関連する情報を表示部に表示させることができる。これにより、医療従事者は、操作スイッチを操作する際に、操作スイッチの操作に関する情報を得ることができる。
【0020】
操作スイッチの操作が完了した状態では、表示部に表示されるプライミング関連の情報は、不要になるだけでなく、患者等を混乱させるおそれもある。そこで、例えば、操作スイッチの操作に伴って表示部を除去可能とするなどの表示阻害機構が設けられることにより、操作スイッチの操作の完了後には、表示部による情報表示機能が阻害される。これにより、操作スイッチの操作の完了後には、不要な情報の表示による患者等の混乱を防ぐことができる。
【0021】
第6の態様は、第5の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記操作スイッチとは別体とされて該操作スイッチに取り付けられた表示部材に前記表示部が設けられており、該操作スイッチの操作に伴って該表示部材が該操作スイッチから取り外されることで該表示部が除去可能とされるものである。
【0022】
本態様の薬液注入コントローラによれば、操作スイッチに取り付けられる別体の表示部材が、操作スイッチから取り外されて、薬液注入コントローラから取り除かれることにより、表示阻害機構が構成される。これにより、表示阻害機構による表示部の情報表示機能の阻害が、簡単に且つ高度に実現される。なお、例えば、操作スイッチの操作工程において表示部材を操作スイッチから取り外す工程を設けることにより、操作スイッチの操作に伴って表示部を取り除いて、表示部による情報表示をなくすこともできる。
【0023】
第7の態様は、第1又は第2の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記保持部材が前記操作スイッチの操作に伴って該操作スイッチから取り外されて該コネクタ保持部による該末端コネクタの保持が解除可能とされるものである。
【0024】
本態様の薬液注入コントローラによれば、操作スイッチの操作完了前には、末端コネクタの患者側への接続を防止すると共に、操作スイッチの操作完了後には、保持部材の取り外しによって末端コネクタの保持が解除可能とされて、末端コネクタの患者側への接続が許容される。
【0025】
第8の態様は、第2又は第7の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、前記閉止機構を作動させる前記操作スイッチの操作を阻止する作動阻止機構が前記保持部材を含んで構成されており、該操作スイッチの操作に伴う該保持部材の操作によって該作動阻止機構が解除されるものである。
【0026】
本態様の薬液注入コントローラによれば、作動阻止機構によって操作スイッチの操作によるプライミング用流路の遮断が阻止されている。これにより、例えば、プライミングの開始前やプライミングの完了前に操作スイッチが誤って操作されてプライミング用流路が閉止されてしまうのを防ぐことができる。
【0027】
操作スイッチの操作に伴う保持部材の変形や操作スイッチからの取外しなどの操作によって作動阻止機構が解除されて、操作スイッチの操作によるプライミング用流路の遮断が可能となる。そして、例えば、プライミング用流路の遮断を完了する操作スイッチの操作に伴って、コネクタ保持部による末端コネクタの保持が解除可能となるようにすれば、末端コネクタをプライミング用流路の遮断前に患者側へ接続することもない。
【0028】
第9の態様は、第2と第7と第8との何れか1つの態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、プライミング関連の情報表示機能を有する表示部が前記保持部材に設けられているものである。
【0029】
本態様の薬液注入コントローラによれば、操作スイッチとは別体の保持部材に表示部を設けることにより、例えば、操作スイッチの操作が完了した状態において、保持部材の変形や取外しによって表示部の情報表示機能が阻害されるようにすることもできる。これによれば、操作スイッチの操作に際して、表示部の表示によって操作方法を確認させたり注意喚起をすることができると共に、操作スイッチの操作が完了した状態では、不要な情報の表示による患者等の混乱を防ぐことができる。
【0030】
第10の態様は、第4の態様に記載された薬液注入コントローラにおいて、プライミング関連の情報表示機能を有する表示部が前記作動阻止部材に設けられているものである。
【0031】
本態様の薬液注入コントローラによれば、操作スイッチとは別体の作動阻止部材に表示部を設けることにより、例えば、操作スイッチの操作が完了した状態において、作動阻止部材の変形や取外しによって表示部の情報表示機能を阻害することもできる。これによれば、操作スイッチの操作に際して、表示部の表示によって操作方法を確認させたり注意喚起をすることができると共に、操作スイッチの操作が完了した状態では、不要な情報の表示による患者等の混乱を防ぐことができる。
【0032】
第11の態様は、薬液を持続投与するメインラインに対してサブラインを介して接続されるサブリザーバーを備えており、自己操作による該サブリザーバーからの薬液の急速投与を可能とする薬液注入コントローラであって、前記メインラインと前記サブラインの少なくとも一方に対してプライミングを行うプライミング用流路と、該プライミング用流路を閉止する閉止機構とが設けられている一方、該閉止機構の操作情報を含むプライミング関連情報の表示機能を有する表示部が設けられているものである。
【0033】
本態様の薬液注入コントローラによれば、例えば、「プライミング完了前に操作しないこと」とか、「プライミング完了後に忘れずに操作すること」といった文字の他、図、色、順序を表す数字などによる注意喚起や操作方法等のプライミングに関連する情報を表示部に表示させることができる。これにより、医療従事者は、操作スイッチを操作する際に、操作スイッチの操作による閉止機構の操作情報等、プライミング関連の情報を得ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、プライミング用流路の閉止機構を作動させる操作スイッチが、適切なタイミングで正しく操作されない事態を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の実施形態としての薬液注入コントローラを備える薬液投与装置の平面図
図2図1に示す薬液投与装置を構成する薬液注入コントローラの斜視図
図3図2の薬液注入コントローラを別の角度で示す斜視図
図4図2に示す薬液注入コントローラの平面図
図5図2に示す薬液注入コントローラの断面図
図6図2に示す薬液注入コントローラを構成する操作スイッチの斜視図
図7図2に示す薬液注入コントローラを構成するタブ部材の斜視図
図8図2に示す薬液注入コントローラを図4のVIII-VIII断面で切断して示す斜視断面図
図9図8に示す薬液注入コントローラを構成する操作スイッチとタブ部材の斜視図
図10図8に示す薬液注入コントローラの斜視断面に相当する図であって、タブ部材を途中まで引き抜いた状態を示す図
図11図8に示す薬液注入コントローラの斜視断面に相当する図であって、操作スイッチを押し込んだ状態を示す図
図12図11に示す薬液注入コントローラを構成する操作スイッチとタブ部材の斜視図
図13図8に示す薬液注入コントローラの斜視断面に相当する図であって、タブ部材を操作スイッチから取り外した状態を示す図
図14】本発明の第2の実施形態としての薬液注入コントローラの斜視図
図15図14に示す薬液注入コントローラを別の角度で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1には、本発明の第1の実施形態としての薬液注入コントローラ10を備える薬液投与装置12が示されている。薬液投与装置12は、内部に貯留された薬液をメインライン14に送り出すメインリザーバー16と、患者の血管などに経皮的に穿刺された図示しない留置針などに接続される末端コネクタ18とが、メインライン14によって接続された構造を有している。更に、メインライン14を構成する外部流路20には、図2~5に示す薬液注入コントローラ10が接続されている。なお、以下の説明において、薬液注入コントローラ10の先端側が図5中の下方であると共に、薬液注入コントローラ10の基端側が図5中の上方である。
【0038】
薬液注入コントローラ10は、図5に示すように、ハウジング22にサブリザーバー24が収容された構造を有していると共に、メインライン14から分岐してサブリザーバー24をメインライン14に繋ぐサブライン26を備えている。サブライン26は、サブリザーバー24よりも上流側の流入ライン28の一部と、サブリザーバー24よりも下流側の流出ライン30の一部とを含んで構成されている。なお、流入ライン28と流出ライン30の端部がそれぞれハウジング22から先端側に露出しており、流入ライン28の端部によって上流側の外部流路20に接続される入口ポートが構成されていると共に、流出ライン30の端部によって下流側の外部流路20に接続される出口ポートが構成されている。なお、薬液注入コントローラ10を示す図2~5と後述する図8,10,11,13では、理解を容易にするために、外部流路20の一部と末端コネクタ18を図示した。
【0039】
ハウジング22は、基端側に開口する略有底円筒形状とされており、内部に収容領域32を備える中空構造とされている。ハウジング22は、第1の半割体22aと第2の半割体22bとを軸直角方向に組み合わせた構造を有している。また、ハウジング22の基端部分には、プッシュボタン34が軸方向(図5中の上下方向)へ相対移動可能に取り付けられている。プッシュボタン34は、内挿状態で配されたコイルスプリング36の弾性によって、ハウジング22の基端部分に弾性的に位置決めされている。コイルスプリング36の先端側には、プランジャ38が設けられており、プランジャ38とプッシュボタン34の軸方向間にコイルスプリング36が介装されている。
【0040】
プランジャ38の先端側には、サブリザーバー24が配されている。サブリザーバー24は、先端に向けて開口する凹形状のダイヤフラム部40と、ダイヤフラム部40の開口を覆蓋するベース部材42とによって構成されている。そして、プランジャ38によってダイヤフラム部40の底壁部が先端側へ押し込まれることによって、サブリザーバー24の容積が変化するようになっている。プッシュボタン34とプランジャ38とサブリザーバー24は、ハウジング22の長手方向である軸方向に直列的に並んで配されている。
【0041】
サブリザーバー24のベース部材42には、流入ライン28と流出ライン30が接続されている。流入ライン28は、サブライン26を構成する部分が分岐しており、制限流路44とプライミング用流路46とが並列的に設けられている。プライミング用流路46は、制限流路44よりも流路断面積が大きくされており、流量が大きくされている。
【0042】
プライミング用流路46上には、プライミング用流路46を閉止可能な閉止機構としての閉止弁48が設けられている。閉止弁48は、図6に示すように、ハウジング22の外周面に露出する操作スイッチ50に一体形成されている。操作スイッチ50は、ハウジング22に対して相対移動可能とされており、操作スイッチ50の操作面52を手指で押し込む押込み操作によって、閉止弁48が開位置から図5に示す閉位置へ移動する。なお、本実施形態の操作スイッチ50は押込み操作されるようになっているが、操作スイッチの操作は、特に限定されず、例えば、ハウジング22の外周側へ引っ張る操作であっても良いし、ハウジング22の軸方向などへのスライド操作であっても良いし、回転操作であっても良い。
【0043】
操作スイッチ50は、薬液投与装置12による薬液の持続投与を開始する前に行われるプライミングの完了後に操作される。即ち、プライミングの完了前には、閉止弁48が開位置にあって、プライミング用流路46が連通状態とされていることから、プライミング液がプライミング用流路46を通じてサブライン26とサブリザーバー24に速やかに充填される。好適には、外部流路20の末端に設けられた末端コネクタ18には、空気の通過を許容しつつプライミング液の通過を阻止するフィルタが設けられており、プライミング液の下流端における流出が防止されている。プライミングの完了後には、操作スイッチ50が押込み操作されることで閉止弁48が閉位置に移動して、プライミング用流路46が遮断状態とされる。これにより、サブライン26の流量が制限流路44によって制限されて、後述する急速投与後にサブリザーバー24への薬液供給に要する時間が適宜に設定される。図5に示す薬液注入コントローラ10は、プライミングが完了して操作スイッチ50が押し込まれ、閉止弁48によってプライミング用流路46が遮断された状態で図示されている。
【0044】
一方、流出ライン30上には、開閉弁54が設けられている。開閉弁54は、流出ライン30におけるサブライン26の構成部分を連通状態と遮断状態に切り替える弁である。例えば、弁体56がコイルスプリング58(後述する図8参照)によって流出ライン30に押し付けられることで、流出ライン30が開閉弁54によって遮断されると共に、弁体56を流出ライン30から離れる方向へ移動させることで、流出ライン30が連通状態に切り替えられる。本実施形態では、プッシュボタン34が押し込まれて移動することにより、弁体56がプッシュボタン34から延び出す図示しない主動片によって、流出ライン30から離れる方向へ押されて移動するようになっている。
【0045】
そして、プッシュボタン34が患者の自己操作によって軸方向で押し込まれると、コイルスプリング36の弾性によってプランジャ38が先端側へ付勢されて、サブリザーバー24が圧縮されると共に、開閉弁54が閉位置から開位置へ移動する。これにより、サブリザーバー24に貯留された薬液が、連通状態とされた流出ライン30を通じて患者側へ急速投与されて、一時的に薬液の投与量が増加する。このように、薬液注入コントローラ10は、薬液投与装置12において、患者の自己操作による薬液の急速投与を実行可能とする。
【0046】
また、急速投与の実行によって薬液の貯留量が減少したサブリザーバー24には、流入ライン28を通じて薬液が供給される。流入ライン28のプライミング用流路46が閉止弁48によって遮断されており、薬液が制限流路44を通じて少量ずつサブリザーバー24に供給されることから、サブリザーバー24への薬液の充填が完了するまでには、所定の時間が必要とされる。これにより、連続的な急速投与による過剰な薬液の投与が回避されている。好適には、サブリザーバー24に所定量の薬液が貯留される前には、再度の急速投与が実行不能とされる。
【0047】
なお、プランジャ38には、径方向外側へ突出する突起状の目印部60が設けられており、図2,4に示すように、目印部60がハウジング22に形成されたスリット62を通じて外部に露出している。そして、目印部60のスリット62内での位置がプランジャ38の移動に伴って変化する。これにより、目印部60がスリット62のどこに位置しているかを目視で確認することによって、サブリザーバー24に貯留された薬液の量を確認できる。本実施形態では、図4に示すように、スリット62の側方に目盛64が設けられており、目印部60の位置に応じたサブリザーバー24内の薬液量をより正確に把握することができる。
【0048】
本実施形態の薬液注入コントローラ10は、メインライン14の流量が三方活栓65によって切替可能とされている。即ち、メインライン14においてハウジング22に収容された部分が並列的に設けられた2つの流路に分岐しており、一方の流路が常時連通状態とされてメインライン14の流量の下限を設定すると共に、他方の流路上に三方活栓65が設けられている。これにより、メインライン14の流量が三方活栓65の切替えによって4段階に切替可能とされており、薬液注入コントローラ10がメインライン14の流量を切り替える流量切替機構を内蔵している。そして、薬液注入コントローラ10を採用することによって、メインライン14を通じて持続投与される薬液の量を変更設定可能とされた流量可変式の薬液投与装置12が構成される。なお、三方活栓65は、外部から切替操作可能であることが望ましい。また、メインライン14の流量の切替えは、必ずしも4段階の切替えに限定されない。流量切替機構は、薬液注入コントローラ10において必須ではなく、メインライン14の流量が変更不能とされていても良い。
【0049】
ところで、操作スイッチ50は、薬液注入コントローラ10の初期状態において、押込み操作不能とされている。即ち、操作スイッチ50は、図6に示すように、貫通孔66が形成されている。この貫通孔66に保持部材としてのタブ部材68が差し入れられて、タブ部材68が操作スイッチ50に取り付けられることにより、操作スイッチ50がタブ部材68に係止されて押込み操作が阻止される。
【0050】
操作スイッチ50の貫通孔66は、ハウジング22の軸方向である第1の方向X(図2,6参照)の幅寸法が、操作スイッチ50のハウジング22に対する移動可能方向である第2の方向Y(図2,6参照)の両端部分において中間部分よりも大きくされている。特に、貫通孔66において操作スイッチ50の操作面52側の端部を構成する抜去部70が、貫通孔66において操作スイッチ50の操作面52と反対側の端部を構成するタブ挿通部72よりも、第1の方向Xでの幅寸法を大きくされている。貫通孔66の抜去部70とタブ挿通部72の間の中間部分は、第1の方向Xの幅寸法が小さくされており、第1の方向Xで貫通孔66の内側へ突出する一対の中間突部74,74が設けられている。
【0051】
操作スイッチ50における操作面52側の端部には、貫通孔66の開口縁部から操作面52の延長方向に向かって延び出す規制突起76が設けられている。規制突起76は、後述する挿入部80の肉抜き94に挿入可能な形状を有している。
【0052】
タブ部材68は、操作スイッチ50とは別体の独立した部材として形成されており、図7に示すように、板状の表示部78と、表示部78から側方へ向かって突出する挿入部80とを備えている。なお、操作スイッチ50における貫通孔66の貫通方向が第1の方向X及び第2の方向Yと略直交する第3の方向Zとされており、操作スイッチ50とタブ部材68の取付状態において、挿入部80の突出方向が第3の方向Zとされる。
【0053】
表示部78は、図4に示すように、表面が文字や図形、色、順序(手順)を表す数字などを表記する表示面82とされている。表示面82には、例えば、「必ずプライミングしてタブを引いてからスイッチを押し込んだ後、使用すること」など、操作スイッチ50の操作に関する注意喚起文等のプライミング関連の情報が表示されている。このように、表示部78は、プライミング関連の情報を表示する情報表示機能を有している。文字や図形、色、順序を表す数字などによる表示面82の表示は、例えば、印刷等の着色による表示の他、凹凸による表示、シール(貼紙)の貼付などが採用される。操作スイッチ50とは別体の表示部材が、表示部78を備えるタブ部材68によって構成されている。
【0054】
タブ部材68における表示部78の裏面側には、図7に示すように、コネクタ保持部84が設けられている。コネクタ保持部84は、板状とされており、表示部78の裏面から突出している。コネクタ保持部84には、ハウジング22の外周面に重ね合わされる凹状端部86が設けられている。凹状端部86は、第1の半割体22aの外周面に沿った湾曲形状とされている。
【0055】
コネクタ保持部84における凹状端部86の中間部分には、部分的に深さが深くされたチューブ挿通部88が設けられている。チューブ挿通部88は、外部流路20の外径よりも僅かに小さな幅を有する凹状とされており、外部流路20を嵌め合わせることで、外部流路20を挟み込んで保持することが可能とされている。
【0056】
また、コネクタ保持部84における表示部78から遠い側の端部(コネクタ保持部84の表示部78からの突出先端部)には、凹状端部86及びチューブ挿通部88の開口側へ向かって突出する位置決め部90が設けられている。位置決め部90は、ハウジング22を貫通する位置決め穴92と対応する断面形状を有している。
【0057】
挿入部80は、操作スイッチ50の貫通孔66に挿通可能な細長い形状とされており、幅方向の中央部分に肉抜き94が形成されることで、略全長に亘って二股構造とされている。挿入部80の長さ方向の中間部分は、幅方向の外面に開口する凹溝96が幅方向両側にそれぞれ形成されており、部分的に幅寸法が小さくされている。凹溝96は、深さの異なる浅底部98と深底部100を有している。凹溝96は、表示部78と反対側である深底部100側の側壁が、表示部78側である浅底部98側の側壁よりも、挿入部80の幅方向の外側へ突出している。これにより、挿入部80の幅寸法は、深底部100に対して挿入部80の突出先端側に隣接する部分において、凹溝96の浅底部98よりも大きくされている。本実施形態では、挿入部80の突出先端側から深底部100に向かって、挿入部80の幅寸法がテーパ状に次第に大きくなっている。浅底部98における深底部100と隣接する部分には、幅方向外側へ向けて突出するなだらかな凸部102が設けられている。
【0058】
挿入部80には、第2の方向Yにおいて突出する一対のガイドリブ104,104が一体形成されている。ガイドリブ104は、挿入部80における肉抜き94の両側に設けられており、挿入部80の長さ方向である第3の方向Zに直線的に延びている。
【0059】
タブ部材68は、図2~4や図8,9に示すように、操作スイッチ50に取り付けられている。即ち、タブ部材68の挿入部80が、操作スイッチ50の貫通孔66に挿通されている。タブ部材68の挿入部80は、操作スイッチ50が押し込まれる前の初期状態において、図8,9に示すように、貫通孔66のタブ挿通部72に挿入されている。挿入部80における各凹溝96の浅底部98側の側壁内面が、貫通孔66のタブ挿通部72の開口縁部に重ね合わされており、挿入部80が貫通孔66に対して挿入方向で位置決めされている。挿入部80の一対のガイドリブ104,104は、操作スイッチ50の一対の中間突部74,74の間に差し入れられている。
【0060】
タブ部材68の挿入部80が貫通孔66に挿入されることにより、操作スイッチ50の中間突部74,74がタブ部材68の浅底部98,98の底壁部分に第2の方向Yで重ね合わされる。これにより、操作スイッチ50のハウジング22に対する押込み操作が、タブ部材68との当接係止によって阻止される。その結果、プライミングの完了前に操作スイッチ50の操作面52に押込み方向の力が及ぼされたとしても、操作スイッチ50がハウジング22に対して押し込まれず、閉止弁48が閉作動しない。操作スイッチ50に係止されるタブ部材68によって作動阻止部材が構成されており、タブ部材68が操作スイッチ50に取り付けられて、操作スイッチ50とタブ部材68が係止されることによって、閉止弁48の閉作動を阻止する作動阻止機構が構成される。本実施形態では、操作スイッチ50とタブ部材68が直接当接して係止されることによって作動阻止機構が構成されるが、例えば、操作スイッチ50とタブ部材68が別部材を介して間接的に係止されることで作動阻止機構が構成されるようにもできる。
【0061】
チューブ挿通部88には、外部流路20が末端コネクタ18側の端部付近で嵌め合わされている。コネクタ保持部84がハウジング22の外周面に重ね合わされた状態で取り付けられることにより、末端コネクタ18がコネクタ保持部84によって薬液注入コントローラ10の外周面上に保持される。
【0062】
すなわち、タブ部材68が操作スイッチ50に取り付けられることにより、タブ部材68のコネクタ保持部84は、凹状端部86がハウジング22の外周面に重ね合わされている。これにより、チューブ挿通部88の周方向の開放部分がハウジング22によって閉塞されており、チューブ挿通部88に挿通された外部流路20がチューブ挿通部88から側方へ外れない。更に、外部流路20の末端に大径の末端コネクタ18が設けられていることにより、外部流路20が長さ方向でチューブ挿通部88から抜けることもない。従って、タブ部材68が操作スイッチ50に取り付けられた状態では、末端コネクタ18が薬液注入コントローラ10から離れることなくハウジング22の側方に近接して保持される。そして、外部流路20及び末端コネクタ18がタブ部材68のコネクタ保持部84によって保持された状態では、末端コネクタ18を患者側の留置針などに接続することが難しくされている。このように、外部流路20がタブ部材68のコネクタ保持部84とハウジング22の間でハウジング22の側方から離れて移動しないように保持されることで、本実施形態の接続阻止機構が構成される。
【0063】
なお、コネクタ保持部84は、位置決め部90がハウジング22の位置決め穴92に挿入されることによって、ハウジング22に対して位置決めされていると共に、コネクタ保持部84がハウジング22の外周面から離れ難くされている。尤も、コネクタ保持部84の位置決め部90をハウジング22の位置決め穴92に挿入する構成は、必須ではない。
【0064】
操作スイッチ50に取り付けられたタブ部材68の表示部78は、注意喚起文などの表示を外部から容易に視認可能な向きで設けられており、好適には、操作スイッチ50を押し込む際に指で力を加える操作面52と略同じ向きで設けられる(図4参照)。これにより、操作スイッチ50を押込み操作する前に表示面82に表示された情報が使用者の目に入り易くなっており、操作スイッチ50の押込み操作前に表示面82の表示によってプライミングに関する注意事項等を使用者に確認させることができる。このように、タブ部材68の表示部78が、プライミング関連の情報を表示する情報表示機能を有しており、情報を表示して使用者に提供する表示機構が表示部78によって構成されている。
【0065】
貫通孔66のタブ挿通部72に挿通されたタブ部材68の挿入部80は、タブ挿通部72から所定量の引抜きが許容されている。即ち、タブ部材68は、図10に示すように、深底部100側の凹溝96の側壁内面が、貫通孔66のタブ挿通部72の開口縁部に当接するまで、第3の方向Zで表示部78側へ引いて移動させることができる。タブ部材68が操作スイッチ50に対して貫通孔66からの引抜き方向に移動して、操作スイッチ50の中間突部74がタブ部材68の凸部102を乗り越える際に、乗り越えに伴う衝撃が使用者の手に伝達される。これにより、使用者は、タブ部材68が所定の位置まで引き抜かれたことを、視覚だけでなく手応えによっても把握することができる。
【0066】
タブ部材68が図10に示す上記位置まで引き抜かれることにより、操作スイッチ50の一対の中間突部74,74がタブ部材68における凹溝96,96の深底部100,100の延長上に位置する。これにより、操作スイッチ50とタブ部材68の第2の方向Yでの係止による作動阻止機構が解除されて、操作スイッチ50がタブ部材68に対する第2の方向Yでの相対変位を許容される。そして、図11に示すように、操作スイッチ50をハウジング22に対して第2の方向Yで押し込むことが可能となる。操作スイッチ50が押し込まれることによって、プライミング用流路46が遮断されることから、タブ部材68の引抜きによる作動阻止機構の解除は、プライミング完了後に実行される。本実施形態では、タブ部材68の引抜き操作によって作動阻止機構が解除されるが、例えば、押込み操作や捻り操作などの他の操作態様によって作動阻止機構が解除されるようにしても良い。
【0067】
図10に示すように、操作スイッチ50を押込み操作する前の状態において、操作スイッチ50の一対の中間突部74,74の間に挿入部80の一対のガイドリブ104,104が予め差し入れられている。これにより、一対の中間突部74,74が凹溝96,96の各深底部100へ差し入れられる際に、例えば、一対の中間突部74,74のエッジと挿入部80の端面との引っ掛かりなどが生じ難く、操作スイッチ50の押込み操作がスムーズに実現される。
【0068】
操作スイッチ50が押し込まれると、タブ部材68の挿入部80は、図11,12に示すように、貫通孔66の抜去部70に挿通された状態となる。また、図12に示すように、抜去部70に挿通された挿入部80の肉抜き94には、操作スイッチ50の規制突起76が差し入れられており、タブ部材68の貫通孔66に対する押込みが、タブ部材68が規制突起76と当接係止されることによって防止されている。
【0069】
抜去部70に挿通されたタブ部材68が、第3の方向Zで表示部78側へ更に引かれることにより、図13に示すように、挿入部80が貫通孔66から引き抜かれて、タブ部材68が操作スイッチ50から分離される。これにより、操作スイッチ50を備える薬液注入コントローラ10からタブ部材68を取り除くことができる。
【0070】
閉止弁48の作動操作を含む操作スイッチ50の操作に伴ってタブ部材68が操作スイッチ50から取り外されることにより、タブ部材68による末端コネクタ18の保持が解除可能とされる。これにより、末端コネクタ18及び外部流路20がハウジング22から離れて移動可能とされて、末端コネクタ18を薬液注入コントローラ10から離れた位置で患者側の留置針などに簡単に接続することが可能になる。本実施形態では、操作スイッチ50の操作にタブ部材68を操作スイッチ50から取り外して脱離させる操作が含まれる。
【0071】
本実施形態では、タブ部材68が操作スイッチ50から取り外されて、コネクタ保持部84がハウジング22から離れることにより、チューブ挿通部88が周方向の一部において開放される。これにより、外部流路20及び末端コネクタ18をコネクタ保持部84から取り外すことも可能であり、末端コネクタ18を患者側の留置針などに接続する際に、タブ部材68が接続作業の邪魔になるのを回避することができる。
【0072】
タブ部材68は、薬液注入コントローラ10の操作スイッチ50から取り外されることによって、薬液投与装置12から除去することも可能とされる。操作スイッチ50の操作後にタブ部材68を薬液投与装置12から取り除けば、プライミングに関する情報を表示するタブ部材68の表示部78を、薬液注入コントローラ10、ひいては薬液投与装置12から取り除くことができる。これにより、操作スイッチ50の操作が完了した後で、表示部78の表示を患者などが見て混乱するのを防ぐことができる。要するに、本実施形態では、表示部78の情報表示機能を阻害する表示阻害機構が、タブ部材68が操作スイッチ50から取外し可能とされることで構成されている。
【0073】
表示阻害機構は、必ずしも表示部78の除去によって実現されるものに限定されない。例えば、操作スイッチ50の操作に伴って、表示面82が内側となるように表示部78が折り畳まれて、表示面82の表示が外部から視認し難くなることで、表示阻害機構を構成することもできる。また、例えば、表示部78に取り付けられる半透明乃至は不透明なカバーによって表示面82が覆われることにより、表示部78の情報表示機能を阻害することもできる。なお、表示阻害機構は、例えば、表示部78を取り除いたり、表示面82を視認不能に覆うなど、表示部78による情報表示機能を失わせるものが好適であるが、例えば、表示面82を見え難くするなど、情報表示機能を低下させて阻害するものであっても良い。
【0074】
以上のように、プライミング完了前の操作スイッチ50の誤った押込みを防止する作動阻止機構と、操作スイッチ50の押込み操作前において末端コネクタ18の留置針などへの接続を阻止する接続阻止機構と、操作スイッチ50の操作に関する表示をする表示機構とが、操作スイッチ50に取り付けられるタブ部材68によって構成される。このように、タブ部材68が複数の機能を有していることから、操作スイッチ50の操作に伴うタブ部材68の操作により、作動阻止機構の解除と、接続阻止機構の解除と、表示部78の除去とが、何れも実行される。
【0075】
図14図15には、本発明の第2の実施形態としての薬液注入コントローラ110が示されている。以下の説明において、第1の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0076】
薬液注入コントローラ110は、タブ部材112を備えている。タブ部材112は、合成樹脂等によって形成されている。タブ部材112は、表示部78にコネクタ保持部114が一体形成された構造を有している。
【0077】
コネクタ保持部114は、表示部78と略平行に広がる矩形板状の支持板部116と、表示部78と支持板部116を先端において連結する先端保持部118と、表示部78と支持板部116を基端において連結する基端保持部120とを一体で備えている。従って、コネクタ保持部114は、全体として略矩形筒状とされており、変形剛性が大きくされていると共に、コネクタ保持部114の中心軸がハウジング22の中心軸(第1の方向X)と略直交している。
【0078】
支持板部116は、表示部78との対向面において先端保持部118と基端保持部120が突出していると共に、表示部78と反対側の面において一対の位置決め部122,122が設けられている。位置決め部122は、支持板部116から表示部78と反対側へ向けて突出していると共に、コネクタ保持部114のハウジング22との重ね合わせ側へ向けて延び出している。一対の位置決め部122,122は、ハウジング22を貫通する支持孔123,123に挿入されることによって、ハウジング22によってそれぞれ支持される。これにより、例えば、コネクタ保持部114に外力が作用する場合に、前記実施形態のコネクタ保持部84のような1つの位置決め部90だけを備える構造に比して、負荷の更なる分散化が図られて、挿入部80の折れを防止することができる。
【0079】
先端保持部118は、ハウジング22の中心軸方向(第1の方向X)に対して略直交して広がる略平板形状とされている。先端保持部118は、第3の方向Zにおいて。一方の端面がハウジング22の外周面に重ね合わされる湾曲形状とされており。当該一方の端面に開口して第3の方向Zに向けて延びるチューブ保持溝124が形成されている。
【0080】
基端保持部120は、ハウジング22の中心軸方向に対して略直交して広がる略平板形状とされている。基端保持部120は、第3の方向Zにおいて。一方の端面がハウジング22の外周面に重ね合わされる湾曲形状とされており。当該一方の端面に開口して第3の方向Zに向けて延びるコネクタ保持溝126が形成されている。本実施形態において、コネクタ保持溝126は、チューブ保持溝124よりも幅広とされているが、コネクタ保持溝126とチューブ保持溝124は、互いに略同じ溝幅寸法でもよいし、コネクタ保持溝126がチューブ保持溝124よりも幅狭とされていてもよい。
【0081】
かくの如き構造とされたコネクタ保持部114は、支持板部116と先端保持部118と基端保持部120が、第3の方向Zの一方の端面においてハウジング22に重ね合わされて、ハウジング22に対して位置決めされる。また、表示部78と一体形成された挿入部80が操作スイッチ50の貫通孔66に挿入されると共に、一対の位置決め部122,122がハウジング22の支持孔123,123に挿入されることにより、コネクタ保持部114がハウジング22及び操作スイッチ50に対して取り付けられている。
【0082】
このようなコネクタ保持部114のハウジング22への装着状態において、外部流路20を構成するチューブは、先端保持部118のチューブ保持溝124に挿通されている。外部流路20の末端に設けられた末端コネクタ18は、先端保持部118のチューブ保持溝124の溝幅よりも径寸法が大きくされていると共に、先端保持部118よりも基端側に位置している。これにより、外部流路20は、先端保持部118に対して先端側への移動量を制限されている。
【0083】
また、コネクタ保持部114のハウジング22への装着状態において、外部流路20の末端に設けられた末端コネクタ18は、基端保持部120のコネクタ保持溝126に挿通されている。末端コネクタ18は、コネクタ保持溝126への挿通部分よりも大径とされたカプラ128を、基端保持部120よりも先端側に備えている。これにより、末端コネクタ18は、基端保持部120に対して基端側への移動量を制限されている。
【0084】
従って、コネクタ保持部114によってハウジング22の外周に保持された外部流路20及び末端コネクタ18は、外部流路20の長さ方向の移動を両側において制限されており、ハウジング22に対する位置が固定的に決められている。このため、コネクタ保持部114によって保持された末端コネクタ18が留置針などに接続されるのを、より確実に防ぐことができる。本実施形態のコネクタ保持部114は、末端コネクタ18の末端部分と外部流路20側とを先端保持部118と基端保持部120によってそれぞれ保持することから、末端コネクタ18を確実に位置決めすることができる。
【0085】
なお、本実施形態のタブ部材112は、第1の実施形態のタブ部材68と同様に、操作スイッチ50の操作に伴って操作スイッチ50及びハウジング22から引き抜くことが可能とされている。そして、操作スイッチ50の操作におけるタブ部材112の引抜き工程によって、第1の実施形態と同様に、操作スイッチ50の操作による図示しない閉止機構の作動の許容、タブ部材112の除去による表示部78の情報表示機能の阻害、コネクタ保持部114による末端コネクタ18の保持の解除などが実現される。
【0086】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、コネクタ保持部84は、必ずしも末端コネクタ18付近の外部流路20を保持する構造に限定されず、例えば、末端コネクタ18と嵌め合わされる凹凸などを設けるなどして、末端コネクタ18を直接保持する構造とされていても良い。これによれば、末端コネクタ18が外部流路20の変形によって移動することがなく、末端コネクタ18をより位置決めした状態で保持することができる。
【0087】
末端コネクタ18を保持するコネクタ保持部は、必ずしもハウジング22に対して脱離可能に設けられる必要はない。具体的には、例えば、操作スイッチ50の操作に際して、ハウジング22に対するコネクタ保持部の傾動等の移動が許容されることにより、コネクタ保持部による末端コネクタ18の保持が解除可能とされるようにしてもよい。
【0088】
前記実施形態では、1つのタブ部材68が、操作スイッチ50の操作前に末端コネクタ18の接続を防ぐ接続阻止機構と、プライミング完了前に操作スイッチ50の操作を防ぐ作動阻止機構と、操作スイッチ50の操作について表示する表示機構とを構成する。しかしながら、接続阻止機構と作動阻止機構と表示機構は、互いに異なる部材によって構成されていても良い。また、薬液注入コントローラは、接続阻止機構と作動阻止機構と表示機構とを何れも備えている必要はなく、それらの少なくとも1つを備えていれば良い。
【0089】
さらに、接続阻止機構と作動阻止機構と表示機構は、タブ部材68のような操作スイッチ50と別体の部材によって構成される必要はなく、操作スイッチ50と一体で設けられる部分によって構成することもできる。例えば、表示部78を操作スイッチ50と一体形成して、操作スイッチ50と表示部78をつなぐ部分が操作スイッチ50の操作に伴って破断する構造とすれば、前記実施形態と同様に、操作スイッチ50の操作完了後に表示部78を取り除くことができる。これによれば、操作スイッチ50の操作完了後に、除去可能となる表示機構を、操作スイッチ50と一体で設けられた表示部78によって構成することができる。なお、操作スイッチ50と表示部78が別部材とされている場合にも、表示部78における操作スイッチ50への接続部分に脆弱部を設けて、脆弱部を破断させることによって表示部78を操作スイッチ50から取り除くこともできる。
【符号の説明】
【0090】
10 薬液注入コントローラ(第1の実施形態)
12 薬液投与装置
14 メインライン
16 メインリザーバー
18 末端コネクタ
20 外部流路
22 ハウジング
22a 第1の半割体
22b 第2の半割体
24 サブリザーバー
26 サブライン
28 流入ライン
30 流出ライン
32 収容領域
34 プッシュボタン
36 コイルスプリング
38 プランジャ
40 ダイヤフラム部
42 ベース部材
44 制限流路
46 プライミング用流路
48 閉止弁
50 操作スイッチ
52 操作面
54 開閉弁
56 弁体
58 コイルスプリング
60 目印部
62 スリット
64 目盛
65 三方活栓
66 貫通孔
68 タブ部材(保持部材、作動阻止部材、表示部材)
70 抜去部
72 タブ挿通部
74 中間突部
76 規制突起
78 表示部
80 挿入部
82 表示面
84 コネクタ保持部
86 凹状端部
88 チューブ挿通部
90 位置決め部
92 位置決め穴
94 肉抜き
96 凹溝
98 浅底部
100 深底部
102 凸部
104 ガイドリブ
110 薬液注入コントローラ(第2の実施形態)
112 タブ部材(保持部材、作動阻止部材、表示部材)
114 コネクタ保持部
116 支持板部
118 先端支持部
120 基端支持部
122 位置決め部
123 支持孔
124 チューブ保持溝
126 コネクタ保持溝
128 カプラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15